づけは。 非常事態の今こそ 安定供給の 使命を全う...

6 ba - 2014 March Vol.12 中部電力 取締役専務執行役員 発電本部長  小野田 聡 (おのだ・さとし)愛知県出身。1980年慶應義塾大学大学院工学研究科機械工 学専攻修了後、中部電力入社。’ 97年火力部建設グループ課長、2003年発電 本部火力部計画グループ部長、’ 07年執行役員発電本部火力部長、’ 09年常務 執行役員発電本部火力部長を経て’ 10年常務執行役員静岡支店長 兼 流通 本部付 兼 環境・立地本部付に就任。’ 13年7月より現職。 非常事態の今こそ 安定供給の 使命を全うする 「火力発電」の 取り組み 火力発電の地道な取り組み トップインタビュー No. 調使西使電気の使用量に供給量を合わせる “最後の砦”となる火力発電。 経営における位置づけ、 日々の現場の安定供給の取り組み、 今後の電力システム改革の流れの中での方向性について、 火力発電の総責任者である発電本部長小野田聡専務に聞く。

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Page 1: づけは。 非常事態の今こそ 安定供給の 使命を全う …ba.chuden.jp/pdf/topinterview_vol12.pdf場・ba - 2014 March Vol.12 6 中部電力 取締役専務執行役員

6場・ba - 2014 March Vol.12

中部電力 取締役専務執行役員 発電本部長 

小野田 聡(おのだ・さとし)愛知県出身。1980年慶應義塾大学大学院工学研究科機械工学専攻修了後、中部電力入社。’97年火力部建設グループ課長、2003年発電本部火力部計画グループ部長、’07年執行役員発電本部火力部長、’09年常務執行役員発電本部火力部長を経て’10年常務執行役員静岡支店長 兼 流通本部付 兼 環境・立地本部付に就任。’13年7月より現職。

非常事態の今こそ安定供給の使命を全うする「火力発電」の取り組み

火力発電の地道な取り組み トップインタビューNo. ⓬

――火力発電の果たす役割、位置

づけは。

 

火力発電は、浜岡原子力発電所

全号機が停止する前には当社の発

電電力量の7割、停止後には9割

を担っています。発電量を調整し

やすく、比較的トラブル対処が早

い火力発電は、いわば「需給変動

のしわとり役」として、昔も今も

重要な役割を果たしています。

 

浜岡停止後は、火力発電所の定

期点検時期をやりくりしたり、長

期間停止していた古い火力機を叩

き起こして、夏の電力ピークにギ

リギリ間に合わせました。非常事

態の今こそ火力の出番だという意

気込みと使命感があったからこ

そ、何とか供給力を確保すること

ができました。しかし、これは緊

急避難的な異常な状態で、恒久的

に続けられるものではなく、今ま

さに息切れ寸前の状況です。

 

また、震災前にたてた開発計画

についても、上越火力発電所の建

設工事を着実に進めるとともに、

西名古屋火力のリフレッシュ工事

を前倒ししました。

 

長期的視点で考えると、エネル

ギーセキュリティ、環境面、経済

性から、原子力を含めたバランス

の良い電源構成が不可欠です。そ

の中でも、火力は今後も主軸の電

源として重要な役割を果たしてい

くと考えています。

――供給力確保のため、日々どん

な取り組みを行っているのか。

 

発電能力を最大限発揮させるた

めに、外気温が高い夏場には、ガ

スタービン出力の低下を軽減する

ための吸気冷却装置を設置し、冬

場には凍結防止対策を行うなど細

かい工夫をしています。

 

設備の巡視は、異常が発生する

前に兆候を見つける大切な仕事で

す。過去のトラブルと対応策など

はマニュアル化して経験・データ

を蓄積しているので、それらも参

考にして、機器のわずかな状態の

変化を見極めています。

 

法令で定められたもの以外にも

自主的に点検を行っています。ま

た、協力会社やメーカーとも連携

し、補修のために停止せざるを得

ない場合は、できるだけ電気の使

用量が減少する平日の深夜や土日

に実施したり、限られた期間で点

電気の使用量に供給量を合わせる

“最後の砦”となる火力発電。

経営における位置づけ、

日々の現場の安定供給の取り組み、

今後の電力システム改革の流れの中での方向性について、

火力発電の総責任者である発電本部長小野田聡専務に聞く。

Page 2: づけは。 非常事態の今こそ 安定供給の 使命を全う …ba.chuden.jp/pdf/topinterview_vol12.pdf場・ba - 2014 March Vol.12 6 中部電力 取締役専務執行役員

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検修理するために2交替制の作業

も行うなどして、可能な限り発電

できる時間を増やしています。

 

このように、現場で日々知恵を

絞り、培ってきた経験や技術、工

夫を一つひとつ地道に積み重ねる

ことで、性能を十分発揮してトラ

ブルなく発電することを実現して

います。

――火力発電の課題、その解決に

向けた取り組みは。

 

電力システム改革が進む中、よ

り競争力のある電源になることが

必要で、一層経済性を追求してい

くことが大きな課題です。

 

従来、調達コストや修繕費の削

減、高効率ユニットや低コストユ

ニットの稼働率向上によって少し

でも燃料費を減らすよう取り組ん

できました。火力発電所について

は、「60年、30万時間」を仮想的

寿命とみなし、それに合わせて信

頼性とコストを両立させた設備補

修をしてきました。例えば、40年

目の設備で異常兆候があった場

合、かつては予防保全の観点から、

パッケージで全てを新しく取り替

えていましたが、残り20年機能が

維持できるだけのメンテナンスを

行い、まだ使える部品は安全に問

題がない限り使い切るといった取

り組みを行ってきました。

 

現在は、さらに経営効率化を

加速させるため、「修繕費削減15

%」、「生産性向上30%」という目

標を掲げ、新電力や他電力の火力

発電所に負けない「火力発電事業

領域NO.1」を目指しています。

そのため、電力の安定供給や安全

の確保を前提とした上で、点検・

取替周期を延ばしたり、発電設備

などの発注において競争原理を働

かせるとともに、運転後のメンテ

ナンスコストも加味した入札方式

を導入するなど、許容できるリス

クをとりながら、より一層切り込

んだコスト削減に取り組んでいま

す。

 

2点目の課題として環境面の対

応があげられます。ロスを少なく

し、熱効率を高めれば、結果的に

大幅な二酸化炭素の削減につなが

ります。

 

熱効率の高い最新鋭の火力機を

備えた西名古屋火力発電所のリフ

レッシュ工事は、燃料費の削減と

いうコスト削減と環境対策につな

がる取り組みです。

――こうした中で、人材面につい

てはどう取り組んでいるのか。

 

重きをおいているのがオールラ

ウンドな人材の育成です。十年ほ

ど前までは設備を運転する「発電

屋」と保守・メンテナンスをする

「保修屋」に分かれ、それぞれの

分野のスペシャリストを育ててき

ました。これにより高い技術力を

培ってきたわけですが、さらなる

経営効率化の点から、「発電」と「保

修」両方ができる人材の育成に取

り組んでいます。こうした教育を

受けた人たちが、まさに今、中堅

として火力部門で培ってきた経験

や技術力を活かして、当社の火力

発電所のみならず、さまざまな事

業分野で活躍しています。具体的

には、プラントの建設や運営管理

といった海外事業、ガスインフラ

の建設・保守・運営やガス販売と

いったガス販売事業、お客さまへ

の省エネや効率的なエネルギー利

用の提案といったソリューション

事業などの分野です。

 

電力システム改革が進む中、電

力間あるいは新電力との競争激化

の流れが強まっていきますが、火

力のポテンシャルを活用し、安定

供給を前提に、海外事業やガス販

売事業、域外供給などの新たな成

長分野へ踏み出し、変化に対応し

ていく必要があります。

 

今後、どのような体制になろう

とも、私どもの事業の根幹である

「安全で安価な電気を安定してお

届けする」という使命は変わりま

せん。日々技術力を磨き、競争力

をより高めながら、今後も安定し

て電気をお届けできるように取り

組んでまいります。

お客さまの視点で

さらなる効率化に取り組む

川越火力発電所(LNG火力)内にて。