資料 間接変換型 flat panel detector システムの画質特性の 観点 …

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システムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討 緒言 日本における国民1人当りが受ける医療被ばく 線量は,世界平均と比較して約6倍と高く,その 40%が単純 X 線撮影であることが報告されて いる 1,2現在,わが国で使用される単純 X 線撮影装置 の殆どが computed radiography(以下,CR システ ム)や flat panel detector(以下,FPD システム) などのデジタル撮影システムであり,その普及率 96%となっている 3-8.特に,FPD システムは, 従来のアナログシステムや CR システムと比べ X 線に対する感度が高く被ばく線量の低減が期待さ れている.しかし,デジタル撮影システムでは, 線量不足によって生じるノイズの増加を避けるた 純真学園大学雑誌 11号 令和 3 3Journal of Junshin Gakuen UniversityFaculty of Health Sciences Vol.11March 2021 資料 間接変換型 Flat Panel Detector システムの画質特性の 観点からみた撮影条件の検討 村上 誠一 1・髙木 剛司 2・大田 哲 2Study of Exposure Conditions Based on Image Quality Characteristics of Indirect Conversion Flat Panel Detector Imaging System. Seiichi MURAKAMI 1Takeshi TAKAKI 2Satoru OOTA 21)純真学園大学保健医療学部放射線技術科学科 2)産業医科大学病院放射線部 1Department of Radiological Science, Faculty of Health Sciences, JUNSHIN GAKUEN University 2Department of Radiology, University of Occupational and Environmental Health, Hospital 要旨 : 本研究では,間接変換型 FPD システムの入出力特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管 電圧特性について CR システムとの比較を行い,画質特性の観点から撮影条件について考察した.間接変換型 FPD システムは,CR システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質特性を持ち,量子検出効率の比較に おいては撮影線量を約50%低減可能であった.両システムとも管電圧特性を認め,間接変換型 FPD システム では80kV36.6keV),CR システムでは100kV38.7keV)で最もノイズ特性が良くなった.間接変換型 FPD システムに使用する撮影条件は,検出器の画質特性を考慮し,適正な撮影管電圧を検討することで,CR シス テムより低被ばくで高画質の画像を得ることが期待できる. キーワード : 間接変換型 FPD,画質特性,管電圧依存性,デジタル画像,Computed RadiographyCRAbstract : This study aimed to investigate exposure conditions based on the basic imaging characteristics of an indirect conversion flat panel detector FPD).These characteristics were evaluated by measuring the characteristic curves, presampled modulation transfer function, Wiener spectrum, and energy dependence. In addition, the detective quantum efficiency DQE, which was calculated based on the measurements of these characteristics, was evaluated. The indirect conversion FPD imaging system showed better sharpness and graininess characteristics compared with a computed radiography CRimaging system. The DQE of the indirect conversion FPD system was higher than that of the CR system at all frequencies. Indirect conversion FPD showed tube voltage characteristics with the best granularity for the FPD system at 80 kV 36.6 keV).Based on the evaluation of the basic imaging characteristics of the indirect conversion FPD system, it was concluded that the system has the potential to provide low exposure and high image quality. Keyword : FPD indirect conversion flat panel detector, image quality characteristics, energy dependence, digital image, Computed Radiography CR令和3114純真学園大学 保健医療学部 放射線技術科学科 教授

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135間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討

緒言 日本における国民1人当りが受ける医療被ばく線量は,世界平均と比較して約6倍と高く,その約40%が単純 X線撮影であることが報告されている1,2). 現在,わが国で使用される単純 X線撮影装置の殆どが computed radiography(以下,CRシステ

ム)や flat panel detector(以下,FPDシステム)などのデジタル撮影システムであり,その普及率は96%となっている3-8).特に,FPDシステムは,従来のアナログシステムや CRシステムと比べ X線に対する感度が高く被ばく線量の低減が期待されている.しかし,デジタル撮影システムでは,線量不足によって生じるノイズの増加を避けるた

純真学園大学雑誌第11号 令和 3年3月

Journal of Junshin Gakuen University, Faculty of Health Sciences Vol.11, March 2021

資料間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の

観点からみた撮影条件の検討

村上 誠一1)・髙木 剛司2)・大田 哲2)

Study of Exposure Conditions Based on Image Quality Characteristics of IndirectConversion Flat Panel Detector Imaging System.

Seiichi MURAKAMI1),Takeshi TAKAKI2) ,Satoru OOTA2)

1)純真学園大学保健医療学部放射線技術科学科2)産業医科大学病院放射線部

1)Department of Radiological Science, Faculty of Health Sciences, JUNSHIN GAKUEN University2)Department of Radiology, University of Occupational and Environmental Health, Hospital

要旨 : 本研究では,間接変換型 FPDシステムの入出力特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電圧特性について CRシステムとの比較を行い,画質特性の観点から撮影条件について考察した.間接変換型FPDシステムは,CRシステムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質特性を持ち,量子検出効率の比較においては撮影線量を約50%低減可能であった.両システムとも管電圧特性を認め,間接変換型 FPDシステムでは80kV(36.6keV),CRシステムでは100kV(38.7keV)で最もノイズ特性が良くなった.間接変換型 FPDシステムに使用する撮影条件は,検出器の画質特性を考慮し,適正な撮影管電圧を検討することで,CRシステムより低被ばくで高画質の画像を得ることが期待できる.

キーワード : 間接変換型 FPD,画質特性,管電圧依存性,デジタル画像,Computed Radiography(CR)

Abstract : This study aimed to investigate exposure conditions based on the basic imaging characteristics of an indirect conversion flat panel detector (FPD).These characteristics were evaluated by measuring the characteristic curves, presampled modulation transfer function, Wiener spectrum, and energy dependence. In addition, the detective quantum efficiency (DQE), which was calculated based on the measurements of these characteristics, was evaluated. The indirect conversion FPD imaging system showed better sharpness and graininess characteristics compared with a computed radiography (CR) imaging system. The DQE of the indirect conversion FPD system was higher than that of the CR system at all frequencies. Indirect conversion FPD showed tube voltage characteristics with the best granularity for the FPD system at 80 kV (36.6 keV).Based on the evaluation of the basic imaging characteristics of the indirect conversion FPD system, it was concluded that the system has the potential to provide low exposure and high image quality.

Keyword : FPD (indirect conversion flat panel detector), image quality characteristics, energy dependence, digital image, Computed Radiography (CR)

令和3年1月14日純真学園大学 保健医療学部 放射線技術科学科 教授

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 135 2021/03/11 22:05:21

136 村上 誠一・髙木 剛司・大田 哲

め,撮影者は高い撮影線量を選択する傾向にあることが報告されている9-11). 浅田らや DRLs2015,2020の国内における被ばく線量の実態調査では,Fig.1に示すように CRシステムが普及し始めた1993年以降 FPDシステムのような高感度検出器が開発されたにも関わらず皮膚表面線量は横ばいもしくは増加傾向にあり,撮影頻度の高い胸部撮影は1993年時と比べ2020年で約2倍の皮膚表面線量であることが報告されている3,8,9).この理由として過去に使用されていた増感紙 /フィルムシステムにおける撮影条件をそのままの基準としてデジタル撮影システムで用いている施設が多いことが主要因として挙げられている.しかし,この撮影条件が必ずしもデジタル撮影システムに適正な撮影条件であるとは限らない. 本研究では,間接変換型 FPDシステムの入出力特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電圧特性について CRシステムとの比較を行い,検出器の画質特性の観点から撮影条件について考察する.

1.方法 本研究では,X線発生装置は UD150B-40 (株式会社島津製作所製),一般撮影用 CRシステムはFCR Speedia CS Plus(富士フイルム株式会社製),一般撮影用間接変換型 FPDシステムは Aero DR fine 1417HD(コニカミノルタ株式会社製),線量計は半導体線量計の Piranha 657(RTI社製)を使用した.  Tableに使用した撮影システムの詳細を示す.

これら2つのデジタル撮影システムにおける入出力特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電圧特性を測定し,比較した.測定に使用した試料画像は,両システムの感度指標:S値=200,階調処理は直線階調で読み取りを行い,周波数強調等の画像処理は一切行っていない生データである.詳細を1.1から1.5に述べる.

1.1 入出力特性 入出力特性は,IEC62220-112)に準じて RQA5(7.1mmAl半価層)の線質を用いてタイムスケール法で測定し,検出器への入射線量に対する画素値からデジタル特性曲線を求めた.RQA5となる撮影管電圧は70kV,付加フィルタ厚は0.76mmCuで,照射野サイズ20×20cm2 の領域に均一露光した.測定試料の作成は,1つの撮影距離で低露光領域から高露光領域までをカバーすることができないため source image distance (SID)を200cmおよび450cmで撮影し,両者をつなぎ合わせて最終的なデジタル特性曲線を求めた.線量測定は,半導体線量計を FPDシステムの表面で撮影範囲内の隅に配置して測定した.測定点は,200cmが10点,450cmが10点の計20点で,各点で3枚の試料を作製した.得られた試料画像は personal computer(PC)に取り込み,画像の中心付近に100×100画素の大きさの関心領域(region of interest: ROI)を設定して平均画素値を算出した.デジタル特性曲線のプロットデータは各点で撮影された3枚の試料の平均値とした.

1.2 解像特性 解像特性は,IEC62220-112)に準じて1.1の入出力特性と同条件である RQA5の線質を用いてエッジ法にてプリサンプルドMTFを測定した.使用

傾向にあることが報告されている 9-11)。 浅田らや DRLs2015,2020 の国内における被ばく線

量の実態調査では,Fig.1 に示すように CR システム

が普及し始めた 1993 年以降 FPD システムのような

高感度検出器が開発されたにも関わらず皮膚表面線

量は横ばいもしくは増加傾向にあり,撮影頻度の高い

胸部撮影は 1993 年時と比べ 2020 年で約 2 倍の皮膚

表面線量であることが報告されている 3,8,9)。この理由

として過去に使用されていた増感紙/フィルムシステ

ムにおける撮影条件をそのままの基準としてデジタ

ル撮影システムで用いている施設が多いことが主要

因として挙げられている。しかし,この撮影条件が必

ずしもデジタル撮影システムに適正な撮影条件であ

るとは限らない。 本研究では,間接変換型 FPD システムの入出力特

性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電

圧特性について CR システムとの比較を行い,検出器

の画質特性の観点から撮影条件について考察する。 1. 方法 本研究では,X 線発生装置は UD150B-40 (株式会

社島津製作所製),一般撮影用 CR システムは FCR Speedia CS Plus(富士フィルム株式会社製),一般撮

影用間接変換型 FPD システムは Aero DR fine 1417HD(コニカミノルタ株式会社製),線量計は半

導体線量計の Piranha 657(RTI 社製)を使用した。 Table に使用した撮影システムの詳細を示す。こ

れら 2 つのデジタル撮影システムにおける入出力

特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管

電圧特性を測定し,比較した。測定に使用した試料画

像は,両システムの感度指標:S 値=200、階調処理

は直線階調で読み取りを行い、周波数強調等の画像処

理は一切行っていない生データである。詳細を 1.1 か

ら 1.5 に述べる。

1. 1 入出力特性 入 出 力 特 性 は , IEC62220-112) に 準 じ て RQA5(7.1mmAl 半価層)の線質を用いてタイムスケール

法で測定し,検出器への入射線量に対する画素値から

デジタル特性曲線を求めた。RQA5 となる撮影管電圧

は 70kV,付加フィルタ厚は 0.76mmCu で,照射野サ

イズ 20×20cm2 の領域に均一露光した。測定試料の作

成は,1 つの撮影距離で低露光領域から高露光領域ま

でをカバーすることができないため source image distance (SID)を 200cm および 450cm で撮影し,両者

をつなぎ合わせて最終的なデジタル特性曲線を求め

た。線量測定は,半導体線量計を FPD システムの表

面で撮影範囲内の隅に配置して測定した。測定点は,

200cm が 10 点,450cm が 10 点の計 20 点で,各点で

3 枚の試料を作製した。得られた試料画像は personal computer(PC)に取り込み,画像の中心付近に 100×100画素の大きさの関心領域(region of interest: ROI)を設

定して平均画素値を算出した。デジタル特性曲線のプ

ロットデータは各点で撮影された 3 枚の試料の平均

値とした。 1. 2 解像特性 解像特性は,IEC62220-112)に準じて 1.1 の入出力特

性と同条件である RQA5 の線質を用いてエッジ法に

てプリサンプルド MTF を測定した。使用したエッジ

は,1mm 厚のタングステン板で,検出器に密着させ,

エッジ部分が画像の垂直方向から 2~3°傾くように

配置し,エッジ部と X 線束が一致するように測定試

料を撮影した。得られた試料画像は PC に取り込み,

取得した ESF(edge spread function)は 1.1 で求めたデジ

タル特性曲線を用いて線量へ変換し,この線量変換し

た ESF を微分して LSF(line spread function)を求めた

後,1 次元フーリエ変換を行い,プリサンプルド MTFを算出した。CR システムのプリサンプルド MTF は

読み取り方向で異なることが知られているが,本研究

では,水平方向のみを測定対象とした。

Fig.1 Transition of the entrance surface dose in Japan.

Table Details of the digital radiography system used in this study.

Fig.1 Transition of the entrance surface dose in Japan.

Table Details of the digital radiography system used in this study.

傾向にあることが報告されている 9-11)。 浅田らや DRLs2015,2020 の国内における被ばく線

量の実態調査では,Fig.1 に示すように CR システム

が普及し始めた 1993 年以降 FPD システムのような

高感度検出器が開発されたにも関わらず皮膚表面線

量は横ばいもしくは増加傾向にあり,撮影頻度の高い

胸部撮影は 1993 年時と比べ 2020 年で約 2 倍の皮膚

表面線量であることが報告されている 3,8,9)。この理由

として過去に使用されていた増感紙/フィルムシステ

ムにおける撮影条件をそのままの基準としてデジタ

ル撮影システムで用いている施設が多いことが主要

因として挙げられている。しかし,この撮影条件が必

ずしもデジタル撮影システムに適正な撮影条件であ

るとは限らない。 本研究では,間接変換型 FPD システムの入出力特

性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電

圧特性について CR システムとの比較を行い,検出器

の画質特性の観点から撮影条件について考察する。 1. 方法 本研究では,X 線発生装置は UD150B-40 (株式会

社島津製作所製),一般撮影用 CR システムは FCR Speedia CS Plus(富士フィルム株式会社製),一般撮

影用間接変換型 FPD システムは Aero DR fine 1417HD(コニカミノルタ株式会社製),線量計は半

導体線量計の Piranha 657(RTI 社製)を使用した。 Table に使用した撮影システムの詳細を示す。こ

れら 2 つのデジタル撮影システムにおける入出力

特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管

電圧特性を測定し,比較した。測定に使用した試料画

像は,両システムの感度指標:S 値=200、階調処理

は直線階調で読み取りを行い、周波数強調等の画像処

理は一切行っていない生データである。詳細を 1.1 か

ら 1.5 に述べる。

1. 1 入出力特性 入 出 力 特 性 は , IEC62220-112) に 準 じ て RQA5(7.1mmAl 半価層)の線質を用いてタイムスケール

法で測定し,検出器への入射線量に対する画素値から

デジタル特性曲線を求めた。RQA5 となる撮影管電圧

は 70kV,付加フィルタ厚は 0.76mmCu で,照射野サ

イズ 20×20cm2 の領域に均一露光した。測定試料の作

成は,1 つの撮影距離で低露光領域から高露光領域ま

でをカバーすることができないため source image distance (SID)を 200cm および 450cm で撮影し,両者

をつなぎ合わせて最終的なデジタル特性曲線を求め

た。線量測定は,半導体線量計を FPD システムの表

面で撮影範囲内の隅に配置して測定した。測定点は,

200cm が 10 点,450cm が 10 点の計 20 点で,各点で

3 枚の試料を作製した。得られた試料画像は personal computer(PC)に取り込み,画像の中心付近に 100×100画素の大きさの関心領域(region of interest: ROI)を設

定して平均画素値を算出した。デジタル特性曲線のプ

ロットデータは各点で撮影された 3 枚の試料の平均

値とした。 1. 2 解像特性 解像特性は,IEC62220-112)に準じて 1.1 の入出力特

性と同条件である RQA5 の線質を用いてエッジ法に

てプリサンプルド MTF を測定した。使用したエッジ

は,1mm 厚のタングステン板で,検出器に密着させ,

エッジ部分が画像の垂直方向から 2~3°傾くように

配置し,エッジ部と X 線束が一致するように測定試

料を撮影した。得られた試料画像は PC に取り込み,

取得した ESF(edge spread function)は 1.1 で求めたデジ

タル特性曲線を用いて線量へ変換し,この線量変換し

た ESF を微分して LSF(line spread function)を求めた

後,1 次元フーリエ変換を行い,プリサンプルド MTFを算出した。CR システムのプリサンプルド MTF は

読み取り方向で異なることが知られているが,本研究

では,水平方向のみを測定対象とした。

Fig.1 Transition of the entrance surface dose in Japan.

Table Details of the digital radiography system used in this study.

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 136 2021/03/11 22:05:22

137間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討

したエッジは,1mm厚のタングステン板で,検出器に密着させ,エッジ部分が画像の垂直方向から2~3°傾くように配置し,エッジ部と X線束が一致するように測定試料を撮影した.得られた試料画像は PCに取り込み,取得した ESF(edge spread function)は1.1で求めたデジタル特性曲線を用いて線量へ変換し,この線量変換した ESFを微分して LSF(line spread function)を求めた後,1次元フーリエ変換を行い,プリサンプルドMTFを算出した.CRシステムのプリサンプルドMTFは読み取り方向で異なることが知られているが,本研究では,水平方向のみを測定対象とした.

1.3 ノイズ特性  ノイズ特性は,2次元フーリエ変換法にてウィナースペクトル(Wiener spectrum: WS )を算出した.WSの測定試料は,EC62220-112)に準じてRQA5(7.1mmAl 半 価 層 ) の 線 質 を 用 い てSID200cmで照射サイズを20×20cm2 とし,検出器への入射線量を0.44,4.38,8.76,17.52μGyと変えて均一露光を行い,各線量で5枚作成した.得られた試料画像は PCに取り込み,1.1で求めたデジタル特性曲線を用いて線量へ変換後,1つの測定試料から256×256画素の関心領域を上下左右に128画素オーバーラップするように16ヶ所に設定して計80枚の画像を切り出し,トレンド処理を行った後,2次元フーリエ変換によりWSを算出した.最終的なWSは,80本のWSを平均して1本のWSを求めた.

1.4 量子検出効率  量 子 検 出 効 率 (detective quantum efficiency: DQE)は ,総合画像評価の指標として用いられ,次式にて定義される.

  DQE(u)= (log10 e)2・G2・MTF(u)2

q・WS(u)

…… (1)

 本研究では,G,MTF(u) および WS(u) は1.1か ら1.3で 求 め た 値, フ ォ ト ン 数:q は,IEC62220-112)に示される RQA5のフォトン数を用いて,検出器への入射線量を0.44,4.38,8.76,17.52μGyとした時の DQE (u)を算出した.

1.5 管電圧特性 本研究では,検出器の管電圧特性を調べるために撮影管電圧と画素値の関係,粒状性および画像コントラストを測定した.

1.5.1 撮影管電圧と画素値の関係  検出器の管電圧特性を調べるために,撮影管電圧を変えたときの画素値の関係を求めた.測定試料は,SID200cm,照射サイズを20×20cm2,検出器への入射線量を同一とし,撮影管電圧を50kV,60kV,80kV,100kVおよび120kVと変えて均一露光を行い,各管電圧で3枚作成した.得られた試料画像は,中心付近に100×100画素の関心領域を設定し,平均画素値を算出して撮影管電圧と画素値の関係を求めた.最終的なプロットデータは,各点で撮影された3枚の試料の平均値とした.

1.5.2 撮影管電圧による粒状性への影響 検出器に用いられている CsIや Baの蛍光体は,使用する X線エネルギーにより線減弱係数が異なる.このため,同一線量が検出器に入射したとしても検出器に吸収されるX線量の違いにより発光量が異なり粒状性が異なることが推測される.ここでは,撮影管電圧による粒状性への影響を調べるために検出器の入射線量を同一とし,撮影管電圧を変えたときの RMS粒状度を測定した.測定試料は,SID200cm,照射サイズを20×20cm2,検出器への入射線量を8.76μGyとし,撮影管電圧を50kV,60kV,80kV,100kVおよび120kVと変えて均一露光を行い,各管電圧で3枚作成した.得られた画像の中心付近に100×100画素の関心領域を設定して RMS粒状度を算出した.最終的なプロットデータは,各点で撮影された3枚の試料の平均値とした.

1.5.3 画像コントラスト 画像コントラストは,同一照射線量で30段のアルミステップを撮影管電圧50kV,60kV,80kV,100kVおよび120kVを用いて SID120cmで撮影し,各管電圧における画像コントラストを求めた.画像コントラスト :Cは次式により算出した.

  C = Db - DAl (i) …………………………… (2)

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 137 2021/03/11 22:05:22

138 村上 誠一・髙木 剛司・大田 哲

 ここで,Dbはアルミステップのない露光域の画素値,DAl (i)は i段目のアルミステップの画素値である. 観察試料は,各管電圧で3枚作成し,得られた画像から各アルミステップ上および散乱体のない露光領域に30×20の関心領域を設定して平均画素値を算出し,式(2)を用いて画像コントラストを求めた.最終的な画像コントラストは3枚の測定試料の平均値とした.

2.結果2.1 入出力特性 CRシステムと FPDシステムのデジタル特性曲線を Fig.2に示す.図より両システムとも104 程度の線量域を表現可能であり,広いダイナミックレンジを有していた.しかし,表現可能な線量域は両者で異なり,FPDシステムは,CRシステムに比べより低い線量域を画像化することが可能で

あった.一方で,FPDシステムは,87.6μGy付近で飽和状態となり,CRシステムより少ない線量で飽和状態になることを示した.

2.2 解像特性 FPDシステムと CRシステムのプリサンプルドMTFを Fig.3に示す.FPDシステムのプリサンプルドMTFは,全周波数において CRシステムより高い結果を示し,0.5cycles/mmにおける MTF値は FPDシステムが0.86,CRシステムが0.81となり約6%高い値を示した.この結果は,FPDシステムが CRシステムより高解像度であることを示している.

2.3 ノイズ特性 Fig.4に検出器入射線量が8.76μGyのWSを示す.図より,両システムともに高周波になるほど低い値を示した.また,全周波数において FPDシス

Fig.2 Digital characteristic curves of two different digital systems.

ド MTF は,全周波数において CR システムより高い

結果を示し,0.5cycles/mm における MTF 値は FPD シ

ステムが 0.86,CR システムが 0.81 となり約 6%高い

値を示した。この結果は,FPD システムが CR システ

ムより高解像度であることを示している。 2. 3 ノイズ特性 Fig.4 に検出器入射線量が 8.76μGy の WS を示す。

図より,両システムともに高周波になるほど低い値を

示した。また,全周波数において FPD システムは CRシステムより明らかに低い値を示し,粒状性が優れて

いることがわかる。0.5cycles/mm で両システムを比較

した場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,

2.0 cycles/mm では 2.2 倍,ノイズ特性に優れた結果を

示した。Fig.5 に 0.5cycles/mm における検出器への入

射線量と WS の関係を示す。両システムとも入射線量

の増加とともに WS は低い値を示し,粒状性が向上

した。両システムとも入射線量が 5μGy 以上では大き

な粒状性の改善は見られなかった。 2. 4 量子検出効率 Fig.6 に検出器への入射線量が 8.76μGy の FPD シス

テムと CR システムの DQE を示す。図より,両者と

も高周波数になるほど DQE は低い値を示した。また,

FPD システムは CR システムより全周波数において

高い DQE 値を示した。この結果は,FPD システムは

CR システムより X 線の利用効率の高いシステムで

あることを示している。Fig.7 に検出器への入射線量

を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変化させた時の 0.5 cycles/mm の DQE の値を示す。同図より入射線量が

高くなると僅かに低い DQE 値を示したが,どの線量

においても FPD システムは CR システムに比べ約

50%高い DQE 値を示した。

Fig.3 Presamapled modulation transfer functions of the two digital

systems at RQA5 in the horizontal direction.

Fig.4 Wiener spectra of the two different digital systems at 8.76μGy.

Fig.5 Relationship between incident dose and Wiener spectra for two

different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.2 Digital characteristic curves of two different digital systems.

Fig.5 Relationship between incident dose and Wiener spectra for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.2 Digital characteristic curves of two different digital systems.

ド MTF は,全周波数において CR システムより高い

結果を示し,0.5cycles/mm における MTF 値は FPD シ

ステムが 0.86,CR システムが 0.81 となり約 6%高い

値を示した。この結果は,FPD システムが CR システ

ムより高解像度であることを示している。 2. 3 ノイズ特性 Fig.4 に検出器入射線量が 8.76μGy の WS を示す。

図より,両システムともに高周波になるほど低い値を

示した。また,全周波数において FPD システムは CRシステムより明らかに低い値を示し,粒状性が優れて

いることがわかる。0.5cycles/mm で両システムを比較

した場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,

2.0 cycles/mm では 2.2 倍,ノイズ特性に優れた結果を

示した。Fig.5 に 0.5cycles/mm における検出器への入

射線量と WS の関係を示す。両システムとも入射線量

の増加とともに WS は低い値を示し,粒状性が向上

した。両システムとも入射線量が 5μGy 以上では大き

な粒状性の改善は見られなかった。 2. 4 量子検出効率 Fig.6 に検出器への入射線量が 8.76μGy の FPD シス

テムと CR システムの DQE を示す。図より,両者と

も高周波数になるほど DQE は低い値を示した。また,

FPD システムは CR システムより全周波数において

高い DQE 値を示した。この結果は,FPD システムは

CR システムより X 線の利用効率の高いシステムで

あることを示している。Fig.7 に検出器への入射線量

を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変化させた時の 0.5 cycles/mm の DQE の値を示す。同図より入射線量が

高くなると僅かに低い DQE 値を示したが,どの線量

においても FPD システムは CR システムに比べ約

50%高い DQE 値を示した。

Fig.3 Presamapled modulation transfer functions of the two digital

systems at RQA5 in the horizontal direction.

Fig.4 Wiener spectra of the two different digital systems at 8.76μGy.

Fig.5 Relationship between incident dose and Wiener spectra for two

different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.4 Wiener spectra of the two different digital systems at 8.76μGy.

Fig.2 Digital characteristic curves of two different digital systems.

ド MTF は,全周波数において CR システムより高い

結果を示し,0.5cycles/mm における MTF 値は FPD シ

ステムが 0.86,CR システムが 0.81 となり約 6%高い

値を示した。この結果は,FPD システムが CR システ

ムより高解像度であることを示している。 2. 3 ノイズ特性 Fig.4 に検出器入射線量が 8.76μGy の WS を示す。

図より,両システムともに高周波になるほど低い値を

示した。また,全周波数において FPD システムは CRシステムより明らかに低い値を示し,粒状性が優れて

いることがわかる。0.5cycles/mm で両システムを比較

した場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,

2.0 cycles/mm では 2.2 倍,ノイズ特性に優れた結果を

示した。Fig.5 に 0.5cycles/mm における検出器への入

射線量と WS の関係を示す。両システムとも入射線量

の増加とともに WS は低い値を示し,粒状性が向上

した。両システムとも入射線量が 5μGy 以上では大き

な粒状性の改善は見られなかった。 2. 4 量子検出効率 Fig.6 に検出器への入射線量が 8.76μGy の FPD シス

テムと CR システムの DQE を示す。図より,両者と

も高周波数になるほど DQE は低い値を示した。また,

FPD システムは CR システムより全周波数において

高い DQE 値を示した。この結果は,FPD システムは

CR システムより X 線の利用効率の高いシステムで

あることを示している。Fig.7 に検出器への入射線量

を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変化させた時の 0.5 cycles/mm の DQE の値を示す。同図より入射線量が

高くなると僅かに低い DQE 値を示したが,どの線量

においても FPD システムは CR システムに比べ約

50%高い DQE 値を示した。

Fig.3 Presamapled modulation transfer functions of the two digital

systems at RQA5 in the horizontal direction.

Fig.4 Wiener spectra of the two different digital systems at 8.76μGy.

Fig.5 Relationship between incident dose and Wiener spectra for two

different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.3 Presamapled modulation transfer functions of the two digital systems at RQA5 in the horizontal direction.

Fig.2 Digital characteristic curves of two different digital systems.

ド MTF は,全周波数において CR システムより高い

結果を示し,0.5cycles/mm における MTF 値は FPD シ

ステムが 0.86,CR システムが 0.81 となり約 6%高い

値を示した。この結果は,FPD システムが CR システ

ムより高解像度であることを示している。 2. 3 ノイズ特性 Fig.4 に検出器入射線量が 8.76μGy の WS を示す。

図より,両システムともに高周波になるほど低い値を

示した。また,全周波数において FPD システムは CRシステムより明らかに低い値を示し,粒状性が優れて

いることがわかる。0.5cycles/mm で両システムを比較

した場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,

2.0 cycles/mm では 2.2 倍,ノイズ特性に優れた結果を

示した。Fig.5 に 0.5cycles/mm における検出器への入

射線量と WS の関係を示す。両システムとも入射線量

の増加とともに WS は低い値を示し,粒状性が向上

した。両システムとも入射線量が 5μGy 以上では大き

な粒状性の改善は見られなかった。 2. 4 量子検出効率 Fig.6 に検出器への入射線量が 8.76μGy の FPD シス

テムと CR システムの DQE を示す。図より,両者と

も高周波数になるほど DQE は低い値を示した。また,

FPD システムは CR システムより全周波数において

高い DQE 値を示した。この結果は,FPD システムは

CR システムより X 線の利用効率の高いシステムで

あることを示している。Fig.7 に検出器への入射線量

を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変化させた時の 0.5 cycles/mm の DQE の値を示す。同図より入射線量が

高くなると僅かに低い DQE 値を示したが,どの線量

においても FPD システムは CR システムに比べ約

50%高い DQE 値を示した。

Fig.3 Presamapled modulation transfer functions of the two digital

systems at RQA5 in the horizontal direction.

Fig.4 Wiener spectra of the two different digital systems at 8.76μGy.

Fig.5 Relationship between incident dose and Wiener spectra for two

different digital systems at 0.5cycles/mm.

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 138 2021/03/11 22:05:23

139間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討

テムは CRシステムより明らかに低い値を示し,粒状性が優れていることがわかる.0.5cycles/mmで両システムを比較した場合,FPDシステムはCRシステムより2.7倍,2.0 cycles/mmでは2.2倍,ノイズ特性に優れた結果を示した.Fig.5に0.5cycles/mmにおける検出器への入射線量とWSの関係を示す.両システムとも入射線量の増加とともにWSは低い値を示し,粒状性が向上した.両システムとも入射線量が5μGy以上では大きな粒状性の改善は見られなかった.

2.4 量子検出効率 Fig.6に検出器への入射線量が8.76μGyの FPDシステムと CRシステムの DQEを示す.図より,両者とも高周波数になるほど DQEは低い値を示した.また,FPDシステムは CRシステムより全周波数において高い DQE値を示した.この結果は,FPDシステムは CRシステムより X線の利

用効率の高いシステムであることを示している.Fig.7に検出器への入射線量を0.44,4.38,8.76,17.52μGyと変化させた時の0.5 cycles/mmの DQEの値を示す.同図より入射線量が高くなると僅かに低い DQE値を示したが,どの線量においてもFPDシステムは CRシステムに比べ約50%高いDQE値を示した.

2.5 管電圧特性2.5.1 撮影管電圧と画素値の関係 Fig.8に同一の検出器入射線量で撮影管電圧を変えたときの画素値の変化を示す.図より,両システムにおいて撮影管電圧が80kV付近までは管電圧が高くなるほど画素値は高い値を示し,80kV以上ではほぼ同一の画素値を示した.

2. 5. 2 撮影管電圧による粒状性への影響 Fig.9に両システムにおける撮影管電圧と RMS粒

Fig.6 Detective quantum efficiency of the two different digital systems at 8.76μGy.

2. 5 管電圧特性 2. 5. 1 撮影管電圧と画素値の関係 Fig.8 に同一の検出器入射線量で撮影管電圧を変え

たときの画素値の変化を示す。図より,両システムに

おいて撮影管電圧が 80kV付近までは管電圧が高くな

るほど画素値は高い値を示し,80kV 以上ではほぼ同

一の画素値を示した。 2. 5. 2 撮影管電圧による粒状性への影響 Fig.9 に両システムにおける撮影管電圧と RMS 粒状

度の関係を示す。図より,両システムともに撮影管電

圧により RMS 粒状度は異なり,FPD システムでは

80kV,CR システムでは 100kV で RMS 粒状度は小さ

な値を示した。ここで求めた RMS 粒状度は,画素値

の変動を算出した値のため階調数の異なる両システ

ムを比較することはできない。 2. 5. 3 画像コントラスト Fig.10 に撮影管電圧と画像コントラストの関係を

示す。図の縦軸は画像コントラスト,横軸がアルミ階

段の番号で,この番号が大きな程アルミ厚が薄くなる。

図より,両システムにおいて画像コントラストを示す

直線の傾きは 50kV が最も大きく,高い画像コントラ

ストを示したが,管電圧が高くなる程,直線の傾きは

小さくなり,画像コントラストが低下した。また,撮

影管電圧間の画像コントラストの差は,撮影管電圧が

高くなるほど小さくなった。なお,Fig.10 の縦軸は,

単純に画素値の差を表しているため,本研究で用いた

階調数の異なる両システムを比較することはできな

いので注意が必要である。 3. 考察 3. 1 入出力特性 測定した両デジタルシステムの入出力特性は,104

程度の広いダイナミックレンジを有するが,使用でき

る線量域が異なっていた。FPD システムは,CR シス

テムに比べ,低い線量域に対しても画像化することが

可能であるが,87.6μGy で画素値が飽和し,これ以上

Fig.6 Detective quantum efficiency of the two different digital

systems at 8.76μGy.

Fig.7 Relationship between incident dose and Detective quantum

efficiency for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.8 Relationship between tube voltage and pixel value for two

different digital systems at 8.76μGy.

Fig.9 Relationship between tube voltage and RMS granularity on

different digital systems.

Fig.8 Relationship between tube voltage and pixel value for two different digital systems at 8.76μGy.

2. 5 管電圧特性 2. 5. 1 撮影管電圧と画素値の関係 Fig.8 に同一の検出器入射線量で撮影管電圧を変え

たときの画素値の変化を示す。図より,両システムに

おいて撮影管電圧が 80kV付近までは管電圧が高くな

るほど画素値は高い値を示し,80kV 以上ではほぼ同

一の画素値を示した。 2. 5. 2 撮影管電圧による粒状性への影響 Fig.9 に両システムにおける撮影管電圧と RMS 粒状

度の関係を示す。図より,両システムともに撮影管電

圧により RMS 粒状度は異なり,FPD システムでは

80kV,CR システムでは 100kV で RMS 粒状度は小さ

な値を示した。ここで求めた RMS 粒状度は,画素値

の変動を算出した値のため階調数の異なる両システ

ムを比較することはできない。 2. 5. 3 画像コントラスト Fig.10 に撮影管電圧と画像コントラストの関係を

示す。図の縦軸は画像コントラスト,横軸がアルミ階

段の番号で,この番号が大きな程アルミ厚が薄くなる。

図より,両システムにおいて画像コントラストを示す

直線の傾きは 50kV が最も大きく,高い画像コントラ

ストを示したが,管電圧が高くなる程,直線の傾きは

小さくなり,画像コントラストが低下した。また,撮

影管電圧間の画像コントラストの差は,撮影管電圧が

高くなるほど小さくなった。なお,Fig.10 の縦軸は,

単純に画素値の差を表しているため,本研究で用いた

階調数の異なる両システムを比較することはできな

いので注意が必要である。 3. 考察 3. 1 入出力特性 測定した両デジタルシステムの入出力特性は,104

程度の広いダイナミックレンジを有するが,使用でき

る線量域が異なっていた。FPD システムは,CR シス

テムに比べ,低い線量域に対しても画像化することが

可能であるが,87.6μGy で画素値が飽和し,これ以上

Fig.6 Detective quantum efficiency of the two different digital

systems at 8.76μGy.

Fig.7 Relationship between incident dose and Detective quantum

efficiency for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.8 Relationship between tube voltage and pixel value for two

different digital systems at 8.76μGy.

Fig.9 Relationship between tube voltage and RMS granularity on

different digital systems.

Fig.7 Relationship between incident dose and Detective quantum efficiency for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

2. 5 管電圧特性 2. 5. 1 撮影管電圧と画素値の関係 Fig.8 に同一の検出器入射線量で撮影管電圧を変え

たときの画素値の変化を示す。図より,両システムに

おいて撮影管電圧が 80kV付近までは管電圧が高くな

るほど画素値は高い値を示し,80kV 以上ではほぼ同

一の画素値を示した。 2. 5. 2 撮影管電圧による粒状性への影響 Fig.9 に両システムにおける撮影管電圧と RMS 粒状

度の関係を示す。図より,両システムともに撮影管電

圧により RMS 粒状度は異なり,FPD システムでは

80kV,CR システムでは 100kV で RMS 粒状度は小さ

な値を示した。ここで求めた RMS 粒状度は,画素値

の変動を算出した値のため階調数の異なる両システ

ムを比較することはできない。 2. 5. 3 画像コントラスト Fig.10 に撮影管電圧と画像コントラストの関係を

示す。図の縦軸は画像コントラスト,横軸がアルミ階

段の番号で,この番号が大きな程アルミ厚が薄くなる。

図より,両システムにおいて画像コントラストを示す

直線の傾きは 50kV が最も大きく,高い画像コントラ

ストを示したが,管電圧が高くなる程,直線の傾きは

小さくなり,画像コントラストが低下した。また,撮

影管電圧間の画像コントラストの差は,撮影管電圧が

高くなるほど小さくなった。なお,Fig.10 の縦軸は,

単純に画素値の差を表しているため,本研究で用いた

階調数の異なる両システムを比較することはできな

いので注意が必要である。 3. 考察 3. 1 入出力特性 測定した両デジタルシステムの入出力特性は,104

程度の広いダイナミックレンジを有するが,使用でき

る線量域が異なっていた。FPD システムは,CR シス

テムに比べ,低い線量域に対しても画像化することが

可能であるが,87.6μGy で画素値が飽和し,これ以上

Fig.6 Detective quantum efficiency of the two different digital

systems at 8.76μGy.

Fig.7 Relationship between incident dose and Detective quantum

efficiency for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.8 Relationship between tube voltage and pixel value for two

different digital systems at 8.76μGy.

Fig.9 Relationship between tube voltage and RMS granularity on

different digital systems.

Fig.9 Relationship between tube voltage and RMS granularity on different digital systems.

2. 5 管電圧特性 2. 5. 1 撮影管電圧と画素値の関係 Fig.8 に同一の検出器入射線量で撮影管電圧を変え

たときの画素値の変化を示す。図より,両システムに

おいて撮影管電圧が 80kV付近までは管電圧が高くな

るほど画素値は高い値を示し,80kV 以上ではほぼ同

一の画素値を示した。 2. 5. 2 撮影管電圧による粒状性への影響 Fig.9 に両システムにおける撮影管電圧と RMS 粒状

度の関係を示す。図より,両システムともに撮影管電

圧により RMS 粒状度は異なり,FPD システムでは

80kV,CR システムでは 100kV で RMS 粒状度は小さ

な値を示した。ここで求めた RMS 粒状度は,画素値

の変動を算出した値のため階調数の異なる両システ

ムを比較することはできない。 2. 5. 3 画像コントラスト Fig.10 に撮影管電圧と画像コントラストの関係を

示す。図の縦軸は画像コントラスト,横軸がアルミ階

段の番号で,この番号が大きな程アルミ厚が薄くなる。

図より,両システムにおいて画像コントラストを示す

直線の傾きは 50kV が最も大きく,高い画像コントラ

ストを示したが,管電圧が高くなる程,直線の傾きは

小さくなり,画像コントラストが低下した。また,撮

影管電圧間の画像コントラストの差は,撮影管電圧が

高くなるほど小さくなった。なお,Fig.10 の縦軸は,

単純に画素値の差を表しているため,本研究で用いた

階調数の異なる両システムを比較することはできな

いので注意が必要である。 3. 考察 3. 1 入出力特性 測定した両デジタルシステムの入出力特性は,104

程度の広いダイナミックレンジを有するが,使用でき

る線量域が異なっていた。FPD システムは,CR シス

テムに比べ,低い線量域に対しても画像化することが

可能であるが,87.6μGy で画素値が飽和し,これ以上

Fig.6 Detective quantum efficiency of the two different digital

systems at 8.76μGy.

Fig.7 Relationship between incident dose and Detective quantum

efficiency for two different digital systems at 0.5cycles/mm.

Fig.8 Relationship between tube voltage and pixel value for two

different digital systems at 8.76μGy.

Fig.9 Relationship between tube voltage and RMS granularity on

different digital systems.

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 139 2021/03/11 22:05:25

140 村上 誠一・髙木 剛司・大田 哲

状度の関係を示す.図より,両システムともに撮影管電圧により RMS粒状度は異なり,FPDシステムでは80kV,CRシステムでは100kVで RMS粒状度は小さな値を示した.ここで求めた RMS粒状度は,画素値の変動を算出した値のため階調数の異なる両システムを比較することはできない.

2.5.3 画像コントラスト Fig.10に撮影管電圧と画像コントラストの関係を示す.図の縦軸は画像コントラスト,横軸がアルミ階段の番号で,この番号が大きな程アルミ厚が薄くなる.図より,両システムにおいて画像コントラストを示す直線の傾きは50kVが最も大きく,高い画像コントラストを示したが,管電圧が高くなる程,直線の傾きは小さくなり,画像コントラストが低下した.また,撮影管電圧間の画像コントラストの差は,撮影管電圧が高くなるほど小さくなった.なお,Fig.10 の縦軸は,単純に画素値の差を表しているため,本研究で用いた階調数の異なる両システムを比較することはできないので注意が必要である.

3.考察3.1 入出力特性 測定した両デジタルシステムの入出力特性は,104 程度の広いダイナミックレンジを有するが,使用できる線量域が異なっていた.FPDシステムは,CRシステムに比べ,低い線量域に対しても画像化することが可能であるが,87.6μGyで画素値が飽和し,これ以上の線量が検出器に入射した場合,画像化できないことを意味している.Fig.11に過線量に起因する黒とびが生じた画像を示す.図より,FPDシステムでは検出器入射線量が87.6μGyで肺野の広範囲に黒とびを生じていることがわかる(Fig.11(a)).一方,CRシステムでは175.2μ Gy,438μGyの検出器入射線量でも黒とびは生じていない(Fig.11(b),(c)).日常臨床において,175.2μGyや438μGyの高線量が検出器へ入射することは考えにくいが,87.6μGyは現実的に臨床で起こりえる線量であり,FPDシステムにおいて使用できる撮影線量域は,実質

の線量が検出器に入射した場合,画像化できないこと

を意味している。Fig.11 に過線量に起因する黒とびが

生じた画像を示す。図より,FPD システムでは検出器

入射線量が 87.6μGy で肺野の広範囲に黒とびを生じ

ていることがわかる(Fig.11(a))。一方,CR システムで

は 175.2μGy,438μGy の検出器入射線量でも黒とびは

生じていない (Fig.11(b),(c))。日常臨床において,

175.2μGy や 438μGy の高線量が検出器へ入射するこ

とは考えにくいが,87.6μGy は現実的に臨床で起こり

える線量であり,FPD システムにおいて使用できる

撮影線量域は,実質 CR システムより狭いと考えてよ

いのかもしれない。黒とびが生じた際に再撮影になる

ため患者被ばく線量の観点からも十分注意を払う必

要がある。 3. 2 解像特性 プリサンプルド MTF を用いて解像特性を測定した。

FPD システムのプリサンプルド MTF は,CR システ

ムより高い結果を示し,0.5cycles/mm における MTF値は FPD システムが 0.86,CR システムが 0.81 とな

り約 6%高い値を示した。この 6%の改善がどの程度

臨床画像に違いを与えるのか,Fig.12 に同一撮影条件

で撮影した手関節のファントム画像を示す。図より,

FPD システムは,CR システムに比べ骨梁構造が明瞭

に描出されていることがわかる。つまり,この MTFの違いが,臨床画像で確認できるレベルであることを

意味している。 3. 3 ノイズ特性

本研究では,検出器への入射線量を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変えたときの WS を 2 次元フーリエ変換

法にて算出した。0.5cycles/mm で両システムを比較し

た場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,2.0 cycles/mm では 2.2 倍粒状性に優れた結果を示した。

この結果は,FPD システムが CR システムより粒状性

に優れ,低コントラスト物質の検出に有用であること

を意味している。また,Fig.5 より両システムとも検

出器への入射線量が 5μGy 以上では大きな粒状性の

改善は見られなかったことから,これ以上の検出器入

射線量での撮影は,患者被ばく線量を増加させるだけ

で粒状性の向上にはあまり期待できないと考えられ

る。

(a)

(b)

Fig.10 Relationship between tube voltage and image contrast. (a)

FPD system (b) CR system

(a) (b) (c)

Fig.11 Chest phantom images of different digital systems

radiographed with high exposure levels. (a) FPD system (b)and(c) CR

system

(a) (b)

Fig.12 Wrist radiographs taken with different digital systems. (a) FPD

system (b) CR system

Fig.10 Relationship between tube voltage and image contrast. (a) FPD system (b) CR system

Fig.11 Chest phantom images of different digital systems radiographed with high exposure levels. (a) FPD system (b)and(c) CR system

の線量が検出器に入射した場合,画像化できないこと

を意味している。Fig.11 に過線量に起因する黒とびが

生じた画像を示す。図より,FPD システムでは検出器

入射線量が 87.6μGy で肺野の広範囲に黒とびを生じ

ていることがわかる(Fig.11(a))。一方,CR システムで

は 175.2μGy,438μGy の検出器入射線量でも黒とびは

生じていない (Fig.11(b),(c))。日常臨床において,

175.2μGy や 438μGy の高線量が検出器へ入射するこ

とは考えにくいが,87.6μGy は現実的に臨床で起こり

える線量であり,FPD システムにおいて使用できる

撮影線量域は,実質 CR システムより狭いと考えてよ

いのかもしれない。黒とびが生じた際に再撮影になる

ため患者被ばく線量の観点からも十分注意を払う必

要がある。 3. 2 解像特性 プリサンプルド MTF を用いて解像特性を測定した。

FPD システムのプリサンプルド MTF は,CR システ

ムより高い結果を示し,0.5cycles/mm における MTF値は FPD システムが 0.86,CR システムが 0.81 とな

り約 6%高い値を示した。この 6%の改善がどの程度

臨床画像に違いを与えるのか,Fig.12 に同一撮影条件

で撮影した手関節のファントム画像を示す。図より,

FPD システムは,CR システムに比べ骨梁構造が明瞭

に描出されていることがわかる。つまり,この MTFの違いが,臨床画像で確認できるレベルであることを

意味している。 3. 3 ノイズ特性

本研究では,検出器への入射線量を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変えたときの WS を 2 次元フーリエ変換

法にて算出した。0.5cycles/mm で両システムを比較し

た場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,2.0 cycles/mm では 2.2 倍粒状性に優れた結果を示した。

この結果は,FPD システムが CR システムより粒状性

に優れ,低コントラスト物質の検出に有用であること

を意味している。また,Fig.5 より両システムとも検

出器への入射線量が 5μGy 以上では大きな粒状性の

改善は見られなかったことから,これ以上の検出器入

射線量での撮影は,患者被ばく線量を増加させるだけ

で粒状性の向上にはあまり期待できないと考えられ

る。

(a)

(b)

Fig.10 Relationship between tube voltage and image contrast. (a)

FPD system (b) CR system

(a) (b) (c)

Fig.11 Chest phantom images of different digital systems

radiographed with high exposure levels. (a) FPD system (b)and(c) CR

system

(a) (b)

Fig.12 Wrist radiographs taken with different digital systems. (a) FPD

system (b) CR system Fig.12 Wrist radiographs taken with different digital

systems. (a) FPD system (b) CR system

の線量が検出器に入射した場合,画像化できないこと

を意味している。Fig.11 に過線量に起因する黒とびが

生じた画像を示す。図より,FPD システムでは検出器

入射線量が 87.6μGy で肺野の広範囲に黒とびを生じ

ていることがわかる(Fig.11(a))。一方,CR システムで

は 175.2μGy,438μGy の検出器入射線量でも黒とびは

生じていない (Fig.11(b),(c))。日常臨床において,

175.2μGy や 438μGy の高線量が検出器へ入射するこ

とは考えにくいが,87.6μGy は現実的に臨床で起こり

える線量であり,FPD システムにおいて使用できる

撮影線量域は,実質 CR システムより狭いと考えてよ

いのかもしれない。黒とびが生じた際に再撮影になる

ため患者被ばく線量の観点からも十分注意を払う必

要がある。 3. 2 解像特性 プリサンプルド MTF を用いて解像特性を測定した。

FPD システムのプリサンプルド MTF は,CR システ

ムより高い結果を示し,0.5cycles/mm における MTF値は FPD システムが 0.86,CR システムが 0.81 とな

り約 6%高い値を示した。この 6%の改善がどの程度

臨床画像に違いを与えるのか,Fig.12 に同一撮影条件

で撮影した手関節のファントム画像を示す。図より,

FPD システムは,CR システムに比べ骨梁構造が明瞭

に描出されていることがわかる。つまり,この MTFの違いが,臨床画像で確認できるレベルであることを

意味している。 3. 3 ノイズ特性

本研究では,検出器への入射線量を 0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変えたときの WS を 2 次元フーリエ変換

法にて算出した。0.5cycles/mm で両システムを比較し

た場合,FPD システムは CR システムより 2.7 倍,2.0 cycles/mm では 2.2 倍粒状性に優れた結果を示した。

この結果は,FPD システムが CR システムより粒状性

に優れ,低コントラスト物質の検出に有用であること

を意味している。また,Fig.5 より両システムとも検

出器への入射線量が 5μGy 以上では大きな粒状性の

改善は見られなかったことから,これ以上の検出器入

射線量での撮影は,患者被ばく線量を増加させるだけ

で粒状性の向上にはあまり期待できないと考えられ

る。

(a)

(b)

Fig.10 Relationship between tube voltage and image contrast. (a)

FPD system (b) CR system

(a) (b) (c)

Fig.11 Chest phantom images of different digital systems

radiographed with high exposure levels. (a) FPD system (b)and(c) CR

system

(a) (b)

Fig.12 Wrist radiographs taken with different digital systems. (a) FPD

system (b) CR system

資料-3-p135-144-murakami-cs6.indd 140 2021/03/11 22:05:25

141間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討

CRシステムより狭いと考えてよいのかもしれない.黒とびが生じた際に再撮影になるため患者被ばく線量の観点からも十分注意を払う必要がある.

3.2 解像特性 プリサンプルドMTFを用いて解像特性を測定した.FPDシステムのプリサンプルドMTFは,CRシステムより高い結果を示し,0.5cycles/mmにおける MTF値は FPDシステムが0.86,CRシステムが0.81となり約6%高い値を示した.この6%の改善がどの程度臨床画像に違いを与えるのか,Fig.12に同一撮影条件で撮影した手関節のファントム画像を示す.図より,FPDシステムは,CRシステムに比べ骨梁構造が明瞭に描出されていることがわかる.つまり,このMTFの違いが,

臨床画像で確認できるレベルであることを意味している.

3. 3 ノイズ特性 本研究では,検出器への入射線量を0.44,4.38,8.76,17.52μGy と変えたときのWS を2次元フーリエ変換法にて算出した.0.5cycles/mmで両システムを比較した場合,FPDシステムは CRシステムより2.7倍,2.0 cycles/mmでは2.2倍粒状性に優れた結果を示した.この結果は,FPDシステムが CRシステムより粒状性に優れ,低コントラスト物質の検出に有用であることを意味している.また,Fig.5より両システムとも検出器への入射線量が5μGy以上では大きな粒状性の改善は見られなかったことから,これ以上の検出器入射線量での撮影は,患者被ばく線量を増加させるだけで粒状性の向上にはあまり期待できないと考えられる.

3. 4 量子検出効率 本研究では,画質特性に基づく総合画像評価の指標として DQEを算出した.その結果,FPDシステムは CRシステムと比べて DQE値が約2倍の高い値を示した.この結果は,検出器の画質特性の観点から CRシステムと同等の画質を得る FPDシステムの撮影線量が,CRシステムの半分で良いことを意味している.Fig.13に CRシステムの半分の検出器入射線量で胸部ファントムを撮影した時の FPDシステムの画像を示す.図より,横隔膜下の結節影の描出を比較した場合,CRシステムの半分の検出器入射線量で撮影しているにも関わらず FPDシステムの方が CRシステムより粒状性が良いことがわかる.このことからもFPDシステムは,CRシステムより少ない検出器入射線量で撮影することができ,患者被ばく低減が可能と考えられる.

3. 5 管電圧依存性 Fig.8に示すように本研究で使用したデジタルシステムは,使用する管電圧が変化すれば得られる画素値が異なる結果となった.仮に,検出器に線質依存性がなければ撮影管電圧と画素値の関係は一定となる.しかし,図からもわかるように同

3. 4 量子検出効率 本研究では,画質特性に基づく総合画像評価の指標

として DQE を算出した。その結果,FPD システムは

CR システムと比べて DQE 値が約 2 倍の高い値を示

した。この結果は,検出器の画質特性の観点から CRシステムと同等の画質を得る FPD システムの撮影線

量が,CR システムの半分で良いことを意味している。

Fig.13 に CR システムの半分の検出器入射線量で胸部

ファントムを撮影した時の FPD システムの画像を示

す。図より,横隔膜下の結節影の描出を比較した場合,

CR システムの半分の検出器入射線量で撮影している

にも関わらず FPD システムの方が CR システムより

粒状性が良いことがわかる。このことからも FPD シ

ステムは,CR システムより少ない検出器入射線量で

撮影することができ,患者被ばく低減が可能と考えら

れる。 3. 5 管電圧依存性

Fig.8 に示すように本研究で使用したデジタルシス

テムは,使用する管電圧が変化すれば得られる画素値

が異なる結果となった。仮に,検出器に線質依存性が

なければ撮影管電圧と画素値の関係は一定となる。し

かし,図からもわかるように同一入射線量であるにも

関わらず,使用する管電圧が変化すれば得られる画素

値も異なり,本研究で使用した検出器は管電圧依存性

を有していることがわかる。これは,使用する管電圧

により検出器に吸収される X 線量が異なり,結果と

して発光量が減少したことが要因と考えられる。一般

的に蛍光体に吸収された X 線量と発光量は比例関係

にあり,検出器へ吸収される X 線量が多ければ発光

量も多くなり結果として画素値は高い値を示す。

Fig.9 に両システムの撮影管電圧と RMS 粒状度を示

す。図より,FPD システムでは 80kV,CR システムで

は 100kV で RMS 粒状度の値は小さくなり粒状性が

良くなっていることがわかる。この要因は,両システ

ムの検出器で用いられている蛍光体の K 吸収端によ

る影響と考えられる。Fig.14 に FPD システムの蛍光

体に使用されている CsI と CR システムの蛍光体に使

用されている Ba の質量減弱係数を示す。同図より,

CsI は Cs の 36keV と I の 33keV,Ba は 37keV に K 吸

収端を持ち X 線吸収が大きくなる。FPD システムで

最も高い粒状を示した 80kV の実効エネルギーは

36.6keV,CR システムで最も高い粒状を示した 100kVの実効エネルギーは 38.7keV であり,蛍光体の K 吸

収端により検出器の X 線吸収が大きくなり粒状性が

向上したと考えられる。Fig.10 より,撮影管電圧を変

えて撮影した画像コントラストは,撮影管電圧が高く

なるほど低くなった。これは,人体を構成する骨や軟

部組織の質量減弱係数が,X 線エネルギーが高くなる

ほど小さくなり,被写体コントラストが低下するため

である。特に、骨の質量減弱係数は管電圧に強く影響

を受けるため,被写体コントラストの低下は大きくな

る。 一方で,デジタルシステムは,画像処理の 1 つであ

る正規化処理により濃度補正と画像コントラスト補

正が可能であり,この処理により管電圧による被写体

コントラストの低下を補える可能性がある。Fig.15 お

よび 16 に撮影管電圧を変えて手関節を撮影し, 正規

化処理を行ったときの画像と画像コントラストを示

す。図より,撮影管電圧が高くなるほど手関節のコン

トラストは低下し,正規化処理を行っても補正ができ

ていないことが分かる。つまり,正規化処理では管電

圧による骨の被写体コントラストの低下を補正する

ことができないことを意味している。Fig.17 および 18に撮影管電圧を変えて胸部撮影し,正規化処理を行っ

(a) (b)

Fig.13 Comparison of chest radiographic from CR and FPD systems

taken with different exposure doses. (a) FPD images taken with half

the dose of the CR system (4.38μGy) (b) CR image (8.76μGy)

Fig.14 Relationship between mass attenuation coefficients and

photon energy for X-ray detectors in different imaging systems.

Fig.13 Comparison of chest radiographic from CR and FPD systems taken with different exposure doses. (a) FPD images taken with half the dose of the CR system (4.38μGy) (b) CR image (8.76μGy)

Fig.14 Relationship between mass attenuation coefficients and photon energy for X-ray detectors in different imaging systems.

3. 4 量子検出効率 本研究では,画質特性に基づく総合画像評価の指標

として DQE を算出した。その結果,FPD システムは

CR システムと比べて DQE 値が約 2 倍の高い値を示

した。この結果は,検出器の画質特性の観点から CRシステムと同等の画質を得る FPD システムの撮影線

量が,CR システムの半分で良いことを意味している。

Fig.13 に CR システムの半分の検出器入射線量で胸部

ファントムを撮影した時の FPD システムの画像を示

す。図より,横隔膜下の結節影の描出を比較した場合,

CR システムの半分の検出器入射線量で撮影している

にも関わらず FPD システムの方が CR システムより

粒状性が良いことがわかる。このことからも FPD シ

ステムは,CR システムより少ない検出器入射線量で

撮影することができ,患者被ばく低減が可能と考えら

れる。 3. 5 管電圧依存性

Fig.8 に示すように本研究で使用したデジタルシス

テムは,使用する管電圧が変化すれば得られる画素値

が異なる結果となった。仮に,検出器に線質依存性が

なければ撮影管電圧と画素値の関係は一定となる。し

かし,図からもわかるように同一入射線量であるにも

関わらず,使用する管電圧が変化すれば得られる画素

値も異なり,本研究で使用した検出器は管電圧依存性

を有していることがわかる。これは,使用する管電圧

により検出器に吸収される X 線量が異なり,結果と

して発光量が減少したことが要因と考えられる。一般

的に蛍光体に吸収された X 線量と発光量は比例関係

にあり,検出器へ吸収される X 線量が多ければ発光

量も多くなり結果として画素値は高い値を示す。

Fig.9 に両システムの撮影管電圧と RMS 粒状度を示

す。図より,FPD システムでは 80kV,CR システムで

は 100kV で RMS 粒状度の値は小さくなり粒状性が

良くなっていることがわかる。この要因は,両システ

ムの検出器で用いられている蛍光体の K 吸収端によ

る影響と考えられる。Fig.14 に FPD システムの蛍光

体に使用されている CsI と CR システムの蛍光体に使

用されている Ba の質量減弱係数を示す。同図より,

CsI は Cs の 36keV と I の 33keV,Ba は 37keV に K 吸

収端を持ち X 線吸収が大きくなる。FPD システムで

最も高い粒状を示した 80kV の実効エネルギーは

36.6keV,CR システムで最も高い粒状を示した 100kVの実効エネルギーは 38.7keV であり,蛍光体の K 吸

収端により検出器の X 線吸収が大きくなり粒状性が

向上したと考えられる。Fig.10 より,撮影管電圧を変

えて撮影した画像コントラストは,撮影管電圧が高く

なるほど低くなった。これは,人体を構成する骨や軟

部組織の質量減弱係数が,X 線エネルギーが高くなる

ほど小さくなり,被写体コントラストが低下するため

である。特に、骨の質量減弱係数は管電圧に強く影響

を受けるため,被写体コントラストの低下は大きくな

る。 一方で,デジタルシステムは,画像処理の 1 つであ

る正規化処理により濃度補正と画像コントラスト補

正が可能であり,この処理により管電圧による被写体

コントラストの低下を補える可能性がある。Fig.15 お

よび 16 に撮影管電圧を変えて手関節を撮影し, 正規

化処理を行ったときの画像と画像コントラストを示

す。図より,撮影管電圧が高くなるほど手関節のコン

トラストは低下し,正規化処理を行っても補正ができ

ていないことが分かる。つまり,正規化処理では管電

圧による骨の被写体コントラストの低下を補正する

ことができないことを意味している。Fig.17 および 18に撮影管電圧を変えて胸部撮影し,正規化処理を行っ

(a) (b)

Fig.13 Comparison of chest radiographic from CR and FPD systems

taken with different exposure doses. (a) FPD images taken with half

the dose of the CR system (4.38μGy) (b) CR image (8.76μGy)

Fig.14 Relationship between mass attenuation coefficients and

photon energy for X-ray detectors in different imaging systems.

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142 村上 誠一・髙木 剛司・大田 哲

一入射線量であるにも関わらず,使用する管電圧が変化すれば得られる画素値も異なり,本研究で使用した検出器は管電圧依存性を有していることがわかる.これは,使用する管電圧により検出器に吸収される X線量が異なり,結果として発光量が減少したことが要因と考えられる.一般的に蛍光体に吸収された X線量と発光量は比例関係にあり,検出器へ吸収される X線量が多ければ発光量も多くなり結果として画素値は高い値を示す.Fig.9に両システムの撮影管電圧と RMS粒状度を示す.図より,FPDシステムでは80kV,CRシステムでは100kVで RMS粒状度の値は小さくなり粒状性が良くなっていることがわかる.この要因は,両システムの検出器で用いられている蛍

光体の K吸収端による影響と考えられる.Fig.14 に FPDシステムの蛍光体に使用されている CsIと CRシステムの蛍光体に使用されている Baの質量減弱係数を示す.同図より,CsIは Csの36keVと Iの33keV,Baは37keVに K吸収端を持ち X線吸収が大きくなる.FPDシステムで最も高い粒状を示した80kVの実効エネルギーは36.6keV,CRシステムで最も高い粒状を示した100kVの実効エネルギーは38.7keVであり,蛍光体の K吸収端により検出器の X線吸収が大きくなり粒状性が向上したと考えられる.Fig.10より,撮影管電圧を変えて撮影した画像コントラストは,

たときの画像コントラストを示す。図より,撮影管電

圧が高くなると胸部のコントラストは僅かに低下す

る程度であり,正規化処理により補正が行われている

こと分かる。つまり,胸部においては正規化処理によ

り,管電圧による肺野や血管などの軟部組織の被写体

コントラストの低下を補正することが可能であるこ

とを意味している。 本研究に用いた間接変換型 FPD システムは,CR 撮

影システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質

特性を有し Fig.7 に示す DQE より撮影線量を 50%程

度低減できると考えられる。したがって,過度の X 線

量の増加は,患者被ばく線量の増加を招くだけであり, 使用する検出器の画質特性を加味して撮影線量の最

適化を図ることが重要である。 撮影管電圧は, デジタルシステムに移行した現在

でも,増感紙/フィルムを使用していた条件と変わっ

ていない 3,5)。これは,被写体コントラストが撮影管

電圧により異なることが要因と考えられる。しかし,

デジタルシステムでは,撮影部位により異なるが撮影

管電圧の違いによる被写体コントラストの低下を画

像処理により補正し,最終的な画像コントラストを調

整することが可能である。画像処理によりどの程度の

被写体コントラストの低下を補正できるかが重要な

点であり,デジタルシステムに適した撮影管電圧の検

討が今後の課題と言える。

Fig.15 Effects of normalization processing on wrist FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.16 Relationship between tube voltage and image contrast on wrist

FPD images with normalization processing.

Fig.17 Effects of normalization processing on chest FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.18 Relationship between tube voltage and image contrast on chest

FPD images with normalization processing.

Fig.15 Effects of normalization processing on wrist FPD images taken at different tube voltages. (a) 60kV (b) 80kV (c) 100kV (d) 120kV

Fig.16 Relationship between tube voltage and image contrast on wrist FPD images with normalization processing.

たときの画像コントラストを示す。図より,撮影管電

圧が高くなると胸部のコントラストは僅かに低下す

る程度であり,正規化処理により補正が行われている

こと分かる。つまり,胸部においては正規化処理によ

り,管電圧による肺野や血管などの軟部組織の被写体

コントラストの低下を補正することが可能であるこ

とを意味している。 本研究に用いた間接変換型 FPD システムは,CR 撮

影システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質

特性を有し Fig.7 に示す DQE より撮影線量を 50%程

度低減できると考えられる。したがって,過度の X 線

量の増加は,患者被ばく線量の増加を招くだけであり, 使用する検出器の画質特性を加味して撮影線量の最

適化を図ることが重要である。 撮影管電圧は, デジタルシステムに移行した現在

でも,増感紙/フィルムを使用していた条件と変わっ

ていない 3,5)。これは,被写体コントラストが撮影管

電圧により異なることが要因と考えられる。しかし,

デジタルシステムでは,撮影部位により異なるが撮影

管電圧の違いによる被写体コントラストの低下を画

像処理により補正し,最終的な画像コントラストを調

整することが可能である。画像処理によりどの程度の

被写体コントラストの低下を補正できるかが重要な

点であり,デジタルシステムに適した撮影管電圧の検

討が今後の課題と言える。

Fig.15 Effects of normalization processing on wrist FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.16 Relationship between tube voltage and image contrast on wrist

FPD images with normalization processing.

Fig.17 Effects of normalization processing on chest FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.18 Relationship between tube voltage and image contrast on chest

FPD images with normalization processing.

Fig.17 Effects of normalization processing on chest FPD images taken at different tube voltages. (a) 60kV (b) 80kV (c) 100kV (d) 120kV

たときの画像コントラストを示す。図より,撮影管電

圧が高くなると胸部のコントラストは僅かに低下す

る程度であり,正規化処理により補正が行われている

こと分かる。つまり,胸部においては正規化処理によ

り,管電圧による肺野や血管などの軟部組織の被写体

コントラストの低下を補正することが可能であるこ

とを意味している。 本研究に用いた間接変換型 FPD システムは,CR 撮

影システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質

特性を有し Fig.7 に示す DQE より撮影線量を 50%程

度低減できると考えられる。したがって,過度の X 線

量の増加は,患者被ばく線量の増加を招くだけであり, 使用する検出器の画質特性を加味して撮影線量の最

適化を図ることが重要である。 撮影管電圧は, デジタルシステムに移行した現在

でも,増感紙/フィルムを使用していた条件と変わっ

ていない 3,5)。これは,被写体コントラストが撮影管

電圧により異なることが要因と考えられる。しかし,

デジタルシステムでは,撮影部位により異なるが撮影

管電圧の違いによる被写体コントラストの低下を画

像処理により補正し,最終的な画像コントラストを調

整することが可能である。画像処理によりどの程度の

被写体コントラストの低下を補正できるかが重要な

点であり,デジタルシステムに適した撮影管電圧の検

討が今後の課題と言える。

Fig.15 Effects of normalization processing on wrist FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.16 Relationship between tube voltage and image contrast on wrist

FPD images with normalization processing.

Fig.17 Effects of normalization processing on chest FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.18 Relationship between tube voltage and image contrast on chest

FPD images with normalization processing.

Fig.18 Relationship between tube voltage and image contrast on chest FPD images with normalization processing.

たときの画像コントラストを示す。図より,撮影管電

圧が高くなると胸部のコントラストは僅かに低下す

る程度であり,正規化処理により補正が行われている

こと分かる。つまり,胸部においては正規化処理によ

り,管電圧による肺野や血管などの軟部組織の被写体

コントラストの低下を補正することが可能であるこ

とを意味している。 本研究に用いた間接変換型 FPD システムは,CR 撮

影システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質

特性を有し Fig.7 に示す DQE より撮影線量を 50%程

度低減できると考えられる。したがって,過度の X 線

量の増加は,患者被ばく線量の増加を招くだけであり, 使用する検出器の画質特性を加味して撮影線量の最

適化を図ることが重要である。 撮影管電圧は, デジタルシステムに移行した現在

でも,増感紙/フィルムを使用していた条件と変わっ

ていない 3,5)。これは,被写体コントラストが撮影管

電圧により異なることが要因と考えられる。しかし,

デジタルシステムでは,撮影部位により異なるが撮影

管電圧の違いによる被写体コントラストの低下を画

像処理により補正し,最終的な画像コントラストを調

整することが可能である。画像処理によりどの程度の

被写体コントラストの低下を補正できるかが重要な

点であり,デジタルシステムに適した撮影管電圧の検

討が今後の課題と言える。

Fig.15 Effects of normalization processing on wrist FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.16 Relationship between tube voltage and image contrast on wrist

FPD images with normalization processing.

Fig.17 Effects of normalization processing on chest FPD images

taken at different tube voltages. (a)60kV (b)80kV (c)100kV (d)120kV

Fig.18 Relationship between tube voltage and image contrast on chest

FPD images with normalization processing.

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143間接変換型 Flat Panel Detectorシステムの画質特性の観点からみた撮影条件の検討

撮影管電圧が高くなるほど低くなった.これは,人体を構成する骨や軟部組織の質量減弱係数が,X線エネルギーが高くなるほど小さくなり,被写体コントラストが低下するためである.特に,骨の質量減弱係数は管電圧に強く影響を受けるため,被写体コントラストの低下は大きくなる. 一方で,デジタルシステムは,画像処理の1つである正規化処理により濃度補正と画像コントラスト補正が可能であり,この処理により管電圧による被写体コントラストの低下を補える可能性がある.Fig.15および16に撮影管電圧を変えて手関節を撮影し , 正規化処理を行ったときの画像と画像コントラストを示す.図より,撮影管電圧が高くなるほど手関節のコントラストは低下し,正規化処理を行っても補正ができていないことが分かる.つまり,正規化処理では管電圧による骨の被写体コントラストの低下を補正することができないことを意味している.Fig.17および18に撮影管電圧を変えて胸部撮影し,正規化処理を行ったときの画像コントラストを示す.図より,撮影管電圧が高くなると胸部のコントラストは僅かに低下する程度であり,正規化処理により補正が行われていること分かる.つまり,胸部においては正規化処理により,管電圧による肺野や血管などの軟部組織の被写体コントラストの低下を補正することが可能であることを意味している. 本研究に用いた間接変換型 FPDシステムは,CR撮影システムより,解像特性,ノイズ特性に優れた画質特性を有し Fig.7に示す DQEより撮影線量を50%程度低減できると考えられる.したがって,過度の X線量の増加は,患者被ばく線量の増加を招くだけであり, 使用する検出器の画質特性を加味して撮影線量の最適化を図ることが重要である. 撮影管電圧は , デジタルシステムに移行した現在でも,増感紙 /フィルムを使用していた条件と変わっていない3,5).これは,被写体コントラストが撮影管電圧により異なることが要因と考えられる.しかし,デジタルシステムでは,撮影部位により異なるが撮影管電圧の違いによる被写体コントラストの低下を画像処理により補正し,最終的な画像コントラストを調整することが可能である.画像処理によりどの程度の被写体コントラス

トの低下を補正できるかが重要な点であり,デジタルシステムに適した撮影管電圧の検討が今後の課題と言える.

4.結語 本研究では,間接変換型 FPDシステムの入出力特性,解像特性,ノイズ特性,量子検出効率および管電圧特性について CRシステムとの比較を行い,検出器の画質特性の観点から撮影条件について考察した. 1)間接変換型 FPDシステムは,CRシステムより,解像特性,粒状性に優れた画質特性を持ち,DQEの比較において撮影線量を約50%低減可能であった.2)粒状性や被写体コントラストは撮影管電圧により影響を受けることが明らかとなった.3)デジタルシステムに使用する撮影条件は,検出器の画質特性を考慮し,使用する撮影管電圧を検討することで,低被ばくで高画質の画像を得ることが期待できる.

謝辞 本研究に際し,ご助言を頂きました産業医科大学病院放射線部,黒木燎平氏,岩瀬賢祐氏,山下翔正氏並びに放射線部諸兄に感謝申し上げます.

【参考文献】1)市川龍資,日本の国民線量 ―特に外国との比較―,

Radioisotopes, 62(12), 927-938, 2013.2)UNSCEAR 2000 REPORT,SOURCES AND EFFECTS

OF IONIZING RADIATION3)浅田恭生,鈴木昇一,小林謙一,加藤英幸,五十嵐隆元,塚本篤子,& 坂本肇,X 線診断時に患者が受ける線量の調査研究 (2011) による アンケート結果概要─ 撮影条件に関する因子を中心に─,日本放射線技術学会雑誌,68(9),1261-1268,2012.

4)岸本健治,有賀英司,石垣陸太,今井方丈,川本清澄,小林謙一,ディジタル画像の画質と被ばくを考慮した適正線量の研究,日本放射線技術学会雑,67(11),1381-1397,2011.

5)浅田恭生,鈴木昇一,小林謙一,加藤英幸,五十嵐隆元,塚本篤子,X 線診断時に患者が受ける線量の調査研究 (2011) による線量評価,日本放射線技術学会雑誌,69(4),371-379,2011.

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144 村上 誠一・髙木 剛司・大田 哲

6)Schaefer-Prokop C, De Boo D, Uffmann M, Prokop M. DR and CR: Recent advances in technology, European journal of radiology, 72, 194-201, 2009.

7)Japan Network for Research and Information on Medical Exposures. (2015). Diagnostic Reference Levels Based on Latest Surveys in Japan- Japan DRLs 2015.

8)日本の診断参考レベル(2020年版). http://www.radher.jp/J-RIME/report/DRL2020 

9)Gibson DJ, Davidson RA. Exposure creep in computed radiography: a longitudinal study. Academic radiology, 19, 458-462, 2012.

10)ICRP Publication 93. Managing patient dose in digital radiology, 2004.

11)Shepard SJ, Wang J, Flynn M, Gingold E, Goldman L, Krugh K, et al, An exposure indicator for digital radiography: AAPM Task Group 116 (executive summary), Medical physics, 36, 2898-2914, 2009.

12)IEC62220-1: Medical electrical equipment ‒Characteristics of digital X -ray imaging devices part1:Determination of detective quantum efficiency, International Electrotechnical Commission, 2003.

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