金融論 1/3 - 午後
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金融論 1/3 – 午後
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金融論 谷川孝美先生(日本大学商学部)
2011/08/15 午後
13:00~
【利子率(金利)とはなにか】
○貯蓄の決定
貯蓄=現在の所得―現在の消費
① 貯蓄
利子率(金利)による所得の増加
② 時間選好率
将来の効用(満足)と比較して
現在の効用(満足)をどれだけ選好するか
① と②の関係で貯蓄が決定される
イ. 現在1万円貰える
ロ. 1年後に1万円+1千円貰える
// クラスで挙手したところ、イが 2割くらい、ロが 7割くらい
イ‘. 現在1万円貰える
ロ‘. 1年後に1万円+100円貰える
// クラスで挙手したところ、イが9割くらい、ロが1割くらい
現在の1万円::将来の1万円+利息 (どちらを選ぶか=時間選好率の高さによる)
【金利の種類】
○単利と複利
利息を元本に組み入れるか、否か
○単利=元本×(1+期間×金利)
○複利=元本×(1+金利)×(1+金利)×・・・ 期間の回数の掛け算
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【単利と複利の計算】
○元本100万円 金利10% 10年間
単利の場合
100万円×(1+10(年)×0.1)
=200万円
複利の場合
100万円×(1+0.1)×(1+0.1)・・・(10回)
=259.4万円
【72の法則】
○元本が2倍になる年数をカンタンにする方法(近似値なので誤差がある)
72÷金利%=元本が2倍になる年数
○金利が10%ならば、7年ぐらい
【実質金利(利子率)と名目金利】
○実質金利・・・物価を考慮したもの
※実際にどれだけ財・サービスを購入できるのか(貨幣の購買力)を考える
実質金利(利子率)=名目金利(利子率)-予想インフレ率
○ゼロ金利政策とデフレーションの問題
名目金利10%
100万円×10(%)=10万円(利息) ・・・ 110万円
どれだけ物が買えるか(購買力) 金利を下げる・・・金融緩和政策(最大:ゼロ金利)
自動車1台=100万円 → 20%(1年後) 自動車は120万円にならない。
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実質金利=名目金利―予想インフレ率
(0%) - or + (デフレも考えないといけない)
名目金利0%の時、100万円を借りたら1年後は100万円を返せばいい。
自動車1台100万であった。デフレ下である。 → 1台90万円になった。
それでも100万円の返済
// 物価と価格を同じに考えている方、、、正直に答えてください・・・0人
違うと思う方・・・8割くらい。あと2割は?
物価:財やサービス 価格は相対比(例 A:B)
↓ ↓
物価が上がると、貨幣量が下がる
物価が下がると、貨幣量が上がる
インフレが起きると、貨幣量が上がっていく。(貨幣価値が減少)(財・サービスの価値は上昇)
デフレが起きると、貨幣量が上がっていく。(貨幣価値が上昇)(財・サービスの価値は低下)
【利子率の決定要因】
○安全性・・・信用リスク、リスクプレミアム
○市場性(換金性)・・・流動性
○資金の規模
大口定期預金と小口定期預金どちらの金利が高いか
○期間
リスク高=リスクプレミアム(格付け機関の影響あり)
100%安全資産に対する1%の金利 = 元本+利息=1年後 1.01
50%安全資産に対する1%の金利 =1+0.005=1年後 1.005
↓
1%×2=2%の金利で貸し出せば実際には1% Even となる
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【金利の期間構造】
○金利の期間構造
満期までの残存期間と金利の関係
※期間構造が安定的であるならば、短期金利の操作により長期金利に影響を与えることができる(金
融政策)
※イールドカーブ yield curve
残存期間と利回りを結んでグラフにしたもの
図は野村総研・経営用語の基礎知識より
http://www.nri.co.jp/opinion/r_report/m_word/yield_curve.html
イールドカーブは、横軸に償還までの期間を、縦軸に債券の市場金利をとったグラフ。イールドスプレッドは、異なる債券の同一
期間での金利差。
イールドカーブは、債券市場で観察される金利の水準を、償還までの期間との関係で表したグラフのことで、利回り曲線とも
いいます。イールドカーブは、国債の金利を用いたものが一般的ですが、社債なども含めてみると、信用リスクが異なることによ
る金利差が生じます。こうした異なる債券間の同一期間での金利差をイールドスプレッドといいます。
金利観を映すイールドカーブ
償還までの年月が長くなるほど金利が高くなる、つまり右肩上がりの場合のイールドカーブを、順イールドといい、反対に右肩
下がりの場合、逆イールドといいます。信用度が高く取引量が豊富な国債について見ると、市場参加者が将来の短期金利
上昇を予想している場合は順イールドに、低下を予想している場合は逆イールドになります。この傾向を利用して逆算した市
場参加者の予想する将来の短期金利のことを、インプライド・フォワード・レートといいます。
中央銀行の金融政策が引き締め気味の場合は、逆イールドになる傾向があるなど、金融政策のスタンスを読む場合の参
考としても注目されます。
景況感を映すイールドスプレッド
債券の金利は、信用リスクが大きくなるほど高くなる傾向があり、この金利増加分を、信用リスクプレミアムといいます。同様
に、流動性が小さい(取引量が小さい)場合も金利が高くなる傾向があり、この金利増加分を流動性プレミアムといいます。
国債対比で見た社債のイールドスプレッドは、発行体の事業見通しが悪化して格付が低下するような場合に拡大します。ま
た、景気全体の見通しが悪化するような場合は、格付が同じでもスプレッドが拡大する傾向があります。このため、市場参加
者の、発行体企業の安定性に対する評価や、マクロ経済の景況感を表す指標として注目されます。
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① 流動性プレミアム仮説
満期までの期間が長ければ、流動性を失うので金利が高い(順イールドカーブ)
② 特定期間選好仮説
短期市場と長期市場ではそれぞれ別の需要供給の要因で決定される。貸し手は短期運用を好み、
借り手は長期資金を望むため、短期金利は低く、長期金利は高くなる、(順イールドカーブ)
企業 短期資金(短) 設備資金(長)
家計 (生活資金) 住宅購入
③ 期待理論(逆イールドカーブ)
裁定取引による。将来の金利上昇が予想される場合、イールドカーブは右上がりになり、金利低下
が予想される場合、右下がり(逆イールド)になる。
【期待理論(前提の確認)】
○裁定取引
金利差(価格差)を利用して利益を上げること
→ 裁定取引機会の消滅
○短期債権、長期債券のどちらももっていても予想収益は同じになる
A市場・金利5% B市場・金利10% C市場・金利5%の利益(金利差)
需要 供給
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【期待理論(事例)①】
○金利が上昇と予想(現在5%、未来6%)
期間1年(短期)の債権100万円を2年間運用
100万円×(1+0.5)=105万円
105万円×(1+0.6)=111.3万円
(111.3万円―100万円)÷100万円÷2(年間)×100=5.65%
同じ時点で期間1年間の債券は5%、期間2年の債券は5.65%の金利となる
(順イールドカーブ)
【期待理論(事例)②】
○金利が低下すると予想(現在5%、未来4%)
期間2年の債権100万円を2年間運用
100万×(1.05)×(1.04)=109.2万円
長期金利(期間2年)はいくらか?
短期2年間と同じものになるので 4.6%
(109.2万円―100万円)÷100万円÷2(年間)×100=4.6%
同じ時点で期間1年間の債券は5%、期間2年の債券は4.6%の金利となる。
(逆イールドカーブ)
金利
順イールド曲線
金融引締政策
金利の上昇が
予想される。
金利の低下が
予想される。
逆イールド曲線
時間
(14:30~14:35 休憩)
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14:35~
【利子率と債券価格の関係】
○コンソル債(公債)
満期が無く、利息のみ支払われる債券
○コンソル債の価格はいくらになるのか
→現在割引価格
将来のキャッシュ・フロー(利息)と等価である現在の価値
コンソル債の価格=毎年の利息÷金利
資金 期間 金額 金利
【コンソル債の価値】
○コンソル債→毎年受け取る利息A円
預金による金利 r %としよう。
債券価格を P とすると
1年後A円を現在の価値にすると A/(1+r)円
2年後A円を現在の価値にすると A/(1+r)^2円・・・
P=A/(1+r)+A/(1+r)^2+...
=A/r (等比数列の和)
※金利が高くなると → 債券価格が下がる
債券価格が上昇する → 金利が上昇する
P=債券価格
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コンソル債預金 1年後 2年 n年
A A A P
(1+r) (1+r)^2 (1+r)^n
P=A/(1+r)+A/(1+r)^2+...+A/(1+r)^n
(1+r)P=A+A/(1+r)+...+A/((1+r)^n-1)
-(1+r)P=A+A/((a+r)^n)
よって、rP=A P=A/r 「Aは一定、P大=r小」
「Aは一定、P小=r大」
【実質の長期金利の決定について】
○短期金利
無担保コール・オーバーナイト物
日本銀行の金融調整によって決定
○長期金利(長期国債の価格による)
長期資金需要供給による
※長期資金需要の上昇(投資の増加など)
→国債の売却(資金供給) 金利上昇
長期資金需要の成果
→国債の購入(資金吸収) 金利低下
【長期金利決定の実例】
債券から得られる利益→利回り
○利息収入(インカムゲイン) → 金利
○最近の売買価格差による売買差益
(キャピタルゲイン)
※利回り:投資の結果得られる利益について、元本に対する割合を年率で示したもの
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【国債の価格変動と利回りの関係1】
10年物国債(期間 10年)
額面金利 100円
表面金利2.0% (毎年2円の利息)
○国債価格が 100円の場合、運用利回り
元本:100円→100円
利息:毎年 2円
利回り:2円/100円×100=2%(年率)
○国債価格が 95円に値下がりしたときに購入
(投資額は 95円であることに注意、満期まで保有していることが条件)
元本:95円→100円 5円のキャピタルゲイン
年率 0.5円(10年で割るため)
利息:毎年 2円
利回り:2.5円/100円×100=2.63%(年率)
○国債価格が105円に値上がりしたときに購入
(投資額は105円であることに注意、満期まで保有していることが条件)
元本:105円→100円 5円のキャピタルロス
年率 0.5円の損失(10年で割るため)
利息:毎年 2円
利回り:1.5円/100円×100=1.43%(年率)
【債券価格と利回りの関係】
債券価格 利回り(長期金利)
低 価格 95円 2.63%
価格 200円 2.00%
価格 105円 1.43%
高
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【長期金利の変動要因】
○期待インフレ率・・・将来の物価返送の予想が高いインフレ予想→金利は上昇
利息が一定の債券は需要されず、価格が低下するため。
○期待潜在成長率
高い成長を予想 → 金利は上昇
津市需要が増加 = 長期資金需要の増加
○リスクプレミアム
将来の不確実性が認識される → プレミアムが拡大
// プレミアムを加えなければならない
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【銀行の役割と機能】
日本の金融組織の特徴
1・(中央銀行 / 日本銀行)
2・民間金融機関
3・政府系金融機関
銀行
公庫
ゆうちょ銀行は 2 と 3 の中間
【直接金融・間接金融・市場型間接金融】
○直接金融
(黒字主体)A → 市場 → B(赤字主体)
○間接金融(資産変換機能)
A → 金融機関 → B
相対取引 相対取引
○市場型間接金融
A → 金融機関 → 市場(社債) → 金融機関 → B
黒字主体 企業
市場を通じて資金が流れている
資金供給 ――― 資金需要 マネーフロー企業・家計:黒字
家計 ※ 企業 ↓
黒字主体 赤字主体 国債(国の借金・赤字)
(一般的な教科書に記載)
※小口であるが、短期、金融である3つを合せて、大数の三法則という。
ただし、マネーストックでは↑の図のまま。企業はマネーフローでは黒字であるがストックでは赤字である。
・・・近年の場合↑この状況が続いていることを正しく認識しなればならない。(また、国は赤字のまま)
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【相対取引と市場取引】
○相対取引
経済主体(企業、家計)が特定の金融機関や証券会社との間で個別に取引内容を決定する取引
(例)貸出市場など
○市場取引
不特定多数の参加者による競り合いを通じて価格(金利)や取引量が決定される取引
※取引される金融商品の質が一定。
取引条件などが規格化されている。
(例)譲渡性預金(CD)市場、CP、
TB(財務省短期証券/ Treasury bond , Treasury bill)など。
【市場取引の特徴】
ミクロ経済学における完全競争市場
① 売り手と買い手が小規模かつ多数
② 商品に関する情報の完全性
③ 取引される商品の同質性
④ 市場への参入、退出が自由
※市場では、需要と供給が均衡価格(金利)によって調整される。
企業 市場 家計
赤字 ↓ 黒字
需給―数 = 金利
利ザヤ 金融ビッグバンでは
銀行 銀行潰せと言われたが
実際は潰せなかったw
【金融仲介機関の存在理由】
① 貸し手、借り手が互いの欲求を満たす相手を探さなくても良い。
② 資産変換機能
資金不足主体が発行する本源的証券を資金余剰主体にとって、魅力的な貯蓄(投資)手段に
変換する。
※本源的証券とは、企業が発行する手形、借入証書(社債)などがあり、ハイリスク・ハイリターン
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【金融仲介機能の存在理由②】
③ 規模の経済性とリスク分散
大規模であるほうが、金融サービスを提供する単位あたりのコストが小さくなる。
銀行が大希望な資産を持つことで、投資リスクが分散される。
④ 銀行は、金融活動に伴う、情報の非対称性を低下させることができる。
中小企業への貸出など(中小企業金融)では重要となる。
16:05~16:15休憩
16:15~
// 情報の非対称について考えていきましょう。
【銀行のスクリーニング機能】
○事前と事後の情報の非対称性
貸し手と借り手の保有する情報の質や量が異なること(偏り)
○事前審査、信用調査(事前情報非対称性)
借り手が貸した資金を返済可能か調べる
→ 事前の情報生産機能(スクリーニング機能)
○モニタリング (監視)(事後情報の非対称性)
借り手が返済努力をしているかどうか
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【信用(貨幣)創造】
○銀行のみが持つ機能
資産変換機能や情報生産(情報の非対称性を低減させること)は他の金融機関でも可能。
信用創造機能
→決済手段の提供(預金通貨)
○貸出をする → 預金口座に振り込むこと
※現金を手渡すことは出来ない
企業 家計
大口、長期 銀行 小口、短期(普通)、預金
貸出金利 > 預金金利 (ここで利ザヤが生まれる)
預金を全員≠引出 (取り付け騒ぎw)ということにはならない。
何故なら
【支払準備】
○ 市中銀行が預金の支払いに備えて保有している預金および中央銀行預け金。(金利付かない)
○法定準備 (legal reserves)
所要準備額 (required reserves)
支払準備制度のもとで義務付けられている支払準備
○超過準備 (excess reserves)
市中銀行が保有している準備のうち、法定準備を超えて保有しているもの
※中央銀行の金融政策 準備率操作
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http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/reservereq/junbi.htm/
預金(a)についての準備率
銀行・長期信用銀行・外国為替銀行(f)、相互銀行(b)
信用金庫(相互銀行(b)・信用金庫の適用先:年度末残高 1,600億円超)
(単位:%)
'86/7/1実
施
'91/10/16実
施
指定勘定区分
額(c)
定期性預金
(譲渡性預金を含
む)
2兆 5,000億円
超
1.75 1.2
1兆 2,000億円
超
2兆 5,000億円
以下
1.375 0.9
5,000億円超
1兆 2,000億円
以下
0.125 0.05
500億円超
5,000億円以下
0.125 0.05
その他の預金 2兆 5,000億円
超
2.5 1.3
1兆 2,000億円
超
2兆 5,000億円
以下
2.5 1.3
5,000億円超
1兆 2,000億円
以下
1.875 0.8
500億円超
5,000億円以下
0.25 0.1
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【フィリップス(Phillips)の公式】
「フィリップスの公式 Phillips formula、フィリップス信用理論」
(Chester Arther Phillips,1882-1976)
○信用創造がどの程度の大きさになるのか?
○前提条件
1.預金を引き出さない(漏出率0)
2.当初の預金される現金通貨量を 100万円またはD.
3.支払準備率を10%または r とする。
∑D=D/(1-(1-r)(1-c)) = D/(r+c-rc)
銀行A 準備率10% ・・・ 90万円
銀行B 準備率10% ・・・ 81万円
銀行C 準備率10% ・・・ 72万9千円
↓
銀行D ・・・ ・・・
現金 - 日本銀行
預金 - 銀行
【信用(貨幣)創造】
○最初の預金をD、準備率rとした場合。
∑D=D+(1-r)D+(1-r)^2D+...+(1―r)^2D
預金の総額∑Dとすると、初項D 公比(1-r)の等比数列
∑D=D/r
何倍に増加した → 倍数 = 信用(貨幣)乗数
※信用創造が可能なのは、銀行の貸出金の大部分が預金であるため
→ 信用創造は貯蓄の先取りである