18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpcctv による監視 全 体 常 時...

6
国道18妙高大橋の維持管理について 吉越 政浩 1 ・谷口 雄一 2 ・板谷 優也 2 ・岩井 雅紀 2 1 高田河川国道事務所 副所長 (9430847 新潟県上越市南新町356) 2 高田河川国道事務所 道路管理第二課 (9430847 新潟県上越市南新町356) 国道18号妙高大橋は,2009年にPCケーブル破断が確認され,現在架替え事業を進めている. 架替えが完了するまでの間,現橋を安全に供用するため,定期調査・計測等を行い必要に応じ て保全対策を実施するとともに,緊急時の対応方針等をまとめた維持管理マニュアルを作成し て日常管理を行っているところである.損傷の発見から5年以上が経過したため,これまでのモ ニタリング状況やPCケーブル追跡調査,載荷試験等について,中間報告を行う. キーワード 維持管理,モニタリング,追跡調査,PCケーブル調査,載荷試験,PC連続箱桁 1. はじめに 国道 18 号妙高大橋は新潟県妙高市に位置し,大田切 川に架かる橋長 300m 4 径間連続 PC 箱桁橋である( 真-1 図-1 ) .本橋は 1972 年に,当時の最新技術である プレキャストセグメントカンチレバー工法によって架設 され,約 45 年間に亘り,主要幹線道路として供用され てきたところであるが,2009 年度の補修工事の際に, 1 径間中央で 9 本の PC ケーブル破断が確認され( 写真 -2 ),その後の詳細調査で全ケーブル 504 本中, 22 の破断が確認されたため,抜本対策として架け替えを計 画しているところである.破断の要因は,橋面等からの 漏水がシース内に侵入し,PC 鋼材が腐食したためと考 えられる.架替えまでの間,現橋を安全に供用するため, 外ケーブル補強等の緊急対策の他,定期的なモニタリン グ監視や載荷試験による安全性の確認,維持管理マニュ アルに基づく日常管理を行っているところである. 本稿では,これまでに得られたモニタリング計測や試 験の結果等について報告する. 図-2 断面図 写真-2 第 1 径間の破断状況 図-1 全体一般図 写真-1 妙高大橋

Upload: others

Post on 28-Mar-2021

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

国道18号 妙高大橋の維持管理について

吉越 政浩1・谷口 雄一2・板谷 優也2・岩井 雅紀2

1高田河川国道事務所 副所長 (〒943-0847 新潟県上越市南新町3番56号)

2高田河川国道事務所 道路管理第二課 (〒943-0847 新潟県上越市南新町3番56号)

国道18号妙高大橋は,2009年にPCケーブル破断が確認され,現在架替え事業を進めている.

架替えが完了するまでの間,現橋を安全に供用するため,定期調査・計測等を行い必要に応じ

て保全対策を実施するとともに,緊急時の対応方針等をまとめた維持管理マニュアルを作成し

て日常管理を行っているところである.損傷の発見から5年以上が経過したため,これまでのモ

ニタリング状況やPCケーブル追跡調査,載荷試験等について,中間報告を行う.

キーワード 維持管理,モニタリング,追跡調査,PCケーブル調査,載荷試験,PC連続箱桁

1. はじめに

国道 18 号妙高大橋は新潟県妙高市に位置し,大田切

川に架かる橋長 300mの 4径間連続 PC箱桁橋である(写

真-1,図-1).本橋は 1972 年に,当時の最新技術である

プレキャストセグメントカンチレバー工法によって架設

され,約 45 年間に亘り,主要幹線道路として供用され

てきたところであるが,2009 年度の補修工事の際に,

第 1径間中央で 9本の PCケーブル破断が確認され(写真

-2),その後の詳細調査で全ケーブル 504本中, 計 22本

の破断が確認されたため,抜本対策として架け替えを計

画しているところである.破断の要因は,橋面等からの

漏水がシース内に侵入し,PC 鋼材が腐食したためと考

えられる.架替えまでの間,現橋を安全に供用するため,

外ケーブル補強等の緊急対策の他,定期的なモニタリン

グ監視や載荷試験による安全性の確認,維持管理マニュ

アルに基づく日常管理を行っているところである.

本稿では,これまでに得られたモニタリング計測や試

験の結果等について報告する.

図-2 断面図

写真-2 第 1径間の破断状況

図-1 全体一般図

写真-1 妙高大橋

Page 2: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

2. 維持管理計画概要

PC ケーブル破断発見後「妙高大橋保全対策検討委員

会」を設置し,今後の方針が検討された.この結果,①

抜本的対策は架替えとすること,②載荷試験で当面の安

全が確認されたことから,対策を講じた上で,架替えま

での間の管理を強化すること,③損傷原因を除去し,補

修と外ケーブル補強を実施すること,④モニタリングと

追跡調査を継続し,破断進行等の異常時の把握と,結果

を交通規制実施に連動すること,等が示された.

これらを受けて管理面では「妙高大橋維持管理マニュ

アル」を作成し,これに準じて管理にあたっている.本

マニュアルは,本橋固有の構造の特徴や損傷状況,モニ

タリング内容や計測値取得方法,詳細点検調査項目と頻

度,異常発生時の管理基準と各段階での対応方法等を定

めており,内容や調査試験の頻度等については,適時修

正しながら運用している.表-1に点検調査実施予定を,

表-2に現在実施している対策を示す.

3. 監視計測状況

計測監視項目のうち自動モニタリングは,破断による

変形の進行に着目し,表-3 に示す項目を監視している.

図-3 に自動モニタリングの位置を示す.管理基準値を

越えた場合は,管理者等の携帯電話に警報メールが自動

配信されるシステムとなっている.

回転灯による監視は,第 1径間の仮受けステージング

を不動点とした接触式センサーを設置し,たわみが増加

し接触した際に橋上に設置した回転灯が点灯し,CCTV

等で確認するものである.

図-4に2015年度のモニタリング計測値の年間推移図と,

図-5にこれまでの計測結果の最大・最小値の変化量を対

比して示す.

これまでの計測結果から,以下のことが確認できた.

a)気温の変化に合せてプレキャスト部材間の目地変位と

たわみは推移しており,温度により桁は変形している.

b)これまでの変化量はほぼ同等であり,現時点では異常

値は計測されていない.

c)たわみは夏期には上反りし,冬期にはたわんでいる.

また,目地変位は支間部(下側)と支点付近(上側)ともに

夏期には縮み,冬期には伸びている.

d)支点付近の目地変位量は支間部と比べ,概ね 2 倍程度

の大きさになっている.これは橋脚柱高や箱桁上下面の

温度変化等が影響していると考えられる.

e)補強用外ケーブルは損傷進行時の代替え引張材として

小さい張力を導入し設置しているが,張力に変化は見ら

れない.なお補強外ケーブルは破断断面積相当分を配置

し,異常時に再緊張可能な構造としている.

以上のモニタリング計測結果を踏まえると,計測開始

からの著しい劣化進行は生じていないと考えられる.

表-3 自動モニタリングシステム概要 計測装置 設置位置 箇所数 計測目的 開始時期

亀裂変位計 第1径間 12 セグメント

目地変位量

2010. 3

P1支点上付近 4 2011. 11

水管式沈下計 第1径間7,9BI 2 たわみ量 2010. 8

補強ケーブル

張力 P2支点上 2

ケーブル

張力変化 2011. 11

温度計 桁外・桁内(A1) 2 温度測定 2010. 3

湿度計 桁内(第1径間) 1 湿度測定 2011. 11

点検調査 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020~

PCケーブル

追跡調査 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

架替え完了まで継続 載荷試験 ○ ○ ○ ○ ○ ○

橋梁定期点検 ○ ○

第3者被害点検 ○ ○ ○

モニタリング ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

対策項目 位 置 実施間隔

計測・監視

CCTVによる監視 全 体 常 時

自動計測モニタリング監視 第 1径間と P1支点上

10分間隔

接触回転灯装置による監視 第 1径間 常 時

日常パトロール 全 体 ―

点検・

調査

PCケーブル詳細追跡調査 全 体 1~2年毎

載荷試験 第 1,4径間 1~2年毎

橋梁定期点検 全 体 5年毎

第 3者被害点検 第 1,4径間 3年毎

地震時異常点検(震度 3以上) 全 体 地震発生時

負荷軽減等

補強外ケーブル設置 全 体 (済)

第 1径間ステージング設置 第 1径間 (済)

特殊車両の通行規制強化 全 体 常 時

除雪の徹底 全 体 冬 期

図-3 モニタリング位置

表-2 対策一覧表

表-1 点検調査実施予定表

Page 3: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

-10

0

10

20

30

40

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

温度

(℃)

桁内温度

桁外温度

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

変位

(mm

)

伸び

縮み

変位計9-10-L

変位計10-11-L

変位計8-9-L

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

変位

(mm

)

伸び

縮み

変位計10-11-R変位計9-10-R

変位計8-9-R

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

変位

(mm

)

伸び

縮み変位計23-24-C

変位計24-25-C

変位計19-20-C変位計20-21-C

-10

-5

0

5

10

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

変位

(mm

) 沈下計2

沈下計1

100

150

200

250

300

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

荷重

(kN

)

ロードセルR

ロードセルL

2030405060708090

100110

4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日 11月1日 12月1日 1月1日 2月1日 3月1日

湿度

(%)

桁内湿度

孔内湿度2孔内湿度1

上昇

下降

図-4 2015年度モニタリング状況(2015年 4月 1日~2016年 3月 31日)

図-5 モニタリング値の最大最小値のその推移

■温度

■目地変位(上流側)

■目地変位(下流側)

■目地変位(床版下面)

■沈下量

■補強外ケーブル荷重

■湿度

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

6-7-R 7-8-R 8-9-R 9-10-R 10-11-R

変位

(mm

)

■ブロック目地変位(2) 第1径間右側ウェブ

最大最小値の差 最大値 最小値

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

19-20-C 20-21-C 23-24-C 24-25-C

変位

(mm

)

■ブロック目地変位(3) P1支点上床版下面

最大最小値の差 最大値 最小値

-10.0

-5.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

7Bl 9Bl

たわみ

(mm

)

■たわみ(第1径間)

0

50

100

150

200

250

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

P2C1_L P2C1_R

荷重

(kN

)

■補強外ケーブル張力

最大最小値の差

最大値

最小値

-0.60

-0.40

-0.20

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.002

01

22

01

32

01

42

01

5

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

6-7-L 7-8-L 8-9-L 9-10-L 10-11-L

変位

(mm

)

■ブロック目地変位(1) 第1径間左側ウェブ

最大最小値の差 最大値 最小値

Page 4: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

4. PCケーブル詳細調査

2009 年度および 2010 年度の調査で,全 PC ケーブル

504本のうち調査可能な 215本,約 1200箇所の削孔内視

鏡調査を実施し,グラウト未充填が過半数以上あること

を確認した.これに対し,①未充填箇所の PC 鋼材表面

は,凍結防止剤を含む水が既に付着している,②未充填

箇所が不連続である,等の理由から再グラウトによる対

応は断念し,腐食進行状況を確認するために,表-4 の

追跡調査を実施している.

(1) 内視鏡調査

工業用内視鏡カメラを用いて,シース管内部の鋼材状

況を直接観察した.内視鏡調査は,2010年度から 6カ年

継続している.腐食が進行している調査孔 2例を写真-3

に示す.以下にこれまでの調査により得られた結果を列

挙する.

a)図-6 にケーブルの配置と損傷状況を示す.これによ

れば張出しケーブルは,防水層設置等の補修対策を講じ

たにもかかわらず,湿潤状態箇所や腐食進行箇所が存在

する.特に,定着位置で分類した A,B,D ブロックで

の損傷進行が顕著である.これは,歩車道境界付近の床

版上面の土砂化や,車道中心の防水層継目からの浸水が

原因と考えられる.

b)定点観測以外の調査孔で,素線破断の進行を内視鏡追

加調査で確認した.すでに別の箇所で破断確認していた

B ブロック張出しケーブル P1-15L で新たに素線が消失

しており(写真-4),損傷進行が明らかとなった.

c)連続ケーブルへの浸水は治まり,湿潤状態は改善され

ている.桁端部の浸水対策や排水装置補修等の効果によ

るものと考えられる.

表-4 PCケーブル追跡調査概要

調査項目 内容 数量 開始時期

内視鏡調査 内視鏡で PC ケーブルの表

面等を直接目視観察する. 92 2010年度

試験片観察調査

調査孔ゴム栓に設置した

PC 鋼材の腐食進行を観察

する.

8 2012年度

張力測定調査

調査孔を利用して未充填の

PC ケーブルを加振し振動

数の経年変化を測定する.

4 2012年度

20

13

年度

・湿潤状態  腐食小 ・乾燥状態  腐食大・前回調査から変化は見られない ・黒色の発錆が増加

20

15

年度

・湿潤状態  腐食小 ・乾燥状態  腐食大・発錆がごく僅かに増加 ・黒色の発錆が増加

20

11

年度

・湿潤状態  腐食小 ・乾燥状態  腐食小・発錆が若干増加 ・シースの発錆が若干増加

20

12

年度

・湿潤状態  腐食小 ・乾燥状態  腐食小・発錆がごく僅かに増加 ・発錆が若干増加

P1張出し 32L-24BL 起点側 P3張出し 35R-75BL 終点側

20

10

年度

・乾燥状態  腐食小 ・乾燥状態  腐食小

・水滲出箇所近傍 ・漏水箇所近傍/表面錆程度

図-6 ケーブル配置と損傷状況

写真-3 ケーブル内視鏡調査例

写真-4 素線破断したケーブル(P1張出し 15L24BL)

2010年9月 2013年10月

Page 5: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

(2) 振動法によるケーブル測定

2012年度に始めた 4箇所の振動測定を,1年後に実施

し,振動性状の変化の有無を確認した.測定は,内視鏡

調査孔を利用してケーブルに打撃振動を与え,1~2m離

れた別の調査孔で振動を計測した.

図-7に振動測定の結果を示す.これによれば破断進行

を確認したP1-15Lケーブル(写真-4)ほか1箇所では,振

動周波数分布が変化した.一方で,その他の2箇所での

周波数分布は同様になった(図-7).グラウトのないケー

ブルでは,破断進行すると振動性状が変化したことから,

振動性状の観察はモニタリングに応用できる可能性を有

することが明らかになった.

5. 載荷試験

載荷試験は破断発見時からこれまで計6回実施し,安

全性を確認している.載荷試験では,20tダンプ6台を用

いて,計120tを試験荷重とした(写真-5).なお120t載荷は

B活荷重曲げモーメントの約半分に相当する.載荷試験

は,損傷の激しい第1径間と,比較的損傷が軽微な第4径

間についてそれぞれ実施し,コンクリートひずみ・たわ

み等を計測した.

図-8~10に,載荷試験の結果を示す.これらより,以

下のことが明らかになった.

a)図-8によると,第 1径間と第 4径間のたわみは計算値

23mm に対し 17~19mm を推移し異常な増加は見られな

い.第 1径間の方が 1~2mm大きく,損傷影響がわずか

に現れている.

b)第1径間7ブロック下流側の下床版下面(ひずみゲージ番

号7-3)のひずみは年々大きくなり,計算値以上のひずみ

が発生している(図-9,10).2015年度の試験では,7-3位

置を中心に5枚のひずみゲージを密に千鳥配置して計測

した結果,7-3-3のみ大きな値が生じていることが確認で

きた.目視により当該箇所を観察したところ,マイクロ

クラックを確認したため,クラックが生じたことにより,

ひずみが大きくなったと考えられる.このマイクロクラ

ックは,今後も経過を観察していくこととしている.

c)たわみは載荷試験用の変位計とは別に,モニタリング

用の水管式沈下計でたわみの計測を試みたが,計測値の

収束に 15 分以上を要することが判明した.これは水管

式沈下計に使用される不凍液の粘性が高いことによるも

ので,水管式沈下計では交通荷重等の瞬間的な変形計測

には対応できないことが明らかになった.

78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99計測位置(ブロック)

■第4径間 たわみ量 2009

2011

補強前 2011

補強後 2012

2013

2015

計算値

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10111213141516171819202122

たわみ量

(mm

)

計測位置(ブロック)

■第1径間 たわみ量

図-8 たわみの推移

2009 2011

補強前

2011

補強後

2012 2013 2015

■第4径間 たわみの経年変化

90BL 96(97)BL

P1-15L:破断進行を確認したケーブル P1-35L:進行を確認しないケーブル

2012年度

2013年度

 破断により振動性状が変化. 振動性状の変化なし.他の2本も同様.

109Hz

167Hz

307Hz

238Hz

136Hz

414Hz

132Hz

226Hz

50Hz

293Hz

167Hz

108Hz

53Hz 238Hz

308Hz

図-7 振動測定結果(横軸:周波数 N:ノイズ判定)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

2011

補強前

2011

補強後

2012 2013 2015

たわみ量

(mm

)

■第1径間 たわみの経年変化

10BL下流側 10BL上流側

8BL下流側 8BL上流側

計算値

Page 6: 18号 妙高大橋の維持管理について - mlit.go.jpCCTV による監視 全 体 常 時 自動計測モニタリング監視 第1径間と P1支点上 10分間隔 接触回転灯装置による監視

6. 異常発生時の管理体制

モニタリング計測等により異常がみられた場合,速や

かに対応できるよう,役割分担や対応方法を定めた「妙

高大橋維持管理マニュアル」を作成し,対応訓練等によ

り関係者の周知を図っている.対応方法は異常時の対応

が段階的に進む実態に合わせ,管理レベルをモニタリン

グ計測値と関連付け,表-5に示す3段階に設定している.

7. まとめ

上述のとおり,供用に影響するような大きな異常はこ

れまでに確認されていない.しかしながら損傷の進行が

確認されるケーブルがあることから,今後腐食が進行し,

架け替え前に安全性が低下する可能性は十分に考えられ

る.特に防水に関して,橋面防水や車道目地の注入等の

対策を実施しているところではあるが,確実な対策とは

なっていない.今後モニタリング監視等による維持管理

を継続するとともに,更なる延命化についても検討して

いく必要がある.また,本橋は大学等研究機関の研究フ

ィールドとして提供しており,様々な計測データが得ら

表-5 モニタリング管理レベルと対応一覧表

管理レベル モニタリング計測値 主な対応

注意レベル

警報メール

自動配信

自動計測装置の警報基準を小さく設定し管理

するレベル.

・たわみ25mm以上

・目地変位0.2mm以上

①モニタリング計測値の確認.

②CCTV,パトロール確認.

③変形の増加原因推定.

④注意レベルが頻繁に現れる場合は警戒レベルに移行.

警戒レベル

回転灯点灯

変形の増加が注意レベルから相当期間収まら

ず,管理限界の 50%値のレベル.

・たわみ40mm以上

・目地変位0.3mm以上

①専門技術者に現地調査を要請,状態確認と変形の増加原因を推定.

②詳細調査の実施.

③交通整理員を配置し大型車を連行させない(限界レベル対応の準備).

④委員会招集.

限界レベル

変形が管理限界に達するレベル.

・たわみ80mm以上

・目地変位0.5mm以上

①交通規制を実施(旧道や高速道路への迂回).

②委員会助言による対策等の実施.

※たわみおよび目地変位量は,温度変化による最大最小値に対して設定している.

れていることから,各機関と情報を共有し,維持管理に

役立てていきたい.

謝辞:妙高大橋の損傷発覚から今日に至るまで,長岡技

術科学大学 丸山久一名誉教授をはじめとするご関係者

の皆様方よりご指導・ご助言を頂きました.この場をお

借り致しまして厚く御礼を申し上げます.

0

100

200

300

400

500

ひずみ(μ)

―ゲージ番号―

■第1径間7ブロック橋軸方向下縁ひずみ分布(H27試験)

上流側(外)

下流側(外)

上流側(内)

下流側(内)

計算値

7-2(3)-1 7-2(3)-3 7-2(3)-57-2(3)-2 7-2(3)-4

-100

0

100

200

300

400

500

1 2 3 4

ひずみ

(μ)

左張出床版 下床版左側 下床版右側 右張出床版

■第1径間7ブロック断面内ひずみ分布2009

2011

(補強前)2011

(補強後)2012

2013

2015

計算値

-100

0

100

200

300

400

500

1 2 3 4

ひずみ

(μ)

左張出床版 下床版左側 下床版右側 右張出床版

■第1径間9ブロック断面内ひずみ分布 2009

2011

(補強前)2011

(補強後)2012

2013

計算値

図-9 試験荷重によるひずみの推移(1)

図-10 試験荷重によるひずみの推移(2)

写真-5 載荷試験

0

100

200

300

400

500

2009 2011

(補強前)

2011

(補強後)

2012 2013 2015

ひずみ

(μ)

■第1径間7ブロック下縁ひずみの経年劣化

上流側

下流側

計算値