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大人の役割 -大人社会を考える

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Page 1: 大人の役割-大人社会を考える · 「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ンパ ネ

大人の役割 - 大人社会を考える

Page 2: 大人の役割-大人社会を考える · 「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

●コーディネーター

く じ たつ や

(岩手県青少年問題協議会副会長)久 慈 竜 也岩手県PTA連合会会長、岩手県教育委員会社会教育委員 (社)岩手県青少年、育成県民会議副会長。

●パネリスト

い とう じゅん

(岩手県青年国際交流機構会長)伊 藤 純盛岡市役所勤務。外国青年の受入れ活動のほか、ボランティア団体「盛岡世代にかける橋」に所属し、青少年の健全育成活動を積極的に行っている。

さい とう けい こ

(西松園内科医院院長)齊 藤 惠 子内科開業医、心身医学、消化器病専攻。交流分析スーパーバイザー、認定産業医でメンタルヘルスを担当。自律訓練学会員。

にし しゅん ろく

(岩手県立盛岡第四高等学校校長)西 俊 六NPO法人 いわてこどもの心研究懇話会(IK-kon)参与。

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○久慈(コーディネーター)

皆さんこんにちは。大変貴重なお時間をいただきまして、お集まりいた

だきありがとうございます。先程は「青少年の心:取り巻く人々の中で」

ということで細江先生からの基調講演をいただきました。本当に子どもた

ちのことを思い、または非行少年の子たちを思うとついつい自分たち勝手

なイメージを作ってしまっているのかなという部分もありました。色々な

ことをまた教えられたなと思っております。実は私、県のPTA連合会の

会長を仰せつかりまして 5 年目に入りましたが、子育てというのは育児を

しながら自分も育んでいく。育児は育児なのだろうなというように思いま

すし、子どもの心から学ぶことというのはすごく多いなというように思い

ます。子ども、子どもだと思いつつもいざ子どもに親が悩んでいることも

聞いてみますと、適切なアドバイスをしてくれるようなことがあったりし

まして、子どもたちがそれぞれの力量で成長しているということも教えら

れている、そんな一人の父親でもございます。

今日は、私は実はこのようにコーディネートの役割をさせていただいて

いるのですが、正直申し上げると、こう相対しましてもう少し今の親はし

っかりしろということで御指導を頂くような立場の人間だと思っておりま

すが、今日はそれぞれの先生方から貴重なお話をいただきながら、そして

私たちに置かれた役割、それから地域の皆さんと一緒になって子どもたち

の笑顔を育むこと、そのようなことが出来る一つのキーワード作りが出来

たら良いなと思いまして、この役を担わせていただいた次第です。色々な

多岐にわたるお話が出てこようかと思いますが、どうかよろしくお願いを

したいと思いますし、また、皆様方からも御意見や御質問頂戴して参りた

いと思いますので、どうか最後までお付き合いいただければ幸いでござい

ます。よろしくお願い申し上げます。

それでは最初から大変申し訳ございませんが、本日のパネリストの皆様

方から自己紹介を含めまして基調提言をお話いただきたいと思います。最

初に伊藤純さん、どうぞよろしく申し上げます。

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○伊藤(パネリスト)

みなさんこんにちは。伊藤と申します。よろしくお願い致します。

自己紹介ということがありますので、私が今所属しております会の関係に

ついてまずお話をします。今私は岩手県青年国際交流機構の会長を仰せつ

かっております。この会は国の、今は内閣府になりましたが、総務庁の派

遣事業として、海外派遣させていただいたメンバーにより構成されており

ます。私は昭和 58 年、もう 20 年くらい前になりますが、中近東班という

ことでパキスタンに行かせて頂きました。1 ヶ月ほど行かせていただいてお

ります。当時のことを思いますと、実は今と同じでアフガニスタンから何

百万人という難民が押し寄せてきている時期でございました。その時にパ

キスタンに行って難民キャンプを視察してきたりしましたが、20 年たって

も同じような状況にあるということが非常に悲しい思いを今しております。

機構は私のように航空機で出かけた者、それから 2 ヶ月という期間国の青

年の船、現在は「世界青年の船」と「東南アジア青年の船」がありますが、

それに行ってきたメンバーがOBとして事後活動を行うというような目的

で活動しております。実は今週末もその関係がありまして、フィジーとカ

ナダから 23 名の青年たちが 2 泊 3 日、ホームスティだけなのですが、受け

入れをするということで今そちらの方の準備もしているということです。

私は母団体ということで「盛岡世代にかける橋」から推薦を受けましてそ

ちらの事業に行かせて頂きました。私はどちらかというとずっと青少年の

子どもたちの活動が主だったものですから、今日はまずそちらの話からし

ていきたいなというように思います。どちらかといいますと今日のお話は

「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ

りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

りまして、今に至っている。すでに 30 年近くになるのですが、そのような

形で子どもから中学校、高校、大人とそれぞれの世代を通じてボランティ

アの活動をしてきてそれに伴って自分の役割がだいぶ変わってきていると

いうようなことがありますので、その辺りのお話を経験として皆さんにお

話したいなというように思います。

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子どもたちの 私が世代にかける橋の活動を知ったのは子ども会のリーダー研修会でし

前に立つとい た。12 歳のときです。その時にうちの会の代表、馬場といいますが、その

うこと 馬場さんに初めて会ったのがこの会に入るきっかけというか、今の自分が

あるきっかけだったと思います。その時の馬場さんは今から数えますと 28

くらい、30 前でした。けれどもそのとき初めて本当の大人に触れたといい

ますか、初めて本当の大人から話を聞いたといいますか、子どもたちに向

けての真剣な話を聞いたというか、つまり自分たちが子ども会のリーダー

としてどういうようにしなければならないかということを得々とお話をさ

れました。すごい勢いでお話をされました。実は話の中身はあまりよく覚

えておりません、その時の馬場さんの目とか、態度とか、お話の仕方とか、

その時のそういう姿が自分の中では初めて大人に、本当の大人から話をさ

れた初めての経験だったような気がします。それが自分にとっての活動の

原点ということだと思います。その後、話してしまうと年が分かってしま

いますが、岩手国体がありました。色々な意味で皆さんかかわりをもって

いらっしゃる方も多いと思いますが、もう一つの意味では岩手県にとって

のボランティア元年だったと思います。岩手国体の後に行われました身障

国体の中で愛の市民活動という活動が盛岡市民の中で大きく起こりました。

その中に私も中学生として、どちらかというと引きずり込まれていきまし

た。それを通じましてボランティアというものに、そのときはボランティ

アという言葉はまだ一般的ではありませんでしたが、次第次第に入り込ん

でいったということになります。その後高校生になり、会の正式メンバー

として迎えられました。その時にこれからどのような活動を自分として子

どもたちにしていかなければならないか、また、そのときは障害者の関係

の活動も今以上に行っていましたので、そのようなかかわりをどういう方

向に持っていかなければならないかということを結構真剣に考えたつもり

です。それが大学生になり、社会人になりまして盛岡に帰ってきまして、

今も活動を続けているということになります。

なぜ自分がこの活動を30年続けてきているのかということを自分なりに

今考えて見ますと、一つは自分の立場が徐々に変わってきたことに自分と

しての楽しみがあったことです。子どものときは自分が遊んでもらう立場

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でした。中学生になり、同じことをする仲間が出てきて、子どもたちの前

に少しづつ立つようになってきました。そういう中で今度は遊ぶ立場から

遊ばせる立場になってきました。その中で自分の中でどうすれば楽しく遊

んでもらえるかな、どうすれば子どもたちが自分の方を向いてくれるかな

ということを考えるようになりました。それが中学校・高校時代だったと

思います。今度は大学生・社会人になってくると今度は指導する立場にな

ってきました。つまり中学生・高校生たちに何を指導していけば良いのか、

何をどういう風に導いていけば良いのかということを考える立場になって

いきました。それが自分の中の立場として徐々に変化していった。それが

自分として、今考えれば楽しかったのだろうと思います。

何を指導したかということなのですが、これは「世代にかける橋」とい

う会のポリシーの問題になりますが、私なりに考えますと活動そのものは

街を見る活動、街を考える活動そのものだったと思っています。街という

のは盛岡という名前がついております以上、盛岡という街です。街を好き

になること、言葉的には愛すること、これが活動の原点でしたし、それを

私なりに後輩たちにずっと語りかけた、話しかけてきたという気がしてい

ます。

ただ、振りかえって見ますと、子どもたちの前にいる自分、それから中

学生・高校生の前に立って色々話をしている自分、それはもしかしたら本当

の自分ではないのかもしれません。そういう意味では仮面とまではいいま

せんが、どこか本当の自分を押し隠して何か役割を負っている、役割で話

をしている、そういうような自分だったのかも知れません。しかし考えま

すと、すべての人には色々な役割があります。すべての人には色々な舞台

があります。私の今をとって見てもボランティアの立場、家に帰れば父親

という立場、職場では職業人としての立場があります。色々な立場、立場

で場合によってはある仮面を出し、場合によってはある仮面を押さえ、そ

のように役割を自分なりに変えていく。それがいわゆる違う舞台に立つ役

者のようなものです。それで一つは成り立っていくのではないかというよ

うな気がしています。

家庭という話をしましたが、正直に言いまして私はあまり家庭は顧みて

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おりません。子どもが二人おりますが、ほとんど家内と後は父親が一緒に

おりますので父親に任せっきりになっております。ただ子どもたちのほう

もずいぶん活動に連れて行きましたが、子どもたちにとっては自分の親が

どのような活動をしているのかということを少しでも見せながら、また、

時々話をしながら、他の子どもに話すように自分の子どもに話をしながら

続けていっていることで自分の子どもたちもある程度わかっていてくれる

のかな、家庭の中でも父親としてある程度認められているのかなと。これ

は子どもたちに聞いてみないとわかりませんが、そういう気がしています。

背中で見せる 二つめに、そういう問題と関連いたしまして、自分以外で同じ活動を行

っているボランティアの後輩たちがどういうようなかかわりあいをしてい

るか、どういうように変わっていっているかという話をしたいと思います。

今、私は「世代にかける橋」の方は一線を後輩に譲っておりますので私

はあまり行く機会がありませんが、昔に比べて余計変人が多くなったとい

う気がしています、今変人という言葉はノーベル賞受賞の田中さんが良い

イメージで語られているところもあるのですが、同じような意味です。ど

ちらかというといわゆる常識人だとか、いわゆる普通という子たちよりも

例えばちょっと学校でも外れていたり、家庭の中でも色々問題があったり

そういう子たちも活動に来る場合が多くなってきました。しかし、活動の

中でその子たちがどのように変わっていくかというと、今さっき私がお話

したことと同じことです。結局自分たちが色々な活動を通して、活動の中

身を細かく話すときりがありませんが、キャンプもあります。子ども会の

応援活動もあります。それから野外に出ての活動もたくさんあります。川

の掃除もします。色々な活動があります。その中に自然と活動を通してそ

の子たちが徐々に変わっていくのが目に見えるのです。それというのは先

程私が自分で経験したことと同じように、遊びの客体、いわゆる遊んでも

らう立場から、遊びの、いわゆる共同体として、共に遊ぶ、一緒に遊ぶ、

その子たちも少しずつリーダーになって進んでいかなくてはならないとい

う変わり方。それが最後は教える人になっていく。つまり指導をして、人

を引っ張っていかなくてはならない。そういう変わり方をせざるを得ない

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わけです。

しかもそれを私はよく馬場、うちの会長から言われるのですが、背中で

見せなさい、ということをよく言われます。つまり格好よくなれというこ

とです。人前で立ってまず背筋を伸ばせ、眉を上げろ、常に微笑を絶やす

な、とまで言われますが、なかなか出来ませんが。つまり子どもたちから

あこがれる存在、格好よく見える存在、そういうものになるために自分が

どうすれば良いか、ということを活動の中でいつもいつもは話しませんが、

私なりに考えてきたつもりですし、その子たちがそういうように行ってい

るのが見えるのです。茶髪の子もいます。ピアスしている子もいます。茶

髪・ピアスは変わりませんが、その子たちの中身はどんどん変わってきま

す。それはなぜかというと、自分の中で自分を変えていかないと子どもた

ちがついてこないからです。子どもたちが自分の方を見てくれるために、

自分が子どもたちにお兄ちゃん、お姉ちゃんとして慕われる、一人でも、

例えば、足にまとわりつかれるように、背中にくっつかれるように、その

ために皆活動をするのです。おそらくその子たちは活動が終わって学校や

家に帰ってもまた元の姿に変わっているかもしれません。それはそれで私

は良いと思っています。その子のすべてが変わって、人格すべてが変わる

ことが必要だとは私は思っておりません。しかし活動の中で着実に何かが

変わっている。その子たちの姿が変わっていくということ。それはすばら

しいことではないでしょうか。それは先程の話とつながることにあります

が、いわゆる一つの役。自分としての役を、舞台の上に上がって役を作っ

ていく中で自分がその役に本当に入り込んでいくというようなことではな

いかなと思います。それは私から見ての変化だけではなくて、よくお父さ

ん、お母さんからも言われます。それから学校の先生から言われることも

あります。活動に入ってからあの子は変わってきました。変わるようにな

りましたということを幾度も言われたことがあります。それはそのまま私

共のボランティアの活動からすれば、活動のエネルギーになってきます。

つまり活動がよい方向に向いていきます。後輩がたくさん出てきます。子

どもたちがついてきます。良い活動に向いてきます。それは私たちにすれ

ば、もう一つ言わせてもらえば街のエネルギー、街が良くなるエネルギー、

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皆が街を好きになるエネルギーになっていくと思いますし、口はばったい

ようですが、日本という国、それを考えるときのエネルギーになっていく

のではないかなというように私は思っています。そういう意味でおそらく

私共の中ではこれからも街というものにこだわり続け、また、子どもとい

うものにこだわり続けて活動をしていきたいなと思います。

ある人から「人生を変えるボランティアもある」ということを言われた

ことがありますが、私にとっては 12 歳のときに馬場さんに会ってその目を

見たときに、その話を聞いたときが自分にとっての一つの人生の変わり目

だったのかなということを今になって思っています。そういう意味で感謝

をしています。

少々大人社会という意味での話と若干違うのかも知れませんが、大人が

変わるという意味での一つの問題提起というか、ボランティア活動という

観点での私なりの話をさせていただきました。

ありがとうございました。

○久慈(コーディネーター)

ありがとうございました。

伊藤さんが「世代をかける橋」のリーダーとして、まず指導者として今

こうして成長してこられた話も触れられていたのですが、最近変人が多く

なってきているという部分で小泉首相も首相になったときに変人が普通人

になってきたのだという話をされて、それが当たり前になってきたような

ところがあったのですが、どうなのでしょう。今の子どもたちは変人だと

いう話があったのですが、そうした自分たちの役割を演ずる、そうして自

分たちが一つの役というものに携わってきてその子どもたちが変人から何

に変わってきたのかな。

○伊藤(パネリスト)

そうですね。何を変人と呼ぶかということかもしれませんが、言い方は

変ですが、皆から変と呼ばれる変人よりは子どもからは好かれる変人にな

ってきたのかなというような気がします。やはり子どもはそういう意味で

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非常に正直です。自分たちのことを考えてくれる大人、自分たちのことを

見てくれる大人、自分たちを引っ張っていこうと思ってくれる大人にはや

はり子どもはついていくなというように思います。

○久慈(コーディネーター)

ありがとうございます。すごいですね。子どもたちがその兄たちを見て、

子どもたちが変わってくるという。すごい力をお持ちなのだなというよう

に思いました。ありがとうございます。

続きまして今度は医師会の方からお願いしてお越しいただきました齊藤

惠子先生です。どうぞよろしくお願い致します。

○齊藤(パネリスト)

よろしくお願いします。

私は町医者であります。そして学校医という立場で思春期の子どもたち

をみる機会が与えられております。また、医師会には思春期問題研究会や

母子保健部や学校医部というものがありまして、やはり今の子どもたちに

どのように関わり、抱えている問題をどう私たちが協力して良い方向に導

いたり、お手伝いできるかということを一生懸命考えているという立場も

ございます。本当にそんなに大それたことは申せませんが、IK-kon

でまた細江先生の部下になっておりますので、伺わせて頂きました。

私が校医をしている学校の入学式や卒業式に参りますと、中学校一年は

本当に幼く、頼りなく見えますが、卒業式には本当に目覚しい成長を遂げ

て、胸を張って卒業していく姿を見ます。本当にその成長の素晴らしさと、

それを導かれている学校の先生方に感嘆しているものです。「私たちはこ

の子たちに未来を託すのだ、私たちは何て頼もしい後輩が出来たのだろう」

と見ることが多いわけですが、一方では外来に、「学校に行きたくても行け

ないのです」、「学校に行こうとするとお腹が痛くてそれがどうしても治ら

ない、あちこちで調べたがなんともないと言われた」、「頭が痛い、それも

やはり検査しても何ともない」と訴える中学生以上高校生、あるいは大学

生が診察に訪れるのです。希望に燃えて小学校、中学校に入学したであろ

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うに、それを阻んでしまったのは何だろうと不登校を初めとした思春期の

心身症に取り組むようになりました。何とか私もこの方たちの人生の中で

関わりながら元気になっていただきたいと願いつつ、臨床の立場というこ

とをやっております。なかなか簡単には治らないことも多いですが、子ど

もたちが治療にうまく乗り、家族や学校の協力のもと、自分への気付きを

得て、「先生さようなら、もう大丈夫。じゃあ元気で」と学校や家庭に帰っ

ていく様子を見ることが出来ると、その成長に本当に感動いたします。患

者さんとして訪れてもらって私も随分と教えられることが多く自分自身も

成長へと導かれているという実感を得ております。もし私が医者でなかっ

たらこういう出会いもなかったろうとともに成長の機会を与えられている

ことをありがたいと思っております。

性的な問題 医師会でこれこそは今、子どもたちのために緊急的に何とかしなければ

ならない問題が二つあります。一つは性の問題です。特に岩手県において

は非常に残念なことに十代の妊娠中絶率が平成 8 年では全国 1 位でした。

平成 12 年は少し減りまして、全国 10 位、それでもまだワースト 10 の中に

入っています。20 歳から 24 歳の年代ではやはり全国 1 位を譲っておりま

せん。中絶だけではなく、性感染症も非常に多くて、産婦人科の先生は非

常に危機感を抱いておられます。こういう十代の少女たちが性感染症にお

かされていくと、将来の不妊や色々な婦人科的な疾患に悩まされることに

なるわけなので、何とかそれを食い止めなければなりません。私は産婦人

科の医師ではありませんが、ともに何とか医師の立場で知りえた事実をた

くさんの大人の方に知っていただき、そして子どもたちを守っていただき

たいということがありましたので、できるだけ何かで皆様の前に立つとき

は、まず、このことを皆様にお伝えして、子どもたちを守っていただきた

いということで申し上げています。岩手県医師会では今この現状の改善に

真剣に取り組んでおります、その際には産婦人科の先生がもっと現実の凄

まじさを皆さんにお伝えすると思いますが、まず内科医の私からもお伝え

したいと思います。

「沈黙の叫び」といういう映画では、妊娠 12 週もすれば目も見え、耳も

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聞こえ、指もしゃぶる胎児が、子宮のなかに中絶の機械が入っていくと、

それから逃れようと、目を大きくしながら「私を殺さないでと叫んでいる

かのように激しく動き回って映されているということです。何とかこの命

の大切さということで皆さんに分かっていただきたいということなのです。

自殺者が年間 3 万人強と言いますが、妊娠中絶は年間 30 万という莫大な数

で、十代の中絶は 44,777 人ということです。これは自殺で命を失う人より

も多いことなのです。また、岩手県警本部の 13 年度の性的逸脱行為で補導

された女子の数は 55 人だそうですが、その中に中学生が 9 人、高校生が

34 人もいるということです。県教育委員会の調査では、携帯電話の保有率

が70パーセント、出会いサイトを利用した女子高校生は21パーセントで、

実際にその出会いサイトを利用して出会ったというのは、女子では 43 パー

セントにも上がっているということなのです。結局そういったことが性感

染症の増加や妊娠中絶の増加を促していることになっているようです。

性教育も学校の中で先生方がなされていることとは思いますが、最近の

アメリカでの様子をお聞きしますと、妊娠をしないための性行為というこ

とで性教育をするのではなくて、善人格の中の性道徳ということで、むし

ろ高い目標をもって成長するということを教えることに転換しなければこ

の性的な犯罪や性障害というのは止まらないということで、方向転換をし

たということです。私たち日本では今後どのような性教育をすれば良いの

か、これも大人の私たちが考えていかなければいけないのではないかと思

っています。

私はその性の問題に何も分からないままに内科の開業医になりましたが、

ある時に中学生が、先生、私肝臓の病気らしい、肝臓が腫れているから見

て頂戴と入ってきたのです。肝臓だったらやはり超音波の検査をしなけれ

ばねと見ましたら、胎児が見えました。もう生まれるのは後 1 ヶ月くらい

の状態になっていたのですが、今の制服で誰も気がつかなかったらしくて、

先生中絶するところを教えて頂戴と言っていましたが、こんなに大きくな

ったらもう生まなければいけないのだよということで、そして双方の両親

の反対もありましたが赤ちゃんは生まれました。この赤ちゃんはもう誰に

も見てもらえないということは明らかなことで、乳児院にやるからと言っ

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ていましたが、その時に小さな命を守る会という会があることを知りまし

た。命を誰の子どもで、望まない妊娠であってもその赤ちゃんの命は大切

ということで、産む義務と育てる義務は別でよいのだという考えの下に養

子縁組をお世話して子どもさんのないところにお世話をするという、養子

縁組させるというクリスチャンの組織団体ですが、そこにお願いすること

に決まりました。出産前にその少女は、「私のような悪い子じゃなければよ

いな」と心配げに言いました。みんなに「悪い子」とか、校長先生にさえ

も「私たちの手におえるような代物じゃありませんよ」と言われてしまっ

ている少女でした。先程の細江先生のお話のようにみんなに「いい子」と

言われたことは一度もなく、「悪い子」と自分自身も言っているような子だ

ったのですが、私はその言葉にこの子のやさしさ、いじらしさというもの

が感じられたとともに、何とか私だけはこの子を悪い子だと言わないでお

こうと決意しました。その後その子は 2 回ほど結婚して 3 人のお母さんに

なりましたが、非常にたくましく生きております。頭の良いことを感じさ

せるこの子を成長過程の中で一人の人間として受け入れ、悲しみや悩みを

聞き、良いところを見つけてサポートして育ててくれたら、むしろ皆に喜

ばれる存在感のある女性になったのではないかと見ております。この子の

行動に手を焼いた学校を含めた周りの大人の見方に偏見があり、たかが 15

歳の子どもに向かって「我々の手におえる代物でない」などと捨てるよう

な言葉を吐いてよいものかと、私はそのとき本当に憤慨した次第でした。

子どもには希望があり、夢があると思います。成長していけるものだと思

います。最後まで諦めずに信頼し、助けて大人にしていかなければいけな

いのだなと思います。その心構えで出来た胎児は中絶されないようにして、

生まれた子どもたちは育てることが出来る大人に託されれば、良き大人と

して成長し日本の少子化対策などはそんなに悩むことはないのではないか

と思う次第です。

心の問題 もう一つの、私たち医師をはじめ、皆さんもそうだと思いますが、何と

かしなければならないというのは、心の問題だろうと思います。私の外来

に訪れるいわば心身症といわれる、身体に異常を覚えるのだが原因に心の

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問題があるというお子さんたちは、やはり成長過程の中で自分の存在が正

当に認められない、あるいは両親の不和を自分の努力で何とか改善しよう

と、一生懸命良い子であろうと努力した末に症状が発症してしまうという

ようなことで患者さんとなるわけですが、やはりその子どもさんたちが治

っていくのは、そのお子さんだけが頑張れば良いわけではなくて、そのお

子さんを取り巻いている御両親や兄弟や学校、周りの人たち、その方たち

の協力があり、また、その方たちみんなが変わり成長することでお子さん

も自然と良くなっていくようです。若い人たちを見捨てることなくサポー

トしていくということがどんなに大切かと考えさせられています。

その中に何故このようにお父さんやお母さんたちが父性や母性を失って

しまったのか、母性を育成するにはどうすれば良いのか、こういう問題を

私たち医師会の母子保健部では色々と考えて何とかしようということを言

っています。この同じフォーラムが昨年東京で行われたようですが、その

一人のパネリストの方が育児体験を中高生に義務付けてはなどと提唱され

ています。岩手県でもそのように教育課程に盛り込んでいただきたいとい

うことを私たちは県の会議などにお願いしています。じっくりと乳幼児を

見ていると、どんなに大人が求められているか、それが分かるのです。私

は子育ての時にやはり自分の余力でしか、時間の余っているところだけで

子どもに接してきまして、そのような子どものいたいけなというか必死な

眼差しを見ないでしまったのではないかと思っています。私は自分の母に

助けてもらって育てて、じっくりと向き合うことがなかったので、私の母

性もちょっと足りなかったのではないかと思っていますが、現在、他所の

お子さんのそういった傷ついていらっしゃる子どもさんを見ながら自分の

母性もまた育てられているような気がしています。国の少子化対策の中に

保育園を増やす、24 時間保育をするなどが挙げられています他に、男性の

職場のあり方も新たに加えられていたということは今年度の中間報告の中

にありましたが、これに是非とも期待したいと思います。女性の社会進出、

共同参画社会といいましても、女性だけが育児をしなければならないと言

って早く帰りたいということは許されないでしょう。やはり男性の職場が

ゆとりをもって育児などに参加できるのだということになりますと、やは

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り女性も帰りやすくなるということがありますので、そういった社会を是

非実現していただきたいと思います。

子どもたちは大人の背中を見て育つとよく言いますが、私はむしろ大人

の眼差しを求めて生きているのではないかと思っています。とりあえずは

この二つの大きなことを主張いたしまして私の意見とさせていただきます。

○久慈(コーディネーター)

はい、ありがとうございます。大変ショッキングなお話しをいただいて

しまったのですが、十代の中絶で岩手県内、昨年、数で言えば 700 人を超

えているということだったのです。この数もショックですし、実際にその

十代の方の中絶の相手、一人で妊娠するわけではないですから相手がいる

わけです。この相手がお互いの十代ではないと。30 代 40 代の方々が相手

になっているということが実態としてこの岩手の中にあるということを聞

きますと、相当恐ろしい思いをします。本当に大人が変わらなければなら

ない。大人の倫理観がどうなっているのかという部分についても今一度考

え直す必要性が迫られているのかなと思いました。

さて、西俊六先生は第四高等学校の校長先生でもいらっしゃいますが、

先程齊藤先生からも出ましたIK-kon、岩手こどもの心研究懇話会の

参与でもいらっしゃいますし、細江先生はその理事長でもいらっしゃいま

すが、どんな活動があるのか、その部分も含めまして教師の立場からの部

分でもお話を頂ければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○西(パネリスト)

只今御紹介をいただきました岩手県立盛岡第四高等学校の西です。

「岩手子ども 最初に、「岩手子どもの心研究懇話会」通称 IK-kon についてであります

の心研究懇話 が、県内の医師や臨床心理士、教育関係者等が、さまざまな理由から学校

会」通称 IK- に行くことができない不登校の児童・生徒たちの問題や中途退学、事故非

kon について 行等で心を痛め、悩んでいる子どもたち、そして今話題になっている幼児

期からの親の養育にかかる児童虐待問題等についてバックアップできない

ものかという観点から、NPO 法人「岩手子どもの心研究懇話会」通称 IK-kon

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が立ち上がったものであります。

内容といたしましては、年6回の研究懇話会を開催し事例研究等を行い、

外部に対してはこれまで盛岡地区、宮古地区で地域の方を対象にシンポジ

ュームを開催いたしました。

理事長は本日のコメンテーターの岩手県立大学教授細江達郎先生です。

パネリストの齊藤惠子先生も理事の一人でいらっしゃいます。

高校生の素晴 次に、高校生の素晴らしさについて話したいと思います。

らしさについ 本校の盛岡第四高校には、全国高等学校文化連盟の事務局と岩手県高等

て 学校文化連盟の事務局とがあります。高校生の文化系の部活の大会の観点

から申し上げます。

全国高文連の事業の主なものは、各都道府県持ち回りで開催する全国高

等学校総合文化祭、国立劇場での優秀校東京公演、文芸コンクール及び文

芸道場、高文連研究大会等です。

本年度の全国高等学校総合文化祭は全国から 2 万 2 千人の高校生が相集

い、30 部門での創作発表や展示などが国際県神奈川県で 8 月に開催されま

した。

高校生が企画から運営を担当し、高校生が前面にたっての活発な大会で

した。

目標に向かって高校生一人一人が分担の仕事をそれぞれに一生懸命取り

組む姿には新鮮な感動を覚えたものでした。

また、岩手県の高等学校総合文化祭総合開会式も 10 月に盛岡市で開催さ

れました。

ここでもまた、本県生徒による企画委員会が大会の運営にあたり、満堂

の観客に計り知れない感動を与えてくれました。20 の部門で発表した高校

生の真摯な姿勢が多くの人々に大きな勇気を与えたわけであります。

全国高校総合文化祭総合開会式に出席された文化庁河合隼雄長官も高校

生の活動を御覧になり、「これが高校生だね」と話されたほどでありました。

とかく報道などでは良くないニュースがあったりするわけですが、大部

分の高校生は自らの目標に向かって頑張って学習に、部活動に取り組んで

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いるわけであります。

道徳性の発達 私が所属している「岩手子どもの心研究懇話会」通称 IK-kon には、臨床

について 心理士の方が大勢いらっしゃるわけですが、全国臨床心理士会の会長が文

化庁長官の河合隼雄氏であります。先日、岩手県臨床心理士会 10 周年記念

式典が盛岡で開催されましたが、その際、講演のため盛岡においでになり

ました。

私は教育は躾に尽きると考えております。躾は道徳性の発達の時期に即

した躾が必要であり、大事であると思っております。つまり、一つ、二つ、

三つ~九つと年齢を数える際に、「つ」が付いている間に躾ることが一番大

事だと考えております。

河合先生のお話によりますと、子どもの道徳性の涵養には四段階あると

いいます。

第一段階は誕生から 7 歳まで。第二段階は 7 歳から 9 歳まで。ここまで

は他律的な躾があるということであります。人間として生きていく上で大

切な心を育む期間であり、人のものを盗ったりしてはいけないことや「有

り難う」などという感謝のことばや心を身につけさせる教育が必要という

ことであります。

第三段階は 9 歳から 11 歳までといいます。ここでも躾は必要であります

が、この位の年齢になると社会律や自律というものも身についてくるとい

うことです。

第四段階は 11 歳からと話しておりました。

この道徳性を家庭においても学校においても躾という面から教育してい

くことが大事ではなかろうかということでありました。

先生の御著書には、「子どもと自然」、「子どもと宇宙」、「子どもと学校」

等多くの本があります。

最近の子ども 岩手県警察本部少年課の少年非行に関する、平成 14 年 1 月からの 8 月

たちの変化は までの合計した資料によりますと、刑法犯の補導状況は小学校と中学校で

いつ頃からか 減少し、高校で増加しているということであります。特に多いのが万引き

Page 18: 大人の役割-大人社会を考える · 「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

について などの初発型であるということであります。

各学校では、家庭とも連携して万引き等の防止に努めているところであ

りますが、増減を繰り返しながらも、なかなか減少していないのが実状で

あります。

元家庭裁判所の調査官やスクールカウンセラーでもある和歌山大学の廣

井亮一先生が週間教育資料に発表した 10月 7 日号と 14 日号によりますと、

少年の問題行動が社会的に注目されているがということに対して、廣井先

生は、確かに犯罪少年や触法少年、虞犯少年の数は多くあるが、青少年は

凶悪化はしていないと断言しております。

詳細を申し上げますと、凶悪事件というのは全体の非行数の 1%位である

といいます。

ただ、昭和 50 年頃から恐喝や傷害、暴行、脅迫といった事項が増えてき

ている。そのまま高原状態を維持して今日まできているということでした。

その頂点として平成 12 年のバスジャック事件が上げられるとしておりま

す。

最近の子どもたちがどう変わったかというと、廣井先生によれば、昭和

58 年がピーク時で、その頃は、いわゆる番長がいて、その番長の動きをみ

れば指導しやすかった。

ところが、昭和58年頃のピーク時を過ぎてから生徒たちが変化してきた。

番長などがいなくなり静かになってきた。急におとなしくなった。裁判所

に来る子どもの服装はきちんとしており、担当官にも素直に従うようにな

った。

ただし、面と向かってみると最近の子どもたちはピリピリするほどにイ

ライラ感が面接官に伝わってくるといいます。

子どもたちの 廣井先生は、これらの子どもたちを攻撃性と依存性という視点から話し

攻撃性と依存 ております。

性について 攻撃性と依存性というのは、具体的にどのようなことか。

先生は、攻撃性とは意図的に危害を加える行為のこと。悪い行為ですが、

これを英語でいうとアグレッシシブ (agressive) なエネルギーというよう

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ですが、これは別の意味では積極的という意味もあるそうです。そうする

とこのような積極的な面が伸びていきますと、自己保存や自己主張や自分

や他者を大切にすることにつながる。つまり、大人になるために必要なも

のを獲得する源ともなるものであるといいます。

従って、このことが歪められると非行やいじめ、自傷行為などの攻撃行

為と結びついた幼児化現象と繋がってしまうということです。要するに攻

撃性と依存性とは表裏一体となっているということであります。

子育てにおけ 次に、子どもの年齢のことにふれ、0 歳児から 1 歳児までの絶対依存の

る親と子の信 体験が必要であり、この時期の育て方が非常に大事ではないかということ

頼感の重要性 です。親に大切に抱いてもらい、生身の総体として受け止められる経験が

について 人間として基本的信頼感の獲得に繋がる。ここのところが欠落すると、中

学生や高校生になっても周りの大人たちや教師たちがどのような関わりを

持つかによって、取り返しのつかないことになってしまうといいます。

この時期に円満に育っていきますと、母親の姿が見えなくなってもそれ

を待つことができるようになる。我慢のできない子は絶対依存の関係をき

ちんと経ないままに大きくなったと考えられるという指摘であります。

子育てに欠く それから 2 歳から 4 歳には自立したい気持ちと甘えたい気持ちとが拮抗

ことのできな して第一次反抗期が訪れる。その時に大事なのがやはり父親の役割である

い母性と父性 といいます。

について 母性だけではなく、父性が存在することで家族の中で子どもの位置関係

や役割、距離が見えてくるといいます。現在グループで非行にはしる子ど

もたちはやはり非行集団の中で位置づいてはいないそうであります。どん

な役割もなくただ漫然と非行にはしる。

それが現代の家族の状況を反映しているのではないかという指摘であり

ました。

家庭、学校、 4 歳から 7 歳の間はしつけの大事な時期ということであります。小学校

里山の役割に に入りますとその年齢から学童期、ギャングエイジまたはギャンググルー

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ついて プといいますのは、御承知のとおりであります。このギャンググループの

時代を十分に過ごさないと中学生の時期、高校生の時期になっても未熟な

部分があるのだという指摘であります。

学童期には家庭、学校、里山という三つの時間と空間が子どもの将来を

決めるのではないかという指摘です。

幸い、本県は自然に恵まれています。里山を有効に活用した子どもの教

育を大人は今後どのように活用していくのか。あるいは、どのように関わ

りをもっていくのか。

家庭、学校、里山の連携をどのようにしていくべきなのか一層工夫、検

討がなされなければならないと思います。例えば、デンマークにおける「森

の幼稚園」の例などは大いに参考になるのではないかと思います。

子どもの躾そ 私の話のまとめでありますが、以上のことから、学校でも家庭でも躾は

して食事の大 大変重要であります。幼い頃から、朝起きたら「おはようございます」と

切さについて いえること。名前を呼ばれたら「はい」という返事ができること。玄関等

で靴を脱いだら靴を揃えて向きをかえることができることなど幼い時から

家族全員で徹底できるようにしていくことが大事です。

食事の大切さはいうまでもありませんが、「食」という文字は「人」を「良

くする」と書くと話した方もおりましたが、説得力のある説明と思って聞

いたものでした。

生命の基本は食にあるわけですが、やはり家族そろっていただくことが

大切です。

理由はただ食事をするだけではなく、家族そろっていただくことによっ

て家族同士の信頼関係や健康状態や日頃の生活の姿勢などが食事をとおし

て確認できるからです。

子どもたちの話の花が咲くこともあります。

子育ての躾の基本はここにあるのではないでしょうか。

私どもの学校の保健委員会が家庭での食事についてアンケートを行って

おりますが、生徒たちの 9 割強が弁当も含めて三食をきちんと食べている

との結果でありました。

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そのような意味からみても保護者の日頃の家庭での姿勢が特に問題なく、

生徒たちも一生懸命学習や部活動に取り組んでいるのだと、改めて家族の

愛情や家庭環境の大切さを思い知らされたわけであります。

食事とは料理をつくってくださる方の愛情をいただくのだと痛感しまし

た。

心の教育の大 「心の教育」を学校の中で一層推進するには、生徒も教員もお互いに尊

切さについて 重しあいながら思いやりをもって生活することが最も重要であると思いま

す。

かつて、孔子に向かって、弟子の子貢が「ただ一言で、一生涯実行して

差し支えのない佳言があるでしょうか」と尋ねました。孔子は「其れ恕か」

と答えております。

「恕」とは、自分が人からされたくないと思うことを、他人に対してし

ないことだということです。すなわち「思いやり」の心を持つことの大切

さを話したのでしょう。

各家庭においても、一層お互いに思いやりの心を磨きあうことが大切で

あります。

読書の大切さ 「読書」も非常に重要です。心を育むという観点からみても非常に重要

について です。

最近の子どもたちを取り囲む環境は、テレビやゲーム、漫画などの具象

や動画が先行し、抽象的な思考がなかなかできない状況にあるといわれて

おります。

活字をとおしてイメージを膨らませるという心の働きを広く、深く行わ

せるためには読書の果たす役割は極めて重要であるわけです。

これも本校の例でありますが、朝読書を実施しております。

毎朝千名を超える生徒が教員とともに、静かに「心の扉を開ける」朝読

書をおこなっております。朝読書で得た読書の魅力が遠い将来、多くの本

との出会いによって、新しい「心の扉」をひとつ、また、ひとつと開けて

いく時、若者は世界から信頼される素晴らしい若者へと飛躍していくこと

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だろうと確信しているところであります。

やはり、人間は人と人との関わりの中で生きていくことを弁えることこ

そが教育の根本をなすものであると思います。以上でございます。

○久慈(コーディネーター)

ありがとうございました。西校長先生からは本当に子どもたちの今の段

階での折にふれてのお話をいただきましたが、いいですね。心の教育の部

分でも本を読んでいただきたいということで、県 PTA 連合会でも読書感想

文のコンクールにも協賛をさせていただいていまして、今年も夏休みの読

書感想文で会長表彰を送らせていただいたのですが、一人の子どもの感想

文に、自分がキャンプにいってくるのだよと。これからキャンプにいって

きて自分がどう変わるかお母さんみていてねと、一つの本を通じて親に訴

えかける感想文がありまして、これが入選されました。3 年生の男の子だっ

たのですが、とても子どもらしくて良いなと。また、親に対する自分を評

価してもらいたいというのがあったのです。

自然体験の大 そして今、西先生からも里山が大事だと、自然体験を触れさせていくの

切さ が本当に大切なことなのだということがありましたが、実はその伊藤先生

のほうは世代にかける橋で、子どもたちにそういうキャンプや色々な体験

をさせているのだと思うのですが、最近そのキャンプ事情がちょっと変わ

ってきたところもあって、子どもと親との隔たりというのでしょうか、垣

根がでてきたというお話もあるので、ちょっとその辺を御紹介いただけれ

ばと思います。

○伊藤(パネリスト)

私たちがやっているキャンプは実は親抜きでやっているキャンプでして、

いわゆる親のいないところで私たちと子どもたちだけ、私たちといっても

私は最年長ですので実際には中学生や高校生のボランティアが多いわけで

すが、そういうボランティアと子どもだけでキャンプをやっています。実

は会のずっと先輩が 20 年くらい前に亡くなったのですが、その方の遺志を

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継いでお母様が農家の庭を貸していただいてそこで自分たちで手作りのキ

ャンプ場を作って今やっています。ゼロからですので草刈から始まりまし

て、草刈だけで 2 ヶ月くらいかかります。それからトイレもドッポントイ

レです。それから水も沢水を使っていまして、ろ過装置を自分たちで作り

ましてそれに若干塩素を入れて飲ませている、できるだけ生水は飲ませな

いというような形でやっていますが、非常に、手作りなだけに子どもたち

には場所以上に評判が良いというか、つまり親がいません。子どもたちと

私たちだけの本当に遊びの天国のようなところでやっているのですが、す

ごくそれは良いのではないかと私は思っています。

幸せの尺度 少し話が違ってくるかもしれませんが、同じように子どもということで

言いますと、私はパキスタンに行かせていただきましたが、私の仲間でフ

ィリピンの子どもたちの奨学金関係の事業をやっておりまして、フィリピ

ンの写真展などをやったりします。そこで一つ忘れられないのが、子ども

たちの目、目と表情です。今朝もテレビを見ていたら同じように思えたの

ですが、非常に屈託のない笑顔、そしてそのように見るからかもしれませ

んが澄んだ目をしています。その子たちには非常に生きる喜びがあるよう

に見えるのです。そしてうがった見方かもしれませんが、自分たちの子ど

もを見ると、もうちょっと子どもたちは良い顔ができるはずだと思ったり

しています。私なりにこれは自分の意見になってきますが、何故かなとい

うことになってきますと、いわゆる海外の子たち、フィリピンはスモーキ

ーマウンテンというスラム街があるわけです。そういうところの写真展を

やったりするわけですが、何もないのです。生きていくのがやっと。物も

ない、自分たちが稼がないと自分たちが死んでしまうというような状況の

中でもそんな澄んだ目をしている。ところが今自分たちのいる目の前にい

る子どもたち、あんなに物が溢れ、食べたいものを食べ、余っても誰も何

もいわないというような中で、そういう子どもたちの目は、あまり言いた

くないですが、どちらかというとどんよりしています。色々な物に追っか

けられ、色々な物に責められて締め付けられていると。どっちが幸せなの

だろうと考えると、幸せとは何だろうという気持ちになるのです。おそら

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く日本の今まで目指してきた道というのは物質的に豊かになること、時間

のゆとりを作ること、生活を楽にすること、それが幸せだと思ってやって

きました。しかし一旦自分たちの子どもと他国の子どもを見ると、残念な

がらどうも自分たちの子どものほうが余り幸せそうではないのです。そう

見えてしかたないのです。そうなると幸せの尺度というのはもしかしたら

それは物ではないのではないか、物質ではないのではないかということに

気がついてくる気がします。

私は、これはもう先生方を差し置いていうのはどうかと思うのですが、

その幸せの尺度ということに関していうと、物に対する欲望というのがあ

ります。私たちも普段の生活の中で当然あるわけですが、それというのは

日本人的という言い方もできるかもしれませんが、あの人が持っているか

ら私も持たなければならない、この人が持っているから私も持ってみたい

という、比較というところで出てくる幸せではないかという気がします。

ところが物を離れた、いわゆる精神的な面での本当の欲求、生きるという

欲求や知的な面での例えば覚えるという欲求など、そういうものというの

は相対的なものではなく絶対的なものではないかなと。つまり生きるとい

うことを一番の根底にしながら人間そのものが持っている本能的な欲求な

のではないかと。それを人間としてどのように満たしていくかというのを

今の色々な社会現象の中ではどこかで忘れているのではないかという気が

しています。

そしてさっきのキャンプの話に戻りますが、何もないキャンプです。で

すから行った瞬間にまず子どもたちがやるのはテントの周りの溝をまず掘

るところからです。溝を掘って場合によっては階段を作って自分たちで少

しずつ少しずつ場所を作っていって、最終日には一番良い場所にして帰っ

ていくという、考えようによってはつまらないキャンプですが、ただそれ

でも子どもたちと私たちとは非常に喜びを持ってそういうキャンプをして

います。その時の子どもたちの目、つまり本当の遊び、そういう遊びの場

を自分たちで作る遊びというのを覚えた子どもたちというのは何回も来る

のです。小学校 2 年生から来てずっと大人になってもまだ来ている子がい

ます。やはりその子は最初にきた時のそういう新鮮さ、もしかして今の子

Page 25: 大人の役割-大人社会を考える · 「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

どもたちの生活になかったところに喜びというか、それを感じてそして今

に至っているのかなという気がしています。ちょっと偉そうなことを言い

ましたが、やはりそのような観点もどこかで今の社会を考える上でのヒン

トになるのではないかという気がします。

親の目 ○久慈(コーディネーター)

はい、ありがとうございます。本物を知ったときの継続性というのは本

当に子どもたちも親も一緒だと思うのです。今お話を聞いてきますと一つ

の共通点が見えてきたのですが、大人の眼差しを見ているのだと齊藤先生

は言われましたし、伊藤さんは指導者の方と初めて出会ったときに目と態

度で自分の心が触れたと。フィリピンの子どもたちの目と表情が輝いてい

るのだ、澄んでいるのだとおっしゃいました。私もというと申し訳ないの

ですが、ケニアにまいりましてジェンガのスラム街で学校を作ってきたこ

とがあるのですが、本当に 3 年生から 4 年生くらいまでの子どもたちが裸

足で歩いて元気なのです。子どもたちお腹が空いているのに走ってくるな

よと言いながらも子どもたちは元気で、その目は澄んでいるのです。とこ

ろが 3 年生から上になってくると生きていくために物を盗まないと食べて

いけない、生きていけない、だから目つきが変わってくるのです。この目

というのがすごく大事だと思うのですが、齊藤さん、臨床の部分から見て

いって今の親の目というのは本当に子どもを見ているのだろうかと。内科

医の先生にそういうことを聞いてもどうなのかなと思うのですが、ただそ

ういう子どもが親のことを考えて病んでしまう。その親というのは実際そ

の目はどうなっているのかな。いわゆる実態としての親というのは、逆に

親が病んでいるのではないかと思うのですが。

○齊藤(パネリスト)

やはりそのお子さんの姿を見て何とかしてくれないかな、何とかなって

くれないかなと思っていらっしゃいますからやはり輝いてはいませんし、

どちらかというとなかなか良くならないお子さんを心配げではあるが、ど

こかどうしてこんなにどうにもならないのという、どこか非難したいとこ

Page 26: 大人の役割-大人社会を考える · 「大人社会を考える」ということで、大人の役割を考えるということであ りますが、私自身の経験からしますと、私自身は小学校から会の活動を知

ろもあるのかなと思っています。先程成長過程に応じたというお話を西先

生がされましたが、私たち交流分析というか心理学のほうでは何か人はス

トロークを求めて生きているということがありますでしょう。そしてスト

ロークというのは認めてあげることというか、その存在を大切と他者から

かけられる言葉や態度だそうですが、先程の 0 歳から 1 歳であればスキン

シップが最高のストロークであるし、2 歳から 4 歳という何かが、靴が履け

るようになったり、一人でパンツが履けるようになったら、ああ良かった

ねと親や側にいる人が声をかけ認めて誉めてあげると、そしてだんだん年

をとっていったらやはり成績、60 点取ったよと言っても、ああよかったね

と言うか、次がんばりましょうねと言えばよろしいのでしょうが、私のと

ころに何人かの子どもさんがいらしていて、やはり親御さんがより高くと

いうことを望むのでしょうか、全然誉めてもらえなかったというか、認め

てもらえなかったということが結構ありまして、例えば 80 点取ったよお母

さんと言っても、何でこんなの 90 点取れなかったのとこう言われるなど、

本当にいくらがんばっても認めてもらえない、お母さんに上手だねなど、

そういうことを言ってもらえなかったがために途中からがんばるのを止め

たと。そして思うような方向に行けなくてそこから過食症に陥ったなどと

いうこともあります。大人であっても、成人になっても会社にいったらや

はりその存在、仕事を認めてもらえて、よかったねということを言われる

ことによってまた働く喜びが出ると思いますし、また病んでこられるお母

さんにとってもやはりそこには御夫婦の問題があったりして、御主人から

認められなかったり色々なことがあったりして、やはりその存在をお互い

に認めあう、そういうことの言葉かけや態度というのが十分にあるという

ところが生きるエネルギー、何かをやっていきたいというエネルギーにな

るし、そうなるとやはり目にも輝きが出てくるのではないか。だから私も

そのお母さんに、もう少しお母さんがこうしてくれたらなと思うことがあ

ってもお母さんを非難するのではなく、ここまでがんばって来られた、だ

けどうまくいかなかったことに対して一緒にやっていきましょうという気

持ちで接するようにと努力はしています。

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○久慈(コーディネーター)

はい、ありがとうございます。本当に夫婦間で誉める、誉めるというよ

り認め合ってあげるということが大事なのだろうと改めてまた教えられま

したし、私も子を持つ親として、と言いますか、親を持つ子と言われても

良いのでしょうか、子どもに私たちが何点をつけられているのかというの

も評価の対象になってくるのだろうと思いますが、そういった面で西先生、

最近の高校生は随分変わってきたように思うのです。メールや携帯電話だ

といった部分もあったり、ワン切り業者などが出てきて、援助交際の一つ

にも携帯電話があったりするのだろうと思いますし、何かこう自分を認め

てもらいたいがためにメールをしている。そしてちょっとその一歩踏み込

んで自分を認めてもらうために出会いをしてしまう、そのようなことがあ

ったりすることも聞くのですが、実態の高校生というのはどうなのでしょ

うか。

○西(パネリスト)

高校生の保健 本年度から「完全学校週5日制」が実施されました。

室利用の曜日 生徒が保健室を利用する生徒の割合が、「完全学校週5日制」実施後どの

の比較につい ように変わったのか、あるいは変わらないのかという観点から話したいと

て 思います。

本校の生徒在籍数は 1,016 名です。保健室の利用は季節によって違いは

ありますが、多い日で 10 名から 15 名の利用がみられます。

「完全学校週5日制」実施後の生徒が利用する曜日に変化がみられます。

これまでは月曜日の利用が多かったのですが、今年度になりますとピー

クが木曜日に移動しているということです。

養護教諭の話によりますと、部活動などの生徒たちの疲れが週の半ばに

蓄積しているのではないかということです。最近の部活動は、生徒の健康

管理の面から週に 1 回は部活動の休みの日が設けられており、その休みの

日が完全学校週 5 日制の土曜日に当てているところも多くなり、生徒たち

の健康管理のリズムが良い方向に向いているのではないかということでし

た。

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保健室利用の 生徒たちが保健室を利用する際には、その理由を記入しているわけです

理由の新しい が、最近目を引く理由に「倦怠感」というのが二ないし三あります。

特徴(ケータ この点について、養護教諭の話によりますと深夜のケータイ電話利用に

イ・メール関 よるということです。本校では、条件をつけて利用を認めておりますので、

係)について 校内でケータイ電話にかかわる指導を受けたりする生徒はいないという報

告を受けていますが、深夜のケータイの交信については家庭でもしっかり

と話をしていただければと思うと同時に、学校でも一層指導して参ります。

家庭用の一般電話の時代は、夜中の電話は家族にとっても迷惑であるこ

とから、お互いに注意をしていたわけですが、ケータイ電話は自室で深夜

でも通信可能になっているわけであります。

岩手県教育委員会の調査によれば、高校生の 70%がケータイを所有して

いるといわれます。今後、メールに関わる売春等の根絶のため、学校だけ

ではなく、家庭との連携、警察の少年課サポートセンター等との連携によ

って、高校生や中学生に対してのガイダンスなり、有害な環境の排除につ

いて説明をしていくことが喫緊の課題であると考えております。

○久慈(コーディネーター)

はい。私自身が携帯電話を使っていましてメールのやり取りというのは

結構あるのですが、一つはニュースともう一つは会社からの業務連絡が最

近はメールで入るようになりました。会議やコンサートで御迷惑をかけな

いためになのですが、でも 1 日に 1 件その会社からのメールがこないと孤

独感を感じるのです。会社から不要になったのではないかというようにな

ったりして、そういう孤独感を感じたりしまして、非常にメールに頼って

いると、IT の革命児の一人なのかもしれませんが、本当にそう言った意味

でも今時の子どもたちと私たちは変わりないのかなとも思いました。さて

お時間がもうずいぶん迫ってきたのですが、今日のコーディネーターあま

り良くなかったかと、私としてはコーディネートするというのは珍しく、

本当に緊張するのですが、細江先生からは今日のこのパネルディスカッシ

ョン、価値基準の混濁型だったのかどうか、その辺を含めてコメントをい

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ただければと思いますが、よろしくお願いします。

○細江(コメンテーター)

もうだいたいお話はすでに出ていると思いますが、私は伊藤さんのボラ

ンティアというか、体験を広くするということと、それから西さんの言っ

た里山といったような話が、本当に今の若者に絶対的なものかというのは

どうも分からないのではないかという気がします。我々はどうもそのよう

にやるのが好きで、私もそれは好きで色々な体験を広くして自然にもどし、

初めから出発してやるべきではないかと、どうもそういう体験が大学生に

なってもそんなことも知らないのかといったようなことをいつも感じます。

そういうところに戻していくことしか今できないのかなというのは、私も

考えています。しかし今のような情報社会になった時に新しい、もっと子

どもたちが本当に誰でも体験できるようなものがあるのではないかと。メ

ールも携帯も良くないということ以上に、すごいなにか違ったものがある

のではないかと。さっき私は少しバーチャルのことも言いましたが、これ

もネガティブなものもあるがポジティブなものもものすごくあるのです。

そういうものに我々が向かっていかないと、ふるさとに戻れという話だけ

では、という気がします。そういう意味では私、伊藤さんのそのボランテ

ィアの今までの活動の中で自分のその学校以外の体験がどんな意味を持っ

てきたのか。やはり良かったのか、これからも良いのかということについ

て私たちはきちんと整理して考えなければいけないと思います。それは多

分意味があるのでしょうが、そのどの部分が意味があるのかを確認してい

く必要がある。

それからそういうことを含めて結局子どもと対決するという時には私た

ち自身が持っているものが狭い。私たちの世代より次の世代の方が狭いの

かどうかは知りませんが、狭い。ですから子どもと対決する力がなかなか

なくて、これはよく言われますが中間形体、昔ならおじさんなどがいる大

家族でぶつからないで調整する役がいた。私たちもどうしても子どもとき

ちんと対決するのは嫌だからつい避けてしまう。そこへうまく第 3 者が媒

介してくれればうまくいくことはある。しかし私たちはいずれにしろ核家

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族やそういうところで生きていくとしたら、私たち自身が非常に広い許容

度を持った人間として子どもたちを受け止めていける力を持たなければな

らない。そうでないと結局は自主性や自由と言う形でかなり遠巻きに離れ

て結局は関わらない。齊藤先生のお話のように、本当の意味での認めると

いうことはなかなかできないままでいるのではないかという気がしていま

す。しかし、西先生のお話のように、高校生は良いということ、良いとこ

ろがたくさんあるのではないかというお話はその通りだと思います。何か

悪いことばかり見たくないという気があります。齊藤先生の話を聞いてい

ると暗澹たる思いですが、しかし齊藤先生はそれをきちんと見てやってい

くことによってその子が成長していったということも素晴らしいと思いま

す。私はプロセスや将来ということで人を考えていくのが 1 番良いと、そ

ういう感想を持ちました。あとは久慈先生のほうでよろしくお願いします。

○久慈(コーディネーター)

ありがとうございました。すみません。それでは会場の皆さんからも今

日の細江先生のお話、またはパネラーのパネリストの皆さん方のお話につ

いて何か御意見、御質問があればこの機会に承りたいと思いますが、どな

たかいらっしゃいませんでしょうか。今日はさくらを用意してあるという

話もございませんので、本当に貴重なお時間を割いて御参加いただいてい

る皆様方です。たまに文部科学省に当ててみるというのも面白いかも知れ

ませんが。実は今日始める前に参事官からせっかくこういう貴重な良い話

を受けていて冊子にするだけではもったいない。インターネットでこれを

公表させてくれということで、今日のフォーラムの内容は文部科学省のホ

ームページの中に載るということになって参りましたので、非常に貴重な

体験でもあります。この機会に御質問、御意見頂ければそれも載りますの

で、全国発信ですのでどうかこの機会を御利用いただければと思いますが。

中身が濃すぎたのでしょうか。それともショッキングだったのでしょうか。

なかなかお手が上がりません。本当に私の進め方の不慣れなところもある

と思いますが、中身的には非常に良かったなと思います。「青少年を取り巻

く大人社会を考える」というテーマで今日は進めさせていただいたのです

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が、実際本当に大人、子を持つ親がどう変わらなければならないのか。そ

して子どもとともに自分たちが成長していかなければならないのだろうか

という部分を今一度教えられたような気がしてなりません。

私の手元に 1 枚の資料があるのですが、これは岩手県内の「公立高等学

校の中途退学者の状況」というのがあります。平成 13 年は 793 人の退学者

がいました。平成 12 年は 862 人の退学者がいるのです。この子どもたちの

退学の理由が学校不適応と進路変更が 500 人を超えているのです。ほとん

どが、ほぼ 70%以上が学校不適応と進路変更。これは何を指すのか。いわ

ゆる自分が進んでいく目標、目当てがはっきりしていない。小学校・中学

校時代にものの価値観を親と共用していない。だから将来自分が何になっ

ていくのだろうか。社会的自立をするにはどうしたら良いのだろうか。そ

んなことが高校生活に入ってあやふやになってきている。これが実は先生

方にとっていわゆる高校の先生方にとっての悩みだと思います。この子ど

もたちが一人でもいなくなれば、0 になれば子どもたちに対する教育はさら

に別な方向からも進めていくことが出来るのだろうと思います。そのため

にはやはり親がしっかりしなくてはならない。0 歳から 3 歳までの間、この

間に本当に親子が絆を結び付けなければいけないのだろうなと思いました。

人に良いもの、それが食だというように聞きましたし、心を受け止めると

いうことは私は愛だというように思っています。本当に自然豊かで人情味

に厚いこの岩手で今日こういうフォーラムが出来たということを非常に感

謝いたしますし、私たち親として深く反省をさせられました。私も輝く目

を持ちたい、持ち続けたいと思いました。

本当に先生方、今日はありがとうございました。