1 spect/petの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5...

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3 1 SPECT/PET の基本原理 核医学 、体 した を体 し、 する すが 、 PETSPECT いており、以 する概 する。 1.1 PET/SPECT 検査で用いられる放射性薬剤 核医学 した を体 するこ により、 たり、あるい ある。 1.1.1 PET/SPECT 検査で用いられる放射性核種 PET ガンマ する した する。 1.1 すよう PET きわめて あり、これらを する サイクロトロンを PET けれ い。さらに、 けれ ある。しかし 、 PET される 体を する 位体 あるため される 体に って すいこ ある。 SPECT する核 した する。また する キット うこ き、 いるこ きる。 1.1 PET される核 く、PET 違い い、また 511keV いエネルギー γ する ある。 1.1.2 放射性薬剤の応用 1.1 するこ られるが 、そ により 1.2 ように される。 脳循環測定 するために から他 トレーサー (C O ) いられる。また、PET する する H O 2

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Page 1: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

3

第1章 SPECT/PETの基本原理

核医学検査とは、体内に投与した放射性薬剤の分布を体外計測し、診断に利用する検査のこ

とを指すが、本研究ではその中の PET・SPECT装置を用いており、以下に装置・検査に関

する概要を説明する。

1.1 PET/SPECT検査で用いられる放射性薬剤

核医学検査は放射性同位元素で標識した放射性医薬品を体内投与することにより、機能・

代謝画像を得たり、あるいは血流・機能測定を行うものである。

1.1.1 PET/SPECT検査で用いられる放射性核種

PET検査では、消滅ガンマ線を生成する陽電子放出核種を標識した薬剤を使用する。表

1.1に示すような PET検査用の陽電子放出核種はきわめて短寿命であり、これらを製造する

サイクロトロンを PET装置に併設しなければならない。さらに、様々な標識化合物の合成

とその品質管理を自施設で行わなければならないのが欠点である。しかし、PET検査で使用

される陽電子放出核種は生体を構成する元素の同位体であるため合成される放射性薬剤も人

体にとって受け入れやすいことは長所である。

SPECT装置では、単一光子を放出する核種を標識した薬剤を使用する。また薬剤合成は製薬

会社が供給する合成キットで簡単に行うことができ、緊急の検査にも用いることができる。

核種は表 1.1に示す様に PETで使用される核種に比べて半減期は長く、PETと違い �線を

放出しない、また 511keVに比べ低いエネルギーのγ線を放出するものが主である。

1.1.2 放射性薬剤の応用

表 1.1に示す放射性核種を標識合成することで放射性薬剤が作られるが、その薬剤の種類

は、使用目的により表 1.2のように分類される。

脳循環測定

血液量を測定するためには、血管から他の組織へ移行しない非拡散性トレーサー (C��O等)

が用いられる。また、PETで血流量を測定する場合に利用するH��� Oは半減期が 2分と短い

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4 第 1章 SPECT/PETの基本原理

表 1.1:脳 SPECTと PETで用いられている代表的な放射性核種核種 半減期 崩壊形式 主要エネルギー (keV)

単一光子放出核種

���Tc 6.01h 核異性体遷移 140���Tl 72.91h 電子捕獲 71、 135、167���ln 2.81d 電子捕獲 171、 245���l 13.2h 電子捕獲 159

���Xe 5.24d �� 81

陽電子放出核種

��C 20.4m ��、電子捕獲 511��N 10.0m �� 511��O 2.04m ��、電子捕獲 511��F 110.0m ��、電子捕獲 511

表 1.2: PET/SPECT検査で用いられる放射性薬剤とその使用目的の一覧 [1-1]脳循環代謝測定 測定機能 SPECT PET

脳循環測定

血液量 ���Tc-RBC、���Tc-HSA ��CO、C��O血流量 ���Xe H��

�O、C��O�

���I-IMP、���Tc-ECD ��Cu-PTSM���Tc-HMPAO

エネルギー代謝酸素代謝 ��O�

グルコース代謝 ��F-FDGアミノ酸代謝 ��C-メチオニン

神経伝達機能測定 測定機能 SPECT PET

ドーパミン

ドーパミン代謝貯蔵 ��F-フルオロドーパD�レセプター ���I-SCH23982 ��C-SCH23390D�レセプター ���I-IBZM ��C-メチルスピペロン

���I-2’-ヨードスピペロン ��C-ラクロプライド再取り込み部位 ���I-�-CIT ��C-ノミフェンシン

アセチルコリンムスカリン性レセプター ���I-QNB ��C-デキセチミドニコチン性レセプター ��C-ニコチン

オピオイド �レセプター ��C-カーフェンタニル

セロトニン5-HT�レセプター ��C-ケタンセリン再取り込み部位 ��C-シアノイミプラミン

ヒスタミンH�レセプター ��C-ピリラミン

��C-ドキセピンベンゾジアゼピン 中枢性レセプター ���I-イオマゼニル ��C-フルマゼニル

モノアミンMAO-A ��C-クロルジリン

酸化酵素 MAO-B ��C-デブレニル

その他の機能測定 測定機能 SPECT PET脳血液関門 ���TcO�

�、���Tc-DTPA ��Ga-EDTA

���Tc-HSA腫瘍 ���TcO�

�、��Tl-TlCl ��F-FDG、��C-メチオニン

脳脊髄液循環動態 ���In-DTPA

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1.2. 光子の物質との相互作用 5

ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECTで血流

量を測定するためには ���I-IMP、���Tc-ECD、���Tc-HMPAOが用いられる。

脳エネルギー代謝

脳代謝測定は現地点では ��Cや ��Fなどの標識化合物を用いた PETトレーサーのみに限

られている。最も特徴的なのは ��O�であり、��O�ガス吸入をすることで脳組織への酸素取

り込みから酸素代謝を測定できる。

神経伝達機能測定

神経シナプスでは、情報を伝えるもとになる神経細胞 (シナプス前ニューロン)からの電

気誘導がその神経の軸索の末端に到達すると神経伝達物質を放出し、これが次のニューロン

のレセプター (シナプス後レセプター)に結合することにより情報が伝達される。このよう

な神経伝達機能のイメージングのために表 1.2に示すような様々な標識化合物が開発されて

いる。

1.1.3 本研究で使用する放射性薬剤

本研究では、虚血性脳疾患を診断するための検査を研究対象としており、診断指標は SPECT

検査では血流量、PET検査では血流量、酸素摂取率、酸素代謝量である。そのため SPECT

検査では脳血流製剤の ���Tc-ECDを用いた。

PET検査では、脳血流を検査するために、C��Oガスではなく H��� Oを用いた。これはガス

吸入用のマスクに溜る放射能がガントリ全体の時間-放射能濃度曲線のノイズを拡大する影

響を与えるためであり、詳細は 6章に述べる。また血液容積を得るために C��O、酸素摂取

率、酸素代謝量を得るために ��O�を用いた。

1.2 光子の物質との相互作用

1.2.1 放射性崩壊

前節で述べたように SPECT/PET装置では各々使用する核種の放射性崩壊の種類が異なる

のが特徴である。この節では、本研究で使用する核種 ��O、���Tcの放射性崩壊、��壊変、

核異性体遷移について記す。

核異性体遷移

軌道電子を原子核が捕獲して軌道の結合エネルギーの差を光子として放出する際に、時間

がかかる場合がある。これを核異性体遷移といい、質量数に mをつける。本研究で使用し

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6 第 1章 SPECT/PETの基本原理

た ���Tcが代表的な核種でありその崩壊図を図 1.1に示す。

図 1.1: ���Tcの崩壊図 [1-2]

��壊変

PET検査で用いられる陽電子放出核種は陽子 (p)が多い核であるので、陽子が中性子に壊

変して陽電子 (��)を放出し、電荷のないニュートリノ (�)をともにはじき出す。原子核反応

として記すと式 1.2のようになる。

��� ��� �

���� (1.1)

� � �� �� � � (1.2)

式 1.2で飛び出した陽電子は自由電子 (��)と静止した状態で衝突消滅し、2つの静止質量分

のエネルギーが約3度の誤差を持ちながら互いに 180度方向へ2つの光子として放出される

ことが実験系で観測されている (式 1.3)。

�� � �� � ����� �� � �� (1.3)

図 1.2に陽電子放出核種である ��Oの崩壊図を示す。

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1.2. 光子の物質との相互作用 7

図 1.2: ��Oの崩壊図 [1-2]

1.2.2 光子と物質の相互作用

光子は物体を透過してゆく際に物質と相互作用 (光電効果、コンプトン散乱,レーレー散

乱、電子対生成が主なものである)をおこす。放射性核種の例を挙げながら作用の説明を

行う。

光電効果

�線が物質に入射してその原子の軌道電子を飛び出させてエネルギーを失う現象を光電効

果、飛び出す電子を光電子という。光電子のエネルギーは �線のエネルギーから軌道電子の

電離エネルギーを差し引いたものである。�線のエネルギーが小さいときには、光電子は入

射方向に対して直角の方向に多くでるが、�線のエネルギーが増大するとともに前方に多く

放出されるようになる。光電効果をおこす確率は原子核との結びつきの強い電子ほど大きい

ので、K電子によって多く起こることになる。光子のエネルギーEにおける光電効果の断面

積を ��とすると、これは式 1.4で近似される。

��� � � ����

�������

����

� (1.4)

ここで Zは物質の原子番号である。光電効果は標的核の原始番号の 5乗に比例して増加し、

入射光子のエネルギーの 3.5乗に比例して減少する。光電効果は、SPECT検査で用いる核種

の放出エネルギー領域 (80~160keV)の方が PET検査で用いる 511 keVの光子の場合よりも

支配的である。

コンプトン散乱

光子が電子と衝突して、そのエネルギー h�が電子の運動エネルギーと散乱された光子の

エネルギー ���

とになる現象を、コンプトン散乱という。

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8 第 1章 SPECT/PETの基本原理

���

��

� � ����

� ��� ����(1.5)

この衝突は非弾性衝突である。性質としてエネルギーが大きいほど、散乱光子の角度分布は

前方性が高い。この関係を Klein-仁科の微分断面積で表すと式 1.6になる。

����

� ��� � ��

� � ���� � � ���� � �� � ��

��

���� �

����� ������� � ������� � ���� ������ (1.6)

ここで、��は古典電子半径である。� � �����

である。

レーレー散乱

レーレー散乱は原子全体と光子の間の散乱である。原子は光子に比べ大きい質量なので、

衝突がおきた場合に原子に吸収される反跳エネルギーはわずかである。そのため、光子はエ

ネルギーの損失なしに散乱する。この反応はエネルギー範囲が 50keVといった低エネルギー

領域(SPECT検査における ���Tl)で支配的である。

電子対生成

電子対生成は原子核のクーロン場の中で光子が消滅して、1対の電子と陽電子が生成され

る現象である。原子核のクーロン場を通る光子が負エネルギ状態の電子に吸収され、その電

子が正エネルギー状態 (E)に移る現象で、その移った後の空孔が陽電子 (E+)として観測さ

れる。したがって電子対の運動エネルギーの和は、式 1.7で与えられる。

�� � � � �� � ��� � �� � ���������� (1.7)

よって光子のエネルギーが 1.022MeV以上でないと起きないので、電子対生成は PET/SPECT

検査では無視できる現象である。

1.2.3 光子の物質中での減弱

N個の光子が物質を垂直に入射すると厚さ dの物質中において上記に記した反応等を起こ

し、透過後の光子数を N’ とすると。

� � � � � ���� (1.8)

の関係が得られる。この式の中で定義される �[cm��]を線減弱係数とよび、物質の密度 �で

割ったものを質量減弱係数 ��(=μ/ρ)[cm���]呼ぶ。

減弱係数 �とコンプトン散乱、光電効果、電子対生成等の相互作用を起こす全断面積σの関

係は

�=������ (1.9)

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1.2. 光子の物質との相互作用 9

数密度nはアボガドロ数を N�,その物質の原子量をM,密度ρとすると

�=(����)� (1.10)

となるから、質量減弱係数 ��=�/�は

�� � ���=�(����)����� (1.11)

である。また、物質が 2種類以上の元素からなる場合には、その ��は、

�� ���

�� � ���(1.12)

で与えられる。ここで、��、���はそれぞれの元素の重量パーセントと質量減弱係数である。

核医学で使用する �のエネルギー範囲は数十~511keVまでであり、表 1.3に人体の脳組織

とほぼ等価である水に対しての減弱係数値を記す [1-3]。

表 1.3:γ線に対する水の質量減弱係数 [cm��]放射性核種 �線のエネルギー (Mev) 水

���Tl 0.071 0.182���Tc 0.141 0.151���I 0.159 0.146��O� 0.511 0.096

その他にも ��F等の ��放出核種がある。

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10 第 1章 SPECT/PETの基本原理

1.3 光子検出システム

物体の中で発生した光子が PET/SPECTの検出器 (表 1.4に示す無機結晶シンチレータが一

般に用いられている)内に入射すると発光 (シンチレーション)をおこす。

検出器内に入射した光子は 2章 2節に述べた相互作用をおこして、電子を叩き出し、叩き出

された電子が結晶中で原子を励起させ、それが基底状態に戻る過程で、吸収したエネルギー

に比例した強度の光を発する。シンチレータに光学接着された光電子増倍管は、シンチレー

表 1.4:無機シンチレータの特性 [1-4]

BGO LSO YSO NaI(Tl)

!"��#�� $%�&!#� ��&!#�

実効原子番号 74 66 34 50

減衰時間 (ns) 300 40 70 230

相対発光量 15 75 120 100

屈折率 2.15 1.82 1.80 1.85

ター内で発生する微弱な光を電子に変換し、増幅する真空管である。シンチレーターと光電

子増倍管を接続する部分のことをライトガイド (Light Guide)と呼ぶ。光電子増倍管の光電

陰極に光があたると電子が放出され、ダイノード (電極)に集められる。ダイノードには入っ

てきた電子より多くの電子を放出する性質があり、電子が2段目、3段目のダイノードへと

進むうちに等比級数的に数が増える。最終段から出た電子は陽極に集められ、電気信号(パ

ルス)としてとりだされる。光電子増倍管の増幅率は極めて高く 10�程度である。パルスは

増幅器で増幅された後、光子検出事象として認識される。垂直入射する光子のエネルギーに

依存したシンチレータのピーク検出効率 fはWilliams等 [1-5]によって光電効果の線減弱係

数 ��とシンチレータの厚さ tを用いて数式化されている。

' � �� ��� (1.13)

この式を用いて得られた、表 1.4のシンチレータのうちBGOとNaI(Tl)シンチレータのピー

ク検出効率を図 1.3に示すが、上図の BGO結晶 (21.6mmx50mm)では、厚さ= 30mm、下の

NaI(Tl)結晶 (直径 387mm)では厚さ 0.95cmを仮定している。

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1.3. 光子検出システム 11

図 1.3: 30mm厚の BGO(上)と 9.5mm厚の NaI(Tl) (下)のピーク検出効率 [1-6]

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12 第 1章 SPECT/PETの基本原理

1.3.1 SPECT装置における単一光子の検出

SPECT装置の検出部は、光子が入射する面に鉛のコリメータを配置し、平板のNaI(Tl)シ

ンチレータ結晶、光電子増倍管と接続されている。

図 1.4に例示するように、鉛のコリメータは六角形に加工され、図 1.4に示すコリメータの

サイズは穴径 1.4mm、深さ 32.8mm、厚さ 0.152mmである。

図 1.4: SPECT装置に用いられるコリメータの例:ADAC社製の LEHR(Low Energy High Res-

olution)コリメータ

SPECT装置における電子回路

図 1.5に検出器部分の横断面と簡単な電子回路の流れを示す。コリメータを通過したγ線

は NaI(Tl)で検出された後、位置弁別回路を通過し、波高分布で弁別した光子の検出情報が

メモリに蓄積される。

位置演算 位置演算を行うためには 6角形に並べられた PMT信号を縦、横に積分した信号

を、演算することで位置弁別がなされる。

NaI(Tl)シンチレータに対して、X-Y 平面を定義し (図 1.5)、光電子増倍管 (PMT)からの全

出力を Zとする。X、Y軸それぞれに平行な線分において PMTの積算出力を��( ��( ��( ��

とすると、投影データの位置情報 (X,Y)が得られる。

� ���� ����

� ���� � ���

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1.3. 光子検出システム 13

(1.14)

エネルギー弁別 エネルギー弁別のために、大小の波高の閾値を一般にピークエネルギーの

± 20%とし、高低 2種類の閾値に両方かからない信号のみを検出する。このようにして、光

電ピークのエネルギーを中心に約20%のエネルギーをもつ検出成分だけが収集される。

SPECT装置の仕様

SPECTの装置のタイプとしては、図 1.7に示すように、検出器カメラの数、配置に 4種類

ある。1検出器型SPECT装置は 1つの平板検出器で 360°の角度に放出される光子を検出す

るが、2種類のカメラ配置がある 2検出器型 SPECTは 1検出器型 SPECTと比べて検出感度

が高く、3検出器型SPECTは 1検出器で 120°の範囲をカバーするためさらに感度が高いと

いう特徴がある。また、対向型 2検出器 SPECTでコインシデンスがとれる装置も誕生して

いる。

また先に述べたが、検出器部分は単結晶のシンチレータから成り立っているので、分解能

をよくするためには鉛のコリメータが必要不可欠である。図 1.8の左に示すような。パラレ

ルホールコリメータは、1投影方向に平行に放出された光子のみを検出する。パラレルホー

ルコリメータを用いた測定対象視野はコリメータの幅と同じである。ファンビームコリメー

タは焦点からみた一定角度の放出光子を検出するように設計されており、焦点を設けること

によりパラレルホールコリメータに比べ、測定対象視野は狭くなる。その反面、パラレル

ホールコリメータに比べ狭い視野を同じサイズの検出器で測定するので、感度は上昇する。

このファンビームコリメータは脳検査、パラレルホールコリメータは胸部、全身を測定する

ために用いられる。図 1.8の右に示すピンホールコリメータは許容角度以内の放出光子を拡

大して検出し、主に小動物を用いた実験に使用される。

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14第

1章

SP

EC

T/P

ETの基本原理

図 1.5: SPECT測定における位置演算処理

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1.3. 光子検出システム 15

図 1.6: SPECT装置のエネルギー弁別

1.3.2 PET装置における消滅γ線の検出

PET装置では人体内から 180°方向に放出される1対の消滅光子 (511keV)を同時計数す

る。同時計数とは、回路系において固定の時間幅内に2つの事象をシンチレーション検出す

ることである。装置の検出部は体軸に垂直な面内に小型の放射線検出素子を円環状配列した

検出器リングを基本としており (図 1.9)、この検出器リングを積層にして、ブロックをなす

検出器により中空円柱状の検出部を構成している。また図 1.9を見ると、分解能の向上をは

かるために検出器ブロックはスリットで細分化されており、その下には 1ブロック当たり 4

つの光電子増倍管が接続されている。現在 PETで使用している検出器の結晶は表 1.4に実

効原子番号が 74と高いので検出効率がよい BGO(BiGe�O��)である。しかし、近年は表 1.4

に示すような光減衰が BGOに比べて 3分の 1以上短い YSO/LSO結晶を利用する試みも見

られている [1-4]。

同時計数回路

PET装置では円筒状に配置された検出器を用いて同時計測を行うが、その回路の処理の流

れは以下の用になっている。

1. 1つの検出器ブロックに光子が入射し、光子はエネルギを検出器に付与し電気信号と

なる。

2. MCAにて閾値(約 350keV)以上のエネルギーであれば検出事象とする

3. 光子が検出事象であれば同時計数のタイムウィンドウを約十数 nsec開く

4. タイムウィンドウが開かれている間にもうひとつの検出器ブロックに光子が入射し検

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16第

1章

SP

EC

T/P

ETの基本原理

図 1.7: SPECT装置の種類:左上 1検出器型 SPECT、右上 2検出器型 SPECT、下 3検出器型 SPECT

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1.3. 光子検出システム 17

図 1.8: SPECT装置のコリメータの分類

図 1.9:多リング型陽電子断層撮影装置 PETの概略と検出器の構成

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18 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.10: PET(ECAT EXACT)装置での同時計数回路の概略図

出されると、2点で同時計数が成立する。

5. 2つの検出器ブロックでの検出された位置 (X,Y)は、各ブロックに接続された 4つの

PMTの出力を A,B,C,Dとすると (図 1.10)式 1.15で得られる [1-7]。

� ��)� �� �* �+�

) � � * �+

� ��)� *�� � �+�

) � � * �+(1.15)

6. 体軸方向の分解能を挙げるために、2つの検出器リングの間 (セプタ:鉛の遮蔽材、の

ある位置)のデータを複数のリングのデータで補間する (図 1.11)

PET装置の仕様

各検出器リングおよび隣接する検出器リングの中間、この2つを断層面として、それぞれ

の断層面ごとに投影データを作成する平面計測を基本とするデータ収集を 2次元 (2D)モー

ドという (図 1.11)。また、体軸方向の視野を拡大して1回の測定により得られる放射能分布

像の体積を拡大させたいという要求から、検出器リング数の増加がはかられてきた。各断層

面に独立した画像を得る方式のため、同時計数を行う検出素子群が乗る面外から飛来する放

射線は、PET画像における雑音成分の原因となる。このために検出器リングの間にセプタと

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1.3. 光子検出システム 19

図 1.11:体軸方向のデータの補間

称する円環状のタングステンもしくは鉛板を挿入して、その断層面外から飛来する放射線を

防ぐ様に工夫された。

数え落し損失 別々の核から放出された光子より得た波高が重なってしまえば、PMTから出

てくる信号は 1つの波高になってしまう (図 1.13)。これをパイルアップと呼ぶ。光子の入射

タイミングという確率的現象だけでなく、回路系のデータの処理にも有限な最大波高処理速

度があるため計数に制限がある。これらの事象により、幾つかの光子を検出できなくなる。

原子核崩壊はランダム事象なので、たとえ計数率が低くとも幾つかの事象がたまたま同じタ

イミングで検出器に入り、共に検出されないことがある。しかし、高計数率の時の方が、こ

の損失は顕著になる。このカウント損失のことを” 数え落し損失” と呼ぶ。実際には数え落

し損失はシンチレーター結晶内のパイルアップが支配的である。

数え落し補正

1. 既知の放射能濃度のファントムを PET測定

2. 検出器の 1ブロック毎のシングル計数率もしくは偶発同時計数率に対する計数率曲線

(図 1.13)の補正曲線のパラメータを得る。

3. データ収集中のシングル計数率、もしくは偶発同時計数率から補正係数を得、自動的

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20 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.12:検出回路におけるパイルアップ

図 1.13:計数率特性の例:シングル計数率と真+散乱及び偶発同時計数率 (濃度の 2乗に比例)

はいずれも計数率が高くなると計数損失が増加する

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1.3. 光子検出システム 21

に数え落し補正を行う。

Noise Equivalent Counts (NEC) [1-8]

PETの装置全体の実効的な計数率に相当する数値を Noise Equivalent Count(以降 NEC)と

定義し、この NECが PET装置の性能を表す指標として用いられる。

実効的な計数率とは ガントリ内に放射能 a[MBq]が存在したときの散乱線、偶発同時係

数、数え落し事象の無い理想的な計数率 ,�����[cps]、絶対感度 *�������� -�とすると、

,������.����� � . � *�������� -�という関係が得られる。

実際の測定で放射能 a[MBq]がガントリ内に存在する場合には、同時計数の中に散乱線、偶

発同時計数、数え落し事象が存在するために、真の同時計数を測定する感度 C��� �.�は理

想的な感度に比べ、低くなる。実際の実効的感度 *��� と放射能 a[MBq]との間の関係値

.�� -� �*���を NECと呼び、実際の PET測定で近似的ではあるが真の同時計数率を表す。

*����.�

��*�

*���

,������.��

.(1.16)

この NECは Strother等によって以下の式として定義されている [1-8]。

��*�.� ��, �.���� /���, �.� � �'0�.�

(1.17)

ここで、T(a)は測定された計数率 [cps]、kは測定データに含まれる散乱率で、ファントム実

験により測定データに含まれる散乱成分の割合 kを事前に求める必要のある値である。また

R(a)は偶発同時計数率である。特に R(t)は視野の広さの設定により変化するために、視野

に依存した定数 f(通常 1~2)を必要とする。

また ECAT EXACT 47装置で得られる NECとガントリ中の放射能濃度との関係を図 1.14

に示す。図 1.14の中には複数の PET装置の特性曲線があるが、同じ放射能濃度であれば NEC

が高い装置の方が真の同時計数率が高い、つまり感度が高いと解釈できる。

1.3.3 データ収集

信頼性のある画像を得るためには、エミッション、トランスミッション、ブランク測定が

必要になる。エミッション測定は放射性薬剤を体内に投与して、体内から放出される光子を

計測するというもの、トランスミッション測定は、体内のガンマ線の吸収率を測定するため

におこない、ブランク測定は検出器の感度補正に用いられる。これらを用いて体内から発生

した光子から再構成画像の画素値を結びつける処理を次節にて述べる。

Page 20: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

22 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.14: Noise Equivalent Count of PET(ECAT)[1-9]

Page 21: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

1.4. 定量的画像のためのデータ処理 23

図 1.15: SPECT検査で得られたエミッション投影データの 1例:���Tcを一様に満たした

16cm直径の円筒水ファントム

1.4 定量的画像のためのデータ処理

画像を評価する場合には、画素値 [count/pixel]と体内に存在する放射能濃度 [Bq/pixel]を

等価な値にする必要がある。そのためには

� 偶発同時計数や数え落し損失の補正

� 全検出器の感度の違いの補正

� 物質内を透過する際の光子の減弱、散乱の補正

� 物理的減衰

� 放射線カウントと画素値の校正の補正

が必要になる。この節では PET/SPECTそれぞれの検査に関しての測定と補正法について述

べる。

定量を目的としたこれらの補正が大事になってくる検査例としては、患者の病状の経時変化

を知る必要がある場合が挙げられる。この場合、再構成した画像の画素値は定量性を達成す

る補正が行われ、すべての画像が同じ基準で比較されなければならない。

1.4.1 SPECT検査におけるデータ収集

エミッション測定

γ線放出核種を標識した放射性薬剤を体内投与して、放出 (Emission)されたγ線を測定す

ることを SPECT検査でエミッション測定という。円筒水ファントムに ���,を一様に満た

して SPECTカメラでエミッション測定を行うと図.1.15に示す様な投影データが得られる。

この SPECTのエミッション収集法にはいくつか種類がある。

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24 第 1章 SPECT/PETの基本原理

� 収集角度

– 通常の脳、心臓 SPECT検査では 360°の収集を行う。

– 胸部の前壁、心臓を検査する場合には、前方 180°のみのデータ収集を行うと診

断能の高い画像が得られる場合がある。

� データサンプリング収集角度M(360または 180°)の範囲をN個方向の投影データとしてサンプリング (サ

ンプリング間隔� � ��

)するためには 2種類の収集法が存在する。

– 連続収集角度�の間カメラは収集しながら移動する。

– 離散収集�毎にカメラを移動し、測定を行う。

仕様目的に応じて測定方法が選択できる。

トランスミッション測定

体内の投影線上での光子に対する減弱係数分布を知るために、被写体が有効視野 (FOV)内

にある状態で外部線源 (図 1.16)を回転させながら行う測定のことをトランスミッション測

定という。外部線源 (���,)から放出されるγ線が円筒水ファントム (放射能無し)を透過し

測定されたトランスミッション投影データを図 1.16)に例として挙げる。被写体 (ファント

ム)の無い場合には減弱は受けないので検出されるカウントは外部線源から放出される光子

の数である。しかし、外部線源から照射されるγ線がファントムを透過する場合には、投影

線上の線の長さ d、減弱係数の値 �に依存した吸収をうけるため検出されるカウントは外部

線源から放出される光子に比べ減少し、かつ減少の割合は ���である。

図 1.16に示す外部線源の構造であるが、コリメータの役目を果たす 5mm厚さの鉛の板を並

べ、���,を満たしたチューブを蛇行させ曲げて配置したものである [1-10]。

ブランク測定

検出器間の感度むらを測定するために、被写体が有効視野 FOVにない状態で外部線源を

回転させながら行う計測をブランク測定という。外部線線源 (���,)から放出されるγ線が

カメラで検出されるブランク投影データを図 1.17に例として挙げる。ブランク投影データ

は外部線源で発生した光子の数をほぼそのまま計測したものであるが、検出器、回路による

感度むらの影響もうけている。SPECT測定で得られるエミッション投影データは常にこの

感度むらの影響を受け、トランスミッション投影データは感度むらに加え、線源の分布にも

影響を受けるため、これらの影響を補うためにもブランク測定は各被写体の検査毎に必要と

なる。

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 25

図 1.16: SPECT検査で得られたトランスミッション投影データの 1例:16cm直径の円筒水

ファントム (コールド )をチューブで構成された平板線源で撮影

図 1.17: SPECT検査で得られたブランク投影データの 1例

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26 第 1章 SPECT/PETの基本原理

1.4.2 PET検査におけるデータ収集

エミッション測定

陽電子放出核種を標識した放射性薬剤を体内投与して、陽電子放出されたのちに生成され

る 1対の 511keVの消滅γ線を同時計測する測定をエミッション測定という。実際には放射

性核種から放出された陽電子は表 1.5に示すような飛程を持ち、わずかではあるが分解能の

劣化に寄与する。また、放出された光子のうち、体内で吸収されるものや、散乱されるもの

も存在し、これらの補正が必要になる。

表 1.5: PET検査で使用される陽電子放出核種の飛程の一覧放射性核種 最大エネルギー [Mev] 最大飛程 [mm] 平均飛程 [mm]

��C 0.961 3.9 1.1��N 1.190 5.1 1.5��O 1.723 8.0 2.5��F 0.635 2.4 0.6

トランスミッション測定

体内の LOR上での光子の減弱を測定するために、被写体が FOV内にある状態で外部線線

源 (��"����".:陽電子放出核種)を 360°回転させながら行う同時計数測定のことをトラン

スミッション測定という

ブランク測定

検出器間の感度むらを測定するために、被写体が FOVにない状態で外部線源を 360°回

転させながら行う同時計測をブランク測定という。

ブランク測定によって得られたサイノグラムは図 1.18の様に、検出器間の感度むらだけ

でなく、クリスタル間の隙間の感度補正にも用いられる。図 1.18に見られる縞模様は検出

器クリスタルのスリットである。PETにおけるブランク測定データの SPECT検査と違う点

は、SPECTが 1枚の平板検出器であるのに、PETがスリットのはいった検出器ブロックの

集まりであるという点である。

1.4.3 ノーマライズ補正

PETにおける投影は図 1.19の左のように測定された後、右図のような径方向の距離 rと

投影角度 �を指標とした投影データとして表される。

ブランク測定された投影角度 �、径方向の距離 rの投影データを S���(r,�)とし、エミッショ

ン測定された投影データを S���(r,�)とすると検出器の感度分布の補正、ノーマライズ補正さ

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 27

図 1.18: PETで測定されたブランク投影データの 1例:縞模様は検出器クリスタルのスリッ

トである

図 1.19: PETで測定された同時計数事象と投影データ

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28 第 1章 SPECT/PETの基本原理

れたエミッションデータ S’(r,�)は以下の式で表される。

&���( �� �&�����( ��

&�����( ��(1.18)

1.4.4 吸収補正

SPECT/PET装置において体内から放出される光子は、長さ Lの体内を横切る際に減弱を

受ける (図 1.20)。

図 1.20: SPECT/PET測定において体内から放出される光子の体内を横切る長さ

SPET検査における吸収補正

���Tcの 140kev光子は半値層が 4.5cm程度であるため、吸収補正が行われなければ臨床

の面で誤診につながる可能性がある。SPECTの吸収補正において、測定データから光子が

発生した位置が推定できないために検出されるまでにうける減弱が正確には求まらないとい

うのが特徴であり問題である。この補正は以下の様な方法で行われる。

� 逐次近似法:画像再構成をする際に、システムマトリックス (2章 5節に述べる)に吸

収の項 (=��)を含め、反復計算しながら吸収補正された再構成画像を算出する手法

� Chang法:画像再構成を行った後に補正因子をかける後処理法 [1-11]

� Sorenson法:投影データにおいて平均的な吸収補正因子を掛ける前処理法 [1-12]

現在では、逐次近似を用いた手法が精度よいといわれ、一般に用いられている。

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 29

PET検査における吸収補正

同時計数される2点の検出器間の線分を Line Of Response(LOR)という。放射能)�の光子

は消滅γ線を反対方向に放出する際に、それぞれの光子が LOR上の距離 L�、L�(L=L��$�)

を通過する間に物体と相互作用をおこし減衰する (図 1.20)。その時の減衰を表す関係式は以

下の様に表される。

) � )���� � )��

������� (1.19)

�は線減衰係数 [cm��]であり単位長さで光子の数が減少する割合を意味する。�は物質、エ

ネルギーに依存し変化する。トランスミッション測定で得られた &��� ��( ��を用いると、ブ

ランク補正されたエミッションデータ S’(r,�)(式 1.18)に対して吸収補正されたデータ S(r,�)

は以下の式で表される。

&��( �� � &���( ��� &�����( ��

&��� ��( ����������(1.20)

1.4.5 散乱線補正

SPECT検査における散乱線補正法

SPECT検査でのコンプトン散乱の影響はプロジェクション上ではほぼ物体の中にだけ見

られる。これは図 1.21に示す様に、光子の散乱角度が投影方向に対してある角度より大き

いと、コリメータでの光子の吸収により散乱成分は除去される。

つまり、SPECTにおける散乱線もコリメータの許容角度に依存する範囲しか存在しない

ということである。この散乱線分布をモデル化し測定データから差し引くのが、TDCS法

(Transmission Dependent Convolution Subtraction法)という散乱線補正法である。

TDCS(Transmission Dependent Convolution Subtraction)法 (図 1.22)[?]、[?]では、先ず散乱

成分が測定された光電ピークの投影データ ����と散乱分布関数 s[?]を畳み込み積分するこ

とで初期の散乱成分 ��を推定する。

�� � ���� � � (1.21)

投影データの空間において散乱分布関数は、同心円状に広がりをもつ半径方向に対称な関数

であり (図 1.22)、指数関数とガウス関数の和の形で定義される。また、散乱分布関数と畳み

込み積分されるのはプロジェクションの対向する角度成分の幾何学的平均 ����であり、

� � ���������������� � ������������ �� (1.22)

���� ��������� ������ � ����

(1.23)

と表される。ここで、rは半径方向の距離である。また精度の良い散乱成分を推定するた

めに、ピクセル毎に散乱率 k(x,y)が荷重としてかけられる。

/ � �� �

)� 1��(1.24)

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30 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.21: SPECT装置で検出される入射角度の光子とコリメータとの関係

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 31

図 1.22: Transmission Dependent Convolution Subtraction法 [1-13]

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32 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.23:���Tcにおけるトランスミッションファクターと散乱率の関係 [?]

ここで、tは 1 ��� �

���2で定義されるトランスミッションファクターと呼ばれる値で、被

写体の減弱係数分布の投影値である。また式 1.24において A、B、�は核種に依存した定数

であり、���,については成田等が数値シミュレーションにより A=1.81、B=0.81、�=0.52

であることを報告している [?]。また、図 1.23に ���,についてのトランスミッションファ

クターと散乱率 sの関係を示す。

厳密には、散乱成分の推定は散乱の無い投影データ g ���(x,y)と散乱関数の演算で行われ

るのが正しいが、測定データには既に散乱成分が含まれるために、式 1.21は、測定データ

g���と散乱のない真の投影データ g ���とが等しいという近似を行っている。この近似によ

る誤差がもたらす散乱成分の推定誤差を最小に抑えるべく、以下の式 1.25で定義される反

復計算を行う。この式では n回目の散乱補正された投影データ g�は、n-1回目の投影データ

g���と散乱関数の畳み込み積分で推定された散乱成分を実測された投影データ g���から差

し引かれたものであることを表す。

���3( 4� � �����3( 4�� /�3( 4� � �����3( 4�� & (1.25)

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 33

PET検査における散乱線補正

PETでは、SPECTと同様に感度を上げるためと、検出器のエネルギー分解能が悪いため、

エネルギースペクトルは 511keVのピークエネルギだけではなく、コンプトン散乱のエネル

ギー領域も計測する。この処置により、感度はあがるがコンプトン散乱成分も同時計数して

しまう。PETで計測される散乱線には図 1.24に示される様に (A)一光子一回散乱 (B)一光子

多重散乱 (C)二光子散乱線、(D)視野外放射線計測がある。これらはいずれも不必要なコイ

ンシデンスラインをつくることとなる。つまり、PETにおける散乱線の分布は SPECTとは

異なり、吸収体外でも起こるのである。

図 1.24: PET検査での同時計数の種類 (A)1回散乱、(B)多重散乱 (C)1回散乱 (両光子)、(D)

視野外からの同時計測

東北大CYRICにある SET2400wで得られる3次元画像には (A)から (C)までの約 40%の

散乱線を含むことが報告されている [1-14]。(A),(B),(C)については検出した段階では散乱し

たか、していないか、また本来の LORはどこであるか?等の判別は不可能である。そのた

め、様々な研究者たちが散乱線補正のための研究を行っている。(D)の影響に関しては臨床検

査の場合に必ず問題になるが、鉛のシールドをガントリに取り付けることで抑制している。

PETにおける散乱補正の方法論は、2つに大別できる。ひとつはエネルギースペクトルを複

数の領域にわけて散乱成分を推定する法である。もうひとつはエミッションから散乱成分を

推定する法である。前者の一つDual Energy Window法について、後者では Simulation-Based

Scatter Correction法について記す。

� DEW法 [1-15]

図 1.25に示すようにエネルギースペクトルをエネルギの高、低で 2つの領域に分け

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34 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.25: Dual Energy Window法

る。各々のエネルギー領域でのカウント Cl、Cuは散乱同時計数事象 (sc)と非散乱同

時計数事象 (unsc)を用いて以下のように定義される。

*2 � *2��� � *2� (1.26)

*% � *%��� � *%�

(1.27)

定義エリアの散乱同時計数、非散乱同時計数の比率を式 R�、R���とする。

0� �*2�*%�

( 0��� �*2���*%���

(1.28)

式 1.28より Cuscは式 1.29で推定できる。

*%� ��

0� � 0���

*2� 0���

0� �0���

*%

*%��� �0�

0� � 0���

*%� �

0� � 0���

*2

*%��� � *%� *%� (1.29)

この方法では、被写体の形状や薬剤分布が変化しただけでエネルギースペクトルは変

化してしまうという欠点をもつ。この欠点を補うような Rsc、Runscの最適化が目標

である。

� Simulation-Based Scatter Correction法 [1-16]

1回散乱分布をエミッション画像 (散乱補正なし )から推定する。幾何学的検出効率、

物質内での減衰、Klein-仁科の式をピクセル毎に用い投影方向にたいしての散乱成分

Page 33: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

1.4. 定量的画像のためのデータ処理 35

図 1.26: Simulation Based Scatter Correction法

の寄与を推定する方法である。散乱関数 R�� を式で表すと式 1.30のようになる。

0� �� �

�������!

50��0

��

�����(��

��6�� � 6!�

6�� � �� �

"

������������� ��

#���������� ��

#�

�������7!���

�7����

6!� � �� !

"

������������� ��

#���������� ��

#�

�������7����

�7!��� (1.30)

ここで、図 1.26において、A,B:散乱点 Sからの LOR点 �:線源弱係数、R1,R2:散乱点

から検出器までの距離、��は �� � ���� � �������で定義され、��は電子密度、

�、d�はコンプトンに対する全、微分断面積である。また、��( �!:検出器反応断面

積、��:1画素中の放射能、8�( 8!:エネルギーと入射角に依存した検出効率 dと変数定

義を行っている。その結果、式 1.30から推定した散乱分布を反復計算しながら推定し

てゆく。エネルギー分解能はガウス分布で仮定する。散乱補正の中でも厳密かつ計算

時間の短縮化をはかっている方法である。しかし、いくら計算時間を短縮したとはい

え計算時間はかかる。よって、更に臨床に適した散乱補正法の研究は現在でも多くな

されている。

1.4.6 物理減衰補正

投与された放射性薬剤の放射能は時間と共に減衰してゆくために (式 1.31)、SPECT/PET

測定されたデータには以下の減衰補正が必要である。

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36 第 1章 SPECT/PETの基本原理

)�1� � )��� � ��$

)��� � )�1� � �$

9 � 壊変定数 ��2��

, �

�������

(1.31)

SPECT/PETで得られるのは時刻 ��( , �の積分値に相当すると考えると、この間の物理減

衰の補正は式 1.31を用いて式 1.32のように表される。� �

�)����1 �

� �

�)�1� � �$ �1

� �

�)����1 � )�1� � , � 9

�� ��$��(1.32)

1.4.7 クロスキャリブレーション

再構成した画像から生体内の放射能濃度を知る方法としてクロスキャリブレーションがと

られる (図 1.27)。図 1.27で示すように、

1. 再構成した画像画素値 I[counts/voxel]を求める。

2. ファントム内からサンプルを取り出し、放射能濃度をウェルカウンター:γカウンタ

(井戸型 NaI(Tl)シンチレーション検出器)で単位体積当たりの放射能W[Bq/ml]を測定

する。

この2つの関係より式 1.33の校正係数 CCFが求められる。

**: � -

2� ��3�2�%�1�

� �; � -�2�

6 � ���� �%��

�(1.33)

この値を再構成画像の各画素値にかけあわせると、真の放射能濃度がわかる。

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1.4. 定量的画像のためのデータ処理 37

図 1.27:クロスキャリブレーションの手順 [1-1]

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38 第 1章 SPECT/PETの基本原理

1.5 画像再構成

図 1.28:画像の投影

PET/SPECT検査で測定され、�方向へ投影されたデータは半径方向の距離を rとすると

S(r,�)は被写体内の RI分布 f(x,y)の線積分 (前投影:forward projection)であると考えられる

(図 1.28)。式 1.34に投影データと被写体の RI分布 f(x,y)の関係式を示す。

&��( �� �� �

��

� �

��'�3( 4��3���� 4�!����3�4

� < � <� < � < 5

(1.34)

投影過程とは反対の過程を逆投影 (back projection)といい、投影データ S(r,�)とこの逆投影

から真の RI分布 f(x, y)を算出するデータ処理を画像再構成という。

1.5.1 離散データの画像再構成

PET/SPECTで扱う画像データと投影データは連続ではなく離散的な関係であり、式 1.34

を式 1.35に書き換えることができる。

&��( �� ����&

.������ � '�/� (1.35)

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1.5. 画像再構成 39

図 1.29:投影線を横切る画素の面積

ここで、.������をシステムマトリックスと呼び、各画素 f(x,y)が投影データ s(r,�)のカウ

ントに寄与する幾何学的確率のことであり、投影方向 (�)、投影位置 (r)に依存する幾何学条

件で決定される。この幾何学的確率とは、図 1.29に示すようにあるピクセルが投影される

時に、投影線が画素を横切る確率である。その横切る確率は、線分や面積で扱われる方法が

ある。

� 各ピクセルにおいて、投影データの 1binの中心から延びる投影線のパス長をシステム

マトリックスとする (図 1.30(A))(Newton Raphson line search法 )

.������ �2��� 2�

(1.36)

(A) (B)

図 1.30:システムマトリックスの算出法:(A) 線分による確率算出法、 (B)面積による確率

算出法

� 各ピクセルにおいて投影線上を 1辺とする三角形の面積をシステムマトリックスとす

Page 38: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

40 第 1章 SPECT/PETの基本原理

る (図 1.30(B))。

.������ �)��� )�

(1.37)

1.5.2 再構成アルゴリズム

画像再構成の代表的な手法として逆投影 (例 Filtered Back Projection)法、逐次近似型画像

再構成 (例OrderedSubset Expectation Maximization)法が上げられるが、その具体例について

説明する。

Filtered Back Projection

Filtered Back Projection(FBP)法は、PET/SPECTの画像再構成において、よく利用される

方法である。1断層での被写体内 RI分布を f(x,y)とし、被写体に対して角度 �をなす、1

次元の投影要素は S(r,�)で表されるとする。

図 1.31: FBP法のデータ処理の流れ [1-17]

画像再構成において投影データというのは線源位置からの線積分である。逆に、様々な角

度で収集した線積分を逆に戻すと画像ができると考えられている。ただし現実には、図 1.31

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1.5. 画像再構成 41

の Aで示すように1点の投影データを再構成する場合において、Bのように、データがサ

ンプリング幅をもつ離散データであるために、再構成された画像にアーチファクトがでると

いう矛盾が生じる (図 1.31)。このアーチファクトを抑制するために、逆投影するまえにフィ

ルタで矛盾を最小化し、逆投影する手法がとられ、これを FBPと呼ぶ。FBP画像再構成の

初めのステップはフィルタをかけることである。投影データS(r,�)に式 1.38のように畳み込

み積分を行う。

&' ��( �� � &��( ��� ���� (1.38)

ここで h(r)はフィルタ関数 (例 Rump関数)である。この方法では、普通の逆投影を行った

場合のぼやけの関数 1/r( rは線源からの距離)が除去される。畳み込み積分は周波数領域で

はかけ算でおこなわれる。逆投影の過程は直線 (r, �)に従って均等にフィルタをかけたサイ

ノグラム値 S' (r,�)を再分配することで行われる。

'(�3( 4� ����・&' ��( �� (1.39)

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42 第 1章 SPECT/PETの基本原理

Ordered Subset Expectation Maximum

OSEMは逐次近似画像再構成法の1つである。EM(Expectation maximization:期待値最大)

法とML(Maximum Likelifood:最尤推定)法の融合ML-EM 法 [1-18],[?]を発展させたもので

ある。

Y=4�は測定されたプロジェクション、9 � 9)はピクセル jでの放射能を示すとする。4�は統計ノイズを含み、かつそのノイズは Poisson分布関数であるとモデルをたてる。

���4� � 9� ���

) .�)9)�*�

4��� ���

�����$�� (1.40)

ここで、aijはピクセル jにある放射能が検出器 iで検出される幾何学的割合をさす。推定し

たλを与えた場合に、Yの起こり易さを尤度という。尤度は式 1.41で表されるように、λ j

が“もっともらしい”度合いをさすのである。

���4 � 9� �����

���4� � 9� � ���4� � 9� � ���4� � 9���������4� � 9� (1.41)

式 1.41を最大値とするλが推定解である。よって、式 1.41の微分がゼロとなるλを求める

べく、式を変型してゆく。まず、尤度の自然対数をとると、

2����4 � 9� ���

�4�2���)

.�)9)�� 2�4����)

.�)9) � (1.42)

式 1.42について最大値をとることができれば、最尤推定補正でλが求まる。しかしλに関

して式 1.42を解くのは不可能なので、EM法を利用する。いま,x = �3�)�を定義する。�� ��) ��) �

�� .�)9)である。3�)も poisson分布をもつので、式 1.43で表される。

���3�) � 9� ��.�)9)�

%��

3�) �� ������$�� (1.43)

xに関する尤度関数は

��3 � 9� ��)

��

���3�) � 9) � (1.44)

で表される。式 1.44の尤度の自然対数 (log-尤度)をとると式 1.45が得られる。

2���3 � 9� ��)

��

�3�)2��.�)9)�� 2�3�) �� .�)9) � (1.45)

λ jに関して log-尤度を最大にしようにも、xij が未知である。そこで、EM法を用いて式

1.45の期待値を最大となるようなλ jを求める。EM法は2つのステップをもつ。E-step:期

待値Q(λ,λ (k))を求める。M-step: Q(λ,λ (k))をλに関して最大にすることでλ (k+1)を

求める。E-Stepとして式 1.45の右辺の期待値をとる。

=�9( 9�� ��)

�!�2��.�)9)���

3�)4

� 9������2�3�)�

4� 9���� .�)9) � (1.46)

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1.5. 画像再構成 43

式 1.46を最大とするべくλによる偏微分をおこなう。

>

>9)���

���

%��*

� 9��

9)� .�) � � �

9���) �

����

%��*

� 9���

� .�)(1.47)

式 1.47を用いた反復計算により解を求める。また、ML-EM 法の計算効率をあげるために

OrderSubsetという概念を導入した。ML-EM 法では考慮するべき次元が投影方向の bin,サ

ンプリング角度、スライスである。プロジェクションを1まとめに計算すると3次元のデー

タ数は多く、効率がわるい。よって、サンプリング角度を複数に分割 (Subset)し、3次元の

データ数を減らし計算効率をあげるのである。

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44 第 1章 SPECT/PETの基本原理

1.6 画像の位置合わせ

1.6.1 画像の位置合わせの必要性

PET/SPECT測定で得られる空間分解能は表 1.6に示されるように、SPECTで 12mm、

PET5.8mmである。このような画像では数mmの構造についての解析は行えないという欠

点がある。また、測定時間もエミッションだけでなくトランスミッション測定も行う場合に

は、短くても 15分、長いと 2時間程度かかり、この長い拘束時間の間には被験者が動いて

しまいエミッション、トランスミッション測定データの間に位置ずれが生じ吸収補正が正確

に行えないことや、エミッション測定データに動きによるぶれが生じることもある。この欠

表 1.6:本研究で用いている装置の空間分解能の比較PET SPECT

ECAT EXACT 47 5.8mm[1-9] PRISM 2000XP 12mm(4章参照)

点は具体的には以下のような画像の位置合わせ処理を行うことで補われている。

� 分解能が PET/SPECTより良い分解能をもつ MR,X線 CT画像と位置合わせを行い被

写体の解剖学的な情報を得る。

� 測定時刻の違う画像の位置ずれが生じた場合 2つの画像の位置を合わせ、それにより

以下のメリットが得られる。

– トランスミッションとエミッション画像:正確な吸収補正が行える

– 一人の患者が異なる日に撮影した画像の比較:経時変化の解析が可能になる

– ダイナミック画像の各フレームでの動きの補正:動きによるブレのない画像が得

られる。

1.6.2 位置合わせのアルゴリズム

位置合わせのアルゴリズムは (i)物体を定義する座標が変形しない (剛体変換)と、(ii) 物体

を定義する座標が変形する (弾性変換)と 2種類あるが、本研究では、位置合わせを行う対

象物体が変形しないために (i)の剛体変換について、特に本研究で用いた位置合わせアルゴ

リズム (ART:Automatic Registration Tool[1-19])を説明する。

ART法では 2種類の異なる画位置の画像を合わせるために図 1.32に沿って

1. 画像の位置合わせを行うためにはバックグラウンドノイズのカウントを取り除く輪郭

抽出

→閾値処理

2. クラスタリングによる特定の組織の領域の選択

→コスト関数を計算するためのクラスタリングとビットマップ化

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1.6. 画像の位置合わせ 45

図 1.32:画像位置合わせのデータ処理の流れ

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46 第 1章 SPECT/PETの基本原理

3. ビットマップ化された画像を比較するコスト関数を最小化するような解に収束

→ビットマップ画像の比

の順に処理が行われてゆく。以下に上記のプロセスで必要な画像処理について述べる。

1.6.3 閾値処理

画像の位置合わせを行う前処理として、バックグラウンドのノイズを除去するために閾値

処理を行う。この閾値処理とは、画素をもって画像を区分化することである。

'��3( 4� � '�3( 4�( '!�3( 4� � '�3( 4�'��3( 4�� '!�3( 4� � '�3( 4�

(1.48)

画像 f(x,y)は A,B群に分けられ画像 f�(x,y)と f!(x,y)となる。区分化の基準を画素値 f(x,y)

が閾値 Tをこえれば A群、Aを超えないと B群に分けられる。A群を画像のバックグラウ

ンドの画素とすると、閾値処理によりバックグラウンドカウントの除去ができる。

'��3( 4� � '�3( 4� �%�*���

'!�3( 4� � '�3( 4� �%�*���

(1.49)

1.6.4 クラスタリング

クラスタリングとは画像を階層化する処理法である。一般に画素値には、被写体の (解剖

学的な)構造の情報が含まれているために画素値から解剖学的組織が弁別可能である。実際

には計測により得られた画像はノイズをもつために、厳密に画素値から組織を抽出すること

は難しく、反復計算により確からしい階層化、クラスタリンクを行う。

図 1.33に MR画像の画素値の頻度分布を示す。閾値処理でバックグラウンドカウントが除

かれた画像の頻度分布においてクラスタリングで階層化するクラス数を Kとすると、各ク

ラスはクラス重心m�を中心とした広がりをもつ。この重心m�を推定するためには、コス

ト関数を用い反復計算により解の収束を行う。

このクラスタリングは、画素値が体内の解剖学的情報をもつものなら全て適応可能であ

り、MR画像(T1-強調、T2-強調、プロトン密度等)や PET、SPECT画像に対しても応用

可能である。

K-meansクラスタリング

K-meansクラスタリングとは収束条件であるコスト関数の定義に特徴がある。画像の位置

jにおける画素値を �) � �3)�( 3)�(・・・3)� )とする。また画像全体を Iとすると、K-means

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1.6. 画像の位置合わせ 47

図 1.33: MR画像のヒストグラム

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48 第 1章 SPECT/PETの基本原理

クラスタリングは以下のコスト関数を最小化する画像のボクセルの分類を意味する。

? ��)�&

+����

�) �� � (1.50)

ここで、�はk番目のクラスでの中央値である。各クラスタ毎に中央値と画素値の差の 2

乗の総和として計算される。また、

� ��

�)�&�

�) (1.51)

コスト関数 Jが最小になるのは �が上式で表される平均値の時である。6�は k番目のクラ

スのボクセル群である。また Jを最小にするためには以下の処理が必要になる。

1. クラス Kの各中央値m�を初期化

2. 各ボクセルを近傍のクラスタの中央値とする

3. 各クラス内のボクセルの平均値を算出しコスト関数 Jを計算する

K-meansによりクラスタリングした結果を図 1.34にしめす。

図 1.34:クラスタリングされた MR画像の例: (左)MR原画像、(右)クラスタリングされた

画像

このセグメントした画像により、2つの画像の同じクラスタ成分の画像 S� を割算した総

和をコスト関数とし、最小になる位置合わせを行う。

? ��)�&�

&���@�

&���@�

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1.6. 画像の位置合わせ 49

&� �

��

�(1.52)

セグメントには、画像のひずみや部分容積効果により同一組織でも画素値が異なり、別のク

ラスタに属してしまう場合がある。これらの画素がもともと有する曖昧さをモデル化した

Fuzzy K-means Clustering(FKC)法等のFuzzy概念をとりいれた手法も開発されている [1-20]。

この方法はコスト関数を改良したものであり以下の式で表される。

? ��)�&

�����

%)� � �) �� � (1.53)

%)� ��

+)� � �

(1.54)

Eq.1.54内の %)�は画素の位置とクラスタ kの中央値の差 D)�によって表される。X) とm�

が等しければ、u)�は 1となる荷重である。

1.6.5 剛体変換

画像の位置合わせを行うためには、図 1.35に示す剛体の位置変換 (平行、回転移動)を行

う必要がある。その画像 f(x,y,z)の f(x’, y’, z’) へ移動は以下の行列演算で表記される。

' �3�( 4�( A�� �

������

.%% .%* .%, �3

.%% .%* .%, �4

.%% .%* .%, �A

� � � �

�������

������

3

4

A

������

(1.55)

.%% � ������������

.%* � ��������!�����

.%, � �!�����!������!������� ������!����� � �����

.*% � �������!�����

.** � ������������

.*, � �������!������!������ �!�����!�����������

.,% � ������!�����

.,* � �!�����!�����

.,, � ������

(1.56)

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50 第 1章 SPECT/PETの基本原理

図 1.35:剛体の移動 (平行移動、回転移動)

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53

第2章 生理機能変数を推定するための動態モ

デル解析

2.1 コンパートメントモデル

PET/SPECT装置は生理機能診断が可能であり、この生理機能変数はさまざまな病態診断

に有用である。この生理機能を計算するためには、放射性薬剤の動態をコンパートメントモ

デルにみたて解法する手法がある。しかし PET/SPECT装置を用いたコンパートメントモデ

ルにも限界はあり、空間分解能からひとつの細胞に出入りする物質の移行が表現できるわけ

ではなく、数mmの範囲に存在する細胞の集まり (組織)の中での平均的な物質の移行をここ

で生理機能変数と定義している。このコンパートメント解析の基本は Ketty-Schmidt equation

と呼ばれる考え方に基づく。図 2.1に示すように質量M[g]、密度 �、組織に存在する放射能

Q(t)[Bq] (放射能濃度 *��1� � -� �. [Bq/ml])は Ca(t)[Bq/ml]の放射能濃度、流速 '�[ml/g/min]

の流入と Cv(t)[Bq/ml]の放射能濃度、流速 '�[ml/g/min]で洗い出される放射能の差に相当す

る。

図 2.1に示す関係を式にすると、ketty-shmicdtの式 2.1が成立する。

�*��1�

�1� '� � *��1�� '� �* �1� (2.1)

ここで、仮定として組織から別の組織に放射能が移行する割合が,組織放射能濃度Ci(t)に比

例するとし、その比例定数を分配定数 ��とすると次式が得られる。

* �1� ��

��� *��1� (2.2)

図 2.1: Ketty-Schmidtモデル

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54 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

'� � '�であるとすると式 2.1は式 2.2を用い

�*��1�

�1� ' � *��1�� '

��� *��1� (2.3)

と式 2.3で置き換えられる。一般に、PET/SPECT検査での生理機能変数とは、体内投与さ

れた放射性薬剤が動脈を介して全身を循環するうちにターゲットとなる組織へ移行 (薬剤に

よってはさらに別の組織へ移行)してゆく際の各コンパートメント間の薬剤の移行定数のこ

とを指す。また Ketty-Schmidtモデル薬剤動態として、代謝の性質上マイクロスフェアモデ

ル、クリアランスモデル、一般モデルの3つに分類され、それぞれの動態に従い式 2.3の解

が導かれる。

� Microsphere Model

マイクロスフェアとは元々小さい粒子のことを指すが、動物を用いた実験で血流を測

るために、頚動脈から既知数の粒子をいれ、屠殺した時刻にターゲットの組織に何個

の粒子がたまっているか数えていた。組織に到達した粒子は洗い出されることなく組

織に蓄積してゆく。マイクロスフェアモデルとは、いったん組織に入った放射能は再

び血中にはもどらない動態を表すモデルである。よって組織からの洗い出しがないた

めに式 2.3の第二項は無視でき、

' �*��1�� �

� *��1��1(2.4)

と表すことができる。このモデルが成立する代表的な薬剤としては ��* � .2B%!�、���,��*+(���,�C�D)#が挙げられる。

� Clearance Model

クリアランスモデルでは、マイクロスフェアモデルとは逆に組織に薬剤が蓄積せず常

に洗い出しされる。よって、式 2.3の右辺の第一項が無視でき、

*��1� � ��

(2.5)

と表すことができる。代表的な薬剤は、���Xeガス、��Krガスである。

� General Model

一般モデルでは組織からの洗い出しも蓄積もおこる。代表的な薬剤として ��O-water、���I-IMPが挙げられる。式 2.3より、一般解を C�(t)='

� *��1� � ��/� ���E , � � � �と

すると

*��1� � ' � *��1�� ��

(2.6)

が得られる。

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2.2. SPECT検査で得られる局所脳血流量 55

図 2.2:脳 SPECT検査で用いられる放射性薬剤 (IMP、HMPAO、ECD)の化学構造式 [1-1]

2.2 SPECT検査で得られる局所脳血流量

SPECTを用いた局所脳血流 rCBF検査で使用される放射性薬剤は PETと異なり、アイソ

トープのジェネレーターと薬剤合成キットがあれば合成されるために救急検査に適してい

る。以下に代表的な薬剤とその性質を記し、またその化学構造を図 2.2に示す。

表 2.1:脳 SPECT検査で用いられる放射性薬剤の特性比較 [1-1]Character ���IMP ���Tc-HMPAO ���Tc-ECD

Biological Half-Life 20~40min > 24h. 15h.

Retention processcombine withnon-specific change structure change hydriphilic

amine receptor from lipophilicLinearity for CBF good poor poor

Stability as compound stable unstable> 30min unstable< 30minDose[MBq] 111~222 740~1110 740~1110

� ���6 � 6�D (IMP)���I-IMPの動態は式 2.6のシングルコンパートメントモデルで表される。

ここで、V�は 35[ml/ml]と仮定される [2-1]、[2-2]。現在、���I-IMPで標識されている���Iは ���Tcに比べ半減期が長いため、投与量は ���Tc製剤に比べて低く、222MBq(6mCi)(���Tc

は 15~20mCi)が平均的な使用量とされている。また、図 2.3で示されるように、低割

合ではある放出される高エネルギーのγ線がコリメータで前方への散乱を起こし入射

するので、投影データ全体に低周波のバックグラウンドカウントが存在するため、除

去が必要である。

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56 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.3: ���6の崩壊図 [1-2]

� ���,�C�D)#(HMPAO)���Tc-HMPAOは、表 2.1に記すように調剤後時間がたつにつれて非水溶性の脳血液

関門を通過できない代謝生成物が生成する。このために SPECT検査での血管中の放

射能濃度 (バックグラウンドカウント)が大きい。

� ���,��1�42*4�1�!�.1�+!��(ECD)

ECDは脂溶性の薬剤であるため脳血液関門を通過し易いが、通過後は水溶性に変化し

脳組織に停滞する性質をもつ。この動態は脳組織から微小循環への可逆過程がないた

めマイクロスフェアモデル (式 2.4)と仮定できる。ECDは、トレーサーとしての性質

は HMPAOとほぼ等しいが、表 2.1に示すように 30分以降で化合物として安定し、30

分以降安定しない HMPAOと比べ汎用性があるとして期待されている薬剤である。

ただし、ECDの特徴として毛細血管から脳組織への移行係数 K�が必ずしも血流量

f と一致しないのである (図 2.4)。この理由は ECDの血液中での挙動によるもので、

血流が早いほど、血管壁から組織への移行が減少してしまうのである。この補正を

Permeability-Surface補正 (PS)と呼び、以下の式で定義される。

� � ' ��� � �� ���

(2.7)

Eは first-pass Extractionと呼ばれる、流体の隣接する組織への摂取率であり、血流、PS

に依存する (図.2.4)。

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2.2. SPECT検査で得られる局所脳血流量 57

図 2.4:真の CBFと観測される CBFとの関係 [2-1]

4章では ���Tc-ECDを用いた SPECT検査を取り上げているが、血流量を表す指標と

して PS補正を行わず K�値を用いている。図 2.4に示す真の血流量CBFと観測される

血流量 K�との間の関係式を見ると、���Tc-ECDの PS値は 0.42と ���I-IMP、���Tc-

HMPAOと比べると最も低く、K�を血流量 fへ変換する際には PS補正が重要となる。

しかしながら PS補正は血流量の高い所ほど高い補正値 (= �#

)が掛けられ、血流量 fの

高い値と低い値の統計変動の関係が変化してしまうために PS補正された血流量 fでは

なく K�値を用いた。

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58 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

2.3 PETとH��� Oを用いた局所脳血流 (rCBF)検査

H��� Oを使った局所血流測定のための数学モデルを適用するに当たり仮定されていること

を以下に示す。以下の条件はほかの血流トレーサー (ex. C��O�ガス)にも適用される。

1. トレーサー (H��� O)は拡散性であり、トレーサーの組織内での分布は瞬時に平衡に達

する

2. トレーサーは不活性で、その分布は血流以外の影響を受けない。また、すべての組織

中の水がトレーサー (H��� O)と瞬時に交換可能である。

3. 関心領域は 100%組織で満たされており、その組織の血流量は一定である。

4. 血流量は測定中一定である。

5. 分配定数 v�(トレーサーの組織及び血液への溶解度の比)は関心領域内で一定である。

これらの条件を満たすと Ketty-Schmidtのシングルコンパートメントモデルが適応できる。

通常H��� Oは静脈注射され、一旦心臓に到着してから動脈を介して全身の組織に摂取される。

ただし、瞬時に拡散をする性質と、不活性な性質により、動態としてはマイクロスフェア、

クリアランス型ではなく一般モデル (式 2.6)が当てはまる。

*��1� � ' �*��1�� ��

� �

(2.8)

*!�1�����2� � 組織中の時間�放射能濃度曲線' �2���!�� � 血流

*��1�����2� � 動脈血中入力関数 �時間�放射能濃度曲線�

(2.9)

PETで測定されるカウントは時刻 �,� � ,��の間の組織放射能の積分値として測定される。

PETで測定された積分カウントから血流量 fを算出する方法として代表的な Autoradiography

法 (2.3.1節)、Steady-State法 (2.3.2節)について記述する。

2.3.1 オートラジオグラフィー法

H��� Oを投与してから PET測定を時刻 �,� � ,���例 �~��秒�行ったとすると測定される

PETカウントは以下の式のようになる。� ��

��

*��1��1 �

� ��

��

' � *��1�� ��

� �1 (2.10)

さらに、薬剤投与と同時に測定された動脈血中の放射能濃度*��1�(図 2.5)を用いて、式 2.10

の右辺を、設定した測定時間 ,�( ,�、仮定した分配定数 �� � ���をもとに [2-3]、いくつか

の f値に対して左辺を計算しあらかじめテーブル化しておく。後に実測で得られた PET画像

の各ピクセル値とテーブルの比較 (補間)により各ピクセルの血流量 fを決定する。

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2.3. PETと H��� Oを用いた局所脳血流 (rCBF)検査 59

図 2.5:テーブルルックアップ法による CBFの推定

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60 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

2.3.2 平衡法 (Steady-State mehod)

Steady-State法は持続的に H��� Oを投与し、脳組織内での放射能濃度が C��

� #の供給と洗

い出し、物理的減衰により、平衡になることを前提としている。脳組織内の放射能濃度が平

衡に達すると以下の式のようになる。

�*��1�

�1� ' � *��1�� �

'

��� 9�*��1� � � (2.11)

' �9

�� ��� �

� � �

9 � 物理崩壊定数

(2.12)

式 2.12のように血流は PETカウント C�(t)と動脈血中放射能濃度 C�(t)と仮定する ��によ

り表される。PET測定を脳組織放射能濃度が平衡に達している時刻 [,�( ,�]に行うと式 2.12

より

'

� ��

��

�*��1�� *��1�

����1� 9

� ��

��

*��1��1 � � (2.13)

' �9� ��

���� �� � ��

���� ��

� � �

(2.14)

となり、PETカウントと動脈血中放射能濃度の設定した時間の積分が与えられれば、仮定し

た分配定数 ��をもとに、再構成画像の各画素値毎に血流が得られる。

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2.4. PETと C��Oを用いた検査による局所血液容積 61

図 2.6:肺におけるガス交換:ヘモグロビンと C��O、H��� Oの結合

2.4 PETとC��Oを用いた検査による局所血液容積��O標識一酸化炭素C��Oは吸入後、図.2.6に示す肺に取り込まれる。この一酸化炭素は、

肺静脈から肺にわたってきたヘモグロビンと肺の中で結合する。ヘモグロビンと結合した

C��Oの結合は O�とヘモグロビンの結合より 200倍強いといわれている。

強い結合のため、組織中にとりこまれず、C��Oは組織に摂取されることなく血液中のみに

存在し体内を循環する。

このようにヘモグロビンと結合した C��Oは血液中にしか存在しないため、PETで測定さ

れたカウントも脳の血管中の C��Oの放射能濃度のイメージングに用いられる。PETで測定

される各画素の大きさは血管よりも大きいために、画素内には血管や脳組織が混在する。そ

のため動脈採血されウェルカウンターで計測された本来の動脈血中に存在する放射能濃度と

PETカウントの比より、各画素に含まれる血液容積が得られる (式 2.15)。

* F �2� B2���� � 1!��%� � �

D�, � ����

C1������� ��� � ���� 0��

� �;�22� ��0� � ����� 0

���

(2.15)

�����

2� � 脳質の密度

������

2� � 血液の密度

C1������� ��� � 動脈に対する毛細血管中のヘマトクリット�数の補正因子

;�22������ � ウェルカウンターの計数

C��Oを 1分間持続吸入した後、吸入開始から 4~8分に頭部血中の C��Oの放射能濃度が平

衡に達するので、PET測定を行う。一方で PET測定を行っている間に動脈血中の放射能濃

度を測定する。放射能濃度は平衡に達しているために、PET測定時間のうち 1点だけ採血

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62 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.7: C��O検査で得られた血液容積画像の例:(上左)血管造影 (アンジオグラフィー)で得

られた動脈相の頭部側面像、(上左)血管造影で得られた静脈相の頭部側面像 [2-4]、(下)PET

と C��O検査で得られた血液容積画像

すればよいのであるが、放射能濃度には生理的な減衰が存在することや採血できなかった場

合の対処として 3点 (測定始まり、半ば、終り)で測定するのが一般的である。PETカウン

ト、血中放射能濃度と仮定する血液の密度 1.06[ 0

�� ]、脳の組織の密度 1.04[ 0

�� ]、微小血管

内でのヘマトクリットの割合Hctを用いることで式 2.15から血液容積 (図 2.7)が算出可能で

ある。血管中の放射能分布が画像化される血液容積画像では、図 2.7に示すように、径の太

い内頚動脈 (Carotid Artery)、や大静脈 (Sinus)が視覚的に確認される。

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2.5. PETと ��O�を用いた局所酸素摂取率 (rOEF)と局所酸素代謝率 (rCMRO�) 63

図 2.8: ��O�検査の薬剤動態の模式図

2.5 PETと ��O�を用いた局所酸素摂取率 (rOEF)と局所酸素代謝率

(rCMRO�)

��O標識酸素ガスは吸入後、肺に取り込まれヘモグロビンとオキシヘモグロビン [Hb#�]

として結合し、心臓へ渡った後に体内を循環する。脳組織内の毛細血管内に存在するオキシ

ヘモグロビンから解離した#�は、初回循環抽出率 Eに比例して、脳組織に摂取される。脳

組織へ摂取された ��O�は瞬時にエネルギー代謝の燃焼反応により H��� Oとして代謝される。

代謝生成したH��� Oは組織内から毛細血管に移行し、静脈、動脈を経て再び脳組織へ循環す

る (図 2.6)。この H��� Oは 3節で述べたような拡散性の動態を示すので、脳組織へとりこま

れた後、瞬時に毛細血管に移行する (図 2.8)。

この図 2.8の脳組織における放射性薬剤の動態は、(i)毛細血管から供給される拡散性の水

の動態 (第 1項)、(ii) 毛細血管から供給され、摂取される酸素ガスの動態 (第 2項)、(iii) 毛細

血管内を流れる酸素ガス (第 3項)、の 3つに分けることができ、全体としての動態は以下の

式で表される [2-5]。

*��1� � ' �)1�1�� ��� � � #�: � ' �)��1�� ��

� (2.16)

� F! �0 � ��� :F �#�: � �)��1�

ここで、

*!�1� 脳組織の時間ー放射能曲線 �� -�2�

)1�1� 水の動脈血中の時間ー放射能曲線 �� -�2�

)��1� ガスの動脈血中の時間ー放射能曲線 �� -�2�

' 脳血流速度 �2������!��

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64 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

� 分配定数

F! 血液体積比 �2�2�

#�: 酸素摂取率

:F 実効的静脈の割合

0 動脈に対する毛細血管中のヘマトクリット�数の補正因子

(2.17)

1. 毛細血管から供給される拡散性の水の動態 (右辺第 1項)

2.3節の水の放射能濃度の時間変化を表す。

2. 毛細血管から供給され、摂取される酸素ガスの動態 (右辺第 2項)

酸素ガスは拡散性ではないために、ある一定の毛細血管から脳組織への #�の移行率

だけ摂取される (酸素摂取率)

3. 毛細血管内を流れる酸素ガス (右辺第 3項)

毛細血管 (容積 V!)内に存在する放射能濃度は、��O�の脳組織へ移行しない (1-OEF)

割合と動脈血中 (毛細血管ではない)の ��O�の放射能濃度A�(t)の積で表される。毛細

血管中における H��� Oの放射能濃度は、水の動態内に含まれるために考慮する必要は

ない。

局所酸素代謝率 CMRO� は式 2.18で表されるように #�の脳組織への取り込み量であり、

OEF、脳血流量 f、動脈血中酸素濃度 [#���の積で表される。OEFの測定は脳血流量の測定、

血液容積の測定を必要する。

*�0#� � #�: � ' � �#��� (2.18)

PETで測定されるカウントは時刻 �,� � ,��の間の組織放射能の積分値として測定される。

PETで測定された積分カウントから血流量を算出する方法として代表的な 2.3.1節に述べた

オートラジオグラフィー法、2.3.2節に述べた平衡法について再び記述する。

2.5.1 オートラジオグラフィー法

��O�を吸入すると同時に PET測定を時刻 �,� � ,��(例 0~3分)に行ったとすると PETカ

ウント、酸素摂取率 (OEF)は以下の式の右辺のようになる [2-5]。

� ��

��

*!�1��1 � '

� ��

��

)1�1�� ��

� ��1� #�: � '

� ��

��

)��1�� ��

� �1

� F! �0��� :F �#�: �� ��

��

)��1��1

#�: �

� �� *!�1��1� '� �

� �� )1�1�� ��

�� �1 � F! �0 �

� �� )��1��1

'� �� �� )��1�� ��

�� � F! �0 � :F � � �� )��1��1

(2.19)

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2.5. PETと ��O�を用いた局所酸素摂取率 (rOEF)と局所酸素代謝率 (rCMRO�) 65

式2.19に対して、H��� O検査で推定された血流量 f、PETカウント、仮定した分配定数 �� � ���

等と薬剤投与と同時に測定された動脈血中の放射能濃度*��1�を用いると酸素摂取率が得ら

れる。また、推定された OEFと水の検査で推定された fより式 2.18の酸素代謝量が得られ

る。

2.5.2 平衡法 (Steady-State method)

��O�ガスを持続吸入すると前節で述べたように、ガスの供給、減衰と代謝により脳内の

放射能濃度は平衡状態になる。このときの放射能濃度分布は、Correia等により式 (2.21)で

求められる [2-6]。

*!�1� �' �)��1� �#�: � ' �)1�1�

��� 9

� F! �0 � ��� #�: � :F � �)��1� (2.20)

#�: ����� 9�*!�1��1� �'� �)1�1� � F! �0 � ��� � 9� �)��1��

)��1� � '� � F! �0 � ��� � 9� � :F �)��1�(2.21)

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66 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

2.6 動脈血中の時間-放射能濃度曲線

SPECTや PETで測定されるのは臓器の局所放射能であるため、血流や代謝量といった生

理学的な量を計算するためには、臓器に供給される動脈血中の放射性薬剤の濃度の時間経過

が必要になる。これを入力関数と呼び、生理機能を計算するためにはなんらかの形で求めな

ければならない。表 2.2に示した 3つの入力関数を求める方法について次節で説明する。

表 2.2:動脈血中時間-放射能濃度の取得法型 方法 備考

動脈採血 手動採血 オクタノール �抽出が可能、作業が繁雑

吸引ポンプを用いた持続採血 全血入力関数しか測れない

非侵襲手法 ダイナミック画像に ROI 全血入力関数しか得れない

入力関数の標準化 体重、投与量等で校正 採血点と組織の間に時間遅れ無

薬品名、脂溶水溶性の液体分離に用いられる

2.6.1 動脈採血

入力関数は放射能濃度の時間変化であり、実測するためにはサンプル時刻毎の放射能濃度

を測定する必要がある。

手動の採血

図 2.9に示す手動で採血を行う場合には、短い時間毎にシリンジに血液をとり、ウェルカ

ウンター (NaI(Tl))で放射能濃度を測定、血液の重さも測定する。この方法の利点は各採血

時刻のサンプルに対して、オクタノ-ル抽出が行えることである。薬剤が脂溶性のものであ

れば、オクタノ-ルを加えることで水溶 (血漿等)、脂溶の 2層にわけ、脂溶性の層のサンプ

ルから単位容積当たりの放射能濃度が得られる。ただし、時刻の記録を正確に行わないと、

入力関数の形が実際のものと異なってしまう。また、入力関数の形の変化が大きい場合に

は、時間間隔が荒すぎて、ピ-クを過小評価してしまう可能性があるので、十分注意が必要

である。

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2.6. 動脈血中の時間-放射能濃度曲線 67

図 2.9:手動による採血の過程

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68 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

持続採血

上記の手動採血では作業が繁雑なために、自動化を目的として図 2.10に示す流量を調整

するポンプを導入し持続採血が行われる。

図 2.10:持続動脈採血の過程

採血された血液中に含まれるβ � 核種の放射能をβ線検出器を用いて測定する。本研究

で使用しているβ検出器の構成 (システムと回路図) [2-7]を図 2.11に示す。この図の中で、

動脈血はポリエチレンチューブを経由し採血されプラスチックシンチレータ (16Φ x5tmm�

の円板形状、Pilot U)検出器の表面でチューブを 2~3回巻き付けて測定する。

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2.6. 動脈血中の時間-放射能濃度曲線 69

図 2.11:β線検出器システム [2-7]:(上)検出器の構成、(下)電子回路

Page 66: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

70 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.12:鈍り補正された H��� O検査での全血入力関数 (実線)と持続採血で測定された入力関

数 (破線)

持続採血は手動採血に比べ、サンプル時刻間隔が短くなるという利点がある。一方で、持

続動脈採血のためにはポンプで動脈血流量を調整するために、流体に含まれる放射性薬剤

のカウントが時間に沿って鈍るために補正が必要になる。また、脳組織の動態解析を行うに

は、脳の動脈の放射能-時間曲線が必要であるが、持続採血を行うと脳へアイソトープが到

達する時間ではなく採血点へ到達する時刻しか得られない。そのため持続径血した入力関数

を時間移動させる処理 (時間遅れ補正)が必要である。

� Dispersion Correction(鈍り補正)

測定した入力関数C�

�(t)は真の入力関数*�(t)と時定数 Eを持つ鈍り関数 (指数関数)の

畳み込み積分で表されると仮定する。

*�

��1� � *��1�� �

E��/ (2.22)

図 2.12に鈍り補正したH��� O検査での実線でプロットされた全血入力関数と破線でプ

ロットされた持続採血で測定した入力関数を示す。

� Delay Correction(遅れ補正)

鈍り補正した入力関数は真の入力関数に対して、

*. ����1� � *.����� ���1 ��1� (2.23)

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2.6. 動脈血中の時間-放射能濃度曲線 71

図 2.13:時間遅れ補正された ��O�検査での全血入力関数 (点線)と持続採血で測定、鈍り補

正した入力関数 (実線)

のような�1[秒]の時間差がある。そこで、フィッティングの手法を用い時間を推定す

る手法を飯田等が提案している [2-8]。その方法とは、水の検査を例にとると式 2.24の

ように

*��1� � � �*��1��1�� ��� � (2.24)

変数�( �(�1を仮定する。Ci(t)は [,�( ,�]で測定した組織放射能濃度曲線で、*. ���(t)

は遅れ補正した入力関数、�tは組織と採血点との RIの到達時間差であり、ダウンヒ

ルシンプレックス法 (Appendix参照)で 3つの変数を推定する (図 2.13)。

しかし測定するカウントは動脈全血液中の放射能カウントであるので、脂溶性の放射性薬剤

の場合には、血漿で放射能濃度が薄まるため、血漿の分離が必要である。また、放射性代謝

物が時刻と共に血液中で放射能濃度を変える場合 (��O�)は代謝物補正が必要になる。

� ��O�の全血入力関数に対する代謝物推定��O�の全血入力関数をCa (t)[MBq/ml] とすると、再循環しているH��

� Oの動脈血中濃

度曲線 Ca1(t)、��O�の血中放射能濃度 Ca�(t)は、以下の推定式を用いて計算される

[2-9]。

*.1�1� � � *. �1��1�� ���� (2.25)

*.��1� � *. �1�� *.1�1� (2.26)

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72 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.14:��O�検査における全血 (太実線)、推定された代謝物 (点線)、酸素ガス (細実線)の入

力関数 [2-9]

ここで変数 kは 0.0722,[min��],�1は 20[sec]と一般には用いられている。図 2.14には、��O�検査における全血液中の放射能濃度-時間曲線 (太実線)から式 2.26により推定し

た代謝物曲線 Ca1(点線)、血中の酸素ガスCa�(t)(細実線)の入力関数を示す。

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2.6. 動脈血中の時間-放射能濃度曲線 73

図 2.15: (左)C��O検査におけるダイナミック画像 (内頚動脈)の ROIから得られる入力関数

(実線)と実測入力関数 (破線)の比較、(右)内頚動脈に ROIを設定した C��O検査の画像

2.6.2 画像から抽出する入力関数

ダイナミック画像は各ピクセルで組織の放射能-時間曲線の情報をもつ。脳内の動脈、心

臓の心プールについて着目すると、ダイナミック画像の動脈部分に ROIを設定することで、

入力関数が得られる。図 2.15には、C��O検査のダイナミック画像の頚動脈部分の時間-放射

能濃度曲線と、β検出器で実測した上腕動脈血中の時間-放射能濃度曲線の比較であり両者

共に良く一致している [2-10]。ただし、注意しなければいけない事は、動脈のサイズが画素

サイズに比べて非常に小さい場合には部分容積効果 � の影響で ROI内に動脈以外の異なる

組織の時間-放射能濃度曲線も含まれるため、入力関数の形、カウントに誤差を含む可能性

がある。

その他にも Factor Analysisといった画素中に含まれる組織をいくつかの要素 (Component)に

わけ、動脈血だけの入力関数を得る手法がある [2-11]、[2-12]。

2.6.3 標準入力関数

入力関数の形が個人で大きく変わらない場合には、標準入力関数を用いる方法が使われる

ことがある [2-13]。

事前に複数人に対して薬剤投与後に動脈採血を行い得られた放射能-時間曲線を平均化し標

準の入力関数Ca� �とし、ある時刻の標準入力関数の放射能カウント A� �(t)とする。検査時

� 1画素サイズより小さい構造は画素内で平均化される

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74 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.16:標準入力関数:1点の採血点のカウントで全体をスケールし個人の入力関数とする

[2-13]

にはある時刻 tにおいて 1点の動脈採血を行い、血中の放射能カウント A���� �����(t)を得る

と、個人の入力関数 Ca���� �����(t)は以下の式で推定される (図 2.16)。

*.���� ������1� �)� ��1�

)���� ������1�� *.� ��1� (2.27)

ただし、採血点を選ぶ際には推定入力関数と実際の入力関数の間の差が最小となる時刻を選

ぶ必要がある。

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2.7. 脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量の虚血性脳疾患診断への応用 75

2.7 脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量の虚血性脳疾患診断への応用��O�の一連の検査で得られる脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量は虚血性脳疾患の診断

指標として用いられている。虚血 (梗塞、出血)に由来する脳疾患は酸素の供給量が低下す

るために機能障害、細胞死をひき起こすことが広く知られている。この虚血性の病態の段階

は大きく分けて 3つの状態に分けられている。

1. 血流は僅かに低下するが機能が正常である

2. 血流が低下するが、酸素代謝量は保たれる

血流が減少した後は (虚血)、細胞にたいする酸素供給量の低下を補うために自動調整

能 (Autoregulation)と呼ばれる酸素摂取率の上昇が見られる。

3. 血流が 2の状態よりさらに低下し、酸素代謝量が低下

自動調整能にも上限があり、極端に血流が低くなると酸素代謝量は下がり、終いには

細胞死を起こす [2-14]。

この血流の低下に伴う虚血性疾患のメカニズムは、動物を用いた基礎研究から、生化学、臨

床研究と様々なアプローチがなされ解明されており、病態の段階と C��O、H��� O、��O�の一

連の検査で得られる脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量との関係について次節で述べる。

2.7.1 虚血性疾患の発生メカニズム

血流の減少に伴い生じる生体機能の変化は、ヒトでは解明し難いためにサルを用いた実

験により多く報告されている、これらの報告を図 2.17にまとめる。この図では血流の低下

に伴い生じる生理反応を縦軸に表している。先ず、血流が低下すると神経細胞の活動低下

がおき、22ml/100g/minまで下がると梗塞が発症し、8ml/100g/minでは麻痺が生じ、また

20ml/100g/minから 8ml/100g/minでは神経活動による誘発電位が消滅してしまう (図.2.17)。

特に、18ml/100g/minでは、神経細胞の自発的活動が停止してしまうなど、これらの個々の神

経細胞の活動により機能的な血流の閾値は様々に存在する。図 2.18に示すように生化学的な

アプローチでも前節と同様の観察が得られている。皮質領域の血流が減少してゆく仮定のな

かで、たいだい 60~100ml/100g/minは正常であるといわれている。しかし、55ml/100g/min

付近になるとタンパク合成 � がなされなくなり、35ml/100g/minでは嫌気性 (無酸素)解糖系

の刺激をうけ、20ml/100g/minでは神経伝達物質のリリースとエネルギー代謝の阻害がおこ

り、ついには 6~15ml/100g/minでは脱分極、カリウムの流出がおきる。

ただし、これらの現象は血流のみに同期しておきるわけではなく、虚血にさらされた時間に

依存してゆくことがわかっている。表 2.3では血流量と虚血に起因する細胞死に至る時間と

の関係を示しているが、17~18ml/100g/minではかろうじて細胞死に至らず、治療を行うこ

との有効性が示されている。

� 細胞の生成を担う

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76 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.17:サルを用いた動物実験に基づく血流量と神経細胞の変化の関係 [2-14]

図 2.18:血流量 [ml/100g/min]と生化学的過程との関係 [2-14]

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2.7. 脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量の虚血性脳疾患診断への応用 77

表 2.3:血流量 [ml/100g/min]と虚血による細胞死に至る時間との関係 [2-14]

Flow 0 10 15 17~18

Time 25min 40min 80min ���

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78 第 2章 生理機能変数を推定するための動態モデル解析

図 2.19:虚血性能疾患の病状の段階と生理機能との関係

2.7.2 診断指標

臨床診断で大事なことは、虚血が発生した虚血核の周辺部の細胞を守るために、(i) 虚血

核である部分と、(ii) 半陰性と (iii) 低潅流 (Misery Perfusion)を区分することである。

表 2.4:虚血領域の病態分類

分類 状態

虚血核 脳細胞の死につながる

半陰性 回復か細胞死かどちらに移行するかわかならい領域

低潅流 血液供給がすくなくなるが、細胞レベルでのダメージは受けない

虚血核は細胞壊死につながり、低潅流は血液供給が少なくとも細胞のダメージはうけない。

しかし、半陰性の部位は虚血になるかもしれないが、回復する可能性もあるので、治療の対

象となる。特に、半陰性は解剖学的には損傷がないが機能的には障害がある状態であり、状

態の正確な判断が必要となる。また、機能 (特に酸素代謝)に障害があると大抵の場合、細

胞は 2週間放置すると壊死してしまうために、再潅流術が必要になる。

この半陰性の状態を知るためには、CBFだけではなく、OEF、CMRO�も用いられている。

なぜならばこの章の初めに述べたが、虚血に由来する脳疾患は酸素の供給量が低下するため

に機能障害、細胞死をひき起こすからである。この関係を図示したものが図 2.19である。つ

まり CBF、OEF、CMRO�の情報から虚血の段階の判定が可能なのである。

診断後の治療

虚血領域が回復可能である、つまり治療対象であると診断された患者は梗塞の場合には、

血栓溶解療法が適応される [2-14]。その例を図 2.20に挙げるが、手術前には血流量が低下

し、酸素摂取率が上昇するが酸素代謝が保たれているMisery Perfusionが、術後には血流量

Page 75: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

2.7. 脳血流量、酸素摂取率と酸素代謝量の虚血性脳疾患診断への応用 79

図 2.20: OEF, CBF, CMRO�の診断への応用例 [2-15]

が元に戻り、酸素摂取率、酸素代謝量ともに正常に戻っている、ということが PETを用い

た検査で確認することが可能なのである。ただし、OEF、CMRO�を用いた診断をする際に、

部分容積効果による皮質、白質の混在場の評価、放射性薬剤集積の少ない領域の画素値の統

計精度などに注意する必要がある [2-16],[2-17]。

また、治療後の再潅流 (Hyper perfusion)にも現段階で問題があり、虚血領域に血液が急速に

流れ込むと、領域全体の酸素代謝量が減少する調整能が働いてしまい、虚血領域が拡大する

可能性や脳圧の急速な変化が生じるなど、治療により重症度が上がる可能性もあるために今

後も研究が必要となる。

Page 76: 1 SPECT/PETの基本原理1.2. 光子の物質との相互作用 5 ため、繰り返し脳血流量の測定が可能であり脳賦活試験に用いられている。SPECT で血流

81

References

� 第 1章

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