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「いろいろな記数法」
1009 は 4 で割って 1 余る素数
「ベータ関数とガンマ関数」
数学の小宇宙「国の宝」
きょうの数字「10」
洛北算額 1 月の問題
数学オリンピックにチャレンジ!
vol.10
2018 年 1 月発行
きょうの
数学
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いろいろな記数法いろいろな底
洛北高校教諭 藤岡翼
高校1年生のみなさんは、そろそろ「n進法」を学習したでしょうか。今回はちょっと変わった記数法について話し
ていきたいと思います。
1 位取り記数法の復習
10進法は、次のようなルールで数を表す記数法でした。
1234(10) = 1× 103 + 2× 102 + 3× 101 + 4
この「10」の部分を、いろいろな整数に変えることができます。たとえば 5進法は
1234(5) = 1× 53 + 2× 52 + 3× 51 + 4 (= 194(10))
となります。このように、n進法は
n進法� �• 各桁は、ひとつ右の桁の n倍の重みをもつ (この nを「底」といいます)
• したがって、各桁は右から順に 1の位、nの位、n2 の位、n3 の位…となる (k 桁目は nk)• 各桁に使える数字は 0, 1, 2, . . . , n− 1の n種類(この数字を「仮数」といいます)� �
という特徴を持ちます。これを「位取り記数法」といいます。私たちが数学 A で学習するこの記数法は、底が2, 3, 4, . . . の場合でした。今回はこの部分をいろいろといじって遊びたいと思います。
2 −2進法
次のような記数法を考えてみます。
−2進法� �• 底は −2
• したがって、各桁は右から順に 1の位、−2の位、4の位、−8の位…となる (k 桁目は (−2)k)• 仮数は 0, 1の 2種類� �
具体的には、例えば次のようになります。
11001(−2) =1× (−2)4 + 1× (−2)3 + 0× (−2)2 + 0× (−2) + 1 = 9
111001(−2) =1× (−2)5 + 1× (−2)4 + 1× (−2)3 + 0× (−2)2 + 0× (−2) + 1 = −23
1
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表にしてみましょう。
−2進 10進 −2進 10進 −2進 10進 −2進 10進11 −1 0 0 11110 10 10100 2010 −2 1 1 11111 11 10101 21
1101 −3 110 2 11100 12 1101010 221100 −4 111 3 11101 13 1101011 231111 −5 100 4 10010 14 1101000 241110 −6 101 5 10011 15 1101001 251001 −7 11010 6 10000 16 1101110 261000 −8 11011 7 10001 17 1101111 271011 −9 11000 8 10110 18 1101100 281010 −10 11001 9 10111 19 1101101 29
どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なんとかすべての整数を表せているよう
に見えます。これがおもしろいところで、−2進法はマイナスの記号を使わなくても負の数を表すことが可能なのです。
10進法と同様に小数も表すことが可能です。たとえば −1
3= −0.333333 · · · (10), −1
3= −0.010101 · · · (2) ですが、
同様に −1
3= 0.111111 · · · (−2) となります。10進法より優れていると思いませんか?
−2進法の利点� �「-」の記号を使わなくても、負の実数を表すことができる。� �
いかがでしょうか。他にも 10進数より優れた記数法がたくさんあるので、見ていきましょう。
3 階乗進法
次のような記数法を考えてみます。
階乗進法� �• 底が 1, 2, 3, 4, ...と変化する。
• 各桁は右から順に 1の位、1の位、2の位、6の位、24の位…となる (k 桁目は k!)• k 桁目の仮数は 0, 1, . . . , k − 1の k 種類。つまり k 桁目は k で繰り上がる。� �
具体的には、次のようになります。見慣れない形ですが、「桁ごとに底が違う」という状況は『時間』『お金』など多
くの場面で見ているので、そこまで違和感はないのではないでしょうか。
階乗進 10進 階乗進 10進 階乗進 10進 階乗進 10進0 0 1200 10 3100 20 11000 30
10 1 1210 11 3110 21 11010 31100 2 2000 12 3200 22 11100 32110 3 2010 13 3210 23 11110 33200 4 2100 14 10000 24 11200 34210 5 2110 15 10010 25 11210 35
1000 6 2200 16 10100 26 12000 361010 7 2210 17 10110 27 12010 371100 8 3000 18 10200 28 12100 381110 9 3010 19 10210 29 12110 39
2
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階乗進法の小数は、次のような規則で決めます。
a b c . d e f↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑
2!の位 1!の位 0!の位 小数点 12! の位
13! の位
14! の位
小数第 k 位には 0, 1, 2, . . . , k の k + 1種類の数字が使えます。
例として、1
2= 0.1(階乗進),
1
3= 0.02(階乗進),
1
4= 0.012(階乗進),
1
5= 0.0104(階乗進),
1
6= 0.01(階乗進) となります。こ
れはなかなか面白くて、次のことが成り立ちます。
階乗進法の利点� �すべての有理数が有限小数で表せる。� �
ご存知の通り、分数が 10進法で有限小数となるのは分母の素因数が 2と 5の場合のみです。同様にどんな位取り記数法も「有限小数で表せない分数」が存在してしまうのですが、階乗進法にはそれがありません。10進法より優れていることが分かりました。
4 次回の予告
数学 Aで学習したもの以外にも様々な記数法があり、それぞれにメリットがあることが分かりました。次回は
• 複素数も記号なしで表せるような記数法•「底」ではなく「仮数」のほうをいじくった記数法• 記数法に隠れたフラクタルの構造
について話してみたいと思います。
5 練習問題
(1) 10進法で表された次の数を、−2進法と階乗進法でそれぞれ表しなさい。
(ア) 100 (イ) 2018 (ウ) 0.01 (エ) −30
(2) 次の計算を、10進法に直さずにしなさい。(ヒント:1(−2) + 1(−2) = 110(−2) と 11(−2) + 1(−2) = 0(−2) を使う)
(ア) 11101(−2) + 1(−2) (イ) 1011(−2) × 1010(−2)
(3)階乗進法ではすべての有理数が有限小数になることを示しなさい。(4)(上級者向け)−2進数ですべての実数を表せることを示しなさい。
(5)右手の指をそれぞれ 1, 2, 4, 8, 16に割り当てて、0から 31までの数を 2進法を用いて指で表しなさい。(6)右手の指をそれぞれ 1,−2, 4,−8, 16に割り当てて、−10から 21までの数を −2進法を用いて指で表しなさい。
(5),(6)のイメージ。折った指を 1、伸ばした指を 0とする
3
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あけましておめでとうございます。
今年は 年なので「 」について考えてみました。
を素因数分解すると, ・ となります。
「きょうの数学」 ( )
に書きましたが, で割ったときに 余る素数は ( は整数)の形で表すことができます。
は で割ったときに 余る素数で, です。
今回はここからもう 歩進みましょう。
ブラーマグプタの恒等式
この恒等式から, つの平方数の和で表される つの数の積が, つの平方数の和で表されることがわかります。
このことを用いて,
・
・ ・ ・ ・
と変形することができます。
も つの平方数の和で表される数だったわけです。
「きょうの数学」 の原稿の後半では直角三角形の話をしました。
今回も直角三角形をつくって終わりにしましょう。
・ ・
は で割って 余る素数 京都府立嵯峨野高校 森田勝也
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ベータ関数とガンマ関数 京都市立堀川高等学校 紀平武宏
早速だが次の 2つの問題を見てほしい.これらは問題 1が 2015年の横浜市立大の入試問題であり,問題 2が 2015年
の弘前大の入試問題である.
問題 1. 負でない整数m,nに対して,B(m,n) =
∫ 1
0
xm(1− x)n dxと定義する.
(1) B(3, 2)を求めよ.
(2) B(m,n)を B(m+ 1, n− 1)を使って表せ.ただし,n >= 1とする.
(3) B(m,n)を求めよ.
(4) a,bを相異なる実数とする.このとき,∫ b
a
(x− a)m(x− b)n dxを求めよ.
問題 2. nを自然数とする.
(1) 関数 f(x) = xn+1e−x の x >= 0における最大値を求めよ.
(2) 極限 limx→∞
xne−x を求めよ.
(3) すべての自然数 nに対して limx→∞
∫ x
0
tne−t dt = n!を示せ.
数学 IIIで積分を学習し,過去の入試問題の演習に取り組み始めるとこれらの問題とよく似ている問題にたびたび出会
うことになるであろう.なぜこのカタチはよく出題されるのであろうか?実はそもそも題材となっている関数が問題 1に
ついてはベータ関数と呼ばれているものであり,数学的にも重要な関数であるからである.またベータ関数を取り上げ
るならばガンマ関数についてについても触れなければいけない.そしてこのガンマ関数をイメージしたであろう入試問
題が問題 2となっているわけである.
さて,このタイプの問題は部分積分と同型出現をキーワードに解を導くことができるが,ここではその解法ではなく,
こういった受験数学から垣間見ることができる大学数学のにおいを感じ取ってもらえることに主眼をおきたい.積分を
学習済みの 3年生はもちろん,まだ数学 IIIで積分を学習していない 1,2年生にとっても,学習したあとにこれを読ん
で,ちらばっていた単なる計算練習と思われたものが何かひとつの大きな流れにのっているんだなと感じてもらえるな
ら幸いである.
1 ベータ関数
定義 1.1. 正の数 p,qに対して,
B(p, q) =
∫ 1
0
xp−1(1− x)q−1dx
を対応させる関数をベータ関数という.
問題 1は上の定義において,p,qを正の整数として,p− 1 = m,q − 1 = nとおいたものである.ここで注意しなく
てはいけないのは,正の数と正の整数の違いである.この違いは非常に大きい.なぜなら,「正の数」としたとき,B(p, q)
が存在するか一般にはわからないからである.この右辺に現れる積分を広義積分という.今の場合,この広義積分は収
束する.もちろん証明する必要があるがここでは省略する.気になる人は参考文献 [3],[4]や [6]を参照されたい.特に
[6]は入試問題をきっかけに数学の世界の広がりを述べてくれているので読みやすい.
そして高校数学(特に大学入試問題)ではこの変数を自然数にしたものが多く出題され,問題 1はまさにそれなので
ある.この結果は次のとおりである.
babababababababababababababababababababababab
∫ 1
0
xm(1− x)n dx = m!n!(m+ n+ 1)!
![Page 7: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/7.jpg)
1.1 応用例
積分区間を変えるなどして発展させたものも数学 II・IIIの積分計算に役立つことが多い.特に,∫ b
a
(x− a)m(b− x)n dx = m!n!(m+ n+ 1)!
(b− a)m+n+1 · · · · · · 1⃝
はよく使われる.この式で b− xを x− bとしたものがもちろん問題 1(4)である.
さて, 1⃝において,a,b,m,nを少し変えてみよう.
a = −1,b = 1,m = nとすると,∫ 1
−1
(x+ 1)m(1− x)m dx = 2
∫ 1
0
(1− x2)m dx =(2m ·m!)2
(2m+ 1)!
さらに,この式で x = sin θと置換すると,∫ π2
0
2 cos2m+1 θ dθ = 23
· 45· · · 2m
2m+ 1
を得る.
では次の入試問題を見てみよう.
babababababababababababababababababababababab
[大阪教育大 2007]
次の等式を証明せよ.ただし,m,nは自然数,α,β は実数とする.
(1)
∫ β
α
(x− α)(x− β) dx = − 16(β − α)3
(2)
∫ β
α
(x− α)n(x− β) dx = − n!(n+ 2)!
(β − α)n+2
(3)
∫ β
α
(x− α)n(x− β)m dx = −(−1)m m!n!(m+ n+ 1)!
(β − α)m+n+1
(3)は問題 1(4)である.注目は (1)と (2)で,(1)は放物線と直線で囲まれる面積を求めるときによく使ういわゆる 16
公式で,(2)は n = 2とすると,3次関数のある点での接線と接点以外にその 3次関数のグラフと交わる点で囲まれた部
分の面積を求める計算である.ただし,この n = 2の場合の計算をベータ関数を用いて解くのは現実的ではなく,
(x− α)2(x− β) = (x− α)2{(x− α) + α− β} = (x− α)3 + (α− β)(x− α)2 とやる方が圧倒的に良い.
さらに (2)や (3)で階乗の記号である ”!”が出てくることをちょっと覚えておいてほしい.
1.2 入試問題出題例
最後に,ベータ関数をイメージして作られたであろう入試問題をいくつかピックアップしておく.
1. (群馬大) a,bは定数,m,nは 0以上の整数とし,I(m,n) =
∫ b
a
(x− a)m(x− b)n dxとする.
(1) I(m, 0),I(1, 1)の値を求めよ.
(2) I(m,n)を I(m+ 1, n− 1),m,nで表せ.ただし,nは自然数とする.
(3) I(5, 5)の値を求めよ.
2. (2006熊本大) nを自然数とする.
(1) n >= 2のとき,関数 f(x) = (1− x)3xn の極限を求めよ.
(2) 定積分 an =
∫ 1
0
(1− x)3xn dxを求めよ.
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(3) 無限級数∞∑
n=1
an の和を求めよ.
3. (1999信州大) m,nを自然数とする.定積分 Im,n =
∫ 2
1
(x− 1)m−1(x− 2)n−1 dxに対して,次の問いに答えよ.
(1) Im,1 を求めよ.
(2) n >= 2のとき,Im,n と Im+1,n−1 についての関係式を求めよ.
(3) Im,n を求めよ.
2 ガンマ関数
問題 2の (3)を見てほしい.これをみると limx→∞
∫ x
0
tne−t dtは n!になっている.オイラーは階乗 n!を自然数から正の
実数で定義された関数として拡張できることを示した ([6]).この問題はガンマ関数が背景にあると述べたが,まずはそ
のガンマ関数の定義を紹介しよう.これも広義積分を用いる.
定義 2.1. 正の数 xに対して,
Γ(x) =
∫ ∞
0
e−ttx−1 dt
を対応させる関数をガンマ関数という.
ここで∫ ∞
0
f(x) dxが広義積分と呼ばれるもので, limn→∞
∫ t
0
f(x) dxを意味している.
また,この定義において x = n+ 1 (nは自然数)としたものが問題 2であり,ベータ関数と同様にこれが階乗の一般化
となっていることを確認できる重要な結果を述べておく.
babababababababababababababababababababababab∫ ∞
0
e−xxn−1 dx = (n− 1)! Γ(n+ 1) = nΓ(n)
この証明では limx→∞
xne−x = 0と部分積分を用いている(まさに問題 2!).
さらにベータ関数の中に階乗が現れていることから考えてもベータ関数をガンマ関数を用いて関係式を作ることがで
きる.
babababababababababababababababababababababab
B(p, q) =Γ(p)Γ(q)
Γ(p+ q)
2.1 入試問題出題例
ガンマ関数をイメージして作られたであろう入試問題も少し挙げておく.
1. (2001東北大)
(1) nを正の整数とする.t >= 0のとき,不等式 et > tn
n!が成り立つことを数学的帰納法を用いて示せ.
(2) 極限 Im = limt→∞
∫ t
0
xme−x dx (m = 0, 1, 2, · · · )求めよ.
![Page 9: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/9.jpg)
2. (2008大阪府大) aを正の定数とする.自然数 nに対して,関数 In(t)を,In(t) =
∫ t
0
xne−ax dxと定めるとき,
次の問いに答えよ.ただし, limt→∞
tne−at = 0であることは証明なしに用いてよい.
(1) I1(t)を求めよ.
(2) In+1(t)と In(t)の関係式を求めよ.
(3) In = limn→∞
In(t)とするとき,Jn を求めよ.
2.2 応用例(定積分の値)
三角関数で表されたベータ関数は,2p− 1 = a,2q − 1 = b(a, b > −1)とすると,∫ π2
0
sina θ cosb θ dθ = 12B(a+ 12
, b+ 12
)となる.これを公式とみて,
∫ π2
0
sin5 θ cos7 θ dθ = 12B(3, 4) = 1
2· Γ(3)Γ(4)
Γ(3 + 4)= 1
2· 2!3!
6!= 1
120
となる.
3 おわりに
まぁ入試問題の背景がわかったからといってその問題が解けるわけではないし「だから何?」と思う人もいるかもし
れないが,数学は文化なのだから一見無機質に思える問題でも実は先人たちの遺してきた財産と思うとモノクロであっ
た世界に少しは色がさすかなと思う.
それからこの原稿のテーマをベータ関数とガンマ関数にしようと決めてから,ベータ関数から書くかガンマ関数から
書くかじつはとても悩んだ.それはベータ関数が二項係数 m+nCn =(m+ n)!
m!n!の拡張であり,ガンマ関数が階乗の拡張
であると考えると,二項係数の中に階乗が現れているのでまずはガンマ関数から説明すべきであるが,ベータ関数を別
名第 1種 Euler積分というのに対し,ガンマ関数を別名第 2種 Euler積分といい,その順番通りであれば第 1種 Euler
積分であるベータ関数から始めるべきである.さらに歴史的にみるとオイラーは階乗を整数でない値に「補間する」こ
とに興味をもっていた ([2])ようで,そう考えるとやはりまずは階乗の一般化であるガンマ関数から書くか?ということ
になる.う~ん,悩む.となったわけであるが,とりあえず今回はベータ関数の方が入試問題では多いかな(?)とい
う本質とは無関係な理由でベータ関数から始めることとする.
ちなみに,第 1種 Euler積分とか第 2種 Euler積分と名付けたのはオイラーではなくルジャンドルという数学者で,そ
の第 1種 Euler積分を表す関数の記号として使われたのがギリシャ文字の B(ベータ)で,第 2種 Euler積分を表す関
数の記号として使われたのがギリシャ文字の Γ(ガンマ)である.
参考文献
[1] E.ハイラー/G.ワナー著,蟹江幸博訳,解析教程(上),シュプリンガー・フェアラーク東京(2001)
[2] E.ハイラー/G.ワナー著,蟹江幸博訳,解析教程(下),シュプリンガー・フェアラーク東京(2001)
[3] 高木貞治著,定本 解析概論,岩波書店(2014)
[4] 足立俊明著,数学レクチャーノート入門編 1 微分積分学 I,培風館(1997)
[5] 足立俊明著,数学レクチャーノート入門編 2 微分積分学 II,培風館(1998)
[6] 上野健爾著,数学者的思考トレーニング解析編,岩波書店(2012)
![Page 10: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/10.jpg)
国の宝
京都学園高等学校非常勤講師
中 井 保 行
昨年の 10 月 3 日から 11 月 26 日にかけて、京都国立博物館で「国宝展」が開催されました。日本の法令に「国宝」の用語が初めて使用された「古社寺保存法」が制定されてから 120年を記念してのことでした。
現在は、当時とは関連法が変わり、文化財保護法によって定義・規定されていますが、国宝と
は、国が指定した有形文化財(重要文化財)のうち、世界文化の見地から価値の高いもので、た
ぐいない国民の宝たるものであるとして国(文部科学大臣)が指定したものである(文化財保護
法第 27条第 2項)ということになります。たとえば、小職の住居に近い北野天満宮においては、建築物の本殿と、絵巻の北野天神縁起が
国宝に指定されています。そのほかにも太刀、絵画、文書など重要文化財が多数あり、宝物殿に
大切に収納されています。
さて、視点を和算の世界に転じましょう。主に江戸時代、鎖国下の我が国において、庶民が学
び発展させた和算は実用的にも江戸社会を支え、数学的にもかなり高いレベルまで発展しました。
そして庶民は、しばしばその成果物を算額として神社仏閣に掲げました。算額は全国でおよそ
1000枚あると言われます。実は、北野天満宮にも2枚の算額があります。これらは絵馬堂に常時掲げられてあり、誰もが
見ることができます。もともと算額は寺社に参拝する皆さんに広く見ていただくために掲げられ
たものなので、これでいいと言えばいいのですが、奉納当時とは異なり、現在は記述内容や宣伝
的価値よりも歴史的価値のほうが大きいはずです。残念なことはその扱いであり、宝物殿と絵馬
堂の環境の差は歴然です。前者は、室内、
電子警備、エアコン、施錠、・・・で、後
者は屋根の下ではあるものの吹きさらし
です。特に残念なことは、2枚の内の1
枚の算額は、読める算額の中で我が国
最古のものだということです。すべて
が価値観のなせる業ですが、算額の価
値の低さには寂しいものを感じざるを
得ません。
同様に心配なのは、福島県に散在する
算額です。福島県内にはおよそ 100枚もの算額が存在しますが、過日の福島 判読可能な最古の算額(北野天満宮)
原子量発電所の事故に伴う立ち入り禁止
などの措置により、県内の社寺・神社の維持管理が困難なことになっています。昨今、日中に野
生動物が道を歩いたり、田畑が雑木林に変化したりというニュースが伝えられます。社寺に奉納
されたこれらの算額は決して国宝ではありませんが、紛れもなく国の宝であり、腐敗・損傷する
ことなくこの難儀を乗り切ってくれることを願ってやみません。
![Page 11: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/11.jpg)
きょうの数字:「10」
今月の「きょうの数学」は第 10 号ということで、10 についての話をしたいと思います。
10 といえばパスカルの三角形です。パスカルの三角形は前にも何度か「きょうの数学」に登場しまし
たね。すぐこの話をしたいのですが、まずは三角数と三角錘数の話をしなければなりません。
三角数、三角錘数とは右の図のような数で、それぞれ
1, 3, 6, 10, 15, 21, …, 120, …
1, 4, 10, 20, 35, 56, 94, 120, …
です。気づいたと思いますが、10 は《三角数かつ三角錘数
となる、1 を除いて最小の数》です1。
また、三角数と三角錘数はパスカルの三角形の図の部分に現れます(こ
れはパスカルの三角形の作り方から示せるので、考えてみてください。)
これを見ると、10 はパスカルの三角形の 4 か所に登場しています。同様
に「10 以上の三角数・35 以上の三角錘数は 4 回以上登場する」ことが言
えて、実際 4 回以上登場する数を並べると
10, 15, 21, 28, 35, 36, 45, 55, 56, …
となります2。つまり 10 は《パスカルの三角形に 4 回以上登場するよう
な最小の数》です(1 を除く)。
では 6 回以上登場する数はどうでしょう。これはなかなか難しいですが、調べてみると
120, 210, 1540, 7140, 11628, …
が 6 回登場するようです3。また 3003 は 14・15・78・3003 段目に 2 回ずつ計 8 回登場します。
さて、では 10 回以上登場する数はあるでしょうか?これは、なんと見つかっていないのです!つまり
10 は《パスカルの三角形に n 回以上登場する自然数が見つかっていない n として最小の偶数》です4。
というわけで、10 が特別な数だということがわかりました。10 を見かける機会があったら、ぜひ周り
の人に教えてあげてくださいね。
1 1 が三角数かつ三角錘数なのは当たり前なので、こういった場合は 1 を除いて考えます。
2 きれいに三角数と三角錘数ばかり並んでいますが、126 などどちらでもない数も 4 回登場します。
3 11628 の次も 5 桁の数です。計算してみてください。(さらにその次は 29 桁です) 4 実は、5 回・7 回・9 回登場するような数も見つかっていない。
![Page 12: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/12.jpg)
解答は [email protected]まで送ってください。洛北高校生以外の解答も受け付けています。
第1問
第2問
洛北算額 今月の問題 2018.1
下の図は「パスカルの三角形」と言って、以下のルールで作られます。
(1)パスカルの三角形には、図のように奇数のみが登場する段があります。
7段目の次は、何段目が奇数のみになりますか。
(2)奇数のみになるような段を、すべて求めなさい。
(3)【チャレンジ問題】3で割って 1 余る数のみが 登場するような段を、すべて求めなさい。
(4)【チャレンジ問題】ほかの数だとどうですか。
7段目
3段目
1段目
0段目
2018 の数学的な性質を、自由に探してください。
① 左端、右端には1を書く。
② その他のマスには、上2つの和を書く。
![Page 13: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/13.jpg)
第1問
第2問
先月の解答・解説
点が同一直線上や同一円周上にあることを示す問題はいろいろあります。
次の問題にこたえてください。
(1) 平面α上に3つの地点 A,B,C があり、それぞれから長さの異なる煙突が立っているとします。煙突
の頂点をA’,B’,C’とし、A’B’,B’C’,C’A’をつないだ直線と平面αの交点を P,Q,R としたとき P,Q,Rは
同一直線上にあることを示してください。
(2) 平面上の半径の異なる円O,O’,O’’を考えます。
円O と円O’の共通外接線の交点を P とし、同様に
円O’と円O’’で点 Q、円O’’と円 O で点 R をとったとき P,Q,R は同一直線上にあることを示してく
ださい。
(1) (2)
2017 次の多項式
𝑓(𝑥) = 2017𝑥2017 + 𝑎2016𝑥2016 + 𝑎2015𝑥
2015 + ⋯+ 𝑎2𝑥2 + 𝑎1𝑥 + 𝑎0
(𝑎0, 𝑎1, … , 𝑎2016は定数) があり、
𝑓(1) = 1, 𝑓 (1
2) =
1
2, 𝑓 (
1
3) =
1
3, … , 𝑓 (
1
2017) =
1
2017 が成り立っている。
𝑓 (1
2018)の値を
𝑚
𝑛 (𝑛,𝑚は互いに素)と表したとき、𝑛 − 2018𝑚の値を求めよ。
(Purple Comet! Math Meet より、改題)
P
Q
R
![Page 14: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/14.jpg)
解説
第1問
今回は比較的多くの生徒が解答してくれました。
(1)は有名な問題で、あらゆる方法で解くことができます。大学入試にも出題されており(66 京都大学)、力試し
によい問題だといえるでしょう。おおまかに 4 つの方法を挙げておきます。
① ベクトルで解く
② 座標で解く
③ メネラウスの定理の逆で解く
④ 空間図形の性質を使って解く
①②は基本的に計算が難しく、面倒です。
解法① … 空間ベクトルによるもの
AA′⃗⃗ ⃗⃗ ⃗⃗ = a⃗ , AB⃗⃗⃗⃗ ⃗ = b⃗ , AC⃗⃗⃗⃗ ⃗ = c とする。このとき a⃗ ⊥ b⃗ , a⃗ ⊥ c で、BB′⃗⃗ ⃗⃗ ⃗⃗ = sa⃗ , CC′⃗⃗⃗⃗⃗⃗ = ta⃗ とおける(s, tは実数, s ≠ t)
すると AQ⃗⃗⃗⃗ ⃗ = (1 − 𝑘)𝐴𝐵′⃗⃗⃗⃗⃗⃗ ⃗ + 𝑘𝐴𝐶′⃗⃗ ⃗⃗ ⃗⃗ = {𝑠 + 𝑘(𝑡 − 𝑠)}𝑎 + (1 − 𝑘)�⃗� + 𝑘𝑐 (k は実数)とおける。
AA′⃗⃗ ⃗⃗ ⃗⃗ ⊥ AQ⃗⃗⃗⃗ ⃗よりk =−𝑠
𝑡−𝑠=
s
s−tなので 𝐴𝑄⃗⃗⃗⃗ ⃗ =
𝑡
𝑡−𝑠�⃗� +
𝑠
𝑠−𝑡𝑐
同様に 𝐴𝑃⃗⃗⃗⃗ ⃗ =1
1−𝑠�⃗� , 𝐴𝑅⃗⃗⃗⃗ ⃗ =
1
1−𝑡𝑐 だから 𝑃𝑄⃗⃗⃗⃗ ⃗ =
𝑠(1−𝑡)
(1−𝑠)(𝑡−𝑠)b⃗ +
𝑠
s−tc , 𝑅𝑄⃗⃗⃗⃗ ⃗ =
𝑡
𝑡−𝑠�⃗� +
𝑡(1−𝑠)
(𝑠−𝑡)(1−𝑡)𝑐
したがってt(1 − s)𝑃𝑄⃗⃗⃗⃗ ⃗ = 𝑠(1 − 𝑡)𝑅𝑄⃗⃗ ⃗⃗ ⃗ なので、P,Q,R は同一直線上にある。
解法② … 空間座標によるもの
平面αが xy平面となるよう座標をとり、A′(a1, a2, a3), B′(b1, b2, b3), C′(c1, c2, c3)とする。(a3, b3, c3は異なる
正の数)また座標の取り方を工夫することでa1, b1, c1やa2, b2, c2もそれぞれ異なる数にできる。
このとき直線 A’B’の方程式は𝑥−𝑎1
𝑏1−𝑎1=
𝑦−𝑎2
𝑏2−𝑎2=
𝑧−𝑎3
𝑏3−𝑎3であるから、Pの座標は(z=0 を左の式に代入して)
P(𝑎1𝑏3 − 𝑎3𝑏1
𝑏3 − 𝑎3,𝑎2𝑏3 − 𝑎3𝑏2
𝑏3 − 𝑎3, 0)
同様に
Q(𝑏1𝑐3 − 𝑏3𝑐1
𝑐3 − 𝑏3,𝑏2𝑐3 − 𝑏3𝑐2
𝑐3 − 𝑏3, 0) , R (
𝑐1𝑎3 − 𝑐3𝑎1
𝑎3 − 𝑐3,𝑐2𝑎3 − 𝑐3𝑎2
𝑎3 − 𝑐3, 0)
このとき PQの方程式は𝑥 −
𝑎1𝑏3 − 𝑎3𝑏1
𝑏3 − 𝑎3
𝑏1𝑐3 − 𝑏3𝑐1𝑐3 − 𝑏3
−𝑎1𝑏3 − 𝑎3𝑏1
𝑏3 − 𝑎3
=𝑦 −
𝑎2𝑏3 − 𝑎3𝑏2
𝑏3 − 𝑎3
𝑏2𝑐3 − 𝑏3𝑐2
𝑐3 − 𝑏3−
𝑎2𝑏3 − 𝑎3𝑏2
𝑏3 − 𝑎3
, z = 0 で、
(x, y, z) = (𝑐1𝑎3−𝑐3𝑎1
𝑎3−𝑐3,𝑐2𝑎3−𝑐3𝑎2
𝑎3−𝑐3, 0)はこの方程式を満たすから R は直線 PQ上にある。したがって言えた。
![Page 15: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/15.jpg)
どうでしょうか?計算はだいぶ省略していますが、それでも複雑な式になっていますよね。
座標やベクトルは多くの受験慣れした生徒が使う手段で、だいたいの問題を解くことができます。でも、これらの
方法は式が複雑になることがあり、問題によってはほかの手法のほうが圧倒的に楽なことがあります。
そこで、メネラウスの定理を使う方法も考えましょう。
メネラウスの定理
△ABC の辺 AB,BC,CA 上にそれぞれ点 P,Q,R がある。このとき
P, Q, Rは同一直線上 ⇒ 𝐴𝑃
𝑃𝐵×
𝐵𝑄
𝑄𝐶×
𝐶𝑅
𝑅𝐴= 1
が成り立つ。
メネラウスの定理の逆
△ABC の辺 AB,BC,CA 上にそれぞれ点 P,Q,R がある。このとき
𝐴𝑃
𝑃𝐵×
𝐵𝑄
𝑄𝐶×
𝐶𝑅
𝑅𝐴= 1 ⇒ P, Q, Rは同一直線上
が成り立つ。
(この図は、あまり登場しない「直線と三角形が交わっていないときの図」です。)
数学 A では、メネラウスの定理と同時にその逆も学習します。これを使うと、次のように説明が可能です。
解法③ … メネラウスの定理の逆によるもの
AA’と BB’は平行なので𝐵𝑃
𝐴𝑃=
𝐵𝐵′
𝐴𝐴′ , 同様に
𝐶𝑄
𝐵𝑄=
𝐶𝐶′
𝐵𝐵′ ,
𝐴𝑅
𝐶𝑅=
𝐴𝐴′
𝐶𝐶′
したがって𝐴𝑃
𝑃𝐵×
𝐵𝑄
𝑄𝐶×
𝐶𝑅
𝑅𝐴=
𝐴𝐴′
𝐵𝐵′×
𝐵𝐵′
𝐶𝐶′×
𝐶𝐶′
𝐴𝐴′= 1
メネラウスの定理の逆から、P,Q,R は同一直線上にある。
どうでしょうか?同一直線上にあることを示すための武器はたくさんあります。最後に解法④を紹介します。
どうでしょうか?一度この解法を見てしまえば「なんだ、当たり前じゃないか」となりますよね。
実は、もっと短い方法があります。調べてみてください。
解法④ … 空間図形の性質によるもの
P,Q、R は平面αと平面 A’B’C’の
交わる部分(共通部分)にある。
平面と平面の交わり(交線)は直線であるから、
P,Q,R はこの直線上にある。よって言えた。
解法⑤ … デザルグの定理を用いるもの
AA’,BB’,CC’は無限遠点で交わるので、デザルグの定理から P,Q,Rは同一直線上にある。
![Page 16: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/16.jpg)
(2)
これに手をつけた生徒はほとんどいませんでしたが、高校2年の浅野くんが唯一正解していました。彼の解答は
(1)に帰着させるもので、おもに三角形の相似を使っていました。
ほかにも様々な解法がありますが、(1)と比べてベクトル(①)や座標(②)での解答が段違いで難しくなっています。
メネラウスの定理(③)、空間図形の性質(④)を使ったおおまかな解答の手順は次の通りです。
特に2つめのものは鮮やかで、平面に関する問題をあえて空間にもちこむことで計算無しでの解答をしています。
この問題は「モンジュの定理」といいます。興味のある人は調べてみてください。
メネラウスの定理を用いるもの
円の中心をそれぞれ O,O’,O’’で表すことにする。
P,Q,R はそれぞれ直線OO’、直線 O’O’’、直線O’’O 上にある。 …①
O,O’,O’’が同一直線上にあるとき、①から P,Q,Rは同一直線上にある。
点 O,O’,O’’が同一直線上にないとする。
円 O,O’, O’’の半径を r, r’, r’’とするとき、図から𝑂′𝑃
𝑂𝑃=
𝑟′
𝑟
同様に𝑂′′𝑄
𝑂′𝑄=
𝑟′′
𝑟′ ,
𝑂𝑅
𝑂′′𝑅=
𝑟
𝑟′′
したがって𝑂′𝑃
𝑃𝑂×
𝑂𝑅
𝑅𝑂′′×
𝑂′′𝑄
𝑄𝑂′=
𝑟′
𝑟×
𝑟
𝑟′′×
𝑟′′
𝑟′= 1 …②
①②より、メネラウス定理の逆から P,Q,R は同一直線上にある。
空間図形の性質を用いるもの
O,O’,O’’を大円とする球 S,S’,S’’を考える。O,O’,O’’の中心を通る平面αと、S,S’,S’’に同時に接する平面β
を考えると、P,Q、Rは平面αと平面βの交線上にある。よって言えた。
![Page 17: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/17.jpg)
第2問
いつもより解いてくれた人が多かったです。見た目がおもしろかったからでしょうか?
ポイントは𝑓(𝑥) − 𝑥という多項式を考えることです。𝑔(𝑥) = 𝑓(𝑥) − 𝑥とおくと
𝑔(1) = 𝑔 (1
2) = ⋯ = 𝑔 (
1
2016)𝑔 (
1
2017) = 0
となり、方程式 𝑔(𝑥) = 0 の解が 𝑥 = 1,1
2,1
3, … ,
1
2017 であることがわかります。したがって
𝑓(𝑥) − 𝑥 = 𝑔(𝑥) = 2017(𝑥 − 1) (𝑥 −1
2)… (𝑥 −
1
2016) (𝑥 −
1
2017)
であり、
f (1
2018) = 𝑔 (
1
2018) +
1
2018= 2017 (
1
2018− 1) (
1
2018−
1
2)… (
1
2018−
1
2016) (
1
2018−
1
2017) +
1
2018
となります。
ここから詰まった人がなぜか多かったのですが、実際に計算するといいです。自然数kについて
1
2018−
1
𝑘= −
2018 − 𝑘
2018𝑘
なので、
𝑓 (1
2018) = 2017 (−
2017
2018 × 1) (−
2016
2018 × 2)…(−
2
2018 × 2016) (−
1
2018 × 2017) +
1
2018
= 2017 (−1
2018)2017
+1
2018
= −2017
20182017+
1
2018
=20182016 − 2017
20182017
ここで20182016 − 2017と20182017は互いに素なので1、m = 20182016 − 2017, n = 20182017です。よって求める数は
20182017 − 2018(20182016 − 2017) = 2017 × 2018 = 4070306
です。
1 ここはすこし省略しました。実際の解答でも全員が省略していましたが、本当はちゃんと言う必要があります。2018 = 2 ×
1009なので、20182017の約数は「1」か「2 か 1009 の倍数」です。後者は20182016 − 2017の約数でないので、この2つは互いに
素です
![Page 18: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/18.jpg)
今月は過去の日本数学オリンピック( )本選問題を紹介します。ぜひ挑戦してみてください。
【 年 日本数学オリンピック本選 第 問】
表裏の区別のある硬貨が の正方形状にすべて表を上にして並べられている。一回の操作で,
縦に連続する 枚の硬貨,横に連続する 枚の硬貨,または斜めに連続する 枚の硬貨を同時にひっ
くり返す。この操作を何回か繰り返して,すべての硬貨が裏を上にして並んでいる状態にすることは
できるか。
※解答は来月号に掲載します。
数学オリンピックにチャレンジ
![Page 19: Ð · à - Hamajima1001 7 11010 6 10000 16 1101110 26 1000 8 11011 7 10001 17 1101111 27 1011 9 11000 8 10110 18 1101100 28 1010 10 11001 9 10111 19 1101101 29 どうでしょうか。かなり不規則に数字が変わっていくことが分かりますが、なん](https://reader034.vdocuments.net/reader034/viewer/2022051808/600e141f8f35e0170976f148/html5/thumbnails/19.jpg)
先月号の問題と解答
【 年 日本数学オリンピック予選 第 問】
三角形 があり, の二等分線と辺 との交点を とする。
であり,さらに である。
このとき は何度か。ただし, 点 , に対し,線分 の長さを で表している。
, とおく。
直線 に関して点 と対称な点を とすると,△ △
よって,
また, なので より
よって,△ は二等辺三角形であるから,
ゆえに,
また, より
よって,△ に着目すると
・ ・
ゆえに,
したがって,
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編集部のひとりごと「大きな素数」
2017 年 12 月に既知の最大の素数が約 2 年ぶりに更新された。新たなメルセンヌ素数を探
すプロジェクト「GIMPS」が発見したその数は、2 − 1 で、2324 万 9425 桁。
これまでに知られていた最も大きな素数は 2233 万 8618 桁だったので、それと比べて約 100万桁大きい数である。発見した数学ファンのジョナサン・ペース氏(51)には 3000 ドルが
送られるらしい。数学ファンの情熱はすごい。
~イベントの案内~
「日本数学的モデリングチャレンジ京都 2018」@京都大学数理解析研究所
2月 11 日(日)10:00~16:00
内容:3名1チームで数学的モデリングの問題を解く。
※ 詳細は「京都府高等学校数学研究会」の HP をご覧ください。
http://www2.hamajima.co.jp/kyoto-math/
-編集後記-
「きょうの数学」第 10 号です。意見・感想・寄稿など、「きょうの数学」編集部
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twitter アカウントもつくりました。→ @kyomath31415 バックナンバーを「京都府高等学校数学研究会」の HP にアップしています。
ご覧ください。→ http://www2.hamajima.co.jp/kyoto-math/
【表紙の写真】
関孝和(Wikipedia より)
17-18 世紀の日本の数学者。「算聖」と呼ばれた。点竄術(てんざんじゅつ)
という筆算による代数の計算方法を発明し、日本の数学「和算」の基礎をつくっ
た。また、暦を作成するため正 13 万 1072 角形を用いて、円周率を小数第 11 位
まで計算した。