山の手救急の会 敗血症勉強会 2017 7€¦ · 山の手救急の会 敗血症勉強会...
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山の手救急の会 敗血症勉強会 2017 年 7 月 7 日(金曜日)
講演2 「敗血症に克つための包括的栄養管理をめざして」 ハンドアウト
日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野 山口順子
【WHY?なぜ栄養管理が必要なのか?:敗血症患者さんにおこる異化亢進の問題】
我々はより栄養管理の重要性を認識しなくてはなりませんね。
理由は 3 つあります。
1)異化亢進の問題
2)元来存在する低栄養
3)我々が院内で作る低栄養状態です。
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【MAGIC-P strategy とは?】
「MAGIC-P strategy」とはスライドにお示ししたそれぞれの項目の頭文字をとったもので包括的
栄養管理に必要な Essence を抽出した我々の栄養管理のフレームワークです。Catabolism(異化
反応)の脱却を早期に図るためには、過大侵襲で著しく需要が亢進する適切な Calorie を必要とし
ます。投与する栄養素については適切な主要栄養素と微量栄養素の補充を目指します。また腸管
機能維持が不可欠です。血糖コントロールは高血糖と炎症と免疫の連関を断ち切るために重要で
す。血糖のコントロールには外来性インスリン投与のみに頼ることなく腸を活かすことが鍵とな
るかもしれません。骨格筋保持のためのリハビリを積極的にすすめるための疼痛管理は過剰な交
感神経緊張の制御・血糖コントロールにも役割を果たします。このように MAGIC-P strategy に
含まれる Essence はそれぞれが連関しているともいえます。
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【腸を活かそうという意識】
1)早期経腸栄養はより早期に。
禁忌は思うより少ない。
まず使って十分なモニタリングを
2)腸にやさしく
早く始め、失敗しないためには腸管への配慮が必要かと。
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3)高血糖と炎症・免疫の連関:腸を活かした Glycemic control の重要性
・糖尿病でなくても敗血症などの重症患者さんでは、容易に耐糖能異常を起こします。
生体侵襲に伴う変化に対して内部環境を保つために神経、内分泌、免疫系が相互に情報伝達を行
い、生体防御のストレス反応を形成し、著しい異化反応の亢進を伴う代謝変動が生じます。
・交感神経活性化やサイトカイン産生などにより、糖新生亢進、インスリン抵抗性増大による末
梢組織での糖利用障害、膵におけるインスリン分泌障害がおこり、高血糖がもたらされます。
・交感神経活性化が、高サイトカイン血症による好中球やリンパ球、単球など免疫担当細胞のア
ポトーシスを加速させることも確認されています。
・高血糖は糖化蛋白が関与した血管内皮障害、酸化ストレスの増加及びさらなる炎症反応の増強
をもたらします。
・外来性インスリン投与だけでは血糖値の制御が困難となる場合もあります。腸の血糖コントロ
ール効果の背景にインクレチン効果があります。小腸から分泌される消化管ホルモン GIP や
GLP-1 が内因性インスリン分泌を促進するからです。ブドウ糖の経口投与は頚静脈投与に比べて
効率的にインスリン分泌を促進します。腸を使うことが重症敗血症患者で惹起される高血糖と炎
症・免疫の連関を断ち切ることにも有用です。
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【栄養管理を成功させよう】
【補足・参考資料】
1.日本大学医学部附属板橋病院チーム医療 NST の Web のご案内
院内栄養療法の啓もうを目指した定期勉強会のエッセンスを NST・栄養サポートチーム通信
(PDF)として掲載しております。
http://www.med.nihon-u.ac.jp/hospital/itabashi/nst/index.html
→Google で“MAGIC-P strategy”のキーワードで検索していただいても、1 番上にヒットするよう
になりました!ご活用いただければ幸いです。
2.Surviving ICU シリーズ 重症患者の治療の本質は栄養管理にあった! 真弓俊彦(羊土社)
第 2 章 経腸栄養剤の種類と選択(p58-66) 山口順子
経腸栄養剤を選択するための基本的な考え方を執筆しました。
主な参考資料
1.日本集中治療医学会・日本救急医学会 合同作成
「日本版敗血症診療ガイドライン 2016」The Japanese Clinical Practice Guidelines for
Management of Sepsis and Septic Shock 2016 (J-SSCG2016)
http://www.jaam.jp/html/info/2017/info-20170228.htm
2.日本版重症患者の栄養ガイドライン(総論)
http://www.jsicm.org/publication/guideline.html
など。
ご清聴ありがとうございました。
ご助言、ご質問など E-mail: [email protected] へご連絡ください。
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栄養がよくなりますように…
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