グローバル競争を勝ち抜く モジュラー&プラット...

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グローバル競争を勝ち抜く モジュラー&プラットフォーム化 2012年12月12日 アプライドブリッジ 代表 野尻寛 http://aplbrg.com/ ©Copyright アプライドブリッジ 2012

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グローバル競争を勝ち抜く モジュラー&プラットフォーム化

2012年12月12日

アプライドブリッジ 代表

野尻寛

http://aplbrg.com/

©Copyright アプライドブリッジ 2012

1. 日本の製造業の現状と課題

2. 事業ライフサイクルイノベーション

3. 製品ライフサイクル考慮の利益最大化

4. プラットフォーム化

5. 設計のモジュール化

6. 戦略マップ

7.まとめ

目次

©Copyright アプライドブリッジ 2012

経済産業省2010年度版 ものづくり白書より

業種別海外生産比率

経済産業省2009年度版 ものづくり白書より

売上高経常利益率

・ものづくりとサービスの融合

・感性価値

・グローバル化の流れは変わらない

世界主要国・地域の名目GDP シェアの推移

・新興国経済の拡大

・開発~販売の現地資源活用

・技術革新と技術流出防止

経済産業省2011年度版 ものづくり白書より

アジア新興国の成長と

主要国の輸出金額

・新興国経済の拡大は顕著

・資源獲得競争が激化

・技術的優位を付加価値に結

びつける「稼ぐものづくり」

経済産業省2007年度版 ものづくり白書より

経済産業省2008年度版 ものづくり白書より

・グローバル経済下での競争激化 ・環境問題への対処が必要

業種別海外生産比率 業種別海外生産比率

・アジア規模に広がるサプライチェーン ・オープンイノベーション型技術経営 ・製造業の売上の50%が海外

リーマンショック

1. 日本の製造業の現状と課題

経済産業省2012年度版 ものづくり白書より

・技術開発と付加価値確保 ・アジアと国際分業関係 ・モジュール化製品設計の 積極的な採用

国際競争力

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オープンイノベーション(2008)

感性価値(2009)

現地資源活用(2010)

技術革新と技術流出防止(2010)

稼ぐものづくり(2011)

国際分業(2012)

モジュール化製品設計(2012)

経産省ものづくり白書

製品=自社技術+他社技術

マス・カスタマイゼーション

地産地消

モジュール&プラットフォーム戦略

コスト削減、付加価値増大

コア技術のブラックボックス化

標準化、オープン化

グローバル(特に新興国)市場を前提とした

製品戦略・開発が重要であり、そのためには、

自社のコア技術(強み)を核とした

プラットフォーム&モジュラー化戦略が重要である

日本の製造業の採るべき道は

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2. 事業ライフサイクルイノベーション

時間

市場の成長

衰退市場

成熟市場

成長市場

初期市場

・市場のライフサイクルに応じて定石としてのイノベーション戦略とタイプがある。

・市場環境がどの市場ライフサイクルにあり、当該市場の中でどのような戦略を

取ったら良いか判断することが重要である。

製品リーダーシップ 戦略

顧客インテマシー戦略

業務効率化戦略

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成熟期 成長期

導入期

成熟期

成熟期

成長期

成長期

成熟期

導入期

地域毎の事業ライフサイクルに応じた戦略が必要

グローバル下では、地域ごとに市場のライフサイクル・ステージが異なる

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TTM短縮 R&

D

費最小化

利益最大化

製品ライフサイクルタイム

● ●

製品出荷

利益

投資

・設計スピードアップ(QCD)

・設計・生産I/Fのスピードアップ

・組合せ商品ベース

・保守・廃棄効率まで考慮製品

技術/部品/設備の再利用

=標準(共通)部品化・モジュール化

差別化の核

最小の部品種類・点数で

最大の組合せを実現

標準(共通)部品化とモジュール化は、製品ライフサイクル考慮の

利益最大化を図る上での最重要課題です。

3. 製品ライフサイクル考慮の利益最大化

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個別受注生産 ETO(Engineering to Order)

受注生産 MTO (Make to Order)

半製品見込生産 BTO (Build to Order) ATO (Assemble to Order)

見込生産 MTS (Make to Stock)

部品見込生産 BTO (Build to Order)

ATO (Assemble to Order)

見込での実施 受注により実施

見込生産 STO (Ship to Order)

最終

組立

製品

在庫 組立

半製品

在庫 調達

部品

在庫

製品

設計 物流

流通

在庫 販売

BTO/ATOへ、そしてCTOへ

➣原価を下げる、無駄な在庫を減らす、顧客の納期に応えるためにはBTO/ATOに移行 することが必要である。更にCTOによる「レゴ」化が究極の姿である。 ➣突発の災害時にもモジュールを分散生産化することによりリスク軽減が可能である。

プラットホーム化

共通モジュール化

標準部品化

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生産準備

調達 生産 販売 出荷 設置 廃棄 保守

・シリーズ化

・オプション化

・モジュール化/

プラットフォーム化

・標準部品化 試 作

製造設計

開発設計

商品企画

マーケティング

生産計画

サプライ・チェーン

エンジニアリング・チェーン

製品戦略

製品ライフサイクルを俯瞰した進め方の必要性

これまでの製品ライフサイクル管理(PLM)は、CAD/CAM/CAEに着目した

エンジニアリング・チェーンの効率化を主体としていた。

しかし、本来はサプライ・チェーンも含めた製品ライフサイクル全体を俯瞰した

製品ライフサイクル内の効率化を目的としなければならない。

グローバル・マーケット

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★競争上の差別化、製品群や製品ラインの全製品のユニークな特徴コアとなる設計のアーキテクチャ ★製品ラインや一連の製品群において製品を開発する際のベースとなる中核的な技術 ★競合企業よりも技術的な優位性が長期間に渡って持続されること、しかも応用範囲が広い (企業内に留めておき、ブラックボックス化・外部I/Fは標準化)

★展開の自由度を高められる設計を最初から盛り込んで新規P/Fを設計

=将来への展開という技術的思想に裏打ちされた展開

➡ 外部I/Fを標準化することにより相互依存性を排除できる

★出来るだけ大きな範囲をカバーする共用P/Fより、ある程度細分化しておいたほうが、

将来展開が楽で合目的であり、コスト的にも有利 ➡ 足し算で高機能化

★どこまでその技術(部位、モジュール、部品)が展開できるか、個別に展開すべきものは

できる(商品系列の拡大)ようにしておく ➡ フレキシブルな商品展開・収束

P/Fの定義

P/F化の考慮点

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製品プラットフォーム戦略

技術プラットフォーム戦略

市場セグメントに対応した

製品ラインナップ戦略と管理

市場セグメントに対応した

プラットフォーム

ライフサイクル管理

拡大戦略

製品戦略プロセス

グローバル製品戦略

製品A群

製品B群

製品A1

製品A2

製品B1 製品B2

2008 09 10 11 12 13 14

製品ライン計画

技術戦略

競争戦略

製品戦略プロセスとプラットフォーム 出典:青山学院大学総合研究所 eLPCO研究叢書第4巻第1号

「統合化PLM指向の事業創造プロセスのモデル化と管理方法の最終年度報告書より

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製品

固有部品

多くの製造設備・用具

擦り合わせ設計 モジュラー設計

5. 設計のモジュール化

モジュラー部品

少数の製造設備・用具

製品

擦り合わせ設計(個別最適設計) : 設計がどうあるべきか意図しない設計

モジュラー設計(事前の一括的かつ計画的設計) : 将来設計する製品の全体を眺めて製造設備や用具を 何種類かに定め、それらで造られる少数のモジュラー部品 を準備しておいて、モジュラー部品を組み合わせて多様な 製品を設計➡究極の姿=レゴブロック

モジュール : 互換性を通じて構成要素を少数化することを目的として、構成要素の機能的・物理的な組合せが 容易になるように、要素間のインタフェースがルール化・規格化された単位

マス・カスタマイゼーション : 互換性に富んだ少数のモジュラー・コンポーネントを準備して部品レベルで マスプロダクションを実現し、それらを組み合わせることによって極めてバラエティ に富んだ個別の顧客向けのカスタマイズされた最終製品やサービスを提供 (マーケティング)

出典:日野三十四氏資料より

グローバルにおける多様なニーズに応え、価格競争で勝ち抜くためには、

モジュラー・デザイン化しかない。

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モジュラー・デザイン論(IMAGINE 日野三十四氏)

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現状の製品構造・ラインアップを

見てのモジュール化(改善)

5年後、10年後の製品アーキテクチャ

を考えてのモジュール化(改革)

製品戦略からの展開

日本企業:生産のモジュール化 欧米企業:調達のモジュール化

(取引関係の階層化) (生産工程の階層化)

部品メーカー 部品メーカー

メイン組立

サブ組立 サブ組立

メイン組立

生産、調達から製品アーキテクチャのモジュール化へ

製品アーキテクチャのモジュール化

(機能の階層化)

機能

製品

機能

目指す方向

モジュール(機能)間の

相互依存性を無くす

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クローズト・インテグラル クローズト・モジューラー

オープン・インテグラル オープン・モジュラー

オープン

クローズト

インテグラル モジュラー

現状

・最も低コスト化可能

・コモディティ化により日本企業

は勝てない(コア部品企業のみ

生き残る) ・災害時強い(調達のグローバル化) ・商品の差別化が困難

・企業内で低コスト化可能

(量産効果) ・災害時強い(モジュール生産を分散化) ・品質の安定性大(十分モジュール検証必要) ・開発スピード速い

(注)モジュール内部品はオープンな

ものをできるだけ使うことが重要

・Appleは、このタイプで大成功

(製品ではなく、ビジネスモデルで成功) ・他社にノウハウを取られることになり易い

・コストはアウトソーシングで安くできる

・MNG力によりQCDが大きく影響される

(Appleはケーブル1本まで管理)

・コストが個別最適

・災害に弱い

・開発品質不安定

クローズト・モジュラーの利点

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モジュラー化の展開

モジュールA-1

モジュールA-2

モジュールA-3

モジュールB-1

モジュールB-2

モジュールC-1

モジュールC-2

モジュールC-3

組合せ数=3×2×3=18通り

プラットフォームX

モジュールA モジュールB モジュールC

機種個別部 + 標準インタフェース

標準インタフェース

標準I/F

標準インタフェース

成熟期

成長期

導入期

成熟期

成熟期 成長期

成長期

成熟期

導入期

A1+B1+C1

A2+B1+C2

A2+B2+C1

A1+B1+C2

A1+B1+C3

A3+B2+C2

A3+B2+C3

A1+B1+C3

A3+B1+C3

大容量スピーカー付T/V

ラヂオ付携帯電話

ワインボトル型T/V 室内の広い自動車

地域毎のライフサイクル、特性(感性価値)を考慮した製品戦略を立てた上で

モジュール(固定)化と機種個別部(変動)を明確化することが必要である。

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自動車産業のモジュラー&プラットフォーム化

先進国市場の成熟化と新興国市場の成長(ユーザー・ニーズの多様化)

マス・カスタマイゼーション化の高まり

激しさを増す価格競争

新興国メーカーの台頭と追い上げ(韓国、中国、インド)

環境規制の強化

開発費用の抑制(燃費、安全対策費倍増)

アーキテクチャから見直した

モジュラー&プラットフォーム化

・拡大したプラットフォームの統合化

・レゴ化を目指したモジュール化

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日産

マツダ

VW

トヨタ

自動車のモジュール化

CMF(Common Module Family)

Toyota New Global Architecture(TNGA)

MQB(Modular Querbaukasten)

「一括企画」と「コモンアーキテクチャー」

自社の戦略(事業、製品、技術、生産)に沿ったモジュール化

©Copyright アプライドブリッジ 2012

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John Deere社の事例 (農業機械)

マスカスタマイゼーションによって、顧客ニーズに柔軟に対応しながら売上規模を拡大

させる。その一方で、社内での業務の複雑性への対応として、モジュール化、共通化、標準化を推進し、規模の経済性を追求したグローバル競争力の強化

Source: RWTH Aachen

農機オーナー様へ “世界に1つ、あなた好みのベストセレクション”

日本PTC社提供資料

John Deere社の事例 (農業機械)

あらかじめ用意した製品コンフィグレーションで顧客個々の満足度を最大化

あらかじめ想定した燃料タンクのバリエーションセット

ある農機オーナーの要望

日本PTC社提供資料

6.戦略マップ

多様なニーズや激しい開発競争下にあるグローバル環境の中で経営者は、長期の競争戦略をストーリーを持って明確に示すことが必要である。

羅針盤としての戦略が不十分であると利益なき泥沼の戦いを続けることになる。

ビジョン・目標

具体的な戦略

主施策

どうすればそれが達成できるのか

なぜそれが成功するのか

達成すべき目標は何か

ポジショニング:狙うべき市場、顧客、技術

組織能力:組織、システム KFS、KPI

KFS、KPI

事業の目的

売上、利益、シェア、原価率など

要素技術、IT、組織形態、協業、標準化など

富士写真フィルム 古森社長

リーダーはどっちに進むかという方向を示すだけでは駄目だ。目的までの具体的な手段を示し、反対する者も力ずくでも引きずって連れていくぐらいの強い意志が必要だ

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圧倒的世界No.1

材料研究

最先端技術応用生産技術

認識技術

BPRを推進するIT革新

高付加価値の 世界共通モデル 原価率45%

マンマシンセルの推進 製品の差別化 開発期間短縮 生産準備前倒し

3D-CAD全社統一 PDM導入

新生産情報S 不具合情報S

次世代ロジスティクスS

コンピューターシミュレーション

ビジョン・目標

具体的な戦略

主施策

どうすればそれが 達成できるのか

なぜそれが 成功するのか

達成すべき 目標は何か

・売上:億円/15年3月期 ・営業利益:億円(%)/15年3月期 ・市場とシェア ・一眼:%/15年3月期(万台) ・コンパクト:%/15年3月期

戦略マップ 共生の理念のもと、

世界で親しまれ、

尊敬される、

真のエクセレントカンパニー

人の目では見えない微細な部分まで 撮影できる超多画素CMOSセンサー

キーコンポーネント 差別化のポイント(強み)

レンズ

画像処理

エンジン

センサー

高性能/超小型化

圧倒的な高速処理

低消費電力/

高速読出

高画質

高感度

高速処理

小型化

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キャノンの投資家向け情報などから講演者が作成

7.まとめ

時間

市場の成長

衰退市場

成熟市場

成長市場

初期市場

BL

保守

製造

商品企画

設計

販売

PL

保守

製造

商品企画

設計

販売

PL

保守

製造

商品企画

設計

販売

PL

保守

製造

商品企画

設計

販売

PL

製品

・モジュラー・デザイン

・プラットフォーム

競争戦略

日本の製造業がグローバル競争の中で勝ち抜くには、競争力の高い製品を

継続的に開発できる仕組みを作ることが必要である。

①高い商品力と低コストの新製品により、できるだけ大きな付加価値を

できるだけ少ない投資によって実現すること

②製品開発における技術や組織能力を蓄積し持続的競争力を構築すること

BL:Business Lifecycle

PL:Product Lifecycle

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事業ライフサイクル

製品ライフサイクル

モジュラー化

・コア技術

・固定部/変動部

・プラットフォーム

事業

・マーケティング

・ベンチマーキング

・イノベーションタイプ

・業界構造分析

競争(事業)戦略

技術戦略

・戦略マップ

・業務プロセス革新

新商品開発

ビジネスモデル

製品モデル

新商品開発までのプロセス

業務

プロセスモデル

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グローバル化対応に地域毎のニーズに応じた製品が必要であり、このためには

マス・カスタマイゼーションを前提としたモジュラー・デザインが不可欠である。

しかし、地域ニーズに応じた製品での差別化は、容易にキャッチアップされ

継続できない。継続した差別化実現には、自社のコア技術をブラックボックス化

して全製品に埋め込むプラットフォーム化が必要である。

プラットフォーム化やモジュール化は、目先の製品ライン計画を元に考えても

継続的に使えるものとならない。5年~10年先を見た競争(製品)戦略や技術戦略

の下に継続して使えるアーキテクチャーとして見直していくことが必要である。

最後に

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