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MMRC DISCUSSION PAPER SERIES MMRC-J-156 顧客志向から市場志向へ ―理論と測定― 東京大学大学院経済学研究科 博士課程 小菅 竜介 2007 3 東京大学 COE ものづくり経営研究センター MMRC Discussion Paper No. 156

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MMRC

DISCUSSION PAPER SERIES

MMRC-J-156

顧客志向から市場志向へ

―理論と測定―

東京大学大学院経済学研究科 博士課程 小菅 竜介

2007 年 3 月

東京大学 COE ものづくり経営研究センター MMRC Discussion Paper No. 156

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東京大学 COE ものづくり経営研究センター MMRC Discussion Paper No. 156

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顧客志向から市場志向へ ―理論と測定―

東京大学大学院経済学研究科 博士課程

小菅 竜介

2007 年 3 月

要約:本稿では、マーケティング・コンセプトの実行に関連する研究のレビューを行

う。これまで、個人の販売行動に焦点を当てる顧客志向研究と、事業単位の組織文化

に焦点を当てる市場志向研究は、異なる測定方法に依拠して別個に発展してきた。今

後は、測定対象と調査対象を切り離して考えることで、両研究の接点が見出される。

キーワード:マーケティング・コンセプト、顧客志向、市場志向

1. はじめに

企業経営の中心に顧客を据える考え方は、マーケティング分野において「マーケティン

グ・コンセプト」(marketing concept) として概念化されている。ピーター・F・ドラッカーが、

「マーケティングはセリングよりずっと広範なものであるというだけでなく、決して専門的

な活動でもない。それは事業全体を包含するものである。それは事業の 終成果物、すなわ

ち顧客の観点から見た事業全体である。」(Drucker, 1954) と述べて以来、マーケティング・

コンセプトは経営原則の 1 つとしてマネジャーの間で信奉されている。一般に、マーケティ

ング・コンセプトは、顧客フォーカス、利益志向、組織的マーケティングという 3 つの要素

から成るものとしてとらえられている (McNamara, 1972)。しかし、それは必ずしも厳密に概

念化されているわけではなかった。そのため、その理想的なアイデアを実際に日々実行する

のは困難であることも指摘された (Barksdale & Darden, 1971)。また、そもそもマーケティン

グ・コンセプトを実行することの有効性も逸話的なものにすぎなかった。

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ところが、1980 年代以降、マーケティング分野では、マーケティング・コンセプトの実

践に関して詳細な検討をしようという動きが現れている。これらの研究は、基本的に 2 つの

タイプに分類することができる。第 1 のタイプの研究は、1980 年代以降、主に個人の販売

行動に関する研究の中で発展し、マーケティング・コンセプトの個人レベルでの実行に焦点

を当てるものである。販売員の行動を、自己評価によって、「顧客志向」 (customer orientation)

または「顧客志向型販売」 (customer-oriented selling) として測定するという方法がとられて

いる (Saxe & Weitz, 1982)。これまでに Journal of Personal Selling and Sales Management 誌等

で多くの論文が発表されている。第 2 のタイプの研究は、1980 年代後半以降、戦略論およ

び組織文化論の発展を背景に台頭し、マーケティング・コンセプトの組織レベルでの実行に

焦点を当てるものである。事業単位の組織文化を、マネジャーの評価によって、「市場志向」

(market orientation)として測定するという方法がとられている (Kohli & Jaworski, 1990;

Narver & Slater, 1990)。これまでに Journal of Marketing 誌等で数多くの論文が発表されてい

る。

しかし、これら「顧客志向研究」と「市場志向研究」は、同じマーケティング分野の中で

も、基本的に別個に発展してきた。そこで本稿の目的は、同じマーケティング・コンセプト

の実行を問題関心とするにもかかわらず、相互の交流が極めて少ない顧客志向研究と市場志

向研究のそれぞれに関して文献レビューを行うことである。特に、研究方法に焦点を当て、

両者の共通点と相違点を整理する。そこからマーケティング・コンセプトの実行に関する新

たな研究の可能性も見えてくる。

結論を先取りすれば、市場志向研究では、暗に、(1) 製造業を想定して、(2) 組織文化が

組織内で同質的であると仮定し、組織をマネジャーで代表させ、実際に販売・サービスの現

場で顧客と接触している従業員の存在を看過してきた。そのため、市場志向が事業成果に正

の影響を与えることは明らかであるものの、その因果経路を説明するのに も重要な従業員

変数がモデルから外れてしまっていた。確かに、市場志向は事業単位の組織文化を測定し、

顧客志向は販売員行動を測定しているという本質的な違いがある。しかし、どの測定尺度を

用いて測定するかという問題と、誰が質問票に答えるのかという調査設計の問題とは、独立

の問題であるということに気がつく必要がある。それを従来は、個人を調査対象として個人

行動を測定し、事業単位のマネジャーを調査対象として組織文化を測定するという暗黙の前

提が置かれてきただけなのである。実際、特定の事業単位を構成する多数の個人に、所属す

る事業単位の組織文化を質問することは可能である。また、一般の人事考課がそうであるよ

うに、事業単位のマネジャーに、部下の販売員の行動を査定させることももちろん可能であ

る。しかも、本稿のレビューでも示唆されるように、誰を調査対象にするのかによって異な

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る結果が出てくる可能性がある。

2. 顧客志向研究―販売員の行動の測定― 個人の販売行動に関する研究では、以前からマーケティング・コンセプトと販売員の行動

の関連性が指摘されていた。例えば、Kurtz, Dodge, and Klompmaker (1976) は、マーケティ

ング・コンセプトを組織全体に導入する上では、販売員が、いかにして売るかということで

はなく、いかにして顧客の問題を解決するかを重視するようなプロフェッショナリズムを持

たなければならないと指摘している。1980 年代に入ると、このような考え方の妥当性を実

証的に検討しようとする動きが現れた。以下では、一連の実証研究を、(1) 概念化、(2) 測

定、(3) 先行変数と結果変数という 3 つのイシューから整理する。

2.1. 顧客志向の概念化

初にマーケティング・コンセプトを個人の販売行動として概念化しようとしたのは Saxe

and Weitz (1982) である。Saxe and Weitz (1982) は、マーケティング・コンセプトの実行は販

売員の販売行動を通じて具現されるという視点から、顧客志向型の販売 (customer-oriented

selling) または顧客志向 (customer orientation) を「マーケティング・コンセプトの個人レベ

ルでの実践」として位置づけた。Saxe and Weitz (1982) は、顧客志向型の販売を「顧客が自

らのニーズを満たす購買意思決定ができるよう手助けすることによって、マーケティング・

コンセプトを実践する度合い」として定義している。Saxe and Weitz (1982) によると、顧客

志向の販売員は長期的な顧客満足を意図した行動をとる一方で、顧客不満足につながるよう

な行動、すなわち顧客の利益を犠牲にするような行動を避け、結果としてして迅速な販売を

実現する可能性を増加させる。また、顧客志向の販売員は、他者への配慮が高く、顧客に対

して圧力をかけず、ニーズ満足型または問題解決型のアプローチをとると考えられる。ここ

における顧客志向は連続的な概念であり、顧客志向の程度が低い状態は「販売志向」(selling

orientation) と呼ばれる。Saxe and Weitz (1982) は、文献レビューと 25 人の販売員および販

売マネジャーへのインタビューにもとづいて、顧客志向型の販売を以下のように特徴づけた。

1. 顧客が満足のいく購買決定をできるよう手助けすることを望む

2. 顧客が自身のニーズを評価できるよう手助けする

3. そのようなニーズを満たすような製品を提供する

4. 製品について正確な説明を行う

5. 虚偽的、操作的な影響戦術を避ける

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6. 高圧的なやり方を避ける

2.2. 顧客志向の測定 Saxe and Weitz (1982) は、産業財および消費財の販売員を含む 2 つのサンプルにもとづい

て項目の選択、尺度の信頼性・妥当性の確認を行った結果、“SOCO” (sales orientation–customer

orientation) という名の測定尺度を提示している(表 1)。尺度は合計 24 項目から成る。その

うち、肯定的な記述の 12 項目は顧客志向を評価するもので、残りの否定的な記述の 12 項目

は販売志向を評価するものである。販売志向の項目顧客は逆転項目として扱われる。質問票

は自己記入式で、各記述が当てはまる顧客(見込み客も含む)の割合を 9 点リッカート式で

評価する。

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顧客志向から市場志向へ

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表 1 SOCO 尺度

1. 自社の製品/サービスがお客様のためにどのように役立てるか的確に説明しようとする。

2. お客様が自分のニーズについて語ってくれるようにする。

3. ある製品/サービスがお客様に合っていないと思っていても、それを買わせようとお客様に圧

力をかける。 (R)

4. お客様に対して、実際にはそうではなくても、あることが自分の手には負えないということをほ

のめかす。 (R)

5. 圧力というよりはむしろ情報によってお客様に影響を与えようとする。

6. お客様を満足させるというよりはむしろ、できるだけ多く販売しようとする。(R)

7. お客様のニーズを発見するのに費やす時間よりも、お客様を説得するのに費やす時間の方

が長い。(R)

8. お客様が自分の目標を達成できるようお手伝いする。

9. 自社の製品/サービスに関するお客様の質問に対して、できるだけ正確に答える。

10. お客様を喜ばすために、お客様が言うことに同意しているふりをする。(R)

11. お客様をライバル扱いする。 (R)

12. お客様のニーズがどのようなものであるか理解しようとする。

13. 良い販売員は、お客様の最大の利益を考慮しなければならない。

14. ある問題と、その問題を解決するのに役立つような製品/サービスを一緒にして、お客様に提

示しようとする。

15. お客様がより良い決定をできるようにするためには、進んでお客様の意見に異を唱える。

16. お客様の問題に最も適すような自社の製品/サービスを提示する。

17. お客様に自社の製品/サービスの説明をする上で、事実を誇張することが必要である。(R)

18. お客様のニーズを探るより先に、自社の製品/サービスのセールス・トークを行う。(R)

19. 賢いお客様なら買わないだろうと思うものでも、お客様を説得させることができそうなものなら

何でも売ろうとする。(R)

20. 自社の製品/サービスができるだけ良く思われるように、誇張した説明を行う。(R)

21. お客様を満足させることによって、自分の目標を達成しようとする。

22. 長い目で見てお客様を満足させるものは何かということではなく、自分がお客様に買うよう説

得することができるものは何かということにもとづいて、提供する製品/サービスを決定する。

(R)

23. どのような種類の製品/サービスがお客様にもっとも有益であるのかを理解しようとする。

24. お客様が買うよう圧力をかけるために、お客様の性格の弱みに目配りする。 (R)

※(R) は逆転項目を示す。

出所)Thomas et al. (2001)

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これ以降に行われた研究の多くは、そのまま、あるいは調査の文脈に応じて言い回しに変

更を加えたり、項目を削減したりしながら SOCO 尺度を用いている (e.g., O’hara, Boles, &

Johnston, 1991; Siguaw & Honeycutt, 1995)。そのほとんどが尺度の次元性(2 因子)および信

頼性を確認している。また、SOCO をベースとして、より簡便な尺度を開発する試みもある

Thomas, Soutar, and Ryan (2001) は、オリジナルの 24 項目版からほとんど情報損失がない 10

項目版を提示している。主成分分析と因子分析を通じて、尺度特性が販売員、顧客、販売マ

ネジャーという 3 つのグループを通じて一貫していることが明らかにされた。彼らは、この

短縮版 SOCO 尺度によって回答の負担および黙従バイアスを低減することができるだろう

と主張している。

SOCO 尺度は基本的に自己評価を想定しているが、誰を調査対象とするべきかは必ずしも

自明ではない。例えば、Michaels and Day (1985) は、質問項目の主語を「私」から「販売員」

に変えて、産業材の購買担当者による回答にもとづいて SOCO 尺度の追試を行った。その結

果、因子構造は Saxe and Weitz (1982) の結果とほぼ同一で、尺度の内的一貫性はむしろ高い

ことが示された。しかし、平均値に関しては、9 点中、Saxe and Weitz (1982) の結果より 2

点ほど低いことが明らかになった。この結果について、Michaels and Day (1985) は、販売員

による自己評価は上方にバイアスがかかる可能性があることを指摘している。また、Thomas

et al. (2001) でも、顧客による評価は販売員による自己評価よりも低く、マネジャーによる

評価はさらにそれよりも低いことが示されている。

2.3. 顧客志向の先行変数と結果変数

既存研究では、顧客志向を測定して、その先行変数 (antecedent)、すなわちそれがどのよ

うな要因から形成されるのかということ、また、結果変数 (consequence)、すなわちそれが

影響を及ぼす要因に関して様々な検討を行っている。図 1 は、そのような顧客志向の先行変

数と結果変数を整理したものである。図で示したように、先行変数は大まかに組織要因と個

人要因に分けられる。一方、結果変数は、販売に関するパフォーマンス、顧客への影響、販

売員自身への影響に分けられる。

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先行変数のうち、組織要因については、従業員が知覚する企業の顧客志向 (Siguaw, Brown,

& Widing, 1994)、サービス風土 (Kelly, 1992)、支援的な職場環境 (Boles, Babin, Brashear, &

Brooks, 2001) 等の他、信頼と頻繁なやりとりにもとづく監督者と従業員の関係性 (O’Hara et

al., 1991)、マネジャーの変革型リーダーシップ・スタイルやエンパワーメント (Martin & Bush,

2006) 等が顧客志向に正の影響を与えることが示されている。また、SOCO 尺度を用いてい

ないものの、目標達成のための手段を問わない成果ベースのコントロール・システムよりも

行動ベースのコントロール・システムの方が顧客志向の促進に適することが示唆されている

(Anderson & Oliver, 1987; Cravens, Ingram, LaForge, & Young, 1993)。個人要因については、男

性よりも女性が (Pettijohn, Pettijohn, & Parker, 1997)、在職期間が短いほど (O’Hara et al.,

1991)、顧客志向度が高いことが示されている。また、コミットメントや職務満足 (Joshi &

Randall, 2001; O’hara et al., 1991)、学習目標志向 (Harris, Mowen, & Brown, 2005)、仕事の有意

義感 (Thakor & Joshi, 2004) 等の職務反応も顧客志向に正の影響を与えることが示されてい

る。

販売員の顧客志向は販売員のパフォーマンスに正の影響を与えることが示されている

(Boles et al., 2001; Brown, Mowen, Donavan, & Licata, 2002)。パフォーマンスは自己評価によっ

て測定されるのが普通であり、例えば、目標達成、利益貢献、見込み客の特定、上司の支援

等が他の販売員と比べてどの程度の水準であるかを評価するリッカート尺度が用いられて

いる (Sujan, Weitz, & Kumar, 1994)。また、顧客志向は顧客満足 (Goff, Boles, Bellenger, &

Stojack, 1997) や顧客との長期的関係性 (Schultz & Good, 2000) 等、顧客反応に正の影響を与

図 1 顧客志向の先行変数と結果変数

図 1 顧客志向の先行変数と結果変数

組織要因

個人要因

販売員反応

顧客志向

パフォーマンス

顧客反応

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えることが示されている。販売員反応については、顧客志向は役割ストレスや役割の曖昧性

などを低下させる働きがあることが示唆されている (Siguaw et al., 1994; Singh, Verbeke, &

Rhoads, 1996)。また、Donavan, Brown, and Mowen (2004) は、顧客志向が職務満足、組織コ

ミットメント、利他主義的な組織市民行動に正の影響を与えることを示している。彼らはこ

の結果にもとづいて、顧客志向は組織内に便益をもたらすので、マネジャーは顧客志向の従

業員を採用するべきだと主張している。

2.4. 顧客志向研究の展開―性格特性としての顧客志向―

近年では、顧客志向をより理論的に概念化する研究もある。Brown et al. (2002) は、心理

学における性格に関する文献にもとづいて、顧客志向を表層レベルの性格特性としてとらえ

ている。すなわち、基本的な性格特性が状況要因の影響によって表出したものが顧客志向だ

というわけである。具体的には、顧客志向を「職務の文脈において顧客ニーズを満たそうと

する従業員の性向」というように定義し、サービス従業員の能力と動機づけを理解するとい

う観点から、「ニーズ次元」と「楽しさ (enjoyment) 次元」という 2 つの次元から構成され

るととらえている。ニーズ次元は顧客ニーズを満たす能力に関する確信の程度を表し、楽し

さ次元は顧客とやりとりを行うことや顧客にサービスすることが従業員にとって生得的に

楽しい程度を表す。Brwon et al. (2002) は、ニーズ次元の測定においては Saxe and Weitz (1982)

から 6 項目を採用している。一方、楽しさ次元に関しては、以下の 6 項目を用意している。

1. お客様 1 人 1 人に微笑みかけることが簡単だ。

2. お客様の名前を思い出すのが楽しい。

3. お客様に共感するのは簡単だ。

4. お客様の要望にすぐさま応えるのが楽しい。

5. お客様を幸せなにすることで満足感が得られる。

6. お客様にサービスするのが本当に楽しい。

このような顧客志向の概念化によって、販売というよりも対人サービス全般の文脈を扱う

ことができるようになった。ただし、楽しさ次元を導入した理由は明らかでなく、今後はど

のような次元がありうるのかを検討する必要があるだろう。

3. 市場志向研究―事業単位の組織文化の測定― 1980 年代後半以降、マーケティング分野では、顧客志向研究とは別に、マーケティング・

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コンセプトに関する一連の実証研究が現れた。ここでは、マーケティング・コンセプトは基

本的に「市場志向」 (market orientation) として概念化されている。このため、本稿では一連

の研究を市場志向研究と呼ぶことにする。市場志向研究は、個人の販売行動に焦点を当てる

顧客志向研究と異なり、事業単位など組織のレベルにおける文化に焦点を当てることを特徴

としている。

市場志向研究の背景には、実務界と学術界の双方において組織文化への関心が高まったこ

とがある。1980 年代前半に、国際競争における日本企業の躍進を背景として組織文化論が

台頭し、その中で、顧客と密着するような組織文化が経営を成功に導くカギだと認識される

ようになっていたのである (Peters & Waterman , 1982)。このようなマーケティング・コンセ

プトの「再発見」(Webster, 1988) を受けて、マーケティング研究者はこれに関して本格的な

研究を行うとするようになった。アメリカでは、マーケティング・サイエンス学会 (Marketing

Science Institute: MSI) の奨励の下、1980 年代後半からマーケティング・コンセプトを定義、

測定、モデル化する試みが行われるようになり、1990 年には 2 編の論文―Kohli and Jaworski

(1990) と Narver and Slater (1990)―によって「市場志向」(market orientation) 概念が確立され

た。

3.1. 市場志向の概念化

Kohli and Jaworski (1990) は,理念としてのマーケティング・コンセプトに対して、その「実

行」を表すものとして市場志向を概念化した。文献レビューに加えて,様々なタイプの企業

におけるマーケティング部門および非マーケティング部門のマネジャー62 人、さらに 2 つ

の大学における 10 人の研究者に対してインタビューを行った。それにもとづいて、彼らは

「市場志向とは、全組織的に既存および潜在顧客のニーズに関する市場情報 (market

intelligence) を生成し,その情報を部門横断的に普及し,全組織的にそれに反応すること」

(p.6) というように定義を行っている。市場情報の生成 (generation) は顧客のニーズ・選好

に関する情報を獲得する活動を表す。市場情報の普及 (dissemination) は生成された情報を

組織中に効果的に普及することを表す。反応 (responsiveness) は,生成され普及された情報

に応じて取られる行動を表し、設計と実行という 2 つの段階に分けられる。

一方、Narver and Slater (1990) は,マーケティング・コンセプトと持続的競争優位に関す

る文献のレビューから,市場志向を「既存および潜在顧客に対して優れた価値を創造するの

に必要な行動を, も効果的かつ効率的に作り出す組織文化」と定義した。そして、それが

「顧客志向」(customer orientation),「競合者志向」 (competitor orientation),「機能間調整」

(interfunctional coordination) という等しく重要な3つの行動要素から成る一次元の構成概念

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であると仮定した。当初は、長期フォーカスと利益性という2つの意思決定基準も含められ

ていたが、信頼性分析をパスしなかった。「顧客志向」は、顧客に対して優れた価値を創造

するために将来にわたって顧客のことを理解することを表す。「競合者志向」は、既存およ

び潜在競合者に関する情報を獲得し、また、その短期的な強み・弱み、長期的な組織能力を

理解することを表す。「機能間調整」は、ターゲット顧客に対して優れた価値を創造する上

で企業の資源を組織的に活用することを表す。

両定義の相違として、Kohli & Jaworski (1990) は情報関連の行動として定義しているのに

対し、Narver & Slater (1990) は組織文化として定義している点に注目することができる。こ

のため、前者を「行動パースペクティブ」、後者を「文化パースペクティブ」と分類する場

合もある (Homburg & Pflesser, 2000)。このうち、文化パースペクティブを提唱する論者の主

張は、行動は文化を伴わない限り持続維持しないだろうという推論や、もし市場志向が行動

ならばもっと簡単に移転されてしかるべきだという逸話的証拠にもとづいている (Day,

1994; Narver & Slater, 1998)。ただ、Narver and Slater (1990) による概念化からわかる通り、文

化パースペクティブは実際の操作化においては、どちらかといえば行動に焦点を当てている

点に注意が必要である。なお、先行研究の多くは、2 種類の定義のうち、どちらを採用する

かに関しての立場を言明しない場合が多い。実際、定義に関して理論的な考察を行う先行研

究は少ない。

3.2. 市場志向の測定 市場志向を実証的に検討する上で、Kohli, Jaworski, and Kumar (1993) による “MARKOR”

と Narver and Slater (1990) による“MKTOR”という 2 つの測定尺度が開発されている。

MARKOR は当初は 32 項目だったが (Jaworski & Kohli, 1993)、 終的には表 3 に示されるよ

うな 20 項目から成る尺度として示されている。項目は、情報生成、情報普及、反応に関す

るものである。一方、MKTOR は、表 4 に示されるような 15 項目から成る尺度である。15

項目は 3 つの行動要素―顧客志向、競合者志向、機能間調整―に関するものである。いずれ

の尺度においても市場志向の得点は各項目の単純平均によって求められる。前者は 5 点リッ

カート(全くそう思わない~非常にそう思う)、後者は 7 点リッカート(全くそうでない~

極度にそうである)で、各記述が当てはまる程度について自己回答を行う。

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顧客志向から市場志向へ

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表 2 MARKOR 尺度

1. この事業単位では、顧客が将来どのような製品またはサービスを必要とするのかを調

べるために、少なくとも年に1度は顧客と会っている。

2. この事業単位では、自前の市場調査を数多く行っている。

3. 製品に対する顧客の嗜好の変化を発見するのが遅い。(R)

4. 製品とサービスの品質を評価するために、少なくとも年に1度はエンドユーザーの調

査を行っている。

5. 業界の根本的変化(競争、技術、規制など)を発見するのが遅い。(R)

6. 事業環境の変化(規制など)が顧客に対して与えうる影響を定期的に検討している。

7. 市場のトレンドと発展について議論するために、4半期に1度は部門間会議を開催して

いる。

8. この事業単位のマーケティング要員は、他の機能部門と顧客の将来のニーズについて

話し合っている。

9. 主要な顧客または市場に重要なことが発生したら、一瞬のうちに、事業単位全体にそ

のことが知れ渡る。

10. 顧客満足に関するデータは、事業単位のあらゆるレベルに定期的に広められるてい

る。

11. ある部門が競合他社について何か重要なことを発見した時、他の部門に注意を喚起す

るのが遅い。(R)

12. 競合他社の価格変更にどのように対応するかを決定するの大変な時間がかかる。(R)

13. なにかしらの理由で、顧客の製品またはサービスのニーズの変化をないがしろにする

傾向がある。(R)

14. 顧客が求めているものに従っているのを確認するために、定期的に製品開発活動の見

直しを行っている。

15. 事業環境で起こっている変化への反応を計画するために、いくつかの部門が定期的に

集まっている。

16. もし主要な競合他社が自社の顧客に向けて集中的なキャンペーンを打とうとしてい

れば、すぐさま対応策を実行するだろう。

17. この事業単位における異なる部門の活動はよく調整されている。

18. この事業単位では、顧客の苦情は聞き流されてしまう。(R)

19. 素晴らしいマーケティング・プランを考えついたとしても、おそらく時宜を得た方法

でそれを実行することはできないだろう。(R)

20. 顧客がある製品またはサービスを変更したいことがわかったら、関連する部門はそれ

に対応すべく協調努力する。

※(R) は逆転項目を示す。

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2 つの尺度のうち、いずれが適切であるかに関しては見解の一致を見ていない。先行研究

は、特に理由づけをすることなく、どちらかの尺度を裁量的に選択している。ただし、近年

では両尺度を比較したり、統合したりする試みも行われている (e.g., Deshpande & Farley,

1998; Gray, Matear, Boshoff, & Matheson, 1998)。Deshpande and Farley (1998) は MKTOR と

MARKOR、さらに 9 項目から成る Deshpande et al. (1993) の尺度を比較した結果、どれも信

頼性、内的・外的妥当性の点でほぼ同等であり、3 つの尺度が相互に代替可能であることを

示した。この前提の下、3 つの尺度を構成する全ての項目を因子分析することで、より簡便

な 10 項目の尺度を開発した。Deshpande and Farley (1998) は、この尺度が全般的に顧客への

フォーカスに関するものだったことから、直観的な統合性があるだろうと考えた。これに対

し、Farrell (2002) は、MKTOR と MARKOR を組み合わせ、項目を因子分析するという実証

的方法によって新しい尺度を開発することは無意味だと批判している。Farrell (1998) は、自

表 3 MKTOR 尺度

1. 販売員は社内で定期的に競合他社の戦略に関する情報を共有している。

2. 経営目標は第一に顧客満足によって決定されている。

3. 脅威となる競争行動に迅速に対処している。

4. 顧客ニーズに応えることへのコミットメントと志向の水準を常に評価している。

5. どの職能のトップ・マネージャーも,既存顧客および見込み顧客を定期的に訪問して

いる。

6. 成功した顧客体験・失敗した顧客体験に関する情報のやりとりを、事業機能を超えて

自由に行っている。

7. 競争優位のための戦略は顧客ニーズの理解にもとづいている。

8. 全ての事業機能はターゲット市場のニーズを満たすべく統合されている。

9. 戦略は,どのようにしたら顧客に対してより大きな価値を創造できるかに関する信念

によって決定されている。

10. 顧客満足を体系的かつ頻繁に測定している。

11. 販売後のサービスに細心の注意を払っている。

12. トップマネジメントは競合他社の強み・戦略について定期的に議論している。

13. マネージャー全員が、企業内の各人がどのようにして顧客価値の創造に貢献するのか

を理解している。

14. 競争優位の機会があるようなところにおいて顧客のターゲティングを行う。

15. 他の事業単位と資源を共有している。

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顧客志向から市場志向へ

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ら同様の方法で内容妥当性の要件を満たす新たな尺度を開発しながら、それが適切な理論と

概念化を欠く以上、学術的な貢献はほとんどないと主張している。

市場志向は、事業単位を分析単位として、キー・インフォーマント・アプローチによって

測定されるのが通例である。すなわち、単独またはごく少数のマネジャーが事業単位を代表

して、MARKOR か MKTOR によってその事業単位の市場志向を評価するという方法が一般

的である。Kohli and Jaworski (1990) は、戦略事業単位 (SBU) が適切な分析単位である理由

として、1 つの企業の内でも、市場志向の程度は SBU によって異なるだろうと指摘している。

しかし、キー・インフォーマントを調査対象とする根拠は示されておらず、実際にその妥当

性は確保されていない。実際、Ruekert (1992) は、個人のバイアスを排除しつつ事業単位内

の活動を包括的にとらえるために、5 つの SBU における多数のマネジャーを対象に調査を行

った結果、1 つの事業単位の内でもマネジャーによって市場志向の評価にばらつきがあるこ

とを明らかにしている。

また、そもそも市場志向は内部からの評価はでなく、顧客によって評価されるべきだとい

う指摘もある。Deshpande, Farley, and Webster (1993) は、「市場志向」というよりも「顧客志

向」を検討する中で、自己評価による顧客志向は顧客の評価による顧客志向よりも高くなる

こと、そして、実際に業績に影響を与えるのは後者の方であることを実証している。また、

Webb, Webster, and Krepapa (2000) は、Drucker (1954) がマーケティングを「顧客の観点から

見た事業活動の全体」と論じたことを根拠に、企業の市場志向は「顧客の観点」から評価さ

れてこそ意味があると主張し、実際に顧客が知覚する市場志向がサービス品質と顧客満足の

両方に正の影響を与えることを示している。

3.3. 市場志向の先行変数と結果変数

Narver and Slater (1990) は、初めて市場志向と業績の関連性を実証的に検討した。業績と

しては、ROA が取り上げられ、PIMS の慣例にならい、当該 SBU の業績が競合他社と比較

してどの程度の水準にあるかというマネージャーの主観によって評価された。ある林産品企

業における 100 以上の SBU を分析することで、市場志向が非コモディティ業績に対して線

形の正の影響を与える結果を得た。一方、コモディティ事業でも基本的に市場志向は業績に

正の影響を与えることが示されたが、それは線形ではなく、U 字型の関係が成り立つことが

示唆された。すなわち、コモディティ事業の場合、市場志向度が中程度の事業部は、市場志

向度がより低い事業部よりも収益性が低い一方、市場志向度の高い事業部が全てのうち も

高い収益性を実現していることが明らかになった。この結果は、業種によっては低コスト戦

略も機能しえることを示唆している。

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一方、Kohli and Jaworski (1990) は市場志向のモデルに関して、(1) 市場志向を促進もしく

は阻害する先行変数、(2) 市場志向概念、(3) 市場志向の結果変数、(4) 市場志向と業績の関

係性の強さに影響を与えるモデレーターという 4 つの要因から構成される概念フレームワ

ークを提示した (図 2)。図 2 に示されるように、先行変数としてはシニア・マネジメント要

因、部門間ダイナミクス、組織システムが、結果変数としては事業業績の他に顧客反応と従

業員反応が挙げられている。モデレーターとしては、供給サイドのものと需要サイドのもの

が導入されている。

図 2 市場志向の先行変数と結果変数

出所) Kohli and Jaworski (1990)

このモデルにもとづいて、Jaworski and Kohli (1993) は、222 の SBU をサンプルとして実

証研究を行った。各 SBU につき 2 人のインフォーマントから回答を得て、それにもとづい

て回帰分析が行われた。業績は競合者と比較して全般的にどの程度であるかという主観的判

断と、ROE による客観的尺度の両方を基準とした。分析の結果、市場志向は特に、トップ・

マネジメントによる市場志向の強調 部門間コンフリクト(-)、部門間連結、報酬体系の影

響を受けることが示された。また、市場志向は市場変動、競争強度、技術変動といった環境

条件に関係なく業績の重要な決定要因になることが示唆された。ただし、その業績とは回答

者の主観的評価によるもので、ROE との関連性は見出されなかった。顧客反応は検討され

なかったが、従業員反応に関しては組織コミットメントとチーム・スピリットを高めること

が示唆された。

近年では、数多くの研究の蓄積を受け、このようなモデルに関してメタ分析を行う研究も

シ ニ ア ・ マ ネジメント要因

市場志向

組織システム

部門間

ダイナミクス

需要サイド

モデレーター

供給サイド

モデレーター

顧客反応

従業員反応

事業業績

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顧客志向から市場志向へ

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現れている (Cano, Carrillat, & Jaramillo, 2004; Kirca, Jayachandran, & Bearden, 2005)。ここでは、

先行変数と結果変数に関する既存研究の知見を明らかにするために、Kirca et al. (2005) のメ

タ分析の結果を整理する。

Kirca et al. (2005) は、合計 114 の研究で報告された 130 の独立サンプルから得られたデー

タにもとづいて、(1) これまでの研究で頻繁に検討されてきた市場志向の先行変数と結果変

数、(2) 市場志向が業績につながる因果経路、(3) 測定およびサンプルの特性が市場志向と

業績の関係性の強さに与える影響を検討している。彼らはメタ分析に当たり、図 3 のような

包括的モデルを提示している。

先行変数に関する 2 変量間の相関分析では、市場志向はトップ・マネジメントによる強調

(r = .44, p < .05)、部門間の連結性 (r = .56, p < .05)、市場ベースの報酬システム (r = .41, p

< .05)、市場志向の研修 (r = .54, p < .05) と有意な正の相関が示された。また、市場志向と部

門間コンフリクト (r = -.28, p < .05)、集権化 (r = -.27, p < .05)、公式化 (r = -.12, p < .05) と有

意な負の相関が示された。次に、先行研究が別個に検討してきた変数の効果を同時に評価す

るために多変量パス解析を行った結果、p 値も適合度指標も良好な値が示された。部門間の

連結性 (β= .36, p < .05) を筆頭に、トップ・マネジメントによる強調 (β= .25, p < .05)、市

場ベースの報酬システム (β= .24, p < .05) が市場志向の重要な先行変数であることが明ら

かになった。 一方、集権化と公式化のパス係数は有意でなかった。この結果は、公式化の

図 3 Kirca et al. (2005) によるメタ分析のフレームワーク

Kirca et al. (2005, p.26) を元に筆者作成。

トップ・マネジメント要因

市場志向

組織システム

部門間要因

顧客

組織成果

イノベーション

従業員

測定・サンプルの特性 環境モデレーター

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程度よりも公式化された規則の性質が重要であること、部門間の連結性と報酬システムが市

場志向に対する公式化の負の影響を打ち消すことを示唆するものである。

一方、結果変数に関する 2 変量の分析では、まず市場志向と業績 (r = .32, 0 < .05) の間に

正の相関が示された。この他、市場志向は知覚品質 (r = .36, p < .05)、顧客ロイヤリティ (r

= .35, p < .05)、顧客満足 (r = .45, p < .05) とも有意な正の相関が示された。また、市場志向

は組織意の革新性 (r = .45, p < .05)、新製品パフォーマンス (r = .36, p < .05)と有意な正の相

関が示された。従業員の結果変数については、市場志向は組織コミットメント ( r = .71, p

< .05)、チーム・スピリット (r = .51, p < .05)、顧客志向 (r = .25, p < .05)、役割葛藤 (r = -.54, p

< .05)、職務満足 (r = .61, p < .05) と有意な正の相関が示された。

この結果に関して、市場志向と業績の間における媒介要因を多変量で分析した結果、 終

的に図 4 のように、市場志向から業績への直接的影響 (β= .17, p < .10) の他に、市場志向が

革新性 (β= .46, p < .05) へつながること、そして革新性が顧客ロイヤリティ (β= .49, p

< .05) と知覚品質 (β = .64, p < .05)を媒介して業績に影響を与えることが明らかになった。

さらに、業績は客観的に評価した場合よりも主観的に評価した場合の方が、また、サンプ

ルとしてサービス業よりも製造業を選択した場合の方が、市場志向と組織成果の関係性が強

くなることが明らかになった。また、ノンパラメトリック符号検定から、先行研究において

モデレーターとして検討されている市場の変動性、技術の変動性、競争強度という 3 つの環

境変数は、市場志向と業績の関係性に有意な影響を与えないことがわかった。つまり、市場

志向の有効性は環境条件に左右されないことが示唆された。

3.3. 新たな展開―市場志向型組織文化― マーケティング分野に組織文化概念が取り入れられるようになったのは 1980 年代後半の

図 4 市場志向と業績の間の媒介要因

組織の業績

品質

革新性

ロイヤリティ

市場志向

.17

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顧客志向から市場志向へ

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ことである。Deshpande and Webster (1989, p.4) は、組織文化を「個人が組織機能を理解でき

るようにして組織における行動の規範を与えるような共有された価値・ビリーフのパター

ン」と定義し、マーケティング・コンセプトを「企業の戦略およびオペレーションに関する

思考の中心に顧客を据えるような組織文化」と定義した。Deshpande and Webster (1989) はマ

ーケティング研究者に組織文化を取り入れた研究を呼びかける中で、組織文化研究の多様な

パラダイムに留意するべきだと指摘している。

しかし、このような Deshpande and Webster (1989) の提唱にもかかわらず、市場志向アプ

ローチにおいて組織文化が厳密に概念化されることはなかった。例えば、上で指摘した通り

Narver and Slater (1990) は、市場志向を組織文化として明確に定義し、その機能には注目す

るものの、組織文化の性質についてはほとんど言及していない。そして、先に触れた通り、

市場志向を組織文化の観点から定義しながらも測定においては行動に焦点を当てている。

Homburg and Pflesser (2000) は、Narver and Slater (1990) による市場志向の概念化を一応

「文化パースペクティブ」に分類しながらも、それが不十分であり、実質上の意味を持たな

いことを指摘した。そして、Narver and Slater (1990) が行動は必然的に文化を反映するもの

であると仮定しているの対し、組織文化は行動の必要条件であっても十分条件ではないと批

判した。Homburg and Pflesser (2000) は、Schein (1992) の組織文化モデルにもとづいて、市

場志向の組織文化を、(1) 価値、(2) 規範、(3) 人工物、(4) 行動という 4 つの要素から成る

ものとしてとらえた。価値については、例えばオープンな内部コミュニケーションの価値を

共有する組織では、情報が普及されるので、市場志向になりやすいという。規範はこのよう

な価値を特定の文脈における行動へ導く役割を果たすものである。人工物については、例え

ば、顧客志向型行動に秀でる従業員の「物語」、オープンでフレンドリーな顧客用の入り口・

歓迎エリアといった「配置」、顧客のためのイベントや顧客志向の従業員のための定期的な

褒賞といった「儀式」、顧客に対する問題解決の方法について議論するといった「言語」が

ある。

Homburg and Pflesser (2000) は、4 つの要素とパフォーマンスの間の因果関係に関して仮

説を立て、得られたデータにもとづいて共分散構造分析を行った。行動については

MARKOR を採用し、その他の各要素に関しては、定性調査に基づいて開発された測定尺度

を使用した。分析の結果、価値が規範に、規範が人工物に、人工物が行動に正の影響を与

えることが示された。仮説では規範から行動への経路も予想されたが、規範は人工物を通

じて間接的に行動に影響を与えることが示唆された。また、 終的に表出された行動は、

市場ダイナミズムをモデレーターとしながら、市場パフォーマンス、そして財務パフォー

マンスに正の影響を与えることが示された。

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Harris and Ogbonna (1999) によると、このような組織文化のとらえ方も一面的なものにす

ぎない。彼らによると、一般にマーケティング研究における組織文化とは、Martin (1992) が

提唱する「統合」 (integration) パースペクティブにもとづくものである。すなわち、ここで

の「組織文化」とは、「企業文化」と呼ぶべき,マネジメント可能で、業績を左右するよう

な組織レベルの変数のことである (e.g., Deal & Kennedy, 1982; Peters & Waterman, 1982)。この

ような見方においては,組織メンバーの一貫した行動を生み出し,持続させる「文化の強さ」,

すなわち統合性が強調され,文化は組織を通じて均質的で一元的であると仮定される。

Homburg and Pflesser (2000) のモデルも、基本的にこのパースペクティブにもとづくもので

ある。

Martin (1992) はこの他に、組織内に混在する複数の文化を強調する「分化」 (differentiation)

パースペクティブと、ポストモダンの考え方にもとづく「断片化」 (fragmentation) パース

ペクティブを提示している。これらのパースペクティブでは、組織文化は客観的な実在物と

いうよりも組織のメタファーとしてとらえられ、組織文化の基礎は組織メンバーが共有する

主観に求められる (Smircich, 1983)。このうち、1 つの組織において,異なる物の見方をする

複数の下位文化が存在すること強調する分化パースペクティブを採用することで、市場志向

型組織文化の多様性を考慮することができる。実際、Dougherty (1992) では、マーケティン

グ部門と R&D 部門と生産部門では「顧客第一」のとらえ方が異なり、それが製品ノベーシ

ョンを阻害することが示唆されている (Dougherty, 1992)。

4. 結論 本稿では、マーケティング・コンセプトの実行に関する実証研究を、顧客志向研究と市場

志向研究という 2 つのタイプに整理してきた。表 4 は、それぞれの方法論の特徴を要約した

ものである。

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顧客志向から市場志向へ

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第一に考慮しなければならないのは、両者では研究の焦点が根本的に異なるという点であ

る。すなわち、顧客志向研究では販売員の行動を測定する一方、市場志向研究では事業単位

の組織文化を測定する。しかしながら、両者は元々マーケティング・コンセプトの実行をい

かに操作化するということを問題関心としている。また、同じマーケティング分野での研究

ということから、先行変数と結果変数に関するモデルを 小 2 乗推定にもとづく回帰分析で

検証するという方法も共有している。しかし、これまでのところ、両者は特定の測定尺度に

もとづいて別個に発展してきた。つまり、直観に反し、両者の間にはほとんど交流がないの

が現状である。

市場志向研究のレビューから、組織と顧客の接点に関して 2つの発見が得られた。第 1に、

市場志向は顧客がそれを知覚してこそ業績につながる (Deshpande et al., 1993)。第 2 に、市

場志向は、直接業績につながるというよりも、ロイヤリティと知覚品質という顧客関連の要

因要因を媒介することで業績につながる (Kirca et al., 2005)。このような発見は、バウンダリ

ー・スパナーとして顧客と直接接触する販売員の行動が決定的に重要であることを示唆して

いる。さらに、このような視点は近年の関係性マーケティングの視点とも整合的である。特

に 1990 年代以降、販売員の行動に関する研究では、販売員の顧客志向を組織全体の文脈に

おいて位置づけられることが多い。企業が顧客と長期的な関係性を構築・維持する上では、

販売員の行動が決定的な役割を果たすことが強調されているのである (Beverland, 2001;

Crosby, Evans, & Cowles, 1990) 。

ところが、市場志向研究では従業員変数を看過してしまっている。既存の市場志向研究が

従業員変数を取り込まないできた理由として、組織に関してある暗黙の前提を置いてきた可

能性を指摘することができる。第 1 に、先行研究は基本的に製造業を想定してきたと考えら

表 4 顧客志向研究と市場志向研究の特徴

代表的研究 焦点 測定尺度 測定方法

顧客志向研究 Saxe & Weitz (1982)

個人の販売行動

SOCO 自己評価

市場志向研究 Kohli & Jaworski (1990) Narver & Slater (1990)

事業単位の組織

文化 MKTOR MARKOR

事業単位のマネジ

ャーによる評価

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れる。そのため、市場ニーズの収集を行い、それにもとづいて製品を市場に投入するという

マーケティング機能に焦点を当てる一方で、販売機能、すなわち顧客と直接的に相互作用し

て価値を伝達するという視点を持たない。第 2 に、先行研究は、単独またはごく少数のマネ

ジャーが事業単位全体に関する評価を行うという方法からわかるように、組織文化は組織内

を通じて同質的だと仮定している。先行研究はこのような前提の下、特定の研究方法を形成

してきたのである。しかし、このような組織観はあまりにも単純素朴だと考えられる。

ここで注意すべきは、どの測定尺度を用いて測定するかという問題と、誰が質問票に答え

るのかという調査設計の問題とは、独立の問題であるということである。それを従来は、表

5 のように、個人を調査対象として個人行動を測定し、事業単位のマネジャーを調査対象と

して組織文化を測定するという方法を無批判に受け入れてきただけなのである。実際、表 5

の空白部分は不可能ではない。すなわち、先述した組織文化の分化パースペクティブにもと

づいて、(a) 特定の事業単位を構成する多数の個人に、所属する事業単位の組織文化を質問

することは可能である。また、一般の人事考課がそうであるように、(b) 事業単位のマネジ

ャーに、部下の販売員の行動を査定させることももちろん可能である。しかも、本稿のレビ

ューでも示唆されるように、調査対象次第で測定結果が異なる可能性もある。

このような新しい研究方法に注目することで、2 つの重要なイシューを導くことができる。

第 1 は、個人の見方と組織を代表するマネジャーの見方がどのように異なるのかということ

である。定量的検討に加えて、組織文化の観点から記述・説明を試みることが有益かもしれ

ない。これによって市場志向研究の方法論上の問題点を具体的に明らかにすることができる

だろう。第 2 は、両者の間のギャップまたは整合性が事業成果または個人のパフォーマンス

に対してどのような影響をもたらすのかということである。これによって、マーケティン

グ・コンセプトの実行をどのようにとらえるべきかが明らかになるとともに、組織のあり方

についても示唆が得られるだろう。

表 5 従来の研究方法と新しい研究方法の可能性

測定対象 調査対象

個人行動 組織文化

個人 顧客志向研究の方法 (a)

事業単位 (マネジャー) (b) 市場志向研究の方法

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小菅 竜介

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