腎機能を正しく評価するための...
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腎機能を正しく評価するための 10 の鉄則
eGFRcreat、 CCrでmL/min/1.73m2は薬物投与設計に使わない。mL/minを使うが、抗菌薬・
抗がん薬などで投与量が mg/kgや mg/m2となっている場合には mL/min/1.73m2を使う。
今までの添付文書記載の腎機能として記載されている CCrはほとんど Jaffe法による血清 Cr
値測定による。CCrJaffeは GFR と近似するため、薬物投与設計時の患者の腎機能は酵素法に
よる CCrEnzは用いず eGFR(mL/min)を使うか、CG 式の血清 Cr に患者の(血清 CrEnz+0.2)を
代入して求めた推算 CCr を使う。
CG 式による推算 CCrEnzは薬物投与設計には原則として用いないが、血清 Cr 値の低い痩せ
た患者に eGFRcreat 推算式を使うと過大評価してしまう。そのため後期高齢者やがん末期な
どのフレイル症例には eGFRcreat よりも Cockcroft-Gault(CG)式による推算 CCrEnzが適して
いることがある。
肥満患者の推算 CCr 算出のための体重は理想体重または標準体重を用いる。
高齢者のフレイルなど、腎機能予測式では正確な評価ができない症例には 24 時間畜尿によ
る実測 CCrEnz×0.715 により GFR として評価すると正確な腎機能が得られる。蓄尿 CCr は畜
尿忘れがないよう「蓄尿忘れがあれば必ず伝えてください。正直に言ってくれないと薬が効か
なくなる恐れがあります」と指導する。
血清Cr値が0.6mg/dL未満の高齢フレイル症例の腎機能推算式の血清Cr値として0.6mg/dL
を代入すると予測性が高くなることが多い。ただし自分の目で症例の体格を確認すること。ま
れに痩せているがフレイルではなく活動的な症例の場合、腎機能がよい可能性がある。
60歳以下の腎機能正常者で全身炎症(SIRS)により ICU管理下で血管作動薬・輸液の投与を
受けている患者では eGFR が 150~160mL/min/1.73m2に上昇することがある。これは過大腎
クリアランス(ARC)により腎機能が高くなっており、血清 Cr 値は 0.6 未満になることもあるが、
腎機能推算式や 0.6mg/dL を代入するラウンドアップ法を使わず実測 CCr の測定による腎機
能の正確な把握が望まれる。
ST 合剤、シメチジン、コビシスタットは尿細管における Cr の尿細管分泌を阻害するため腎機
能の悪化がなくても血清 Cr値がわずかに上昇する。
軽度~中等度腎機能低下症例にはシスタチン Cによる eGFRcys も推奨される。
上記の記載は腎機能低下患者にハイリスク薬を投与するとき、あるいは腎機能低下に伴いハ
イリスク薬になる薬を投与するときに考慮すべきものである。安全性の高い薬物では患者の
腎機能に CCrEnzを用いても大きな問題はない。
① ネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症や糖尿病患者では Cr の尿細管分泌が増加し、腎機能を過大評
価してしまう。
② 高齢者の eCCrEnzに 0.789 をかけない。 eCCrEnzに 0.789をかけるのは若年者のみである。
eGFRcreat: Cr を基にした eGFR, eGFRcys: シスタチン C を基にした eGFR, CCrJaffe: Jaffe法によって測定した
CCr, CCrEnz: 酵素法によって測定した CCr
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附則
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はじめに
腎機能の見誤りによって腎排泄性経口抗凝固薬による出血死、腎排泄性抗がん薬による骨髄抑制による敗血症死など、重篤
な有害反応が現れることがあります。あるいは腎毒性のある抗菌薬の過量投与によって腎機能が急激に悪化し透析導入になる
こともあります。腎機能の正しい見積もりは中毒性副作用によって死に結びつく腎排泄性ハイリスク薬の投与設計はもちろん、
高度腎機能低下患者・末期腎不全患者の中毒性副作用腎毒性の防止、あるいは「腎障害に禁忌」の腎機能を正しく判断する
際にも必ず身につけておきたいものです。
AUCで表す薬物の血中濃度は投与量が同じであれば総クリアランス(CLtotal)に依存します。
投与量=CLtotal×AUC
腎排泄型薬物のクリアランスは患者の腎機能、つまり GFR(mL/min)と相関します。すなわち GFR(mL/min)が低下すれば腎
排泄型薬物の血中濃度が上昇し、中毒性副作用が起こりやすくなります(図 1)。腎機能低下患者では腎機能が低いほど、また
は薬物(活性体)の尿中排泄率が高いほど、1 回投与量を減量するか投与間隔を延長する必要があります。そのため患者の腎
機能を正確に評価し、薬物の活性体の尿中排泄率を把握することは非常に重要です。
腎臓は 1 個 100~150g 程度と体重の 1%に満たないのに循環血(心拍出量 5L/min;7,200L/日)の 20%、つまり約 1,500L/
日の血流量があります。そのうち 10%が細動脈から成る糸球体で濾過されて、つまり約 150L/日の原尿が産生されます。そのう
ち 99%の水分、必要な栄養素を再吸収し、不必要な生体内物質を尿細管分泌して 1.5L/日の不要な濃縮尿を生産しています
(図 2)。
末期腎不全患者(GFR<15mL/min)
中等度腎機能低下患者(30-59mL/min)
高度腎機能低下患者(GFR15-29mL/min)
正常腎機能患者(60-100mL/min)血漿中濃度
投与量=CLtotal×AUC
AUC(min・mg/L)
時 間
図1. 腎排泄型薬物投与量が同じ時の腎機能に伴うAUCの変化
これは単回投与時の模式図だが、腎機能低下患者では連続投与によりピーク濃度も上昇する
図2.腎臓の機能
尿量1.5L/日
腎血流1500L/日
原尿150L/日(GFR)
99%の水が尿細管で再吸収
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時間当たりの原尿の産生速度が腎機能、すなわち糸球体濾過量(GFR: glomerular filtration rate)として表されます。つまり
150L/日≒6L/hr=100mL/min=GFR となり、GFR の正常値は 100mL/min です。イヌリンクリアランス(GFR)で用いるイヌリンは生
体内で代謝されず、タンパクと全く結合せず、完全に糸球体濾過され、尿細管で全く再吸収も分泌もされないため糸球体濾過
量の gold standard になります。チオ硫酸 Na や造影剤のイオヘキソールなどでもほぼ GFR に近い値が得られますが、クレアチ
ニン(Cr)は生体内物質のため、薬物を静注投与する必要がないのでより簡便に腎機能を測定できます。また Cr は産生速度が
一定で、代謝されることなく、タンパクと結合せず完全に糸球体濾過され、尿細管で再吸収されますが、わずかに尿細管分泌さ
れるため、GFR よりも 20~30%高めの値になります(図 3)。
古い論文や教科書では Cr は腎機能が悪化すればするほど尿細管分泌の寄与が増すと言われていましたが、実際にはその
寄与は小さく、腎機能が悪化すればゼロに収束するため、投与設計上、大きな問題にはなりません。しかし Cockcroft & Gault
(CG)式による推算 CCr は GFR より高値になるので 0.789倍し(若年者のみ)、 GFR として評価できます。
一般的に、簡易に腎機能を評価するには日本人向け GFR(糸球体濾過量)推算式が用いられます 1)。ただし通常、検査
箋に書かれている推算 GFR(eGFR)の単位は mL/min/1.73m2になっており、これは CKD の診断指標のために作られたもの
です(たとえば eGFRが 40mL/min/1.73m2であれば CKD ステージ G3b というように(図 4))。
図 4. CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012)
図3.イヌリンクリアランス(Cin)とクレアチニンクリアランス(CCr)の違い
イヌリン
体内で代謝されない:CLtotal=腎CL蛋白と結合しない
個人内では産生速度が一定体内で代謝されない:CLtotal=腎CL蛋白と結合しないため100%糸球体濾過され生理活性がない生体内物質
糸球体で100%濾過
尿細管で再吸収されない
尿細管で分泌されない
Cin正常値100mL/min
クレアチニン
糸球体で100%濾過
尿細管で再吸収されない
尿細管でわずかに分泌される
CCr正常値120~130 mL/min
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薬物投与設計に用いる腎機能は日本人向け GFR 推算式で体表面積補正を外したもの、あるいは CG 式を用いた推算
CCr を用います。
日本人向け GFR 推算式(18 歳以上の成人が対象であり、小児には適用できません)。
eGFR (mL/min/1.73m2)=194×Cr
-1.094×Age
-0.287×0.739(女性)
CG 式を用いると 2)
男性の推算 CCr(mL/min)=(140−年齢)×体重(kg)×0.85(女性の場合)
72×血清 Cr(mg/dL)
薬物投与設計には eGFR(mL/min/1.73m2)の体表面積補正を外すために、患者の体表面積を算出して補正を外し、eGFR
(mL/min)として評価する必要があります。また逆に実測 CCr(mL/min)は体表面積されていないので、日本の多くの病院の
検査室や検査センターでは CKD 診断指標にするため、患者の体表面積を算出して体表面積補正 CCr(mL/min/1.73m2)と
する慣習が今もなお残っています。これも薬物投与設計時には未補正値にする必要があるのと、0.715 倍すると GFR に換算
して評価できます 3)。
体表面積を算出する Du Boisの式 4)
BSA(m2)= 体重(kg)0.425
× 身長(cm)0.725 ×0.007184
体表面積未補正 eGFR は以下の式で求められます。
体表面積未補正 eGFR=体表面積補正 eGFR×BSA/1.73
引用文献
1)Matsuo S, Imai E, Horio M, Yasuda Y, Tomita K, Nitta K, et al: Revised equations for estimated GFR from serum creatinine
in Japan. Am J Kidney Dis 2009; 53: 982-992.
2)Cockcroft DW, Gault MH: Prediction of creatinine clearance from serum creatinine. Nephron 16: 31-41, 1976
3)日本腎臓学会編: 腎機能の評価:成人. CKD 診療ガイド 2012, P1-4 東京医学社, 東京, 2012
4)Du Bois D, Du Bois EF; A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known. Nutrition 5:
303-313, 1916
ただし以下の2項目は予測式の元になる血清Cr値に影響しますので、覚えておいてください。
① 血清Cr値には10%程度の日内変動があり(朝が高い)、0.1mg/dLの差が推算値ではCCrやGFRで10mL/min前後の差にな
ることがある(特に血清Cr値が低いときに推算値の差が大きくなる)。
② 血清Cr値は肉の大量摂取時には上昇し、蛋白摂取制限時には低下する。
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eGFR, CCr で単位が mL/min/1.73m2になったものは CKD の重症度分類に用いる診断指標として用いるものであり、実際に
腎機能を表していないため、これを用いて薬用量を決めるには問題があります。薬物投与設計には eGFR(mL/min/1.73m2)は
標準体型の男性以外では使えません。Du Bois の式を使って体表面積を求めたうえで体表面積を外した eGFR(mL/min)を使
います。
体表面積(BSA)算出式(Du Bois式)1)
BSA(m2)=体重(kg)0.425×身長(cm)0.725×0.007184
体表面積未補正 eGFR 算出式
eGFR(mL/min)=eGFR(mL/min/1.73m2)×BSA/1.73m2
eGFR や CCr を薬物投与設計に用いる場合で、推奨用量が体格にかかわらず固定用量が定められている薬物については、
体表面積の補正はしない腎機能(mL/min)を用いるのが鉄則です。
体表面積未補正 eGFR(mL/min/1.73m2)は、「体表面積がもしも 1.73m
2 であったなら」という仮の値です。1.73m2 は身長
170cm、体重 63kg に相当しますが、高齢女性ではこんな身長・体重の方はほとんどいません。したがって平均的な体格の男性
患者以外では eGFR補正値(mL/min/1.73m2)を用いて投与設計をしてはいけないのです。ちなみに身長 160cm、体重 70kgの
人、身長 180cm、体重 57kg の人も 1.73m2と計算されます。
CKD の重症度分類に体表面積補正値を用いる理由は、小柄な体格の方は体格なりの小さな GFRで十分なのに、体表面積
未補正値を用いると腎機能を過小評価して CKD患者になってしまったり、あるいはより重症の CKDに分類されてしまうことを防
ぐためです。かつては日本人の体表面積は 1.49m2が用いられていましたが、国際的に 1.73m
2が用いられるようになったため、
1.73m2 が採用されたのだと思います。一般的な日本の入院患者さんを想定すると 1.49m
2 の方が妥当かもしれません。eGFR
(mL/min)は体表面積補正がされていない、患者さんの腎機能そのものを表します。腎機能が低ければ腎排泄性の薬物は減
量しなければなりません。ですから薬物投与設計に用いることができます。
ただし eGFR(mL/min)や推算 CCr(mL/min)にはもともと体重が変数に含まれています。そのため抗菌薬・抗がん薬などで推
鉄則 1
eGFRcreat、 CCr で mL/min/1.73m2 は薬物投与設計に使わない。mL/min を使う
が、抗菌薬・抗がん薬などで投与量が mg/kg や mg/m2 となっている場合には
mL/min/1.73m2を使う。
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奨投与量がmg/kg(アミノグリコシド系抗菌薬のように薬物により理想体重を入力すべきものもあります)やmg/m2で規定されてい
る薬物用量の場合に、たとえば体重が小さい症例で eGFR(mL/min)や推算 CCr(mL/min)を用いると体表面積と腎機能の両方
で減量してしまうことになります。そのため投与量がmg/kgやmg/m2で表されている場合には例外的に血清クレアチニン値によ
って求められた eGFRcreat(mL/min/1.73m2)または CCr(mL/min/1.73m
2)を用います。
引用文献
1) 1)Du Bois D, Du Bois EF; A formula to estimate the approximate surface area if height and weight be known. Nutrition
1916; 5: 303-313.
CCrJaffeとは Jaffe 法によって測定した Cr 値を基に実測した CCr または Cockcroft-Gault 法によって算出した推算 CCr と定義
させていただきます。添付文書に示される腎機能表記は GFRではなく CCrで記載されることがほとんどですが、ほとんどの医薬
品の治験が欧米で行われていた多くの添付文書に記載されている腎機能は CCr≒GFR と考えて構いません。なぜならわが国
の血清 Cr値は正確な酵素法によって測定されているのに対し、欧米の血清 Cr値は 0.2mg/dL高めに測定される Jaffe法(この
方法では血清に含まれるピルビン酸、アスコルビン酸などにも反応するので、やや高値になる)によって測定されているためで
す。尿中にはピルビン酸などが含まれていないので Jaffe法による Cr濃度は酵素法と同じ値で血清 Cr値のみ 20~30%高めの
値になっているため、実測 CCr を測定するための以下の式は
実測 CCr(mL/min)=尿中 Cr 濃度(mg/dL)×尿量(L/日)/血清 Cr 濃度(mg/dL)となり
健常成年男子で酵素法で測定したとして、1 例を示すと
80mg/dL×1.5L/日/1.0 mg/dL =120mL/min となります。
ただし Jaffe法では血清 Cr値のみ 0.2mg/dL高く測定されるので、蓄尿による実測 CCr=GFRの 1.2~1.3倍=(尿中 Cr濃度
×尿量/分)/(血清 Cr 濃度×1.2~1.3 倍)になるため、Jaffe 法では蓄尿による実測 CCr≒GFR になります。先ほどの男性の実測
CCr は Jaffe 法では
80mg/dL×1.5L/日/(1.0+0.2) mg/dL =100mL/min≒GFR
したがって、ほとんどの添付文書の記載でCCrになっていてもGFRとして扱うべきです。ただし新しい薬物で日本でのみ治験
された薬物や2011年以降、IDMSに準じた正確なCr測定法に変更後の米国・カナダで治験された薬物に関しては、添付文書に
GFRで記載されていれば他の添付文書と同様に扱ってよいのですが、CCrで記載されている場合の正常値は100mL/minでは
なく120~130 mL/minと1.2~1.3倍にするべきです。そしてCrの測定法によって腎機能の解釈が異なるようでは抗がん薬や抗凝
固薬などのハイリスク薬を正確に投与設計できません。そのため今後の添付文書の腎機能表記は正常値が100mL/minと血清
Cr測定法による差がないGFR(mL/min)で統一すべきだと考えます。
がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016にはCockcroft-Gault法が紹介されており、以下の式で表されています。推算
CCr (mL/分)=(140-年齢)×体重(kg) ÷{72×血清Cr(mg/dL)} (女性はこの式に0.85を乗ずる)
そして「血清 Cr値は Jaffe法で測定された値を用いるが、酵素法で測定された Cr値には、0.2を加える」となっています。もち
ろん日本は全施設で酵素法によって測定されており、Jaffe法は使われていませんが、この記載はダビガトランや TS-1の副作用
が日本では起こっているのに、全く同じ記載をしている欧米の添付文書では副作用が起こっていない問題点を解決するための
妙案だと思います。日本腎臓学会に敬意をもって拍手を送りたいです。
CG 式では 1 年に約 1mL/min ずつ低下しますが、実は平均的な日本人の腎機能は加齢によってそんなには低下しないこと
が分かりました(図 5、グリーンで示す線)。この図で注目していただきたいのはもともと腎機能の低い患者では加齢に伴い腎機
能が悪化しやすいということです(図 5、赤色で示す線)。入退院を繰り返している症例はこのような脆弱なフレイル症例に多いと
鉄則 3
CG式による推算 CCrEnzは薬物投与設計には原則として用いないが、血清 Cr値の
低い痩せた患者にeGFRcreat推算式を使うと過大評価してしまう。そのため後期高
齢者やがん末期などのフレイル症例には eGFRcreatよりもCG式による推算CCrEnz
が適していることがある。
鉄則 2
までの添付文書の腎機能として記載されている CCr はほとんど Jaffe 法によ今
る血清 Cr 値測定による。CCrJaffeは GFR と近似するため、薬物投与設計時の患
者の腎機能は酵素法による CCrenzは用いず eGFR(mL/min)を使うか、CG 式の
血清 Crに患者の(血清 CrEnz+0.2)を代入して求めた推算 CCrを使う。
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考えられます。eGFR(mL/min)は推算CCrに比し、身長が考慮されているため、一般的にはより正確に腎機能を把握できます。
しかし痩せた栄養不良の高齢のフレイル症例では eGFR(mL/min)、eGFR(mL/min/1.73m2)はともに腎機能を過大評価しやす
くなります。一方、推算 CCr は加齢とともに腎機能を過小評価する傾向があるため(附則 2 の図 9 を参照)、痩せた高齢者では
eGFRよりも予測精度は高くなることがあります。一方、若年者ではCG式による推算CCrはGFRより高値になるので0.789倍し、
GFR として評価します。
院内感染症などの栄養状態が不良の特殊な症例を除けば、薬物の投与設計では eGFRの方がCG式よりも優れていますが、
入院している高齢者はやはり生理機能が低下している脆弱な状態であるため、通常の高齢者よりも腎機能は低めになりやすい
ことも考慮しておきましょう。
図5. 加齢に伴う腎機能(GFR)低下のシミュレーション
(Imai E at el. Hypertens Res 31:433-441,2008 より引用;この図はCKD診療ガイド2012より引用)
CG 式は薬物投与設計に使えますが、計算式に必要なデータは血清 Cr 値、年齢、体重、性別だけです。身長が考慮されて
いないため、肥満患者で体重が 2倍になれば腎機能も 2倍に推算される欠点があります(図 6)。そのため肥満患者では理想体
重を用いる必要があります。体表面積未補正 eGFR(mL/min)では身長体重が考慮されているため、そのまま使用しても構いま
せんが、CG 法による推算 CCr では理想体重を使用します。
理想体重(男性)=50+{2.3×(身長−152.4)}/2.54
理想体重(女性)=45+{2.3×(身長−152.4)}/2.54
ややこしい式ですので、標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22 でも構いません。
eGFR(mL/min/1.73m2)算出に必要なデータは CG 式に比しさらに少なく、血清 Cr 値、年齢、性別だけです。体重も入ってい
ないということは、体が大きい人でも小さい人でも同じ腎機能に推算されるため(図 6)、薬物投与設計には使えないことが理解
できます。このように体格補正されていないため、薬物投与設計では eGFR(mL/min)を用いるべきなのです。この式は肥満の
影響も受けないため CG 式よりも正確度が高いですが、痩せた高齢者では高く推算されることが欠点です。
鉄則 4
肥満患者の推算 CCr算出のための体重は理想体重または標準体重を用いる。
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CG式による推算CCrも eGFRも血清Cr値を基にした予測式です。血清Cr値に影響を与えるものの中に栄養状態(筋肉量)、
筋肉疾患、食事摂取内容、薬剤の併用による相互作用などが考えられます。高齢者で血清 Crが低値であるということは腎機能
が非常に良いというよりも、ほとんどの場合、筋肉量が少ない栄養状態が不良の患者、つまりフレイル症例と考えてよいでしょう。
栄養状態の不良な患者あるいは筋肉量の少ない患者では血清 Cr 値は低値です。血清 Cr 値の基準値は男性で 0.6~
1.2mg/dL、女性で 0.4~1.0mg/dLで、男女差があります。Crは筋肉を構成しているクレアチンの最終代謝産物ですから、筋肉量
の少ない人では血清 Cr 値が低いため、これらの推算式では腎機能がよいと推算されてしまいます。一般的には長期臥床の高
齢者がこれにあたります。痩せた高齢者の eGFRが 150mL/minだったからと言って、健常青年よりも腎機能がよいなんて判断は
しないでください。
その他に筋ジストロフィーなどの筋肉の委縮する疾患では 0.1mg/dL 以下の顕著な低下を示すため、eGFR が 1,000mL/min
などの健常者の 10 倍くらいの値になることもありますが、これもあり得ないことです。これらの患者で腎機能を正確に把握する必
要があるときには蓄尿 CCr またはイヌリンクリアランスを測定する必要があります。あるいはシスタチン C を測定し eGFRcys によ
って判断するのもよい方法です(後述)。
栄養状態が悪く痩せた長期臥床高齢者では筋肉量が少ないため、eGFR、推算 CCrがともに高く見積もられる症例が多くあり
ます。このような症例に対しては蓄尿による実測CCr×0.715をGFRとして投与設計するとよいでしょう。ただし高齢男性では前立
腺肥大による排尿困難患者が多いため、短時間畜尿は適していません。24 時間蓄尿が推奨されます。
蓄尿し忘れると腎機能を過小評価してしまいます。「絶対に蓄尿を忘れてはいけませんよ」と言われれば「忘れると怒られる」と
いう心理が働きます。「蓄尿を忘れないほうがよいのですが、忘れることはよくあります。もしも忘れたら正直におっしゃって下さい。
もしも正直に言ってくれなかったら、腎機能が悪いとみなされ、薬の量が減ります。そうするとあなたの飲んでいる薬が効かなくな
る恐れがあります」というように説明しましょう。
体 重(kg)
図6.体重と推算CCr、eGFRの関係85歳女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合
30 40 50 60 70 80
30
40
50
30
40
50
ダビガトランやTS-1の禁忌領域
eGFR(mL/min/1.73m2)
eGFR(mL/min)
CG式による
推算CCr(mL/min)
鉄則 5
高齢者のフレイルなど、腎機能予測式では正確な評価ができない症例には 24 時
間畜尿による実測CCrenz×0.715によりGFRとして評価すると正確な腎機能が得ら
れる。畜尿 CCr は畜尿忘れがないよう「畜尿忘れがあれば必ず伝えてください。正
直に言ってくれないと薬が効かなくなる恐れがあります」と指導する。
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9
GFR は推算式を用いる場合、血清 Cr 値をもとに算出しています。Cr は同一個人では産生速度が一定で、タンパクと全く結合していないた
め 100%糸球体濾過され、まったく再吸収されないため腎機能を反映しやすい生体内物質です。ただし尿細管からわずかに分泌されるのが
やや欠点です。血清 Cr 値は 0.6 から 0.9mg/dLに上昇しても正常値範囲内で腎機能を判断しにくいため eGFR(正常値 100mL/min/1.73m2)
で表すと 90 から 60mL/min/1.73m2と 30%も低下していることがわかるため、eGFR は腎機能を評価するのに分かりやすいですね。
ただし Crは筋肉を作っているクレアチンの最終代謝産物であるため筋肉量が少ないと eGFRが高く推算されてしまうのが大きな欠点です。
ですから長期臥床高齢者で筋肉量が少ない患者さんでは 90 歳なのに 150mL/min/1.73m2のような正常値以上に推算されることがあります。
腎機能は加齢とともに低下するためこれはあり得ません。
このような患者さん(血清 Crが 0.3mg/dLなどのように低値)だけでなく、筋ジストロフィーの患者さん(血清 Crが 0.2mg/dl以下になることもあり
ます)では eGFRが 500~1000mL/min/1.73m2などに過大評価されますが、これは「腎機能がよい」のではなく「筋肉量が少ない」ことを表してい
ます。
このような症例では科学的ではありませんが、具体的な対応として臨床現場では血清 Cr値が 0.6mg/dL未満の症例に対して
0.6を代入して推算式を使うと、腎機能の予測精度が上がると言われており、ラウンドアップ(round up)法と言います。またその他
の具体的な対応としてはカルボプラチンの投与設計で推奨されている eGFRが高値に計算されていても上限を 125mL/minとす
るキャッピング(Capping)法もあります。
高齢長期臥床患者では eGFR が正常値よりも高くなることがありますが、高齢者なのに腎機能が正常より高いはずはありませ
ん。この様な症例では筋肉量が低下しているため推算式では正しく推算されません。医療従事者自身の目で患者の体格を確
認しましょう。中には毎日、元気に農作業に出ているけれども痩せている高齢者もいますし、このような患者では痩せていても筋
肉量は長期臥床患者と比べて多いと考えられます。このように痩せた高齢者に対し、重要な腎排泄薬物(MRSA 感染症時のバ
ンコマイシン、がん患者におけるカルボプラチンやティーエスワンⓇ、ダビガトランなど)を投与する場合には、24 時間蓄尿により
実測 CCr を算出し、0.715 倍して GFR として評価するか、シスタチン Cによって eGFRcysを算出する必要があります。
鉄則 6
血清Cr値が 0.6mg/dL未満の高齢フレイル症例の腎機能推算式の血清Cr値として
0.6mg/dL を代入すると予測性が高くなることが多い。ただし自分の目で症例の体格
を確認すること。まれに痩せているがフレイルではなく活動的な症例の場合、腎機能
がよい可能性がある。
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10
若年の腎機能正常者で血管作動薬や輸液が投与されている全身性炎症反応症候群(SIRS)の患者(多くは ICU の症例)で
は血清 Cr 値が 0.3~0.5mg/dL に低下した場合、筋肉量が少ないのではなく腎機能が上昇していることがあります。60 歳以下の
若年者で腎障害のない感染症が引き起こす SIRSの病態下では心拍出量増加・血管拡張や腎血流増加により過大腎クリアラン
ス(ARC: Augmented Renal Clearance)が発現し通常 100mL/min/1.73m2の GFRが 150~160mL/min/1.73m2に上昇し、
抗菌薬の大量投与を行わないと十分な効果が得られないことがあります。この場合、eGFR や推算 CCr は腎機能を過小
評価するため、蓄尿による実測CCrによる腎機能の正確な把握が推奨されます 1)。ましてや 0.6mg/dLを代入するラウン
ドアップ法は行うべきではありません。ARC のリスク因子は①年齢(60 歳以下)、②敗血症、③外傷・手術、④外傷性脳損傷、
⑤熱傷、⑥低アルブミン血症、⑦血液がんなどが提言されています(図 7)2)。
引用文献
1)Baptista JP, et al: A comparison of estimates of glomerular filtration in critically ill patients with augmented renal
clearance. Crit Care 2011; 15: R139.
2)Udy AA, et al: ARC--augmented renal clearance. Curr Pharm Biotechnol 12: 2020-2029, 2011
鉄則 7(病院薬剤師用)
60歳以下の腎機能正常者で全身炎症(SIRS)により ICU管理下で血管作動薬・輸液
の投与を受けている患者では eGFRが150~160mL/min/1.73m2に上昇することがあ
る。これは過大腎クリアランス(ARC)により腎機能が高くなっており、血清Cr値は 0.6
未満になることもあるが、腎機能推算式や 0.6mg/dL を代入するラウンドアップ法を
使わず実測 CCrの測定による腎機能の正確な把握が望まれる。
鉄則 8
ST合剤、シメチジン、コビシスタットは尿細管におけるCrの尿細管分泌を阻害するた
め腎機能の悪化がなくても血清 Cr値がわずかに上昇する。
図.ARCのメカニズム
炎症 熱傷感染
膵炎 手術
血管作動薬輸液
腎血流↑
GFR↑
ARC
心拍出量↑
SIRS
血管拡張
腎予備力
抗菌薬クリアランスの増加
ARCのリスク因子
年齢(50歳以下)敗血症外傷・手術外傷性脳損傷
熱傷低アルブミン血症
血液がん
図7.ARCのメカニズム
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11
ST 合剤中のトリメトプリム、シメチジンは Crのmultidrug and toxin extrusion(MATE)1およびMATE2-Kという有機カチオ
ン/H+交換輸送体(以前は有機カチオントランスポータと言われていました)を介した尿細管分泌を競合阻害することにより、腎
機能が悪化していなくても血清 Cr 値が軽度上昇することがあります。 ただしトリメトプリム、シメチジンともにアレルギー性の間質性腎炎の原因薬物になる可能性があることに留意しておくこと、また
ST 合剤は十分な輸液を行わないと遠位尿細管や集合管で結晶が析出して腎後性腎障害を起こしやすいことに留意する必要
があります。最近、HIV 感染症治療薬スタルピリドⓇ配合錠に含有されているコビシスタットも同様の機序で血清 Cr 値が軽度上
昇することがあることが明らかになりました。
このような薬剤が投与されている場合は GFR 推算式や CG 式による CCr などの予測式を用いることはできませんが蓄尿 CCr
では GFRに近い値が得られる可能性があり、シスタチン Cを用いると何の影響もなく腎機能を正しく評価できます。
シスタチン Cは全身の細胞から一定のスピードで産生され、100%糸球体濾過されるの
で、筋肉量が異常な患者さんの腎機能を正しく評価できます。平田が理事長をやってい
る日本腎臓病薬物療法学会の HP ではシスタチン C から推算 GFR を簡単に求めること
ができます(図 8)。
シスタチン C は最近、薬剤師国家試験にも出題されるようになりました。痩せた患者さん
の腎機能を推算するには最適な検査値になります。
図 8.日本腎臓病薬物療法学会の eGFR・CCr の計算
栄養状態が不良の症例では血清Cr値が低いのだから少なくとも腎機能が極度に悪いということは考えられません。このように
加齢に伴い若干、腎機能が低下しているかもしれないという時に有用なのがシスタチン C です。シスタチン C は house-keeping
gene をコードしているため、炎症などの細胞外の影響を受けにくく、全身の有核細胞から一定の割合で産生されるタンパク質で、
広く生体内体液に存在しています。分子量が 13,250Da であり、細胞外液中のシスタチン C は全くタンパクと結合せず、すべて
糸球体で濾過され、濾過後はほとんどが近位尿細管で再吸収され、アミノ酸に分解されるため、血中には戻りません。血中濃度
はGFRに依存し、血清Cr値に比し、食事や筋肉量、性差、運動、年齢差の影響を受けず、軽度の腎機能の低下に反応して血
清シスタチン C の濃度が上昇します 1)。そのため、Cr は GFR が 30~40mL/min 前後まで低下しないと上昇しないのに対し、
GFRで 60~70mL/minの早期の腎障害の進行度を判断できるのが特徴です(図 9)。
シスタチン C は保険適応の関係上、3 カ月に 1 回しか測定できませんが、腎機能が安定している症例では、以後は血清 Cr
濃度変化を基に予測するなどの工夫が必要です。しかしシスタチン C の血中濃度は腎機能が低下すると頭打ちになることが分
かっており、末期腎不全では腎機能を正確に反映できないため、血清 Cr 値が 2mg/dL 以上になればシスタチン C の測定意義
は低くなり血清 Cr 値のみで腎機能を評価するのがよいでしょう。
0
5
10
15
0 30 60 90 120
血清中濃度(
mg/d
Lもしくは
mg/L)
GFR (mL/min/1.73m2)
血清シスタチンC濃度(mg/L)
血清クレアチニン値(mg/dL)
血清Cr値のブラインド領域
図9. 血清シスタチンCと血清クレアチニン値の反応性
鉄則 9
軽度~中等度腎機能低下症例にはシスタチン Cによる eGFRcys も推奨される。
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シスタチン Cの問題点
シスタチン C に関しては、ステロイド、シクロスポリンなどの薬剤の使用や甲状腺機能低下症で、高値に測定されることを念頭
に置く必要があります。シスタチン C の測定キットは当初、メーカーによってそれぞれ異なる社内標準品を基準にしていたため、
メーカー間で測定値に差が出るのが問題でした。しかし 2010年以降、認証標準物質DA471/IFCCができたため、メーカー間の
測定誤差がなくなってきています。CKD 診療ガイド 2012 では Horio ら 2)および小児に関しては Uemura ら 3)が新たに開発し
たシスタチン Cによる新しい日本人向け GFR 推算式が掲載されているので、以下に紹介します。
日本人の GFR cys推算式(mL/min/1.73m2)
男性:(104×シスタチン C-1.019
×0.996Age)-8
女性:(104×シスタチン C-1.019
×0.996Age
×0.929)-8
小児:104.1/シスタチン C-7.80
体表面積補正をしない eGFRcys=eGFRcys×(体表面積/1.73)
引用文献
1) Grubb AO: Cystatin C-properties and use as diagnostic marker. Adv Clin Chem 35: 63-99, 2000
2) Horio M, et al: GFR estimation using standardized serum cystatin C in Japan. Am J Kidney Dis 61: 197-203, 2013
3) Uemura O, et al: Cystatin C-based equation for estimating glomerular filtration rate in Japanese children and adolescents. Clin
Exp Nephrol 18: 718-725, 2014
セフェム系やペニシリン系の抗菌薬、あるいはフェキソフェナジンなど安全性の高い薬物は多くあります。このような薬物では
腎機能低下患者で血中濃度が上昇する薬物であっても、腎機能として eGFRを用いてもCCrを用いてもどちらでも構いません。
腎機能が悪くなれば確実に血清 Cr 値は上昇し、eGFR も CCr もゼロに収束するため、腎機能の見積もりミスも少なくなります。
しかし経口抗凝固薬であるダビガトランや抗がん薬のカルボプラチン、TS-1 などでは厳密な投与設計が必要ですので、でき
る限り上記の鉄則を守ってください。また高齢のフレイル症例が日和見感染症に罹患した場合、1 回目の抗菌薬治療が失敗す
れば二の矢が継げないことになってしまいます。特に尿中排泄率 90%と高いバンコマイシンの投与設計は腎機能低下に伴い
難しくなります。このような時にも腎機能を正確に見積もるよう気を付けましょう。
ネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症では Crの尿細管分泌が増加し、腎機能を過大評価する程度が大きくな
ります。ただし総タンパク濃度との相関性は低いです 1)。また同様の現象が糖尿病でも報告されており、血糖コントロール
が不良な糖尿病患者では Crの尿細管分泌が増加して腎機能を高く見積もることがあることが報告されています 2)。
引用文献
1) Branten AJ, Vervoort G, Wetzels JF: Serum creatinine is a poor marker of GFR in nephrotic syndrome. Nephrol Dial
Transplant 20:707-711, 2005
2) Nakatani S,et al: Poor glycemic control and decreased renal function are associated with increased intrarenal RAS
activity in Type 2 diabetes mellitus. Diabetes Res Clin Pract 105: 40-46, 2014
鉄則 10
上記の記載は腎機能低下患者にハイリスク薬を投与するとき、あるいは腎機能
低下に伴いハイリスク薬になる薬を投与するときに考慮すべきものである。安全
性の高い薬物では患者の腎機能に CCrenzを用いても大きな問題はない。
附則 1
ネフローゼ症候群などによる低アルブミン血症や糖尿病ではCrの尿
細管分泌が増加し、腎機能を過大評価してしまう。
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腎機能が加齢による影響を受けやすい、つまり若年者では高く(GFR よりも CCr が高いのは当たり前ですからこれは問題あり
ません)、後期高齢者では低い(CG式では 1年に約 1mL/minずつ低下しますが、実は平均的な日本人の腎機能は加齢によっ
てそんなには低下しないことが分かっています; 図 110)という特性を持っていることを理解する必要があります。若年者では推
算CCrは腎機能を過大評価してしまうので、0.789倍してGFRとして評価する必要があります。高齢者では腎機能を過小評価し
がちですので 0.789 をかけるべきではありません。実際には入退院を繰り返す高齢のフレイル症例は、健康で入院しない高齢
者と異なり腎機能が低下していることが多いと考えられます。このような脆弱な患者さんには CG式による推算 CCrの方が eGFR
よりも適していると言えるかもしれません。
附則 2
高齢者の eCCrEnzには 0.789 をかけない。 eCCrEnzに 0.789をかける
のは若年者のみである。
年 齢
図10.年齢とeCCr、eGFRの関係体重40kgの女性血清Cr値1.0mg/dL、身長150cmの場合
30 40 50 60 70 80
30
40
50
30
40
50
ダビガトランやTS-1の禁忌領域
eGFR(mL/min/1.73m2)
eGFR(mL/min)
CG式による
推算CCr(mL/min)
20
サービスサイエンスのための モデリング・シミュレーション ...nama/SSR/18/doc/SSR2006FinalReport.pdfサービスサイエンスのための モデリング・シミュレーション技術
初めての方でも安心! 初心者のための聖餐式ガイド …oita-seikokai.la.coocan.jp/holyeucharist.pdf-0 - 初めての方でも安心!初心者のための聖餐式ガイドナビ