小児科専門医セミナー...
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小児科専門医セミナー 小児内分泌の緊急
平成25年5月7日 火曜日
鈴木、山田
本日のメニュー
•内分泌疾患の緊急対応
•よくある内分泌疾患の 初期対応
内分泌疾患の緊急
• 甲状腺クリーゼ すぐに専門医へ転院
• 1型糖尿病ケトアシドーシス
• 副腎クリーゼ
• 低血糖 (重症) 検査を中心に
症例 1
11歳女児
36 ㎏。意識障害にて、救急搬送された。
歩行、会話不可で、時に開眼する。 多呼吸あり。
意識障害をきたす疾患
・痙攣?
・頭蓋内出血?
・髄膜炎?脳炎?
・重症敗血症?
・低血糖?
・ヒステリー?
・ ・ ・ ・ ・
・血液検査
血算、生化学、凝固、
血液ガス
・血管確保
・頭部CT
・レントゲン
・心電図
・ ・
3か月前より、夜間に尿でトイレに起きる。
1週間前より、疲労感が強く、2日前より、発熱、腹痛あり。
血糖 860 mg/dl。
病歴追加
糖尿病性ケトアシドーシス
(Diabetic Ketoacidosis:DKA)
の初期対応
DKAの診断
①高血糖(血糖値)≧200mg/dl
②静脈血液ガス分析 pH<7.3 または
HCO3-<15 mmol/l
③血中ケトン体高値 または 尿ケトン陽性
(血中総ケトン 3 mM以上、
βヒドロキシ酪酸 >300μmol/l )
その他
*DKAは、インスリン治療中の児のシックデイや
インスリンの中断、インスリンポンプのトラブル
などでも起こりうる。
*重症度は症例によりまちまち
意識障害が強く呼吸・循環管理が必要の場合は、
ICU管理
軽症で経口摂取可能の場合は、
インスリン皮下注射で治療開始となることもある。
DKAの症状
意識障害 ; 独歩可能~昏睡まで意識障害の程度はさまざま。
進行する。
呼吸の異常; 呼気のケトン臭、早く・深い呼吸(Kussmal大呼吸)
消化器症状; 悪心・嘔吐、急性腹症に似た腹痛
脱水症状; 皮膚ツルゴール低下、粘膜乾燥、頻脈、低血圧
感染を伴う場合は発熱
バイタル 脈拍、呼吸数、血圧、体温
血液 血糖
電解質 [Na、K、Cl、Ca、iP、(Mg)] 補正Na;Na+1.6×(BG-100)/100
血液ガス (pH、HCO3-、pCO2)
血漿浸透圧 2×Na+BG/18で算出も可
BUN、Cr
ケトン体、TG、FFA、インスリン
血液像、Hb、Ht、CRP
HbA1c
(抗GAD抗体、抗インスリン抗体、抗IA-2抗体)
尿検査 ケトン体、尿糖
その他 心電図 K異常高値の場合、早期に
体重測定
適切な培養検体 感染の合併時
DKA診断時の評価項目・検査
2009年 ISPAD (International Society of Pediatric and Adolescent
Diabetes) 国際小児思春期糖尿病学会より、コンセンサスガイドラインより
① 循環動態の改善、水分と電解質の修正
② インスリン作用不足の改善
③ 血糖値の正常化
④ 酸-塩基平衡の改善
⑤ 脳浮腫の予防
治療のポイント
①治療のモニタリング
・ルート確保
(輸液用と頻回採血の2ルートが望ましい)
・心電図、血圧、SpO2モニター
・バイタルサイン、神経学的所見
・血糖値、電解質、静脈血ガスを1-2時間毎に
①輸液
1)まずは、生食で 10(~20)ml/kg 1~2時間で投与
⇒生食の投与のみでも、血糖値は低下する。
2)次の4~6時間;利尿得るまでの移行期
生食または酢酸リンゲル; 維持輸液+欠乏量を48時間で均等配分ペースの輸液
3)その後
維持輸液(0.45%食塩水以上の濃度の液) +欠乏量を48時間で均等配分の輸液
適宜電解質補正
4)血糖<250~300 mg/dlで糖を加える。
0.2~0.3g/㎏/h (GIR 3~5 mg/kg/min)
②インスリン
*インスリン補充は、初期輸液開始1~2時間後から開始
*インスリン静注のボーラス投与行わない。
*インスリン速度; 0.05 U/kg/hr (textでは、0.1 U/kg/h)
速効型インスリン(ヒューマリンR U-100 100 U/ml)
生食100ml+ヒューマリンR 1ml ⇒ 1 U/ml 生食100ml+ヒューマリンR 0.1ml ⇒ 0.1 U/ml
*インスリン投与開始1時間後に血糖チェック
*血糖下降速度;1時間に100 mg/dl 以下
血漿浸透圧の急激な変化は、脳浮腫の危険を増大させる
③ アシドーシスの対応
*原則、炭酸水素ナトリウム(メイロン)は投与しない。 Na負荷が、脳浮腫をきたす可能性ある。
脳内のアシドーシスを悪化させる。
(奇異性脳内アシドーシス)
*メイロン投与が勧められるのは、
最重症症例でpH<6.9。
ショック状態でカテコラミンの使用を考慮または、
蘇生が必要な生命の危機に瀕しているときのみ。
④ 電解質補正
全体的に欠乏状態
1)K補充
インスリンを開始により、細胞内へのK取り込みが促進され
急激な低K血症を来す可能性がある。
・初期生食輸液後、利尿あり、K≦5.5 mEq/lならK添加
・濃度は 30~40 mEq/lで。
2)P補充
リン酸2カリウム
⑤ 脳浮腫について
*DKA死亡原因の60~90%が脳浮腫
*リスク;低年齢(特に5歳未満)、重症アシドーシス、輸液の過剰、
Na補正の遅れ、BUN高値、HCO3-投与、急激な血糖低下
*DKA治療開始~12時間後
脳浮腫の徴候;頭痛、除脈、嘔吐、易刺激性、傾眠傾向、
血圧の変動、血中酸素濃度の低下
⇒ICUへ収容、酸素投与、頭部冷却
①マンニトール 0.25~1.0 g/kgを20分で点滴投与
30分~2時間で効果認められなければ、繰り返し投与
②輸液量を1/3へ減らす。
副腎クリーゼ
副腎クリーゼ
• 副腎自体の問題(先天性副腎皮質過形成)
• 下垂体性の副腎不全
急性期の治療は両者とも同じ。
副腎不全の誘因
飢餓、睡眠不足、発熱、胃腸炎、発表会、
遠足
症例 2
3歳2カ月 女児
• 下垂体前葉機能低下のため、コートリル、チラージンs内服、GH注射をしている
3日間プールに通い、疲れていた。午前2時から突然の嘔吐が出現、普段は8mg/m2/日
のコートリルを内服している、ストレス時用に80mg/m2/日のコートリルを処方されていたが内服できず、午前4時にぐったりして意識レベル低下し来院。痛み刺激に反応なし。
検査結果
• WBC 16300 /μl 血ガス
• CRP 0.1 mg/dl pH 7.295
• BUN 14 mg/dl HCO3 21.1
• Cr 0.4 mg/dl
• Na 137 mEq/L
• K 3.5 mEq/L
• Cl 105 mEq/L
• BS 93 mg/dl
経過
• 副腎不全と判断し
ヒドロコルチゾン を静注し、数時間後には
いつもと変わらない元気さになった
(サクシゾン or ソルコーテフ)
副腎不全の診断名がついている場合、 急性副腎不全の可能性が否定できなければ、 まず治療
副腎不全時の初回ステロイド量
新生児 : 10mg/kg
乳児以降 :
体重x 5mg で切りのいい数字
例) 9kg ⇒ 50 mg
13kg ⇒ 50 mg
15kg ⇒ 100 mg
23kg ⇒ 150 mg
困ったら多めで良い。 150mgが成人量。
副腎不全時の主治医指示
体調不良時には、
「通常内服量の ハイドロコルチゾン(コートリル)
の3-10倍の量を内服するように」
嘔吐、胃腸炎で内服できない場合や、その他原因のいかんに関わらず、体調不良時、外傷時は急性副腎不全と考えます。
副腎不全 追加事項
• 補液開始時の組成と量
ソリタT1 20ml/hr
( 生食500ml+20%糖液2本 20ml/hr )
※ SIADHに注意
• 鉱質コルチコイドの補充をしている症例でも、上述の大量のハイドロコルチゾンが投与されている時は考慮しなくて良い。
• 初期治療開始したら、専門医に相談
症例 3
原因不明の低血糖 10か月女児
• 主訴 : ケイレン重積、低血糖
• 既往歴: 正常分娩、先天代謝異常検査正常
発達に異常なし
H24年4月下痢にて、近医で補液を受けたが、
帰宅後も食事がとれなかった。翌日朝、痙攣にて前医受診、血糖はLow。補液開始して血糖は76まで上昇したが痙攣は続き、痙攣重積の診断で当院へ搬送された。
次に、どんな検査をしますか?
内分泌に限らず、挙げてください
ここに、メモ書きして
症例 10か月女児
• 検査 :
緊急検査 で出せるもの
確定診断検査
※ 初発時の検体が重要です。
低血糖 ファースト・ステップ
• インスリン高値か
• インスリン低値か
鑑別に役立つ検査項目は?
インスリン高値除外
• 血糖
• 遊離脂肪酸
• ケトン (血中、尿中)
• インスリン値(C-peptid 溶血強い時)
すぐ出る○、 すぐ出ることもある()、出ない
内分泌疾患による低血糖
・インスリン過剰分泌
・副腎不全
・GH欠損
急性期に診断するのは、非常に難しい
ホルモン値は、その日には分かりません
低血糖の鑑別
• 救急の現場で、内分泌疾患の鑑別は不可能
代謝異常も含めて鑑別開始。
• 大竹先生のチャートを 使いましょう
大竹先生チャートは 覚えられません。
どこにあるのか、知っていれば良いものです。
大竹先生チャート 骨子
① やらなければいけない検査
スライド 14
② 保存しなければいけない検体
スライド 14
③ 始めるべき治療
アシドーシス有無、 高アンモニア有無
スライド 12、13
④ 治療に対する反応で方向性確認
大竹先生チャート スライド 4-5
低血糖における内分泌疾患の位置づけ
代謝異常ではない?
• 内分泌の鑑別開始 (初期検査がそろったら)
内分泌の低血糖は、検査値の異常がそれほど複雑ではありません
• 治療の必要性
「高アンモニア、アシドーシスの治療は必要なさそうだ」
血糖・電解質管理を主にすればよさそう。
チャート見直し
内分泌異常で見られる所見
・副腎不全: 低Na、脱水、体色黒い
・・・・ あまり特異的でない
・成長ホルモン欠乏:
低身長、鞍鼻
小陰茎(下垂体全体の機能低下)
・高インスリン
GIR>7mg/kg/minならインスリン過剰
高GIR時の水分量を計算しよう
• GIR 5mg/kg/minの場合
5%糖液は、50mg/mlのブドウ糖
5 mg/kg/min を時間になおすと
300 mg/kg/Hr ⇒ 6 ml/kg/Hr
例) 10kgの乳児 60 ml/Hr
比較: 脱水時の急速輸液速度 ml/kg/Hr
糖 7mg/kg/Hr の 輸液速度は?
おまけ
•高インスリンの場合の
必要補液速度は明らかに異常
「これはおかしいな」
治療経過で判断する
副腎不全による低血糖
① 疑うこと、
低Na、低血圧、体色が浅黒い
② ブドウ糖補充で血糖上昇が悪いなら、
ステロイドを1回投与
血糖上昇 ⇒ 副腎不全らしい
あがらない⇒ それ以外
GH欠損による低血糖
① 体型以外に手掛かりなし
② GHの使用は、数日後からで構わない
⇒ 糖液補液・他疾患鑑別
原因不明の低血糖 10か月女児
Na 123 mEq/L blood gas pH 7.495
k 4.1 mEq/L pCO2 23
Cl 96 mEq/L BE -5.0
AST 45 IU/L HCO3 18.0
ALT 12 IU/L Urine pH 7.0
BUN 9.9 mg/dl keton ++
Cr 0.2 mg/dl アンモニア 正常
CRP 2.9 mg/dl
原因不明の低血糖 10か月女児
経過
入院時、痙攣は止まっていたが、痛み刺激に反応する程度の意識状態。血圧は低めに推移。Na値、体色、血圧などより、試しにハイ
ドロコルチゾンを静注し、持続点滴開始。低血糖は改善し、意識も回復。特殊検査結果が出るまで、ステロイドを維持量で継続した。
原因不明の低血糖 10か月女児
ACTH 840 pg/ml (7.2 – 63.3)
cortisol < 1.0 micg/dl (4.0- 18.3)
aldosterone 198 pg/ml (38 - 307)
PRA 5.5 ng/ml/hr (0.3 – 5.4)
尿ステロイドプロフィール :
ステロイド全般に著明低値
尿中有機酸、アミノ酸分析: 異常なし
血中カルニチン分析 : 異常なし
診断: 副腎皮質機能不全 (NNT遺伝子異常)
よくある内分泌疾患
• マススクリーニングでの
TSH 高値
17OHP 高値
※ 軽度高値とパニック値
• 低身長紹介時のポイント
マス・スクリーニング
• TSH 高値
10以上 再検査 (各病院・産院で)
50以上 できるだけ早く専門病院へ
・17OHP 高値
50 ng/ml以上 できるだけ早く専門へ
マス・スクリーニング
健康づくり財団からの指示
• 軽度高値 再検査できる病院を受診
「1週間以内に病院へ」
• 極 高値 出生病院に電話連絡
群馬大にも電話連絡
「 2-3日のうちに専門病院へ」
マス・スクリーニング
• 17OHP高値が判明した時点で、すでに生後10-14日になります。先天性副腎皮質過形成
はその頃に悪化します。報告が来たら、その日の内に病院を受診させるようにしてください
• 電解質異常、血糖値だけでもすぐに調べる必要があります。
• 専門医のいる病院
群馬大、伊勢崎市民、太田記念
17OHP高値
• もし、各病院で検査治療を開始することになれば、
• 電解質、血糖、ACTH、コルチゾール、アルドステロン、レニン活性(PRA)、尿ステロイド分析(慶応大学に依頼)
• 治療前検査が大事です。まずは専門医へコンサルトを。
低身長コンサルト時のポイント
• 両親の身長
• 出生体重、週数、周産期異常
• 思春期の有無 (タンナーステージ)
• 成長曲線
現在身長=-2SD?、年間成長 >4cm?
・ 骨年齢 (計算ソフト)