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第 5 章 世界主要自動車部品メーカーの電動パワートレイン戦略 180 Copyright 2019 FOURIN Inc. All Rights Reserved. Bosch はモーター、パワーエレクトロニクス、48V バッテリーシステムなどの電動車技術を単体として納入 するだけでなく、システムアプローチを重視し、機電一体ユニットや 48V MHEV システムとして供給すること を重視。システムノウハウを自らの強みとして訴求。制御技術やソフトウェア技術もアドバンテージとなる。 自社開発/製造のモーター、パワーエレクトロニクス、自社開発/製造委託の減速機から成る eAxle 機電 一体ユニットを 2019 年に中国上海の合弁拠点で生産開始し、上海 VW や上海汽車に供給する計画。中国 ではまた、48V バッテリーシステムの量産を開始している。 モーター関連では、12V スターターオルタネーターや 48V BSG を手がける部門を売却した一方で(SEG Automotive として 2018 年 1 月に始動)、Daimler との電動車モーター開発/製造合弁であった EM-motive Bosch (Bosch 広報資料、各種報道より FOURIN 作成) ・E モーター、減速機、パワーエレクトロニクスから成る機電一体型ド ライブシステム「eAxle」の開発を 2017 年初に発表。 ・2019 年に中国で生産開始予定。 -UAES の上海工場で生産し、上海 VW に供給する計画。 -将来的に NIO の BEV でも採用される可能性。 ・3 つのユニットを 1 つのコンパクトなシステムに統合し、車軸をダイレ クトに駆動させる。 -従来、HEV や BEV 向けでモーターと減速機の統合ユニットを手 がけていたが、パワーエレクトロニクスを含む一体型のシステムを 開発。 ・HEV、PHEV、BEV の各タイプの EV、コンパクトカー、SUV から LCV まであらゆるタイプの車種で搭載が可能。2020 年以降、電動 車パワートレインの主流となる見通し。 ・各ユニットの製造から培ったノウハウを eAxle の開発に活用。 ・eAxle による売上高 10 億ユーロを見込む。 ・自動車メーカーの開発時間を短縮し、EV の製品化を早めることが 可能となる。 ・2017 年時点で複数の OEM が eAxle の試作品を高く評価しており、 Bosch は 2019 年に量産開始を計画。 ・OEM の要求出力、トルク、搭載要件に合わせ、Bosch がいくつか のパラメーターから容易にカスタマイズできる。 ・最高出力は 50~300kW の間で、アウトプットトルクは 1,000~ 6,000Nm の間でカスタマイズ可能。 -大型の SUV での搭載も可能。 -前輪駆動、後輪駆動ともに対応。 ・150kW/300Nm の eAxle は重量約 90kg で、個々のコンポーネント を組み合わせた場合よりも軽量。 【Bosch、機電一体ユニット eAxle 技術概要】 ・出力 150kW でシステム全長 380×全幅 350×全高 300mm。 ・非常に高いピーク性能と、高度な連続性能を備える。速やかに加 速でき、高速スピードを長く維持できる。 ・高電圧ケーブル、プラグ、冷却ユニットなどのコンポーネントやイン ターフェイスを削減することで低コスト化、高効率化。 -ベアリング点数も削減。 ・システム内の各コンポーネントの相互作用の最適化を図り、モー ターの音振性能と電磁力性能の両立にも配慮。 ・減速機をモーター近くに配置することでスペースを最小限化。 ・モーター、パワーエレクトロニクスを Bosch が製造、減速機は Linamar 製。 -Bosch がトランスミッションを直接製造はしないが、設計や開発は 可能。Bosch の仕様条件に合わせ、Linamar が供給する。 -ギアの制御技術は Bosch が直接手がけている。 -モーターは欧州では子会社 EM-motive 製。 事業売上高 E モビリティ関連に年 4 億ユーロを投資。2018 年に総額 10 億ユーロの E モビリティ案件 30 プロジェクトに携わる。E モビリ ティ関連売上高を 2025 年までに 50 億ユーロに引き上げる目標。2018 年末現在、世界で計 100 万台の車両に Bosch の E モビリティ関連技術を搭載。 技術戦略 1)システムノウハウが強み。トータルなソリューションの提案。モーター、パワーエレクトロニクス、バッテリーなどの各コンポー ネントのスマートな連動に関するノウハウが顧客をサポート。2)エネルギー効率重視。モーターなどのエネルギー効率を高 めることによる EV 航続距離延長。業界におけるベンチマーク的存在。3)短期間での量産化をサポート。車両への搭載が容 易な 48V システムや eAxle。 機電一体型ユニット 自社開発/製造のモーター、パワーエレクトロニクス、自社開発の減速機を統合した eAxle を 2019 年に中国で量産開始予 定。上海合弁の UEAS から上海 VW 向けに供給することが決定。NEV 対応で、BEV 製品化を短期で容易に実現できる技 術として、中国 OEM からの受注が拡大する見込み。減速機の製造は Linamar などに外注。 EV コンポーネント モーター、パワーエレクトロニクス、バッテリーシステムを生産。システムノウハウが豊富で単体でも、一体型でも納入可能。 システムを自ら手がけたいと考える OEM 向けには単体で供給。Daimler との EV モーター合弁 EM-motive を完全子会社化。 EV バッテリー 2012 年に Samsung SDI との提携を解消後、全固体セルの米 Seeo (中国に調達オフィス有り)を買収し将来的な BEV バッテ リーセルの量産化を検討したが断念。Seeo を売却し、GS ユアサなどとの Li イオンバッテリーリサーチ合弁を解散する意向。 セルのノウハウをシステムやコンポーネント単体での供給に活かせられることを強調。バッテリーパック/システムでのリーディ ングポジションを目指す。 48V P0 や P3 など 48V MHEV の複数レイアウトに対応。BSG (生産は旧 Bosch SMG 事業の SEG Automotive が行う)、ISG や 48V バッテリーを個々に手がけるほか、システムでの提案が可能。システムノウハウが競争力の源泉。2018 年 11 月に無錫工場 で 48V バッテリーシステムを生産開始予定。 【Bosch、電動車事業概況】 (Bosch 広報資料、各種報道より作成)

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Page 1: Bosch...Boschの仕様条件に合わせ、Linamarが供給する。 -ギアの制御技術はBoschが直接手がけている。 -モーターは欧州では子会社EM-motive製。

第 5 章 世界主要自動車部品メーカーの電動パワートレイン戦略

180 Copyright 2019 FOURIN Inc. All Rights Reserved.

Bosch はモーター、パワーエレクトロニクス、48V バッテリーシステムなどの電動車技術を単体として納入

するだけでなく、システムアプローチを重視し、機電一体ユニットや 48V MHEV システムとして供給すること

を重視。システムノウハウを自らの強みとして訴求。制御技術やソフトウェア技術もアドバンテージとなる。

自社開発/製造のモーター、パワーエレクトロニクス、自社開発/製造委託の減速機から成る eAxle 機電

一体ユニットを2019年に中国上海の合弁拠点で生産開始し、上海VWや上海汽車に供給する計画。中国

ではまた、48V バッテリーシステムの量産を開始している。

モーター関連では、12V スターターオルタネーターや 48V BSG を手がける部門を売却した一方で(SEG

Automotive として 2018 年 1 月に始動)、Daimler との電動車モーター開発/製造合弁であった EM-motive

Bosch

(Bosch 広報資料、各種報道より FOURIN 作成)

・E モーター、減速機、パワーエレクトロニクスから成る機電一体型ドライブシステム「eAxle」の開発を 2017 年初に発表。

・2019 年に中国で生産開始予定。 -UAES の上海工場で生産し、上海 VW に供給する計画。 -将来的に NIO の BEV でも採用される可能性。

・3 つのユニットを 1 つのコンパクトなシステムに統合し、車軸をダイレクトに駆動させる。 -従来、HEV や BEV 向けでモーターと減速機の統合ユニットを手がけていたが、パワーエレクトロニクスを含む一体型のシステムを開発。

・HEV、PHEV、BEV の各タイプの EV、コンパクトカー、SUV からLCV まであらゆるタイプの車種で搭載が可能。2020 年以降、電動車パワートレインの主流となる見通し。

・各ユニットの製造から培ったノウハウを eAxle の開発に活用。 ・eAxle による売上高 10 億ユーロを見込む。 ・自動車メーカーの開発時間を短縮し、EV の製品化を早めることが可能となる。

・2017 年時点で複数のOEM がeAxleの試作品を高く評価しており、Bosch は 2019 年に量産開始を計画。

・OEM の要求出力、トルク、搭載要件に合わせ、Bosch がいくつかのパラメーターから容易にカスタマイズできる。

・最高出力は 50~300kW の間で、アウトプットトルクは 1,000~6,000Nm の間でカスタマイズ可能。 -大型の SUV での搭載も可能。 -前輪駆動、後輪駆動ともに対応。

・150kW/300Nm の eAxle は重量約 90kg で、個々のコンポーネントを組み合わせた場合よりも軽量。

【Bosch、機電一体ユニット eAxle 技術概要】

・出力 150kW でシステム全長 380×全幅 350×全高 300mm。 ・非常に高いピーク性能と、高度な連続性能を備える。速やかに加速でき、高速スピードを長く維持できる。

・高電圧ケーブル、プラグ、冷却ユニットなどのコンポーネントやインターフェイスを削減することで低コスト化、高効率化。 -ベアリング点数も削減。

・システム内の各コンポーネントの相互作用の最適化を図り、モーターの音振性能と電磁力性能の両立にも配慮。

・減速機をモーター近くに配置することでスペースを最小限化。 ・モーター、パワーエレクトロニクスを Bosch が製造、減速機はLinamar 製。 -Bosch がトランスミッションを直接製造はしないが、設計や開発は可能。Bosch の仕様条件に合わせ、Linamar が供給する。

-ギアの制御技術は Bosch が直接手がけている。 -モーターは欧州では子会社 EM-motive 製。

事業売上高

E モビリティ関連に年 4 億ユーロを投資。2018 年に総額 10 億ユーロの E モビリティ案件 30 プロジェクトに携わる。E モビリ

ティ関連売上高を 2025 年までに 50 億ユーロに引き上げる目標。2018 年末現在、世界で計 100 万台の車両に Bosch の E

モビリティ関連技術を搭載。

技術戦略

1)システムノウハウが強み。トータルなソリューションの提案。モーター、パワーエレクトロニクス、バッテリーなどの各コンポー

ネントのスマートな連動に関するノウハウが顧客をサポート。2)エネルギー効率重視。モーターなどのエネルギー効率を高

めることによる EV 航続距離延長。業界におけるベンチマーク的存在。3)短期間での量産化をサポート。車両への搭載が容

易な 48V システムや eAxle。

機電一体型ユニット

自社開発/製造のモーター、パワーエレクトロニクス、自社開発の減速機を統合した eAxle を 2019 年に中国で量産開始予

定。上海合弁の UEAS から上海 VW 向けに供給することが決定。NEV 対応で、BEV 製品化を短期で容易に実現できる技

術として、中国 OEM からの受注が拡大する見込み。減速機の製造は Linamar などに外注。

EV コンポーネント モーター、パワーエレクトロニクス、バッテリーシステムを生産。システムノウハウが豊富で単体でも、一体型でも納入可能。

システムを自ら手がけたいと考えるOEM向けには単体で供給。DaimlerとのEVモーター合弁EM-motiveを完全子会社化。

EV バッテリー

2012 年に Samsung SDI との提携を解消後、全固体セルの米 Seeo (中国に調達オフィス有り)を買収し将来的な BEV バッテ

リーセルの量産化を検討したが断念。Seeo を売却し、GS ユアサなどとの Li イオンバッテリーリサーチ合弁を解散する意向。

セルのノウハウをシステムやコンポーネント単体での供給に活かせられることを強調。バッテリーパック/システムでのリーディ

ングポジションを目指す。

48V

P0 や P3 など 48V MHEV の複数レイアウトに対応。BSG (生産は旧 Bosch SMG 事業の SEG Automotive が行う)、ISG や 48V

バッテリーを個々に手がけるほか、システムでの提案が可能。システムノウハウが競争力の源泉。2018 年 11 月に無錫工場

で 48V バッテリーシステムを生産開始予定。

【Bosch、電動車事業概況】

(Bosch 広報資料、各種報道より作成)

Page 2: Bosch...Boschの仕様条件に合わせ、Linamarが供給する。 -ギアの制御技術はBoschが直接手がけている。 -モーターは欧州では子会社EM-motive製。

第 5 章 欧州主要自動車部品メーカーの電動パワートレイン戦略

Copyright 2019 FOURIN Inc. All Rights Reserved. 181

・2019 年 1 月、Daimler との電動車モーター開発/生産折半出資合

弁 EM-motive を Bosch が 100%子会社化すると発表。

・2011 年に合弁設立以降、累計で 45 万個のモーターを生産。

・Bosch は完全子会社化で新たな顧客獲得につながるとの見解。

-ただし設立当初から OEM 他社への供給が可能との取り決め。

Daimler の他、Fiat、PSA や Porsche にも供給

・当初から Bosch が Daimler 出資分を買い取るオプションを保持。

・Stuttgart に開発拠点、Hildesheim に工場、従業員計 340 人。合弁

解消後も事業体制/規模は変更なし。

・買収/売却額は公開しないとの取り決め。

・Daimler は EQC 向けのモーターを含む機電一体ユニットを ZF から

調達:

-EQC 向けユニットでは非同期誘導モーターを採用。一方で

EM-motive は永久磁石モーターを手がけている

・EM-motive はコスト競争力が弱く、技術開発投資も十分ではないと

考えられる。

-高出力モーターの技術ノウハウは必ずしも十分ではない、小型の

モーターで強みがあったが Starter Motor Generator 部門は売却

済み。

・Daimler の 48V ISG は当初 EM-motive からの調達が有力であった

が、三菱電機製を採用

・2017 年 5 月、Bosch のスターターモータージェネレーター事業を鄭

州市に本社を置く ZMJ(鄭州煤礦機械集団)と香港の投資会社

CRCI (China Renaissance Capital Investment)から成るコンソーシア

ムに売却することで合意。

・2018 年 1 月に売却が完了し、独立会社の SEG Automotive として

始動。

・スターターモーター、ジェネレーターの他、48V BSG (48V BRM:

Boost Recuperation Machine を手がける。

-48V BRM により、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの燃費、

CO₂を最大 15%低減できる。

・SEG Automotive は世界 14 ヵ国 16 拠点を展開し従業員計 8,000

人。2017 年売上高は 17 億ユーロ。中国では長春と長沙に拠点を

構える。

・欧州では Daimler に 48V BSG を供給。

・SEG は中国で 2030 年までに 48V MHEV の市場シェアが 35%、欧

州で 60%、北米で 40%まで高まると予測。

・48V BSG の追加コストを約 500 ドルと推定。

・Start/Stop 技術では世界トップクラス。

・Bosch が 48V MHEV システムを売り込む上で SEG 製 BSG を活用。

【Bosch、電動車モーター合弁を 100%子会社化】

<M-Benz M264 エンジン向け BSG>

<48V BRM> <オルタネーター>

・EU CO₂規制エコイノベーショ

ン技術

技術/分野 OEM/モデル 時期 備考

機電一体型 VW MEB (中) 2019 年~ 上海の UAES から上海 VW 向けに供給、リアメインユニット NIO (注) 2020 年代初~ (可能性)

モーター

M-Benz S500e 他 PHEV (欧/米) 2014 年~ Daimler とのモーター折半出資合弁 EM-motve から供給 smart electric drive (欧) 2012 年~ smart EV 向け、EM-motive 製 Porsche Cayenne HEV (欧) 2010~2014 年 VW Touareg HEV 向けにも供給 Porsche PHEV Gen1 (欧) 2013~2016 年 Panamera、Cayenne Gen1 PHEV 向け、918 Spyder 向けにも供給 PSA HYbrid4 (欧) 2012~2016 年 Peugeot 3008 や 508 の DE HEV 向け Fiat 500e (米) 2012 年~

パワー エレクトロニクス

VW e-up! (欧) 2013 年~ VW e-up!及び MQB ベースの e-Golf、Passat GTE、A3 e-tron など向け VW MQB BEV/PHEV (欧) 2014~2020 年代初

VW Jetta HEV (米) 2012~2016 年 Porsche Cayenne HEV (欧) 2010~2014 年 VW Touareg HEV 向けにも供給 Porsche PHEV Gen1 (欧) 2013~2016 年 Panamera、Cayenne Gen1 PHEV 向け、918 Spyder 向けにも供給 PSA HYbrid4 (欧) 2012~2016 年 Peugeot 3008 や 508 の DE HEV 向け Fiat 500e (欧) 2012 年~

バッテリーパック

BMW i3 (欧) 2012 年 当初Samsung SDIセルをBoschがモジュール/システム化し納入、Bosch と Samsung SDI の合弁解消後、BMW がシステムを手がける

Porsche Cayenne HEV (欧) 2010~2014 年 セルは三洋電機製 Porsche PHEV Gen1 (欧) 2013~2016 年 セルはパナソニック製 Fiat 500e (欧) 2012 年 Samsung SDI 製セル、システムは Bosch 製から OEM 製へ

48V MHEV (参考) M-Benz M264 直 GE (欧) 2017 年~ 48V BSG、SEG Automotive (旧 Bosch SMG 事業)製

【Bosch、電動車部品納入一覧】

(Bosch 広報資料、ヒアリング情報、各種報道より FOURIN 作成)

(Bosch 広報資料、ヒアリング情報、各種報道より FOURIN 作成)

(Bosch 広報資料、ヒアリング情報、各種報道より FOURIN 作成)

【Bosch、スターターモータージェネレーター事業を売却】