名前をしらない19人の「生」 に思いを馳せ、傷つけられた方々 … ·...
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追悼
名前をしらない19人の「生」
に思いを馳せ、傷つけられた方々
の心身の回復をお祈りします
障害者福祉施設・障害福祉サービス事業所人権研修会
「障害のある人の人権」について
2016年10月7日(金)
「地震や落雷などの自然災害の発生を完全に抑えることは不可能だが、人権問題を解決することは可能である。
なぜなら人間が造り出したものだから、人間の様々な営み、啓発・教育・法律の制定などにより解決は、可能である。」
障害者、子ども、高齢者、女性、外国人市民、同和問題、元ハンセン病患者・回復者、性的指向に関わる問題、アイヌ、エイズ・HIV感染者、犯罪被害者とその家族、東日本大震災に関わる人権問題、インターネット、ホームレス、刑を終えて出所した人、性同一性障害、拉致被害者とその家族、人身取引の問題など
誰の課題?
障害のある人の人権
今回の事件から見えてくること
• 障害のある人に対する「優生思想」に基づく露骨な差別感情
・多くの人が自分と同じ考えとの勝手な思いこみ(自己の行為の正当化)
• 障害のある人に対する社会的潜在意識と差別犯罪への社会としての対応
<個人的責任の論議に終始せず、私たちの人権意識の見直しを>
障害者の権利宣言より (1975年国連総会採択)
「『障害者』という言葉は、先天的(生まれつき)か否かにかかわらず、身体的又
は、精神的能力不全のために、通常の個人又は社会的生活に必要なことを確
保することが、自分自身では完全に又は部分的にできない人のことを意味する。」
「障害」とは、諸器官の欠損や能力不全の状態という個人の問題でなく、その結果生
じる様々な社会生活上の困難や不利益を被る人のこと。
日本では「身体や精神が正常に機能しない状態、又は人のこと」を「障害」もしく
は「障害」者と定義
障害者を「~ができない人」「不幸な人」などのマイナスイメージで捉える傾向
WHO 現在、身体や精神に「障害」のある人 人口の15%と推定
• 日本では、身体に「障害」のある人 394万人
知的な「障害」のある人 74万人
精神に「障害」のある人 320万人
合計 約788万人(国民約16人に1人)
平成26年度版障害者白書より
国際障害者年行動計画では「10人に1人が何らかの『障害』を持っている」
日本には約1200万人いることになる。約400万人の差は「障害」の
とらえ方の違いによると考えられる
歴史の中での障害者への政策や様子(1)• 縄文時代後半の遺跡から、生前に障害を持っていたと考えられる人の骨が出土
・奈良時代 「律令」には、障害者を「篤疾」(重度)、「廃疾」(中度)、「残疾」(軽度)に分類。その等級に応じ、租税、労役を減免、罪を犯した
場合、減刑などの保護的措置。また介護者には、租税や労役を一部
免除などの政策と同時に「障害者」を「罪の報い」とする観念も広がる。
「古事記」・・イザナギ、イザナミの国づくりの神話
「日本霊異記」・・「因果応報」思想による多くの説話
・鎌倉時代・・律宗の僧侶、叡尊や忍性 ハンセン病患者の収容施設建設
時宗 一遍上人の諸国行脚
視覚障害者たちの活躍 軍記物語、針、按摩
歴史の中での障害者への政策や様子(2)・江戸時代 幕府から独自の支配権を認定された。「当道座」を形成
・明治時代 資本主義社会への移行 「商品生産に価値を置く」
多くの障害者が「社会に役立たない者」として排除された。
働く技術の習得に重点 盲・ろう学校の建設
・第2次世界大戦 ナチスの障害者政策、「安楽死」に名を借りた大量抹殺
1941年、日本で「国民優生法」成立。また、戦争中、障害者に
自殺用の薬配布
<近代以降、「健常」者の価値観による差別と排除が強化>
2度に及ぶ世界大戦を深く反省
国際連合は、1948年に世界人権宣言を発表
世界人権宣言の具体化(多くの国の憲法や法律の人権規定に影響)
世界人権宣言 (外務省訳文より一部抜粋)
第1条 すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊
厳と権利について平等である。
第2条 すべて人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その
他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の
地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けるこ
となく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有するこ
とができる。
国際的な条約制定の動き• 1975年、国連総会「障害者の権利宣言」を採択、各国に障害のある人の権利保護を呼びかけ
• 1979年「国際障害者年長期行動計画」発表、各国に策定を勧告
「ノーマライゼーションと障害者の人権確立」
「障害者は特別なニーズを持つ特別な市民と考えられるべきではなく、普通の市民と同じニーズを満たすのに特別な困難を有するだけの普通の市民と考えられるべきである。」
・1981年「国際障害者年」 テーマ「完全参加と平等」
・1983年~1992年「国連障害者の10年」
アメリカ、オーストラリア、イギリスなどで障害に基づく差別を禁止する法律が成
立し、国際条約制定の気運が高まる。
・2006年12月国連総会、「障害者権利条約」が採択
・2013年、批准国・地域組織130 日本政府、2014年批准
障害のとらえ方の変化
障害のある人 「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害のある者であって障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう」
(障害者基本法2011年改正)1998年 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(AIDS:エイズ)
身体障害に追加2004年 自閉症、学習障害も障害と認める。発達障害者支援法成立
「障害」を個人の身体機能の範囲だけで捉えるのでなく、社会との関わりで捉える
障害者権利条約 (障害のある人の権利と尊厳を保護・促進するための初めての国際条約)
• 障害のある人の尊厳、自律と自立、非差別、社会への参加法の下の平等、身体の自由、アクセシビリティ、家族、教育、労働など様々な分野で障害のある人の権利・保護の促進を規定
(条約作成過程に多くの障害者団体が参加、当事者の意見を反映)
Nothing about us,Without us
障害のある人 福祉の対象から権利の主体への転換
国際生活機能分類による障害の捉え方(WHO)
<脊髄を損傷した人>
下半身の麻痺・・「機能・構造の障害」
それにより移動ができない・・「活動制限」
外出の不自由、不就業・・・「参加制限」
車椅子使用 移動可能
スロープ、エレベーターの設置 移動可能
事務所の環境改善(通路、事務機器、トイレなど) 就業可能
障害者権利条約と障害者差別解消法○障害者権利条約(国際的な条約)の批准・・・インクルーシブな社会に向けて障害者に特別な権利を与えるのでなく、障害のない人と同じように権利行使をするためいろんな工夫が必要 合理的配慮の不提供は差別
(日本政府は、2007年9月署名、2014年批准)○国内法の整備(改正や成立)
障害者基本法(合理的配慮の必要性明文化) 障害者総合支援法(成立)障害者雇用促進法(改正雇用分野での障害者差別禁止、合理的配慮の提供) 各自治体での障害者差別禁止条例など。
「障害者差別解消法」の骨子
○不当な差別的取り扱いの禁止○社会的障壁の除去や合理的配慮の提供
<障害を理由とする差別>
障害を理由として、正当な理由なく、サービスの提供を拒
否したり、制限したり、条件をつけたりするような行為をいい
ます。
また、障害のある方から何らかの配慮を求める意思の表
明があった場合には、負担になりすぎない範囲で社会的障
壁を取り除くために必要で、合理的な配慮(以下では「合理
的配慮」と呼びます)を行うことが求められます。こうした配
慮を行わないことで、障害のある方の権利利益が侵害され
る場合も、差別に当たります。
(内閣府発行パンフレット「障害者差別解消法」が制定されました)より
合理的配慮 障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を共有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの 内閣府(障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針)より
○合理的配慮の内容は障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性が高い。○社会的障壁の除去のための手段・方法については、双方の建設的・合理的対話により必要、かつ合理的な範囲で柔軟に対応されるものである。
障害者自身が権利の主体として社会のバリアを取り除くための役割を果たす
環境整備との関係
不特定多数の障害者対象の事前的改善措置(公共施設、交通機関などのバリアフリー化、意思表示やコミュニケーション支援のためのサービスや人的支援、情報アクセシビリティの向上など)は、個別の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努める。ハード、ソフト両面で環境整備として進める。そして、合理的配慮は環境整備の上に進められることでより効果を発揮する。
内閣府(障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針)より
障害のある人を取り巻く現状「世の中には障害のある人に対して、障害を理由とする差別や偏見があると思うか」
「あると思う」「少しはあると思う」 89.2%
「ないと思う」 9.7%
(2012年内閣府世論調査より)
○5年前の調査結果と比べ、「あると思う、少しはあると思う」が6.3%増加
問12「あなたは、障害のある人の人権に関し、現在、特にどのような問題が起きていると
思いますか」
障害のある人や障害そのものについての世間の人々の理解不足 47.4%
収入が少なく経済的に自立できないこと 42.9%
就職・職場で不利な扱いを受ける 35.4%
岡山市 「人権問題に関する市民意識調査結果報告書」より(2015年1月)
社会参加を阻む4つのバリア
• 物理的バリア 建物、交通機関、道路などに物理的に存在するバ
リア
・制度的バリア 障害を理由に資格や免許などが取得できない制度
等が存在していること
・文化情報面のバリア 読む、聞く、話す、理解するといった機能に障
害のある人へのサポートがなくそのままでは情報の
やり取りがしにくい状態にあること。点訳・手話・要約
筆記などのサポートでバリアの低減
・意識上のバリア 心のバリアとも呼ばれ、障害のある人に対する偏見
や無理解、無関心であることを表している
「障害者なんていなくなればいい」
報じられた容疑者の言葉・・・容疑者本人だけの特異性?
○「関わりたくない、避けたい。」という潜在意識・・
本人や家族を地域社会から遠ざけ、施設や病院へ
○「障害のある人の世話は、家族がするべき」、「障害が重度」「迷惑をかけるか
ら」という意識・・・施設入所・隔離
○措置入院の見直しなど・・・「精神に障害」のある人への差別意識の助長
障害のある人を地域から遠ざけ、見えない存在に
(共生社会推進とは逆の方向)
障害者権利条約が保障している権利(抜粋 要約引用)
第3条 一般原則
人としての尊厳、自ら選択する自由を含む自律と自立の尊重、
非差別
第12条 すべての人に障害のあるなしにかかわらず法的能力がある
(本人以外の者が本人に代わって利益や処遇を強制されない)
第14条 身体の自由と拷問等からの自由
第15条 拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱
い若しくは刑罰からの自由
第17条 個人が健全であることの保護
第19条 地域生活を送る権利
共に生きる社会を目指して
地域には「いろんな人」がいるのが当たり前・・・多様性
「ふれあう機会」を限られた場所だけでなく、地域の日常生活の中でも
「障害」を理解し、本人や家族の思いに触れるよい機会
「障害」に対する見方を変える良いチャンス
「障害のある人」が安心して生活できる地域社会の実現