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治験 に係る 保険外併用療養費 解説 監修 楠岡英雄 独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 院長 豊島 聰 公益財団法人 日本薬剤師研修センター 理事長  & A

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Page 1: る 治験に係る 保険外併用療養費 A - jiho.co.jp · 治験に係る 保険外併用療養費 解説と 監修 監修 楠岡英雄 独立行政法人 国立病院機構

治験に係る保険外併用療養費解説と

監修

監修

楠岡英雄独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 院長

豊島 聰公益財団法人 日本薬剤師研修センター 理事長 

A&

治験に係る保険外併用療養費解説

楠岡英雄

豊島 聰

&

A

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保険給付 基本診療料 検査 画像

診断 投薬 注射 処置,手術,麻酔等

患者負担 基本診療料 検査 画像

診断 投薬 注射 処置,手術,麻酔等

保険給付

企業負担

【治験の場合】

【通常の診療の場合】

患者負担

基本診療料

基本診療料

検査 画像診断

投薬 注射

投薬 注射

処置,手術,麻酔等

処置,手術,麻酔等

投薬(同種同効薬)

注射(同種同効薬)

図 2.2-2 企業負担と保険給付の内訳

留意事項

選定療養費の取扱いについて

 選定療養(患者が選定し,特別の費用負担をする追加的な医療サービスで差額ベッド代等が該当する)の費用については,図2.2-2には含まれてはいない。

高額療養費制度等との関連について

 医療費が高額になる場合,保険給付に係る一部負担については,高額療養費制度が適用される。また,小児を対象とした治験においては,各市町村の小児医療費助成制度が保険給付に係る一部負担に適用となる場合があり,各市町村の担当窓口と相談することが望ましい。

Q&AQ1医療費の支払い方法として,診断群分類別包括評価(DiagnosisProcedureCombination;DPC)あるいは包括化算定を採用している疾患に対する診療報酬の請求はどのようにすればよいでしょうか。

A1包括化された診療報酬の請求の場合であっても,通常の保険外併用療養費制度の扱いと同一です。しかしながら,保険請求に際しては以下の通り,DPCとそれ以外とで異なる対応が求められます。[DPC対象医療機関の場合]

 治験対象患者がDPC対象患者(診断群分類点数表に掲げる分類区分に該当する入院患者)である場合には,医科点数表等にて算定(いわゆる出来高算定)し保険請求することになります(平成26年3月19日保医発0319第4号 厚生労働省保険局医療課長通知「厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」の第1の2(2)参照)。なお,図2.2-3に示した通り,DPC対象患者が入院中に治験に参加する場合は,その時点から医科点数表等による算定に変更します。治験終了後も入院を継続する場合は,DPC算定に戻すことなく,医科点数表等による算定のまま保険請求することになります。

[包括化された点数を算定している医療機関の場合]

 医科点数表等における包括化された点数を算定している医療機関であり,治験対象患者が包括化された点数にて算定される疾患にて加

保険外併用療養費制度上の治験実施期間

退院

治験実施の決定

入院

DPC 医科点数表等(いわゆる出来高算定)

図 2.2-3 DPC対象医療機関における診療報酬の算定

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第2章

第 2章 医薬品治験 2.2 │企業主導治験における制度

001-058_本文1-5章.indd 14-15 2015/08/11 9:17

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保険給付 基本診療料 検査 画像

診断 投薬 注射 処置,手術,麻酔等

患者負担 基本診療料 検査 画像

診断 投薬 注射 処置,手術,麻酔等

保険給付

企業負担

【治験の場合】

【通常の診療の場合】

患者負担

基本診療料

基本診療料

検査 画像診断

投薬 注射

投薬 注射

処置,手術,麻酔等

処置,手術,麻酔等

投薬(同種同効薬)

注射(同種同効薬)

図 2.2-2 企業負担と保険給付の内訳

留意事項

選定療養費の取扱いについて

 選定療養(患者が選定し,特別の費用負担をする追加的な医療サービスで差額ベッド代等が該当する)の費用については,図2.2-2には含まれてはいない。

高額療養費制度等との関連について

 医療費が高額になる場合,保険給付に係る一部負担については,高額療養費制度が適用される。また,小児を対象とした治験においては,各市町村の小児医療費助成制度が保険給付に係る一部負担に適用となる場合があり,各市町村の担当窓口と相談することが望ましい。

Q&AQ1医療費の支払い方法として,診断群分類別包括評価(DiagnosisProcedureCombination;DPC)あるいは包括化算定を採用している疾患に対する診療報酬の請求はどのようにすればよいでしょうか。

A1包括化された診療報酬の請求の場合であっても,通常の保険外併用療養費制度の扱いと同一です。しかしながら,保険請求に際しては以下の通り,DPCとそれ以外とで異なる対応が求められます。[DPC対象医療機関の場合]

 治験対象患者がDPC対象患者(診断群分類点数表に掲げる分類区分に該当する入院患者)である場合には,医科点数表等にて算定(いわゆる出来高算定)し保険請求することになります(平成26年3月19日保医発0319第4号 厚生労働省保険局医療課長通知「厚生労働大臣が指定する病院の病棟における療養に要する費用の額の算定方法の一部改正等に伴う実施上の留意事項について」の第1の2(2)参照)。なお,図2.2-3に示した通り,DPC対象患者が入院中に治験に参加する場合は,その時点から医科点数表等による算定に変更します。治験終了後も入院を継続する場合は,DPC算定に戻すことなく,医科点数表等による算定のまま保険請求することになります。

[包括化された点数を算定している医療機関の場合]

 医科点数表等における包括化された点数を算定している医療機関であり,治験対象患者が包括化された点数にて算定される疾患にて加

保険外併用療養費制度上の治験実施期間

退院

治験実施の決定

入院

DPC 医科点数表等(いわゆる出来高算定)

図 2.2-3 DPC対象医療機関における診療報酬の算定

14 15

第2章

第 2章 医薬品治験 2.2 │企業主導治験における制度

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れる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る投薬及び注射に要する費用は治験依頼者の負担とし,それ以外の費用は,特定療養費の支給対象として取り扱うこととした。 なお,制度実施上の問題点については,今後の運用状況をみながら,必要に応じ見直しを行うこととしている。

3.特定療養費の支給の範囲(2)治験とは無関係の疾病(他科に属するものも含む。)に係る検査及び画像診断並びに当該治験の対象とされる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る投薬及び注射に要する費用についても,治験期間中に実施されるものは,治験依頼者の負担とする。治験薬等の副作用による疾病に係る費用についても同様の取扱いとする。

解 説

 医療機器治験における保険外併用療養費の支給対象外となる項目については,以下の診療に係る4項目の費用が保険給付とならず,企業が負担することとなる。

◦検査◦画像診断◦診療報酬上評価されていない手術及び処置並びに歯冠修復及び欠損補綴◦診療報酬上評価されていない当該治験に係る機械器具等に係る費用

 診療報酬請求(レセプト)の保険審査において,治験実施のために付加的に発生した費用を確認することは実質的に難しいため,診療報酬上の取扱いとしては,レセプトに添付された治験概要に明記されている「治験実施期間」におけるすべての検査・画像診断費用を企業が負担することになっている。そのため,治験に参加している患者がその期間に他科の診療を受け検査・画像診断の費用が発生した場合でも,保険給付とはならず,企業が負担することになる。 すなわち,図3.2-5に示すように,治験のために必須な検査・画像診断であっても,「治験実施期間」の前後(図3.2-5のⒶ;前観察期間や後観察

期間)は保険給付対象となるが,一方で,「治験実施期間」内であれば,治験のために実施された検査・画像診断でなくとも,その費用については企業が負担することになる(図3.2-5のⒷ)。治験機器の有害事象・不具合等による疾病に係る費用の場合も同様に,「治験実施期間」外の検査・画像診断費用は保険給付対象となるが,「治験実施期間」内に実施された検査・画像診断費用は企業負担となる。 治験とは無関係の疾病を有する患者を対象とした治験や長期に適用(6カ月や1年)される治験においては,治験において必須とされていない通常診療上の検査・画像診断による企業負担費用がかなり大きくなる可能性があるが,企業負担の範囲に関しては,治験に参加している患者の診療に要する費用を,医療保険と企業との間で適切な分担を図るというのが保険外併用療養費制度の基本的な考え方である。全体としてみれば,「治験実施期間」内の4項目の費用を企業が負担する代わりに,「治験実施期間」前後において治験のために実施された検査・画像診断の費用が医療保険で賄われているとみなされる。

企業負担

初回適用日 最終適用日

後観察期間前観察期間

治験のための検査・画像診断

通常診療のための検査・画像診断※

※治験の対象となる疾患以外の疾患に関わる 診療における検査・画像診断も含まれる 保険給付対象

治験実施期間

Ⓐ7日間

7日間

図 3.2-5 検査・画像診断費用の負担の考え方

留意事項

1) 臨床検査において異常変動が発現した場合で,最終適用日の8日後以降に臨床検査のフォローを行う場合,臨床検査値異常例の追跡調査費用は,

「治験実施期間」外であるため保険給付となる。2) 難病等の公費負担の場合も,「治験実施期間」中の検査・画像診断等の4

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第3章

3.2 │企業主導治験における制度第 3章 医療機器治験

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れる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る投薬及び注射に要する費用は治験依頼者の負担とし,それ以外の費用は,特定療養費の支給対象として取り扱うこととした。 なお,制度実施上の問題点については,今後の運用状況をみながら,必要に応じ見直しを行うこととしている。

3.特定療養費の支給の範囲(2)治験とは無関係の疾病(他科に属するものも含む。)に係る検査及び画像診断並びに当該治験の対象とされる薬物の予定される効能又は効果と同様の効能又は効果を有する医薬品に係る投薬及び注射に要する費用についても,治験期間中に実施されるものは,治験依頼者の負担とする。治験薬等の副作用による疾病に係る費用についても同様の取扱いとする。

解 説

 医療機器治験における保険外併用療養費の支給対象外となる項目については,以下の診療に係る4項目の費用が保険給付とならず,企業が負担することとなる。

◦検査◦画像診断◦診療報酬上評価されていない手術及び処置並びに歯冠修復及び欠損補綴◦診療報酬上評価されていない当該治験に係る機械器具等に係る費用

 診療報酬請求(レセプト)の保険審査において,治験実施のために付加的に発生した費用を確認することは実質的に難しいため,診療報酬上の取扱いとしては,レセプトに添付された治験概要に明記されている「治験実施期間」におけるすべての検査・画像診断費用を企業が負担することになっている。そのため,治験に参加している患者がその期間に他科の診療を受け検査・画像診断の費用が発生した場合でも,保険給付とはならず,企業が負担することになる。 すなわち,図3.2-5に示すように,治験のために必須な検査・画像診断であっても,「治験実施期間」の前後(図3.2-5のⒶ;前観察期間や後観察

期間)は保険給付対象となるが,一方で,「治験実施期間」内であれば,治験のために実施された検査・画像診断でなくとも,その費用については企業が負担することになる(図3.2-5のⒷ)。治験機器の有害事象・不具合等による疾病に係る費用の場合も同様に,「治験実施期間」外の検査・画像診断費用は保険給付対象となるが,「治験実施期間」内に実施された検査・画像診断費用は企業負担となる。 治験とは無関係の疾病を有する患者を対象とした治験や長期に適用(6カ月や1年)される治験においては,治験において必須とされていない通常診療上の検査・画像診断による企業負担費用がかなり大きくなる可能性があるが,企業負担の範囲に関しては,治験に参加している患者の診療に要する費用を,医療保険と企業との間で適切な分担を図るというのが保険外併用療養費制度の基本的な考え方である。全体としてみれば,「治験実施期間」内の4項目の費用を企業が負担する代わりに,「治験実施期間」前後において治験のために実施された検査・画像診断の費用が医療保険で賄われているとみなされる。

企業負担

初回適用日 最終適用日

後観察期間前観察期間

治験のための検査・画像診断

通常診療のための検査・画像診断※

※治験の対象となる疾患以外の疾患に関わる 診療における検査・画像診断も含まれる 保険給付対象

治験実施期間

Ⓐ7日間

7日間

図 3.2-5 検査・画像診断費用の負担の考え方

留意事項

1) 臨床検査において異常変動が発現した場合で,最終適用日の8日後以降に臨床検査のフォローを行う場合,臨床検査値異常例の追跡調査費用は,

「治験実施期間」外であるため保険給付となる。2) 難病等の公費負担の場合も,「治験実施期間」中の検査・画像診断等の4

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第3章

3.2 │企業主導治験における制度第 3章 医療機器治験

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