敦賀発電所1号炉クリアランス認可申請 論点・面談等ス … · ilac g8:03/2009...

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平成30年1月25日 日本原子力発電株式会社 敦賀発電所1号炉クリアランス認可申請 論点・面談等スケジュール 1. 論 点 放射能濃度の評価結果のクリアランスレベルへの適合性判定 不確かさを考慮した場合のクリアランスの判定基準を「評価値がクリアランスレベル(CL:ΣD/C=1)以下、評価値の不確かさの 上限値(片側 97.5%信頼区間)がクリアランスの 10 倍以下とした妥当性 別紙① 放射能濃度確認対象物の選定(対象物・物量) 測定および評価の方法は、汚染性状と全系統を包括した単一の方法であり、放射能濃度確認対象物の発生年度に限定はあるが、一般的な 金属くずであれば、同一の測定条件を設定した単一の専用測定器でクリアランス判定ができるため、放射能濃度確認対象物を詳細に区分 して評価する必要がないことの妥当性 別紙② 2. 広範囲に亘る変更点(評価単位の変更) 「評価単位を測定単位と同一とし、100 ㎏」から「重量 100 ㎏以下の測定単位を複数組み合わせ、重量 1t以内の評価単位を構成」へ変更 したことによる変更箇所 別紙③ 3. 面談等スケジュール 年月 2017.12 2018.1 2018.2 2018.3~ 面談 補正 現地確認 保安規定 申請 質問回答 申請

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平成30年1月25日

日本原子力発電株式会社

敦賀発電所1号炉クリアランス認可申請 論点・面談等スケジュール

1. 論 点

① 放射能濃度の評価結果のクリアランスレベルへの適合性判定

不確かさを考慮した場合のクリアランスの判定基準を「評価値がクリアランスレベル(CL:ΣD/C=1)以下、評価値の不確かさの

上限値(片側 97.5%信頼区間)がクリアランスの 10 倍以下とした妥当性 別紙①

② 放射能濃度確認対象物の選定(対象物・物量)

測定および評価の方法は、汚染性状と全系統を包括した単一の方法であり、放射能濃度確認対象物の発生年度に限定はあるが、一般的な

金属くずであれば、同一の測定条件を設定した単一の専用測定器でクリアランス判定ができるため、放射能濃度確認対象物を詳細に区分

して評価する必要がないことの妥当性 別紙②

2. 広範囲に亘る変更点(評価単位の変更)

「評価単位を測定単位と同一とし、100 ㎏」から「重量 100 ㎏以下の測定単位を複数組み合わせ、重量 1t以内の評価単位を構成」へ変更

したことによる変更箇所 別紙③

3. 面談等スケジュール

年月 2017.12 2018.1 2018.2 2018.3~

面談

補正

現地確認

保安規定

▼ ①

▽ 申請

▼ 質問回答

▽ ②

▽ ③

▽ 申請

放射能濃度の測定及び評価結果のクリアランスレベルへの適合性判定について

1. はじめに

測定量には,常に不確かさが存在し,真の値を求めることは出来ない。ただし,この

「不確かさ」の推定区間は,測定(評価)結果を中心として,真の値が一定の確率で存在

すると期待できる範囲で示せる。

敦賀1号炉の認可申請では,この「不確

かさを考慮した場合のクリアランスの判

定基準」を,右図のように,「評価値がク

リアランスレベル(CL:ΣD/C=1)以下,評

価値の不確かさの上限値(片側 97.5%信頼

区間)が CLの 10 倍以下とすること」とし

ている。

2.クリアランスレベルへの適合性判定

2.1 クリアランスレベルと不確かさの関係

(1)測定値の不確かさ

不確かさとは「用いる情報に基づいて,測定対象量に帰属する量の値のばらつきを

特徴付ける負でないパラメータ1」であり,不確かさの評価法等は,GUM2で規定されて

いる。

(2)クリアランスレベルと不確かさの関係

評価値と,それに対応する不確かさ及びクリアランスレベルの関係については,以

下の5つのパターンが考えられる。

図1 クリアランスレベルと不確かさの関係

Case1 :評価の不確かさの区間に挟まれた評価結果がCLよりも小さい。

Case2 :評価結果の値がCLより小さく,不確かさの上限値がCLよりも上にある。

1 ISO/IEC Guide 99:2007,JCGM200: International vocabulary of metrology-- Basic and general

concepts and associated terms (VIM), http://www.iso.org/sites/JCGM/VIM/JCGM_200e.html 2 ISO Guide98-3,JCGM100: Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM)

CL

CL

(Specified upper limit)

(Case1) (Case2)

不確か

さの推

定範囲

評価値

基準に

適合

不適合

(Case3) (Case4) (Case5)

CL×10

別紙①

1-1

Case3 :評価結果がCL自体に乗っている。

Case4 :評価結果の値がCLよりも大きく,不確かさの下限値がCLよりも下にある。

Case5 :測定の不確かさの区間に挟まれた評価結果がCLよりも大きい。

これらの状況については,「国際試験所認定協力機構(ILAC)の適合性の表明3」の考え

方をベースとして適合性を判断することができる。

まず,(Case5)は条件(CL)に対し不適合,(Case1)は適合となるが,(Case2)~(Case4)につ

いては,それだけでは明確な判断を下せない。つまり,(Case2)~(Case4)の適合性は,「不

確かさ」についての標準,規格基準,仕様や運用基準に従って判断する必要がある。

2. ASSESSMENT OF COMPLIANCE WITH SPECIFICATION 2.5 In the absence of any criteria, test specifications, client’s requirements, or codes of

practice, the following approach is recommended:[...] (d) if the measured single value without the possibility of testing more samples from the same unit of product falls sufficiently close to a specification limit, such that half of the expanded uncertainty interval overlaps the limit, it is not possible to confirm compliance or non-compliance at the stated level of confidence. The test result and expanded uncertainty should be reported together with a statement indicating that neither compliance nor non-compliance was demonstrated. A suitable statement to cover these situations (Case 2, 4, 7 and 9 of Appendix A) would be, for example:

The test result is above (below) the specification limit by a margin less than the measurement uncertainty; it is therefore not possible to state compliance/non-compliance based on 95% level of confidence. However, where a confidence level of less than 95% is acceptable, a compliance/non-compliance statement may be possible.

[ ILAC G8:1996 p8 ]

以上より,CLへの適合性については,法の記載やクリアランス制度の導入までの経

緯,安全指針や規格,及び実際の安全性を考慮して判断する必要があることを踏ま

え,以降で適合性について考察する。

3 ILAC G8:1996 Guidelines on Assessment and Reporting of Compliance with Specification

ILAC G8:03/2009 Guidelines on Assessment and Reporting of Compliance with Specification

1-2

2.2 クリアランス制度の導入までの流れ 我が国においては,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の改

正等によってクリアランス制度が導入された。その導入までに示された基準や報告書

等を以下に示す。

年月 文章名 内容

1996/1 [技術文書 TECDOC-855] IAEA 他

固体状物質に含まれる放射性核種のクリア

ランスレベル

クリアランスレベル(CL)の導出方法につい

ての考え方 [1]

1996/2

[BSS] IAEA 他

電離放射線に対する防護と放射線源の安全

のための国際基本安全基準

規制除外,規制免除及びクリアランスの概

念と中程度の量(1t オーダーの量)に関する

規制免除レベルの設定

[2]

1999/3

[主な原子炉施設におけるクリアランスレベ

ルについて]

TECDOC-855 に沿った日本における主な原子

炉施設の CLの基準値と,原子炉施設におけ

る重要核種等の設定

[3]

2001/7 [原子炉施設におけるクリアランスレベル検

認のあり方について]

検認(CL を用いた事業者の判断と,当局の適

切な関与について)の基本的な考え方

[4]

2004/4 クリアランスレベル検認の具体的方法 検認の手順についての具体的な手法の提案 [5]

2004/8

[安全指針 RS-G-1.7] IAEA 他

規制除外,規制免除及びクリアランスの概

念の適用 (Draft時はDS161)

IAEA 等による,規制除外,規制免除及びク

リアランスの概念の適用に関する指針

[6]

2004/9 [原子力施設におけるクリアランス制度の整

備について]

主に国内のクリアランスの検認についての

具体的な検討(12 月改訂 安全指針 RS-G-

1.7 の値の採用)

[7]

2004/12 [原子炉施設及び核燃料使用施設の解体等に

伴って発生するもののうち放射性物質とし

て取り扱う必要のないものの放射能濃度に

ついて]

安全指針 RS-G-1.7 を用いたクリアランスレ

ベル等の再評価

[8]

2005/5 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制

に関する法律(炉規制法)

法律を改正し,クリアランスに関する制度

を追加(2005 年 12 月施行)

[9]

2005/7 クリアランスの判断方法:2005 日本原子力学会標準

民間規格として判断方法の標準を定める

[10]

2005/11 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制

に関する法律第六十一条の二第四項に規定

する製錬事業者等における工場等において

用いた資材その他のものに含まれる放射性

物質の放射能濃度についての確認等に関す

る規則

クリアランスに関する政令の制定

(2005 年 12 月施行)

[11]

2005/12 実用発電用原子炉の設置,運転等に関する

規則

クリアランスに関する規則の追加

[12]

2006/1 放射能濃度の測定及び評価の方法の認可に

ついて(内規)

「省令における認可の留意点」を定める [13]

1996 1999 2004 2005

TECDOC

-855

BSS

主な原子炉施設にお

けるクリアランスレ

ベルについて

安全指針

RS-G-1.7

原子力施設におけるクリアラ

ンス制度の整備について

省令制定

炉規制法

改正 改正炉規制法

・省令の施行

内規 クリアランス

レベル検認の

具体的方法日本原子力

学会標準

[・・・の解体等に伴っ

て発生するもののうち放

射性物質として取り扱う

必要のないものの放射能

濃度について]

2001

原子炉施設におけ

るクリアランスレ

ベル検認の在り方

について

1-3

2.3 法律の記載

「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」[9] 第六十一条の二で

は,放射性物質を含む資材等をクリアランスしようとするものは,予め認可を受けた

測定及び評価の方法に基づき測定及び評価を行い,その結果が原子力規制委員会規則

で定めたクリアランスの基準以下であることの確認を受けなくてはならないとしてい

る。

そして「製錬事業者等における工場等において用いた資材その他のものに含まれる

放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則[11](以下「放射能濃度確認規

則」という。)」の第二条では,クリアランスの基準を「評価単位におけるそれぞれの

放射性物質の平均放射能濃度の値を別表第一の第二欄に掲げるそれぞれの放射性物質

に応じた放射能濃度の値で除して得られるそれぞれの割合の和が一を超えないこと」

としている。

この別表の値とΣD/C=1で上限値は示されているが,「不確かさ」についての運用

基準は含まれておらず,不確かさ等は認可を受けた測定及び評価の方法で示されるこ

ととなっている。

「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」

第六十一条の二 原子力事業者等は,工場等において用いた資材その他の物に含ま

れる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要

としないものとして原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて,原

子力規制委員会規則で定めるところにより,原子力規制委員会の確認を受けることが

できる。

2 前項の確認を受けようとする者は,原子力規制委員会規則で定めるところによ

りあらかじめ原子力規制委員会の認可を受けた放射能濃度の測定及び評価の方法に基

づき,その確認を受けようとする物に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評

価を行い,その結果を記載した申請書その他原子力規制委員会規則で定める書類を原

子力規制委員会に提出しなければならない。

3 第一項の規定により原子力規制委員会の確認を受けた者は,この法律,廃棄物

の処理及び清掃に関する法律 (昭和四十五年法律第百三十七号)その他の政令で定

める法令の適用については,核燃料物質によって汚染された物でないものとして取り

扱うものとする。

「製錬事業者等における工場等に置いて用いた資材その他のものに含まれる放射性物

質の放射能濃度についての確認等に関する規則」

第二条 発電用原子炉設置者が発電用原子炉を設置した工場等において用いた資材そ

の他の物のうち金属くず,コンクリートの破片及びガラスくず(ロックウール及びグ

ラスウールに限る。)に含まれる放射性物質の放射能濃度についての法第六十一条の

二第一項の原子力規制委員会規則で定める基準は,次に掲げるものとする。

一 (略)

二 評価に用いる放射性物質の種類が二種類以上である場合にあっては,評価

単位におけるそれぞれの放射性物質の平均放射能濃度の値を別表第一の第二欄に

掲げるそれぞれの放射性物質に応じた放射能濃度の値で除して得られるそれぞれ

の割合の和が一を超えないこと。

1-4

「放射能濃度の測定及び評価の方法についての認可」の申請の審査基準(放射能濃度

確認規則第六条)においては,濃度の決定方法が「適切」であり,放射線測定装置が

「適切」なものであり,そして測定条件が「基準の放射能濃度以下である事を適切に

判断」できるものであることと記載されている。つまり,放射能濃度確認規則には,

濃度の決定方法,測定装置及び測定条件が「クリアランス検認に適切である」以上の

基準に関する記述はない。

第四条 原子力規制委員会は,法第六十一条の二第一項 の規定により次に掲げる事

項を確認したときは,当該確認に係る確認証を交付する。

一 評価に用いる放射性物質の放射能濃度の値が第二条に規定する基準を満たし

ていること。

二 放射能濃度確認対象物の放射能濃度の測定及び評価の方法が第五条第一項の

規定に基づき認可を受けた方法に従って行われていること。

第五条 法第六十一条の二第二項 の規定により,放射能濃度の測定及び評価の方法

の認可を受けようとする者は,次に掲げる事項を記載した申請書を原子力規制委員

会に提出しなければならない。(以下略)

第六条 法第六十一条の二第二項 の規定に基づく放射性物質の放射能濃度の測定及

び評価の方法の認可の基準は,次に掲げるとおりとする。

評価に用いる放射性物質は,放射能濃度確認対象物中に含まれる放射性物質のう

ち,放射線量を評価する上で重要となるものであること。

放射能濃度の分布の均一性及び想定される放射能濃度を考慮し,適切な重量であ

ること。

放射能濃度確認対象物中の放射性物質の放射能濃度の決定が,放射能濃度確認対

象物の汚染の性状を考慮し,放射線測定その他の適切な方法によるものであるこ

と。ただし,放射線測定装置によって測定することが困難である場合には,適切に

設定された放射性物質の組成比,計算その他の方法により放射能濃度が決定されて

いるものであること。

放射能濃度確認対象物中の放射性物質の放射能濃度の測定に使用する放射線測定

装置及び測定条件は,次によるものであること。

イ 放射能濃度の測定に使用する放射線測定装置は,放射能濃度確認対象物の

形状,材質,評価単位,汚染の性状等に応じた適切なものであること。

ロ 放射能濃度の測定条件は,第二条に規定する基準の放射能濃度以下である

ことを適切に判断できるものであること。

さらに具体的な審査基準については,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関

する法律等に基づく原子力規制委員会の処分に係る審査基準等」4の第六十一条の二第一

項及び第六十一条の二第二項についての項目で,「基準は,放射能濃度確認規則第六条に

規定されている。さらに具体的な審査基準を作成することは困難であるため,具体的な

審査基準を設定しない。」と記述されていることから設定されていないと判断できる。

行政手続法第五条では「行政庁は,審査基準を定めるにあたっては,許認可等の性質に

照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。」「行政庁は,行政上特別の支

障があるときを除き,法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付

4 原規総発第 1709112 号(平成 29年 9月 11日 原子力規制委員会決定)

1-5

けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない。」と定めている

ので,不確かさについては「適切」以上の根拠を求めることができない。

なお,旧原子力安全・保安院(以降「保安院」と記載)での審査基準であった「放射能濃

度の測定及び評価の方法の認可について(内規)」[13]5,及び技術要件や運用手順につい

ての保安院の報告書[5]でも,誤差や裕度についての明確な記載はない。ただし,内規の

解釈に関する文章6「原子炉施設のクリアランスに係る基準についてのガイダンス」

(JNES7-SSレポート 2006年10月)では安全裕度について言及しており,これについては後

述する(2.4.3民間規格と規制機関の認識)。

以上より,法律では,クリアランス可能な基準値については明確に定めているものの,

行政庁では,測定とその評価結果の「不確かさ」に相当する技術的要件や判断基準を「適

切」以上に定めておらず,法律以外の標準(基準・指針)や技術的要件から「適切さ」を

判断する必要がある。

そこで,続いて具体的な安全性の評価や国による検討から,「適切」な判断基準につい

ての要件整理を行う。

2.4 安全指針,及びクリアランス制度の導入までの国による検討等

2.4.1 IAEA による安全指針(安全指針 RS-G-1.7)等

IAEAのクリアランス関連の文章には,技術文書(TECDOC-85[1]),安全指針( RS-G-

1.7 [3])やBSS8(1996 年版)[2] 等がある。

これらのIAEAの安全基準等は,確かに加盟国を法的に拘束するものではない。しか

し,我が国のクリアランスレベルは,「クリアランスを含めた放射線防護の基準につい

ての国際的整合性の観点,クリアランスされた物の国際的流通の潜在的可能性,原子

炉等解体廃棄物以外の廃棄物への適用を考慮した場合の汎用性,規制のわかりやすさ

などの点を考慮して,原子炉施設の廃止措置等に伴って発生する廃棄物の国の規制値

としてのクリアランスレベルの設定に当たっては,基本的にIAEA安全指針に示された

値を用いることが適当と考えられる。」[7]との考え方から,安全指針RS-G-1.7の値が

採用されており,「適切さ」の判断基準をIAEAの指針等に拠ることは適切であると判断

する。

5 規制等業務の当面の実施手順に関する方針(原規総発120919097号)に基づき,内部規範として継承さ

れていると考えている。

6 行政手続法の施行に当たって 総管第 211 号(平成 6年 9月 13日)

「審査基準を公にするに当たっては,審査基準が,申請により求められた許認可等をするかどうかをその

法令の定めに従って判断するために必要とされる基準であることから,当該法令に規定されている条文や

その解釈に関する文書を併せて申請者等に示すことができるようにしておくこと。」

7 旧原子力安全基盤機構 8 現在は IAEA 安全基準体系の中で GSR Part3(Radiation Protection and Safety of Radiation

Sources: International Basic Safety Standards)として位置付けられている。

1-6

(1) 関連指針・レポートの概要

1) IAEA Safety Standards for protecting people and the environment

GSR Part1:「Governmental, Legal and Regulatory Framework for Safety」にお

いて以下の記載がある。

◯施設または活動に対する審査と評価は,「graded approach」に従って,施設ま

たは活動に付随する放射線リスクとつり合いの取れたものでなくてはならない。

◯規制管理の安定性と一貫性を確実なものとし,個々の職員による意思決定にお

いて主観を防がねばならない。

Requirement 26: Graded approach to review and assessment of a facility or an activity Review and assessment of a facility or an activity shall be commensurate with the radiation risks associated with the facility or activity, in accordance with a graded approach.

Requirement 22: Stability and consistency of regulatory control The regulatory body shall ensure that regulatory control is stable and consistent. 4.26. The regulatory process shall be a formal process that is based on specified policies, principles and associated criteria, and that follows specified procedures as established in the management system. The process shall ensure the stability and consistency of regulatory control and shall prevent subjectivity in decision making by the individual staff members of the regulatory body.

GSR Part3(旧BSS[2]):「Radiation Protection and Safety of Radiation

Sources」 Schedule I “EXEMPTION AND CLEARANCE”のパラグラフI.11では,「合

理的に予測可能な状況において,いかなる個人もクリアランスされた物質から受け

ると考えられる実効線量が1年で10μSvオーダーあるいはそれ以下であるならば,パ

ラグラフI.10(a)にあるように,物質はさらなる考慮なしクリアランスできる。ま

た,発生確率の低いシナリオを考慮するために,異なる規準を用いることができ

る。すなわち,そのような発生確率の低いシナリオでいかなる個人が受けると考え

られる実効線量が1年で1mSvを超えないことである。」としている。

I.11. Material may be cleared without further consideration under the terms of para. I.10(a) provided that in reasonably foreseeable circumstances the effective dose expected to be incurred by any individual owing to the cleared material is of the order of 10 μSv or less in a year. To take into account low probability scenarios, a different criterion can be used, namely that the effective dose expected to be incurred by any individual for such low probability scenarios does not exceed 1 mSv in a year.

また,ここで示された,パラグラフI.10(クリアランスのための一般的な規準)は

次のとおりである。

(a) クリアランスされた物質から生じる放射線リスクが規制管理を是認しないほ

ど低いこと。そしてクリアランスのための一般的な規準を満たすことの失敗につ

ながりうる状況が発生しそうもないこと。

1-7

(b) 物質の継続した規制管理が正味の便益をもたらさず,規制管理のためのいか

なる合理的な手段も個人線量あるいは健康リスクの低減の観点から価値のある収

益を達成しそうもないこと。

2) TECDOC-855

クリアランスレベルの算定の根拠,使用される手法等を定め,国際的に適用可能な

無条件クリアランスレベルのガイダンスを提示している。現行のクリアランスレベ

ルはこの技術文章に沿った評価方法で設定されている。

前提としては,合理的なクリアランス処理では数十μSv 程度は些細なものとみな

せ,クリアランス可能ということである。そのうえで無条件のクリアランスレベル

を評価するための基準として 10μSv を使用している。

また,この評価手法については,「放射線数学的モデルの不確実性から,各放射

性核種に単一の数字を付けることはできず,大きさ順に分類するだけである。」「規

制当局によってクリアランスレベルの単一の値が要求される場合,対数で丸めた数

値が提案される。」としており,クリアランスレベルは保守的ではあるが,精度を

持つ算出方法で求められるものではないことが示されている。

3. DERIVED UNCONDITIONAL CLEARANCE LEVELS FOR RADIONUCLIDES IN SOLID MATERIALS METHOD OF DERIVATION 306. Compliance with the derived values for unconditional clearance from regulatory control of solid materials (Table I) will provide a high degree of assurance that the individual dose criterion of 10μSv/a will not be exceeded, irrespective of the use or application of material after its release. The values have been derived assuming the equal possibility of disposal, incineration, recycling or reuse. Furthermore, it is assumed that the cleared materials could be used anywhere, e.g. in another country as a result of transboundary movement. The analyses of potential radiological impact are, therefore, necessarily generic and conservative. The levels may be regarded as those below which release from regulatory control is 'automatic', without further consideration being needed. As explained in the Foreword, release from regulatory control may also be allowed under other conditions. 307. Table I should be interpreted as follows: (a) The uncertainties in the results of studies used to develop the classification do not

allow a single number to be attached to each radionuclide but only categorization by order of magnitude.

(b) Where a single value of the clearance level is required by regulators, the log mean values for each category are proposed for use as representative clearance level values. The clearance levels are then 0.3, 3, 30, 300 and 3000 Bq/g for the five classes.

3) 安全指針RS-G-1.7

RS-G-1.7 以下の a)b)の記述から,クリアランスレベルの考え方自体に,1 桁程度の裕

度が見込まれており,リスクに応じた規制としてはオーダー程度の不確かさを許容する

と判断できる。

a) クリアランスで考慮すべき線量等

算定根拠となった線量は 10μSv/年であるが,IAEA がクリアランスで考慮すべ

1-8

き線量として勧告しているのは,10μSv/年ではなく「10μSv/年のオーダー

( 100μSv/年を超えない)」である。そして,そこからクリアランスレベルを設定

する際には,「確率論的解析で発生頻度が小さいと考えられるシナリオでも

100μSv/年を超えない」という結果であれば,適切であると評価している。また,

低確率事象による実効線量は 1mSv/yを超えるべきではないという追記基準が使用

されている。

3.4. The primary radiological basis for establishing values of activity concentration for the exemption of bulk amounts of material and for clearance is that the effective doses to individuals should be of the order of 10 μSv or less in a year. To take account of the occurrence of low probability events leading to higher radiation exposures, an additional criterion was used, namely, the effective doses due to such low probability events should not exceed 1mSv in a year.

b) 「段階的(graded)アプローチ」

安全指針RS-G-1.7では,クリアランスに対する段階的アプローチの適用として,

「規制当局はクリアランスレベルの10倍程度をクリアランス判断の基準としてもよ

い」との考えを示している。

5.12. For activity concentrations that exceed the relevant values in Table 1 or Table 2 by several times (e.g. up to ten times), the regulatory body may decide (where the national regulatory framework so allows) that the optimum regulatory option is not to apply regulatory requirements to the legal person responsible for the material. The mechanism for giving effect to such a decision will depend on the nature of the national regulatory infrastructure. In many cases, a decision will be made by the regulatory body on a case by case basis, following notification, and will take the form of exemption. In some cases, the regulatory body may specify that exposure arising from certain human activities involving activity concentrations of this magnitude need not be regulated.

4) Monitoring for Compliance with Exemption and Clearance Levels

クリアランス測定に対する IAEA のレポート9では,原子炉等のプラントから排出され

る複雑な混合物の場合について,「測定の不確かさに放射性核種比の不確かさを加え

た」不確かさを検討している。ここでは,97.5%の信頼性で,不確かさの上限値がクリ

アランスレベルの 10 倍以下であれば,安全性は確保されるとしている。

また,安全性評価の方法として(財)電力中央研究所の確率分布計算システム(PDCS:

Probability Distribution Calculation System)10が紹介されている。

(2) 裕度等についての考え方

1)から 3)の記載より,クリアランスレベルは保守的に定められており,リスクを考慮

すれば,オーダー程度の不確かさを許容できることが分かる。また,4)で紹介された事

例は今回の判定基準そのものである。

これらの安全指針等の記載から,1.の判断基準で安全は確保でき,国際標準とも一致

9 IAEA Safety Reports Series No.67 “Monitoring for Compliance with Exemption and Clearance Levels”,2012 , 61 10 T. Hattori, “Approach to Safety Margin for Uncertainty in Measurement and Nuclide Spectrum in Clearance Level Inspection”, Proceedings of the 4th International Symposium, Release of Radioactive Material from Regulatory Control -Harmonization of Clearance levels and Release Procedures , 20-22 March 2006, Hamburg, Germany.

1-9

することが確認できる。

2.4.2 法制化までの委員会等での検討,及び報告書

法制化段階での検討は,「クリアランスレベルやクリアランスの基本的な考えを定める

もの」と「具体的な運用を定めるもの」の両者について行われた。

前者は原子力安全委員会(放射性廃棄物・廃止措置専門部会クリアランス分科会)で,後

者は総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会で検討されて

おり,其々の検討結果が報告書としてまとめられている。

旧原子力安全委員会では,IAEA の手法(技術文書 TECDOC-855)に準拠した解析でクリア

ランスレベルの評価と重要核種の選定等を行ない,「主な原子力施設におけるクリアランス

レベルについて」[2](原子力安全委員会放射性廃棄物安全基準専門部会)としてまとめて

いる。その後,「原子炉施設におけるクリアランスレベル検認のあり方」でクリアランスの

基本的な考え方が示された。

この[2]でのクリアランスレベル設定には,「評価値がクリアランスレベルならば,発生頻

度が小さいと考えられるシナリオでも 100μ

Sv/年を超えない」ことを担保するための判定

を行っている。その手法としては,まず,確立

論的解析で「10μSv/年相当の対象物核種濃度」

の「97.5%下限値11が最小を示す評価経路」を決

めて,その経路の最小値(「97.5%下限値の最小

値」)を求めます。そして,その最小値(濃度)の

10 倍値(100μSv/年相当濃度)と「決定論的な方

法を用いた評価による決定経路のクリアラン

スレベル」を比較して,保守性を判定している。

また,IAEAによるRS-G-1.7(DS-161)の策定時には,両者のシナリオ,モデル,パラメー

タ等について比較検討し,DS-161の知見を反映することが適当と考えられる事項について

原子力安全委員会の報告内容[2]に反映させ,クリアランスレベルを再評価している。

この再評価は,第10回から第13回のクリアランス分科会で行われているが,DS161のク

リアランスレベルついてはオーダーで議論するべきものであり,「graded approach」の適

用を考慮するべきであるとされている。そして,その評価結果は,「原子炉施設及び核燃

料使用施設の解体等に伴って発生するもののうち放射性物質として取り扱う必要のないも

のの放射能濃度について」[8]で纏められているが,そこでは,「graded approach」をもと

に,再評価結果とRS-G-1.7の値の整合をとっている。

このように,法律のクリアランスレベルは「graded approach」を考慮に入れ,オーダー

程度の「不確かさ」を許容した検討の結果となっている。

11 「97.5%片側信頼区間下限値」を「97.5%下限値」と記載している。

1-10

再評価におけるクリアランスレベルの計算値とRS-G-1.7 の計算値との相違は,

一部の核種を除いて,1 桁以内(10 倍以下で1/10 以上)であった。

RS-G-1.7 では,規制免除レベルを導出する際の個人線量の規準を10μSv/yのオ

ーダー以下であるべきとしており,また,「graded approach」において,規制免

除レベルの10倍までは規制当局の判断で,規制免除またはクリアランスを認め得

るとしていることから,1 桁以内であれば,クリアランスレベルとしてほぼ同等

であると言える。([8] p17)

2.4.3 民間規格と規制機関の認識

日本原子力学会標準[10]では,IAEAの指針と法制化の過程等を考慮し,「図1の(C)か

つ測定の不確かさの上限値(片側97.5%信頼区間)がCLの10倍以内」という場合にはクリ

アランス可能としている。

さらに,「原子炉施設のクリアランスに係る基準についてのガイダンス」(JNES-SSレ

ポート 2006年10月)では,核種組成比設定時の安全裕度を以下のように紹介している

(ここでいう片側信頼区間上限値は不確かさの上限値と同一とみなせる) 。

安全裕度の判定は,各核種の濃度評価の過程における不確定性(測定誤差・

核種組成比等の誤差)に基づくΣD/Cの確率分布を求め,その97.5%片側信頼区

間上限値と不確定性を考慮しないで計算したΣD/Cの10倍値と比較することで

行う。97.5%片側信頼区間上限値がΣD/Cの10倍値を超える場合は,その程度に

応じて安全裕度を設定することとしており,具体的には97.5%片側信頼区間上

限値の1/10を安全裕度に設定するとしている。

ただし,この方法は核種組成比や平均放射能濃度をサンプル分析データの幾

何平均値で評価することを前提としたものである。核種組成比や平均放射能濃

度を幾何平均値で評価することで,理論的には真値に近い合理的な評価が可能

であるものの,誤差が大きい場合には基準値を大きく上回ってしまう懸念があ

るため,そのような場合に安全裕度を設定するというものである。また,Σ

D/Cの確率分布の10倍値を裕度設定要否の基準としているのは,基準値を大き

く上回ることを基準値の10倍と設定したためであるが,これは,誤差が大きい

場合でもクリアランスレベル算出の基準線量とした10μSv/y の10 倍を超えな

いようにするという考えに基づいたものである。

もともと,クリアランスで考慮すべき線量としてRS-G-1.7で勧告している線

量は10μSv/y ちょうどではなく10μSv/y のオーダー(すなわち100μSv/y を

超えないレベル)であり,安全裕度の設定根拠はIAEAのこの考え方に合致する

ものである。 [ JNES-SSレポート p22 ]

このレポートを作成した旧独立行政法人原子力安全基盤機構は,レポート中(p.52)で,「本レポートは,これまでのJNES によるNISA 技術支援の結果を踏まえ,NISA(放射性廃棄物規制課)の意見を拝聴しつつ作成した。(中略)クリアランス関係者に

おいてはこの旨を十分に踏まえて運用されることについても期待したい。」と述べて

いる。このことから,安全裕度については日本原子力学会標準の考え方が一般的であ

ったことが裏付けられる。また,文部科学省におけるクリアランスレベルの検討時に

1-11

も,当レポートを用いてクリアランス制度の説明が行われており12,当ガイダンスが

広く認知されていたと考えられる。

2.4.4 過去の認可申請との整合

当社の東海発電所のクリアランスでは,「核種組成比等に起因する不確かさの上限値

(97.5%片側信頼区間上限値) が10以下である場合は,安全裕度の設定は不要である」等

の考え方を採用し,すでに審議され,認可されている。その審議内容は以下のとおり。

1) 「核種組成比等に起因する不確かさの上限値(97.5%片側信頼区間上限値)

が10を超える」場合は(信頼区間上限値/10)の安全裕度を設定,「97.5%片側信

頼区間上限値が10以下」の場合は,安全裕度の設定は不要としている。そのう

えでPDCSを用いて信頼区間上限値を評価し,必要に応じた安全裕度の設定を行

うこととする。

2) 測定器の幾何学的効率や検出効率等は,137Cs模擬線源を用いた測定で資材

の形状等によらず測定値/設定値が1以上となっており保守的とみなせる。

この測定や不確かさに関する取扱いは,敦賀1号炉の認可申請のクリアランス判断と

大きな違いはなく,東海発電所の前例に倣った今回の基準は適正であると判断できる。

以下に,確率分布計算システム(PDCS)による片側97.5%信頼区間上限値の評価結果

と安全裕度の設定を示す。

1) 東海発電所

① 平成 19 年 4 月確認申請書

原子炉停止 8 年後の年度初め

における裕度評価の結果

減衰

期間

97.5%値

上限値裕度

8 年 CL×3.5 1.0

対象 金属 107 トン

② 平成 20 年 3 月確認申請書

原子炉停止 9 年後の年度初め

における裕度評価の結果

減衰

期間

97.5%値

上限値裕度

9 年 CL×3.5 1.0

対象 金属 291 トン

12 第17回クリアランス技術検討ワーキンググループ

1-12

2) 敦賀1号炉

「資材等に含まれる放射性物質の放射能濃度の測定及び評価方法の認可申請書」で

の裕度評価の結果

減衰期間 97.5%値上限値 裕度

6年 CL×1.7 1.0

50 年 CL×6.2 1.0

3. 評価結果のクリアランスレベルへの適合性判定

2.の検討結果から,「図1の(C)かつ測定(評価)の不確かさの上限値(片側97.5%信頼区

間)がクリアランスの10倍以内の場合には,クリアランス可能とする(安全裕度を設定し

ない)」という適合性判定の基準が,法令に反せず,過去の審査やIAEAの安全指針等とも

合致するものと考えられる。

従って,当社では,敦賀1号炉の認可申請におけるクリアランス判断において,上記の

適合性判定基準を採用した。

なお,敦賀1号炉の認可申請の測定および評価の方法における不確かさ13は,上記2.4.4

のとおり減衰期間50年でも6.2程度であるので,判定基準に適合している。

13 「放射能濃度確認規則第6条第3号」に関する説明資料 添付 6参照

1-13

運用に伴う不確かさについては,品質保

証で担保するため評価には含まない

測定評価における不確かさ

1. 不確かさの要因

不確かさの要因は,測定装置によるγ核種の濃度評価に係るものとγ核種以外の核種の

計算評価に係るものに大別できる。

主な要因を下図に示す。

測定装置 放射線検出器

(ハードウエア)

重量計

レーザー形状認識装置

統計的計測誤差

測定装置 換算係数の設定 対象物形状

(計算・設定) 材質*2

汚染性状*2

校正

BG 補正

難測定核種の評価 核種組成比 サンプルの分類(代表性)

代表値(幾何平均)からのばらつき

平均濃度 サンプルの分類(代表性)

代表値(幾何平均)からのばらつき

運用*3

1-14

2. 計測・評価の不確かさ

2.1 測定装置(ハードウエア)

重量計・レーザー測装置等による不確かさは換算係数の妥当性の確認や繰り返し

測定誤差の評価に含まれるため,通常,個々の評価は不要1である。

繰り返し測定誤差はクリアランスレベルの測定で、1%程度となる2。

2.2 測定装置(計算評価・設定)

模擬線源(137Cs)による評価で,8.55%(r2)程度の過小評価となる場合があるが,保

守性に問題はない3

なお、鉄と同等又は以下の密度であれば,材質の差異は考慮する必要はない4。

また、汚染性状については,計算結果の比較より,二次汚染のみで評価すること

とした。

2.3 γ放出核種

実際の測定では、検出感度の低い核種を想定した換算係数を用いる事で、20%程度

の過大評価は期待できるため、2.1 の不確かさを考慮しても過大評価となる。

また、γ放出核種の各種組成比はクリアランス判断に影響したいため、評価しな

い。

2.4 難測定核種

サンプルの分類(代表性)やサンプル分析結果の代表値(幾何平均)からのばらつ

き、2.2 の要因による不確かさが考えられる。

(1) サンプルの分類(代表性)

F 検定で確認済

(2) 代表値(幾何平均)からのばらつき、2.2 の要因による不確かさの評価

分数和確率分布計算コードで、2.2 の要因による不確かさを 30%として評価し、

97.5%片側信頼区間上限値がクリアランスレベルの 10 倍以下である事を確認し

ている。なお、2.3 よりγ放出核種は過大評価も期待できるので 2.2 の要因によ

1 独立行政法人原子力安全基盤機構,平成 18年度クリアランス精度の整備に係る調査に関する報告書(平

成 19年),2007,24

2 繰り返し測定誤差・レーザー計測誤差についての詳細は,独立行政法人原子力安全基盤機構,同上,45

~46 を参照

繰り返し誤差は主に統計的計数誤差によるものであると考えられる。

(参考:独立行政法人原子力安全基盤機構 同上 ,45-46)

3 積み重ねた対象物を除けば,設定放射能濃度とほぼ一致するか,下回ってもr2 の誤差の範囲内であ

り、保守的である。

(参考文献:独立行政法人原子力安全基盤機構 平成18年度クリアランス精度の整備に係る調査に関する

報告書(平成 19年),2007,42-44)

4 M.SASAKI and T.HATTORI,“Development of clearance automatic laser inspection system”,2005,

32-34

1-15

る 30%の不確かさは確保される。

2.5 評価核種のΣD/C

評価核種選定の手法より 10%の過小評価がありえるが、そのことを考慮しても、

不確かさは、添付書類五の 2 で求めたクリアランスレベルの 6.2 倍を超える事はな

い。

1-16

2. 放射能濃度の決定方法と不確かさ

濃度決定方法(二次汚染)のフローとそれぞれでの不確かさを下図に示す。

γ線放出核種との

相関関係判断*1

⇒137Cs と相関関係

γ線放出核種との

相関関係判断*1

⇒60Co と相関関係

γ線放出核種との

相関関係判断*1

⇒相関関係なし

専用測定装置で計測

測定結果:全γ線計数率(s-1)

重量:W(kg)・形状データ

54 Mn 60 Co 94Nb 108mAg 134 Cs 137 Cs 152 Eu 154 Eu

239Pu・241Am

90Sr 63Ni 3H

全量 137Cs と想定

平均放射能濃度を算定⇒Dcs

放射性核種組成比法 平均放射濃度法

ΣDi/Ci

全γ線グループ測定法

放射能検出器

重量計

形状認識(レーザー)

線源(統計的計数誤差)

形状・線源位置

校正精度

測定条件の設定

BG 変動

材質

模擬線源(137Cs)による評価

で,8%(r2)程度の過小評価と

なる場合があるが,保守性に

問題はない*1

繰り返し測定誤差 10%程度*2

判断に十分な性能を有すると

評価*3

本文 5 で求めた組成比の対象

物で過大評価(20~100%)とな

る。

Ccsを計算で求めた「γ線放出核種の

組成比」で配分し,γ線放出核種の

濃度Ciを求める。この濃度DiとC(γ

放出核種で共通)から,γ線放出核

種のΣDi/Ciを求める。

ΣDi/Ci= D/Ccs

⇒計算による核種の組成

比は保守性と無関係

本文 5で求めた組

成比の対象物では

過大評価(0.1~

200%)のとなる。

全量 137Cs とし

て,平均放射能

濃度を算定

本文 5で評価した組

成比の対象物では過

大評価(40%以上)とな

る。

サンプルの分類(代表性)

F 検定で確認済

代表値(幾何平均)からのばらつき

全サンプルデータの幾何

平均から放射性核種組成

比を設定

全サンプルデータの幾何

平均から放射性核種組成

比を設定

サンプルデータの幾何

平均から平均濃度を設

サンプルの分類(代表性)

F 検定で確認済

代表値(幾何平均)からのばらつき

サンプルの分類(代表性)

F 検定で確認済

代表値(幾何平均)からのばらつき

60Co の平均放射能濃

度に,放射性核種組

成比をかけて濃度

DNiを算定

D/C

換算

係数

係数設

定(測定

誤差)

評価対象核種の選定

(選定手法・組成比計算)

137Cs の平均放射能

濃度に,放射性核

種組成比をかけて

濃度 DSrを算定

Di/Ci D/C

内規で定められた対象核種の選定手法により,10%程度過小評価となる可能性があるが,保守性

は保たれている。また,組成比計算(本文 5)の精度はオーダー程度で確保されている。

確率分布計算コードでの 97.5%片側信頼

区間上限値を評価。

測定の不確かさは相対標準偏差 30%の正

規分布とする。

ΣDi/Ci で規格化した上限値を以下に示

す。

減衰期間 6年 1.7

*1: 積み重ねた対象物を除けば,設定

放射能濃度とほぼ一致するか,下回っ

てもr2 の誤差の範囲内である。

(参考文献:独立行政法人原子力安全基

盤機構 平成18年度クリアランス精

度の整備に係る調査に関する報告書

(平成 19年),2007,42-44)

*2: 繰り返し誤差は主に統計的計数誤

差によるものであると考えられる。

(参考:独立行政法人原子力安全基盤機

構 同上 ,45-46)

*3 特異なケースでは過小評価になる

場合があっても必ずしも問題ではない

と考えられる

(参考文献:①独立行政法人原子力安全

基盤機構 同上 p22-23

②M M.SASAKI and

T.HATTORI,“Development of

clearance automatic laser

inspection system”,2005, 17-35 )

全量 60Co として,

平均放射能濃度

を算定

γ線放出核種のΣDi/Ciは,

計測や核種組成比の不確か

さを考慮しても,過大評価

となる。

計測の不確か

さを考慮して

も,137Cs の

平均放射能濃

度は,過大評

価となる。

減衰期間が長くなればなる

ほど 60Co の平均放射能濃度

は,過大評価となる。

減衰期間 50年時点では,

値計測の不確かさを考慮し

ても倍近い過大評価とな

る。

計測と核種選定手法による不確かさによる過小評価

を見込んだとしても,ΣDi/Ciで規格化した 97.5%片

側信頼区間上限値の変動はなく,判定に影響はない。

( 減衰期間 50 年では,ΣDi/Ciで規格化した 97.5%

片側信頼区間上限値は 6.2 であり,10以下となる。)

1-17

別紙②

放射能濃度確認対象物の記載方法について

認可申請した敦賀 1号炉の測定および評価の方法は,汚染性状と全系統を包括

した単一の方法であり,放射能濃度確認対象物の発生年度に限定はあるが,一般

的な金属くず(ステンレス・炭素鋼・銅・アルミ)であれば,同一の測定条件を設

定した単一の専用測定器でクリアランス判定ができる。

その為,放射能濃度確認対象物を詳細に区分して評価する必要はなく,「本文

四 放射能濃度確認対象物の種類」等で対象の機器名を個別記載していない。

参考 測定方法(濃度の決定方法)について

以下のとおり,汚染性状を二次的な汚染とし,全系統で共通の核種組成比・

平均濃度を設定した単一の濃度決定(測定)方法で,全ての放射能濃度確認対象

物が測定・評価できる。

-> 参照:「本文七 放射能濃度を決定する方法」 3.評価単位の平均放射能濃度の算定

1)系統による測定・評価方法の違い

γ核種については専用測定装置で測定を行うが,全てのγ核種を検出感度が

低い核種であると想定して評価するので,系統による組成比の変動を考慮する

必要がない。

-> 参照 :「添付書類五 放射能濃度を決定する方法に関する説明書」 1.1 (1)

γ核種以外については,核種組成比法と平均濃度法を用いるが,サンプルデ

ータの分散分析検定(F検定)結果及び核種の系統内における挙動の特性か

ら,系統毎に分類する必要はないとした。

-> 参照:「添付書類五 放射能濃度を決定する方法に関する説明書」 1.1 (2)(3)

2)汚染性状(放射化汚染・二次汚染汚染)による測定・評価方法の違い

主要な系統について,同一の放射能をもつ放射化汚染・二次的な汚染による

対象物を想定し,それぞれの測定パラメータで測定結果を計算したところ,二

次的な汚染による対象物の方が値(ΣD/C)は大きくなるとの結果となった。

その為,全ての対象物を二次的な汚染と仮定してクリアランス判定を行え

ば,保守的となると評価できる。

-> 参照:「添付書類五 放射能濃度を決定する方法に関する説明書」 1.2

2-1

別紙③

評価単位の変更に伴う記載の修正について

1. 修正の概要

「重量 100kg 以下の測定単位を複数組み合わせて,重量 1t以内の評価単位を構成

する。」こととし,併せて本文六と添付書類四及びその他の関連部分も修正する。

2. 修正項目

2.1 放射能濃度の評価単位

対応資料 「放射能濃度確認規則第6条第2号についての適合性の説明資料」

「本文六 放射能濃度の評価単位」及び「添付書類四 放射能濃度の評価単位に関

する説明書」は全面的に修正する。

(1) 「本文六 放射能濃度の評価単位」の修正内容(概要)

評価単位の定義を「放射能濃度確認対象物の放射能濃度の評価単位は,複

数の測定単位から構成する。測定単位は形状認識式トレイ型専用測定装置

(以下「専用測定装置」という。)の測定トレイ1に載せることができる形

状で,重量 100kg 以内の放射能濃度確認対象物とする。評価単位の合計重

量は,1 及び 2の条件を満たした上で,1t以内とする。」と修正する。

また、「評価単位内における放射能濃度の分布の均一性」は、「専用測定装

置の測定結果(評価単位の「ΣD/C」)がクリアランスレベルの 10 倍を超え

ないこと」で確認することに修正する。

(2) 「添付書類 四 放射能濃度の評価単位に関する説明書」の修正内容(概要)

本文六に合わせて修正する。

修正に伴い,均一性の確認フローが簡略化されるため,「図 4-1」を削除

する。

2.2 濃度の決定方法

対応資料 「放射能濃度確認規則第6条第3号についての適合性の説明資料」

(1) 「本文七 放射能濃度を決定する方法」の修正内容

「1.二次的な汚染がある金属くず」を「1.二次的な汚染がある金属くずの

測定単位での濃度決定方法」に,「2.混在汚染がある金属くず」を「2.混在

汚染がある金属くずの測定単位での濃度決定方法」に修正した。

この修正により,従来の記載の評価単位での「放射能濃度決定方法」は

3-1

「測定単位での濃度決定方法」となる。

また,「3.評価単位の平均放射能濃度の算定」を追加する。

この追加の記載では,評価単位での濃度決定方法を「評価単位の平均放射

能濃度は,構成する測定単位の平均放射能濃度を加重算術平均することで

算定する。」と定義した。

(2) 「添付書類 五 放射能濃度を決定する方法に関する説明書」の修正内容

関連の修正なし。

2.3 放射能濃度確認対象物の管理方法

対応資料 「放射能濃度確認規則第6条第5号についての適合性の説明資料」

評価単位と測定単位を同一とするのであれば,品質保証上,測定トレイ

(測定単位)に載せたまま上蓋をして保管することが合理的であるが,複数

の測定単位を評価単位とするのであれば,保管管理の柔軟性を優先して,

梱包保管に変更する。関連の修正部分は下記のとおり。

(1)「本文九 放射能濃度確認対象物の管理方法」の修正内容

修正前:「放射能濃度確認対象物は,整理番号を付した測定トレイ単位で

管理するとともに,放射能濃度確認対象物の放射能濃度測定時に

重量を記録し,その都度速やかに上蓋をして異物の混入を防止す

る。」

修正後:「放射能濃度確認対象物は,測定のために測定トレイに載せられ

るが,その際に測定単位毎の整理番号が付され,搬出まではその

整理番号で管理する。(中略) 放射能濃度の測定を行った放射能

濃度確認対象物は,速やかに梱包し,整理番号を記す。」

修正前:「放射能濃度の測定を行った放射能濃度確認対象物は,放射能濃

度の確認を受けるまでの間,異物の混入及び放射性物質による汚

染を防止するため,上蓋を取り付けて容器に収納した状態で,図

-2に示す管理区域内の所定の場所(確認待ちエリア)に保管管

理する。」

修正後:「また,放射能濃度の確認を受けるまでの間は,梱包した状態

で,図-2に示す追加的な汚染の無い,所定の場所(確認待ちエ

リア 2)に保管管理する。」

(2)「添付書類七 放射能濃度の測定及び評価のための品質保証に関する説明

書」

関連の修正なし。

3-2

2.4 放射能濃度確認対象物の基本処理

対応資料 「放射能濃度確認規則第6条各号の適用時の品質保証」

(1)「添付書類七 放射能濃度の測定及び評価のための品質保証に関する説明

書」

「図7-1 放射能濃度確認対象物の基本処理フロー」に評価単位での判

定が加わる為、以下のとおり修正する。

修正前:

修正後:

3-3