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1 / 8 研究成果紹介 アルツハイマー病の脳の病理を生体内で高感度に可視化する新規薬剤を開発 -安価で客観的な認知症画像診断の普及に道筋 独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究プログラム 季 斌 主任研究員 ----【本研究成果のポイント】---- 認知症モデル動物の脳に蓄積したアルツハイマー病原因物質アミロイドベータ の可視化 に、新規 SPECT 薬剤を用いて、PET 薬剤と同等な検出感度と定量性で成功した。 本薬剤は PET 薬剤と比較して安価かつ長距離輸送が可能で、国内医療機関の SPECT 装置の 導入率が高いことから、実用化されればアルツハイマー病の画像診断の普及が期待できる。 放射線医学総合研究所(理事長 米倉 義晴、以下、放医研)分子イメージング研究センタ ー分子神経イメージング研究プログラム(須原 哲也 プログラムリーダー)脳分子動態チー ムの季 斌(キ ヒン) 主任研究員らは、アルツハイマー病(以下、AD)の脳の特徴的病理 であるアミロイドベータ(以下、Aβ)蓄積を高感度で可視化できる新規の SPECT 薬剤の開 発に、富士フイルム RI ファーマ株式会社と共同で成功しました。 認知症の半数にのぼるとされる AD の臨床診断において、Aβ 蓄積の生体内での画像化は 極めて有用であり、このための PET 薬剤が幾つか実用化されています。 PET 薬剤は検出感度 に加えて、Aβ の蓄積量をよく反映する点で定量性にも優れますが、半減期 4 が短く製造施 設から病院まで長距離の輸送ができません。一方、 SPECT 薬剤は一般的に定量性と検出感度 PET 薬剤より劣るとされますが、使用される放射性物質の半減期が長いので長距離輸送が 可能な上、検査費用が安く、国内医療機関に多く導入されている SPECT 装置で撮像できる ことから、Aβ 蓄積を可視化する SPECT 薬剤の開発は、PET に比べて低価格での AD の画像 診断及びその普及が期待できるという点で有用です。 そこで本研究では新規 SPECT 薬剤(DRM106)を開発し、認知症モデルマウスを用いて Aβ 蓄積を可視化できるか評価しました。その結果、この新規薬剤は脳内 Aβ 蓄積を可視化する だけでなく、 PET 薬剤と同等な定量性と検出感度を有することがわかりました。さらに、 AD 患者の死後脳でこの薬剤の結合性を調べたところ、既存の Aβ 蓄積を可視化する薬剤と異な り、神経細胞の変性に関わる神経毒性の強いタイプの Aβ 病変に結合しやすい特徴があるこ とがわかりました。

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研究成果紹介

アルツハイマー病の脳の病理を生体内で高感度に可視化する新規薬剤を開発 -安価で客観的な認知症画像診断の普及に道筋

独立行政法人 放射線医学総合研究所

分子イメージング研究センター 分子神経イメージング研究プログラム

季 斌 主任研究員

----【本研究成果のポイント】---- ●認知症モデル動物の脳に蓄積したアルツハイマー病原因物質アミロイドベータ※1の可視化

に、新規 SPECT※2薬剤を用いて、PET※3薬剤と同等な検出感度と定量性で成功した。 ●本薬剤は PET 薬剤と比較して安価かつ長距離輸送が可能で、国内医療機関の SPECT 装置の

導入率が高いことから、実用化されればアルツハイマー病の画像診断の普及が期待できる。

放射線医学総合研究所(理事長 米倉 義晴、以下、放医研)分子イメージング研究センタ

ー分子神経イメージング研究プログラム(須原 哲也 プログラムリーダー)脳分子動態チー

ムの季 斌(キ ヒン) 主任研究員らは、アルツハイマー病(以下、AD)の脳の特徴的病理

であるアミロイドベータ(以下、Aβ)蓄積を高感度で可視化できる新規の SPECT 薬剤の開

発に、富士フイルム RI ファーマ株式会社と共同で成功しました。

認知症の半数にのぼるとされる AD の臨床診断において、Aβ 蓄積の生体内での画像化は

極めて有用であり、このための PET 薬剤が幾つか実用化されています。PET 薬剤は検出感度

に加えて、Aβ の蓄積量をよく反映する点で定量性にも優れますが、半減期※4 が短く製造施

設から病院まで長距離の輸送ができません。一方、SPECT 薬剤は一般的に定量性と検出感度

は PET 薬剤より劣るとされますが、使用される放射性物質の半減期が長いので長距離輸送が

可能な上、検査費用が安く、国内医療機関に多く導入されている SPECT 装置で撮像できる

ことから、Aβ蓄積を可視化する SPECT 薬剤の開発は、PET に比べて低価格での AD の画像

診断及びその普及が期待できるという点で有用です。

そこで本研究では新規 SPECT 薬剤(DRM106)を開発し、認知症モデルマウスを用いて Aβ

蓄積を可視化できるか評価しました。その結果、この新規薬剤は脳内 Aβ 蓄積を可視化する

だけでなく、PET 薬剤と同等な定量性と検出感度を有することがわかりました。さらに、AD

患者の死後脳でこの薬剤の結合性を調べたところ、既存の Aβ蓄積を可視化する薬剤と異な

り、神経細胞の変性に関わる神経毒性の強いタイプの Aβ 病変に結合しやすい特徴があるこ

とがわかりました。

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【研究の背景と目的】

日本人口の高齢化が進むにつれて近年急増している認知症患者のうち、約半数

が AD 患者と言われています。AD 患者の脳内には Aβと呼ばれるタンパク質が発

症の数十年前から凝集して蓄積し、これが引き金になり、タウタンパク質の異常

蓄積、神経炎症、神経細胞死などの病理的な変化が引き起こされると考えられて

います。これらの変化が AD 患者の脳に起きると認知機能の低下をはじめとする

症状があらわれ、やがて患者は自立的な生活が困難になってしまいます。このこ

とから現在は、発症する前に治療を開始することが重要と考えられており、AD の

脳の特徴的な病理変化である Aβ蓄積を生体内で画像化することは早期診断、早期

治療につながるほか、軽度認知障害患者が AD に進行するかどうかの予後判断に

も有用であることから、Aβ蓄積を可視化する薬剤が数多く開発され、幾つかは既

に薬事承認されています。Aβ蓄積を可視化する薬剤のほとんどは、Aβに特異的

に結合する薬剤を 11C と 18F といったポジトロン核種※6で標識した PET 薬剤です

が、半減期がそれぞれ約 20 分と 2 時間と短く、長距離の輸送ができないことから、

日本全国に薬剤を供給するには生産拠点を十数箇所も設ける必要があります。こ

れに対して、123Iや 99mTcなどのシングルフォトン核種※7で標識したSPECT薬剤は、

半減期がそれぞれ 13 時間と 6 時間と長いため、数カ所の生産拠点から長距離輸送

により供給することが可能です。また、国内医療機関における画像を撮像する装

置の導入率は、PET 装置よりも SPECT 装置の方が高いため、AD の画像診断の普

及という点で Aβ蓄積を可視化する SPECT 薬剤は有用と言えます。しかし、これ

までに開発された Aβ蓄積を可視化する SPECT 薬剤は、AD の画像診断に用いる

には、検出感度と定量性が十分とは言えませんでした。そこで本研究では、AD の

画像診断の実現に向け、診断用として十分な検出感度と定量性を有する Aβ蓄積を

可視化する SPECT 薬剤を富士フイルム RI ファーマ株式会社と共同開発しました。

【研究手法と結果】

Aβ病変に結合する SPECT 薬剤として、123I-IMPY という薬剤が既に開発されて

SPECT による Aβ蓄積の画像検査が実用化されれば、AD 診断法としての普及が期待され

るほか、既存の薬剤と SPECT 薬剤を組み合わせて、Aβやタウ※5といった AD の原因といわ

れるタンパク質の蓄積パターンと症状の進行との関係を調べることによって、AD の病態解

明に関する新たな知見をもたらすと期待されます。本研究は科学研究費助成事業「新学術領

域研究」、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)における成果を一

部活用したもので、米国科学誌 Journal of Nuclear Medicine のオンライン版に、2015 年 1 月 1

日 23:00(日本時間)掲載されました。

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いましたが、AD 患者の死後脳サンプルにおいて Aβ蓄積を検出したものの、生体

画像では Aβの蓄積を明瞭に可視化することはできていませんでした。生体画像が

不明瞭となった原因として、IMPY が Aβ病変に対して親和性が低いことと、代謝

されやすい化学構造であることが考えられています。そこで我々は、IMPY の化学

構造に基づいて数百個の化合物を合成し、それらの Aβ病変への親和性、生体内で

の代謝安定性を調べました。その結果、IMPY よりも Aβ病変に対する親和性が高

く、生体内で代謝されにくい性質を有する化合物として DRM106 を選び、SPECT

薬剤に用いられる 123I で標識しました。

次に、アミロイド病理を有する認知症モデルマウス※8に 123I-DRM106を投与し、

SPECT 撮像を行いました。その結果、正常マウスの脳には 123I-DRM106 がほとん

ど蓄積していないのに対して、認知症モデルマウスの脳では、Aβが多くたまって

いる皮質や海馬といった部位において顕著に、また、Aβが少したまっている小脳

にもわずかに、それぞれ 123I-DRM106 の蓄積がみられました。また、PET 薬剤の

定量性や検出感度と比較するため、SPECT 撮像を行う前に、Aβ蓄積を可視化する

PET 薬剤として広く使用されている 11C-PiB※9 を同じ個体に投与して、PET 撮像を

行いました。その結果、同じ個体に 11C-PiB を投与して撮像した PET 画像は、123I-DRM106 を投与して撮像した SPECT 画像とほぼ同様の蓄積パターンを示しま

した。更に 123I-DRM106と 11C-PiBの生体画像からAβの蓄積量を計算したところ、

両者はよく一致しており、123I-DRM106 を用いた SPECT 撮像は、少なくても 11C-PiB

を用いた PET 撮像と同等の検出感度と定量性を有することが分かりました(図 1)。

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図 1 11C-PiB と 123I-DRM106 の生体画像と定量解析結果

正常マウスに比べ、認知症モデルマウス(Tg2576)の前頭皮質・海馬(黄矢印:Aβの多い部位)

に 11C-PiB と 123I-DRM106 の蓄積が顕著に上昇した。また、小脳(赤矢印:Aβの少ない部位)でも

11C-PiB と 123I-DRM106 の蓄積がわずかに上昇した。小脳を参照領域として、定量解析した結果、

両薬剤の間に良好な線形関係があることがわかった。どちらのマウスでも 11C-PiB と 123I-DRM106

が蓄積している部位(白矢印)は、ハーダー腺と呼ばれる脳の外にあり、げっ歯類動物にはあるが、

ヒトにはない器官。

ところで、凝集した Aβからなる老人斑には、典型的老人斑(中心部に Aβの芯

があり、周囲に変性した神経突起が蓄積していることから、神経毒性の強い Aβが

たくさん含まれていると推測されている)とびまん性老人斑(Aβの芯と変性神経

突起がなく Aβがびまん性に沈着していることから、神経毒性の強い Aβがあまり

含まれていないと推測されている)と呼ばれるものなどいくつかタイプがあり、

海馬には典型的老人斑が、側頭葉新皮質という領域にはびまん性老人斑が多いこ

とがわかっています。11C-PiB はこの 2 種類の老人斑を区別することなく結合する

ことも知られています。

そこで、SPECT 撮像には使用できないが半減期が長く取扱やすい 125I で標識し

た 125I-DRM106と 11C-PiBそれぞれについて、AD患者の死後脳切片への結合性を、

生体画像よりも物質の局在分布や量を精密に調べることができるオートラジオグ

ラフィ※10という方法で調べました。その結果、125I-DRM106 と 11C-PiB のどちらも

老人斑の蓄積が多い海馬 CA1、側頭葉新皮質に結合していました。また、これら

の領域における両薬剤の結合性を定量測定したところ、側頭葉新皮質:海馬の薬

剤結合の比率は 11C-PiB に比べ、125I-DRM106 の方が低いことがわかりました(図

2)。これは 125I-DRM106 が優先的に海馬領域に結合することを意味しており、こ

のことから 125I-DRM106は神経毒性の強いAβからなる典型的老人斑に優先的に結

合することが示唆されました。

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図 2 死後脳における 125-DRM106 と 11C-PiB の結合

AD 患者の死後脳を用いた 125I-DRM106(上段)と 11C-PiB(下段)のオートラジオグラフィでは、

側頭葉皮質(黒枠線:拡大図の左欄)と海馬 CA1(赤枠線:拡大図の右欄)領域における両薬剤の

結合の比率が違い、11C-PiB より 125I-DRM106 の方が低い。Aβを蛍光色素で染色すると側頭葉皮質

と海馬 CA1 領域にそれぞれびまん性老人斑(赤矢印)と典型的老人斑(黄矢印)が多く存在する

ことがわかる。

【本研究成果と今後の展望】

新規 SPECT 薬剤 123I-DRM106 を用いて、PET 薬剤に遜色なく、高感度で認知症

モデルマウス脳内に蓄積した Aβ を定量化することができました。SPECT 薬剤は

半減期が長く、入手しやすい放射性同位体を使用するため、PET 検査よりも安価

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で製造できる上、撮像装置の導入率も SPECT 装置の方が PET 装置より高いので、123I-DRM106 が実用化されれば、SPECT による AD の客観的診断の普及と、これ

に伴う経済効果が期待されます。

また、既存の薬剤を用いることで得られる Aβやタウといった AD の原因と言わ

れるタンパク質の蓄積に関するすべての情報とともに、123I-DRM106 を用いること

で得られる神経毒性の強い Aβの蓄積の情報と、症状の進行との時間的空間的な関

係を検証することで、AD の病態解明に関する新しい知見をもたらすことも期待さ

れます。

本研究は富士フイルム RI ファーマ株式会社との共同研究であり、文部科学省科

学研究費補助金 新学術領域研究(領域名「脳内環境」、課題名「毒性伝達機構の

分子イメージングを基軸とした神経変性疾患研究」)、独立行政法人科学技術振興

機構 戦略的創造研究推進事業 CREST(課題名「iPS 細胞を駆使した神経変性疾患

病因機構の解明と個別化予防医療開発」)における成果を一部活用しています。

(用語解説)

※1 アミロイドベータ

アルツハイマー病やダウン症候群にみられる病理学的変化である老人斑、脳アミロイド血

管症(アミロイドアンギオパチー)の主成分の 1 つ。 Aβ が凝集して老人斑を形成するが、

形成過程によって、老人斑に数種類のサブタイプがあり、神経突起の変性に強く関連するも

のとあまり関連しないものがある。 また、 Aβ 自身に神経細胞毒性があるという研究報告が

ある。

※2 SPECT

単一光子放射断層撮影法(Single Photon Emission Computed Tomography)の略称。身体の中の

生体分子の動きを生きたままの状態で外から見ることができる技術の一種。特定の体の部位に集

積したり体内物質に結合したりするシングルフォトン核種(123I、99mTc 等)で標識した SPECT 薬剤

を患者に投与し、薬剤より放射される 1 本のガンマ線を検出することによって、体深部に存在す

る生体内物質の局在や量を測定できる。

※3 PET

陽電子断層撮影法(Positron Emission Tomography)の略称。特定の体の部位に集積したり体内

物質に結合したりするポジトロン核種(11C、13N、15O、18F 等)で標識した PET 薬剤より放射され

る陽電子に起因する一対の対向するガンマ線を検出することによって、体深部に存在する生体内

物質の局在や量を測定できる。ポジトロン核種の半減期が短く、長距離輸送に向かない。また、

大掛かりの製造装置が必要で、薬剤が高価であるが、エネルギーが強いため、一般的に PET 撮

影の検出感度や定量性が SPECT 撮影より優れる。

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※4 半減期

放射性物質に含まれる、放射性核種の量が元の半分になるまでの時間のこと。放射性核種によ

り時間の長さは異なる。

※5 タウタンパク質

神経系細胞の骨格を形成する微小管に結合するタンパク質。細胞内の骨格形成と物質輸送に関与

している。アルツハイマー病をはじめとする様々な精神神経疾患において、タウが異常にリン酸

化して脳の細胞内に蓄積することが知られているため、その動態の解明が精神神経疾患の解明に

重要といわれる。

※6 ポジトロン核種

11C、13N、15O、18F 等陽電子(ポジトロン)を放出する核種で、PET 薬剤に使用される。半減期

が短く、長距離輸送に向かない。また、大掛かりの製造装置が必要なため、ポジトロン核種で標

識した PET 薬剤は高価である。しかし、エネルギーが強いため、一般的に PET 撮影の検出感度

や定量性が SPECT 撮影より優れる。

※7 シングルフォトン核種

123I、99mTc 等ガンマ線を放出する核種で、SPECT 薬剤に使用される。半減期が長く、長距離輸送

ができる上、入手しやすい核種があり、このような核種を用いると SPECT による低価格な画像

撮影を実現可能である。

※8 認知症モデルマウス

主に遺伝子操作によって、認知症の中核病理(の一部)が出現するようになったマウス。本

研究で用いたモデルマウス Tg2576 は、家族性アルツハイマー病の原因遺伝子(変異したアミロ

イド先駆タンパク(APP)遺伝子)を組み込んで APP を過剰に発現させ、その APP から産生さ

れた Aβ が神経細胞外に蓄積するマウスである。Aβ 画像化薬剤や Aβ を減らす治療薬を開発す

る際の基礎的な評価に利用される。

※9 11C-PIB

ポジトロン核種 11C で標識したピッツバーグ化合物 B(Pittsburgh Compound-B)の略称。脳

内に蓄積したアミロイドに選択的に結合する薬剤であり、Aβの蓄積量の差を鮮明に画像化でき

ることから、これまで数多くの脳疾患研究で使用されている。

※10 オートラジオグラフィ

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PET/SPECT のような生きたままで得られる生体画像と異なり、死後脳などから作製した組織

切片に放射性薬剤をかけて、特定の生体内物質に結合した薬剤から出た放射線を検出することで、

生体内物質の局在や量を測定する。PET/SPECT 撮影の時に起こるガンマ線の組織吸収や散乱が

ほとんどないため、空間分解能が高く、放射性薬剤の分布を細かく見分けることができる。

(問合せ先)

独立行政法人 放射線医学総合研究所

企画部 広報課

TEL:043-206-3026

FAX:043-206-4062

E-mail:[email protected]

(研究に関すること)

独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター

分子神経イメージング研究プログラム 主任研究員 季 斌(キ ヒン)

TEL:043-206-3251

FAX:043-253-0396

E-mail:[email protected]