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1. 晩翠橋について 晩翠橋の名前の由来は不明ですが、晩翠とは「冬になっても木々 の緑が変わらない」という意味があります。また、中国宋代の学者・ 茫質(はんち)の詩には「遅々澗畔松、鬱々含晩翠」(遅々(ちち)たる 澗畔(かんぱん)の松、鬱々(うつうつ)として晩翠を含む)がありま す。これは「谷間の松は良く茂って、草木が冬枯れの中に、よくも 翠(みどり)の色をもっている」という意味です。 栃木県那須塩原市本郷町と那須町高久の間を流れる一級河川・那 珂川の上で、左右対称構造に美しいアーチを描く晩翠橋。主要地方 道・西那須野那須線の一角を形成する、橋長 127.8m、幅員 8.7m の上路ブレースドリブ・バランスドアーチは周囲の景観と相まって 有数の名橋と謳われています。 現在 昭和けられたもので 代目となります 歴代の晩翠橋 晩翠橋は、昭和7年に架設され、本橋を含め全国に2例しかない橋梁形式(上路式ブレースドリブ・バランスドアーチ橋) のため、歴史的、景観的にも貴重な橋として、平成14年度に土木学会選奨土木遺産に指定されています。一級河川那珂 川の清流と岩上老松の美しさが相まって、本橋の周辺ではすばらしい景観を演出され、県民の方々にも親しまれています。 また、本橋が架かる主要地方道西那須野那須線は、近くに迂回する道路が無いことから、地元住民の重要な生活道路と なっています。そのため、晩翠橋の機能と景観を維持しながら、この地域のランドマークとして長期的に保存していくこ とが望まれています。 初代・晩翠橋(明治17年~明治23年) 2代目・架設工事中(明治27年) 3代目・晩翠橋(明治41年) 4代目・晩翠橋(大正12年)

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1. 晩翠橋について

晩翠橋の名前の由来は不明ですが、晩翠とは「冬になっても木々の緑が変わらない」という意味があります。また、中国宋代の学者・茫質(はんち)の詩には「遅々澗畔松、鬱々含晩翠」(遅 (々ちち)たる澗畔(かんぱん)の松、鬱 (々うつうつ)として晩翠を含む)があります。これは「谷間の松は良く茂って、草木が冬枯れの中に、よくも翠(みどり)の色をもっている」という意味です。

栃木県那須塩原市本郷町と那須町高久の間を流れる一級河川・那珂川の上で、左右対称構造に美しいアーチを描く晩翠橋。主要地方道・西那須野那須線の一角を形成する、橋長 127.8m、幅員 8.7mの上路ブレースドリブ・バランスドアーチは周囲の景観と相まって有数の名橋と謳われています。

現在の橋は昭和7年に架けられたもので5代目となります。

歴代の晩翠橋

晩翠橋は、昭和7年に架設され、本橋を含め全国に2例しかない橋梁形式(上路式ブレースドリブ・バランスドアーチ橋)

のため、歴史的、景観的にも貴重な橋として、平成14年度に土木学会選奨土木遺産に指定されています。一級河川那珂

川の清流と岩上老松の美しさが相まって、本橋の周辺ではすばらしい景観を演出され、県民の方々にも親しまれています。

また、本橋が架かる主要地方道西那須野那須線は、近くに迂回する道路が無いことから、地元住民の重要な生活道路と

なっています。そのため、晩翠橋の機能と景観を維持しながら、この地域のランドマークとして長期的に保存していくこ

とが望まれています。 初代・晩翠橋(明治17年~明治23年)

2代目・架設工事中(明治27年)

3代目・晩翠橋(明治41年)

4代目・晩翠橋(大正12年)

内 容

明治17(1884).10 初代架橋(木橋)

明治27(1894).7 2代目架橋(木橋)

明治41(1908).11 3代目架橋(木橋)

大正12(1923).7 4代目架橋(木橋)

昭和7(1932).7 5代目架橋(鋼橋)

初代から4代目までは現在の橋の上流

約70mの場所に架橋されていた。

昭和53 晩翠橋が通る国道4号が県道になる。

平成10(1998) アーチ部分の塗装補修

平成14(2002).11 土木学会選奨土木遺産に認定される。

年・月

2. 晩翠橋の特徴

3. 晩翠橋の現状

晩翠橋は架設78年経過しており、老朽化のために損傷がみられます。平成19 年に実施された点検結果を以下に示します。

4. 今後の晩翠橋晩翠橋は長寿命化を目的として今後以下の補修及び補強を行っていく予定です。

部材 補修・補強内容 目的床版部 鋼板接着補強(舗装・地覆・防護柵・伸縮装

置等の更新)床版部の耐力向上損傷部の補修

アーチ部 部材補強 アーチ部材の耐力向上落橋防止システム

落橋防止構造、変位制限構造、段差防止構造 落橋防止装置の設置

鋼部材 塗装塗替え 腐食部の補修

技術的特徴・ 橋長126.0m(28.000m+70.000m+28.000m)・ 上部工形式:上路式ブレースドリブ・バランスドアーチ橋

(全国に2例しかない形式。もう1橋は埼玉県・荒川橋(下流側))・ 竣工年度:昭和7年

意匠的特徴・ 鋼のアーチと那珂川の清流および岩上老松との調和・ アーチ部分が非常に力強い印象を与える

系譜的特徴・ 初代の晩翠橋は明治17 年に架設。現橋は昭和7年架設の5代目。・ 設計者:富樫剴一(とがし・がいいち)(1905-1993、建設官僚,土木

工学者:関門国道改良事務所長,建設省道路局長,日本道路公団総裁本州四国連絡橋総裁)

・ 河原に展望台が整備されており市民に親しまれている・ 架設当時から大きな補修を行っていない(オリジナルに近い)

● 損傷評価・ 伸縮継ぎ目部の下面剥離・鉄

筋露出が顕著であり、「速やかに補修等を行う必要がある」損傷と判断しています。

・ 全体的にも、ひびわれや遊離石灰等の経年劣化損傷がみられます。

● 損傷評価・ コンクリート劣化、鉄筋腐食

による剥離・鉄筋露出が全体的に生じ、耐力の低下が想定されるため「速やかに補修等を行う必要がある」損傷と判断しています。

● 損傷評価・ 防食機能の劣化と腐食が見

られるが、錆は表面的であり著しい板厚減少はありません。

・ 損傷は「状況に応じて補修を行う必要がある」程度と判断しています。

ライトアップ時の晩翠橋

①床版コンクリート

②橋面・防護柵

③鋼部材部

晩翠橋に関する略年表

一級河川 那珂川

126.0m(28.0+70.0+28.0)

基礎工形式 直接基礎

交差物

上路式ブレースドリブ・バランスドアーチ

架設年次 昭和7年

橋 長

晩翠橋(ばんすいきょう) 路線名

斜 角

主要地方道 西那須野那須線

下部工形式

90度

適用示方書 大正15年総則

橋梁内容

活荷重 8t(T15,2等橋)

幅 員 7.0m(車道)+1.7(歩道)=8.7m(有効幅員) 上部工形式 中抜き橋台、アーチアバット

橋梁名

橋梁諸元

← 至那須塩原市黒磯 至那須町高久 →

A2側面図・平面図・断面図

橋梁諸元

← 至那須塩原市黒磯 至那須町高久 →

A1

P1 P2

A2

橋梁諸元

図-全体一般図(竣工図書より)

← 至那須塩原市黒磯 至那須町高久 →

A1

P1 P2

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現況写真

橋梁諸元

図-全体一般図(竣工図書より)

写-下流側から全景 写-A1橋台側からP2橋脚 写-橋面(高久側)

← 至那須塩原市黒磯 至那須町高久 →

A1

P1 P2

A2

橋梁諸元

図-全体一般図(竣工図書より)

写-下流側から全景

写-P1橋脚支点部

写-A1橋台側からP2橋脚

写-桁下面(A1橋台)

写-橋面(高久側)

写-P2橋脚支点部

← 至那須塩原市黒磯 至那須町高久 →

A1

P1 P2

A2

鋼部材に当板補強を行った場合の補強前(現況)と補強後の景観比較を以下に示します。景観的にはほとんどかわりはありません。

補強前と補強後の景観

補強前

補強前と補強後の景観補強前と補強後の景観

補強後

補強前と補強後の景観補強前と補強後の景観