出所: cifit...

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9 2. 厦門―欧州の鉄道ライン CIFIT:The China International Fair for Investment and Trade は中国の国家レベルの 投資、貿易関連の展示会であり、2016 年投商会展覧ブースは、アモイ国際会展センター展 館(A号館、B号館とC号館)、約 6000 個の国際スタンダードブースが設置されました。 図 8 CIFIT に参加した中国の要人( 2010 年) 出所: CIFIT HP ・県内関係のブース 会場には亜熱帯資源研究所、オリオンビール株式会社、有限会社 AIH、沖縄薬草村・み どりの駅、DIRECT CHINA 等の企業展示もあった。反応は総じて好評とのことであったが、 物流、ブランド、販路等の課題を抱えているのとのことだった。中国の健康志向を反映し て、健康・長寿をキーワードにした賞品が好評であるとのことでした。 図 9 CIFIT 2016 の沖縄関連のブース(筆者撮影)

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    2. 厦門―欧州の鉄道ライン

    CIFIT:The China International Fair for Investment and Trade は中国の国家レベルの

    投資、貿易関連の展示会であり、2016 年投商会展覧ブースは、アモイ国際会展センター展

    館(A号館、B号館とC号館)、約 6000 個の国際スタンダードブースが設置されました。

    図 8 CIFIT に参加した中国の要人( 2010 年)

    出所: CIFIT HP

    ・県内関係のブース

    会場には亜熱帯資源研究所、オリオンビール株式会社、有限会社 AIH、沖縄薬草村・み

    どりの駅、DIRECT CHINA 等の企業展示もあった。反応は総じて好評とのことであったが、

    物流、ブランド、販路等の課題を抱えているのとのことだった。中国の健康志向を反映し

    て、健康・長寿をキーワードにした賞品が好評であるとのことでした。

    図 9 CIFIT 2016 の沖縄関連のブース(筆者撮影)

  • 10

    ・福建省厦門市の展示館

    福建省の経済特区・優遇措置、港湾、空港等のネットワーク等が展示されていましたが、

    興味を引いたのは厦門―ヨーロッパの鉄軌道でした。軽量貨物は航空機、重量は船舶が定

    石ですが、鉄軌道はその中間で、時間と費用を組み合わせて効率的な輸送ができ、西アジ

    アやヨーロッパへの輸送が効率的に展開できます。これは中国の「一帯一路」政策とも関

    連していますが、沖縄を起点した場合、厦門止まりではなく、ヨーロッパ等への広域展開

    ができる可能性にもつながると思われます。

    列車は中央アジアを経由して欧州までの路線となっています。沖縄から厦門港まで県産

    品及び本土の原料・商品を持ち込めば、中央アジアや欧州に陸路で輸送でき、成熟した欧

    州、これから発展する中央アジアへとマーケットが拡大する可能性があります。輸送の選

    択が空路、海路しかない現在のロジスティクスの課題が解決できるかもしれません。

    「アジアでは、まだまだ安心してユーザーが中古車を購入することができない状況だ。販

    売されている中古車には価格が表示されていないし、走行距離や過去の自動車修復履歴な

    ども明示されていない。このような状況から、アジア中古車流通に残されている課題は「中

    古車流通の健全化」であるといえる。」8との指摘があります。沖縄のレンタカー上がりの上

    質な中古車を厦門まで海路、その後鉄道で中央アジアに運び販売することも検討に値する

    のではないでしょうか。

    8 LAPITA レポート・コラム 川崎 大輔「アジア中古車流通の課題と展望」

    http://www.lapita.jp/2015/08/kawasaki-clmn01.html

  • 11

    図 10 厦門―欧州の鉄道ライン

    出所:CIFIT における厦門市展示資料

    図 11 厦門―欧州の鉄道ライン地図

    出所:CIFIT における厦門市展示資料

  • 12

    ・中央アジアの経済

    中央アジアとは、ユーラシア大陸中央の内陸地域で、それぞれ旧ソ連の構成国だったウ

    ズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン の 5 つの国で

    構成されています。この地域は、古くからシルクロードを介して文化交流、物資の往来が

    盛んでした。現在もロシア、中国、アフガニスタン、イランなどと国境を接し、欧州とア

    ジア、中東地域を結ぶ十字路として地政学的に重要な地域と考えられています。9

    これらの国々はソ連崩壊後、独立を果たして四半世紀が経ちます。市場経済化を進めて

    きましたが、資源を持つ国と持たざる国、宗教や民族問題を抱えているかどうかで経済発

    展状況に差が生じています。10

    中央アジア 5 か国はいずれもイスラム教(スンニ派)国で、それぞれの国の言語が公用

    語となっていますが、旧ソ連の構成国だったこともあり、各国で都市部を中心にロシア語

    も広く通用します。日本にとって中央アジア諸国は石油、天然ガス、ウランなどのエネル

    ギー資源、レアメタル等の鉱物資源供給国です。

    図 12 中央アジア諸国

    出所:外務省 HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol94/による。

    資源国においては、資源による国家収入増を背景に国内産業の強化に務めていますが、

    農業に依存した経済からの脱却が完全に出来ているわけではありません。ウズベキスタン

    は豊富な石油や天然ガス、鉱物資源を有することや、外資との合弁会社設立による自動車

    産業の強化等を背景に工業化を推進してきてはいるものの、依然、経済の主体は農業に依

    9 外務省 HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol94/ 10 JETRO HP https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/01/3cff8a4cf0644923.html

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    存している状況が続いています。11

    各国には共通して日本製品に対する信頼があります。日本企業のビジネスはカザフスタ

    ンとウズベキスタンが中心で、これにトルクメニスタンが加わってきました。人口ではウ

    ズベキスタンが約 3,100 万人で最大であり、1 人当たりの GDP ではカザフスタンが突出し、

    1 万ドルを超えています。

    ウズベキスタンとカザフスタンでは中間層が拡大しており、日本の優れた製品のほか、

    都市開発、環境、高齢化に向けたサービスなどにビジネスチャンスがありそうです。12

    表 3

    3. 厦門港発のクルーズ船

    沖縄に寄港するクルーズ船が急増しています。2006 年には 21 回だったのが 2016 年には

    457 回(2016 年 3月 31 日時点見込み)と急増しています。那覇港だけでなく、すでに石垣

    港、中城湾港、平良港、本部港にも入っています。しかし、現在、接岸のバースの不足に

    より、せっかくの来県を受け入れできない状況もあります。また、一部、バス不足等の二

    次交通での課題もあることから、県として対応に全力を挙げているところです。

    11 The POVERTIST http://www.povertist.com/ja/central-asia-development-overview/ 12 JETRO HP https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/01/3cff8a4cf0644923.html

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    図 13

    出所:沖縄総合事務局「沖縄県内に寄港するクルーズ船の見込みについて」平成 28 年4月 21 日

    厦門港クルーズ・ターミナルを視察したところ、フロアーは客で埋め尽くされ、活況を

    呈していました。航路は厦門を起点にして韓国、フィリピン、福岡等に就航しているが、

    沖縄が最も人気があるとのことでした。料金も沖縄クルーズは7万円程度あるとのことで、

    今後、富裕層だけでなく、中間層の拡大が見込まれ、現行のバースを3倍にする計画があ

    り、近々工事が行われるとのことでした。

    これは、厦門からのクルーズ船が 2、3倍になることを意味し、県はさらなる対応が迫ら

    れます。

    図 14 厦門クルーズ船ターミナルと今後の拡張予定地(筆者撮影)

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    結び

    福建―台湾―沖縄トライアングル経済圏について検討し、その成立の可能性は見えてき

    ましたが、乗り越えねばならない課題も山積し、実現には至っていません。今後も検討・

    研究をつづけ、開花の努力を続けたいと思います。

    視察を通じて、7月に来県した厦門市外弁事処の詹副主席はじめ職員と再会でき、有意

    義な意見交換ができましたし、台湾の財界の方とも意見交換ができました。これまで述べ

    たビジネス要件も重要ですが、アジアのビジネス展開においては、情報交換と交渉が必要

    であり、ヒューマンネットワークはさらに重要であると思います。

    中国政府も最近、地方間の友好と経済連携を推進しており、福建省と 1997 年に友好県省

    を締結し、来年は 20 周年の節目を迎える沖縄県は、友好を基に経済連携を強化し経済発展

    につなげるチャンスだと思われます。