14.経営学研究科現代経営学専攻...

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 - 14-1 - 14.経営学研究科現代経営学専攻 (専門職大学院) 経営学研究科の教育目的と特徴 ・・・・14-2 「教育の水準」の分析・判定 ・・・・・14-4 分析項目Ⅰ 教育活動の状況 ・・・・・14-4 分析項目Ⅱ 教育成果の状況 ・・・・・1411 「質の向上度」の分析 ・・・・・・・・1415

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻

- 14-1 -

14.経営学研究科現代経営学専攻

(専門職大学院)

Ⅰ 経営学研究科の教育目的と特徴 ・・・・14-2

Ⅱ 「教育の水準」の分析・判定 ・・・・・14-4

分析項目Ⅰ 教育活動の状況 ・・・・・14-4

分析項目Ⅱ 教育成果の状況 ・・・・・14-11

Ⅲ 「質の向上度」の分析 ・・・・・・・・14-15

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻

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Ⅰ 経営学研究科現代経営学専攻(専門職大学院)の教育目的と特徴

経営学研究科は、全国の国立大学に先駆けて、平成元年度に大学院設置基準第 14条特例

を適用した昼夜開講制のもと、企業や組織に現に在籍している社会人を大学院学生(社会人

院生)として受け入れ、実務経験を生かしながら将来の発展動向を洞察しうる高度専門職業

人の育成を目的として、社会人 MBA プログラムを提供する「日本企業経営専攻」(修士課程)

を独立専攻として設置した。平成 11年度には大学院重点化を契機に同専攻を「現代経営学

専攻」に改め、平成 14年度には「専門大学院」として社会人 MBAプログラムを改組し、現

代経営学専攻のスタッフを増員して大幅に科目等を拡充した。さらに平成 15年度には、文

部科学省の制度改変により専門大学院から新たな学位課程(専門職学位課程)を持つ「専門

職大学院」と改められた。

(教育目的)

1 神戸大学 MBA プログラムは、前身の旧制神戸高等商業学校以来確立されてきた建学の

精神である「学理の応用」あるいは「学問と実際の調和」という教育理念に基づき、日本の

経営方式やビジネスの慣行の合理性と限界について正確な知識を持ち、それを土台にし

て、国際的に活躍できるビジネス社会の中核となる人材を養成することを目的としてい

る。ここで、日本のビジネス社会の中核となる人材とは、《資料1》に掲げる人材のこと

をいう。

《資料1:ビジネス社会の中核人材》

(1) 経営学全般についての高度な専門知識を有し、

(2) 経営学の特定分野についての深い専門知識を有し、

(3) 長期的でグローバルな観点から、新規の多様な経営上の問題を把握でき、

(4) 創造的な解決策を提示し、適切な判断を下すことができる人材

2 教育目的を達成するため、現行の中期目標では、「「教育憲章」に掲げた、「人間性」、「創

造性」、「国際性」及び「専門性」を身に付けた個性輝く人材を養成するため、国際的に魅

力ある教育を学部・大学院において展開する。また、豊富な研究成果を活かして、社会の

変化を先導し、個人と国際社会が進むべき道を切り拓く高度な知識・能力を有する、次世

代の研究者をはじめとした多様な人材の養成に努め、教育の更なる高みを目指す」ことを

定めている。

3 目的に掲げる人材を養成するため、本 MBA プログラムでは、「プロジェクト方式」(後

述)と「講義科目」により体系的な教育課程を編成している。

(http://www.kobe-u.ac.jp/documents/campuslife/edu/policy/g06_cp.bu_2014.pdf)

(組織編制)

これら目的を実現するため、本研究科では《資料2》に示す組織を編成している。

《資料2:経営学研究科の専攻と講座》

専攻 講座

経営学(博士課程) 経営学、会計学、商学、国際戦略分析*、マネジメント・システム

設計*、事業価値評価*、経営戦略システム設計* 現代経営学(専門職学位課程)

注 1)*印は、連携講座ないし協力講座を示す

(教育上の特徴)

本 MBAプログラムは、「プロジェクト方式」、「働きながら学ぶ」、「研究に基礎をおく教育」

の三つの特徴あるコンセプトで構成されており、我々はこれを「神戸方式」と呼んでいる。

中でも「プロジェクト方式」は、産業界からの要望の高い問題に含まれる解決すべき複数の

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻

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課題について、それぞれ5~6名の社会人学生からなるプロジェクトチームを編成し、学生

相互間、教授陣・学生間でお互いに知恵を出し合いながら、共同研究により解決策を探る教

育システムで、全国に例をみないユニークなものとなっている。

[想定する関係者とその期待]

本 MBAプログラムが想定する関係者は、在学生、修了者、社会人、企業と社会からなる。

在学生が期待することは、経営に関する体系的な知識と運営能力の修得、並びに他業種の社

会人及び本研究科の教員との生涯にわたる人的ネットワークの形成と想定している。修了

者の期待は、本 MBA プログラムを核とした人的ネットワークの形成であり、社会人一般の期

待は、本プログラムの活動の公表である。また、企業と社会の期待は、日本の経営の高度化

であると認識している。

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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Ⅱ 「教育の水準」の分析・判定

分析項目Ⅰ 教育活動の状況

観点 教育実施体制

(観点に係る状況)

神戸大学 MBA プログラムは、本研究科の一専攻である現代経営学専攻(専門職学位課程)

という位置付けにあり、《資料3》に示す教員数が配置されている。専任教員のうち実務家

教員は9人となっている。実践的 MBA教育である「神戸方式」の実施においては、多様でタ

イムリーな教育内容の提供を必要とするため、有効であると判断した場合は研究科内の他

専攻の教員にも教育を担当させており、平成 27 年度は 15 名の教員が兼担教員として授業

や演習を担当した。

入学定員及び入学者の推移は《資料4》に示すとおりである。アドミッション・ポリシー

(http://www.kobe-u.ac.jp/admission/grad/requirement-grad/index.html#f-grad)に基

づく学生を選抜しており、入学定員充足率の過去6年間平均は、103.6%と良好な充足率で

ある。専任教員 1人当たりの学生数は 3.1人(平成 27年度)、また、専任教員のうち学位保

有者は 87.0%、概ね5年以上の社会人経験保有者が 39.1%となっている。

一般的な教員人事制度の他に、「社会人専任教員制度」と呼ばれる一般教員とは異質なキ

ャリアやバックグラウンドを持つ社会人を一定期間にわたり研究科の専任教員として採用

し配置している。さらに、民間の研究機関との連携により、実証的・実践的経営学の確立を

目指すという目的で、GCAサヴィアン、アクセンチュア、野村総合研究所の3社との連携講

座を導入している。この連携講座に配置された3名の教授と6名の准教授も本 MBA プログ

ラムの授業を担当している。

《資料3:教員の配置状況》 (平成 27 年 5 月 1 日現在)

専任教員数 助手

非常勤

教員数 教授 准教授 講師 助教 計

男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 総計 男 女 男 女

17 1 4 0 1 0 0 0 22 1 23 0 2 8 0

《資料4:入学定員及び入学者数》

年度 H22 H23 H24 H25 H26 H27 平均

入学定員 69 69 69 69 69 69 69

入学者数 72 69 72 72 72 72 71.5

充足率(%) 104 100 104 104 104 104 103.6

本研究科は、全般的な教育内容・方法の改善に取り組む体制として、FD 委員会、評価委

員会の2つの組織を設けているほか、本 MBA プログラムの教育内容と教育方法の改善につ

いては専門職大学院運営委員会がその任に当たっている。

FD 委員会は研究科長を中心とした教育内容・方法改善の推進母体である。その活動の概

要を《資料5》に示す。評価委員会は本学部・研究科の体系的評価活動(自己評価と外部評

価)を行い、約 800 ページにわたる評価報告書として出版し、内外の関係者に情報開示して

いる《資料6》。専門職大学院運営委員会は MBA教務委員を委員長として演習担当者を中心

に教育内容についての議論や学生への意見聴取を行っている。

さらに、ステイクホルダーの意見を教育内容等へ反映させるプロセスとしてアドバイザ

リー・ボード及び MBA フェロー制度がある。アドバイザリー・ボードは経営者の戦略的視点

から今後の方向性を探るために平成 15年度から組織されている《資料7》。MBAフェロー制

度は、修了生が先進的実務家として MBAプログラムの高度化に貢献するとともに、産学連携

推進媒体となることを企図して平成 18年度に創設された。これまで MBAプログラムの強化

点、改善点について様々な意見を頂いている。

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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また、平成 26年度には、本 MBAプログラムのプレゼンスを向上させるために MBAプロモ

ーションタスクフォースを、プログラムの在り方について企業等との連携を深め反映して

いくために神戸大学 MBA人材育成構想委員会を立ち上げるとともに、プログラム創設 25周

年を記念し「人生を変える MBA」を出版した《資料8》。本書は MBA 受験を考える社会人の

検討の一助となるとともに、本 MBA プログラムに関わる教員の質の高さを広める役割も果

たしている。(Ⅲ「質の向上度の分析」14-14頁、事例①参照)

こうした活動は個々の科目の講義内容に反映されることはもちろん、カリキュラム構成

や授業方法等の改善にも反映されており、例えば、平成 27年度より修士論文発表会をこれ

までの口頭発表形式からポスター・セッション形式へと変更し、交流と相互啓発の場として

の色彩を強めることとした《別添資料1:専門職大学院運営委員会資料》。セッションは発

表者のほかに修士1年生の学生、既卒者、家族等の参加があり、7割近い参加者から有益で

あったとの評価を得た《資料9》。

なお、本 MBAプログラムは一般社団法人 ABEST21が平成 25年度に実施した経営分野専門

職大学院認証評価において、最高評価の“Excellent”と認定さている。同認証評価では、

「本教育プログラムは、認証評価基準がほとんど又は全てが満たされ、課題が少なく、教育

研究の質維持向上が十分に期待でき、非常に優れている教育プログラムである。」、「“研究に

基礎をおく教育”が特徴をもつものだ」と高く評価されている。

《資料5:FD委員会の活動》

(1) 問題の探索:平成 15年度以来、研究指導を除く全科目の授業評価アンケートを実施している。

(2) 改善策の立案と実施:新たな教育ニーズ、発見された問題に対し、改善策を立案し、教授会を通じ

て実行している。

(3) 教員及びTAの教育能力向上の取り組みを実施している。

①演習、科目等では随時、教員間相互の授業参観を実施している。

②毎年新任教員・研究員に対するオリエンテーションを実施している。

③毎年TAのオリエンテーションを実施している。

《資料6:経営学部・研究科の自己評価・外部評価報告書》

評価報告書名 出版年度

第1回 経営学における COEをめざして 平成4年度

第2回 オープン・アカデミズムへの挑戦 平成6年度

第3回 経営学における戦略研究体制の構築-オープン・アカデミズムのさらなる

展開-

平成8年度

第4回 日本型 MBA 教育の確立を目指して 平成 10年度

第5回 グローバル化時代における経営学の教育研究拠点を目指して 平成 12年度

第6回 オープン・アカデミズムの新時代 平成 15年度

第7回 経営学グローバル COE の使命 平成 19年度

第8回 アカデミック・フロンティアの実践的探求 平成 22年度

第9回 学理と実際の融合と新たな展開 平成 25年度

《資料7:アドバイザリー・ボード》

平成 26年度アドバイザリー・ボードメンバー

氏名 所属 役職

井原理代 香川大学 名誉教授

尾崎 裕 大阪ガス株式会社 代表取締役社長

小瀬 昉 ハウス食品グループ本社株式会社 取締役相談役

北 幸二 株式会社関西アーバン銀行 頭取

鈴木基史 鈴木公認会計士事務所 公認会計士

高﨑正弘 株式会社三井住友銀行 名誉顧問

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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冨山和彦 株式会社経営共創基盤 代表取締役 CEO

宮下國生 関西外国語大学 教授

宮本又郎 大阪大学 名誉教授

室崎益輝 ひょうご震災記念 21 世紀研究機構 副理事長

平成 26年度アドバイザリー・ボード議題

・神戸大学の現状と経営学研究科の課題について

・科学技術イノベーション研究科について

・SESAMI/GMAPsについて

・MBAプロモーション活動について

《資料8:神戸大学 MBA25周年記念出版事業》

目次

第Ⅰ部 日本型 MBAプログラム

第 1章 日本型 MBA教育と「神戸方式」[黄 磷]

第 2章 神戸大学 MBAの設計思想[小川 進]

第 3章 「働きながら学ぶ」意義と効用[加護野忠男]

第 4章 MBAで考えることを学ぶ[高嶋克義]

第 5章 経営トップを輩出するための MBAプログラム

[三品和広]

第 6章 大学における経営のグローバル人材養成

[松尾博文]

第Ⅱ部 MBAプログラムで学ぶ最先端の経営学

第 7章 戦略コントロールとバランスト・スコアカード

[梶原武久]

第 8章 人材マネジメント型企業変革リーダー[平野光俊]

第 9章 コミットメント経営[鈴木竜太]

第 10章 「社会の枠組み」のなかでのイノベーション[松嶋 登]

第 11章 サービス・イノベーション[伊藤宗彦]

第 12章 グローバル市場で成功するための六つの視点[黄 磷]

第 13章 ステイクホルダー理論をめぐる諸論点[堀口真司]

第 14章 国際会計基準適用会社の事例分析[音川和久]

第 15章 航空産業分析─日本の新規航空会社の競争パターンと参入効果[村上英樹]

第 16章 公的・非営利組織のマネジメント・コントロールシステム[松尾貴巳]

第Ⅲ部 MBAでの学習の社会への還元

第 17章 神戸大学 MBAの実際[黄 磷]

第 18章 神戸大学 MBAの原点[田村正紀]

Column 神戸大学経営学部のルーツ[加護野忠男]

第 19章 MBAで論文をいかに書くか[國部克彦]

第 20章 経営と MBA─戻る原点と進化

[株式会社フェリシモ代表取締役社長 矢崎和彦×インタビュアー 南知惠子]

第 21章 プロフェッショナルの仕事術[神戸大学 MBA卒業生]

第 22章 ケースプロジェクトを振り返って[神戸大学 MBA在学生]

第 23章 テーマプロジェクトを振り返って[神戸大学 MBA在学生]

第 24章 修了生のネットワークの重要性[MBA Cafe(神戸大学 MBA同窓会組組織理事)]

第 25章 現代経営学研究所(RIAM)について[三矢 裕]

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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《資料9:ポスター・セッション参加者へのアンケート結果(抜粋)》

自身の業務やキャリアに有用な知見を得ることが出来た。

平成 27(2015)年度神戸大学 MBA修士論文報告会アンケート

(水準)

期待される水準を上回る。

(判断理由)

基本組織の構成については、社会動向を勘案した上で専門性に応じた適切な教育を実施

するため適宜見直しの必要性を検討し、適切な体制となっている。また、教員組織について

も、教育目的を達成する上で質的、量的に十分な教員が確保され、適切な配置がなされてい

る。内部質保証システムも整備・機能しており、専門職大学院認証評価でも高評価を得てい

る。外部の意見を取り入れる仕組みも常時見直し新たな活動を展開している。

以上のことから、本 MBA プログラムの教育の実施体制は期待される水準を上回ると判断

する。

観点 教育内容・方法

(観点に係る状況)

本 MBAプログラムでは、ディプロマ・ポリシー(http://www.kobe-u.ac.jp/campuslife/

edu/policy/diploma-policy/grad-bus.html)に掲げる人材を育成するため、「プロジェクト

方式」を軸とした独自の教育プログラムを実践することにより、体系的な教育課程を編成し

ている(カリキュラム・ポリシー:http://www.kobe-u.ac.jp/documents/campuslife/edu/

policy/g06_cp.bu_2014.pdf)。授業科目の概要は、《資料 10》のとおりである。

本 MBAプログラムの特徴であるプロジェクト方式は、ケースプロジェクト研究、テーマプ

ロジェクト研究、現代経営学演習からなる。これらは各人が仕事で直面している課題を持ち

より、よく似た課題に直面している人々と共同して深く調査・分析し、解決策を探る教育内

容となっており、「働きながら学ぶ」ことが活かされている。これらのプロジェクト研究と

並行して、それぞれの講義科目が提供される。講義科目は、経営学の職能ごとの基礎と方法

論の修得を目的として開講される。「統計解析」、「財務会計」、「サーベイリサーチ」といっ

た基礎的科目から始まり、その後、応用科目にあたる「ファイナンス」、「経営戦略」、「マネ

ジメントコントロール」、「マーケティング」といった科目が開講され、基礎から応用への理

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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解を無理なく進められるよう編成されている。

《資料 10:MBAプログラムの授業科目の概要》

目的 科目名

プロジェクト

方式

ケースプロジェクト研究は1年次前期に

開講され、特定の企業を対象にグループ

でケース研究をする。テーマプロジェク

ト研究は、1年次後期に開講され、特定

の経営課題について研究を深める。現代

経営学演習は1年次後期・2年次前期の

1年間に及ぶゼミ指導で、専門職学位論

文(修士論文)を完成させる。(すべて必

修)

ケースプロジェクト研究(2単位)

テーマプロジェクト研究(2単位)

現代経営学演習(8単位)

講義科目 経営学の諸分野の体系的な知識を教授す

る。プロジェクト方式が機能横断的課題

を扱うのに対し、講義科目は、ひとつひ

とつの専門分野ごとに注意深くデザイン

されており、教授法もレクチャー、ケー

ス・ディスカッション、グループ・ディ

スカッション、ロールプレー、シミュレ

ーション等を組み合わせている。レクチ

ャーそのものもできる限りインタラクテ

ィブになるようにしている。(選択必修科

目 各2単位(ただし、現代経営学応用

研究は1単位) 11科目 22単位以上)

ビジネスエコノミクス応用研究 マーケティング応用研究 財務会計応用研究 会計制度応用研究 ファイナンス応用研究 国際経営応用研究 ゼネラルマネジメント応用研究 経営戦略応用研究 組織行動応用研究 マネジメントコントロール応用研究 人材マネジメント応用研究 テクノロジーマネジメント応用研究 オペレーションズマネジメント応用研究 ベンチャー起業応用研究 ベンチャーファイナンス応用研究 統計解析応用研究 サーベイリサーチ法応用研究 現代経営学応用研究 日英産業事情応用研究 事業創発マネジメント応用研究 M&A戦略応用研究

本研究科では、学生の多様なニーズ、社会からの要請等に対応した教育課程の編成に配慮

した取組を、以下のとおり実施している。

土曜日・平日夜間開講(梅田インテリジェントラボラトリの開設):本 MBAプログラムは、

働きながら学ぶ MBAプログラムとして、仕事を持つ社会人を対象としていることから、学生

の便宜を図るため、授業は、土曜日集中開講と平日夜間開講を併用し、平日夜間の授業に当

たっては大阪の中心部に開設した「梅田インテリジェントラボラトリ」を活用している《資

料 11》。

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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《資料 11:梅田インテリジェントラボラトリ》

クランフィールド大学との短期交換研修制度:海外の MBA 学生とグローバルな視点で議

論を行いたいという学生からの要請については、英国のクランフィールド大学への短期交

換研修制度を整備した。この研修は「日英産業事情応用研究」として単位認定もされるもの

で、毎年6月にクランフィールド大学の MBA 生が訪日し、神戸大学 MBA 生と共に神戸大学

で講義の受講、日本企業の訪問、日本文化体験等を行い、翌年2月に神戸大学 MBA生が訪英

し、クランフィールド大学で講義の受講、英国企業の訪問、英国文化体験等を行うものであ

る。これまで参加者から高い評価を得ている。(Ⅲ「質の向上度の分析」14-15頁、事例②参

照)

SESAMI 科目の提供:上記クランフィールド大学との交換研修制度は、有用性、関係者の

評価ともに高いものであるが、学生が有職者であることから、希望はあっても参加が難しい

学生も少なくなかった。そこで、本研究科の博士課程において平成 25年度から開始した戦

略的共創経営イニシアティブ(SESAMI)プログラム《資料 12》の科目のうちの「Loyalty

Marketing」を MBA学生も履修できるように土日集中形式で開講した。参加学生の意見を基

に、今後、提供科目の増加や内容について検討を進めることとしている。

《資料 12:SESAMIプログラム概要》

SESAMI プログラムは、過去 20 年間の日本企業の国際的競争力と活性の低下を背景に、戦略的企業連携

等の「創造」と他企業や環境、地域社会との「共生」の分野を融合した研究教育領域を定義し、新規事

業の創造と共生を推進する能力を兼ね備えた戦略的経営の研究者と産業人をグローバルな観点から養

成することを目的としたもので、すべての講義、演習を英語で行うこととしている。

教育方法

授業形態は、経営学の基礎と方法論の修得を目的とした各種専門講義に加え、企業の調

査・分析のグループ学習、専門職学位論文(修士論文)の作成をバランスよく取り入れてい

る。1年次前期のケースプロジェクト研究では、5~6名のグループ単位のフィールド調査

研究を実施し、1年次後期のテーマプロジェクト研究では、10数名のグループ単位に分け、

それぞれ担当教員が研究指導を行うとともに、TAがそれをサポートしている《資料 13》。さ

らに、1年次後期から2年次前期の現代経営学演習では、担当教員が、専門的な助言を得ら

れる学内外の他の教員の参画を適宜得ながら、専門職学位論文指導を行うとともに、TA が

これらをサポートしている。学位論文は学生の個人研究がベースとなり、修学が個別化しが

ちなことから、学生の研究の進捗を公開の場で5~10 名の教員が参加して討議する、中間

報告会の場を設けている。また、記述のとおり、平成 27年度より最終発表会のスタイル変

更を行った。一方、講義においては、経営理論の解説、ケース討議、グループによるレポー

トと発表、ゲストスピーカーとの討議と交流を取り混ぜて、教育効果の増大を図っている。

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅰ

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また、本 MBAプログラムでは、授業テーマと目標、授業計画、成績評価基準等の要点を記

載したシラバスと、詳細な授業計画と学生の授業時間ごとの準備事項を含む詳細シラバス

を作成している。これらの資料は、冊子体だけでなくホームページを通じても公開している。

(http://mba.kobe-u.ac.jp/old_site/life/syllabus/index.htm)

《資料 13:MBAプログラム科目の TA・LF採用数》

年度 H22年度 H23年度 H24年度 H25年度 H26年度 H27年度

TA数 31 33 35 31 33 36

LF数 - 7 6 6 9 11

※LF(Learning Facilitator)は上級 TAで、補講などを行える資格を有している。

また、平成 20 年度からは、本研究科名誉教授の名を冠した「加護野忠男論文賞」を創設

し、優れた論文を顕彰することとした。本賞の授賞式には、次年度の入学生も参加できる仕

組みにしており、進入学生の学修意欲向上と質の高い論文に対する理解向上という役割を

果たしている《資料 14》。

履修指導については、本研究科入学時のオリエンテーションにおいて、MBA教務委員から

『学生便覧』にある履修手続き等の諸規則について、担当教員からはプロジェクト研究、専

門講義科目、演習の目的と運用方法、学習について、及び MBA生としての心構えについての

詳細な説明を行い、また、先輩からのアドバイス等も併せて実施している。その他、授業時

間外に自学自習を支援する体制として、自習室を設けるとともに、最新の経営問題について

のベストプラクティスと研究及び本 MBA プログラムの最新の動きを紹介する目的で、電子

メール・マガジン『Eureka』の配信、ワークショップ及びシンポジウムの開催、及び季刊誌

『ビジネス・インサイト』の公刊を行っている。

図書館は、社会科学系分野の大学図書館としてわが国で最高水準の蔵書数(和書約 64万

冊、洋書約 71万冊)を誇る社会科学系図書館と、人文・社会科学系の外国雑誌を蒐集する

外国雑誌センターがある。社会科学系図書館は、祝日を除く毎日開館体制である。また、188

台のパソコンを備えた情報処理教室を整備して、自学自習の支援体制を整えている。

《資料 14:加護野忠男論文賞 受賞論文》

年度 論文名

平成 25年度 金賞 環境配慮型製品の開発プロセスに関する研究-国内自動車産業の事例に基づいて-

銀賞 戦略の策定と実行における齟齬 -企業改革の事例に基づいて-

銅賞 医薬品の探索研究段階におけるプロジェクトマネジャーの役割に関する研究

平成 26年度 金賞 日本のバイオベンチャー企業は、創薬・新規治療開発の担い手となりうるか:

成功に必要な条件と経営者プロファイルに関する研究

銀賞 営業職のリーダーシップ持論の世代間継承に関する一考察-不動産企業 A社に

おける事例分析を通じて-

銅賞 新規事業におけるリアル・オプションの活用方法の提案-投資の事後評価と戦略

策定における簡易的利用についてある IT企業の導入事例に基づいて-

平成 27年度 金賞 新興国ボリュームゾーン市場参入に向けた品質基準見直し時に直面する文化的

コンフリクトへの対応に関する事例研究

銀賞 シェアードサービスの功罪と導入メカニズムの究明-知財シェアードサービス

事例に基づく考察-

銅賞 リアル・オプション法による早期開発段階の医薬品事業価値評価―売上高営業

利益率の改善-

(水準)

期待される水準を上回る。

(判断理由)

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅱ

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プロジェクト方式は、現在、神戸方式とも呼ばれる教育方法の中核をなすもので、平成元

年以来の試行錯誤の上に整備されてきた。これに、講義による経営理論の体系的な学習、学

生の主体的な学習をコーチする形で行われるグループによるフィールドリサーチ、専門職

学位論文の作成、英国の大学との短期交換研修制度、SESAMI 科目の提供等、社会のニーズ

を踏まえつつバランスよく組み合わせている。さらに、詳細な履修指導に加えて、加護野忠

男論文賞を創設するなど、学生の自習への取り組みを促す体制も整備している。以上のこと

から、本 MBA プログラムの教育内容・方法は、期待される水準を上回ると判断する。

分析項目Ⅱ 教育成果の状況

観点 学業の成果

(観点に係る状況)

過去6年平均の標準修業年限修了率は 97.3%、標準修業年限×1.5 年以内の修了率は

98.8%《資料 15》。また、学位授与状況、留年率、休学率、退学率については《資料 16》の

とおりである。

平成 27 年度には 72 名の修了者を送り出したが、その全員が、経営学理論に基づく仮説

を定量的に検証するか、あるいはインタビュー等により新規性の高い経営動向を定性的に

模索する方法を用いることによって、専門職学位論文を完成させている《別添資料2:平成

27年9月の修了者の専門職学位論文テーマ》。同学位論文のうち優秀な論文については既述

のとおり加護野忠男論文賞として表彰を行っている。(Ⅲ「質の向上度の分析」14-17 頁、

事例③参照)

《資料 15:標準修業年限内及び標準修業年限×1.5年内の卒業率》

入学年度

(標準年限)

入学

者数

卒業者 修了率

標準修業

年限内

標準修業年限超過 標準修業

年限×1.5

年内

標準修業

年限内

標準修業

年限×1.5

年内 1年 1年超

H21(H22) 71 66 2 0 68 93% 96%

H22(H23) 72 71 1 0 72 99% 100%

H23(H24) 69 67 1 0 68 97% 99%

H24(H25) 73 70 2 0 72 96% 99%

H25(H26) 72 71 0 71 99% 99%

H26(H27) 72 72 72 100% 100%

平均 97.3% 98.8%

《資料 16:学位授与状況、留年率、休学率、退学率》

入学年度

(標準年限)

入学者数 学位授与数

(%)

留年者数

(%)

休学者数

(%)

退学者数 ※

(%)

H21(H22) 71 68(95.8) 0(0.0) 0(0.0) 3(4.2)

H22(H23) 72 72(100.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)

H23(H24) 69 68(98.6) 0(0.0) 0(0.0) 1(1.4)

H24(H25) 73 72(98.6) 0(0.0) 0(0.0) 1(1.4)

H25(H26) 72 71(98.6) 0(0.0) 0(0.0) 1(1.4)

H26(H27) 72 72(100.0) 0(0.0) 0(0.0) 0(0.0)

H27(H28) 72 - - 1(1.4) 0

※除籍となった者を含む

平成 27年度前期の「授業評価アンケート」結果では、「授業の内容はよく理解できたか」

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅱ

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という質問項目について、回答者の 66.6%が、「そう思う。」または「どちらかといえばそ

う思う」と回答している。また、「授業を受けて興味・関心が増したか」という質問項目に

ついては 71.4%が肯定的な回答となっていた《資料 17》。授業の理解度について一見すると

低い値のように見えるが、経営学の基礎を持たない、バックグラウンドも全く異なる社会人

学生に高度な経営の内容を教授する関係上、ある程度やむを得ないことだと考えられる。こ

のことは学生側もよく理解しており、興味・関心度が増していることから十分理解できない

ことが否定的な意味とはなっていない。

《資料 17:平成 26年度後期授業評価アンケート結果(抜粋)》

授業は理解できたか 興味・関心が増したか

(水準)

期待される水準にある。

(判断理由)

標準修業年限内修了率及び標準修業年限×1.5年以内修了率の状況、学位授与状況、留年

率、休学率、退学率から判断して、教育目的に沿った効果が着実にあがっている。在学生に

対するアンケート調査でも教育に対する満足度は良好であり、学業の成果は期待される水

準にあると判断する。

観点 進路・就職の状況

(観点に係る状況)

本 MBAプログラムは、職を有していることを入学の前提としており、就職という表現は馴

染まないため、修了時における勤務先の産業別分布として示す《資料 18》。多くの学生は入

学以前から在職している企業に継続勤務している。神戸大学 MBA 人材育成構想委員会にお

いて本 MBA プログラムの修了生でもある委員は、「当時の同期は 10 年経っても8割以上が

同じ企業に勤めている」と発言しており、これは企業における中核的な人材の養成という本

MBA プログラムの目的と一致する。

《資料 18:平成 26年度修了生の勤務先の産業別分布》

産業 人数

製造業 38人

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運輸・交通・電力・ガス 7人

情報通信業 3人

卸売・小売業 3人

金融・保険業 3人

不動産業 2人

専門サービス業 3人

教育 1人

医療・福祉業 4人

その他サービス業 3人

官公庁 2人

その他 3人

(学校基本調査:進路状況調査に基づき作成)

また、企業のトップマネジメントを含む実務経験者からなる本研究科アドバイザリー・ボ

ード委員会の委員から、「実務経験をしっかり経た後で、(経営学を)鍛えなおすことの意義

は大きい」という評価を受けている。平成 27年度に修了した学生へのアンケートでは《資

料 19》に示すとおり、高い評価を得た。

さらに、企業からの評価を確認するために、神戸大学 MBA人材育成構想委員会の構成員と

なっている企業へアンケート調査を行い、《資料 20》に示す結果を得た。「幅広い知識」、「協

調性」、「総合的な学力」に対する評価が高く、「ビジネス社会の中核人材」の育成という教

育目的に適った結果となっている。

《資料 19:修了生へのアンケート》

今後の仕事、キャリア形成についてどのようなことが期待できるか。

平均値 標準偏差

自分の今の仕事の質や生産性を高めることが期待できる。 4.13 0.78

自分のやりたかった仕事をすることが期待できる(行きたかった部

門に異動できる等)。

3.25 1.19

昇任・昇格が早まることが期待できる。 2.57 1.20

昇給が期待できる。 2.21 1.13

転職する際の評価が高まることが期待できる。 3.39 1.07

全体的に判断して、神戸大学の MBAプログラムに満足している。 4.30 0.80

※アンケート項目に対して、次のスケールで答えを得た。(1:そう思わない、2:どちらかといえばそう思

わない、3:どちらともいえない、4:どちらかといえばそう思う、5:そう思う)

《資料 20:修了生に対する企業からの評価》

大いに期待する 期待する 期待しない

幅広い知識 61.5% 38.5% 0.0%

専門的な知識 23.1% 76.9% 0.0%

総合的な学力 53.8% 46.2% 0.0%

論理的思考力 61.5% 38.5% 0.0%

国際性(語学力を含む) 61.5% 30.8% 7.7%

リーダーシップ 66.7% 33.3% 0.0%

協調性 25.0% 75.0% 0.0%

実践的な問題発見・解決能力 53.8% 46.2% 0.0%

創造性 38.5% 61.5% 0.0%

潜在能力 46.2% 53.8% 0.0%

優れている 普通 劣っている

幅広い知識 50.0% 50.0% 0.0%

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神戸大学経営学研究科現代経営学専攻 分析項目Ⅱ

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専門的な知識 8.3% 91.7% 0.0%

総合的な学力 58.3% 41.7% 0.0%

論理的思考力 33.3% 66.7% 0.0%

国際性(語学力を含む) 16.7% 83.3% 0.0%

リーダーシップ 25.0% 75.0% 0.0%

協調性 50.0% 50.0% 0.0%

実践的な問題発見・解決能力 41.7% 58.3% 0.0%

創造性 16.7% 83.3% 0.0%

潜在能力 25.0% 75.0% 0.0%

(水準)

期待される水準にある。

(判断理由)

本 MBAプログラム修了者の進路状況については、継続勤務者が大半を占めることは、企業

における中核的な人材の要請を目的とする本 MBA プログラムとしては期待通りである。ま

た、トップマネジメント層、修了生、企業人事部門からそれぞれ高い評価を得ており、特に

「総合的な学力」について評価が高い。これは我々が「プロジェクト方式」で涵養しようと

意図している実践知が身に付いていることを示している。これらのことから、本研究科の進

路・就職の状況は、期待される水準にあると判断する。

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Ⅲ 「質の向上度」の分析

(1)分析項目Ⅰ 教育活動の状況

事例① MBA プログラムのプロモーション活動

MBA プロモーションタスクフォースでは、先ず志願者が本学に期待していることと本学

が提供しているものに齟齬がないかを確認するべく、志願者に無記名のアンケート調査

を任意で行った《別添資料3:アンケート調査結果まとめ》。調査の結果、受験生の希望

と本 MBA プログラムの提供内容に大きな齟齬は見られなかったが、プログラムの魅力に

ついて十分に伝えられていないことが判明したため、HP の大幅刷新を行った。刷新に当

たっては、同窓会組織である神戸大学 MBA Caféにも意見を求め、外部の意見も取り入れ

た《資料 21》。

また、MBA25 周年を記念して出版した書籍「人生を変える MBA」を積極的に配布して広

報に資するとともに、記念事業として併せて日本経済新聞社大阪本社において「MBA創設

25周年記念シンポジウム」を開催し、152名の参加者を得た《資料 22》。

このほか、同タスクフォースで検討を進める中で、今後の本 MBAプログラムの在り方に

ついて、企業の人材開発部門等の関係者との連携を密にし改善・向上を図っていく方針が

打ち出され、新たに「神戸大学 MBA人材育成構想委員会」を立ち上げ、《別添資料4:参

画企業一覧》に示す企業からの参画を得て平成 27 年 11 月に第1回目の委員会を開催し

た《資料 23》。

《資料 21:神戸大学 MBA HPの刷新》

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《資料 22:MBA創設 25周年記念シンポジウム》

※本シンポジウムは神戸大学主催の3連続シンポジウムのトップバッターとして開催された。

詳細については、http://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/info/2015_07_29_02.html 参照

《資料 23:第1回神戸大学 MBA人材育成構想委員会 議題》

1.神戸大学 MBAプログラムについて

2.SESAMIプログラムと MBAプログラムの接合について

3.企業派遣支援について

4.MBA国際競争力強化支援事業について

事例② クランフィールド大学との短期交換研修制度

既述のとおり、本制度は、クランフィールド大学の MBA学生が来日して共に研修を行う

パートと本学 MBA 学生がクラインフィールド大学を訪問して研修を行うパートに分かれ

ている。当該プログラムは平成 15年度から開始したもので、10年以上に亘って続いてい

る。第2期中期目標期間中に受け入れた学生数は延べ 133名となる。この間、訪問時期を

より効果が見込める時期へ変更する等、ブラッシュアップを図ってきた。相互派遣プログ

ラムであるにもかかわらず、この間、1度も途絶えることなく続いてきたことは、本学 MBA

学生のみならず、クランフィールド大学からも有用性の高いプログラムとして評価され

ていることを示している。実際、参加した学生からは日英双方から高い評価を得ている

《資料 24》。

《資料 24:参加学生の感想》

○私は仕事柄、海外出張もよく行っていましたし、ヨーロッパ企業もそれなりに精通していたつもり

でしたが、クランフィールド大学に選定して頂いた訪問企業先は、自分のフィールドとは全く異なる

バラエティーに富んだ企業群で、見るもの聞くもの全てが新鮮なものでした。例えば、

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・世界最大の保険会社であるマンチェスターユナイテッドのスポンサーとして有名なAONとLloyd’

sでは、‘世界の金融の中心はイギリス’と肌で感じられる光景(日本ではあまり目にする事のな

いエージェントの方々のオープンかつ熱気のある交渉風景や建物等)

・超有名ブランドである Burberry では、表に見える華やかさだけではなく、アパレル業らしから

ぬ ICTの活用

・世界最大級のコンサルティング会社の PWCでは、その歴史とグローバル性

・日系企業として、販売と物流部門を出している Suzukiの現地での悩み 等

他にも魅力的な企業を幾つも訪問し、普段の業務では到底出会う事のない空気に触れる事ができ、自

分の知見を広げるよい機会となりました。また、これらの企業訪問先では、分野と経験の異なる同級

生達が、企業の方々へ問いかける鋭い質問には大いに刺激を受け、それらから新たな気付きも得るこ

ととなりました。同級生と過ごしたこの 1週間は、毎日、忙しくも充実した時間となり、企業訪問、

大学講義そして様々なイベントも全て、私にとって、人生で忘れられない経験となりました。

○講義やプレゼン、企業訪問と、本当に密度の濃い 1 週間でした。プレゼンでは、まず私から

“Introduction of Japanese Culture & Business”という題目で日本の文化・ワークスタイルを紹

介。続いてテーマプロジェクトの研究成果から 4題(”Key to Success in the Expanding Senior

Market”, “Study on Extended Factor of the Mountain Climbing Market”, “Study on Companies

That Have Soared Female Managers Ratio”, “Transformation of a Business Domain as Going

Concern”)を選定しそれぞれ発表しました。質疑応答では内容もさることながら背景にある考え方や

価値観などにも議論が及び、予定の時間を超過するほど盛り上がりました。プレゼン終了後はクラン

フィールドの学生たちが大学敷地内の Social Pub で心温まる歓迎会をしてくれました。彼らはイン

ド、タイ、インドネシア、ロシア、ナイジェリア、コロンビア、チリなど、世界各国から集まる非常

にダイバーシティに富む集団で、学習動機も多種多様。旨いビールを飲みながら、互いの趣味や将来

の夢の話などに花が咲き、楽しい Nomunication は深夜にまで及びました。特に私の印象に残ってい

るのは各国の社会問題をリアルに聞けたこと。ビジネストレンドやライフスタイルの理解がより一層

深まりました。このほか、神戸大学側から習字対決や日本舞踊、AKB48 ショー(ヲタ付き)を企画、

披露。日本文化を体感していただき大変盛り上がりました。

神戸大学 MBA プログラムの学生募集要項に、求める学生像として、「国際社会に通用する思考力、

判断力、コミュニケーション能力を高めていこうとする熱意を持つ者」とあります。RST はそれを実

現するための大変有効なプログラムだと言えます。インフラ系企業で社内調整業務がメインの私です

が、RST を通じて日常到底経験できない価値観・事業観・世界観に触れ、人間として大いに成長でき

たと実感しています。私と同じドメスティックな企業に勤務している方にも是非 RSTの扉を叩いてい

ただき、自分磨きの旅に出かけほしいと思います。

○The Cranfield School of Management International Business Assignment, study trip to Japan,

is Cranfield’s people management flagship programme, the school of management tradition,

which was established over the past few years to enrich the MBA student’s learning

experience. After each visit, participants are required to objectively review their

experience on the trip, and this review informs the feedback passed on to the next cohort.

It is the general consensus that the visit was excellent, and the hospitality of our host

and the companies visited was exceptional, all of which was made possible by the hard work

and dedication of Prof Nakai Sensei and his students.

The level of attention to detail was obvious from the moment we stepped off the plane in

Osaka, throughout the time spent participating in various events, to our departure from

Narita airport. The trip was exceptionally planned, our host put in a lot of effort to

ensure we were not only comfortable, but that we made the most of the experience culturally,

academically and socially. If anything could be compared to the Japanese Bullet Train, this

study tour is it: precise, smooth and memorable.

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(2)分析項目Ⅱ 教育成果の状況

事例③ 加護野忠男論文賞の創設

平成 20 年度より、本研究科名誉教授の名を冠した「加護野忠男論文賞」を創設し、優

れた論文を顕彰することとした。本賞の創設により修士論文に学生が意欲をもって取り

組むよう後押しするともに、授賞式に次年度の入学生も参加できる仕組みにすることで、

入学後自分たちがどのようなレベルに到達しなければならないか、また、どういう論文が

高い評価を受けるのかを学ぶ機会にもなっており、修了生の質の高さの維持に寄与して

いる《資料 25》。 《資料 25:平成 26年度加護野忠男論文賞 授賞式(講評)》

今回の修士論文の発表を聞かせていただいた 3 人の

方々は、お世辞ではなく本当に素晴らしい論文を書い

ていただきました。この 3 作品でしたらどこに出して

も恥ずかしくありません。日本の経営学分野でアカデ

ミックな修士論文を書いている多くの人々の誰にも負

けない素晴らしい論文だと私は思っております。MB

Aでないと書けない質の高い論文です。本日は三本の

論文にあえて金銀銅という順序をつけるというのが

我々の仕事でございますので、その結果を発表させて

いただきます。その前に一言言っておきたいと思いま

す。私の個人的な意見としましては、どの論文が金賞

になっても不思議ではないほど、ほとんど優劣の差が

ありません。それぞれ違う分野の論文でございますか

らそれぞれの分野でこれがベストだろうと第一次選考

で選ばれた論文でございますので、あまり順序は気に

しないでいただきたいということを受賞者の皆さんに

は申し上げておきたいと思います。 まず、金賞は麻生さんの日本バイオ・ベンチャーにつ

いての修士論文でございます。アメリカでは創薬、新

しい薬を作る活動、のかなりの部分がバイオ・ベンチ

ャー企業によって行われています。日本ではまだその

比率が極めて少ない。なぜ日本では少ないのか。日本

でのバイオ・ベンチャーの現実はどうか、日本でバイオ・ベンチャーをもっと活性化するために何が必

要なのかということを、日本のバイオ・ベンチャーの統計的な研究並びにバイオ・ベンチャーにかかわ

る人々のインタビューをもとにしながら論じた素晴らしい論文です。新入生の人々も機会があればじっ

くり読んでいただいたら非常にいい勉強になると思います。私はこの論文は修士論文としてほうってお

くのは非常にもったいないとおもいます。すぐに本にしてほしいと思うのですが、忙しいからそんなこ

とをやっている暇がないと思います。暇がなければ私がお手伝いします。世のためにも本にしていただ

きたいと思います。 (中略)

今日授賞されるこの 3 つの修士論文はすぐに本になるような研究です。売れるか売れないかは分かりま

せんが、私の説によるといい本ほど売れない。その証拠に私の書いた本はほとんど売れません。この 3つの論文は本当にしっかりした人でないと分からないような高度な議論をしておられますので、是非新

入生の皆さんも機会があったら 3 つの論文をじっくりと読んでいただきたいと思います。このレベルの

ものを書こうと是非頑張っていただきたいと思います。 (参考:http://mba.kobe-u.ac.jp/?c=about&p=kagono_award)