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高周波誘導加熱式小形コンロの試作実験 ~コイルの巻き数によるエネルギー変換効率の比較~ 133068 馬場 摂南大学 理工学部 電気電子工学科 電子光機器研究室 Trial Manufacture Experiment of a High Frequency Induction Heating Type Small Heater -Comparison of Energy Conversion Efficiency by Coil Winding Number- Hayate Baba Electronic and Optical Systems Lab., Dept. of Electrical and Electronic Engineering, Setsunan Univ. 1.はじめに 誘導加熱とは, 金属を非接触で自己発熱させる方式であ る。既に IH クッキングヒーターを代表とする電磁調理器が 実用化されているが, どれも大型の物で気軽にどこでも持 ち運び出来, 火を使わずコーヒー缶などを温める器具はあ まり見ない。そこで, 小型の誘導加熱式コンロを製作した ので, 製作した状況の詳細とコーヒー缶に入れた水の加熱 実験について述べる。 2.概要 .原理: コイルに高周波数の交流電流を流すことに よって磁力線が発生し,被加熱物の表面付近に高密度の渦 電流が発生する。そのジュール熱で被加熱物の表面が発熱 する。ただし,被加熱物が磁性体であることが必要である。 2.2 実験 今回使用した回路は, 1 の鹿間研の卒業研究で過去に 作製した実積のある「クロスカップル LC 共振型発振回路」 をもとに作製した。 1 製作したクロスカップル LC 共振型発振回路 今回の実験では, スチール製のコーヒー缶に 185cc の水 を入れ, それをコイルの中に入れて, 定格電力 32W を加え, 初期水温よりどれだけ水温が上がったかを測定し, エネル ギー変換効率を求める。この測定を加熱部位の 10 回巻, 15 回巻, 25 回巻, 30 回巻, 40 回巻のソレノイド型自作コイ ルを作製し, それぞれ取り変えながら繰り返した. 考察 このときの発振周波数は [Hz] (1) で表され, また, 効率は 投入電気エネルギーQ(J)=P(W)×t() (2) 水の熱エネルギー(J)=4.19(J/cal)×m(g)×ΔT() (3) により, 今回実験したコイルの中で 15 回巻が 74.7%でエネ ルギー変換効率が一番高い結果となった。これは, 巻き数 が少なければ, 発振周波数が高くなり, 缶コーヒーにでき る渦電流の振動が激しくなる為である。(4)式より渦電流損 Pe は周波数fが大きいと, 発熱が大きいことがわかる。 (4) しかし, コイルの抵抗が小さいほど回路に流れる電流が 大きくなる。よって, コイルのジュール熱による発熱が起 こるため, 熱損失によるエネルギー変換効率が減少したと 考える。特に, 2 のように 10 回巻が熱損失によってエネ ルギー変換効率が大幅に減少しているのが見て取れる。 . まとめ コイルの巻き数にはエネルギー変換効率の点で, 最適な 値が存在すると推察される。 2 巻き数によるエネルギー変換効率 文献 [1]鹿間: クロスカップル LC 共振型発振回路の発振条件解析,(2012 3 ) LC f 2 1 2 2 p B f Pe ) sin ( : : : t B B B f p p 磁場の振幅 導体の抵抗率 交流磁場の周波数

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Page 1: 高周波誘導加熱式小形コンロの試作実験 ~コイルの … Baba Electronic and Optical Systems Lab., Dept. of Electrical and Electronic Engineering, Setsunan Univ

高周波誘導加熱式小形コンロの試作実験

~コイルの巻き数によるエネルギー変換効率の比較~

133068 馬場 颯

摂南大学 理工学部 電気電子工学科 電子光機器研究室 Trial Manufacture Experiment of a High Frequency Induction Heating Type Small Heater

-Comparison of Energy Conversion Efficiency by Coil Winding Number-

Hayate Baba

Electronic and Optical Systems Lab., Dept. of Electrical and Electronic Engineering, Setsunan Univ.

1.はじめに

誘導加熱とは, 金属を非接触で自己発熱させる方式であ

る。既に IHクッキングヒーターを代表とする電磁調理器が

実用化されているが, どれも大型の物で気軽にどこでも持

ち運び出来, 火を使わずコーヒー缶などを温める器具はあ

まり見ない。そこで, 小型の誘導加熱式コンロを製作した

ので, 製作した状況の詳細とコーヒー缶に入れた水の加熱

実験について述べる。

2.概要

2.1 原理: コイルに高周波数の交流電流を流すことに

よって磁力線が発生し,被加熱物の表面付近に高密度の渦

電流が発生する。そのジュール熱で被加熱物の表面が発熱

する。ただし,被加熱物が磁性体であることが必要である。

2.2 実験

今回使用した回路は, 図 1 の鹿間研の卒業研究で過去に

作製した実積のある「クロスカップル LC共振型発振回路」

をもとに作製した。

図 1 製作したクロスカップル LC共振型発振回路

今回の実験では, スチール製のコーヒー缶に 185cc の水

を入れ, それをコイルの中に入れて, 定格電力 32Wを加え,

初期水温よりどれだけ水温が上がったかを測定し, エネル

ギー変換効率を求める。この測定を加熱部位の 10回巻, 15

回巻, 25 回巻, 30 回巻, 40 回巻のソレノイド型自作コイ

ルを作製し, それぞれ取り変えながら繰り返した。

3. 考察

このときの発振周波数は

[Hz] (1)

で表され, また, 効率は

投入電気エネルギーQ(J)=P(W)×t(秒) (2)

水の熱エネルギー(J)=4.19(J/cal)×m(g)×ΔT(℃) (3)

により, 今回実験したコイルの中で15回巻が74.7%でエネ

ルギー変換効率が一番高い結果となった。これは, 巻き数

が少なければ, 発振周波数が高くなり, 缶コーヒーにでき

る渦電流の振動が激しくなる為である。(4)式より渦電流損

Peは周波数fが大きいと, 発熱が大きいことがわかる。

(4)

しかし, コイルの抵抗が小さいほど回路に流れる電流が

大きくなる。よって, コイルのジュール熱による発熱が起

こるため, 熱損失によるエネルギー変換効率が減少したと

考える。特に, 図 2のように 10回巻が熱損失によってエネ

ルギー変換効率が大幅に減少しているのが見て取れる。

4. まとめ

コイルの巻き数にはエネルギー変換効率の点で, 最適な

値が存在すると推察される。

図 2 巻き数によるエネルギー変換効率

文献

[1]鹿間: クロスカップル LC共振型発振回路の発振条件解析,(2012

年 3月)

LCf

2

1

22

pBfPe

)sin(:

:

:

tBBB

f

pp

磁場の振幅

導体の抵抗率

交流磁場の周波数