こうこう かんこう...

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こうこう かんこう けんこう 令和元年度 第27回 全国高等学校生徒商業研究発表大会 令和元年11月20日(水) 埼 玉 会 館 新潟県立新発田商業高等学校 商業クラブ 生徒名 齋藤 はな 山﨑 夏々葉 上野 涼花 小熊 菜 月 高橋 香凛 川村 恒 輝 五十嵐 理紗 顧問名 山本 伸也 川上 顕宏

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Page 1: こうこう かんこう けんこう主な効果は、インバウンド客が増えることで、地 域の交流人口の増加も期待でき、初めての訪問か らリピートや移住につなげることで、人口減少ス

こうこう かんこう けんこう

令和元年度 第27回

全国高等学校生徒商業研究発表大会

令和元年11月20日(水)

埼 玉 会 館

新潟県立新発田商業高等学校

商業クラブ

生徒名 齋藤 はな 山﨑 夏々葉

上野 涼花 小熊 菜 月

高橋 香凛 川村 恒 輝

五十嵐 理紗

顧問名 山本 伸也 川上 顕宏

Page 2: こうこう かんこう けんこう主な効果は、インバウンド客が増えることで、地 域の交流人口の増加も期待でき、初めての訪問か らリピートや移住につなげることで、人口減少ス

第1章 現状分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1 1 はじめに

2 地方創生における観光の役割

3 新発田市の現状分析

第2章 新発田観光の求めることとは?・・・・・・・・・・・P4 1 観光とは?

2 まちづくりドラフト会議 for Youth(1)

3 〃 ドラフト会議 for Youth(2)

4 テーマ設定に向けて

5 地域振興局からの助言

6 見せたい観光資産を探る

7 観光ツアーの企画を考えよう!

8 観光ツアーで大切なことは

9 校内アンケート

10 ツアーをプランニングする

11 下見によるコースチェック

第3章 仮説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13 1 SWOT分析

2 仮説の設定

3 企画・実施の手順

第4章 観光企画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P15 1 ターゲットの設定

2 ポジショニング・マップ

3 マーケティング・ミックス(4P)

4 消費の心理とプロモーション

第5章 実施に向けて、そして実施 ・・・・・・・・・・・・P21 1 キーワードは『Civic Pride:シビックプライド』

2 観光ツアー募集開始

3 新商品の販売~軽トラ市~

4 そして実施

5 販売~サマーフェスティバル~

第6章 検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P25 1 分析・検証

2 課題と今後の展望

おしまいに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P27

目 次

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第1章 現状分析 1 はじめに

昨年は本当の新発田の魅力を知ってもらうために、実際に新発田に来て・見て・体験

してもらうことが最善であると考え、新発田市郊外「米倉地区」の豊かな自然や古民家で

“食”をテーマにした観光ツアーを企画・運営し、県内で大きな反響がありました。今年

も研究テーマを「新発田の観光」に絞り込み、昨年の新発田市郊外の観光から、観光資源

(コンテンツ)の豊富な中心市街地の観光スポットをメインとした観光ツアー第2弾を企

画・運営しました。

新発田観光に新たな視点とアイディアを取り入れ、“食”を柱とする観光から、“健康”

にも気を配った「まちあるきウォーキングツアー」を私たちが独自に企画・運営しました。

同時に、これまで行ってきた地域活性化のための商品開発も継続して行い、今年は全国

でも例がない新発田城の三階櫓(やぐら)にある3匹のシャチホコをイメージした「シャ

チホコクッキー」。地元の食材“新発田麩”の独特なお椀型を活かし、4種の味付けを施し

た麩菓子「から麩る」などを商品開発しました。永く人々に愛される地元の名産品になる

ための工夫と取り組みをしました。

2 地方創生における観光の役割

日本は他国に先駆けて「人口減少・超高齢社会」の危機に直面しており、国立社会保障・

人口問題研究所の推計では、2060 年の総人口は約 8,700 万人まで減少し、高齢化率は将来

的に 41%程度まで上昇するといわれています。近年は若者を中心に地方を出ていく人が後

を絶ちません。その結果、人口が東京に集中。地方は人口が減り、経済も活性化しにくい

状態です。そういった“人口減少”や“高齢化”など、地方の問題を解決する手段として

“地域創生”が考えられます。地域創生の取り組みのねらいは、観光や移住などがブーム

として終わるのではなく、継続的に人気が続く仕組みや地域を作ることです。

その中で、東京 2020オリンピックを来年に控え、

注目されている対策として、「観光」があり、実現し

やすく効果も期待できるといわれています。

主な効果は、インバウンド客が増えることで、地

域の交流人口の増加も期待でき、初めての訪問か

らリピートや移住につなげることで、人口減少ス

トップが可能になります。そして人口や訪問者が

増えることは、小売店など売上アップも期待でき

ます。

さらに、日本は観光立国に向けた国の取組として「明日の日本を支える観光ビジョ

ン」を策定(H28)しています。

国は以下の 3 つの視点から目標値を設定し、観光ビジョンプログラムを毎年作成してい

ます.

① 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に

② 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に

③ すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

◆訪日外国人旅行者数

2015 年:1974 万人⇒ 2020 年:4000 万人

⇒ 2030 年:6000 万人

◆訪日外国人旅行消費額

2015 年:3 兆4771 億円⇒ 2020 年:8 兆円

⇒ 2030 年:15 兆円

新たな目標値

【観光庁 観光戦略課 より】

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新潟県においても新潟県観光立県推進

行動計画(うまさぎっしり・魅せる新潟

アクションプラン)により、観光立県の

実現に向け、「新潟県観光立県推進行動計

画」を策定(H29 年)しています。主な観

光振興施策については以下の 3 つがあ

り、

① 交流人口の拡大(県内のDMO形

成を推進するための取組や観光デ

ータの活用を支援)

② 観光地の魅力アップ(旅行者のニー

ズを捉えた観光コンテンツの開発

や地域の核となる施設の整備)

③ 国内誘客宣伝活動の強化(食の魅

力や地域の観光資源を活かしたキャンペーンの展開)

④ 外客誘致と広域観光の推進(インバウンド需要を取り込むためのプロモーションを

はじめ、受入体制の整備ならびに新潟空港の活用。東北・関東との各県とも連携した

広域観光ルートの形成。)など

地方の抱える様々な問題解決をしていくために、観光はこれからも深くかかわってきて

います。

新発田市もこれら新潟県の観光振興施策に沿って、行政も地域住民も新発田観光を盛り

上げようと努力しています。

3 新発田市の現状分析

2025年には、団塊の世代が75歳以

上に達し、2040年(令和22年)には、

第 2 次ベビーブーム世代が65歳以上に到

達し、国民の3人に1人が65歳以上、5

人に1人が75歳以上となり、これまでに

経験したことのない、超高齢社会を迎えま

す。さらには、生産年齢人口の減少、社会保

障や雇用など、様々な課題が地域社会に与

える影響は計り知れないものがあります。

そのため、新発田市では「健康長寿」をま

ちづくりの柱に加え、「平均長寿・健康寿命

の延伸」を目的とした「健康長寿アクティ

ブプラン」の策定に着手し、分野を超えて

「赤ちゃんから高齢者まで」すべての世代

に対応した健康づくりの支援をすすめてい

ます。

2040年頃には、私たちは社会の中心

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり (%・人)

1,974

4,000

6,000 34,771

80,000

150,000

0

50,000

100,000

150,000

200,000

0

2,000

4,000

6,000

8,000

2015年 2020年 2030年単位

(億円)

単位

(万人)

【目標値】訪日外国人旅行者数と消費額

旅行者数 消費額

観光客 15 年間

で 3 倍を目指す

2 0 4 0 年 新 発 田 市 人 口 ピ ラ ミ ッ ド

(%)

トップ 65~69 歳

2912 人(3.95%)

トップ 70~74 歳

2965 人(4.02%)

男 女

(令和 22 年)

外国人観光客

6,000 万人

消費額 15 兆円

【観光庁 観光戦略課 より】

【RESAS 地域経済分析システムより】

2040 年には新発田の総人口の

38.8%が老年人口(65歳以上)

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【新発田市:平成 30 年度数字で見る新発田より】 【新発田市:平成 30 年度数字で見る新発田より】

として活躍する世代となります。私たちは今回の研究に市の特性を活かした「健康のまち」

を実現する取り組みに協力する必要があると考えました。

新発田市の人口推移に

ついてRESASを使い、

現在の 2019 年(令和元年)

を境に過去の実績値及び

将来の推計値について分

析してみました。

新発田市の総人口も1

995年の106 ,56

3人をピークに下がり続

け、2015年には100,

000人を切り、2040

年には71 ,988人と予

想されます。総人口と同じ

ように年少人口(0歳~1

4歳)と生産年齢人口も減

少し続けていきます。

一方、老年人口(65歳以上)は1995年に年少人口を上回り、その後も増加し続け

2040年には総人口の38 .8%を占めると予想されます。

今後新発田市も少子高齢化と定住人口の減少に伴い、地域内消費は減少し地域経済は縮

小すると思われます。地域内消費が増

新発田市の人口推移データ (※( )は全体に対する比率)

2015 年(H27) 2040 年(R22)

老年人口 (65 歳 以上) 29,110 人 (29%) 28,286 人 (38%)

生産年齢人口 (15 歳~64 歳) 57,378 人 (58%) 37,341 人 (50%)

年少人口 ( 0 歳~14 歳) 11,830 人 (11%) 8,044 人 (10%)

【RESAS 地域経済分析システム より】

1995 年

●総人口:106,563 人

2040 年

●総人口:71,988 人

1995 年

●年少人口:18,224 人

●老年人口:19,526 人

年少人口<老年人口

2040 年

●老年人口:19,526 人

新発田市の人口推移

推計値 実績値

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

新発田市の平成29年度目的別入込数

観光客(千人)

目的

温泉 780 174 954 954 100%

自然環境 164 0 164 123 133%

名所・旧跡 112 28 140 144 97%

文化施設 266 0 266 262 102%

産業観光 4 25 29 29 100%

まつりイベント 321 0 321 357 90%

スキー・スノボ 52 0 52 51 102%

登山・キャンプ 71 0 71 69 103%

その他 670 0 670 674 99%

計 2,440 227 2,667 2,663 100%

県内客 県外客 計 前年計 前年比

2,596

23622412

2308

2427 2440

234243

242

236 227

2,100

2,200

2,300

2,400

2,500

2,600

2,700

H25H26H27H28H29

千人

新発田市の観光客入込数推移

県外客

県内客

2,655 2,663 2,667

2,550

2019

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【新発田市観光協会:新発田観光ガイドより】

加し地域経済が拡大するためには観光が最善の策であると考えました。次に新発田市の観

光について調べてみました。

新発田市には毎年多くの人が訪れる人気のイベントがあり、観光客入込数を見ると26

0万人前後を推移しており、ほぼ横ばいに推移していることが分かりました。

さらに目的別入込数について平成29年年度データについて調べることにしました。

ここで私たちは県外からの観光客数が28人で、上位 3 番目であるのに、県内外の前年

比97%と下位3番目となっている『名所旧跡』に注目をしました。

春 Spring ■新発田城 址公園 桜まつり

■加治川桜まつり

■大峰山山桜まつり

秋 Autumn ■新発田豊年秋まつり

■全国花嫁人形

合唱コンクール

夏 Summer ■しばたあやめまつり

■藤塚浜海 水浴場 海開き

■城下町新発田まつり

冬 Winter ■城下町しばた

全国雑煮合戦

■月岡温泉どんど祭り

第2章 新発田観光の求めることとは?

1 観光とは?

「観光」の語源を広辞苑で調べました。学説上は中国の古典『易経』に由来しています。

観光とは何かを言葉から考えました。

(広辞苑の)観光の定義:他の土地を視察すること。その風光などを見物すること。

日常から離れた場所を主体的に「観る(≒see)」のウエイトが高い。

また、平成7年の観光政策審議会(国土交通省)の答申では、

(政府の)観光の定義:余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行う様々な活動。

触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの。

「観る」だけでなく、「触れ合い、学び、遊ぶ」ことを目的とする。

(≒体験:Experience)

以上のように、「観光」は様々な活動を意味しており、「観光」という言葉に含まれる意

味からも、個人個人の観光に対するニーズも多様化していると考えられます。

2 まちづくりドラフト会議 for Youth(1)

今年2年目の観光をテーマとした取り組みとなり

ますが、商クラメンバーの中に新発田市出身の人は

部長1人だけです。新発田市内の中心市街地の観光

スポットを選定することに非常に悩みました。それ

と同時に、学校へ通学するために毎日利用している

商店街や観光名所の近くの情報について「ほとんど

何も知らない。」ことに気づきました。

そこで、私たちは今年 2 月に新発田市みらい創造

課が運営する「まちづくりドラフト会議 for Youth」

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり 【会議参加者との集合写真】

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に参加しました。主に市内中学校、高校の生徒ならびに短大、大学の学生が集まり、新発

田市の抱える課題解決に向け、意見交換やフィールドワークなどのワークショップを行い

ました。

そこで始めた聞いた言葉で

Civic Pride(シビックプライド):都市に対する市民の誇り

私たちは“Civic Pride:シビックプライド”という言葉が私たちの心に響きました。

3 まちづくりドラフト会議 for Youth (2)

会議でのテーマの中で私たちが研究する新発田の観光のヒントになるかもしれない 2 つ

のテーマに注目しました。

(1)魅力的な街づくりを考える。

一つ目は「私たちが描くまちの顔づくり」というテーマです。私たち若者にとって理想

的な“住みたいまち”、“賑わいのあるまち”日々の生活から感じる“便利なまち”、市外・

海外から人を呼び込む“魅力的なまち”に対する提案を私たちなりにプレゼンテーション

しました。様々な提案の中でも

①商店街、小路、裏道を活用した新しいイベント ②まち歩きが楽しくなる景観づくり

③毎日行きたくなる場所づくり

などは新発田の観光に繋がるものと考えました。

(2)新発田の新たな取り組み

二つ目は「健康長寿のまちしばたを目指して」

というテーマです。平均寿命・健康寿命を延伸す

るための、食・運動・医療・社会参画に関する取

り組の提案があり、各校でその対策についてまと

め、ディスカッションしました。

新発田市民の平均寿命は、県内 30 市町村のう

ち、男性はワースト 4 位、女性はワースト 9 位と

極めて低く、20 年後には 60 歳以上が全体の5%

以上に達し、「超高齢者社会」のになると予測され

ています。対策として新発田市は健康に向けた

2040年対策として、「めざせ 100 彩健康づ

くり」運動を推進しています。平成 15 年以来、

「食」「運動」「健康管理」の観点で市民が楽し

く健康づくりに取り組める機会を増やしたい

という目的で健康ウォークを始め、健康づくり

キャンペーンやイベントなどを開催していま

す。さまざまな啓発活動の中に、「しばたの健康

ヒーロー100 彩マン」も活躍しています。

以上のことから、今回の企画のアイディアを

広げるため、さらに、新発田の“観光”と“健康”についての具体的な取り組みや対策に

ついて、知識を広げたいと考えました。

【しばたの健康ヒーロー100 彩マン

左から 100 彩ブルー,100 彩レッド,100 彩イエロー】

【新発田健康推進課より】

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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【新発田観光のマインドマップ:商クラ作成】

4 テーマ決定に向けて

私たちは昨年、新発田市郊外、米倉地

区の“食”をテーマにした観光ツアーを企

画・運営し、県内で大きな反響がありまし

た。昨年に引き続き、新発田の観光で「ど

こ」に光をあて「何を」観せるかに意識を

集中し、マインドマップを作成しました。

そのキーワードなどから、昨年の反省を踏

まえ、3 つの視点からブレーンストーミン

グをおこないました。

今年は昨年に企画した新発田市郊外

から新発田市中心市街地にスポットを当

て、活動場所を移すことに決定しました。

私たちは今まで出店してきたイベントに加え、既存

の旅行社が行う“食”が中心の観光ではなく、新しい

試みを加え、いろんな人たちに新発田の魅力が伝えら

れる中心市街地の観光スポットを探し出すことにし

ました。

現在の新発田の観光は“食”をテーマにしたものが

中心です。しかし、新発田市は「健康長寿のまち」を

目指し、健康づくりの意識を高めることと、運動習慣を定着させることに力を入れていま

す。私たちはこれまでの“食”をテーマにした観光から“健康”をテーマにしたまちあるきツ

アーを企画することにしました。そこで、

【研究テーマ】

「The Tour」高校&観光&健康ウォーキング

まち歩きで新発田の魅力を再発見!!

としました。

5 地域振興局からの助言

昔の観光と今の観光は何が違うのかについて、昨年に引き続き、新発田市地域振興局の

相良さんより助言いただき、最初に3つの視点から昔の今の観光について検討しました。

視 点 昔の観光 今の観光

観 光 形 態 発地型 通過型・団体型

パッケージ型

着地型・体験・交流・学習型

個人やグループ型

観光客の志向 周遊型 明快な目的を持った観光

本物・健康志向

観 光 タ イ プ 宴会型観光

詰め込み型観光など

地域の個性を楽しむ

知的欲求の充実

【ブレーンストーミングの様子】

【新発田観光のマインドマップ:商クラ作成】

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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【3月2日付 新潟日報】

次に私たちが実現可能な観光企画と観光客が期待する内容について、ブレーンストーミ

ングを行いました。

昔の観光 今の観光

・名所や旧跡を鑑賞、地元の名物を食べる

等の物見遊山的な「みる」観光だった。

・スポーツや祭り、農作業等に参加したり、

様々な体験をする「する」観光となった。

今のお客様は「温泉があります」「名所があります」と

いった昔ながらのパンフレットやマップを作っても反応

してくれません。今のお客様は生活資源とも呼びうる地

域の何気ない文化や暮らしぶりにも関心をよせていま

す。地域らしい雰囲気を味わい、日常とは異なる体験のも

と、その地域で“新しい発見”を求めます。

従来とは違った取り組みで観光による地域おこしのア

プローチにより成功をおさめている自治体もあります。

<今の観光からアイディアを連想>

スポーツ 街歩き 健康 ウォーキング ポールウォーキング

新発田観光 = 「どこ」に光をあてるか 健 康

「何を」観せる 名所旧跡・街並み、商店街

6 見せたい観光資産を探る

これまで“観光とは何か”を考えてきましたが、新発田で見せたい観光資産を探ること

にしました。

「お城ファンが実際に訪れ

た日本全国のお城ランキング

TOP300(2018 年版)」という

日本のお城をテーマとした

GPS スタンプラリーアプリ

利用者の GPS(位置情報)デ

ータを独自に解析したものを

調べ、表にまとめました。

ランキングは全国 3,000 城

が対象となっています。

2018 年、新発田城は 83 位

(前年77 位↘)となってい

ます。

新発田城は、慶長 3 年、初

代城主、溝口秀勝が築いたお城です。全国で珍しい“鯱(シャチホコ)”が3匹いる“三階櫓

【地域振興局によるディスカッション】

<参考>ランキングの元データ:発見!ニッポン城めぐり

・2018.1/1~11/30 全国のお城ファン 13 万人

・GPS(位置情報)のデータが年間 4 億件以上蓄積

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

Page 10: こうこう かんこう けんこう主な効果は、インバウンド客が増えることで、地 域の交流人口の増加も期待でき、初めての訪問か らリピートや移住につなげることで、人口減少ス

(さんかいやぐら)”があり、国の重要文化財に指定されています。そこで、観光の特色の

一つになると考え、全国名城300を調べ、新発田以外の他のお城で天守閣に鯱(シャチ

ホコ)が存在するかを調べることにしました。(丁字型に造られた屋根も特徴的です)。

実際に日本城郭協会の「日本の名城 100 選」やお城のある県の自治体Web等の

お城の写真などをスキャナーで電子データ化し、ファイル名を「①通し番号②お城の名前

③読み仮名」で保存し、それを目視により300名城すべてチェックしました。新発田城

の三階櫓にあるような「3 匹の鯱(シャチホコ)」が他のお城に存在するのかを調べました。

仮に、他のお城で 3 匹の鯱(シャチホコ)が存在しなければ、新発田の観光スポットの

大きな自慢、「売り」なると考えました。

300 名城全て調べた結果、新発田城に類する同様の天守閣(新発田城では“三階櫓”と

よぶ)一部であるものの、新発田城以外で、3 匹の鯱(シャチホコ)を配したものは存在

しませんでした。

そこで、今回のウォーキングツアーと同時進行で、新発田城の 3 匹の鯱(シャチホコ)

にイメージした商品を開発することにしました。

7 観光ツアーの企画を考えよう!

今年私たちの修学旅行でお世話になる日本旅行の添乗

員の山崎さんに、新発田市内で「観光」と「健康」をドッ

キングしたウォーキングツアーの企画について内容を提

案しました。しかし、すでに5月の連休も終えた頃で「時

期的・内容的に、商品化するのは厳しい」という回答をい

ただきました。加えて、「“ツアー”といった商品を提供す

る場合、“個人企画のツアー”は旅行業法上、違法行為にあたる場合がある」というご指摘

をいただきました。旅行業法では「運送」と「宿泊」のサービス提供に関わる、企画・募

集・手配等の業務を「旅行業」と定義しています。(第 2 条第 1 項第1号)しかし、運送・

宿泊のいずれも行わず、食事や観光(見学等)のみで完結するものは旅行業法の適用を受

【左から新発田城(三階櫓)、鯱(シャチホコ)】

他になければ 観光スポットの

「売り」になる。

新発田の魅力の再発

見と発信!!

【全国 300 選のお城(一部) 日本城郭協会より】

ビジネスチャンス

商品化するのは

厳しいですが

食事や見学のみ

なら OK です。

商品化するのは

厳しいですが

食事や見学のみ

なら OK です。

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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けないため、企画・募集をかけても問題ないとのことでした。

今回のウォーキングツアーは旅行社からの観光商品といった形での販売提供はできま

せんが、日本旅行の山崎さんはツアーのプランニングとツアーコンダクターに関する知識

面のことであれば協力・相談にのっていただけることになりました。

8 観光ツアーで大切なことは

これまでの観光ツアー企画に関するご指摘を踏まえ、今回のウォーキングツアーは、

参加料を無料とし、見学料金・昼食代は参加負担とすることにしました。利益計画を検討

し見学先にて物販を行うことにしました。物販で扱う商品は私たちのアイディアで商品開

発した新発田をPRする商品を検討することにしました。

山崎さんに私たちの考えた新発田市内の観光スポットをウォーキングで回るツアーにつ

いて、これから本格的に企画を進めていく上で大切なことは何かを教えていただきました。

(1)ユーザー目線を養う

売れるものを作る時に大切なのはマーケティングの基本

の“ユーザー目線”です。

ツアープランナーにとってのユーザー目線とは、ツアーを

購入し、参加している人の目線、またはそのツアーの購入を

検討している人の目線です。

こうしたことは、実際に行ったことがある観光地では細か

いことや気づいたことをアイディアとして企画に盛り込むことができます。事前の“下見

が最大の強みになります。”

(2)リスク管理

旅行には、さまざまなハプニングがあり

①悪天候での企画の中止 ②参加者のキャンセル ②お客様同士のトラブル

など、旅行には予想外のハプニングが起こることを学びました。

また、7 月は猛暑が予想されるため、お客様の熱中症対策(水分補給の声掛け、休憩の

回数を増やすなど)が必要だと教えていただきました。

(3)見学先(コース)の正確な把握

お客様を不安にさせないため、コ

ース・見学場所・見学場所の情報など

は事前に調べ、正確にお客様に伝え

なければなりません。作成したコー

ス案に従って、実施本番に向けたシ

ュミュレーションを住宅地図で正確

に把握し、歩いて確認する必要があ

ります。(国道・県道・市道)の把握。

信号、歩道、普段の交通量なども調べ

ておく必要があります。)また、晴天時のコースと雨天時のエスケープルートも同時に決定

しなければなりません。

最初は下見用にスケジュールと見学先等を簡単に書いたものを作りました。

「健康」に「観光」をドッキングしたツアーなので、消費カロリーも調べました。

【日本旅行の山﨑さん】

【見学先コース(1 案)】

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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9 校内アンケート

ツアーのコース・見学地を設定するにあたり、校内でアンケート調査を行いました。

(2019 年 7 月に実施。全校生徒 480 名〔男子 178 名、女子 302 名〕教職員 17 名)

校内のアンケート調査

では月岡温泉を観光地と

してとらえている人が6

割と一番多く、2番目に新

発田城が4割と、人気が高

いことがわかりました。複

数の観光事業者に聞き取

り調査を行ったところ、月

岡温泉から新発田へ観光

に訪れる人の滞在時間は

2時間前後であることが

わかりました。このことか

ら、校内アンケートをもと

に新発田市中心市街地の

見学先を検討することに

しました。見学先ごとのコ

ースは観光ルートの移動

最短距離を絞り込み、まち

あるきが可能な観光の提案を目指しました。

月岡温泉を除き、中心市街地にある新発田城、清水園、諏訪神社、市島酒造、法華寺を

第一候補とし、一番の人気で最も新発田駅から離れている新発田城を中心としたウォーキ

ングツアーコースを検討しました。

また、私たちが現状分析

で 300 名城を調べ、全国的

に類を見ない「3 匹の鯱(シ

ャチホコ)」があるお城だ

ということを「知らなかっ

た」と答えた人が過半数を

超えていました。いつも登

下校中に見ているお城な

のに、あまり知らない人が

多いことが分かりました。地元の高校生である私たち若者が新発田城の観光資産としての

価値にすすんで興味・関心をもつことが大切であると考えます。

4

7

9

7

7

6

10

7

14

15

20

21

34

23

72

75

82

108

9

8

8

11

11

14

24

27

30

30

35

35

59

71

106

112

128

199

0 50 100 150 200 250 300 350

長徳治・法華寺ほか

堀部安平衛

新発田市民文化会館

越佐招魂碑・西公園

白壁兵舎広報資料館

神明宮

蕗谷虹児記念館

美人の泉

市島酒造

紫雲寺記念公園

諏訪神社・東公園

藤塚浜海水浴場

清水園

カリオンパーク・手作りガラスびい…

二ノックススノーパーク(二王子岳)

五十公野公園・あやめ園

新発田城・新発田城址公園

月岡温泉

Q.おすすめの新発田の観光スポットは?

男子 女子

86

136

86

161

0 50 100 150 200 250 300 350

男子

女子

Q.新発田城の三段櫓には3匹のシャチホコ

がいることを知っていた

知っていた 知らなかった

10

知っていた 47.3% 知らなかった

52.7%

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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10 ツアーをプランニングする

校内アンケート調査および、日本旅行の山崎さんにツアーの企画・運営に関するお話を

伺い、これまでの状況分析やみらい創造課のドラフト会議での提案、地域振興局からの提

言などを参考にツアーのプランニングを行うことにしました。

【実践1】私たちのツアープランニング(企画書の一部より)

1.ウォーキングツアー事前準備

(1)ツアープランニングのプロセス

①目標:プランを立てる

・アイディア・企画[ターゲット(募集対象、人数)、予算]の検討

・コース・見学場所[見学方法]、実施時期の検討

②実施本番に向けたシュミュレーション

・コースの決定[雨天晴天時のコース

(※住宅地図で正確に把握)選定と(国道・県道・市道)の把握 ]

③宣伝・告知〔パブリシティ戦略〕

・ブログに加え、チラシ作成・FMしばた・新潟日報などに告知を依頼

④募集期間、締め切り・応募方法

・受付方法:学校あてに電話またはFAXで受付、主に商クラ担当の先生が対応)

・締め切後:参加者名簿の作成、保険申し込み、道路通行許可申請

⑤スタッフの確保:運動指導員(ウォーキング指導員)と民間看護師の派遣 ほか。

2.コースとスケジュールの検討

ツアープランニングと同様に、私たち独自の判断で、黙々とツアー企画を練るのではな

く、日本旅行の山﨑さんにプロ

の目で見てもらい、直接アドバ

イスをいただくことにしました。

さらに、地域振興局では 10 月

に“八寸折々”をテーマにした

“まちあるき観光ツアー”を実

施するので、そのパイロット版

的な要素を入れてコースを検討

しました。「健康」の視点からは

今年行われた 200 人規模の新発

田市内で実施された新発田市健

康推進課主催の「めざせ 100 彩

健康ウォーク第 1 弾「しおかぜ

ウォーク」を参考にしました。

特徴としては参加者にはもれな

くプレゼント特典があります。

めざせ 100 彩健康ウォークでは、「しばたの健康ヒーロー100 彩マン」も登場。

【見学先コース(2)】

11

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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5 新発田市内を歩いてみる

参加費は 200 円(当日徴収)で、コース:4.5km と 8.5km の 2 コース。200 人規模の企画

です。私たちのウォーキング企画の参考にしました。加えて、新発田市健康推進課の山本

さんからもウォーキングツアー実施にむけた助言をいただきました。

11 下見によるコースチェック

作成したコース案により、実際に

新発田市内を商クラメンバー全員で歩

き、各見学先に下見に行ってきました。

(1)ウォーキング見学先

①諏訪神社

ツアーでは集合地点として利用す

る。「おすわさま」の愛称で新発田市民

に親しまれています。

新発田総鎮守である諏訪神社の初詣

は、毎年約 3 万人の参拝者が訪れ、無病

息災・学業成就・厄除け・縁結び・安産

の御利益がある。

②清水園 ➡ 見学 ※見学料あり

近世の新発田は、慶長 3 年(1598)に加賀大聖寺か

ら 6 万石で領地に入った、溝口秀勝から始まります。秀

勝を藩祖とする新発田藩は、12 代直正の時代に廃藩置

県を迎えるまで、274 年間にわたり溝口家に統治されて

きました。

「清水園」の池のまわりには、「桐庵」「夕佳亭」「翠

濤庵」「同仁斎」「松月亭」それぞれ趣の異なる茶室が配

されています。これは荒廃した庭園の修復工事と併せ

て、茶人田中泰阿弥が清水谷御殿絵巻物や古記録にもと

づき、昭和 20 年代に築造したものです。

③新発田城 ➡ 見学

新発田城 全国で唯一 3 匹の鯱(しゃちほこ)が守る 三階櫓。また、新発田城は新潟県

内で唯一、江戸時代当時の城郭建築が現存する城跡です。

日本百名城の一つで「あやめ城」の異名を持つ新発田のシンボル。 新発田城は、初代

【観光用表示】 【寺町通り】

【神主さんに依頼】 【諏訪神社鳥居】

【清水園正面】

【清水園庭園】

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第二章

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新発田藩主溝口秀勝 (みぞぐちひでかつ )侯が慶長 3 年

(1598 年)に築城し、3 代宣直(のぶなお)侯のときに完成し

ました。

戦時中に日本陸軍が置かれていたことから、城郭跡の大

部分は現在も陸上自衛隊の新発田駐屯地となっています。

残念ながら、公開はされていません。このことが観光のデ

メリットとおっしゃる方もいます。

城址公園のすぐ隣が自衛隊駐屯地という珍しい城です

④法華寺 ➡ 写経体験 ※無料

日蓮宗松見山、法華寺です。慶長3(1598)年創立。

開山日覚聖人は丹波領主大雲寺殿前土佐守の子息で、のち

に織田信長の家臣坂井秀政の養子となり、京都妙顕寺十一

世日教に従って会得しました。

午後は今から400年前、加賀から移ってきた日蓮宗の

法華寺にて、住職の講話を聴いたのち、カラフルな色の筆

やペンで写経体験を楽しみました。今は下書きの上をなぞ

る形式の写経が主流で、その人気も高いです。

⑤市島酒造 ➡ 最終見学場所:雨天時解散場所

創業 200 年の日本酒の蔵元市島酒造さんでは、酒蔵見学

と試飲(※成人のみ)があります。ウォーキングツアー雨

天時には、ゴール地点の諏訪神社にかわり、最終見学地に

なります。

テレビ取材で参加者の感想等インタビューを収録予定と

なっています。

第3章 仮説

1 SWOT分析

現状分析では、マクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワークであるPES

T分析を行っていました。またミクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワーク

である3C分析は次のように置き換えてみました。Company(自社)は“地域”、C

ompetitor(他社)は“他の観光地”、Customer(顧客)は“観光客”と

考え3C分析も行いました。商品と観光、つくるものは全く違っても進め方や考え方は一

緒であること、それも私たちが今まで学んできた商業であることが分かりました。これか

ら先は今まで学んできた商業的な視点で考えていくことにしました。

旅行社や地域振興局の方の話と校内アンケートなど環境分析をもとに新発田市中心市

街地における観光についてSWOT分析を行いました。

【城址公園から見た三階櫓】

【法華寺正面】

【市島酒造正面】

【旧二の丸隅櫓を見学】

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第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

【市島酒造受付・売店にて】

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内部環境

Strength 強み Weakness 弱み

□城下町で名所旧跡がある、

□街並みが落ち着いている。

□町に残る伝統的建造物。

□山や平野に囲まれる豊かな自然。

□人々がのんびりと温かい。

□住民の高齢化。

□商店街のシャッター通り化。

□観光用の循環バスが不十分。

□観光資源を生かせていない。

□情報発信が不十分。

外部環境

Opportunity 機会 Threat 脅威

□新発田市の盛んな健康運動。

□観光立国推進基本法の施行。

□体験する観光が人気

□町歩きテーマの観光が人気。

□全国的なお城のブーム到来。

□観光地間の競争の激化。

□人口減少と少子高齢化の進行。

□国内の宿泊観光旅行回数の減少。

□観光地としての意識と自覚。

□地元飲食店の相次ぐ閉店など。

「強み」と「機会」は、これからの努力によって「強み」から「さらなる強み」へ、そ

して「機会」を「強み」に変えることが可能となります。一方、「弱み」と「脅威」は、努

力によって改善を図ることが難しいことが多いです。そこで私たちも「強み」と「機会」

に目を向け、最大限に活用することにしました。

2 仮説の設定

校内アンケート調査の結果、おすすめの観光スポットに「新発田城」を選んだ人が 2 番

目に多かったですが、「3 匹の鯱(シャチホコ)」については知らない人が全校生徒の過半

数に上ることが分かりました。そうであれば地元の人にも人気のある新発田城を新たな視

点から観光スポットとして広めようと考えました。これまでの環境分析やSWOT分析も

踏まえ、次のように2つの仮説を設定しました。そこで 2 つの仮説に対する共通のキーワ

ードを“まちに対する市民の誇り”を意味する“シビックプライド”とし、研究を進める

ことにしました。

仮説1

まちあるきツアーを実施することで、新発田が観光地だという意識が高ま

り、その魅力を再発見できる。

設定理由

新発田市中心市街地の観光資源を見直し、既存の新発田旅行ツアーにはない

観光&健康ウォーキングツアーを企画する。プロモーションミックスの活用

により、新発田市の魅力を再発見してもらうことができると考えたため。

仮説2

新発田の名産品を開発・定番商品化することにより、世代を超え、観光PR

することができる。

設定理由

新発田は初代藩主のころからの和菓子文化が有名である。近年、洋菓子文化

も定着しつつある。長く愛される地元名産品を和菓子と洋菓子のテイストで

開発し、新発田をPRしたいと考えたため。

14

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第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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としました。

今回も新発田商業高校商業クラブと商店街・地域、

新発田市、新潟県が協力して新発田市の新たな魅

力を地元市民も感覚として忘れかけていた「観光

地」としての誇りを外に発信していくことで、訪

れる観光客に笑顔で喜んでもらえるような “感動”

を生み出す活動をこころがけました。

3 企画・実施の手順

仮説を検証するため、マーケティングと商品開発の教科書の手順・手法に従って次のよ

うに活動を行うことにしました。

今回の観光ツアーの実施にあたり、大切なのは計画で

あると考えました。今回はPDCAサイクルに基づき、

ツアーに協力いただいている新発田市未来創造課、新発

田市健康推進課、新発田地域振興局、日本旅行のご指導

のもと考えていくことにしました。

第4章 高校生が観光マーケティングを企画

1 ターゲットの設定

環境分析 市場調査仮説の

設定

ターゲットの設定

企画 実施 検証 評価

【PDCAサイクル】

【仮説共通のキーワード】

シビックプライド Civic Pride = 都市(まち)に対する市民の誇り

≠ 単なる郷土愛ではなく「私たちのまちは私たちが支える」という意識。

観光

16

15

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第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

以上のことから

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観光商品の企画に関するターゲット

を設定するにあたり、7月に行った校内

アンケート結果を検証しました。私たち

が注目した質問と回答項目は、「Q.新発

田をどんなテーマで観光したいか?」の

回答に対し、テーマに「健康」12 人、「歴

史・建築物」79 人、「体験型」112 人を

合計すると 203 人となり、「地域イベン

トの参加」なども加え、既存の新発田観

光では多い「食」をテーマとしたツアー

の 325 人と比較すると「食」の 62.5%

にあたる数の人が”「食」以外の観光に興味を示している”ことがわかりました。

また、「Q.新発田をどの交通機関で観光

したいか?」の回答では「徒歩・ウォーキン

グ」が 99 人、「自転車」が 50 人と合計する

と 149 人となり、従来の主な観光手段であ

る「観光バス」387 人の 38.5%にあたる人

が”健康的な観光に興味を示している”こと

がわかりました。

よって、「観光」「健康」の観点とこれまで

のアンケート結果から、今回の観光ツアー

のターゲットは高校生から働き盛りの大人

で、健康志向に興味のある人としました。

2 ポジショニング・マップ

観光客に対して、私たちの考える体験型ツアーと既存の新発田旅行ツアーとの違いを明

確にするためポジショニング・マップを作成しました。

地域観光を取り巻く環境は大きく

変化しています。団体旅行から個人旅

行へニーズも高まっています。主に団

体旅行は旅行社が送客し、地域の事業

者などが対応する「発地型」の仕組み

です。しかし、最近の旅行者の多様な

ニーズもあり、従来のイベントの見学

中心のツアーだけでは集客が難しく

なっています。

地域が自ら観光商品を開発し、観光

客を集客して、もてなす「着地型」の

観光商品が求められています。

【DMO推進機構より】

発地

着地

「行こうよ( 発地型)」から(「おいでよ( 着地型)へ」

16

62.5%

38.5%

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第二章

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着地型観光を成功させるには、私たちが自らの手でマーケティングや PR などのマネジ

メントを行う必要があります。

そこで、ポジショニング・マップも私たち高校生

が地域で自ら観光マーケティングを企画するとい

う視点で考えてみました。右図に示すビジネス一般

の成功法則「競争優位」における2つの要素「差別

化」と「価格」をマトリックスで表したものです。

「価格」をおさえて「差別化」の実現ができる「左

上」の状態が良い戦略であるといわれています。

これを参考に私たちも縦軸に旅行者の多様なニ

ーズに対応した「体験型」と地域のイベントなどの

「見学型」という新旧の観光形態である「差別化」

と横軸に「価格」をとり考えてみました。そうする

と右上は体験型・目的型であるが価格が高い大手旅行会社企画の発地型観光、「左上の戦略」

は体験型・目的型で価格の安い着地型観光であり、私たちの目指す観光ツアー(観光商品)

であることが分かりました。

3 マーケティング・ミックス(4P)

今回のウォーキングツアーついては、効果的な実現に向けて全体として相乗効果が発揮

されるように、マーケティング・ミックスを活用し、”商品”ではなく、”観光”を視点と

した大まかな方向性について事前に考えていくことにしました。

私たちは昨年のツアー中止の反省を踏まえ、

特にプロモーションに力を入れました。

また、今回のツアーは無料

ですが、見学先での物販の利益

をツアーの売上とし、利益計画

は損益分岐点を使い最少催行人数

を計算しました。

4 消費の心理とプロモーション

ウォーキングツアーは製品のライフサイクルで言えば導入期、知名度も低く重要になる

のはプロモーション活動です。予算的な裏付けがないため、旅行会社のようなテレビCM

や大々的な新聞折り込み広告の作成・配布を行うことができません。

昨年の「ツアー中止」の反省を踏まえて、今年のウォーキングツアー募集について、「旅

行商品」を扱う際の心理的に消費を促すロジックについて学習し、慎重にすすめることに

しました。

【理想とする観光ツアー商品】

観光商品

Product

健康的に観光資源

を観るツアー

利用価格

Price

無料で昼食・見学は

各自。物販あり

値頃感・お得感

提供方法(流通)

Place

どこで募集・受付

申し込めるか

プロモーション

Promotion

販売促進(物販)

広告・告知

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第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

項目 摘要 1人当たり 収入 支出 損益計算書

売上 参加料(無料)見学料(各自) 0 0 売上高 1,255 ×人数

見学料(参加者負担) 0 0 変動費 357 ×人数

売上(物販、イベントなど) 1,255 25,100 貢献利益 898 ×人数

固定費 人件費(ポール指導員) 400 8,000 固定費 8,000

営業利益 0

変動費 調査費(コース下見) 120 2,400

保険料(傷害保険) 57 1,150 損益分岐点

手数料(銀行振込) 21 432 11,180

消耗品(写経ほか) 159 3,186 定員20名を想定

758 25,100 15,168 1.4 名

※ただし、看護師派遣料¥22,600は他イベントにより賄うことにする。

ツアー企画の利益計画(20名で計算)

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想起:商品を欲しいと思うタイミング

「どこかに旅行に行きたいなぁ」

と思った日

消費:購入し、旅行するタイミング

「今、旅行に行っています。」の日

ズレ=タイムラグが生じる

観光商品の特性

販売(誘客)戦略上 重

【「忘却曲線」想起と消費のタイムラグ】

上の図の想起とは「その商品を欲しいと思うタイミング」、消費とは「購入し、旅行する

タイミング」です。

地元の観光商品のPRのためのプロモーションもその情報に触れて「あ、行ってみたい

な。」とその場で感じてもらったとしても、すぐに消費には至ることが出来ません。

■エビングハウスの忘却曲線

ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスは「エビングハウスの忘却曲線」の研究

で、無意味な音節を記憶し、時間と共にどれだけ忘れるかを数値化し曲線で表しました。

上の図表で示す通り、観光商品を扱う際、この「想起」から「消費」までの時間の長さ

による「忘れられる特性」を意識したプロモーションが必要。

【特性を踏まえた具体的なプロモーション方法】

a. 特定の人物に、繰り返し継続的に情報を発信し続ける

b. 消費するタイミングに合わせてアプローチをする

c. 消費をするまでの間、忘れないように情報をとっておいてもらう

【参考:一般社団法人 日本地域観光振興協会】

そこで、私たちはb.のプロモーション方法を選択し実行することにしました。消費

をするタイミングで情報を与えることが出来れば、ツアーに応募してくださる可能性は高

まると考えました。具体的にはツアーの募集開始を「想起」、募集締め切りを「消費」と想

定し、「参加してみよう」という「想起」の段階で忘れられないよう、募集期間を短く2週

【一般社団法人 日本地域観光振興協会より】

【忘却曲線 想起と消費のタイムラグのイメージ図(商クラ作成)】

繰り返し発信には限界がある。

記憶に残すための

発 信

・1 日以内に 10 分

・1 週間以内に 5 分

・1 か月以内 2~4 分

の 3 回

忘却のメカニズム

20 分後には 42%忘れる

1 時間後には 56%忘れる

§

6 日後には 75%忘れる

31 日後には 79%忘れる

18

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間と設定しました。

(1)チラシ・ポスターの作成

チラシやポスターの作成・印刷は私たちで行いました。昨年同様、次の4点について

気を付け、作成しました。

①フリー以外のネット上の写真を使わない

➡ 事前の下見で撮影した写真を使用。著作権などの侵害にならないように。

②写真には“イメージです”という文言を入れる

➡ 当日チラシと同じのものを見ることができない可能性がある

③おおげさ、誇大な表現は使わない。

➡ “絶対に”、“必ず”は NG ワード。嘘を掲載しない。

④チラシの裏面には「FAX 申込書」を印刷する。

➡ 受付は学校で電話・FAX 受付するので、必ず必要である

想像していた以上に注意することが多く、私たちが作ったチラシやポスターは新発田

市未来創造課からチェックを受け、修正を加える作業が続き

ました。

(2)パブリシティ戦略

パブリシティ効果を狙い、各種メ

ディアを通じ広範囲に知らせる作

戦を試みました。その結果7月1

2日付の新潟日報朝刊に掲載され

ました。

(3)新発田観光PRのための新商品開発

ウォーキングツアー参加者への

プレゼントおよび見学先での物販で

販売する新商品を開発しました。こ

の新商品は7月のイベントで販売を

行います。ツアーのターゲットは高

校生以上。働き盛りの大人で健康志

向な人としました。観光PRのため

に“地域のお土産の定番商品”を開発

コンセプトとし、商品開発した新発田城の 3 匹のシャチホコをイメージした“しゃちほ

こクッキー”を参加者全員にプレゼントしました。

試作品段階ではシャチホコの色を再現していましたが、コストもカロリーも高いこと

から、それらを低く抑えた”健康志向”のクッキーに変更しました。

さらに、新発田市民の“食”“台所”定番食品の“新発田麩”を麩菓子として商品開発

【7 月12日付 新潟日報】

【FMしばた生放送出演】

19

【シャチホコクッキー】 【から麩る】

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しました。新発田の名産の 蒸気パンの“黒糖味”をはじ

め、清水園をイメージした“抹茶味”、越後姫の“イチゴ味”、

商店街の喫茶店をイメージした“チョコレート味”。 4 つの

味すべてが入って500円で当日販売しました。

【商品開発のプロセス】

①アイデアを出し、商品を試作する

(デザイン・型・洋菓子店)

②市場に出してテスト販売する

(売れるかどうか 軽トラ市テスト販売)

③商品化する(本格販売 サマーフェス・軽トラ市)

※他にもネーミングやキャラクターの作成をしました。

材料調達は宮村製麩所さんの新発田麩を使用

(新発田の食の定番=新発田麩の仕入れ)

【新発田観光PR用の商品の各キャラクター】

■シャチホコクッキーのキャラ ■から麩るのキャラ

(4)新発田市役所総務課の協力

できるだけ広い範囲で新発田市民と観光や仕事などで新発田市

に訪れた方々にウォーキングツアーを実施することを伝えること

ができるかが一番不安でした。ポスターやチラシを作成し掲示し

ても、その施設や店舗を訪れるとは限りません。新聞やラジオも

見たり聞いたりするとは限りません。イベントに来ないことには

商品もリーフレットも手にすることはありません。確実に知って

もらう方法を考え協力をお願いしました。

新発田市役所総務課とみらい創造課にお願いし、新発田市役所

内は1Fロビーと役場内の FM しばたの前の広場に、図書館も

同様に人の通行の多い地点にチラシを置いてもらいました。他に

も、新発田市健康推進課、新発田商店街の数店舗にもチラシの配

布をお願いしました。

新発田市健康推進課の山本さんからは道路使用許可申請書

の提出について道路交通法に従いご指導いただきました。

(5)SNSを使ったプロモーション

【黒糖味(右上)、抹茶味(右下)、

イチゴ味(中央)、チョコレート味

(左)】

【右からシャー君、チー君、ホコちゃん】 【黒糖坊や、いちごちゃん、チョコ姉さん、抹茶兄さん】

20

【道路使用許可書】

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第二章

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終わり

に だい

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学校のコンピュータ環境ではセキュリ

ティや利用規則などの制限もあり、校内で

のSNSの利用はできません。商クラのメ

ンバーの個人のアカウントを使用するこ

とも可能ですが、様々なリスクを考え、使

用しませんでした。しかし、現在の情報発

信の手段の多くはSNSであり、企業もそ

れを受けて情報発信の中心をSNSに置いています。そこで、宮村製麩所さんにお願い

し、ウォーキングツアーのプロモーションの一つとして、私たちの商品開発した商品「か

ら麩る」をSNSで情報発信していただきました。そこでSNSの代表的なTwitt

er、Facebook、Instagramについて長所・短所を調べてみることに

しました。

長 所 短 所

Instagram ・自由な写真がアップでき、いつで

も移動しながら発信できる

・LINE の代わりに使う

・利用者の大半が若年層である

Facebook ・実名のため信頼性が高い

・ターゲットの友達に信頼性のある

情報を拡散することができる

・個人情報の流出のリスクがある

・訪問者は男性が約 6 割を占めるた

め女性には弱い

Twitter ・情報の速報性が高い

・拡散性がある

・気軽に登録ができる

・炎上することがある

・140 文字までしか入力できない

・虚偽が拡散する可能性がある

Instagramについてはインスタ映えする商品を掲載してもらい、ウォーキン

グツアーの募集の告知内容が新聞に掲載されたこと、ブログにアップされていること、

商品販売時にお客様に伝えることによりプロモーションミックスを実践しました。

第5章 実施に向けて、そして実施

1 キーワードは『Civic Pride:シビックプライド』

梅雨の蒸し暑い日にコースの下見を行い、新発田市以外から

通う、私たちも新発田駅周辺、新発田城、市役所までの道のり

について慣れてきました。ポールウォークも無理なく胸を張っ

て歩けるようになり、一歩一歩の歩幅が広くなりました。簡単

な動作であれば、参加者に教えられる程度にはなりました。

今回のツアー名は「新発田市観光&健康ウォーキングツア

ー」で、観光の企画と運営がメインテーマとなりますが、ツア

ーの目玉企画として、地元の名産品の開発も同時に行います。

新発田城をPRするための「シャチホコクッキー」、新発田麩

を広く知ってもらうために開発した麩菓子「から麩る」をツア

【ポスター・チラシ】

【発信したインスタグラム】

21

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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【販売の様子】

【シャチホコクッキー 陳列】 【から麩る 陳列】

ーの見学先で物販・プレゼントすることにしました。これで健康観光ウォーキングツアー

の準備が整いました。キーワードは

“まちに対する市民の誇り”を意味する『Civic Pride:シビックプライド』

を目指します。

2 観光ツアー募集開始

ウォーキングツアーの企画書作成、および、チラシ・ポスター作成に時間がかかってし

まいました。当初、計画していたチラシの配布が6月25日(火)でしたが、予定より1

0日遅れの7月5日(金)の募集開始となりました。ツアー実施日から受付締め切りを考え

ると募集期間は2週間程しかありません。完成したチラシやポスターは新発田市役所のみ

らい創造課を通じて総務課から、市役所をはじめ、図書館、市内各施設に配布していただ

き、ポスターも同様に人の集まる施設や店舗に掲示してもらうことにしました。申し込み

受付は学校の電話番号と FAX としました。事務室の皆さんありがとうございました。

また商業クラブのブログにも継続して情報発信を続けました。

3 新商品の販売~軽トラ市~

7月21日(日)新発田市役所1階札の辻広場で行わ

れた「軽トラ市」で新商品を販売しました。新発田城の

シャチホコをイメージしたクッキー「シャチホコクッキ

ー」は健康志向を強調した手作り感のあるカゴにいれる

ことにしました。新発田麩を使った麩菓子「から麩る」

はポップな色彩を楽しんでもらうため商品ラベルを上

部に貼らず、下面にテープ状に貼ることにしました。新

商品と一緒にPOPやボードにより、新発田城と新発田

麩の良いところをPRしました。

4 ウォーキングツアー締め切りまで

手 に 取 り や す

い陳列

手作り感の

あるカゴ

カラフルな

リボン

ラベルは下に

【チラシ配布に協力いただいた施設等(図書館、商店街、市役所)】

22

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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【Fax申込用紙】

今年も天候が不安定で、屋外で実施するウォーキングは暑

さと雨天などにより、中止する可能性も視野に入れる必要が

あります。ツアー実施の可否の連絡を考えて7月16日(金)

を募集締め切りとしました。7月5日の募集開始発売から新

発田市役所、新潟県新発田地域振興局、新発田市商店街の皆

さん、新潟日報社、FMしばたからご支援・ご協力いただき

様々な手段を使いPRを行っていただきました。おかげで、

参加者は当初予定していた20名を超え、23名もの参加者

にご応募いただきました。実施可能人数に達したので、ウォ

ーキングツアーを実施することにしました。“新発田市中心市

街地の魅力”私たちの言葉と行動で伝えることができます。

5 そして実施

すべてが整いました。いよいよ、芝商商業クラブ主催の「まちあるき」ツアー企画、新

発田市観光&健康ウォーキングツアーが始まります。7月20日(土)午後9時30分予定

通り、小雨決行で実施が決定しました。

当日はTenyさんから 1 日密着取材していただきました。7 月 20 日(土)23 名もの

参加者が集まり、新発田の観光名所を 1 日かけて歩きました。

当日の様子は 7 月 25 日(木)15:58、Teny新潟一番「ガタトピ」で『新発田商業高校

の学生が発案―健康的に街歩き新発田の観光ウォーキング―』というタイトルで、高校生が

企画した観光と健康をテーマとしたウォーキングツアーとして放映されました。

全4.8kmのコースは事前に下見をしたコースのとおり、新発田駅近く「おすわさま」

の愛称で親しまれている諏訪神社を出発し、初代藩主の頃から、今もなお、お茶会が開か

れる清水園を見学予定です。本来ここでは、清水園のお庭に見学料を払って入園する方と

そうでない足軽長屋付近のお店で休憩する人とに分けて私たちが接客する予定でした。

また、お庭見学の方は見学終了後、入園していない方と合流、その東側にある茅葺(か

やぶき)屋根の「足軽長屋」を見学する予定でしたが、ツアー当日は天気予報通り、あい

【テレビ放映された映像】

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第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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にくの雨模様でした。しかし、参加者の皆様の温かいご声

援で小雨決行の中、清水園の見学コースをキャンセルし、

商店街のアーケードを利用し、トイレ休憩場所の新発田市

役所(通称:ヨリネス)にするコースに変更しました。雨

天時のコースは想定内で準備していたこともあり、参加者

に商クラリーダーが全体に案内し、安全に移動することが

できました。休憩後は商店街のアーケード街を通り、新発

田城へと向かいました。昼食は市役所近くの「TAICO

や」という商店街の中心にある喫茶店を休憩場所に予約し

ました。そこでゆっくりと休んでもらい、午後は今から4

00年前、加賀から移ってきた日蓮宗の法華寺にて、住職

の講話を聴いたのち、お参りとご焼香をし、写経体験をし

ました。細筆で漢字を見て写すのかと思いましたが、薄く

かいてあるお経をカラフルな色の筆やペンでなぞるとい

った形の写経体験を楽しみました。正式にはお布施と写経

体験で500円おさめるところを私たちの無料で行うウ

ォーキングツアーの趣旨に賛同いただき、お布施等は参加

者任意での対応にしていただきました。また、そこでの限

られた時間は当初50分程度を予定していましたが、当日

の雨と”TAICOや”さんでの昼食タイムが予定より遅

れてしまったこともあり、写経の体験時間も10分以上も

短くなってしまいました。

次に、最後の見学先、創業 200 年の日本酒の蔵元市島酒

造さんでは、酒蔵見学と

試飲を参加者に楽しん

でいただきました(※成

人参加者のみ)。また、ここでは新発田観光PRのために

“地域のお土産の定番商品”を開発コンセプトとし、商

品開発した新発田城の 3匹のシャチホコをイメージした

“しゃちほこクッキー”を参加者全員にプレゼントしま

した。

試作品段階ではシャチホコの色を再現していました

が、コストもカロリーも高いことから、それらを低く抑

えた”健康志向”のクッキーに変更しました。さらに、

新発田市民の“食”“台所”定番食品の“新発田麩”を麩

菓子「から麩る」として商品開発しました。新発田の名

産の蒸気パンの“黒糖味”をはじめ、清水園をイメージ

した“抹茶味”、越後姫の“イチゴ味”、商店街の喫茶店をイメージした“チョコレート味”。

4 つの味すべてが入って500円で当日販売しました。

24

【商店街アーケードの様子】

【新発田城二の丸隅櫓の様子】

【新発田城付近の様子】

【写経体験の様子】

【市島酒造蔵見学の様子】

【雨天時の屋内レクの様子】

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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ウォーキングツアーの運動指導員代、同行看護師さんの人件費

の一部などにあたる固定費は、7月21日(日)の軽トラ市と27

日(土)のサマーフェスティバルの販売利益で補填をしました。

ツアー当日はあいにくの雨模様で、日中、晴れたり止

んだりといった天候でした。私たち運営する側にとっ

て、「心が折れそうになる」時間帯もたくさんありました

が、参加者の皆さんの明るい笑顔とお声かけでなんとか

観光&健康ウォーキングツアーを実施することができ

ました。

この日はTenyテレビ新潟から、1 日密着同行取材

をしていただきました。テレビ撮影スタッフの皆さんか

らは、早朝から天候を心配する連絡をいただき、途中、

雨天にも関わらず、重い器材を運びながら、私たちのこ

とを撮影していただきました。当日、テレビ局のスタッ

フの皆さんがいたおかげで、元気良く、笑顔で参加者を

リード出来たと思います。

ツアーを終え、その後、テレビ放映を見た方々から、

私たちの活動を保護者だけでなく地域の各方面皆様か

ら高く評価していただきました。当日の参加者の最高齢

が82歳でした。ゆっくりご自分のペースで歩いていら

っしゃいましたが、私たちより歩きなれていて、とても

お元気でした。いろいろ新発田の昔のお話を直接聞くこ

とができて、勉強になりました。本当に楽しい会話のも

と、世代を超えたコミュニケーションが楽しく交わされていました。

6 販売~サマーフェスティバル~

7月27日(土)に新発田市駅前商店街で実施された「サ

マーフェスティバル」で販売をしました。私たちが参加し

た午後5時から午後7時の2時間で完売することができま

した。そこでも「テレビ見たよ。ウォーキング雨だったけ

ど、がんばったね。」と言っていただきました。またウォー

キングツアーに興味の方もご来店いただき、「秋にウォーキ

ングツアーやらないの?」と聞かれました。

第6章 検証

1 分析・検証

ウォーキングツアーが無事成功しましたが、当日は雨も多かったため、複数項目の質問

用紙によるアンケート調査は回収率が難しいと考え、最後の見学地にて、私たちが直接、

参加名簿を確認しながら、聞き取りを行ってまとめました。当日同行していただいたTe

nyテレビ新潟さんにもご協力いただき、インタビュー結果からも質的データを量的デー

【販売の様子 新発田商店街】

25

【市島酒造前の様子】

【昼食会場の様子】

【写経体験の様子】

第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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タに読み替えて集計しました。まだ現段階では、研究は進行中であるため、完全な検証は

できませんが、これまでの活動を検証しました。

以上のことから

仮説1

まちあるきツアーを実施することで、新発田が観光地だという意識が高ま

り、その魅力を再発見できる。

検 証

プロモーションミックスの活用により、私たちの企画したウォーキングツア

ーに定員を超える参加者のなか、ウォーキングツアーが実施できた結果、新

発田を観光地として発信し、その魅力を再発見できたといえます。

調 査 日:7 月 20 日(土)

「観光」&「健康」ウォーキングツアー実施後

調 査 対 象:ツアーに参加したお客様

アンケート方式:質問用紙・インタビュー

アンケート配付数:23枚

回 収 率:100%

■「ウォーキングツアー企画はどうでしたか?」

と質問したところ、

「良い企画でした」と答えた方 100%

(参加者全員)

と回答しました。

■「シャチホコクッキー」(プレゼント)と

「から麩る」を購入したお客様に新発田観光PR

用の商品としての評価について質問したところ、

「PR商品として、良い商品だと思います。」

92.0%

「PR商品として、良い商品だと思わない。」

8.0%

と回答しました。

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第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

【ウォーキングツアーについて】

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2 課題と今後の展望

今回のウォーキングツアーは新発田市以外からお越しの参加者も大勢いらしゃいまし

た。また、地元テレビ局の同行取材もあり、その後の私たちへの注目度も高くなり、学校

への問い合わせもありました。それだけ観光の地域に対する期待の大きさが分かります。

観光ツアーをゼロから始めて、企画・運営してきました。一般の方にも広く募集し、放

課後は直接、申込の電話受付も緊張しながらやりました。顔の見えない全く知らない大人

との会話は正直怖かったです。今回のツアー参加者は比較的、年齢が高く、地域のことを

知る地元の方もいらっしゃいました。課題としては、今回、マスメディア、ブログ、協力

企業等によるSNSによる宣伝・告知等を行っていただきましたが、実際には、新発田市

および近郊の参加者による市民レベルの観光ツアーとなってしまいました。しかし、私た

ちが行ったウォーキングツアーは大手旅行社や地元自治体の既成のツアーではなく、高校

生目線で独自に企画運営したものです。これからも、“新発田市は新潟県を代表する”観光

地であるという自信をもっていきたいと思います。

今後の展望としては、昨年は新発田市郊外の集落の研究をし、今年は新発田市中心市街

地の研究をしました。来年は、新発田市合併後の旧町・村について観光資源の視点から、

研究テーマを設定し、活動をしていきたいと考えています。

おしまいに

今回の活動を通して最初は、新発田のイメージ

は高校や住宅地、ショッピングモールがあり住み

やすい街のイメージでした。そのため新発田市の

観光できる場所があまり思いつかなかったです。

私たちの身近なお城やお寺などが、歴史的・文化

的に価値があることなどは、あまり、気にしない

で生活してきました。しかし、ツアーの下見をし

たり見学先を調べたりするうちに新発田の魅力

に気が付くことができました。そして、この研究

の成果から、新発田市は新潟県を代表する観光地であることを改めて実感しました。でも、

実際にはツアープランニングも遅れ、募集も日程的にギリギリで、ツアーが実施できるか

どうか、当日を迎えるまで不安でした。でも、ツアー参加者の皆さんに笑顔で背中を押し

てもらい、私たちも“観光”&“健康”ウォーキングを気持ちよく楽しむことができまし

た。

今回私たちは観光に健康をプラスした新しい形のツアーを企画・運営しました。そこか

仮説2

新発田の名産品を開発・定番商品化することにより、世代を超え、観光PR

することができる。

検 証

新発田の観光資源を活用した商品開発により、物販と参加者へのプレゼント

企画をウォーキングツアーにマッチングし実施した結果、新発田市内外へ、

新発田の伝統文化を十分に伝えられたといえる。

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第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい

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ら学んだことを活かし、10 月 6 日には新発田市健康推進課が企画する健康づくりフェス

ティバルにも参加・出店いたします。来年以降も観光を研究テーマの基盤に、次のステッ

プである新しい産業・価値観の創出に繋げていかなければなりません。

観光地域づくりによる地域活性化の取り組みは一過性ではなく、継続的に進めなければ

なりません。学校と地域の協力や地元企業、行政などが業種の壁を越えて進めていかなけ

ればいけません。

“シビックプライド”“私たちのまちは私たちが支える”これからも、私たち若い世代が、

もっと、もっと新発田の魅力を再発見し、新発田の観光を全国に発信していきます。

<資料>

◇参考文献 マーケティング、商品開発、ビジネス実務(実教出版)

新潟観光いいトコどり(月刊新潟編集部)

るるぶ情報版新潟佐渡 ’20(JTB パブリシッング)

続日本 100 名城に行こう(日本城郭協会)

◇参考URL

JTB 地域交流: http://www.jtb.co.jp

Up to you : https://up-to-you.me

◇協力企業・団体 新発田市役所、新潟県新発田地域振興局

新発田市観光協会、上・町・町商店街、Teny

パトラン、旅行会社、日本ポールウォーキング協会

宮村製麩所、ウォーキングツアー参加者の皆さん

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第一章

第二章

第三章

第四章

第五章

第六章

終わり

に だい