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法人税の費用性の検討 117 法人税の費用性の検討 一会計主体論を中心 として 〇nTheNatureofCorporateIncomeTaxExpense 1.問 題 の 所 在 わが国の法人税の会計表示上の取 り扱いについては,す でに決着がついてい る。 す な わ ち,当 期 純 利 益 は,税 引 前 当 期 純 利 益 か ら当 期 の 負 担 に属 す る法 人 税額 住 民 税 額 を控 除 して 算 定 表 示 す る。 こ の うち法 人 税 額 に つ いて は,国 税 通則法弟15条において事業年度終了の時に納税義務が成立する。言い換えれ ば,こ の 貸 方 側 の 法 人 税 額 は,決 算 時 に既 に確 定 して い る納 税 義 務 を 示 す 確 定 債務項 目であ る。 したが って,商 法 にお いて もか か る項 目は,貸 借 対 照表 に お け る負 債 の 部 の流 動 負 債 に記 載 しな け れ ば な ら な い。 しか しな が ら,わ が 国 に おいては借方側の法人税の性格にっいては,解決を見ないまま今日に至ってい る。 す な わ ち,米 国 の 会 計 慣 行 は,す で に法 人 税 の性 格 を費 用 と考 え て い る の に対 して,わ が 国 は,「費 用説 」 と 「利益 処 分説 」 とが い まだに対 立 して い る。 この理 由 に 関 して,制 度 に お い て は,上 記 両 説 の折 衷 法 的 解 決 法 を 採 用 し ,形 式 面 だ け を充 実 す る に と ど ま った か らで あ る。 す な わ ち,法 人 税 は経 常 費 用 に も特別 損 失 に もいず れ に も属 しな い特 殊 な項 目1)と いった現実的な解決を与え た故 で あ る。 本来,法 人税が,原 価 費用 あるいは利益処分項 目で あるのか という問題2) は,そ れ らの概念 を明 らか に して こそ,意 義 が あ るので あ って,そ の結 果 だ け を と らえ て,法 人 税 の性 格 を 論 じよ う とす る こ と は,非 合 理 的 で あ る。 ま た税 を 課 され る法 人 を ど の よ うに理 解 した らよ い の か と い う企 業 観 の 問 題 は,法 人

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一 法人税の費用性の検討一117

法人税の費用性の検討

一会計主体論を中心として一

〇nTheNatureofCorporateIncomeTaxExpense

佐 藤 渉

1.問 題の所在

わが国の法人税の会計表示上の取 り扱いについては,す でに決着がついてい

る。すなわち,当 期純利益は,税 引前当期純利益から当期の負担に属する法人

税額 住民税額を控除 して算定表示する。 このうち法人税額については,国 税

通則法弟15条 において事業年度終了の時に納税義務が成立する。言い換えれ

ば,こ の貸方側の法人税額は,決 算時に既に確定 している納税義務を示す確定

債務項 目である。 したが って,商 法において もかかる項 目は,貸 借対照表にお

ける負債の部の流動負債に記載 しなければならない。 しかしなが ら,わ が国に

おいては借方側の法人税の性格にっいては,解 決を見ないまま今日に至ってい

る。すなわち,米 国の会計慣行は,す でに法人税の性格を費用と考えているの

に対 して,わ が国は,「費用説」と 「利益処分説」とがいまだに対立 している。

この理由に関 して,制 度においては,上 記両説の折衷法的解決法を採用 し,形

式面だけを充実するにとどまったか らである。すなわち,法 人税は経常費用に

も特別損失にもいずれにも属 しない特殊な項目1)といった現実的な解決を与え

た故である。

本来,法 人税が,原 価 費用あるいは利益処分項 目であるのか という問題2)

は,そ れ らの概念を明 らかに してこそ,意 義があるのであって,そ の結果だけ

をとらえて,法 人税の性格を論 じようとすることは,非 合理的である。また税

を課される法人をどのように理解 した らよいのかという企業観の問題 は,法 人

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118 一 経 理 知 識一一

税並びに企業会計の領域 においても重要な問題である。

本稿は以上に掲げた法人税の性格に関する諸問題点を出発点 として,そ れら

が現行法人税上においてどのように取 り扱われているかを把握 し,次 に法学理

論の伝統的アプローチである法人実在説を中心に検討 し,最 後に会計主体論に

おける法人税の性格にっいて吟味検討を加えることとする。

皿.現 行税制から検討 した法人税

わが国においては,企 業利益(所 得)を 課税標準とする税として,法 人税,

住民税(厳 密 には法人税割にっいては法人税額を課税標準とする),事 業税の三

種類をあげるが,法 人税及び住民税は,当 期税引前利益か らの控除項目とされ,

また事業税は販売費および一般管理費として営業費用又は営業外費用の一項 目

として取 り扱われている。

税法 上,「所得」を課税標準 として課する租税は広 く所得税 と呼ばれ,法 人税

もこの範疇に包含され るという考えが広義の考えであるが,現 行税制では,狭

義に捉え個人の所得(民 法上の組合の所得 も含む)に 対 して課する税を所得税

とし,法 人税と区別を している。

さて期間損益計算 は,税 引前当期利益から法人税等を控除 して,当 期利益を

算出することによって帰結する。この場合において,法 人税等 とは一般に法人

税及び住民税を指す3)。一方,現 行法人税法規定では,課 税所得の計算は益金か

ら損金を控除 して行われる。具体的には,企 業会計の一般に公正妥当と認めら

れた基準によって計算 された当期利益か ら法人税法上の 「別段の定め」による

調整を行 って課税所得を算出するのである。

この別段の定めは,大 きく次の二つに区分される㌔ 第一一には,当 該条文が企

業会計の特則 となっているものがあり,第 二には,企 業会計上の取扱を確認 し

つつ,税 法上その適用範囲や限界を明確にするものとにわかれる。したがって,

当該論点である法人税額等の損金不算入制度は前者に該当する。すなわち,法

人税法においては,法 人税の性格を,企 業会計上では費用と考えるが故に,「別

段の定め」をもって主に課税技術論の兼ね合いか らその損金性 を否認 してい

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一一法人税の費用性の検討一119

る。 したがって,有 価証券報告書においては,法 人税等は,翌 期に支払わなけ

ればならない金額を計上 している。 しかしなが ら,費 用項目と考えなければ,

合理的な金額 によらなくてもよい5)。すなわち,利 益は税引前当期利益6)で決着

がついているか らである。 しか しながら,現 行会計において,処 分可能利益を

算定するには,税 引前当期利益か ら誘導された納付期限までに納付する税額を

正確に算定 して,期 間利益を求めなければならない。すなわち,そ れが利害関

係者に対する有用な会計情報の提供になるか らである。

ここで問題なのは,む しろ租税法による租税債権の成立と税額の確定の時期

であろう。すなわち,国 税に関する法律の定める手続 きにより,そ の国税につ

いての納付すべ き税額が確定 される国税である法人税 は,課 税要件の充足に

よって租税債権が成立す るとはいっても,そ れは,単 に租税債権が抽象的に成

立 しているだけで,未 だ租税債権の具体的な内容である税額 は確定 しておら

ず,租 税債権が具体的に成立 しているとはいえない7)ということである。すなわ

ち,前 章で述べたように,事 業年度の終了の時に租税債権が成立する訳である

が,は た して具体的な数値が財務諸表上に計上することができるか どうかであ

る。民法の思考か らすると,債 権の成立は次に掲げる三つの条件を充足するこ

とが必要 とされる8)。すなわち,第 一に給付は適法であり,か っ,社 会的妥当性

のあるものであることを要する9)。第二に給付 は実現可能なものであることを

要する。第三に給付の内容は確定 し得 るものであることを要する。すなわち,

給付の内容 は債権成立時に具体的に確定する必要はないが,履 行時までにこれ

を確定 し得 るだけの標準が定まっていなければならない。以上の点から,財 務

諸表上において当該事業年度の翌期に,具 体的に納付することとなる税額を当

該事業年度に計 トすることにっいては,何 ら問題がないものと思われる。む し

ろ租税法上は,時 効の適用をうける徴収権を有するか否かの問題であって,こ

こで論 じる問題ではないことになる。

次に現行の法人税法においては,利 益に基づいて課される税金は,前 述 した

通 り損金の額に算入することはできない剛。 この場合の法人税額は,課 税所得

に一定率を乗 じて算出されるのであるが,こ れを して利益を基 とする税金は,

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120 一 一経 理 知 識一

損金算入 しないのであれば,次 の疑問が生 じる。すなわち,当 期利益 に係 る税

金 は個々の取引の税 の累積額 であるということである。 すなわ ち,収 益 は税負

担 を増加 させ,費 用 は税負担を減少 させ る働 きがある。具体的 には,売 上に一

定率 を乗 じて,プ ラスの税金を算出 し,売 上原価に一定率 を乗 じてマイナスの

税金 を算出す るといった具合である。 したが って,や や変則的 な方法ではあ る

が,売 上 との対応関係を考え られな くはない。 このような個々の取引は,ま っ

た く税金を考慮せずに考え ること自体不可能である。 しか しなが ら,法 人税法

においては税金の会計上の性格 は,ど うあれ損金の額 に算入 しないのである。

この理 由は,第 一・には法人税 は,そ の所得の稼得は国 の行政等 による保護の結

果で もあるので,そ の利益に国が参加 し,利 益 の一部 の配分を受 けるものであ

るとの考え方(利 益参加説)も あるので,収 入を得 るための経費ではな く,得

た利益の分配 と して,損 金に算入 されない。第二には,法 人税等 を損金に算入

す ると,所 得金額が決 ま らないと法人税額 が決定 されず,し か も,法 人税額 が

決定 しないと所得金額が決定 しない11)という技術的な理 由による ものであ る。

しか しなが ら,こ の場合において,第 一 の理由に関 しては,現 在 の自由主義経

済体制では,少 々不都合な考え方ではないか と言え る。すなわち,現 在の経済

活動においては,市 場の算入及 び撤退 は原則 として自由であることか ら,何 ら

かの政府 の保護下 にあ る企業 は,一 部例外 を除 き無い ことになる。したが って,

この考え方 は支持 され得ず,主 に租税政策の見地か ら考え ると第二 の理由が強

い ものと思われる。すなわち,次 の図表 が示す通 り,毎 期の法人税額控除前課

税所得が一定であって も,最 終 の法人税額 は,毎 期変動を きたす結果 にな る。

これは国家歳入の三割弱を占める法人税額が毎期波動 することは,国 家の歳入

の確定 に不都合 とな り,重 大な問題を引 き起すか らである。

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一 法人税の費用性の検討一 121

法人税額を損金算入 した場合の税額の波動関係

年度 1 且 皿 w V

法人税額控除前の課税所得金額 100 100 100 100 100

法人税額控除後の課税所得金額 100 50* 75** 62 69

法 人 税 額 50 25 38 31 35

*ll年 度の 「法人税額 控除後の課税所得金額50」 は,「控 除前所得金額100」

か ら1年 度 の 「法人税額50」 を差引 いて求めた金額で あ る。

**前 年度(fl年 度)の 法人税額 を控除 して求め られた金額で あ る。

※法人税額の計算上,税 率を50%と している。

(出典:武 田隆二 『法人税法精説』森山書店,1991年,p.392)

さらに財政学の観点か ら人税,物 税の区別をもって費用であるか否かを区別

する場合がある。すなわち,こ こで問題にするのは法人税(損 金不算入)と 事

業税(損 金算入)の 区別である。

法人税は,所 得税 と同じく個々人の人的事情 ・担税力を中心に考慮 して課さ

れる人税 と言われ,ま た事業税は法人の行 う事業 と道府県との間の応益関係に

着目して課税される物税であると言われている。

電気供給業,ガ ス供給業,生 命保険事業及び損害保険事業を除 く事業にあっ

ては,各 事業年度の所得の金額を事業税の課税標準 とする(地 方税法第72条 の

12)。これは,法 人税の課税標準と同 じ課税標準を利用 して課税金額を算定する

にもかかわらず,事 業税が物税であるから損金に算入することができ,法 人税

が人税であるか ら損金に算入することができないといったことが税法の考え方

である。 また,事 業税が物税であるといいながら,実 際には人税特有の給付能

力課税(税 率にっいても段階的税率を設けるなど人税的色彩が表われている)

としての性格をおびている12)ということは一一貫性がないと言わざるを得ない。

結局,こ れは税の見方を財政学的に分類 したものであって会計上の税金の性格

について論 じたものではないため,会 計に対 しては何 ら影響を及ぼすものでは

ない。

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122 一一 経 理 知 識一

また事業税の現行法人税法の取扱 いに関 して,問 題点 は損金算入時期 にあ

る。すなわち,事 業税 は,企 業会計上当期の費用と して認識するが,税 法上は,

原則として納税申告書が提出された期の損金 として認識するのである。具体的

には,当 期に課税所得の計算上損金の額に算入 される税額 は,前 期分の事業税

と当期中間申告分の事業税である。 したが って,当 期確定申告分の事業税は,

当期の課税所得計算において,当 該事業税の額を損金に算入 した場合には当該

損金算入額 は否認 されることになる。 これが導かれる根拠 は,法 人税基本通達

9-5-1に よる申告納税方式による租税 は,納 税申告書に記載された税額につ

いては,当 該納税申告書が提出された日の属する事業年度 とするという文言で

ある。すなわち,会 計的に考えれば,事 業税は,企 業の活動目的に適合 し,企

業にとって,必 要不可欠の支出である以上,費 用であることは異論のないとこ

ろである。 しか しなが ら,損 益計算上,事 業税の中間納付額については,仮 払

金であり,事 業年度の終了時にその仮払金の清算がなされ追加納付かあるいは

還付 され ることになり,当 期の事業税額が確定す ることとなる。問題点は,事

業年度終了時に,既 に課税所得を合理的に計算す ることができる根拠が財務諸

表 によって示されているのにかかわ らず,事 業税の中間申告分については,未

確定のまま当期の租税公課といった勘定科 目で損金経理を認められていること

である。

最後にペイ トンW.A.Patonと リトル トンA.C.Littletonに よれば,以 ドの

ように要約 される13)。すなわち,支 払われた税金 は政府か ら受け取 られた特定

の役務提供 とめったに一致 しないが,税 金は現行 の状況 ドで要求 され,し た

が って営業費用として考えられる。 ただ し,例 外 としては特 に純利益に課せ ら

れた税金 と特別な便益の原価をまかな うための不動産に関わる税額の資本化で

ある。この引用で問題なのは,純 利益 に課せ られた税金 というくだ りであるが,

どこに課税標準を求 めるかによって,費 用であったり,費 用でなか ったりする

のは,理 論的に考えても,疑 問である。すなわち,政 府の課税態度 は,最 終的

には,歳 入を確保する点にあると考えれば明 らかに納得がいくであろう。むし

ろ租税政策的には,現 行税制のように懲罰的な意味合いを もって罰金及び科料

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一 法人税の費用性の検討一 123

等を損金 に算入 しないあるいは本来企業か ら支出されるべ きではない第二次納

税義務に係 る納付税額を損金に算入 しないといった こと等は理解することので

きる範囲内である。 また後者の問題は,取 得原価に算入するべきかどうかの問

題")であって,原 則 として他の費用項 目と同様に取 り扱えばよいことになる。

皿.法 人実在説の意義

企業課税すなわち法人所得に対する課税のあり方をめ ぐっては,誰 が納税主

体 となりうるかという点で幾度となく論争が繰 り返されてきた。それは,納 税

主体を法人の実体である構成員の集合で,し か も最終的には個人出資者にまで

分解 されたものの集合 と考える15怯夫擬制説的な考え方と納税主体をその構成

員 としての資本主である自然人 とは独立 に法人その ものを一個 の納税主体 と考

える16怯人実在説的な考え方との問題で もあった。 しか しなが ら,経 済の複雑

化,発 展,複 合化か ら税制がますます混迷度を加速 しているのも事実である。

そこで本章においては,法 人税の課税根拠論における伝統的アプローチでもあ

るこれ ら法人擬制説と法人実在説を考察 する17)。

すなわちこの二説のどち らかを採用するかによって,企 業活動の成果である

所得の性格やその帰属関係が異なって くるか らである。 しか しなが ら,法 人擬

制説を取 り上げる際には,ほ とんど受取配当金の二重課税の問題を解決す る手

段 として説明されている18)のである。 すなわち,受 取配当は法人の純資産の増

加を来たすので,企 業会計上は収益の額を構成するが,現 行法人税法は,法 人

擬制説を基礎 とし,法 人の所得は結局配当されて所得税が課税されるという想

定のもとに,個 人株主 については配当控除,法 人株主については受取配当の益

金不算入の措置を講 じて,同 一所得に対 して二重に課税 しない建前をとってい

る19)e

そ もそ もこの法人擬制説の考え方は,昭 和25年 のシャープ税制において確

立されたもので,こ のね らいとするところは,課 税上配当所得を優遇すること

によって,人 々の投資意欲を助長 し,も ってわが国の資本蓄積に資 したいとい

うことにあったといわれている。 しか しなが ら,そ の後 シャープ税制は,わ が

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124 一 経 理 知 識一

国の実情 とは不合するところとなり,現 在の所得課税は,法 人実在説の方向に

ある「o)。また法人擬制説が法人税の課税根拠として採用 されるな らば,推 論上

少な くとも企業観の視点か らは法人税の存在を正当化することができないばか

りか,そ の必要性 もな く,積 極的に法人税の存在そのものが否定 されることに

なる21>。さらに言えば,法 人税が所得税の前取 りである(具 体的には法人は出資

者の出資により設立 され,利 益及び財産 は,最 終的には出資者に帰属するもの

であることか らすると,法 人所得に課税することは,そ の出資者 に帰属する所

得の前取 り的な課税 と考え られないことはない)と すれば,資 本主に対する課

税の源泉徴収であ って,税 収 の取 りはぐれを防 ぐ意味 しか もたないことにな

る。結局,歳 入確保の便法に過 ぎないことになる。

さらに,長 谷川忠一教授によれば,擬 制説 も実在説 もともに,そ の時代の財

政政策や租税政策の必要か ら,そ の時代に適応 した税制を基礎づけるたあの概

念であって,企 業の基本的な性格を理論づけるものではない盟)と断言 している。

この考えによると,税 法自体が課税することあるいは歳入を確保することに重

きをおいて,そ の課税根拠を後付するという形で決定 していることになる。す

なわち課税の理論性がきわめて疑わ しいことになる。

一方,両 説を課税所得計算的な立場で検討すると次のようになる。すなわち,

法人擬制説的な考え方でい くと,課 税所得計算をする前の段階においても様々

な矛盾が露呈する。たとえば法人税の費用性への疑問が生 じる。反対に法人実

在説的考え方でいけば,た とえば配当に関する法人税 と所得税の間の二重課税

の調整 は必要なく,ま た法人税 は法人独自の存在に対 して課税するのが正当で

あ り,当 該法人税 は利益を算定するまでに控除すべき費用 と考えることができ

る。 さらに課税の公平 という観点力・らも超過累進課税の導入 も容認 されること

になる。すなわち,法 人実在説によれば,法 人は法人格を有 し独立の経済主体

として経済活動を行 っているという面か らみれば出資者の所得課税 と関係させ

ることな く独立 にその所得に課税 してよい23)ということになる。

さらに,法 人税の場合,特 に法人実在説においては,そ の論拠が主として利

益説,特 権説,社 会費用配分説等にあるのであるから,法 人が国家か ら享受す

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一 法人税の費用性の検討一125

る利益や特権の対価として,あ るいは社会費用の分担 として支払 う法人税額

は,ま さに当該法人の存続 と利潤獲得に通常必要な経費として損金性が認めら

れて然るべきと解 される2㌔すなわち,利 益獲得のために,社 会財を使 う利用の

対価 として支払 う税金 は,損 金性を有するのである。

利益説又は特権説によれば,い わゆる応益負担の原則をもって,法 人税の課

税根拠 とする。すなわち,国 家が直接間接に提供するいっさいの行政サー ビス

によって,企 業の発展があるところから,そ の反対給付 としての利益又は特権

の代償 として租税を納付するべきであるという考え方である。 しか しなが らこ

れらの説には前章で触れたように反論 も多い。すなわち,法 人が国家か ら受け

る利益は,政 府がその政策を実行するに当たって偶発的に付随するものに過 ぎ

ない,あ るいは当該利益は,各 法人に割り当てる個別的な利益ではなく一般的

な利益であること等鋤である。 一方,社 会費用配分説において も応益負担の原

則に課税根拠を置く。すなわち,法 人は政府から受 けるサービスの対価及び企

業活動に伴 う公害防止等の社会的費用を納めるべきであるという考えである。

結局,こ れ らの課税根拠の薄弱なのは,企 業が受ける社会的サービスと企業が

負担する租税との相関関係を明確に示す指標があるわけでなく,ま たその租税

を法人の所得から支出 しなければな らないとする根拠にも乏 しいという鋤こと

が言えるのではないか。

したが って,こ の場合の解答は,「明確に示す指標」が,期 間純利益であり,

「根拠 に乏 しい」 ことに関 しては,「応分の費用を負担するといった社会参加費

用 という根拠」が考えられる。

以上の ことから現実の企業活動の発展を見るとやはり法人実在説の意義が認

められるものと考える。

IV.会 計主体論から検討 した法人税の性格

企業会計上,法 人税の性格を考えるにあたっては次の二点が重要 になる。す

なわち第一点 として費用とは一体何であるかということと第二点 として会計主

体をいずれに求めるかである。なぜならば,会 計主体をある一つの観点に確定

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126 一一経 理 知 識一

することによってその費用の範囲が異なるということである。すなわち,費 用

の概念をおおまかに捕えた上で,誰 が会計機能を遂行するのかを確定すること

である。 これはどのような会計主体論を採用 しても,株 式会社それ自体は制度

であ って,自 発的には行動できない擬制体である。究極的には,人 間が会計職

能を遂行するのは,事 実である。それはそれとして認識 しなが ら,企 業の原初

的形態が一人の個人か らはじまって現在では個々人の集合形態である現代企業

の典型 といわれる大規模企業に至るまで混在化 しかっ複雑化 している。つまり

個人企業であれば,そ の個人の死亡 により企業の活動が停止す るわけである

が,現 代においては企業を,継 続企業を前提 として,株 主の寿命に依存するこ

とな く永遠に生 き続 ける生命体 と考えている。 このような企業観を踏 まえて,

法人税の性格を会計主体論を通 して考察するものとす るゴ

費用 とは,実 体の進行中の主要なまたは中心的な営業活動を構成す る財貨の

引渡 しもしくは生産,用 役の提供,ま たはその他の活動の遂行による実体の資

産の流出その他の費消 もしくは負債の発生(ま たは両者の結合)で ある。以上

のように費用は,実 体の進行中の主要なまたは中心的な営業活動の結果として

発生 したまたは発生するだろう実際の現金流出額 または期待された現金流出額

(またはその等価額)を 表す。この流出する資産 もしくは使用される資産 または

発生する負債には,様 々な種類がある27)が,たとえば引き渡 され,あ るいは生産

された製品の単位,使 用された従業員の用役,事 務所用建物を照 らす電気のキ

ロワット時ない しは当期利益に対する税金が掲 げられる。 この場合注意 しなけ

ればな らないのは,概 念上は,大 部分の費用は,負 債を増加 させるのではな く

て資産を減少させるのである。 しか しなが ら,一 部税金その他の費用 に関 して

は直接負債の発生か ら生 じる2S)ということである。 また税 として支払われた金

が政府か ら受ける特定の用役と関係を持 っていることはむ しろまれだが,現 実

の状況の もとではこれ らも必要であり,そ れゆえ営業上の費用 と考えて差支え

ない鋤といえる。

さて現行の会計の考え方は,小 規模企業にとっては,資 本主理論を強調 し,

一方大規模株式会社企業にとっては企業主体理論を強調する鋤。 すなわち会計

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一 法人税の費用性の検討一 127

主体論が個人企業や組合企業の時代には,資 本主理論が適合 し,経 済の発展 と

共に大規模企業が台頭 し,そ の結果として企業主体理論がそれにとって代った

というものである。企業規模が大 きくなればなるほど当該企業に関わる資本主

である投資家は,企 業を単なる投資対象 としかみないようになる。 しか しなが

ら一面では私知所有関係を基盤 としなが ら,他 面ではその社会的ないし公共的

性格を増大させている31)のである。 かかる理由すなわち企業がその内側に多面

性をあわせ もっという理由か ら,あ る時は資本主理論の立場から,ま たある時

は企業主体理論の立場か ら個々の会計事象を考察するのは,い たず らに理論を

混乱させる結果 となる。 したが うて,本 章では,そ れぞれの主体論の立場か ら

法人税の性格を検討することとする。

資本主理論の基本原理 は,〔A(資 産)-L(負 債)=P(資 本主持分)〕 の等式

で表現 される。 したが ってすべての会計事象がこの等式で理解される。資産 は

資本主の積極財産であり,負 債 は資本主の消極財産である。両者の差額である

資本は,資 本主に帰属する正味財産である。収益はすべて資本主持分に組み込

まれ,そ の純財産の増加を示すことになる。結果として,資 本取引を除 く期末

資本の増殖分 は,資 本主に帰属する利益部分であり,こ れに対 して法人税を支

払い,そ の残余部分を分配配当 し,受 け取 った株主自身が所得税を課税される

ことになる。すなわち,同 一の利益に対す る 「二重課税」の問題は,法 人が法

人税を支払わなければならな くなり,そ の結果として株主が配当を受け取る時

に生 じるということは,資 本主理論の観点の当然の帰結である32}。したがって,

資本主理論か ら考えると税金,配 当,利 子が企業収益か ら一様に支払われるこ

とになるにもかかわらず,利 益処分か費用かといった点で常 に問題になる。

資本主理論は,株 式会社それ自体を株主から独立 した主体としては考えてい

ない。 しか しなが ら,法 人が自然人とは別の人格が与えられている以上,自 然

人に従属することはあってはな らないし,ま してや法人が資本主である個人の

所有物であ ってはな らない。さらに資本主理論か らす ると株主である従業員

は,そ の給料の費用性 も否認されることになる。すなわちそれは,自 分自身の

所得か らさらに費用を計上するものであるか らである。一面か らではあるが,

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128 一一経 理 知 識一

上述のように考え,さ らに,会 計の計算構造から考えて も,多 少無理があるよ

うに思われ る。

キャムVernonKamに よれば,資 本主理論の観点を採 ると,配 当は,所 得の

分配と考え,債 務に対する利子 と法人所得税は,費 用 と考えられる鋤としてい

る。すなわち資本主理論は,そ の会計計算構造が資産か ら負債を控除 し自己資

本を求め,こ の自己資本が株主持分である。その結果すべての会計計算が この

株主持分の増加に充てられ る。収益は株主持分の増加で費用 は株主持分の減少

である。換言すれば,株 主持分を減少 させるものは費用 と考えるのである。

法人が処分可能な利益 は,法 人税等を差 し引いたところの純利益である。す

なわち法人税等は,当 該法人の自由裁量によって,決 まるものではな く,当 該

法律にしたがって計算されたものを申告納付するものである。 したがうて,当

該事業年度終了時には,す でに法人税等の債務が確立 しているところか ら,法

人税等は,未 払金である。換言すれば,他 の経費と同様に収益か ら控除され る

費用 と考えられるのである。

これに対 して企業主体理論の基本原理 は,(資 産=持 分)の 等式を もって表現

される。 したが って所有主や債権者は,単 に資本金の提供者である持分保有者

として考え られる。 この企業主体理論によれば,債 権者と株主は,と もに持分

権者であって,利 益分配 ・危険引受 ・清算による財産分配になどについて異な

る権利を有す るに過 ぎない鵠)。すなわち,か かる点から両者を外部利害関係者

として解するため,金 銭を使 う支払 は,費 用である。 したがって,法 人税を,

費用と解するのである。その法人税 は,企 業実体がそれ自体で持 っている持分

の合計を減 じることになる鵠)。すなわち企業の持分合計を減 じるものは,費 用

と解するのである。以上のことから,こ の企業主体理論の もとでは,ど んな利

益でも企業実体の財産であり,配 当が宣言されてはじめて株主に対 して権利を

生 じせ しめるのである鋤。言い換えれば,株 主は,利 益はもちろんのこと特定の

資産に対 してでさえ何 ら請求権をもっておらず,配 当が宣言された時に資産の

合計や配当に対 して権利を有することになるが,こ れは所有権か らではな く,

契約上の同意 によって受けとる権利が生 じたにすぎない3T)。

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一一法 人税の費用性の検討一 一 129

この企業主体理論においては,少 なくて も二重課税の問題は存在 しない。そ

れは,株 主か ら分離 した実体であり,し たがって,当 然にそれぞれの実体がそ

れ自体の所得に基づいて所得税を支払わなければならないからである鋤。

一方,株 式会社の概念を社会的制度 として考えた場合(い わゆる企業体理論)

には,株 式会社は企業主体理論 と同様に資本の拠出者か ら分離,独 立 したと見

られるが,こ の社会的制度概念は,企 業の財務報告書が一般に公衆に向けられ

なければならないということを意味 している。 したが って,政 府機関の何 らか

の介入が生 じて来 るのであって,利 害関係者全体の代理 としての政府が所得の

半分の一助を担 うことになってくる。そこで,法 人税の賦課は社会の最終の利

益に対 して政府のいくっかの階層 によって供給 される役務に資金を調達するた

めに,企 業利益の相当な部分を吸い上げる方法として考えられる。すなわち,

この観点か ら,法 人税は政府機関の媒体を通 して社会の構成員である企業の受

益者に対する企業利益の配分 として考え られる鋤ことになる。

以上会計主体論か ら法人税の性格を概括 してきたが,要 するに,資 本主理論

及び企業主体理論いずれの見解をとって も,基 本的には法人税の性格は費用 と

解す ることができる。すなわち,残 余の利益をめ ぐってはその持分の性格にっ

いて両説異論があるものの,法 人税の性格 を費用 と考えることにっいては異論

がない。 すなわち法人税が費用である籾ということについては,米 国において

は通説であ り,会 計の一般慣行になっている。

V.お わ りに

以上検討 してきたように,法 人税の性格 を法人税法上の伝統的アプローチで

ある法人実在説の立場か ら,ま た会計主体論の立場から,そ の法人税の性格が

費用であるのかあるいは利益処分であるのかをさぐって きた。われわれは,と

もすれば法人税 という課税所得計算 と法人税法の法規定 にとらわれるあまり,

法人税は損金不算入すなわち費用性はないと結論づけて しまっていた。制度会ノ

計の枠組みのなかにある法人税 といえども,独 立 してそれ自体で網羅的,完 結

的に体系づけ られているわけではな く,多 くの部分は,企 業会計原則を中心 と

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130 一一一経 理 知 識一一

する公正妥当な会計慣行を土台 としていることを忘れてはな らない。 したが っ

て法人税法 は公正妥 当な会計のよ りどころを無視 しては存在 しえないのであ

る。っまるところ企業会計に関わる基本的な理論を考察 してはじめてその解答

を得ることが可能であり,会 計主体論か ら光をあそて初めて法人税の性格が見

えて くるのである。すなわち法人税は,企 業が自国の経済社会に対す る社会参

加費用 として,企 業の所得に基づいて応分の負担をするといった意味を含めて

われわれに費用であるということを認識 させ るのである。

1)中 村忠 『新訂 現代会計学』 白桃 書房,'1982年,144ペ ー ジ。

2)本 稿 において,法 人税 の原価性 につ いて は言及 して いないが,西 村 幹仁 「法人

所得税 の会計上 の性格 と会計 主体 論{1)」 『彦 根論叢』 第237号,1986年68--75

ペー ジに詳 しい。

3)企 業 会計原則 は,法 人税額,住 民税額 等 と して お り,こ の 「等 」に関 して 当期

の所得 に課せ られ る事 業税額 が含 まれ るとす る説 もあ るが,事 業税 は費用 と して

計 上され るべ き ものであ る ことか ら,財 務諸表規 則第9条 の5で は,税 引前 当期

純利益 金額 か ら控除 す る税金 は,当 該事 業年度 の法 人税並 び に都道府 県民税及 び

市町村民 税(以 下 「住民 税」とい う。)に 限定 してい る。宇 南山英 夫 『新企業会計

原則精解 』中 央経済社,1975年135-136ペ ー ジ。一 方商法計算 書類 規則第43条

にお いて は,税 引前 当期利益 か ら控 除すべ き法人税 その他 の税 の うち 「その他 の

税」 に住民税 の ほか,事 業 税 を含む見解 が あ るが,企 業会計原 則 と平灰 を合 せる

意味 もあ り.事 業税 は これに含 まれな い と解 す る。 これ に対 して米国 において利

益 を基礎 とす る税金 に は内国 税,外 国税,州 税 お よび地方税 が あ るが,こ の場合

わが国 の事業税 も原則 と して利益 を基礎 とす る税 金で あ るか ら,米 国式 の財務諸

表 を作成 す る際 には,当 然 に法人税等 の中 に含めな けれ ばな らな い。

4)中 村利雄 『法 人税の課税所 得計 算 〈改訂版〉 一その基本 原理 と税務調整 一』

ぎ ょうせ い,1990年,21-24ペ ー ジ。

5)番 場 嘉一・郎 「税効 果会計 と制度 的環 境」『企業会計』第28巻 第11号,1976年,

27ペ ー ジ。ハ

6)沼 田嘉穂博士は,そ の著書 『企業会計原則を裁 く 改訂増補版』同文舘出版,

1982年90-92ペ ージにおいて,法 人税等を純利益の分 与で あるとい う立場 か

ら,税 引前当期利益並びに当期純利益の用語上の会計慣行 に異論を唱えている。

すなわち,特 別損益の結果を もって,当 期純利益 とし,法 人税控除後の金額を税

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一 法人税の費用性の検討一 131

引純利益 とす ることである。この考え方は,損 益勘定ではあ くまで経営損益を集

計 してその結果 を純利益 と して計上す るとい うことであ る。

7)田 中次郎 『法律学全集ll租 税法』有斐閣,1968年,166ペ ージ。

8)吾 妻栄 『新訂 債権総論』岩波書店,1964年20-22ペ ー ジ。

9)た だ し税法で は,所 得の正 当性 は問われない。すなわち収入金額 または必要経

費等が適法,か っ有効 とされる場 合は もとよ り,無 効 または取 り消 しうべき行為

であ る場合 または不適 当な場合においても,当 該場合における経済的実質による

べ きことになる。たとえば,そ れが不法利得であって も,所 得であるかどうかは

実定法上 の所得概念 と して解決 され ることになる。 忠佐市 『租税法要綱 第10

版』森山書店,1984年117--118ペ ージ。

10)米 国の内国歳入法典 においては,州 税,地 方税及 び外国税で課税事業年度にお

いて支払われ又 は生 じたものは,事 業経費又は所得の稼得のために生 じた経費で

ある場 合にのみ控除で きるが,連 邦所得税等一定 の ものは租税公課又 は事業経費

として控除す ることがで きない。本庄資 『新版 アメ リカ法人所得税』財経詳報

社.1988年,247-248ペ ージ。

11)吉 牟 田勲 『新版 法人税法詳説 一立法趣旨 と解釈』中央経済社,1990年,231

ペ ー ジ 。

12)武 田 隆 二 『法 人 税 法 精 説 』 森 山 書 店,1991年, .393-394ペ ー ジ。

13)W.A.Patonan ,dA.C.Littleton;ANINTRODUCTIONTOCORPORATE

ACCOUNTINGSTANDARDS,(1967;rpt.AMERICANACCOUNTINGAS・

SOCIATION,1940),P.94,中 島 省吾訳 『会社 会計基 準序 説(改 訳版)』 森 山書店,

1958年,156ペ ー ジ。

14)不 動産 に関す る税額 の 資本 化の例 は,法 人税 基 本通 達7-3-3の2に 掲記 され

てい るが,た だ し,不 動 産取 得税,特 別土 地保有 税 とい った費用 は,た とえ固定

資産 の取 得 に関連 して支 出す る もの で あ って も,こ れ を固 定 資産 の取 得価額 に算

入 しな い ことが で きる と して い る。

15)富 岡幸 雄 『税務 会計学 〔第五版 〕』 森山書店,1985年,67ペ ー ジ。

16)同 上 書,68ペ ー ジ。

17)た だ し,こ の場 合 に以 上 の二つ の理 論 に よ って法人 税 の課 税根拠 論 が展開 され

て きたので あ るが,法 学 上 にお け る法人擬 制説 及 び法 人実在 説 とは,専 ら法 人 の

権利 義務 の主体 が 何で あ るか を論 じた ものに過 ぎない。したが って法人 税額 が費

用性 を有 す るか ど うか とい う問題 は,法 人 の権利 義務 に関 す る問題 とは何 ら関 係

な く,企 業 利益 の本 質論 か ら議論 され るべ き もので あ る(品 川芳 宣 『課税 所得 と

企業利 益』税務 研 究会 出版局,1982年,68ペ ー ジ。 そ こで,同 氏 に よ って,「 法

人個 人一体課 税 説」 と 「法人 独 立課 税説」 とが提 唱 され た。卑 見 と して は,法 学

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132 一 一経 理 知 識一一

上 の 用 語 と課 税 根 拠 論 と の 間 の 誤解 を避 け る た め に は,別 個 の 用 語 が考 え られ る

べ きで あ る。 しか し,法 人 擬 制 説 お よ び法 人 実 在 説 が 課 税 根 拠 を 明 らか に す る用

語 と して一 般 に採 用 され て い る こ と もあ り,い た ず らに混 乱 を招 く こ と に もな り

か ね な い た め,本 稿 に お い て は法 人 擬 制 説 と法 人 実 在 説 と を統 一 して使 用 して い

く。

18)ほ か に法 人 擬 制 説 的 な 考 え 方 は,法 人税 法 に お け る資 本 の 範 囲 に 見 られ る。す

な わ ち,法 人 税 法 に お い て は株 主 等 の 間 に生 じた取 引 に 資 本 が 限 定 され て い る の

で あ る。

19)中 村 利 雄,前 掲 書,279-280ペ ー ジ。

20)北 野 弘 久 『増 補 税 法 の 基 本 原 理 』 中 央 経 済 社,乍1963年,289-290ペ ー ジ。

21)高 尾 祐 二 「産 業 経 理 」 第47巻 第1号,1987年,80ペ ー ジ。

22)長 谷 川 忠 一 『税 務 会 計 入 門(十 四 訂 版)』 同 文 舘 出版,1982年,28ぺ;ジ 。

23)黒 澤 清 監 修,平 石 一 郎 稿 『税 務 会 計 体 系 第7巻 税 務 会 計 特 論 』 ぎ ょ うせ い,

19S5年,1ペ ー ジ。

24)品 川 芳 宣 『課 税 所 得 と企 業 利 益 』 税 務 研 究 会 出版 局,1982年,122ペ ー ジ。

25)同 上 書,82ペ ー ジ。

26)同 上 書82-83ペ ー ジ。

27)FASB,StatementsofFinancialAccountingCbnceptsNo.6,Elementsof

FinancialStatements,areplacementofFASBConceptsStatementNo.3

(incorporatinganamendmentofFASBConceptSStatementNo.2)De・

cember1985,pars80-81,平 松 一 夫,広 瀬 義 州 訳 『FASB財 務 会 計 の 諸 概 念 〈改

訳 版 〉』 中 央 経 済 社,1990年,326ペ ー ジ。'

28)Ibid.81(43)

29)W.A.PATONandA.C.LITTLETON,op.cit.,p.94.中 島 省 吾 『前 掲 訳 書 』

156ペ ー ジ。

30)VernonKam,AccountingTheory(NewYork:JohnWiley&sons,1990,

P.318.t'

31)罵 村 剛 雄 『会 計 学 一 般 原 理 』 白桃 書 房,1989年45-46〔 一中ジ。 した が って 同

教 授 は,今 日の 企 業 が 資 本 主 理 論 的 性 格 と企 業 主 体 論 的 性 格 を あ わ せ もっ と い う

理 由 か ら,会 計 主 体 論 の 展 開 に あ た って は,二 者 択 一 的 な ア プ ロ ー チで な く,そ

の統 合 的 な把 握 が 必 要 で あ る と して い る。 ハ32)VernonKam,op.cit.,p.304,'㌧

33)lbid.p.304.'ヘ ン ド リ ク セ ン に よ っ て も.同 様 の 見 解 が 見 られ る。EldonS.

Hendriksen,AccountingTheory,i965,水 田 金L監 訳,・ 村 上 仁 一 郎 担 当rヘ ン

ド リ ク セ ン会 計 学(下 巻)』 同 文 舘,1971年,217-218ペ ー ジ。

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一 法人税の費用性の検討一 133

34)

35)

36)

中 村 宣 … 郎 『利 益 計 算 論 』 同 文 舘 出 版,1984年,151ペ ー ジ。

VernonKam,op.cit.,p.309,

RichardG.Schroeder,LevisD.McCullers,&MyrtieClark,Accounting

Theory(NewYork:JohnWiley&Sons,1987),p.529.

37)VernonKam,op.cit.,p.307.

38)Ibid.,p.309,

39)RobertT.Sprouse,"TheSignificanceofConceptoftheCorporationin

AccountingAnalyses,"TheAccountingReview,(1957),pp.370-374.

40)AccountingPrinciplesBord,AccountingforIncomeTaxes,APBopinion

No.11,December1967,磯 部 秀 夫 訳 『ア メ リカ 公 認 会 計 士 協 会 税 効 果 会 計 』 関

東 図 書,1973年ll4ペ ー ジ に よ れ ば,「 法 人 所 得 税 は,税 金 を 課 さ れ る 所 得 を 稼

得 す る 企 業 の 費 用 で あ る。」 と述 べ られ て い る 。