つくろう ひらこう コミュニティカフェ - canpan€¦ ·...

「まちの縁側を増やし、つながりを広げる事業」活動報告書 【連携団体】 特定非営利活動法人ぐらす・かわさき 特定非営利活動法人まちの縁側育くみ隊 特定非営利活動法人金沢観光創造会議 特定非営利活動法人つながるKYOTOプロジェクト あなたの「まちの縁側・居場所」 つくろう ひらこう コミュニティカフェ

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Page 1: つくろう ひらこう コミュニティカフェ - CANPAN€¦ · 研究会」をフェの実践者より運営ノウハウを学ぶ「コミュニティカフェカフェをつくろう!」を編集し、翌年からコミュニティカに据えてきました。2007年に単行本「コミュニティ・たコミュニティカフェを全国に広げていくことを活動の柱

「まちの縁側を増やし、つながりを広げる事業」活動報告書

【連携団体】特定非営利活動法人ぐらす・かわさき特定非営利活動法人まちの縁側育くみ隊特定非営利活動法人金沢観光創造会議

特定非営利活動法人つながるKYOTOプロジェクト

あなたの「まちの縁側・居場所」

つくろう ひらこうコミュニティカフェ

Page 2: つくろう ひらこう コミュニティカフェ - CANPAN€¦ · 研究会」をフェの実践者より運営ノウハウを学ぶ「コミュニティカフェカフェをつくろう!」を編集し、翌年からコミュニティカに据えてきました。2007年に単行本「コミュニティ・たコミュニティカフェを全国に広げていくことを活動の柱

2Community Cafe3

「まちの縁側を増やし、つながりを広げる事業」に寄せて

全国5都市でコミュニティカフェ

開設講座を実施して

5都市でコミュニティカフェ開設講座やガ イ ド ブ ッ ク 制 作 を 実 施

公益社団法人

長寿社会文化協会(WAC)

常務理事 

浅川澄一

京都、金沢、名古屋、川崎、東京 WAM助成事業を活用

 少子高齢社会が進む中、地域で暮らす人々の「連帯」「連

携」がより一段と求められています。コミュニティという

言葉で語られる「住民の輪」作りです。

 その「輪」の結び目として、気軽に立ち寄る「カフェ」

を開こうという動きが近年、急速に各地で高まっています。

「地域の茶の間」や「まちの縁側」「居場所」「サロン」など

名乗り方は様々ですが、総称して「コミュニティカフェ」

と呼んでいます。

 高齢者間の出会いの手助け、子育てママの交流、障害者

の協働などいろいろな思いで始められています。

 公益社団法人・長寿社会文化協会(WAC)は、こうし

たコミュニティカフェを全国に広げていくことを活動の柱

に据えてきました。2007年に単行本「コミュニティ・

カフェをつくろう!」を編集し、翌年からコミュニティカ

フェの実践者より運営ノウハウを学ぶ「コミュニティカフェ

研究会」を35回、開いてきました。

 さらに活動を飛躍させようと、2013年度は独立行政

法人・福祉医療機構(WAM)の社会福祉振興助成事業に

応募し、全国5都市でコミュニティカフェ開設支援活動に

取り組みました。

 金沢、京都、名古屋、川崎の各市のNPO法人と東京の

WACが2013年9月からコミュニティカフェの開設講

座を開き、全体で100人以上の受講生が参加しました。

 なかには、受講と歩調を合わせるように、カフェの開設

に乗り出す受講生も現れました。2014年2月23日に東

京で開いた「コミュニティカフェ全国交流会」では、各地

から参加した合計10人の受講生が独自に思い描いた「マイ・

カフェ」を堂々と発表しました。

 カフェ開設講座の運営と併せて、金沢、京都、名古屋、

川崎の各主催NPO法人はそれぞれの地域のコミュニティ

カフェのガイドブックも作成しました。

 以上の活動経過と成果をまとめたのが本書です。

 長寿社会文化協会(WAC)は、独立行政法人福祉医療機構(WAM)の「社会福祉振興助成事業」から助成金を得て、京都、金沢、名古屋、川崎、東京の全国5カ所で、地域の活性化を促すコミュニティカフェの開設を支援する講座を開いた。 WAMが定めた「全国的・広域的ネットワーク活動支援事業」の仕組みを活用し、「高齢者や障害児・者などが地域で普通の暮らしをすることを支援する事業」のテーマに沿って事業に取り組んだ。 この中でも、重点支援事業である「配食や買い物、移動支援、見守り、居場所づくり、心のケアなどにより、高齢者・障害者などの社会からの孤立を防止する事業」として、コミュニティカフェ開設講座やガイドブック制作を行った。 講座の内容は、コミュニティカフェ概論、開設のための知識習得、実践例の見学・体験、起業プラン作成、ワークショップなどバラエティに富み、地域の実情に応じて、WACと連携団体がカリキュラムを編成し、30時間前後の講座を開いた。講座終了後は、成果(コミュニティカフェ・プラン)発表と交流会を開き、一般市民への PRも図った。

(東京都)(神奈川県)

特定非営利活動法人

ぐらす・かわさき

特定非営利活動法人

金沢観光創造会議

特定非営利活動法人

まちの縁側育くみ隊

特定非営利活動法人

つながる KYOTOプロジェクト

(石川県)

(京都府)

(愛知県)

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4Community Cafe5

神 奈 川田 代 美 香

さまざまな形の「コミュニティカフェ」、

実践から形をイメージしてみよう。

Kanagawaたしろ・みか 百貨店勤務時代は、ボランティア休職制度を利用し、青年海外協力隊に参加。その後、フェアトレードショップを起業。2004 年よりぐらす・かわさき職員。コミュニティカフェ「メサ・グランデ」の立ち上げに携わり、コミュニティカフェなどコミュニティビジネス、ソーシャルビジネスの起業支援に注力している。

子育て、介護から環境、平和まで・・・

地域で直面するいろいろな課題を自分

たちの力で解決しようと試みる人々を、

身近で見てきた私たちにとって、その活

動をいかに持続可能にするかということ

は、常に大きな関心事だった。

「コミュニティビジネス」という手段

を試みようする、そんな皆さんへの起業

相談を担ってきた経験を通じて私が知っ

たことは、多くの方が「場」を設け、人

と人をつなぎたいと考えていることだっ

た。2012年、「相談に乗るだけでな

く、実践者でありたい」と考えていた私

たちは、地域の縁側「遊友ひろば」に次

ぐ、第2の拠点として、「みんなのテー

ブル 

メサ・グランデ」をオープンし

た。地産地消の小さな八百屋と、食べ方

を提案するレストランサービス、コミュ

ニティティビジネスのノウハウを学べる

講座や、飲食サービスを開業したい人向

けのワンデイシェフなど、多様な顔を持

つコミュニティカフェだ。

このたび、このメサ・グランデを舞台

に、19名の受講生を迎えて、コミュニ

ティカフェ開設講座を開催した。6回連

続講座の山場は、受講者全員でのワンデ

イシェフ体験だった。ターゲット設定、

メニュー決め、役割分担など、多様な準

備があること、メンバーのコミュニケー

ションがいかに大切かということを、

身をもって体験できたのではないだろう

か。自分たちの作った料理や飲み物を

出す楽しみ、接客・もてなしの喜び、イ

ベントの充実感、仲間と笑いあえる嬉し

さ、いろいろな気持ちを味わえたはず

だ。メニュー表や当日の工程表を徹夜で

作ってきてくれた人もいたり、それぞれ

が準備の大変さも味わった。

参加者それぞれが思い描く「地域のた

まりば」「コミュニティカフェ」は実に

多様なもので、それらをどう深めて事業

計画の形に落とし込んでいくか、その工

程を一緒にやるのは難しい作業だった

が、多様な発想をお互いに知るメリット

は大きかった。

自分のカフェを開設直前というタイミ

ングで受講してくれた参加者もあり、講

座最終日が、そのカフェのオープン日、

ということで、講座後お祝いに駆け付

けた仲間もいた。この講座を通じて知り

合った仲間同士の今後の交流や協力体制

も、継続していくことを願っている。

代表

「メサ・グランデ」の店頭には、いつも新鮮な野菜が並んでいる。店内に入ると、多種多様な野菜の食べ方を提案するレストランカフェ。大きなテーブル(スペイン語でメサ・グランデ)が置かれ、オープンキッチンの中と外、作る人と食べる人が共に一つの空間を作り出す。飲食サービスを始めたい人が「ワンデイシェフ」にチャレンジできるなど、新しい交流やコミュニティビジネスを生み出す地域の拠点である。

20 代から 60 代まで、19 名の老若男女が参加した、神奈川の「コミュニティカフェ開設講座」。多くの実践例を見聞きし、実践も交えながら、各自の事業計画を作っていった。自分のプランをブラッシュアップしていった。

みんなのテーブル メサ・グランデ川崎市中原区新城 5-2-13 http://mesa-grande.blogspot.jp/

コミュニティカフェ紹介

「現場を知る」、「体験する」を大切に、仲間づくり

産業能率大学准教授の中島智人さんを講師に、コミュニティカフェの役割や外国での事例などをお聞きし、「みた・まちもりカフェ」の塩沢和美さんの事例発表をお聞きした。

「コミュニティカフェ」ってなに?今、地域に求められるつながりの場づくり

9/21 sat説明会

特定非営利活動法人 ぐらす・かわさき 理事・事務局長

特定非営利活動法人 ぐらす・かわさき

事業計画の作り方の基礎を、中小企業診断士の原賢治さんに学び、漠然とした夢を少しずつ文章化していく中で、輪郭を持たせていった。

「コュニティカフェであろうと、普通のカフェであろうと、経営で一番大事なのはお金です」。中小企業診断士の山岡雄己さんを講師に、主に飲食部門の収支計画の考え方を学んだ。

金沢の事例を、講師の加茂谷慎治さんよりお聞きした後、受講生のプラン発表。全国交流会での発表者 2 名を決定。最後はカフェでのドリンク提供の実習で締めくくった。

コミュニティカフェの コンテンツづくり

コミュニティカフェの運営スキル

プラン発表「私の目指すコミュニティカフェ」

10/27

11/16

12/8

sun

sat

sun

2

4

6

「自分の夢って何だっけ?自分が本当に実現したいことは?」自分トリセツ講師の中丸恵美さんを講師に、夢を見える化。コミュニティカフェ「まめり」を運営している有北郁子さんに体験談もお聞きした。

廃食油を燃料に走る「エコバス」を使って、 「スペースナナ」「大倉山ミエル」「SoAN」「ココデ」の 4軒のコミュニティカフェを訪問した。実際に運営している方からカフェ開設のきっかけや、運営の工夫、苦労話などを直接お聞きした。

受講者全員で、1 日営業体験。「コミュニティマルシェ」と銘打って、料理は「6 種の根菜カレー」「きのこたっぷり!やわらか塩麹チキン」

「いろどり野菜のあっタコライス」に、太陽光発電ワークショップなど、みんなで腕を振るった。

自分トリセツ、自分の夢ってなに?

コミュニティカフェ体験ツアー(エコバスツアー)

実践コミュニティカフェ模擬営業

10/19

11/10

11/30

sat

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1

3

5

講座アーカイブ

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神 奈 川Kanagawa

水野悦子さん(横浜市)、澁谷直子さん(川崎市)

6Community Cafe7

開 設 講 座ダ イ ジ ェ ス ト

現場を訪れてイメージを明確化し、夢を言葉に。1 日起業体験で、やりたい形が見えてくる。

神奈川では、川崎市中原区のコミュニ

ティカフェ「メサ・グランデ」を舞台

に、NPO法人ぐらす・かわさき事務

局長の田代美香(たしろみか)さんが

ナビゲーターを務めた。実際のコミュ

ニティカフェの現場を見て話を聞いた

り、受講生が一丸となって1日カフェ

起業体験をして、夢の形を具体化して

いった。

みんな、人と話ができる

場を求めています。

 講座初日に、実践者の事例を紹介し

てくださった、コミュニティカフェ

「まめり」の有北郁子さんのお話には、

多世代の交流を目指して、誰にでも行

きやすい場づくりの工夫がたくさん詰

まっていた。スタッフとして色々な人

が入れるよう、作りやすいメニューの

チョイスや、気軽に行ける価格設定な

どは、参加者の多くに参考になった。

「高級レストランをつくるわけではな

い。目的に合ったメニューや価格設定

が重要だ」と強調した。

事業計画づくりは基礎

 「夢を形にしていくために、自分の

目的は何なのか? 誰にどこで何をど

うやって提供したいのか? それらを

一つ一つ丁寧に考えていくことが大事

だ」と、指導してくれた中小企業診断

士の原賢治さん。「しっかりとした計

画づくりを意識しながら、ブラッシュ

アップを続けていくことが大事だ」

激励した。

飲食サービスを提供するなら、

徹底的に

 「コミュニティカフェだからといっ

て、中途半端な飲食を提供することは

できない。普通の飲食店と同じ土俵に

立って、接客・美味しさを追求しつつ、

メニュー構成の工夫により、収益を上

げることが大切だ」と説いた、講師の

山岡雄己さん。「ビジネスとしての視

点も常にシビアに持って経営に臨まな

いと、社会貢献などできない。宣伝や

メニュー表作りなど、細かい点に工夫

を凝らしていくことが大切だ」と強調

した。

全国交流会で事業プラン発表

2月23日に開催された「コミュニティカフェ全

国交流会」では、神奈川から選ばれた2名が事

業計画を発表した。川崎市高津区の澁谷直子(し

ぶやなおこ)さんと横浜市港北区の水野悦子(み

ずのえつこ)さんだ。発表当日に向けて、パワー

ポイントを準備、気合十分で臨んだ。

農園体験コミュニティ「母家」

 

澁谷直子さんは、農家に嫁いで15年の「嫁」

の立場で、都市農家の持つ資源を有効に使い、

次世代のために、そして自分たちのコミュニ

ティのために、「誰かがやらねば!」という強

い気持ちで、「母家」という名のコミュニティ

カフェを計画した。

 

自らも子育てをする中で培った地域の仲間と

共に、四季折々の農体験イベントとして、すで

に地域の子供たちを受け入れている。春のタケ

ノコ掘り、ソラ豆やジャガイモの収穫、夏のそ

うめん流し、秋のサツマイモ掘り、冬の餅つき

やしめ縄づくりなどのイベントを行ってきた。

 

また、都市農家として、レストランなどと直

接契約し、流行の西洋野菜などを積極的に栽培

するなどの経営手腕も大したものである。

 

講座の受講生仲間らと、近隣のコミュニティ

カフェの見学も積極的に行ってきた。

 

今回、全国交流会で発表のチャンスを得たこ

とで、事業計画を整理し、多くの人に説明でき

るようになった。

 

発表の翌日から母家の工事はスタートした。

築100年の「母家」の改築を機に、我が家の「母

家」から地域の「母家」に生まれ変わる。秋に

はいよいよ新たな「母家」がスタートする。

 

受講生一同、エールを送っている。

話場(はなしば)・

伝承(H

and down

)・韓国(H

an

)・ H

an jan Haja!(

一杯飲もう!)

の、

コミュニティカフェ「H

an

 

横浜市に住む水野悦子さんは、数年後にご主

人の広島の実家近くで、世代間交流と生活文化

の伝承ができるコミュニティカフェ「H

an

」を

計画している。そもそも彼女がコミュニティカ

フェの計画を立てることになったのは、カフェ

が好きだったことに加え、「大倉山ミエル」と

いうコミュニティカフェと

出会ったことで、一気に関

心が高まったのだ。コミュ

ニティカフェは、そこに集う人たちにも、「な

にかやりたい!」と思わせるものを持っている

ようだ。

 

水野さんは、広島の田園地帯で、親子で農業

体験や山菜採りなどの拠点となり、また、広島

とご自身のルーツでもある韓国との懸け橋とも

なるような事業を考えている。韓国料理の飾り

巻きキンパ、パッピンス、ホットックなど、自

分自身も韓国人の母親から韓国料理の伝承をこ

れから受け継いでいかなくてはならないと考え

ている。移住成功の日まで、リサーチする日々

が続く。

講師の原賢治さん

講師の有北郁子さん

講師の山岡雄己さん

農家の母屋から出てきた着物をリメイクした服で発表する澁谷さん

事業計画を発表する水野さん

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8Community Cafe9

受 講 生 の 声多くの出会いも収穫のひとつです。

「コミュニティカフェ開設講座 

神奈川」に

は、東京・埼玉からも含め19名が参加した。

神奈川県内では川崎・横浜からの参加が多

かったが、逗子など、県内各地から20代~60

代まで幅広い受講生が集まった。男性は4名、

女性は15名と圧倒的に女性が多く、平均年齢

は45歳と、比較的若い層の受講生が多かった

のが特徴的だ。

 講座のうち、数回はNHK Eテレ「団塊

スタイル」の取材も入り、後日、講座の模様

も放送されるなど、全国的にも「コミュニティ

カフェ」が注目されているという実感があっ

た。

* * *

 奈佐英樹さんと石井達郎さんは、「逗子

60’s」

という市の施策でできたシニアの市民活動育

成の事業で、自分たち自身が楽しめる場を作

り、収益もある程度確保し、小遣い稼ぎ程度

の収入は得つつ、地域貢献できる事業モデル

を考えているそうだ。奈佐さんは、太陽光発

電の装置を使ったミニワークショップを「コ

ミュニティカフェ模擬体験」のイベントとし

て実施。小さな電力でも日ごろから自分で作

るという発想は、参加者に共感を与えた。

 

石井さんが講座に参加しての感想は「コ

ミュニティカフェ作りは総論から考えるので

はなく、各論から入って、軌道修正をかけて

いくのがよいのではないか」ということだ。

最大公約数のニーズを満たすことは至難の

業。持てるマンパワー、得意分野や使える資

源をリストアップし、叶えたい夢などを前面

に出して、事業計画を作っていくことで、今

後の成果が見えてくると気づいた。

 今回の参加者中最も若い20代の伊達祐希さ

んと、子育て中のママ、高谷恵美子さんらは、

「コミュニティカフェ模擬体験」でメニュー

の選定や試作、当日の工程表づくりなど、講

座時間外にも多くの時間を割いて、準備に携

わり、本番も前面で皆をひっぱってくれた。

 

講座最終日には、オープニングを迎えた、

同じく受講生の大橋ゆりさんのお店「ムビリ

ンゴ」に見学兼お祝いに駆けつけ、その後は

時々手伝いに入るまでになった。開店直後の

店主の緊張感や、いよいよ夢を実現していく

過程を目の当たりにしたことで、自分の夢に

向けてのモチベーションがさらに加速したよ

うだ。

 

障害者施設で働いている鳥越正昭さんは、

栄養士の小泉由美子さんや、地域に暮らすど

んな人も安心して暮らせる居場所があったら

いいなと考えていた田畠麻帆さん、鹿島節子

さんと協力して、「高齢者・障害者とのコミュ

ニティをどう作るかという観点でのカフェ」

のプランを考えた。地域に暮らす仲間として、

自立して経済活動する役割と生きがいが生ま

れる場をつくるため、「川崎餃子カフェ」と

いう具体的なアイデアを出した。

 歯科衛生士と福祉住環境コーディネーター

の資格を持ち、会計が得意という鈴木淳子さ

んは、いつも明るい雰囲気で仲間を盛り上げ

てくれた。すでに多世代交流を目的とした

オープンスペース、こども教室を運営してき

た実践者だ。持っているスペースを活用して

新しいなにかをやっていきたいと考えていた

が、具体的に何かを行うというよりも、そこ

を使って何かをやりたい人との出会いを求め

ての参加でもあった。最終日のプレゼンテー

ションへの講師からの講評では、「資格は自

分を閉じ込める可能性がある。一番やりたい

ことを明確にしてはどうか」というシビアな

コメントもあった。

 熊谷京子さんは、伊達祐希さんと協力して、

「田舎」という事業プランを立てた。山間部

などの高齢者は一人暮らしが多く、栄養の偏

りが見られることもあり、地場の食材を持ち

寄って、一緒に料理したりおしゃべりしたり、

一緒に食べる場所を作りたいと考えた。「食

べる」ことは単に栄養を取ることだけでなく、

「生きる栄養」も取る行為なのだと言う。ビ

ジネス的な面は厳しいと思われるので、資源

や協力者を探すことも大切だというコメント

もあった。なお、熊谷さんは、「コミュニティ

カフェ模擬体験」では得意のお菓子作りの技

を活かし、スイートポテトを作り、好評を得

た。講座終了後、定期的に「メサ・グランデ」

で、お菓子の製作を行うことになった。

 大橋ゆりさんは、世界の家庭料理をテーマ

に、日替わりシェフやイベントなどで経験を

積んできた。「メサ・グランデ」のワンデイ

シェフやチャレンジシェフという仕組みもす

でに使って、メニュー構成や事業計画のブ

ラッシュアップも進んだ状況だったので、こ

の講座へは、ある意味、最後に事業計画やコ

ンセプト作りなどの考え方について確認をし

たい、他のカフェの情報を一気に収集したい

という目的をもっての参加であった。受講生

の中には、漠然と夢を持っている方から、大

橋さんのように起業直前という方まで様々な

ステージの方がおり、それらがお互いに刺激

し合う結果となった。メニュー内容・広報・

設計施工・オペレーション・仕入れルートな

ど、細々とした、しかし現実的な話を、毎回

受講生たちが大橋さんを取り囲んで、熱心に

聞いている姿は印象的であった。

奈佐英樹(なさ・ひでき)さん

逗子市から参加の自営業。「ずし

60’s」

のメンバーとして、逗子市市民協働

部とともに、多世代交流のできる「地

域のたまりば」づくりを模索してい

たところ、今回の講座を知り、仲間

とともに受講。

小泉由美子(こいずみ・ゆみこ)さん

住んでいる地域と離れて仕事をしてき

たので、地域にあまり縁がなかったが、

地域の重要性を最近感じるようになっ

た。栄養士の経験を活かして「食」に

関わるチャレンジを地域で始めたい。

伊達祐希(だて・ゆうき)さん

食の仕事を経験後、新潟県旧山古志

村で山菜取り、ぜんまい揉みなどの

山の暮らしを体験。村の中で自然と

人が集まり、「お茶のみ」をする中で

情報交換でき、助け合いが始まるこ

とを知った。

熊谷京子(くまがい・きょうこ)さん

お菓子作りが好きで師範の資格を持

つ。自分のつくったものでみんなが

幸せになったり、喜んでいただける

ような空間づくりをしてみたいとい

う。

高谷恵美子(たかや・えみこ)さん

子育て中の親子が集える「親子カ

フェ」を開きたいと考えて参加。2

歳の息子を育てる中で、地域の人に

助けられた経験も多く、子育て中の

ママが孤独になることなく過ごせる

場を作りたいと思い受講。

鈴木淳子(すずき・じゅんこ)さん

地域の人と人とがゆるやかにつなが

れるまちの縁側を作りたいと考えて

いる。シェアハウス、シェアルーム

やコミュニティハウス、コミュニティ

スペースというような形で実現して

みたいという。

鳥越正昭(とりごえ・まさあき)さん

障害者福祉施設職員。法人による事

業として、コミュニティカフェがで

きないか、知的障がい者の人たちが

ホストとして地域の居場所づくりが

できないかと思い、受講。

大橋ゆり(おおはし・ゆり)さん

「メサ・グランデ」でのワンデイシェフ

などで、経験を積んできた。もうすぐ

自分の店を開店予定という状況で、ぎ

りぎりまで学ぶチャンスを自分でつかん

でいたい、仲間とも出会いたい、と参加。

神 奈 川Kanagawa

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10Community Cafe11

神 奈 川Kanagawa

コミュニティ

カフェの現場を訪ねて

http://spacenana.com/index.html横浜市青葉区あざみ野1-21-11TEL:045-482-671711:00~18:00、月・火曜休みメニュー:フェアトレードのコーヒー、紅茶、ハニージンジャー運営者:NPO法人スペースナナ

http://www.cafe-cocode.com川崎市高津区久本1-6-2TEL:044-877-01319:00~18:00(土10:00~16:00)、日曜・祝日休みメニュー:多穀米リゾット、プレート料理、パスタなど運営者:NPO法人コスモス

スペースナナ

コミュニティカフェ

ココデ

コミュニティカフェ紹介

コミュニティカフェ紹介  

現場の運営者から直接、

開設のきっかけや思い、苦

労話ややりがいなどをお聞

きすることは、一人ひとり

が個々に訪問しても難しいのだが、講座の一

環として、準備をしていただき、ゆっくりと

お話を聞くことができた。店内の雰囲気や素

材感、規模感、料理や飲み物など、実際にそ

の場に行ってみて初めて分かることがたくさ

んあった。

 また、その日は4件のコミュニティカフェ

を巡ったが、移動にはマイクロバスをチャー

ターした。NPO法人川崎市民石けんプラン

トが回収する廃食油を燃料にして走る「エコ

バス」による快適な移動となった。廃食油回

収ポイントにいくつかのコミュニティカフェ

が協力していることも、受講者は知ることと

なった。

店名の由来は、造形作家

二キ・ド・サンファル作の

陽気で豊満な女人像「ナナ」

 交通量の多い道路沿いにある「スペースナ

ナ」は、アート作品の展示ができるギャラリー

やフェアトレードショップ、スタジオと小さ

なカフェで構成されている。思いを語ってく

れたのは、メンバーの柴田暁子さんと中村泰

子さんだ。

 「居心地良く暮

らすための力が

湧く場を持ちた

い」「自分たちが

良いと思った品

物を多くの人に

紹介したい」「表

現者を応援した

い」「生きにくく

なった人や生活

弱者を応援したい」…などの熱い思いで、メ

ンバーが出資し、店番を続けている。意識を

共有できるメンバーが支え合って運営してい

る姿に、清々しさと仲間の大切さを知らされ

た。

 

ちょうど開催されていた「幸せをつなぐ

フェアトレード展」で、かわいらしい小物の

買い物にも夢中になってしまった、受講生た

ちであった。

「ここでやろう」

「ここで生きていこう」

だから、ココデ

 運営団体であるNPO法人コスモス理事長

の横山典子さんにお話をお聞きした。「ココ

デ」の近くで、知的障がい者の方の共同生活

介護事業も行っている。お店に足を運ぶこと

ができない方のためにボランティアグループ

「さくらそう会」と協働をし、配食サービス

にも力を入れている。お客様のニーズをつね

に読み取り、改善している、というお話には

多くの受講生がうなずいた。

 栄養バランスに配慮したプレート料理やお

弁当、お子さんにも食べやすいおむすびやサ

ンドイッチなど、お客さんの要望にこたえて

いくうち、定番メニューが決まってきた。

 

また、「法令順守」をモットーとし、最低

賃金を含め、雇用や契約面でずさんなことが

ないよう気を配っている。社会的に責任を

持った事業者としての誇りが輝いていた。

お客様同士の繋がりをはぐくむカフェ。

NPO 法人スペースナナの中村泰子さん(左)、柴田暁子さんが説明をしてくださった。

NPO 法人コスモスの横山典子さん ( 右 ) が説明してくださった。

見学当日は NHK の取材も入った。

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12Community Cafe13

愛 知延 藤 安 弘

「おいしい文化の雫」が

地域にひろがってほしい。

A i c h iえんどう・やすひろ ヒラメのエンガワのように美味しい「まちの縁側」好き。子どもとお年より、生活者と専門家、市民と行政の間に、縁側のように内と外の間の境い目のない「エンガワ社会」実現のために、全国各地で小さな居場所づくりからはじまるのびやかなまち育てを支援している。最近著『まち再生の術語集』(岩波新書)。

愛知・名古屋は、尾張と三河が個性を

競い自らの存在価値を主張してきた歴史・

文化のあるところ。まちの縁側・コミュニ

ティカフェ開設講座に参加したメンバーも

ひとりひとり自らのコンセプトと抱負を

もつ方々。彼らのつぶやきの響き合いの中

に、これから開花するであろうこの地域

の多様な居場所づくりのイメージが明らか

となってきた。例えば、「音楽とアルコー

ル、ライブラリーでビールなど面白い混ぜ

合わせ」「イベントも日常の営みも、初め

ての人がきやすいように、普段に溶けこん

でいく」「幸せが巡る満腹亭

コミュニティ

カフェやオヤジ飛び込む 

熟女群」「違和

感が無いと思える、参加しない自由、見て

いるだけでも良い関係」「分化しながら、

緩やかにつながりながら、中心が無い、脱

ヒエラルキー」「カムツーチイキのヘソの小

学校へ。笑顔だゾー、直したるゾー」「の

びりニャン友パラダイス、祇園精舎の鐘の

声、物語が生まれてくる」「静けさと緑に

囲まれ、駄菓子屋などにぎわいの中でひと

りボーとできる」「ズボランティア、やらな

いくんは偶然の出会いで変わっていく」「苦

労するトラブルをドラマに変える」。

因みに、各キーワードの頭文字をたてに

綴ってみると、「お・い・し・い・ぶん・か・

の・し・づ・く」となる。

まちの縁側・コミュニティカフェは、地

域に「おいしい文化の雫」を育み波及させ

ていく仕掛けであることが鮮明となった。

人と人、人とまちのかかわりの中に生まれ

てくるひとりひとりの「生きる力」の育み

の文化創造としての居場所づくり。それは

子どもからお年よりまで、障がい者から健

常者まで、もの覚えのよくない方から元気

な方まで、混ざりあいの具合のよい、まる

で「おでん」のようにおいしい文化の雫を

生みだしていく。これはこれからの地域の

社会において、ひとりひとりが日々を安心

して暮らせる状況づくりに不可欠のこと。

受講生の中には、近々具体的実践の初め

の一歩を踏みだされる方も、数年後に向け

てさらに計画を練り上げようとされる方も

おられる。本講座を通して、独創的にして

自由な柔かいまちの縁側・コミュニティカ

フェが多様に芽吹き育っていくことを期待

している。

生の実感にみちあふれた居場所が、野草

のように生き生きと育ちひろがっていくこ

とに、これからも機会あるごとにかかわっ

ていきたい。

代表

名古屋市中区錦二丁目のまちづくりを進める「錦二丁目まちづくり協議会」が、NPO 法人まちの縁側育くみ隊に運営を委託しているまちの会所、地域が設立したまちづくりセンター。地域づくりの会議室、おまつりや催し企画室になったり、最近ではまちづくり事業が環境面や公共空間活用など多面化した事業も生まれてきている。他には延藤安弘所有のまちづくり絵本や専門書、哲学書等ライブラリー機能も併設している。

錦二丁目まちの会所名古屋市中区錦 2-13-1 宮本ビル http://www.engawa.ne.jp

コミュニティカフェ紹介

特定非営利活動法人まちの縁側育くみ隊 代表理事

特定非営利活動法人 まちの縁側育くみ隊愛知の開設講座の特徴は、①毎回違うコミュニティカフェを現地体験した。② 5 つの段階でステップアップできる講座をプログラム。③幻燈会やワークショップを織り交ぜ、受講生同士の交流や共感を引き出し個人の提案を紡ぎ出した。

探訪し五感で吸収する実践的な連続開設講座

まちの縁側のパイオニアである丹羽國子さんと延藤安弘先生からの今求められるまちの縁側について示唆に富んだ映像とお話で、丹羽さんからは「生涯発達する人々の潜在能力を蘇生させる、まちの縁側の自律的効果」等を投げかけてもらった。

講師の星野博さんから、参加型まちづくりの仕掛け方や活動づくりと、まちづくりの拠点となるコミュニティカフェの運営ノウハウについて、経営面から運営の知恵までを学ぶ。また NPO 法人まちの縁側育くみ隊が、建築デザインを支援した空間づくりも学ぶ。

名古屋市中区丸の内カフェにて、NPO 法人まちの縁側育くみ隊の錦二丁目長者町界隈のまちづくりから、まち中コミュニティカフェとなる実践を学ぶ。後半は各自の思いを確認し講師陣からの専門的な助言を行い各自が夢と現実を提案して綴りだした。

名 古 屋 市 東 区「 ま ち の 縁 側GOGO !」のあるじ永井充さんから、自分史にもなる生き甲斐サロンの運営を伺うことができた。名古屋市昭和区「くれよんBOX」の山口耕平さんと大久保康男さんから運営のコツとしてあるじの包容力と自然体の運営方針を学ぶ。

小牧市味岡児童館は、延藤先生のコーディネートによる住民参加ワークショップにより地域の夢が実現された。子どもの縁を通して地域が育ち合うまちの縁側を見学。後半は一人一人が目指すイメージを語り合いグループで物語を紡ぎ出した。

各自提案をまとめあげ、午後から発表を行った。内容が多彩な提案となり、個人の関心事がまちの縁側になることや、まちの縁側の多様性と可能性について 6名の講師陣から丁寧な講評をもらい、受講生には互いの提案に示唆を交歓できる発表となった。

まちの縁側づくりへの呼びかけ

しくみづくり尾張一宮のコミュニティカフェにて講座を開催

うごきづくり

きもちづくり

かたちづくり

提案づくり

9/28

11/16

12/7

11/2

11/30

12/21

sat説明会

sat

sat

sat

sat

sat

2

4

1

3

5

9/28土

まちの縁側・居場所をつくろう!

コミュニティカフェ 開 設 講 座

主 催 公益社団法人長寿社会文化協会(WAC) NPO法人まちの縁側育くみ隊

講座説明会

            千葉大学教授、愛知産業大学大学院教授を経て、

            NPO法人まちの縁側育くみ隊代表理事。エ学博士。

            全国各地の住民主体のまち育てにかかわってきた。

主な受賞:1990年日本建築学会賞(論文)、2001年度日本都市計画学会石川賞、

2006年日本建築学会賞(業績)、2013年こども環境学会賞、日本生活学会今和次郎賞。

主な著書:『こんな家に住みたいナ』、『まち再生の術語集』

延藤安弘

in あいち

佛教大学教授を経て、ボランティア運営の

多目的福祉施設としての「まちの縁側クニハウス」(名古屋)

「まちの学び舎ハルハウス」(京都)の代表理事。

丹羽國子さん

まちの縁側GOGO!

身近な地域で、気の合う仲間も、高齢者から障害者または子育て親子まで、みんなの居場所・  まちの縁側が今求められています。

 

 今回、私たちはまちの縁側づくりにおける

ソフトとハードのノウハウをお伝えする、

 「コミュニティカフェ開設講座」を開催します。

 関心ある方、開設を考えている方、連続講座・ワーク

ショップ方式で事例を巡り、各地のまちも見つつ仲間

づくりをしながら学びます。講師は、まちの縁側育くみ隊の仲間達と延藤安弘です。

                

回日程

場所

9月28日(土) アイリス愛知2階(名古屋市中区丸の内2-5-10)

無料説明会

14:00~16:00  ●幻燈会 延藤安弘       なぜコミュニティカフェ、まちの縁側・居場所なのか

       まちの縁側の全国の事例より

  ●ゲスト 丹羽國子さん(一般社団法人まちの縁側クニハウス&

                 まちの学び舎ハルハウス代表理事)

  ●開設講座の内容を案内、申し込みを募ります。

講座アーカイブ

Page 8: つくろう ひらこう コミュニティカフェ - CANPAN€¦ · 研究会」をフェの実践者より運営ノウハウを学ぶ「コミュニティカフェカフェをつくろう!」を編集し、翌年からコミュニティカに据えてきました。2007年に単行本「コミュニティ・たコミュニティカフェを全国に広げていくことを活動の柱

岡田浩彰さん(愛知県安城市)、奥田陽子さん(岐阜市)

14Community Cafe15

愛 知

開 設 講 座ダ イ ジ ェ ス ト

A i c h i

楽しい仕掛けのコミュニティカフェは、眠っているコミュニティを目覚めさせる。地域にふさわしいコミュニティカフェを。

「愛知」には、20代から70代までの19

人が参加。NPO法人まちの縁側育く

み隊の延藤安弘先生を中心に、坪井俊

和先生、名畑恵先生がコーディネート

して、きもちづくりから始まり提案づ

くりまで、5段階で実践的な探訪と講

座受講生とのワークショップを経験す

る、体験学習ステップアップ型の講座

が開催された。

 

第1回 「きもちづくり」では、延

藤安弘先生のミニ幻燈会から、コミュ

ニティカフェ・まちの縁側への、きも

ちづくりからスタートした。訪問地で

ある「まちの縁側GOGO!」「くれ

よんBOX」の事例を学び、受講生の

自己紹介とキモチを語り合い交歓させ

た。

 

第2回 「しくみづくり」では、尾

張一宮「com

-cafe三八屋」の星野博

先生から、コミュニティカフェの運営

と経営、さらに仲間づくりや、おまつ

りの苦労話、開設の際の公的・民的支

援など掘り下げたお話と解説をしてい

ただき、実践的に学んだ。まとめから

は、「志縁を掘り起こし、地域に耳を

澄まし、志民仲間を育もう、巻き込も

う!」「クリエイティブな小さな力の

表現の場(絵本・農・食・精神障害な

ど)は人間もまちも輝かせる! 人を

はぐくみ、まちを発展させる」が導き

出された。

 

第3回 「かたちづくり」では、坪

井俊和先生から、住民参加での公共施

設づくりによって、まちの縁側化され

た、小牧市味岡児童館の展開を聞き、

4つのグループでコミュニティカフェ

にて展開される物語を綴り交歓した。

 

第4回 「うごきづくり」では、名

畑恵先生から長者町での「まちがコ

ミュニティカフェ」となる活動を聞き、

各自が提案づくりへと進化させた。ま

とめからは「良い場所の判断は色々あ

るが、人間の内面から発する生きるリ

ズムが良い物差しではないか。①ある

じ自らの生きるリズム ②ユーザーの

生きるリズム ③まちの生きるリズム

 

地域で悩んでいる人、まちの悩み、

まちの生きる力を内面から弾ませる仕

掛けを」が生まれた。

 

第5回 「提案づくり」では、これ

から展開される活動やコミュニティカ

フェから生まれる喜びを発表し、発表

後講師陣からの講評を聞き、エールを

受けた。

 この5回のステップアップ型の講座

からは、受講者が互いに触発され発想

をふくらませ、仲間の提案にリスペク

トされる講座となった。受講生達の今

後の展開が期待される。

第2回発表の様子

第1回発表の様子

第4回発表の様子

全国交流会で事業プラン発表

「コミュニティカフェ講座・愛知」からは岡田

浩彰(おかだ・ひろあき)さんと奥田陽子(お

くだ・ようこ)さんが代表として選出された。

岡田さんは「Take your Favorite!

」をキーワー

ドに、多世代のお客さんが好きなモノ・コトを

持ち込み、一緒になって楽しめる場として、奥

田さんは高齢者が気軽に行ける、「物理的にも

精神的にもバリアフリー」な場としてコミュニ

ティカフェを提案した。

 

岡田さんのコミュニティカフェに対する根本

的な考えは「まずは自分の居場所となるように

コミュニティカフェをつくり、それが誰かの居

場所となってもよい」というものだ。

 

では岡田さんにとって

の居場所とはどんな場所

なのか。その答えのひと

つが、「自分の好きなモ

ノ・コトを自由に表現できる場所」である。ま

ずは岡田さんが好きなモノ・コトを通してお客

さんと交流する。次に、お客さんが好きなモノ・

コトを持ち込み、自由に表現してその場にいる

人と一緒になって楽しむ。そんな風にコミュニ

ティカフェを育みたい。だからキーワードは

「Take your Favorite!

あなたの好きなモノ・コ

トを持ち込もう!」。自分の好きなモノ・コト

を自由に表現し、他者から共感を得たり、つな

がりを作ったりすることならインターネットで

もできる。それなら、なぜコミュニティカフェ

が必要なのか。それは同じ場に居合わせること

が大事だと考えるからだ。「リアルな場で、五

感を使って刺激を得られる場所。公民館とカ

フェの中間であり、いいとこ取り」。岡田さん

はこんな風にコミュニティカフェを表現した。

 

岐阜市で作業療法士をしている奥田さん。高

齢者や障がい者が仕事・遊び・休息などの日常

の作業を行えるようになることで、その人らし

く生きていけるようサポートをしている。以前、

奥田さんは病院で働いていた。病院では決めら

れたリハビリしかできない、病気になった人

しか見れないなど、「制度の不自由さ」があり、

もの足りなさを感じていたという。

 

奥田さんは病院を辞め、再スタートを切るま

でのあいだ石垣島で休養をとることにした。石

垣島では周りの人が温かく接してくれた。周り

のお年寄りも生き生きとしていた。「地元の岐

阜もこうだったら良いのになあ」「いつか自分

でもこんな場所をつくって

みたいなあ」と思ったそう

だ。そんな時に今回の講座

について知り、参加するた

めに石垣島から帰ってきたのだった。

 

奥田さんが提案するコミュニティカフェは

「ふらっとカフェ」。「ふらっと立ち寄れる場所」

「空間も、心もバリアフリーな場所」という意

味が込められている。「ふらっとカフェ」に来

たお年寄りは、趣味や生き甲斐を通してリハビ

リができる。病気でなくとも体やこころの悩み

相談ができる。「ふらっとカフェ」はこのように、

制度内福祉では対応できないコトを補完する役

割を担っている。現在、奥田さんは小規模デイ

サービスで働いている。新規事業所を出店する

計画があり、そこでのコンセプトとして「ふらっ

とカフェ」の考え方が採用されたとのこと。更

なる進展が期待される。

「Take your Favorite !」岡田さん

「ふらっとカフェ」奥田さん

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16Community Cafe17

受 講 生 の 声

「コミュニティカフェ開設講座 愛知」に参加した

のは19人。最初はコミュニティカフェってなんだろ

う? というひとが大半だった。全5回の講座で

は、実際にコミュニティカフェを訪れて体験しな

がら、ワークショップを通して思いを語り合った。

「自分がやりたいことをやろう」「だれかと楽し

みを共有しよう」という思いのもと、それぞれが

描くコミュニティカフェを具現化していき、最終

発表に臨んだ。

* * *

 山田康弘さんは、フードバンクの活動をして

いる。フードバンクとは、品質に問題がない食

品を企業から寄付してもらい、活用する取り組

みのこと。山田さんはフードバンクを活用して、

会社人間だった退職者を外へ連れ出し、にぎや

かな料理教室を開こうと考えている。「私は、ひ

とりでは生きていけないんですよ。他人と関わ

ることで責任、役割、協力関係などが自然と生

まれ、生き甲斐と目標につながる『居場所』を

つくりたい」と熱く語ってくれた。

 丁佐華さんは、とにかく猫が大好き。実際に

猫を飼っており、猫を介して人の繋がりができ

るという経験をした。丁さんが提案するのは「猫

ミュニティカフェ」。猫を飼っている人はしつけの

仕方を相談できる。これから飼う人は猫と出会っ

たり、猫トモをつくることができる。飼いたく

ても飼えない人でも、日常的に猫に接すること

ができる。加えて、カフェ側が猫の保護活動や

里親募集を行うことで、人間も猫も快適に共生

できるまちを育む。そんな大きな構想を楽しそ

うに語ってくれた。

 

玉腰明子さんは、2013年にオープンし

たコミュニティカフェ「Chou Chou

」のオー

ナー。コミュニティカフェを更に良いものに育

むためのヒントを得たいと、講座に参加した。

Chou Chou

のテーマは「地域の子どもからお年

寄りまで多世代が集まり、笑顔で繋がるまちの

たまり場」。講座を通して、コミュニティカフェ

に対する自分の考えが整理されていったという。

特に、延藤先生が紹介された絵本「わたしたち

のてんごくバス」は、今後の活動におけるバイ

ブルになったとのこと。いろいろな人が「混ざ

りあう」カフェとするために様々な提案をされ

ていた。

 信野さやかさんは、障がい者の就労支援を行

うカフェ「さくらん坊」で働いている。障がい

者が働くことにやりがいを感じられるよう、個々

のペースを大事にしたり、好きなことを活かす

といったことに取り組んでいる。信野さんは、

地域に住むより多くの人に「さくらん坊」とい

山田康弘(やまだ・やすひろ)さん

NPO法人セカンドハーベスト名古

屋所属。フードバンクの活動をして

いる。寄付される食料品を用いて料

理を振る舞うコミュニティカフェを

つくり、会社人間だった人のための

定年後の居場所とすることが目標。

丁佐華(てい・さか)さん

愛知県豊橋市でOLをしている。猫

が大好き。以前、猫を介して人が繋

がるという体験から猫をテーマにし

たコミュニティカフェを開設し、もっ

とたくさんの人と繋がりたいと思い、

今回の講座に参加した。

玉腰明子(たまこし・あきこ)さん

名古屋市昭和区にある「コミュニ

ティカフェChou Chou

」のオーナー。

Chou Chou

をより良い場所にしてい

くためのヒントを得たいと思い、今

回の講座に参加した。いろいろな世

代が混ざりあう仕掛けをこれからた

くさんつくっていきたいとのこと。

信野さやか(しなの・さやか)さん

岩倉市役所内にある、障がい者の就

労支援を行うカフェ「さくらん坊」

で働いている。「さくらん坊」をさ

らに地域に根付いたコミュニティカ

フェにしたいという思いから、今回

の講座に参加した。

人生を豊かにしていく為のコミュニティカフェが動き出した。

うコミュニティカフェの存在を知ってもらい、来

た人がもっと楽しめるように、オリジナルスイー

ツを考案するなど、自分でできるグレードアッ

プに取り組んでいきたいと意気込みを語った。

 柳川明弘さんは、住んでいる高蔵寺ニュータ

ウンの小学校が統廃合されることになり、学校

をコミュニティカフェ・まちの縁側化することを

画策している。高齢化してきた地域において、

生き甲斐を感じられる場所・出会いの場所・互

いの敬愛の心を宿す場所が、コミュニティカフェ・

まちの縁側であると確信し、今後の学校の行方

に地域住民として活動に取り組んでいくとのこ

と。

 永井充さんは、「まちの縁側GOGO!」の主

宰者。近くの小学校が統合され、廃校になると

聞き、危機感を募らせていた。「生徒数が減る

から学校を減らすのではなく、老若男女が集う

から学校を減らせない」という状況にしたいと

のこと。そのためには、学校を単なる生涯学習

センターにするのではなく、「百貨店」のように

誰でも入れる、楽しい場所にしたいのだと語っ

た。

 加藤仲葉さんは、名古屋市中心部の繊維問屋

街、長者町のシェアハウスに住んでいる。幼い頃

から慣れ親しんだ長者町が大好きだという。長

者町で、誰かの居場所となるような場所をつくっ

てあげたい。自分が縁の下の力持ちとなって、

誰かに「居てよし」と言ってあげたいと熱く語っ

た。この「居てよし」という言葉は、居場所を

つくってあげたいという言葉を端的に表し、受

講生の心に残る言葉となった。

 延藤先生の幻燈会で「わたしたちのてんごく

バス」を紹介され、バスで繰り広げられる物語

に感銘を受けたという梶田良さん。「いろいろな

人が集まる場所、一息つく場所をつくりたい」「そ

こで人と人のナマの出会いを通して、刺激を受

け合う。そんな「ゲストハウス・コミュニティアー

トバー・移動式コミュニティカフェ」をつくりた

いとのこと。梶田さんのコンセプトは「Let

 It Be」。「訪れた人を受け入れてあげた

い」「まちを好きになってもらえたらいいな」と

いう。

* * *

 受講生は「これからカフェを開きたい人」と「す

でにカフェがあり、更に発展させたい人」に大

きく分けることができた。前者にとっては「コミュ

ニティカフェって、なんでもできるのですね」「自

分が大切にしていることをみんなとシェアする

場所ですね」と理解している様子だった。

 一方で、後者にとっても「進路を見直す良い機

会となった」「カフェ同士の繋がりづくりにもなっ

た」という意見があり、両者ともに今後の進展

が期待される。

柳川明弘(やながわ・あきひろ)さん

高蔵寺ニュータウンに住み、まちづ

くりに携わっている。小学校が統廃

合されることになり、廃校を利用し

たコミュニティカフェ・まちの縁側

を実現しようと画策している。

永井充(ながい・みつる)さん

コミュニティカフェ「まちの縁側G

OGO!」の主宰者。自らのカフェ

のみならず、近くの小学校の統廃合

に伴う、廃校の活用方法を考えてお

り、議論するために講座に参加した。

加藤仲葉(かとう・なかば)さん

長者町地区のシェアハウスに住み、

アートの仕掛け人としても活動して

いる。「コミュニティカフェ」や「居

場所」という言葉の包容力に興味と

必要性を感じ今回の講座に参加した。

梶田良(かじた・りょう)さん

コミュニティカフェのデザインと木工

を担う芸術家。「人と人のナマの出会

いの場」を求め、「ゲストハウス・コミュ

ニティアートバー・移動式コミュニティ

カフェ」を開設することが目標。

愛 知A i c h i

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18Community Cafe19

しんでいるようだった。受講生からは、「純

粋に、自由に、好きなものを楽しんでいる姿

が素晴らしい」「暖かい空間だと感じた」と

いう声が挙がっていた。

くれよんBOX

 

障がいを持った仲間達が集まり、「AJU

福祉情報誌」の編集委員が結成され、その活

動拠点として2001年に「くれよんBOX」

が開設された。最初は作業所としてスタート

したが、来た人が楽しめるように、カフェと

してまちに開くようになった。「くれよんB

OX」の特徴のひとつは、緑豊かな外部空間。

大きな木の背後にひっそりとカフェが佇み、

ゆっくりとした時間が流れる。受講生はラン

チのタコライス・ロコモコ・ナポリタンを食

べたり、コーヒーを飲んだりしながら、会話

を弾ませた。

 講座では「くれよんBOX」の職員である

山口耕平さんにお話を伺った。コミュニティ

カフェを継続する秘訣は「我をおさえつつ、

我を出す」「無理しない、無茶しない」こと

だそうだ。「それでも、やっていけますよ」

という山口さんの言葉に、励まされる受講生

も多かったのではないだろうか。

com-cafe

三八屋

 2001年3月8日にたった4坪のスペー

スで、3と8の付く日限定で営業する珈琲店

としてスタートした「三八屋」。オーナーの

星野博さんは、まちづくり活動を展開するN

PO法人「志民連いちのみや」の理事長で、

NPOは地元のお祭り「社の宮市」の企画・

運営などを行っている。お祭りの規模の拡大

や、「志民活動」が活発化するのに伴い、活

動拠点が必要となった。そこで、築50年に

なる建物を全面改修し、新しくなった「com

-cafe

三八屋」を2010年8月31日にオー

プンさせた。

 「com

-cafe

三八屋」

には小さな地ビー

ル醸造所が併設さ

れ、お店で地ビール

を提供している。以

前、一宮には「尾張

ブルワリー」という

地ビールがあったが、

廃業してしまい、星

野さんは「尾張ブル

ワリー」のマイスターと復活させようと誓い

合っていた。富山にある小規模醸造所を視察

し、「これならできそう」と確信。

難易度が

高い醸造免許の取得に成功し、「一宮ブルワ

リー」として再スタートした。

 

星野さんの本業は税理士。講座では、コ

ミュニティカフェを運営していくにあたり、

実践している金銭的な工夫についても話して

いただいた。初期投資として、店舗改装費

600万円、設備に200万円、地ビールの

設備に200万円の合計1000万円程度必

要だったという。そこで利用したのがソフト

付き支援。お金を借りられるだけでなく、学

生スタッフを派遣し、手伝ってくれるという

ものだ。運営面でも安価な会計システムを導

入し、経費をおさえている。「たかがお金、

でも、されどお金。お金に心が支配されない

ように、ひと・もの・こと・かね・情報をう

まく使って行くことが大事」と話していた。

コミュニティカフェ紹介

コミュニティ

カフェの現場を訪ねて

http://engawagogo.exblog.jp/名古屋市東区代官町29-18 柴田ビル1階TEL:052-930-250510:00~16:00(時間外でも相談に応じます。) 土・日曜休運営者:永井充

まちの縁側 GOGO!コミュニティカフェ紹介

まちの縁側GOGO!

 緑の蔦が這い、季節感のある表情を街角に

投げかける「まちの縁側GOGO!」。名古

屋市のコミュニティ道路第1号である「にれ

の小道」に面し、小学校がすぐ近くにある。

主(あるじ)の永井充さんは2011年に前

任者からこの空間を受け継いだ。

 

建物の中に入ると、壁一面に棚が配置さ

れ、1万点に及ぶ音楽資料が収められている。

永井さんの高校の先輩にあたる、浅井幸三さ

んのコレクションを引き継いだものだ。「捨

てられてしまうかもしれなかった資料を、地

域に開く担い手になることで、地域の多世代

の人たちや、旭丘高校音楽部同窓生の生き甲

斐の場としたい」という思いから、音楽と笑

い声がひろがる場を育てている。「まちの縁

側GOGO!」では、永井さんがみんなと楽

しみたいこと、例えば笑いヨガ、懐かしの映

画鑑賞会、パソコン相談室などが行われる。

特に人気なのは、好きな曲を持ち寄ってみん

なで歌う「ほのぼのリハーサル」。週に1回

以上は練習し、月に1回は近くのイタリアン

レストランでコンサートをしている。

 

加えて「まちの縁側GOGO!」が企画

する催し以外にも、「得意技を生かして教室

を開きたい」「新しいことにチャレンジする

ために勉強会を開きたい」など、空間を借り

て、企画を持ち込むこともできるようにして

いる。「もっと多くの人に気軽に使ってもら

える空間にしていきたい」とのこと。

 永井さんは「音楽とスポーツ、文化がいっ

ぱい!」を合い言葉に、「まちの縁側GOG

O!」以外でも、近くの小学校で野球を教え

るなど、地域で積極的に活動されている。「近

くの小学校が統合されて、なくなるみたいで

す。本当にそれでいいのかな」と地域の課題

に対する危機感を語っている。

 

受講生は永井さんに「まちの縁側GOG

O!」では普段どんな活動をしているのか、

お話を伺った。永井さんは「じゃあ、一緒に

やってみましょう」と、合唱や笑いヨガを、

その場にいる全員で体験し、楽しんでもらう

ことで魅力を伝えた。その中でも、永井さん

がいちばん「まちの縁側

GOGO!」を楽

永井さんのご指導により「わらいヨガ」を体験

星野さんからコミュニティカフェとまちづくりの実践について聞く

くれよん BOX

com-cafe 三八屋

愛 知A i c h i

http://www.crayon-box.jp/名古屋市昭和区小桜町3-11 羽ね屋敷1階TEL:052-733-5955土曜日11:00~18:00 祝日休運営者:NPO法人くれよんBOX

http://www.38ya.org/愛知県一宮市本町4-1-9TEL:0586-27-483812:00~23:00 日曜休運営者:NPO法人志民連いちのみや

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20Community Cafe21

石 川加 茂 谷 慎 治

人と人をつなぐ場、コミュニティカフェ

伝統を活かす、創造を生み出す。

I s h i kawaかもや・しんじ 企業で企画、法務、広報、秘書の業務を担当し、2008 年、デザイン総合プロデュース会社「株式会社エイチツーオー」設立。 地域情報誌の編集や、企業・団体・商店街の広報コンサルティング、イベント企画運営、農商工連携コーディネーターとして活動する。いしかわ観光特使、石川県男女共同参画審議会委員。

まちなかを網の目のように流れる用

水。せせらぎの脇に設けられた洗い場は

かつて、洗いものをする女性たちが集う

場であった。武家屋敷の間を縫う細い小

径(こみち)を抜けると突然、広見(ひ

ろみ)と呼ばれる空間が広がる。藩政期、

外敵を待ち伏せるために築かれたとも、

火災の延焼を防ぐために設けられたとも

される空間は、普段は住民たちが輪を作

り、話に花を咲かせた場でもあった。

加賀百万石の城下町として栄えた金沢

は、戦災に遭わなかったこともあり、歴

史と文化を基調に、培われた伝統と、新

しい創造力が調和して古くて新しいまち

を形成している。兼六園や武家屋敷跡が

あり、一方で金沢21世紀美術館や鈴木大

拙館が新たな顔となり、2015年には

北陸新幹線が開業する。

歴史の中で、金沢は独自の地域コミュ

ニティを育くんできた。「助け合いの心

で、近隣の人々と心をかよわせ、支え合

い、互いに善き隣人を創っていく」とい

う善隣思想が生まれ、行政に頼らず、地

域の篤志家が中心となって託児所、授産

所などの役割を担う善隣館を開設する。

第一善隣館が1934年に開設されたの

を皮切りに、市内19カ所で設置されてい

く。善隣館は、全国に例をみない地域コ

ミュニティの拠点となってきた。

人々のライフスタイルが変わり、いつ

しか人は強固な地縁血縁に息苦しさを覚

えるようになっていく。そんな中、東日

本大震災を経験した私たちは、「きずな」

「つながり」を見直すようになる。そこ

に行けば、人とのつながりが確認でき

る、互いに助け合うことができる。そん

な場を求める中で、コミュニティカフェ

が広がってきたのではないか。

単にコーヒーを提供するカフェではな

く、まちの縁側、地域の居場所となるコ

ミュニティカフェを開設し、継続してい

くためには何が必要なのか。講座の中で

は、コミュニティカフェに求められる役

割を学んだのをはじめ、起業家として必

要な知識を習得し、事業を継続するため

の事業計画づくりに取り組んだ。

受講生にはすでに開設にこぎつけたメ

ンバーも現れている。皆さんの目標が達

成されるよう主催者からも期待を寄せる

ところである。

代表

デザイナーで似顔絵あみぐるみ作家の木和田里美さんが “ 編み物 ”、“ 手芸 ” をテーマに癒しとクラフトの空間を作りたいとデザイン会社に併設して開いた「ニットカフェ」。参加者は、お茶やスイーツを味わいながら、楽しい会話を弾ませ、編み物に取り組んでいる。作品を仕上げようと、はるばる東京や愛知県、静岡県から駆けつける方もいるほど。木和田さんオリジナルの「似顔絵あみぐるみ」も人気を集めている。

ニットスタジオ Fika (フィーカ)

金沢市香林坊 2-4-30 香林坊ラモーダ 8 階 http://cafe-fika.jp

コミュニティカフェ紹介

特定非営利活動法人 金沢観光創造会議 代表理事

特定非営利活動法人 金沢観光創造会議

コミュニティカフェを開いてみたいという方を対象とした「コミュニティカフェ開設講座 金沢」には 20 名の男女が参加。コミュニティカフェの役割やコーヒーの入れ方、カフェ運営のための事業計画策定などを学んだ。

コーヒーの入れ方や事業計画の作り方など学ぶ。

さまざまな言葉で定義されるコミュニティカフェ。自分が思い描くコミュニティカフェをワールドカフェ形式で「見える化」することに取り組んだ。どんなカフェを開こうか、いまひとつ具体化できなかった夢が計画へと変わっていった。

コミュニティカフェにとって “ おもてなし ” は大切な要素。マナー講師の高由妃さんがお客様への接遇について解説した。中小企業診断士の塩山徳宏さんによる事業計画書の策定指導も行われた。

コミュニティカフェの重要なテーマの一つである「まちづくり」。富山県内でまちづくりに取り組むリタ・クラブ代表の平木柳太郎さんと NPO 法人富山観光創造会議の沖﨑守昭さんがそれぞれ事例を紹介した。

金沢の貴重な財産である「金澤町家(まちや)」。金沢大学名誉教授で、NPO 法人金澤町家研究会理事長の川上光彦さんが、金澤町家をコミュニティカフェの場に活用する方策を紹介した。

コ ミ ュ ニ テ ィ カ フ ェ の 先 進 事例 を 学 ぶ た め、 金 沢 市 野 町 の

「Zenrin Cafe(善隣カフェ)」と、同市武蔵町の「カフェどんぐりの木」を訪ね、運営者からカフェを開設したきっかけ、運営の工夫点などを聞いた。

税理士の堀内龍文さんが、収支計画や起業のための手続きを解説した。バリスタの林清之さんによるコーヒーの入れ方実演に続き、参加者の成果発表会が行われ、講師が審査員を務め、事業プランについて講評を行った。

東京・四谷の主婦会館で開催されたコミュニティカフェ全国交流会の席上、受講者の成果発表会が開かれ、石川県の講座受講生を代表し、笹次和子さん、井上友里さんの 2 人がコミュニティカフェ開設プランを発表した。

「コミュニティカフェを始めませんか」と題して、講座開講に先立つ説明会を開催した。前年、東京都で開催された開設講座に参加し、受講生とともにコミュニティカフェを開設した「なかのコミュニティ研究会 てたて」のさいとうゆうこさんを講師に、カフェ運営に向けた取り組みを聞いた。

コミュニティカフェって何だろう?

コミュニティカフェのおもてなしと事業計画

社会とのつながりのために

コミュニティカフェ全国交流会成果発表会

コミュニティカフェ開設講座説明会

まちづくりから見たコミュニティカフェの役割と課題

コミュニティカフェ探検隊

コミュニティカフェで社会を変える

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講座アーカイブ

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笹次和子さん(石川県加賀市)、井上友里さん(金沢市)

22Community Cafe23

石 川

開 設 講 座ダ イ ジ ェ ス ト

I s h i kawa

失敗を恐れず、おもてなしの心で、理想の場所をエキスパートが説く、コミュニティカフェ実現の道

「コミュニティカフェ開設講座 金沢」

には、30代から70代までの男女20人が

参加した。全6回の講座を通して、N

PO法人金沢観光創造会議代表理事の

加茂谷慎治(かもや・しんじ)さんが

コーディネーター・主任講師を務め、

毎回、さまざまな分野のエキスパート

が講師として、受講生に情報を伝える

とともに、エールを送った。

固定費抑えて継続を

 講師の一人、税理士の堀内龍文(ほ

りうち・たつふみ)さんは「ビジネス

を始めるとき、独立をしようとすると

き、人はためらいを覚えると思います。

それはなぜか。『失敗したとき』。これ

が頭をよぎるからです」と説いた。

 新たにカフェを始めようと考える参

加者の大半がうなずいた。これに対し、

堀内さんは「失敗とはなんでしょうか」

とたずねる。「借金、貯金がなくなる、

今の収入がなくなる。あげればきりが

ない」としたうえで、失敗の可能性を

下げる方法を考えるべきであると指摘

した。設備と家賃と人件費、つまり『固

定費』を抑えることが、成功への道で

あると解説し、「好きなことをビジネ

スとして選択し、社会に貢献すること

ほどすばらしいことはない。しっかり

とした計画を立て、目標を実現してほ

しい」と激励した。

目配り、心配りを忘れず

 「居場所づくりには、おもてなしが

大切です」と説いたのは、マナー講師

で、おもてなし総合研究所代表の高由

紀(こう・ゆき)さん。高さんは、さ

まざまな人の出会いの場となるコミュ

ニティカフェだからこそ、受け入れる

側が“おもてなし”の精神で目配り、

心配りをすることが肝要であると強調

した。「まずは、カフェを開いたらお

客様が第一歩を踏み入れる玄関を『聖

地』として、掃除を心がけ、心安らぐ

場所にしましょう」と呼びかけた。

「創造性は居心地のよい場所に」

 加茂谷さんは、米国の都市経済学者

リチャード・フロリダが著書に示した

「創造性は居心地のよい場所を求める」

という一説を引き、「居心地のよい場

所とされる『人に出会える場所』、『文

化に出会える場所』、『開放的な場所』、

『安心感のある場所』こそ、コミュニ

ティカフェではないか」と話し、受講

生に理想の場所を作ってほしいと期待

を込めた。

おもてなし総合研究所代表の高由紀さん

税理士の堀内龍文さん

金沢観光創造会議代表理事の加茂谷慎治さん

全国交流会で事業プラン発表

 東京・四谷で2月23日に開催されたコミュニ

ティカフェ全国交流会では、「コミュニティカ

フェ講座 金沢」受講生から選ばれた二人が事

業プランを発表した。発表したのは、笹次和子

(ささじ・かずこ)さんと井上友里さん。母娘

でそろって講座に参加、それぞれが思い描く事

業プランを作り上げ、全国交流会に臨んだ。

 

笹次さんのプランは「世代を越えてつながる

ことができる場所 

湯の町えんがわサロン」。

石川県の日本海べりのまちに生まれた笹次さん

は、白衣の天使を夢見て看護学校を卒業、福井

県との境にある山中町(現在は加賀市)の病院

に勤務し、そのまま町内の男性のもとに嫁いだ。

 

看護師として経験を重

ねた後、2000年に介

護保険法が施行されると

ともにNPO法人を設立

し、デイサービス事業を開始した。ケアマネー

ジャーとして高齢者の介護に当たり、2005

年には運営母体を有限会社に変更し、地域福祉

の第一線で活動してきた。

 

伴侶に先立たれてうつ状態となって閉じこ

もっている人や、体力が低下し転倒を繰り返す

人たちの姿を見るにつけ、介護認定を受けた人

たちの隙間を支援したいと考えた笹次さんは、

昨年、デイサービス施設の運営を後進に譲り、

コミュニティカフェを立ち上げたいと切望する

ようになったのである。

 

そんな時に見つけた「コミュニティカフェ講

座開講」の知らせに、迷わず参加することを決

めた。70歳を超えて、なお新しい道にチャレン

ジする姿は、講座参加者にも大きな励みとなり、

明るい笑顔は周囲を元気づけてくれた。

 「発表の最後には私の一番好きな句、『傘寿と

は 

何ほどのこと 

水着買う』を紹介させても

らいました。まだまだ挑戦し続けます」と意気

込む笹次さん。発表の数日後、県に申請してい

た「創業支援補助金公募」に選ばれたとの知ら

せが入った。笹次さんのコミュニティカフェは

また一歩実現に近づいた。

 

母である笹次さんに誘われ、開設講座に参加

することになった井上さん。当初は「自分がど

んなコミュニティカフェを運営したいのかが分

からない」と悩んでいた。ところが、講座期間

中に出かけた台湾で思わぬヒントを得た。

 

異国の地で、美味しいものを食べようと思っ

てもメニューの中身が分か

らない。そんな時、路上の

縁台に座った現地の人たち

から話しかけられた。言葉

の壁を超えて熱心にコミュニケーションを図ろ

うとする異国の人たち。そうだ、自分が住む金

沢を訪れて、道に迷い、食べ物の選択に困って

いる外国人観光客を支援できるコミュニティカ

フェを作ろう。井上さんは「金沢の言葉であい

さつに用いる『まいどさん』。これを英語で発

音しやすいようにした“My

Door

Son”

を店名にしようと考えました」と楽しげに語る。

 

発表会では、フォトグラファーとして撮りた

めた金沢の風景写真を使ってプランを説明し

た。発表を終えた井上さんは「いつか夢を実現

させるための第一歩となりました」と話し、充

実感に包まれていた。

笑顔で発表する笹次さん

「まいどさん」のプランを発表する井上さん

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24Community Cafe25

受 講 生 の 声

石 川I s h i kawa

「コミュニティカフェ開設講座 

金沢」に参

加したのは20人。それぞれが思いや計画、目

標を持って、全6回の講座に臨んだ。石川県

内からは、金沢市を中心に奥能登・輪島市か

ら福井県境に近い加賀市山中町まで、さらに

県外は、新潟県や富山県からも、コミュニティ

カフェ実現を目指して受講生が駆けつけた。

* * *

 宇野孝一さんは、コミュニティカフェを運

営する経験者。金沢の地域福祉拠点「善隣館」

のうち最も歴史が古い第一善隣館(1934

年設立)の施設長であり、同館が2012年

に開設した「Zenrin Cafe

(善隣カフェ)」の

代表を務める。「『コミュニティカフェ』にこ

だわって開設したわけではないが、周囲から

『コミュニティカフェだね』と言われ、コミュ

ニティカフェというものを学ぼうと思った」

と話し、積極的に講師に質問するなど意欲的

だった。

 片道300キロを超える距離をものともせ

ず新潟市から講座に足を運んだのは、笠原志

郎さん。前夜に金沢に駆けつけ、最前列で熱

心に講師の話にメモを走らせる姿は、他のメ

ンバーからも尊敬される存在だった。「コミュ

ニティカフェを開設し、障がいを持つ方が多

くの方とコミュニケーションをとれる場を作

りたい」と話す笠原さんの思いは必ず実現す

ると誰もが確信した。

 高塚亮三さんは、自分がグループホームを

運営するなかで、認知症患者とその家族への

周囲の理解が不足していることを実感。「以

前に訪れたデンマークでは、患者への支援が

充実していた」と話す高塚さんは、認知症に

ついて気軽に語り合えるカフェを実現するた

めに講座への参加を決めた。カフェを続けて

いく大切さについて力説した高塚さんは講座

終了後、デンマーク風のパンやチーズを提供

する「認知症カフェ」の月1回開催にこぎつ

けた。

 たまたま訪れたギャラリーで講座のチラシ

をみかけた戸出亜子さんは、「自分が考えて

いることと何かつながることがあれば」とい

う気持ちで参加した。「講座に参加して、い

ろんな人とつながることができてよかった」

という彼女は、陶芸家の夫とともに陶芸教室

やギャラリーを併設したアートカフェを現実

のものにするため、県内のコミュニティカ

フェを熱心に取材し、講座の中で受講生に紹

介してくれた。

 「自分の特技を生かして地域貢献がしたい」

東浩子(あずま・ひろこ)さん

奥能登の中心、輪島市で団体職員と

して働きながら華道講師を務める。

自宅で華道を学んでもらうだけでな

く、地域の人に親しんでもらえるス

ペースができたらとコミュニティカ

フェ開設を目ざす。

宇野孝一(うの・こういち)さん

障がい者の就労支援を行う「Zenrin

Cafe

(善隣カフェ)」の代表。母体で

ある福祉施設の施設長も務めている

ため、多忙な日々を送る。

小塩恵子(こしお・けいこ)さん

夫とともに自動車部品販売店を経営

していたが、3年前に店を閉じ、何

か新しいことを始めたいと考えてい

た。コミュニティカフェという言葉

に興味を抱いて参加した。

戸出亜子(といで・つぎこ)さん

陶芸家の夫をサポートしながら、染

色家として創作活動をしている。地

元の小学校で、読み聞かせのボラン

ティアを10年にわたって続けている。

夢を現実に、一歩一歩前進続ける

と言うのは、いつも温かい笑顔で周囲を和ま

せてくれた土田洋子さん。「今は、個の時代

だから集まる縁側が必要、とさらに実感する

講座でした。自分の得意分野を伸ばし、仲間

で支え合いながら、楽しい時間、人生を過ご

したい。今後は地域の現状を把握して、場所

や仲間を探し、カフェを実現したい」と熱く

語ってくれた。

 3年前まで、夫と会社を経営していた小塩

恵子さん。会社をリタイヤした後、「何かは

わからないが、何かを始めたくて」講座に応

募したという。講座に毎回、足を運び、多く

の人と交流し、「一気に世界が広がった」と

顔をほころばせた。「趣味も特技もないけど、

講座をきっかけに人との交流が楽しくなり、

気持が外へ向いてきた」と言う小塩さんには、

この講座自体がコミュニティカフェそのもの

だったのかもしれない。

 東浩子さんの華道教室は、輪島市中心部か

ら離れた町の急な坂の上にある。自宅の華道

教室を充実させる手段としてコミュニティカ

フェを考えていたが「講座の中で市内のコ

ミュニティカフェを視察したとき、改装や集

客に関する運営者の苦労話が、とても勉強に

なった」と言う。カフェを開く場所をもう一

度検討しなおし、夢の実現に向けて気持ちを

高めている。

 今回の講座にはNPO運営者の方もたくさ

んいた。その一人、元尾サチさんは、自身が

理事を務めるNPOの事業所の空きスペース

を何かに利用することができないかと考えて

いた。別の運営者の方々と講座の中で同じグ

ループになり「何を始めるにしても、ただ理

想に燃えて始めるのではなく、しっかりとし

た理念と具体的な根拠に基づいた経営方針が

必要だと学んだ」と事業計画の再構築に意欲

を燃やしていた。*

 * *

 受講生のうち、髙塚さんが計画した「認知

症カフェとまり木」は講座修了後、まもなく

実現に至り、地元の新聞にも報道された。認

知症に悩む方や家族にとっての大きな支えと

なり、活動の輪が大きく広がっている。

 受講生を代表して、全国交流会でプランを

発表した笹次和子(ささじ・かずこ)さんは、

講座を通して、事業計画を取りまとめ、県に

提出。創業支援の補助金交付が決まり、カフェ

開設に大きな一歩を踏み出した。

 スピードに違いはあるものの、ともに学ん

だ仲間の動きを励みに、受講生は、夢を計画

に変え、現実のものとなるように一歩一歩着

実に前進している。

髙塚亮三(たかつか・りょうぞう)さん

グループホームを運営する「NPO

法人老人介護マトリックスとまり木」

の理事長。認知症患者本人とその家

族への支援を行っている。

土田洋子(つちだ・ようこ)さん

長年、会社員として医療事務に携わ

りながら、コーチング・フラワーデ

ザイン・編み物講師・整理収納アド

バイザーなどの資格を取得。最近は

「断捨離」にはまっている。

笠原志郎(かさはら・しろう)さん

新潟市に本拠を構える「NPO法人

にいまーる」の理事長。聴覚障がい

や言語障がいを持つ方の支援を行う。

手話教室や就労支援に取り組んでい

る。

元尾サチ(もとお・さち)さん

在宅療養を推進する「NPO法人い

しかわ在宅支援ねっと」理事。看護

師としての経験を生かし、同NPO

が運営する高齢者の在宅ケアや医療

相談を行っている。

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26Community Cafe27

石 川I s h i kawa

コミュニティ

カフェの現場を訪ねて

http://www.redecoreya.com/金沢市武蔵町16-19 TEL:076-255-167810:00~18:00 水曜、第1・3日曜休 1~3月は毎週日曜休日替わりランチ(月・火・木・金曜)750円 コーヒー350円運営者:工藤愛子

カフェどんぐりの木コミュニティカフェ紹介

 「コミュニティカフェ開設講座 

金沢」では、教室での座学に加え

て、「コミュニティカフェ探検隊」

と題して、実際にコミュニティカ

フェを訪ね、運営者から開設までの苦労や開

設後の工夫点などを聞いた。受講生は、各カ

フェの取り組みを自らの励みにするととも

に、プラン策定の参考とした。現場を目の当

たりにしたことで、受講生のプラン実現に向

けたイメージも広がっていったようだ。受講

生は、町家を活かした金沢市武蔵町の「カフェ

どんぐりの木」と、障がい者の就労の場とも

なっている同市野町の「Zenrin Café

(善隣

カフェ)」を見学に訪れた。

金澤町家を活かした

ホッとする空間

 「カフェどんぐりの木」は、建築士でもあ

るオーナー母娘が昭和初期の町家を改築し、

オープンした。カウンターやテーブルに古民

家の無垢材を再利用するなど、昔懐かしい風

合いを十分に感じさせてくれるつくりとなっ

ている。入口の英国製のステンドグラスドア

など、至るところにアンティークな部材や資

材が用いられている。

 

受講生の土田洋子さんは「金沢の特徴と

もいえる『町家』を活用することで、ホッ

とできる空間に

なっていますね」

と話し、事業プ

ランのヒントを

得たようだった。

自宅の町家を活

かしたコミュニ

ティカフェ開設

を目指す笹次和

子さんは、「町家

の空間をうまく

カウンターをはじめ店内至るところにこだわりの部材が用いられている = カフェどんぐりの木

受講生は、町家を活かしたカフェ開設にこぎつけた工藤さん(中央右)から説明を受けた= カフェ どんぐりの木

https://www.facebook.com/ZenrinCafe金沢市野町1-3-22 TEL:076-259-0059TEL:10:00~16:00 日曜、祝日休コーヒー300円 たんとカレー450円スパゲッティ(ミートソース)450円運営団体:社会福祉法人第一善隣館

Zenrin Cafe(善隣カフェ)

コミュニティカフェ紹介 活用し、雰囲気のある居場所ができている。

運営するうえで、スタッフの確保が大切だと

いうことも分かった」とうなずいていた。

 オーナーで同カフェを運営する工藤愛子さ

んは「手づくりケーキや和スイーツにも趣向

を凝らし、近隣の方や観光客にも満足いただ

けるように工夫しています」と食へのこだわ

りについて説明した。

地域福祉の拠点

「善隣館」が運営する交流の場

 「忍者寺」として知られる妙立寺近くにあ

る隠れ家的なカフェが「Zenrin Café

(善隣

カフェ)」。1934年から地域福祉の拠点と

して活動を続ける社会福祉法人「第一善隣館」

が、地域の子どもや高齢者、障がい者の交流

の場にしようという目的で、2012年暮れ

に開設した。障がい者の就労支援に当たるN

PO法人が運営に協力しており、障がい者施

設で作られた『たんとカレー』がおすすめメ

ニューとなっている。

 受講生として講座に参加した第一善隣館施

設長の宇野孝一さんが「お年寄りが気軽に立

ち寄り、中学生が机に向かって宿題に励み、

障がいを持ったスタッフがメニューを運んで

くる。そんな交流の場になっている」とカフェ

の現状を紹介した。

 木造二階建ての民家を改装した店内を巡っ

た受講生の感想もさまざま。東浩子さんは「畳

を活かした空間が温かみを醸し出している」

と笑顔を見せ、井上厚子さんは「自分がカフェ

を開いたら、コーヒーに合うどんなスイーツ

がいいのかいろいろと考えてみました」と話

し、さらにプランを掘り下げたようだった。

受講生として参加した Zenrin Cafe(善隣カフェ)の宇野さんから話を聞く受講生 = Zenrin Cafe

畳の空間が温もりを感じさせる店内 = Zenrin Cafe

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28Community Cafe29

京 都小 辻 寿 規

「地縁」と「志縁」が共存する

伝統と革新が織りなす居場所作り

Kyotoこつじ・ひさのり 大学院にて孤独死の研究をする中で、高齢者の社会的孤立を減少させる居場所の効果に興味を持ち、居場所の運営や支援に関わる。その中で仲間と共にまちの居場所やまちづくりの中間支援組織「特定非営利活動法人つながるKYOTO プロジェクト」を立ち上げる。京都市市民参加推進フォーラム委員。

京都は、日本の中で住民自治組織の活動

が盛んな地域である。特に中心部において

は番組小学校(64校)を起源とする元学区

(現在の小学校区とは異なる)を中心に明

治時代以降、まちづくりや地域福祉が発展

してきた。

これら元学区を中心にそこに住まう人の

つながり作り、居場所作りが小学校(小学

校跡地を含む)を中心に行われている。

しかしながら、住民の就労形態が自営か

ら雇用に変わったことや、新規の住民が地

域とあまり関わらないマンションに流入し

てきたことなどにより、地域の行事などを

含め、旧住民と新住民の関わりが弱まって

きている。このような事情もあり、全国的

にいえることだが、新住民を含め地域など

と関わりを持たない人が増えてきている。

ただ、このような人達の中にも人と人との

つながりを求め、居場所を求める人が増え

ている。

そのような京都の住民からの声に呼応す

るように、「まちの学び舎ハルハウス」や「ま

ちの縁側とねりこの家」が誕生し、元学区

による地域福祉やまちづくりとは異なる新

たな地域福祉やまちづくりが提供されるこ

ととなる。この2つの居場所の影響を受

け、京都に多くの「志縁」を基盤としたま

ちの居場所が生まれることになる。また、

この2つの居場所の影響を受けた全国のま

ちの居場所も少なくないといえる。

このような中で、住民自治組織も今まで

は元学区民に対してのみの限定的な地域福

祉活動から、それ以外の方にも開けた居場

所作りをはじめるようになっている。この

ような流れで、京都には「志縁」ベースの

居場所と「地縁」ベースの居場所が両立す

る形となっている。特に京都市において

は、「高齢者の居場所づくりに対する助成

制度」が平成24年度より始まるなど、これ

らのみなさんの活動を受けて行政も支援に

乗り出しつつあり、興味を持つ人も増えて

きている。

今回の講座の中では受講生のみなさんに

グループワークを中心に行った。居場所

(コミュニティカフェ)の運営において、

一人で行うことは非常に困難を伴う。それ

ゆえ、受講生には共に作るということも想

定した上で講座を受講してもらった。

本講座には京都や近くの大阪、兵庫だけ

ではなく、愛知や鹿児島などからも受講生

が参加した。

受講生の中には、もう新しい居場所を

作った人も出てきている。今後の発展が非

常に楽しみである。

代表

つながる KYOTO プロジェクトは「京都市未来まちづくり 100人委員会」をきっかけに生まれた団体で、孤立を減らし、つながりを作るために、京都にまちの居場所を 1000 カ所作ることを目標に、多くの人たちにまちの居場所を知ってもらうべく、シンポジウムや勉強会、見学体験ツアー、調査研究などを行っている。また、運営者や運営を希望する方に対してコンサルティングや講演などを行っている。

特定非営利活動法人

つながる KYOTO プロジェクト京都市上京区土屋町通出水上ル弁天町 303 番地 http://datsumuensyakai.jimdo.com/

連 携 団 体 紹 介

特定非営利活動法人つながる KYOTO プロジェクト 理事長

特定非営利活動法人

つながる KYOTO プロジェクト

京都の講座には 20 名が参加し、ワークショップを中心に講座を行った。また、フィールドワークも多く行い受講生は現場の実情を学んだ。

自分のイメージを言葉にし、現実にする。

色々な思いを持ってきた受講生たち。京都における先進事例の報告し、その上で、受講生それぞれのコミュニティカフェのイメージを共有した。また、受講生は第 2 回のバスツアーに備えて、質問したいことなども考えた。

社会調査の手法を社会学者の平本毅さんが解説した。それをもとに参加者は任意のコミュニティカフェを訪れ、運営者に質問した。また、この回より事業計画のイメージを膨らましていく作業を行った。

東京の「三田の家」の運営にも携った京都造形大教授の熊倉敬聡さんや「新大宮みんなの基地」の桑田正寛さんが参加者の事業計画にアドバイスした。本発表会は公開で行われ、受講生にとって自らのプランを発表する場となった。

「まちの学び舎ハルハウス」、「まちの縁側とねりこの家」をはじめ、「YAOMON」、「 新 大 宮 み んなの基地」、「集い場天気にな~れ~」など様々なコミュニティカフェを受講生と講師がバスツアーで回り、運営のコツなどを学んだ。

NPO 法人きょうと介護保険にかかわる会理事長で自身も居場所づくりをおこなった経験のある梶宏さんが実際に運営を行ったときに起こる問題を解説した。それをふまえた上で受講生は事業計画を作った。

コミュニティカフェってどんなとこ?

コミュニティを調査してみよう!

事業計画発表会

先進事例を体感しよう!

自分たちの事業計画を作ってみよう!

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東京の四谷で開催されたコミュニティカフェ全国交流会には、事業計画発表会で京都講座代表に選ばれた橋本伸子さん、川嶋修司さんがプランを発表した。また、京都講座の受講生の一部も交流会に参加した。

「まちの学び舎ハルハウス」の丹羽國子さんが居場所づくりを始めた当時の話などを参加者に伝えた。当日は近畿地方以外からも様々な方が参加者として駆けつけ、全国各地の情報交換も行った。

コミュニティカフェ全国交流発表会

コミュニティカフェ開設講座説明会

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講座アーカイブ

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橋本伸子さん(京都府舞鶴市)、川嶋修司さん(愛知県大府市)

30Community Cafe31

京 都

開 設 講 座ダ イ ジ ェ ス ト

Kyoto

夢をいかに現実にするのか。様々な方法を使って理想のコミュニティカフェを手繰り寄せる。

「コミュニティカフェ開設講座 京都」

には、20代から70代までの男女が東は

名古屋、西は鹿児島という大変広い範

囲から参加した。全5回の講義を通し

て、NPO法人つながるKYOTOプ

ロジェクトの小辻寿規さん、萩原三義

さん、平本毅さんを中心とした講師陣

からコミュニティカフェを運営するこ

との難しさ、楽しさ、そしていかにお

客さんに魅せるかなどを学んだ。

何をやりたいのか

 講師の一人、萩原三義さんは参加者

の方々に何がやりたいのかを常に問う

た。参加者の方々は、それぞれ今まで

の経験やバックグラウンドを持った専

門家であること、それをいかに利用し

て場所作りを行えるのかが重要である

ことを説明した。

 運営をする中でさまざまな人と衝突

があってもきっちり自分の考えを述

べ、相手の考えを聞くことの重要性を

伝えた。萩原さんはきちんとお互いの

気持ちを伝え合ってはじめて前に進め

ること、そこからでないと納得できな

いまま終わって何も得られないことを

説いた。

 また、ワークショップの中では模造

紙や付箋を使ってみんなの意見をまと

める手法を指導し、ここで覚えたワー

クショップの手法を使ってみんなの意

見をまとめて居場所を運営していって

欲しいと伝えた。

外から学ぶことの重要性

 他の運営者からインタビューする時

の手法やものを考えるロジック、運営

のために必要な周辺情報のリサーチを

どのように行っていくべきか、また、

そのためのお作法、情報の使い方を平

本毅さんから学んだ。

 受講生達にとってはICレコーダー

を使うことや聞きたい内容をみんなで

決めて日程調整してインタビューする

など初めての経験が多くあったが、平

本さんのフォローもあり、どのグルー

プも無事に運営者にインタビューを行

うことができた。

 

また、まちの居場所の参与観察を

行ったこともある研究者の目線もふま

えて話したこともあり、受講生にとっ

て有意義な講習となった。

いかに魅せられるか

 小辻さんは、プランを作る上でター

ゲットを明確にすること、お金をどこ

からとってくるのか、売りは何にする

のかなどを決めることが事業計画を作

る上で重要だと話した。また、お客さ

んに対していかに寄り添うべきなの

か、提供する商品の価値に納得しても

らうためにいかに魅せることが有効な

のか、情報戦略へのアドバイスなどが

行われた。

つながる KYOTO プロジェクトの平本さん

つながる KYOTO プロジェクトの萩原さん

全国交流会で事業プラン発表

コミュニティカフェ全国交流会には、「コミュ

ニティカフェ開設講座 京都」受講生の中から

選ばれた橋本伸子さん、川嶋修司さんが発表し

た。橋本さんは障がいのある人と地域の交流を

テーマに、川嶋さんは認知症の人や家族に対す

る支援をテーマにプラン発表を行った。

 

橋本さんのプランは「ほっこりの・えんがわ

 

障がいのある人が働く場所を地域コミュニ

ティの場に!」。

 

橋本さんの住む舞鶴市は、障がいのある子ど

もの学校が郊外にあり、障がいのある人が働

く場もほとんどが郊外にある。そんな舞鶴に

て、ご家族も含め障がいのある人の支援をして

きて、他の方々が障がい

のある人のことをよく知

らないことに寂しさを感

じ、障がいのある人たち

が働く施設「ほっこり」を街中に作ることにし

た。

 「ほっこり」は月曜日から金曜日までの運営

で、土曜日、日曜日が空くこともあり、運営主

体の代表理事である橋本さんは土日の休みを

使って、障がいのある人も他の地域の人も自由

に集まれる場所を作ろうとしている。

 

この土日限定の場所では「ほっこり」に通う

人の保護者が中心となって運営を行う。そして

企画を自分たちで行いながら、地域の人たち

にもその企画をどんどん考えてもらって、より

みんなに知ってもらえる存在になりたいと語っ

た。

 

5年、10年と続く場所にしていきたいと語る。

橋本さん達の愛に溢れた居場所の今後がとても

楽しみである。

 

一方、川嶋さんは、「認知症出前カフェ 

集い、

ふれあい、つながり、広がる」のタイトルでプ

レゼンテーションを行った。川嶋さんは医師で

あり、認知症医療の現場で治療や研究を行って

いる。それらの経験をふまえ、コミュニティカ

フェ開設講座では、「色んな場所で開催できる」、

「だれでも参加できる」、「和みの時間、場所を

提供」、「専門職による相談、情報提供」をコン

セプトに認知症出前カフェを提案した。

 

認知症出前カフェは開催場所を選ばず、病院

や診療所、高齢者施設、コミュニティカフェを

はじめ、色々なところに出向く。また、認知症

の人やその家族、地域の人だけでなく、医療・

介護につながっていない人

をも巻き込むことを考えて

おり、行った場所やその周

りのネットワークをつなげ

活性化し、認知症に理解のある社会を作ってい

く一翼を担うことを想定している。認知症サ

ポートをする出張型コミュニティカフェの可能

性を示す発表となった。

 

橋本さんと川嶋さんの発表に通じることとし

て、マイノリティな扱いを受けてしまいがちな

人たちの存在を社会の多くの人達がいかに認知

し、受け入れ、共に生きていく共生社会をいか

に作ることができるのかというテーマがある。

コミュニティカフェが今後、社会的包摂の場と

しても利用されていく中で、その可能性を提示

する発表となった。

「ほっこり」への思いを語る橋本さん

認知症カフェを語る川嶋さん

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32Community Cafe33

受 講 生 の 声

全5回の講座となった「コミュニティカフェ

開設講座 京都」には20名の受講生が参加し

た。受講生の参加動機は、私財を投じてコミュ

ニティカフェを作りたい、現在運営している

カフェをコミュニティカフェにしたい、運営

の手伝いをするためのスキルの向上を目指し

たいなど、様々であった。受講生は講座の他、

バスツアーや現場のインタビューなど多くの

時間を共有した。会場となった京都府、大阪

府、兵庫県のほかにも愛知県や鹿児島県から

の参加もあり、西日本のコミュニティカフェ

開設への熱気を感じることができた。

* * *

孤独な高齢者を減らしたい

 杉谷紀子さんは、ヘルパー職に10年以上就

いてきた中で一人暮らしや、家族がいても孤

独な高齢者にたくさん出会ってきた。その現

状を変えようと月1回の茶話会を開催してい

るが「メンバーが固定化され、亡くなったり

して参加者が減っていく先細りから、講座で

の学びを生かして将来的な希望を見出した

い。」との意欲を持って参加した。

 孤独な高齢者を減らしたいと考えた参加者

は一人ではない。住本博司さんは、ヘルパー

をしてきた経験もふまえ、自宅を改修しコ

ミュニティカフェにすることを決めた。その

プランをより良くすることが参加の主な動機

となった。「地域には隠れた男性のおひとり

さまがたくさんいる。この人たちのためにも

地域の中に居場所を作りたい。男目線だから

こそ作られるコミュニティカフェもある」と

語った。

 杉谷さんや住本さんのように高齢者の居場

所づくりを重要に考える参加者は多く、一つ

のテーマになった。これらの参加者達は、講

師からの孤独死や孤立といった話に特に耳を

傾け熱心にノートを取った。

多世代交流の場を作りたい

 高齢者の居場所作りと並んで受講生が興味

を持っていたのは多世代交流の居場所作り。

吉本弥よひさんは自身が主宰する重度心身障

害者の生活介護事業施設「花の駅」が移転す

るにあたり、施設の跡地に多世代交流のコ

ミュニティカフェを開設したいと考え参加し

た。講座に参加する中で、吉本さんは「利益

にならない部分があっても、受講生達は他者

と自分のために頑張ろうとしてくれている。

杉谷紀子(すぎたに・のりこ)さん

ヘルパー職として10年以上働いてき

た中で孤独な高齢者が多い現実を目

の当たりにし、その現状をなんとか

できないかと考えるようになり講座

に参加した。

吉本弥よひ(よしもと・やよひ)さん

「花の駅」主宰。35年間看護師を務め

る。社会福祉士でもあり、「花の駅」

においては多くの人が心安らかに住

める場所を作ってもらうため生活介

護事業を行っている。

住本博司(すみもと・ひろし)さん

郵便局退職後、淡路島にて牧場ボラ

ンティアを経験。その後、島根県出

雲にて癌患者のターミナルケアに関

わった経験からヘルパーの道へ進み

介護福祉士資格を取得した。

岡田佳代(おかだ・かよ)さん

神戸市認可家庭的保育所赤ちゃん

ホーム代表。子育て中のママたちが

気軽に相談しあえる場所、ママたち

がリフレッシュできる交流の場とし

て、コミュニティカフェの開設をめ

ざす。

共に考え、共につくる。

今まで色々な講座に参加してきたが、こんな

経験は初めて。すごく刺激を受けた」と語っ

てくれた。

 

多くの受講生に共通していえることだが、

それぞれテーマがありつつも、どの世代もが

関われる居場所作りをしたいという共通の願

いがあった。

子育てママ達の居場所をつくりたい

 岡田佳代さんは「神戸市認可家庭的保育所

赤ちゃんホーム」で、幼い子どもと関わる中

で、お母さん達の子育ての悩みなどを気軽に

相談できる場所がなかなか無いことを痛感し

たという。一人で考え込んでしまわないで欲

しい、子育てを頑張っているお母さんに少し

でもリフレッシュできる場を提供したい。そ

のような思いでコミュニティカフェを作ろう

と考えるようになった。

自分も含めた居場所をつくりたい

 若者の中には現在、社会貢献したいと思う

者も多い。そして、独身の者も多くおり、老

後ひとりぼっちになってしまうのではないか

と考える者も少なくはない。このような現状

から、中村アヤさんは、自分も含めて今の若

者が社会貢献しつつ、老後も含めてひとり

ぼっちにならないように今から集まって交流

できるコミュニティカフェをつくりたいと考

えるようになった。中村さんは発表会で、「出

張スタイル、空き家活用スタイル、ソーシャ

ルアパートメントスタイルなど様々な形でコ

ミュニティカフェを作っていきたい」とプラ

ンを語った。そのような仲間を中村さんは今、

全国から募集している。

共に作ることの重要性

 受講生達が声を揃えて言ったことは「仲間

がいるんだ」ということだ。受講生の中には

一人でやっていかなければならないと思って

いたり、運営を手伝いたいとは思っているが、

どこに手伝いに行けば良いのか分からないと

考える者も少なくはなかった。しかし、講座

に参加する中で「自分が空いている日は助け

に行くね」という声が多く聞かれた。ほかの

受講生のカフェ・コンセプトを聞く中で、こ

の受講生とは共通な思いが多いからと、人柄

に惹かれて手伝いたいという声が聞かれた。

「他人の話を聞き、共に考えれば、元々考え

ていた案よりもずっと良い案になった」。そ

のように語ってくれた受講生もいた。

今後の動き

 講座の終了後、それぞれの思いは現実に向

けて動き始めている。住本さんは友人の受講

生と共に自宅を改築し、コミュニティカフェ

「ハウスこのゆびとまれ」を2014年4月

にオープンする。また、吉本さんや全国交流

会の発表者、橋本伸子さんも現在、開設に向

けて動いている。その他の受講生にも来年ま

でにはコミュニティカフェを作ろうと計画し

ている者が10名程度いる。

 受講生達はほとんどが本講座で知り合った

が、ワークショップや共同の調査、発表を

行ったこともあり非常に仲が良い。受講生の

中には、今後、他の受講生のコミュニティカ

フェの運営を手伝っていきたいと考える者も

いる。

 同窓会も兼ねたイベントを今後行っていく

予定だがそこでの受講生の報告が楽しみであ

る。スピードに違いはあるものの、ともに学

んだ仲間の動きを励みに、受講生は、夢を計

画に変え、現実のものとなるように一歩一歩

着実に前進している。

中村アヤ(なかむら・あや)さん

婦人雑貨店オーナー。団塊ジュニア

として今後の社会を担う中でコミュ

ニティカフェを運営して社会に貢献

したいと考え講座に参加。様々な形

のコミュニティカフェ開設を目指す。

京 都Kyoto

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34Community Cafe35

コミュニティ

カフェの現場を訪ねて

http://www.kunihouse.jp 京都市北区紫野十二坊町 16-16 TEL:075-451-6733 京雑炊ハルハウス 年中無休 6:00~10:00 まちの学び舎ハルハウス 月~水・金・土曜 10:00~16:00 京雑炊 400 円 コーヒー 200 円 ゼリーなど 100 円~運営者:一般財団法人まちの縁側クニハウス&まちの学び舎ハルハウス

まちの学び舎ハルハウスコミュニティカフェ紹介

「コミュニティカフェ開設講

座 

京都」では、「先進事例

を体感しよう!」と題して

1日がかりのバスツアーを

開催した。「下京町衆倶楽部

拠点」から始まり、「まちの縁側とねりこの

家」、「まちの学び舎ハルハウス(以下、ハル

ハウス)」、「つどい場てんきにな~れ」、「新

大宮みんなの基地」、「YAOMON」と京都

中を駆け巡った。受講生のみなさんは帰りは

くたくたになるほど現場を勉強し、充実した

1日となった。今回はその中の2カ所「ハル

ハウス」と「YAOMON」を紹介する。

京都のコミュニティカフェ

発祥の地

 「ハルハウス」は、看護師で、佛教大学で

教授を務めていた丹羽國子さんによって開設

されている。「向こう三軒両隣が仲良くなれ

ば、みんなで支え合える。日本を再びそんな

国にして、住み慣れた土地でお互いに助け合

い支えあい、健やかな生活が送れるようした

い」。そんな丹羽さんの思いに仲間が共感し、

支え始め、今では地域の人達も運営に参加す

るコミュニティカフェになっている。

 

京都のコミュ

ニティカフェ史

を考えた場合、

ハルハウスの存

在は非常に大き

いといえる。ハ

ルハウスからノ

ウハウを学んだ

り、影響を受け

たりして開設さ

れたコミュニ

名物の京雑炊。さまざまな野菜を摂ることができる=まちの学び舎ハルハウス

吹き抜け構造になっており、利用者に開放感を与える=まちの学び舎ハルハウス

http://www.yaomon.net/京都市上京区今出川通寺町西入ル革堂内町522TEL: 075-241-441611:00~19:00(左記時間以外は要予約)日曜、祝日休(臨時休業あり)コーヒー 350円 紅茶 300円

YAOMONコミュニティカフェ紹介 テ

ィカフェが多くある。また、ハルハウスが

出来るまでは地縁の居場所づくりがほとんど

であったため、ハルハウスは京都コミュニ

ティカフェ発祥の地ということもできる。

 バスツアー当日は、かつてハルハウスで運

営手法を学び、現在は「ふかふか家」を運営

している牧田一穂さんに話を聞いた。ここ数

年、大学や商店街と連携し、地域のハブ役と

してコミュニティカフェの運営に関わってい

る牧田さんの話は、まちづくりを念頭に入れ

る受講生にとって有意義なものとなった。

喫茶店から

コミュニティカフェへ

 「YAOMON」は喫茶店からコミュニティ

カフェになった事例である。最初は仕出し屋

さんの喫茶部門として開業して、経営も順調

だったが近隣の大学の移転により大学生のお

客さんが激減した。その後、運営者の佐々木

真さんが商店街の運営にも携わるようになっ

たことや地元の小学校のPTA会長になった

こともあり、次第にYAOMONが地域の居

場所になっていき、気づけばコミュニティカ

フェになっていた。

 

商店街と大学や行政等が関わる

際の窓口的な役割を佐々木さんは

担っている。その縁でYAOMO

Nは、近くの同志社大学からゼミ

や学生の活動の場としての「学外

授業施設」に2013年度から指

定されている。また、たくさんの

NPOや任意団体の事務局的存在

でもある。

 佐々木さんの愛犬グーグーがお客さんとの

橋渡し的存在になり、そこから会話が生まれ

ている。

 

当日は最後の見学先であったこともあり、

YAOMONで懇親会を行った。YAOMO

Nがある出町商店街で惣菜を買い、それを酒

の肴にそれぞれのコミュニティカフェにかけ

る思いなどを語り合った。

受講生に YAOMON の成り立ちについて語る佐々木さん(中央左)= YAOMON

京 都Kyoto

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36Community Cafe37

東 京小 泉 圭 司

カフェの主たる目的は地域課題の解決

信念も経営もきちんとして継続を

Tokyoこいずみ・けいじ 高齢者が働ける場として、ぷリズムの隣接店舗に手作り惣菜・弁当の店「元気スタンド・ぷライス」を 2010 年開業。1人暮らしの人の食生活のサポートや、埼玉県幸手市の地域支え合い事業の事務局として高齢者などの在宅生活支援を行う。現在、地域包括ケアと商店街の活性化を兼ねたコミュニティモールの構築に向け取り組んでいる。

7年前、私が「元気スタンド・ぷリズ

ム」を作った時は、コミュニティカフェ

という言葉すら知らなかった。ただ、人

と人とを結ぶ場所と考え、「コミュニティ

喫茶

元気スタンド・ぷリズム」と名付

けた。

当時、全く飲食業の経験がなかったた

め本を読み漁り、知人の協力を得て調理

実習に通い勉強した。しかし、資金面や

経営面などの内側のノウハウは本などで

は見つけることはできなかった。

今回の講座では、こうした開設当初に

知りたいこと、開設してみて気付いたこ

となど、なかなか明かされることのない

内情に関しても各講師の方々から話を聞

くことができた。

正直申し上げて、私の運営しているコ

ミュニティカフェは経営的に成功してい

るとは言えない。しかしながら、私はコ

ミュニティカフェをやめようと思ったこ

とは一度もない。それはコミュニティカ

フェの目的が喫茶店と違い、営業利益だ

けを追求しているところではないから

だ。日

々、店内にはお客様の笑顔があふれ

ている。「ここがあって本当に良かった」

という言葉をたくさん頂いた。

自分の想いが伝わり、方向性が間違っ

ていないことを確信するようになった。

そのたびごとに、さらにたくさんの方が

利用して同じような幸福感を感じ取って

いただきたいと願っている。

「1億円稼ぐより1億回の笑顔を作ろ

う」。私の目標である。

コミュニティカフェの主たる目的は、

カフェの開設を考える人が抱いているそ

れぞれの地域の課題の解決にあると思

う。喫

茶店開設の本などを読むと、「回転

率×座席数」などと売上予測が書かれて

いる。しかしコミュニティカフェにこの

計算が当てはまるのか?

資金面や経営面だけを考えていくと、

どうしても一歩踏み出すことをためらっ

てしまう。

では、何のためにコミュニティカフェ

を作りたいのか?

講座では、一番大切

な「希望の木」の根っこの部分となる信

念をきちんと見出すことを再確認してい

ただいた。

コミュニティカフェを作るなら、存続

させなくては意味がない。存続させるた

めには経営もきちんとしなくてはならな

い。そのために、サポーター、パート

ナーなどのさまざまな地域資源を見出し

協力し合う必要性を市民活動中間支援組

織の先生に、具体的な事業計画作成方法

を中小企業診断士の先生にご指導いただ

いた。

今後、さまざまな社会問題を改善でき

るコミュニティカフェが必要とされる。

全国ではたくさんの同志が色々な手法で

コミュニティカフェを展開している。

講座では「元気スタンド・ぷリズム」

のほか、さいたま市南区の「ヘルシーカ

フェのら」の見学に行った。店舗を貸し

切りで見学するのでは、施設の箱を見る

だけになってしまう。そのカフェの雰囲

気を感じ取ることが一番重要であると考

え、お客様がいる店内を見学してもらっ

た。た

くさんの事例を見て、自分が運営す

るスタイルに合ったやり方を見つけてほ

しい。そして、無理のないやり方で、コ

ミュニティカフェの開設に向けての一

歩を踏み出していただけたら、コミュニ

ティカフェの先輩として望外の喜びであ

る。

講師元気スタンド・ぷリズム合同会社 代表

公益社団法人 長寿社会文化協会

東京の講座には 18 人が参加。運営者 4 人と中小企業診断士 1 人による座学・ワークショップ、現場見学・体験、事業計画書作成などの実践的な講座を行った。

2カ所のカフェで終日体験運営者から生の話を聞く

主任講師の小泉さんがカフェ開設経緯や総菜店、電動車いすレンタルなどと事業拡大してきたことを話し、「やるなら継続しよう」と呼びかけた。午後は柳田好史さんらが「みんなのえんがわ池袋」などの事例を紹介し、班ごとにKJ 法による地域課題の抽出を行った。

小泉さんのカフェ・総菜店がある埼玉・幸手団地集会所で、コミュニティカフェの立ち上げと運営について話を聞いた。昼食は惣菜店の弁当を食べた。自分が開きたいカフェのイメージを考え、班内でプレゼン。元気スタンドを見学し、質疑応答。

中小企業診断士の金きむ

順す の う

玉さんが担当。必要資金の洗い出しに始まり、損益計画も作成した。金さんが小泉さんのカフェの経費を問いかけながら、さまざまな経費の目安を教えてくださった。事業計画書を完成させることが宿題となった。

介護・福祉サービスを基軸に、地域の困りごとの解決に取り組んでいるNPO の DVD を見たあと、グループ討論。午後は、①地域課題、取り組みたいテーマ、②地域がどうなってほしいか?、③地域資源、④何をするか?をシートに書き込み、プレゼン。

新井純子さんが運営するさいたま市南区の「ヘルシーカフェのら」を訪問。カフェを立ち上げた経緯や続けている理由などの話を聞いた。周りの協力者を書き出し、事業計画書に書くカフェの内容をさらに煮詰めた。講座後にその場で懇親会を開いた。

事業計画書を作成した人がプランを発表し、4 人の講師が質問とコメントを述べた。ほかの受講生が「協力できそうな点、こうすればもっと行きたくなると思う点など」をシートに書き込み、発表者に渡した。講座後、WAC 研修室で打ち上げを行った。

東京講座からは加藤富美子さんと伊藤実千代さんが出席した。加藤さんは、地元野菜で栄養バランスの良いランチや弁当、行事食の提供など、食を重視したプランを発表。伊藤さんは、子育てママと元気な高齢者をつなぐ場として、コミュニティカフェを活用することを話した。

WAC 研修室(港区)に 35 人の受講希望者が集まった。柳田講師が「コミュニティカフェは地域課題解決に役立つ。全世代がコミュニケーションを図り、つながる場だ」と話した。昨年度の中野区講座受講生が講座で得たものや開設事例を話し、最後に、講師陣が講座内容を説明した。

地域にはどんな課題が…?課題解決の主役は誰だ?

コミュニティカフェの現場の声を聴く(1)

資金計画・損益計画の作成

コミュニティカフェ全国交流会成果発表会

コミュニティカフェ開設講座説明会

あなたの「夢」をコミュニティカフェで実現する!

コミュニティカフェの現場の声を聴く(2)

事業計画・資金計画のブラッシュアップ

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講座アーカイブ

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加藤富美子さん(千葉県佐倉市)、伊藤実千代さん(東京都江戸川区)

38Community Cafe39

東 京

開 設 講 座ダ イ ジ ェ ス ト

Tokyo

コーディネーター、プレーヤー、サポーターが支え合えば、地域活動が円滑に動き出す。

東京のコミュニティカフェ開設講座で

は、全6回を通して、元気スタンド・

ぷリズム合同会社代表の小泉圭司さん

が主任講師・コーディネーターを務め、

ほかにコミュニティカフェ運営者三人

と中小企業診断士一人の講師が交代で

加わった。印象に残った講師の言葉や

講座内容を振り返ってみる。

楽しく社会貢献を

 

地域サロン「みんなのえんがわ池

袋」を運営するNPO法人としまNP

O推進協議会代表理事の柳田好史さん

はまず、喫茶店とコミュニティカフェ

の違いから話し始めた。「コミュニティ

カフェは高齢化や子育て支援などの地

域課題解決が目的で、人とのつなが

り、コミュニケーションの確保、居

場所、趣味の場として利用される。解

決したい地域課題や思いがないと、カ

フェは継続できない」と話すと、受講

生の大半がうなずいた。

 「活動のためには、数多くの地域の

人々とつながる必要がある。コーディ

ネーター、プレーヤー(日常業務の運

営スタッフ)、サポーター(町会、商

店会、大学や行政など)がしっかりと

お互いに支え合って、初めて地域活動

が円滑に動き出す」と力強く語る柳田

さん。「夢は、課題があるから夢なん

です。楽しくなければ社会貢献ではな

い」と受講生を激励した。

信頼できるメンバーを増やせ

 

みんなのえんがわ池袋のスタッフ

で、コミュニケーションマナー講師を

している本多絵理子さんは「地域課題

に対するスタンスがぶれないことが、

カフェなどのコミュニティビジネスを

継続させることにつながる。継続させ

るには口こみが重要。信頼できるメン

バーを増やして」と説いた。

 本多さんは「相手と少し斜めの位置

に座ったほうが相手も気軽に話しやす

い」と傾聴の極意も話した。

厳しい目で店の分析を

 飲食店のコンサル経験も多い中小企

業診断士の金きむ

順すのう玉さんは「コミュニ

ティカフェには、自分の家にはない異

空間性や非日常性が欲しい。利用者に

居心地よく過ごしてもらうために、人

の店を見るときのような厳しい目で自

分の店を見たほうがよい」とアドバイ

スした。小泉さんのカフェの実例を問

いかけながら、「外観は店の性格を表

す。店内に引き入れるために、外観は

目立たせる仕掛けが必要。宣伝や販促

はいろいろなものを組み合わせたほう

がよい」と、事例を紹介しながら店舗

開設に役立つノウハウをたくさん紹介

した。

みんなのえんがわ池袋のスタッフの本多絵理子さん

としま NPO 推進協議会代表理事の柳田好史さん

中小企業診断士の金順玉さん

全国交流会で事業プラン発表

コミュニティカフェ全国交流会での事業プラン

発表には、東京講座から加藤富ふ

こ美子さんと伊藤

実千代さんの二人の受講生が登壇した。カフェ

の主な対象者は高齢者(加藤さん)、子育てマ

マ(伊藤さん)と異なるが、二人とも多世代型

のカフェを志向している。

 

加藤さんは、知り合いの一人暮らしの高齢者

から「夕食を一人で食べるのは寂しい。女性一

人でも安心して行けるサロンのようなお店が

あったらいいな」と言われ、ずっと気になって

いた。

 

その後、地元の千葉県佐倉市が開いた「コミュ

ニティカフェの作り方」セミナーに参加し、コ

ミュニティカフェとはどういうものかを知る。

地域コミュニティの希薄

さを少しでも改善するた

めの手段としてコミュニ

ティカフェを立ち上げ、赤ちゃんから高齢者ま

で安心して住めるまちづくりをしたいと、講座

に参加した。

 

取り組むべき地域課題として、「一人暮らし

や夫婦だけの高齢者世帯では、孤食などで食事

が疎かになっている」「介護者と介護されてい

る人が一緒に食事ができるレストランがない」

「子育て中の親子の居場所が少ない」「若いママ

が行事食を作れない」「塾通いの子供達の夕食

が疎かになっている」などと分析した。

 

フードコーディネーターらしく、食を重視し

た事業計画を立てた。低農薬野菜を作っている

農家から規格外の野菜や家庭菜園で余った野菜

を地産地消で安く購入し、栄養バランスの良い

ランチや弁当を作ったり、行事食の販売や料理

教室の開催、簡単な介護食の調理代行などだ。

 

発表会では、講師から「1千万円の投資では

年間2千万円前後の売り上げがないと厳しい。

内装工事の一部を自分たちでやったり、厨房機

器は中古で済ませたりするなどして削るべき

だ」と指導を受けた。

 

次に発表したのは伊藤さん。コミュニティカ

フェに興味を持ったきっかけは、自身の出産

だった。伊藤さんは東京都江戸川区で両親と同

居しているが、区内の8割以上が核家族世帯

で、乳幼児の6~8割の母親が子どもを保育園

に預けず、孤独な育児のためにストレスを抱い

ていると想像した。また、日中の住宅街に高齢

者が多く、子どもを連れていると、よく声をか

けられた。こうした子育て

ママと元気な高齢者をつなぐ場として、コミュ

ニティカフェを活用できないかと考えた。

 

具体的には、常時子育てママの話し相手や相

談相手になる子育て経験者(元気な高齢者)を

スタッフとして配置し、子どもを短時間見て

もらえるようにする。また、ママがゆっくりお

茶を飲めるように、子どもの遊びスペースを設

置し、保育科等の学生を配置する。ママの気分

転換になるようなアロマセラピー、ベビーマッ

サージなどのセミナーを開く。趣味で作った作

品を販売するための棚を貸したり、セミナー講

師に起用したりして、ママの仕事再開のための

サポートをする。子育て商品を扱う企業には、

テストマーケティングに利用してもらう。

 

講師の一人は「行政も絡んで、コミュニティ

カフェが課題を解決してくれると素晴らしい事

業になる」と評価した。

食を重視したプランを発表する加藤さん

「乳幼児子育てママの支援」を発表する伊藤さん

Page 21: つくろう ひらこう コミュニティカフェ - CANPAN€¦ · 研究会」をフェの実践者より運営ノウハウを学ぶ「コミュニティカフェカフェをつくろう!」を編集し、翌年からコミュニティカに据えてきました。2007年に単行本「コミュニティ・たコミュニティカフェを全国に広げていくことを活動の柱

40Community Cafe41

受 講 生 の 声

東京のコミュニティカフェ開設講座に参加し

たのは18人。年齢は30代5人、60代以上7人

と、比較的若い世代とシニア層が多かった。

隣の川崎市でも開講したことと、見学先を埼

玉のコミュニティカフェ2軒としたためか、

神奈川県民はおらず、東京・千葉・埼玉の人

が受講した。

* * *

 今回の講座には、生涯学習機関、立教セカ

ンドステージ大学(RSSC)で学ぶ3人の

仲間が参加した。

 大河内千鶴子さんは、昨年中野区で開設講

座を受けたRSSCの先輩に聞いて、受講し

た。第2の人生に前向きに取り組みたいと考

える中で、シニアの地域デビューや地域コ

ミュニティの問題に関心を持った。大学のゼ

ミで「みんなのえんがわ池袋」を研究してい

るうちに、自宅隣に所有している空き家の1

階(約10坪)に、メンバー6人でコミュニティ

カフェを開くことになった。ランチ営業がで

きるよう、食品衛生責任者の資格を取得した。

そして、3月から毎週木曜に育児サロン、金・

土曜に大人向けのサロンを始めた。

 堀本恵子さんも、同じ先輩に聞いて、2回

目から受講した。受講生の最年長だが、自宅

でカラーコーディネーターの会社を経営して

いる。その自宅の空きスペースを使って、利

用者が気軽に集えるサロンを開けないかと考

えた。「コミュニティづくりでは、行政は十

分に手が行き届かないから、自助、共助によ

る働きが必要」と、綿密に地域課題を分析し

た。事業計画書には、多彩な人脈を生かして

カウンセリングや絵手紙、英会話、パソコン

などの講座を開くことを盛り込んだ。

 RSSC仲間の2人のコミュニティカフェ

開設を支援し、研究材料にしようとしている

のが筒井雄二さん。「まちの縁側育くみ隊」(名

古屋)の延藤安弘代表理事を招いて、勉強会

を開いたりしていた。

 2人と同様、使えるスペースがある渡辺洋

子さん。夫が経営する喫茶店はホテル宿泊者

に朝食を提供しているだけで、日中は営業し

ていない。新興住宅地で昼間は人通りの少な

い立地。それでも、宿泊者の目に留まるよ

う、店内に地域の人の手作り工芸品を展示し

てきた。それを「子育てママから高齢者まで

世代を問わず集える場所にしたい」。勤めに

出ているが、いずれ辞めて、店に立つつもり

だ。その日を夢見て、千葉県いすみ市から片

道2時間半の距離をもとのともせず、無欠席

大河内千鶴子(おおこうち・ちづこ)さん

現役の頃は助産師。自宅周辺に、子

どもの独立や伴侶を亡くしたことに

よる高齢者だけの夫婦や独居世帯が

増えているため、自宅隣で所有して

いる空き家で地域の育児支援と地域

コミュニティの拠点となれるカフェ

を開設したいと考えた。

堀本恵子(ほりもと・けいこ)さん

会社経営で多忙な中、別組織でNP

O法人やコミュニティカフェを立ち

上げたいと考えている。柳田講師の

NPOが開いた講座を受けた際、居

合わせたRSSCの先輩に本講座の

ことを聞き、2回目から受講。

渡辺洋子(わたなべ・ようこ)さん

千葉市郊外にあるビジネスホテル1

階の喫茶店を夫が経営している。宿

泊者に朝食を提供するだけで、日中、

営業していない。そこを地域の人々

のコミュニティスペースとして活用

することを思いつき、受講。

豊田聡子(とよだ・さとこ)さん

障害のある人の就労を支援する事業

所の職員。普段は雑貨作りとパンの

配達・販売の場所になっている。そ

の喫茶スペースを、障害のあるなし

にかかわらず地域の人が集まり、交

流できるようなスペースにしようと

受講。

早くも4人がスタート。

で通った。

 豊田聡子さんも片道2時間かけて、千葉県

東金市から休まず通った。就労継続支援B型

事業所の職員。喫茶スペースがあるが、利用

者(障害者)は力不足で、ほとんど機能して

いない。そこで「お年寄りや子育てママ、子

育てを終えた女性達に集まってもらい、障害

のある人との関わりを日常的にできる場所に

したい」と話す。障害者のことを知ってもら

うだけでなく、集まった人達で相互に助け合

うようなつながりができればいいなと思って

いる。3月、近所のダム湖畔で屋外カフェを

試行した。

* * *

 

男性も場所のめどが立っている人が多かっ

た。海老塚良吉さんは、千葉県船橋市の民家

にある「老人憩の家」で昼間、パソコン教室

と囲碁の集まりを手伝っている。夜にここで、

気軽に立ち寄り、しゃべったり、情報交換をし

たりするコミュニティパブを開きたいという。

主たる対象者は、自宅にとじこもりがちな男

性高齢者。夜間(18~21時)に簡単なつまみ

(200円程度)とアルコール(発泡酒や日

本酒、ワインは200円、焼酎のお湯割りや

ウイスキーは150円など)を提供する。家

賃はただで、3時間1000円の有償ボラン

ティアで運営すれば、安価に提供できるという。

 東京都板橋区役所や社会福祉協議会の支援

を得て、商店街イベントスペースで月2回昼

間のサロンを開いている桂政彦さんは、今春

から夜間にも開くという。ゆくゆくは自宅を

地域サロンとして開放する「住み開き」も視

野に入れている。

 加藤治弥さんは、20~30年後に高齢者にな

る40~50歳代に向けて「人生後半探検カフェ」

を提案した。高齢者の暮らしを体感・学習す

る、支援する、人生後半の生き方を探る人た

ちが集う。だが、都心で昼休み時に開くカフェ

という計画に対して、講師から「セミナー形

式の方が現実的では」とアドバイスがあった。

* * *

 受講生中最年少の横田明菜さんは3月、埼

玉県和光市に「アルコイリス・カフェ」を開

いた。講座の途中で事業計画をまとめ、市に

提出。埼玉県緊急雇用創出基金の助成金を得

て、空き店舗を改装し、人材を確保した。法

人を立ち上げ、ドリンク・軽食、日替わりシェ

フランチの提供のほかに、地域情報スペース、

情報ノートコーナー、小箱ショップを設けた。

また、スペースをレンタルして、市民にワー

クショップや講座を開いてもらう。店名のア

ルコイリスはスペイン語で「虹」の意。

海老塚良吉(えびづか・りょうきち)さん

元、URの調査研究者。「比較都市住宅研究

会」を主宰する一方、外部の勉強会・講座に

PC持参で参加し、FBで詳細に報告してい

る。自宅近くの「高齢者憩の家」で高齢男性

向けのコミュニティパブ開設を目指す。

桂政彦(かつら・まさひこ)さん

パック旅行会社や外資系IT会社に勤め

たあと、定年退職。自らが住む東京都板

橋区の商店街イベントスペースで月2回

のサロンを開いている。自然農法を実践

し、「共奏キッチン」の世話人も務める。

加藤治弥(かとう・はるや)さん

主夫として家事全般をこなし、介護ヘル

パーとして高齢者にかかわっている。自ら

も住む東京都心で働く・暮らす40~50代の

現役世代が、高齢者の暮らしにかかわりな

がら準備していくカフェを開きたいという。

横田明菜(よこた・あきな)さん

メキシコへの青年海外協力隊から帰ったあと、

埼玉県和光市の地域新聞へ。取材や市民活動

にかかわる中で、市内のNPO間の連携が取

れていない、若い世代は寝に帰るだけという

街の姿に気づき、コミカフェ開設を思い立つ。

東 京Tokyo

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42Community Cafe43

コミュニティ

カフェの現場を訪ねて

http://homepage3.nifty.com/gs-purism/埼玉県幸手市栄3-2-106TEL:0480-48-7372平日・土曜9:00~20:00(冬9:00~19:00)、日曜休コーヒー・紅茶など280円、日本茶180円いろどり弁当定食680円、日替わり弁当定食680円海老ピラフ(スープ付き680円)、カレーライス480円スパゲッティナポリタン580円運営者:元気スタンド・ぷリズム合同会社

元気スタンド・ぷリズムコミュニティカフェ紹介

東京のコミュニティカフェ開設講座では、「コ

ミュニティカフェの現場の声を聴く」と題し

て、小泉圭司さんが運営する「元気スタンド・

ぷリズム」(埼玉県幸手市)と新井純子さん

が運営する「ヘルシーカフェのら」(さいた

ま市南区)を訪問した。2日間にわたり、開

設のきっかけや運営について、成功談や失敗

談、苦労や喜びの話も交えて、ざっくばらん

な話を聞くことができた。座学とは違って、

現場で聴く話に、受講生は自分が開きたいカ

フェのイメージを広げられたようだ。カフェ

で出される食事も頂き、「のら」では講座後

に懇親会も開いた。両カフェにはテレビ取材

も入り、コミュニティカフェが社会的に注目

されていると、受講生は実感した様子だった。

介護予防のカフェから出発し

コミュニティモールも構想

 小泉さんはもともと、大手スーパーで社員

として働いていた。しかし、毎日のようにスー

パーの休憩スペースにやってくる高齢者から

「家に居場所がない」という話を聞き、ショッ

クを受けた。それをきっかけに、「高齢者が

集える場所をつくりたい」と一念発起し、自

宅近くの幸手団地の空き店舗に2007年、

「ぷリズム」をオープンした。

 介護を受けないで楽しく元気に過ごせるよ

うにと、店内ではメニューブックに介護予防

の情報を載せたり、大人向けドリルを紹介し

て脳活性化訓練を行ったり、杖などの介護予

防グッズを販売したりしている。

 

団地内の高齢者たちが常連客となり、「1

日あたり20~30人来ます。

滞在時間が3~5時間の人

もいる」。当初の目標の「誰

かと話ができる環境」を作

り上げた。

 

次に、高齢者にも働いて

もらおうと、2010年、

ぷリズムの隣に弁当と総菜

を販売する「元気スタンド・

ぷライス」も開店した。高

齢者宅に配食しながら、同

実際にお客がいる店内を見学。メニューを見てオーダーもした。

店の前にあるレンタルのセニアカー(電動車いす)について、小泉さんから説明を受ける。

http://healthy-cafe-nora.jimdo.com/さいたま市南区鹿手袋7-3-2TEL:048-607-3007火曜~土曜11:30~17:00、日・月曜休和定食・洋定食1,000円、ドリンク付き1,200円ソフトドリンク各種300円ケーキセット500円運営者:のら合同会社

ヘルシーカフェのらコミュニティカフェ紹介

時に見守りも行っている。

 さらに、幸手市の日常生活サポートの事務

局や、地元病院の看護師に来てもらって簡単

な健康相談が受けられる「暮らしの保健室」、

ハンドル形電動車いすのレンタルなど、次々

と事業を拡大してきた。今後、並びの空き店

舗に高齢者向けのリハビリゲーム機や子ども

の遊び場の「元気スタンド・ぷレイス」も計

画しており、ぷリズムなどとともに「コミュ

ニティモール」に発展させたいという。

 受講生からは「実直に課題解決に取り組む

姿勢を見せていただき、心が洗われるようで

した」「お客様にはよそよそし過ぎず、なれ

なれし過ぎないように気を遣う。配偶者の両

親と同じような対応をしては、という心配り

になるほどと思った」などの感想が寄せられ

た。

周りの人を巻き込んで

子育て支援のコミレス

 新井さんの手がける「のら」は、白い漆喰

の壁と木の床が温かな雰囲気を醸し出す。奥

の16畳の「広場」では子どもを寝かせて、ゆっ

たりと食事ができる。ベビーマッサージや新

聞紙を使ったエコバッグづくりなども行って

いる。手前のレストランでは地元の野菜を

使って、毎日、約20食提供している。 

 「夫が転勤族で、近所に相談できる人がい

ないので、子育てに苦労した」という新井さ

ん。家で子育てしている人を支援する場所、

いろいろな人が緩やかに連携する場所、だれ

でも来られて、飲食ができる場所であるコ

ミュニティレストランをつくりたいと考え、

子育て誌に「コミレスは子育て支援の要」と

いう論文を書いた。その論文を読んだ県庁職

員が意気投合。実家の土地に建物を新築して

くれ、2009年に「のら」を開業した。

 新井さんは「のらでは、市民活動や公民館

で働いていた時以上にさまざまな人と出会う

ことができる」と話す。「やりたいことを周

りの人に話していないなら、話をして聞いて

もらおう。周りの協力者を探そう」と呼びか

けると、受講生の多くがうなずいていた。

ランチを頂く受講生をテレビ・クルーが取材。12 月 27 日に放送された。

「広場」で「のら」を立ち上げた経緯や運営について、新井さんに話していただいた。この日はテレビ東京「News アンサー」の取材も入った。

東 京Tokyo

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コ ミ ュ ニ テ ィ カ フ ェ ガ イ ド ブ ッ ク編集委員の声

コミュニティカフェ開設講座で連携した全国の4団体はそれぞれ各地のコミュニティカフェを紹介するガイドブックを制作しました。制作に当たった編集委員にガイドブック制作への思いを語ってもらいました。

神 奈 川 県 版愛 知 県 版京 都 版 石 川 県 版

編集委員佐藤 ゆき恵(さとう・ゆきえ)

編集委員坪井 俊和(つぼい・としかず)

編集委員平本 毅(ひらもと・たけし)

編集委員木和田 里美(きわだ・さとみ)

2011 年、ぐらす・かわさき入職。「農のあるまちづくり」にてファーマーズマーケットや援農等のイベント運営・事務局業務に携わりながら、食と農の交流拠点の設立準備に関わる。2012年にオープンした地産地消の八百屋・カフェ&コミュニティビジネスの支援施設「メサ・グランデ」にて、日々の運営からイベント企画、コミュニティビジネス起業相談まで担当。

場所の力を活かす企画力で建築デザインを監修。キモチをカタチにしながら、シクミやウゴキにかえる住民参加型ワークショップの道先案内人。コミュニティカフェや住民参加プロジェクトに参画し地域に根付いたソフト付ハード開発を担う。「Com-cafe 三八屋」、「浜田のまちの縁側」、「スズカコミュニティー」に参画。住んでいる地域では、住民参加で作られた児童館の指定管理者としてシクミやウゴキづくりを実践中。

コミュニケーションと人のつながりの研究をしている大学教員。大学の授業でまちづくりの調査を始めたのを機に、地域活動にかかわる。NPO 法人つながる KYOTO プロジェクトの副理事長と事務局長を務め、コミュニティカフェの運営者と利用者の方々に常識を教わる日々を過ごしている。

NPO 法人金沢観光創造会議のアートディレクターを務める。デザイン会社エイチツーオーを立ち上げ、代表取締役デザイナーとして、デザイン業務に当たるとともに、オリジナルの手芸作品「似顔絵あみぐるみ作家」としても活躍する。お茶やお菓子を楽しみながら編み物をする

「ニットカフェ」を開設したのを機に、コミュニティカフェに関わるようになる。「ニットスタジオ Fika(フィーカ)」を運営する。

他店の工夫に関心と共感ガイドブックづくりは、活動巡礼の旅になりましたつながりから学べるもの 運営者の方と出会い、

自信と勇気をもらう

問い合わせ先

NPO法人ぐらす・かわさき

(メサ・グランデ)〒211-0044 川崎市中原区新城5-2-13プリマSK武蔵新城1階メール [email protected]電話  044-872-9795

問い合わせ先

NPO法人まちの縁側育くみ隊〒460-0003 名古屋市中区錦2-13-1宮本ビル4階「まちの会所」内メール [email protected]電話  052-201-9878

問い合わせ先

NPO法人つながるKYOTOプロジェクト〒602-8168京都市上京区土屋町通出水上ル弁天町303番地メール [email protected]電話  050-3593-6615

問い合わせ先

NPO法人金沢観光創造会議〒920-0062 金沢市割出町647-2メール [email protected]電話  076-205-0272

 神奈川県はとても広く、各地域で異なる特徴があります。各地域に根付き、そこに必要な「居場所」を提供するカフェがたくさんあるのだと、実感できる取材でした。私たち自身も、川崎市中部の中原区に「メサ・グランデ」という地産地消の八百屋兼カフェを運営しはじめたところで、経営の大変さを、身をもって感じているので、各店の工夫の数々に、「ほぅ」と感心させられたり、「そうそう」と共感したり。私たちだけじゃない、頑張らなくちゃ、と思わされることが多々ありました。 それぞれのカフェが、熱い思いを込めて頑張っているのだということを、ぜひとも多くの方に知っていただき、行ってみていただきたいと思います。そして、その訪問が、地域に対する問題意識を共有したり、語り合える仲間ができたり、場づくりに参加したりということにつながっていったら、素敵なことだなと思います。 取材を担当しなかったカフェに私もすべて興味津々! いつか必ず行ってみたいと思うところばかりで、わくわくしながら読んでいます。

 市民活動と呼ばれ社会と向き合い戦って来た仲間達は、時の変化に翻弄されながらも柔軟に乗り越える跳躍力を持ってコミュニティカフェを併設させていました。若者や障害児・者の就労支援を行うNPO 法人、地域の生きがいづくりのサロン、若者が企てたエコビレッジ、支援のプロとして等々多様なヒト・モノ・コトの物語が綴られていました。 NPO 法人まちの縁側育くみ隊を立ち上げたのは 11 年前。地域に密着し老若男女がふらっと寄れるまちの縁側に、時代を救う可能性を感じていました。「志民発話のコミュニティの場・まちの縁側」は多様な成長を遂げていて、曼陀羅多色刷りの様相「人も心も暮らしから豊かに・思いをつなぐところ・若者もお年寄りも世代を超えてミッションを感じたらひたすら動き出す・笑顔と涙がエネルギー・子育てまるごとまち育て・苦労も生き甲斐」と様々に増殖していました。これからさらに混沌とした世の中になっても、コツコツ・ニコニコ・フワフワとして漂いながら賑わうコミュニティカフェ・まちの縁側には、未来を生き抜く確かな生命力が宿っていました。皆さんもコミュカフェ巡礼の旅へ出かけてください。

 京都は市民が元気な街です。住民の中には、古都の文化に誇りをもって地域活動に参加している人がたくさんいます。その中には退職して地域に戻ってきた高齢者も、働いている人も、子育てをしている人も、学生もいます。こうした多様な立場の人びと同士がつながり、交流することでさらに街が元気になります。私は自分の学生を、地域の人びとの話を聞くように言って街に送り出しますが、学生たちは先方に迷惑をかけながらも、私が学校で教える内容より遥かにたくさんのことを学んで帰ってきます。とくにコミュニティカフェの運営に携わっている方々は、人をつなげる仕事をしているからか、特別に大事なことを学生に教えてくれますし、私自身もたいへん勉強させていただいています。そうした方々のことをもっと知りたくて、ガイドブックを作りました。 私たちつながる KYOTO プロジェクトはまだ若い NPO で、人も足りなければ活動のノウハウもありません。ガイドブック作成の過程ではたくさんの方々に助けていただきました。ほうぼうに迷惑をかけてなんとか完成したこのガイドブックで、取材の過程で目にしたコミュニティカフェの生き生きした様子と、出会った運営者の方々の人柄が少しでも伝われば幸いです。

 子どもの頃、学校から帰ると、近所の女性たちが、わが家に集まり、わが子の話や世間話など、お茶やお菓子を食べながら楽しそうに会話をしながら、編み物をしていました。 自分が大人になり、編み物などの手仕事を通じて「ニットカフェ」を開催したのが 2009 年でした。教室ではない、気軽に編み物を学ぶ環境を作りたいと思い開催しましたが、「ニットカフェ」を続けていると気がついたことがありました。子どもの頃と同じ環境が、「ニットカフェ」で作られていったのです。集まった人々が自然と世間話に花を咲かせて、笑いが絶えない、時には悩み事を相談し合う、そんな空間となっていったのです。 コミュニティカフェを開設、運営するには、大変なエネルギーと覚悟が必要なのも事実ですが、ガイドブックの取材で多くの運営者の方と出会い、自信と勇気をいただきました。 開設を目指す方だけでなく、素敵なひと時を楽しもうという方はぜひ、ガイドブックを参考に、足を運んでみてください。 そこにはきっといろいろな人との出会いがあり、新しい世界が広がると思います。

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コ ミ ュ ニ テ ィ カ フ ェ 全 国 交 流 会 コミュニティカフェ研究会を 4 回開催現場で運営者から話を聴く長寿社会文化協会(WAC)は2009年からコミュニティカフェの運営者、利用者、研究者、行政・社協関係者、これ

から始めたい人などによる交流会を開いている。今年度は2月23日(日)、東京・四谷の主婦会館で、WAM助成事業の一環として、5都市の開設講座受講生代表によるプラン発表会も開き、この事業で制作した各県のガイドブックを配布した。180人の参加者は12のテーマ、18のグループに分かれたテーマ別交流会や懇親会でコミュニティカフェの運営や課題などについて語り合った。各自、交流を深め、ネットワークを広げていた。

長寿社会文化協会(WAC)が2008年12月から開いている「コミュニティカフェ研究会」。2013年度はWAM助成事業の中に組み入れ、実際の現場での開催も含め4回にわたって実施した。講演要旨は次の通り。

第32回 2013年7月

幻燈講演会「まちの縁側を始めませんか?」

NPO法人まちの縁側育くみ隊代表理事・延藤安弘さん

第33回 2013年11月

岡さんのいえ TOMOオーナー・小池良実さん

第34回 2013年12月

コミュニティカフェ「ひなたぼっこ」NPO法人ちばMDエコネット理事・事務局長・山本佳美さん

第35回 2014年3月

共奏キッチン主宰者・高田彰一さん

  会 場 は 、ぐ らす・かわさきが運営 する コミュ ニティカフェ「メサ・グランデ」。参 加者は神奈川県内のほか、都内、千葉県から約35人が集まり、独特の“延藤節”に耳を傾けた。 延藤さんは、英国の絵本を題材に「共に食べ、話し、笑い、心を晴らす場づくり」から話し始め、イタリア・ボローニャの高齢者の居場所づくり、名古屋の「まちの縁側GOGO!」による多世代の居場所づくり、まちの縁側5千カ所を目指す長野市ボランティアセンターの場づくりなどの事例を次々と紹介した。

 会場は、「世田谷トラストまち づ くり」の支援を受け、

「 地 域 共 生 の いえ」として2 0 0 7 年にオープンした「岡さんの家 TOMO」。小学生からお年寄りまで、さまざまな世 代 が、畳 の 間でちゃぶ台を囲んでお茶やおしゃべりを楽しむ地域コミュニティの拠点だ。神戸の大学院生も含め、約20人が集まった。 岡さんのいえの成り立ちから始まり、地域のお母さんたちが運営している週一度の「デーカフェ&駄菓子屋」、岡さんが戦前に残したおやつのレシピをパティシエが再現する月一度の「再現カフェ」、半年ごとに出している地域向けの「しんぶん」、小学生向けのサマースクールなどの活動について、小池さんと「見守り隊員」に話してもらった。 コーヒーと再現カフェのケーキも頂き、研究会後、その場で希望者が懇親会も行った。

 東京・芝公園のWAC研修室で開き、12人が参加した 。「 ひ な た ぼっこ」は、「街なかに障 が い の ある 人が働き、皆が交流できる場所を作ろう」と、2002年に千葉県船橋市に出来たコミュニティカフェ。接客や調理と片付け、メニューブックの作成などのカフェでの仕事のほかに、カフェを拠点に市内の高齢者向け住宅や公園に出かけての清掃業務と「出張カフェ」、県内の農園での作業など知的障がい者の就労支援について話していただいた。また、書道や押し花、英語などの教室、ニットカフェ、「歌声ライブ」、絵画展示などをして、一般の人に利用してもらう工夫について聞いた。

 東京・芝公園のWAC研修室で開き、15人が参加した。共奏キッチンは、その日集まった 人 が 一 緒 にご飯を作って、食べて、語り合う異業種交流会のような催し。2011年2月から月1回のペースで行い、既に37回を数える。 共奏キッチンが始まった経緯やどんな人が集まるか、使っている有機野菜などの食材と産地、「できるだけ世話を焼かない」という主宰者としての心がけなどについて話してもらった。高田さんは「言葉にはうまくできないけれど、大切にしたい、分かち合いたいなにかがある。こんな関係性が広がっていったら、今ある社会課題の多くは消えてしまうのでは」と話していた。

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公益社団法人 長寿社会文化協会〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-8 日本女子会館1階

TEL 03-5405-1501 FAX 03-5405-1502E-mail [email protected]

ホームページ http://www.wac.or.jp/ブログ http://blog.canpan.info/com-cafe/