【世界を変えるデザイン 読後会】レポート100627

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 世界をかえるデザイン ―― ものづくりには夢がある 読後会 レポート

主催:青木将幸ファシリテータ事務所、林田全弘

ファシリテーター:青木将幸 青木将幸ファシリテーター事務所

レポート作成:後藤なな

日時:2010 年 6 月 11 日(金)14:00-19:00

場所:原宿 フラットスペース事務所

「世界を変えるデザイン ―― ものづくりには夢がある」

この本の感想を通して、デザイン《design》という言葉の本来の意味に立ち返るとこ

ろからはじまり、人口所得ピラミッドの下層 90%と上層 10%の人たちを、そのデザイ

ン・プロダクツがどのように繋ぎ合わせているか、その可能性について言及しました。

さらには、そこから上層 10%である自分たちの生き方や社会のあり方にまで触れ、中身

の濃い話で埋め尽くされた、あっという間の 5 時間でした。

今回の読後会は、前回行われた別の読後会で、主催の青木さんに林田さんが話を持ちか

けたことによって実現したものでした。「世界を変えるデザイン――ものづくりには夢

がある」この本の監訳者である槌屋さんを向かえ、主催側の知人、そしてインターネッ

ト上の広告から繋がって、この日、総勢 11 人が集まりました。11 人という限定された

メンバーだったので、twitter と USTREAM を駆使し、当日に参加できなかった方々に

も読後会の内容と雰囲気を少しでもシェアできるように、文字と映像で中継をする、と

いう試みを同時に行いました。

6 月初旬にしては暑い日、5 時間という長さに、どんなものが詰められていくのだろう、

期待と、興奮と、少しだけ不安と、が空気に混ざりあいつつ、読後会はスタートしまし

た。

一番始めのお題は、「この本からどんなインパクトを受けたか」というもの。

この話題で中心になったことは、デザインという言葉を通して、先進国の人も発展途

上国の人も繋がっているということ、つまり発展途上国の人もデザインを必要とし、先

進国も“援助する”立場ではないということ、さらに、この本で紹介されているプロダクツ

というのはデザイナーたちが発展途上国の人たちと同じ目線にあわせているというとこ

ろでした。

デザイン design の本当の意味

ここで、日本語としての【デザイン】と、元来の意味としての【design】の言葉の間

での解離について触れる槌屋さん。

もともとの、design の意味には、【思考】という意味がある。design の根幹には、

【中身】がある。良いデザインとは、本来の design の意味をうけて、生産ラインでの良

いチームワーク、生産から提供までの良いプロセス、という中身があってこそ、美しい

デザインといえるのだ、と。

しかし、現代での、特に上層 10%の人の間で流通しているデザインやプロダクツは、

この意味が抜けていても、デザインが成り立つようになってしまっている。“かっこいい”

といった外見が重視されるデザインを求めるだけでも、プロダクトできてしまっている

という、いいます。

この本で紹介されているデザインは、

すごくたくさんの人に話を聞きながら、

プロダクトをつくっているものであり、

こういうデザインを行う団体は、すご

く“easy going”。たとえばweb で公

募したデザインでも、気軽に実現へも

って行くそうなのです。

そういった、多くの人に意見を求め、

潜在的なニーズに気付くことや、身軽

な実行力を持ち、たくさんの機会を活

かしていくことで、良いデザインにな

っていくのではないか、と。

しかし、現実の社会、特に上層 10%

の社会では、そのような、多くの人に

ヒアリングをして潜在的なニーズを見

出すことや、easy going に実行に移す

といったことを、実現にいたらせるの

は、本当に難しいこと。

今回は多数の社会人の方が参加され

ており、その方々から、社会の内面か

らの意見をいただきました。

社会の中に、多様な人が関わってデザインをしていくことが現状では革命に近いほど

に難しいということ。大企業でさえも潰れうる今、新しいデザインを受け入れることは、

企業として受け付けがたいということ。企業のトップの視点を変えることに、頭と体で

わかってもらうには多くの段階を踏まえなければいけない大きな解離があること。

その、企業のトップの人の視点を変えるという点に対し、ひとつの提案として、【現地

につれていく】という手段はどうだろうという意見がでました。

ただ、そこにも、企業の出張として“現地”に行くということと、デザインをみるために

いく“現地”に差異があり、それを理解してもらって、企業のトップの人を動かすことに、

一つ段階があり、さらに、“現地”に行った先でも、企業という目線でいく現地は違う、と

いいます。

現地の 90%の人ではなく、10%の人としか話せていないのかもしれないね、と青木さ

ん。

第 1 番目のタームは、デザインのあるべき理想があり、それが現実に落ちづらい現状

について述べた上、休憩を挟むこととなりました。

休憩の後からは、参加者それぞれが、それぞれへの質問を考え、順繰りに、その質問

から話を展開しゆくことに。

《 みなさんの質問 》

林田:本を読んで、イイナ!と思ったプロダクトとその理由

林か:日本の企業は、“世界を変える”ことにどのように関われる?

林な:それなんでボストンでせぇへんの?(キャッサバ練炭 proj。は、なぜ発展途上国だけなん?)

ふじさき:今の日本の社会で BOPビジネスを成功させられそうな会社・あるいは商品はなんだろう?

アラン:BOP と自己実現

いまの企業では、マーケティング(自分のため)としてとらえなきゃいけない。

でもデザインは途上国の人と同じ目線であるべき。

その間で、どのように自己実現を果たすべきなのか?

槌屋:この本をだれに薦めたい?

umemoto:経済性以外の行動原理はありえるのか?人の humanity て、何?

上武:この本を読んで 考え方や 仕事のやり方 何か変わりましたか?

まず最初に選ばれた、質問は、林田さんの“この本の中でイイナ!と思ったプロダクツ

とその理由は?”というもの。

IDE の灌漑ポンプや Q ドラム、ポットインポット・クーラー、ラップトップ、トウガ

ラシ・フェンスなどのプロダクツの話がどんどんと沸き起こります。先進国の人の技

術・アイデアから生み出され、途上国の人たちに浸透していくプロダクツもある中で、

現地の人が元来持っていた知恵 wisdom がプロダクツとなり、それをデザインと捉えて

いるもの。

このように、様々な「世界を変えるデザイン」には

【先進国から持ちこんだ技術やアイデアが、現地に土着したもの】と

【途上国の wisdom から生み出され洗練されたもの】という 2 通りがある

といった共通認識が生まれました。

世界を変えるデザインのゴール

ここで、新しい話題【「世界を変えるデザイン」のゴール(終わり)】について触れ

ていくことになります。

この「ゴール」をとらえるときに、「ゴール」は個々に持っているものと認識すると、

自ずと見えてくるのではないか、と林田さん。【世界をみる】というのは現実身に落ち

ない。個人に落として、それが積み重なったものが、いい方向にいくといいのではない

だろうか、とおっしゃいます。

そして、さらには、“絆”があることが大事ではないか。その絆・縁というもので結ばれ

ていくところに、世界をつなぐ、世界を変える“区切り”が見えてくるんではないか、と。

全体として捉えるのではなく個々人に落としこむ、という話から、さらに自分たちの

“幸せ”とは何か?と根幹的な問いが生まれてきました。

ここで出てきた 2 つの話。

途上国の人は、先進国の自分たちが見てとても憧れるくらいに“純粋に信じること”“可能

性に向かって一直線に突き進むこと”ができるという話。

そして、先進国とされているイタリアにも都市と田舎の間に貧困格差はあるのだが、

それが一概に“不幸”なわけではなく、その田舎に商売を構えている人たちは、広く商売を

拡げることではなく、顔馴染みのお客さんに自分の商品が届くことに生きがいを生み出

す人の話。

この一見したら全く逆のように思える話の中に、その途上国の人にも、イタリアの小

規模にも商売をするお店の人にも共通してみられること、というのは、【自分の力で行う、

自己実現】を達成しているというキーワードが見えていたように、思いました。

キベライト

休憩を挟んだ後に、槌屋さんから、本にも展覧会にも出ていない【ソーラーランタ

ン】のご紹介がありました。

こ の ラ ン タ ン は 、

ケニアの、世界でも

有数のスラム街であ

る“キベラ”の青年たち

が、ソーラーパネル

以外は現地で調達し、

自分たちで作ってい

るものなのだとか 。

過去に外国の人から 、

ソーラーパネルのア

ッセンブリの方法だけを教わり、自分たちの手で改良を重ね、自らの美的センスもちり

ばめて作っている品物のようです。しかし、値段は 30 ドルと高く、なかなか売れてはい

ないそう。というのも、ソーラーパネルの調達コストが一つあたり 25 ドルと高いため。

槌屋さんは、「ソーラーパネルを彼らがつくれるようにしたい。それが私のゴール」と

いいます。ソーラーパネル部分のコストリダクションについて、槌屋さんは模索されて

いました。もしその部分が解決したら、また彼らストリートチルドレンは、そのノウハ

ウを自分たちのものにしていき、コスト表を作成し、どうやったらさらに安くなるかを

考えていくだろう。そうやって、自分たちで考えていくことが楽しいのだ、と。

彼らは、このソーラーランタンを“キベライト”と名づけています。

キベラは、アフリカ第 2 の規模をもつスラム街。この地域の人たちは、社会からシャ

ットアウトされている、と感じている人たちが多く、実際も社会とこのスラムとの間に

は、物理的、心理的な大きな壁があるそうです。

その中で、自分たちのふるさとの名前をつけたソーラーランタンが、自分たちの手か

ら人に買ってもらうということ、そして行く末には、ふるさとの人々が自分たちのお金

で手にできることが、彼らの夢なのです。

ソーラーランタンについて、「先進国で 2倍の値段で売って、一つ買ったら一つがケ

ニアの人に寄付されるというマーケティングができるんじゃないか」という画期的な提

案もありましたが、彼らはそれを望んでいない、自分たちで売って自分たちで買う、と

いうことにこそ意味があるのでは、というところに落ち着きました。

「ソーラーランタンが必要な人がいるなら、さっさと手元に届けてあげたらいい」と

思ってしまいがちですが、よほどの緊急援助でないのならば、彼らのスピードに合わせ

ながら、みんなに買ってもらえるように試行錯誤する楽しさ(売る側)や、自分たちで

苦労して手に入れたものを使うときのウキウキ感(消費者側)といったような、私たち

が普段の消費行動や仕事で味わっているような“楽しさ”を感じることのほうが、灯りそれ

自体よりも大切なことなのではないか。

こういう行動を通してこそ、【社会や世界が自分たちのものになる】、【世界を自分

が変えている】という感覚が生まれるではないか、と。

社会・企業・仕事のあり方

そして、話は、先進国の、私たちの社会、そして企業・仕事というもののあり方に発展

していきます。

先進国の企業であっても、やりたいことがあって起業しているわけで、純粋な利益追

求のために起業をするということは、そうそうないことなのではないか、という議論に。

しかし、起業した当初の熱意から、走り始めていくと、社員を食わしていかなきゃい

けない、目先の問題を解決しなければいけない、というようなさまざまな副産物を生み

出し続けていき、途中で失っていくものもたくさんあるものなのではないか、というこ

とも問題として見えてきました。

それはさらに、分業によって、自分が作ったものが、誰がどう使われているのかわか

らなくなる、という悲しさも生み出しているのではないか、と。

ここで、青木さんが、本の内容を引用し、次の内容を提供してくださいました。

《本書 72 ~ 73 ページ  デザインの3つの革命》

【1】適正技術運動

【2】参加型開発革命

【3】共同創造というコンセプト

人間には、【1】に述べられているように適正な規模の組織があるんじゃないか、とい

うこと。【2】の参加型には、自分がやっているという感覚にも通じるのではないか。こ

の3つの革命の話は、心に残っている。仕事の仕方が変わる気がする、と青木さんは言

います。

このデザインの 3 つの革命と、照らし合わせると、作り上げた何かがゴールだけでは

なくて、プロセスの形にもゴールがある、ということが見えてきました。

そして気付くことは、この本のプロダクツは、誰が喜ぶかわかる、ということ。

ウィルスのような本を目指して

最後に、槌屋さんの質問【この本を誰にすすめたい?】について皆で話し合いました。

青木さんは、「大きな仕事をこなして、一息ついた人、この腕どうやって活かそうか

な、という人に読んでほしい」といいます。実際に、この本は、上司が部下から勧めら

れるというケースも案外多いのだとか。

藤崎さんは、会社にいる人でも、自分でも関われるかもしれない、と身近に感じられ

る本だといいます。日本の CSR は“本業とは別”という意識があるけれど、そういった意

味で、この本には、企業や社会が大々的に打ち込んでいける可能性を見出せるのではな

いでしょうか。

この質問の意図として、次の話をしてくださった槌屋さん。「この本の日本語版を作

る企画会議で、ウィルスみたいになろう、と狙いを定めました。勧めやすい本にしよう

と装丁デザインも考えました。そうやってマインドが変わっていくといいな、と思いま

す。」

「“ウィルス”として、人々に感染し、マインドを変えるというなら、ふつうの事務職や経

営者…いや、ふつうの消費者を変えたいかな。消費するだけの人になってほしくない」

と林直樹さんはいいます。先進国の消費者に、どんなコミットメントがありえるのか考

えてもらうような、消費ではなく参加という形を提案したい、と。

こうして、時間になり、参加者一人ひとりの感想をシェアしたところで、今回の読後

会は幕を閉じました。

富裕層 10%の中の自分

ここからは、ちょっと、一参加者として、この場を借りて、すごく感謝しているとこ

ろを述べさせていただきたいと思います。もう読み込んで疲れた、という方は読み飛ば

してください。

実は、当日、私は、今回の読後会で導引した twitter 実況の、書記をさせていただいて

いました。しかし、主催の林田さんの計らいで、最後のタームに、参加者の一人として、

みなさんと会話をかわすことができたのでした。

そのとき、私は、昔から疑問やモヤモヤとして持っていたものを吐き出しました。

私はしばしば、富裕層の自分から貧困問題を考える、ということに、すんなりとは胸

に入らない、つっかえのようなものを感じていました。

富裕層と、貧困層では、時間の進む速さが違う。“豊かさ”という指標も違う。

だから、その間でのデザインという【意識的な問題解決】は、2 つの層の融合が起こっ

たときに、予期もしない方向へ向かってしまうのではないか、と恐怖に近い感覚を 持っ

ていました。

でも、外的刺激や経験があってこその、彼ら(貧困層の人たち)の【新しく見えてく

る世界】がある。可能性が拡がる。

そして、きっと、富裕層の人たちがどこまでも、“可能性を信じること”“よりそうこと”

“ともに歩むこと”があってこそ、そのふたつの層の【つながり】というものが形成される。

富裕層も、貧困層も、「自分の考えたプロダクツを作り出し、それを人に届けて、人の

喜びを感じられる・世界が変わったと実感できる」そこに幸せややりがいを見る、とい

うことは共通したものであり、“経済的な原動力”ではなく、人が最も求めるものは、【自

分自身の楽しさややりがい】から、【プロダクツを受け取った人の笑顔】によってデザイ

ンは完結し、幸せを感じるものだとしたら、きっと、そうやってよりそってこそ、富裕

層の人たちの自己実現にも繋がるもので、それが 90%への可能性でもあるのでは、ない

だろうか。

貧困層の人のため、というものではない、ということ。

富裕層の人だからこそ可能な情報収集や技術があり、逆に、貧困層の人のもその地に根

付いた wisdom という強みがあり、それらのアイデアを持ち寄って、ともに歩むことで、

貧困層や富裕層という区切りをとった、みんなのデザインというものになっていくんだ、

と。

だから、デザインは、10%と 90%をつなぐものになるんだな、と思いました。

この機会に、自分の思っていた心のつっかえが言葉になったこと、そして、参加者の

方々からの返答や、この読後会全体の流れの中から、はっきりとした自分の答えになっ

ていったことが、本当に今回のとても大きな収穫だった、と思いました。

そして、今回の機会にすごく感じたのが、私自身まだ大学院の学生であり、他にも学生

の参加者の方もいて、そして社会人の方々もいる中、時に社会人の立場としての、社会の

中の仕組みも垣間見つつ、経験値は違っていても、すごく同じ目線で、話し合うことが

できた、という印象でした。

本当に貴重な時間を共有することができ、感謝してもし尽くせません。

拙い文章だったとは思いますが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

◆読後会に参加された皆様へ

レポートの内容の修正点があれば、林田さんが修正してくださいます。

以下までご連絡ください。

林田全弘 [email protected]