2-1 現況...第5 章 地域別構想 90 2 加古地域 2-1現況...

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第5章 地域別構想 90 2 加古地域 2-1 現況 加古地域は稲美町の北西部に位置し、加古川市に接しており、合併前の旧 3 村のうちの 旧加古村からなっています。 加古川による高位段丘面上にあり、西部の曇川に向かって穏やかに下っています。 面積は約 639ha で稲美町全体の約 18%にあたります。 ■ 航空写真(加古地域)

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第 5 章 地域別構想

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2 加古地域

2-1 現況

加古地域は稲美町の北西部に位置し、加古川市に接しており、合併前の旧 3 村のうちの

旧加古村からなっています。

加古川による高位段丘面上にあり、西部の曇川に向かって穏やかに下っています。

面積は約 639ha で稲美町全体の約 18%にあたります。

■ 航空写真(加古地域)

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第 5 章 地域別構想

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15.7 14.8 14.7 13.5 11.1

68.4 67.9 64.7 60.9

57.6

15.9 17.1 20.7 25.7 31.3

0%

20%

40%

60%

80%

100%

平成7年 12年 17年 22年 27年

年少人口(0~14歳) 生産年齢人口(15~64歳) 老年人口(65歳以上)

4,8765,067 5,111

4,8974,581

1,2151,370 1,446 1,481 1,520

4.013.7

3.53 3.313.01

0.0

2.0

4.0

6.0

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

平成7年 12年 17年 22年 27年

人口 世帯数 1世帯当たり人員

(人、世帯) (人/世帯)

(1)人口・世帯数

平成 27 年の人口は 4,581 人、世帯数は 1,520 世帯、1 世帯当たり人員は 3.01 人となっ

ています。人口は平成 17 年以降、減少に転じていますが、世帯数は平成 7 年から一貫して

増加傾向にあります。

平成 27 年の年齢 3 区分別人口構成比をみると、年少人口は 11.1%、生産年齢人口は

57.6%、老年人口は 31.3%となっています。平成 27 年の老年人口は、平成 7 年(15.9%)

の約 2 倍となっており、高齢化が進行しています。

自治会別人口の推移をみると、多くの自治会において、概ね横ばい又は減少傾向となっ

ています。

■ 人口・世帯数(加古地域)

資料:国勢調査

■ 年齢 3 区分別人口(加古地域)

資料:国勢調査

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■ 自治会別人口の推移(加古地域)

単位:人

自治会名 平成

19 年 20 年 21 年 22 年 23 年 24 年 25 年 26 年 27 年 28 年

五軒屋 453 454 455 447 438 432 429 437 430 428

池ノ内 121 125 127 123 121 112 114 119 115 114

北新田 553 551 543 538 531 525 514 512 497 485

鉄工団地 15 16 16 14 15 14 25 23 22 21

大沢 141 144 141 140 141 140 138 137 131 133

大沢東 159 155 152 150 151 151 154 150 152 148

上新田 754 761 761 752 748 725 714 706 689 690

上新田高層住宅 283 285 282 266 253 267 279 266 266 257

千和池 193 191 187 183 187 192 188 189 188 183

中新田 496 497 499 499 489 485 483 484 485 478

三四軒屋 395 390 394 378 371 356 355 353 357 357

六軒屋 202 197 200 194 193 182 178 172 177 170

見谷 524 523 506 493 481 473 468 463 450 455

七軒屋 178 173 177 175 168 168 168 167 171 173

八軒屋 341 344 341 344 341 338 335 330 327 323

見谷団地 27 27 27 27 27 28 28 24 30 30

合計 4,835 4,833 4,808 4,723 4,655 4,588 4,570 4,532 4,487 4,445

注 1:鉄工団地は自治会ではない。 資料:住民基本台帳

注 2:見谷団地は平成 26 年から自治会ではない。

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(2)土地利用

加古地域では、江戸時代に新田開発がはじまり、上新田、中新田ができ、その後も引き

続き開発が進み、新田と集落が形成され今日に至っています。この新田開発に併せ、加古

大池をはじめとする多くのため池が築造され、水利が確保されてきました。したがって、

地域の大半は農地及びため池の農業的土地利用で占められ、農業以外では北部及び東部の

一部に工業地が立地しています。地域東部に位置する加古大池は兵庫県で一番大きなため

池で、満水面積が約 49ha あり、加古地域の面積の約 7.7%を占めています。

加古地域は全域が市街化調整区域であり、地域の大部分が農業振興地域で、農用地区域

の指定も多くなっています。この辺りの農地は、大半がほ場整備事業によって農業基盤整

備が進められてきたため、整然とした美しい農地が広がっています。

工業地のうち 2 か所については、特別指定区域が指定されており、加古鉄工団地地区は

既存事業所の拡張・既存工場の用途変更の区域、池ノ内南地区は既存工場の用途変更・資

材置き場等の区域となっています。

集落としては上新田周辺が古く、田園集落は地域の中央部、上新田から稲美北中学校と

加古小学校周辺にかけて最も大きく広がっています。

(3)交通体系

加古地域の主要幹線道路は、南北に主要地方道宗佐土山線、東西に主要地方道神戸加古

川姫路線、県道大久保稲美加古川線があります。また、地域の南側には都市計画道路垂水

志方線、地域の東側には都市計画道路二見稲美三木線が計画されています。

バス路線については、「土山駅~上新田北口線」、「加古川駅~県立加古川医療センター経

由~稲美町役場前線」、「加古川駅~上新田北口線」の 3 路線が運行しています。平成 29 年

10 月に加古川エリア全体でバス路線が再編され、「加古川駅~県立加古川医療センター経

由~稲美町役場前線」が新設されるなどの利便性の向上も図られる一方、利用状況が低か

った上新田北口以北や上新田以東の路線は休止されています。

(4)主な地域資源

ア 自然資源

加古大池では約 1ha に及ぶ葦原があり、野鳥のすみかとなっています。駐車場やトイレ、

遊歩道なども整備されており、広い水面ではカヌーやウインドサーフィン等を楽しむこと

もできます。また、水生植物や水生昆虫の観察ができるビオトープも存在しています。

茨池等ではヒシなどの水生植物が自生し、六軒屋池では絶滅危惧種Ⅱ類のオニバスが自

生しています。

■ 加古大池 ■ 六軒屋池

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イ 歴史・文化的資源

延宝 8(1680)年造営の加古八幡神社では毎年 10 月に秋祭が行われており、地元の保存

会によって継承されている伝統の獅子舞が有名となっています。

万治 3(1660)年開村の加古新村が成立した現在の北新田の辺りには、今も古い邸宅が

残り、景観的にも優れた屋敷林がみられます。

地域北西部の鳴ヶ岡稲荷神社では、39 の朱色の鳥居が田んぼの中に立ち並び、杉やモチ

の大木が茂る社寺林が形成されています。

加古大池では毎年 8 月上旬に「いなみ大池まつり」が開催され、花火や地域住民、ボラ

ンティアによる模擬店なども出店されています。

■ 屋敷林 ■ 鳴ヶ岡稲荷神社

ウ 公共施設等

地域のほぼ中央には、加古小学校と稲美北中学校があり、その加古小学校に隣接して加

古幼稚園、加古保育園が位置しています。

福祉施設としては、加古福祉会館等が稲美北中学校の南隣に位置しています。

公園としては、加古大池公園、加古八幡神社に隣接する加古農村公園があります。

スポーツ施設としては、地域北西部の鳴ヶ岡稲荷神社の近くに、鳴ヶ岡グラウンドがあ

ります。

■ 加古大池公園 ■ 鳴ヶ岡グラウンド

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(5)町民意向調査結果

ア 今後の居住地の意向 ■ 今後の居住地の意向(加古地域)

今後の居住の動向について尋ねたところ、住

み続けたい(「ずっと住み続けたい」、「当分は住

み続けたい」)が 73.5%、「町外へ転居したい」

は 12.4%となっています。

住み続けたい(「ずっと住み続けたい」、「当分

は住み続けたい」)と回答された方にその理由を

尋ねたところ、「自然環境が豊か」、「住んでいる

ところに愛着がある」、「親(族)との同居・近

居」が多くなっています。

「町外へ転居したい」と回答された方にその

理由を尋ねたところ、「公共交通の便が悪い」、

「普段の買い物に不便」、「通勤・通学に不便」

が多くなっています。

■ 住み続けたい理由(上位 3 項目) ■ 転居したい理由(上位 3 項目)

イ 土地利用の課題

土地利用の課題について尋ねたところ、「担い手のいない耕作放棄地が増えている」が

53.0%と最も多く、次いで「日常生活のための店舗やサービス施設が不足している」

(34.1%)、「放置され老朽化した空き家(空き店舗・倉庫・工場を含む)が増えている」

(31.4%)となっています。

■ 土地利用の課題(加古地域)

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2-2 地域づくりの方針

(1)地域の主要課題

ア 田園集落の活性化

加古地域内の集落では少子高齢化と人口減少が進みつつあります。また、町民意向調査

では、普段の買い物が不便であるなどの生活利便性に対する課題や、放置され老朽化した

空き家の増加等が課題としてあげられています。市街化調整区域に広く集落が分布してい

る稲美町では、集落機能の衰退が町全体の活力低下につながりかねないことから、地域コ

ミュニティの基本単位である田園集落を活性化し、良好で魅力的な生活空間にするための

取り組みが必要となっています。

イ 農業の活性化

加古地域には美しい農地が広がっていますが、農業をとりまく社会的、経済的な状況は

厳しくなっています。農業従事者の高齢化が進む中、今後とも農地を良好に維持していく

ため、農業を次世代や非農業者と連携し、新たな発展につなげていく取り組みが必要とな

っています。

ウ 交通利便性・安全性の向上

鉄道が通っていない稲美町では、地域の主な公共交通は路線バスとなっています。しか

し、上新田北口以北及び上新田以東の路線が休止されたため、沿線地域における交通利便

性の確保が必要となります。

幹線道路については、加古地域の西を通過する東播磨道により、加古川バイパスや山陽

自動車道へアクセス利便性の向上が期待できる一方、歩行者や自転車に対する安全性の確

保のために、地域内の道路交通環境について安全対策を進めていく必要があります。

エ 加古大池の利活用

兵庫県で最も大きなため池である加古大池は、ため池と水路網の整備によって発展して

きた稲美町のシンボル的存在となっており、東播磨地域全体の取り組みである「いなみ野

ため池ミュージアム」の重要な構成要素でもあります。今後もこの貴重な地域資源をしっ

かりと保全するとともに、環境教育や健康づくりなど、様々な活動の場として活かすこと

によって、地域のまちづくりのために一層有効に活用していく工夫が求められます。

オ 水辺空間の保全と活用

加古地域では、文禄(1592~1596 年)以後に開発された田(新田)が多く、淡山疏水等

によって水に恵まれない自然条件のもとでため池を活用した農業を行ってきたことから、

豊かなため池群と田園風景が広がっており、同時に、様々な動植物が生息する自然の宝庫

となっています。

今後もため池等を貴重な地域資源として保全するとともに、その活用方法についても検

討することが求められます。

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(2)地域づくりのための取り組み

ア 個性的で魅力的な田園集落の創造

田園集落の活性化に向けた取り組みとして、集落単位での田園集落まちづくり計画の策

定を支援し、地縁者住宅等の誘導を図ることなどにより、定住人口の増加と地域の活力の

維持に努めます。

また、加古小学校付近から上新田交差点付近にかけての一帯を加古地域のコミュニティ

中心形成ゾーンと位置づけ、今後、地区計画制度を活用し、拠点地区として必要な施設の

積極的な立地誘導を図ります。

【具体的な施策例】

・集落ごとの将来像を考えるための住民と行政の対話機会の創出

・住民協働による各集落の田園集落まちづくり計画の作成

・集落内への地縁者や新規居住者の住宅等の誘導

・コミュニティ中心形成ゾーンにおける地区計画の策定

・住宅等の建築等に併せた前面道路の拡幅

・集落ごとの個性的で魅力的な景観形成のためのガイドラインの策定や協定の締結

・若い夫婦や小さな子どものいる世帯への住宅取得に対する多面的支援

・空き家バンク制度等による空き家の利活用

イ 良好な農業環境の保全・形成

農業者と非農業者とが連携して美しい農地を守り、農文化と農業関連産業を育てるため

の諸施策を推進します。

また、ほ場整備事業等で廃止されたため池等の低未利用地は、隣接する集落や周辺環境

との調和を図りながら、有効的な活用方法について検討します。

【具体的な施策例】

ウ 安心・安全で利便性の高い交通環境づくり

地域における交通利便性を維持するため、既存のバス路線の維持確保及び利便性の向上

と、地域の実状に応じた公共交通手段(デマンド型乗合タクシー等)の確保に引き続き取

り組みます。

地域内道路で安全面に課題のある箇所については、安全対策を推進します。特に、加古

小学校や稲美北中学校の通学路については、歩行者・自転車利用者の安全確保に向けた取

り組みを推進します。また、都市計画道路については、整備に併せて歩道等の設置を進め、

歩行者・自転車と車両を分離するなど、安心して移動できる歩行者・自転車利用空間の確

保を図ります。

・加古小学校や稲美北中学校との連携による農地を用いた教育活動や地域活動

・新規就農者への支援や集落営農組織の育成

・生産、加工、流通・販売の一体化(地域特産物を活かした 6 次産業化)

・廃止ため池等の低未利用地の周辺環境と調和した地区土地利用計画等の策定の検討

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【具体的な施策例】

・地域の実状に応じた公共交通手段(デマンド型乗合タクシー等)の導入

・コミュニティ中心形成ゾーン内の主要生活道路の歩車共存化

・通学路における路肩カラー舗装の設置や関係機関との合同点検の実施

・都市計画道路の整備

エ 加古大池を核とした活動拠点づくり

加古大池を貴重な地域資源としてとらえるとともに、その一帯を広域的な余暇活動のた

めの拠点と位置づけ、環境教育、健康づくり、レクリエーション、人々の交流、農業の活

性化など、多目的な利用を可能にするための方策を検討します。

【具体的な施策例】

・加古大池公園の適切な維持管理や公園施設の長寿命化

・加古大池を利用した環境教育の実施や様々なイベントの開催

・加古大池や周辺の地域資源を結ぶ自転車・歩行者ネットワークの活用

・県民まちなみ緑化事業等を活用した緑化活動の支援

オ 水辺空間の保全と活用

地域内に多く存在するため池等の適切な維持管理を図るとともに、自然とふれあう水辺

空間としての利活用についても検討します。また、重点整備ため池等については、大雨や

地震による堤防決壊などの災害に備え、堤体の改修を実施します。

【具体的な施策例】

・重点整備ため池等の改修

・水辺空間を利用した環境教育活動

・地域のコミュニティ活動と連携した水辺空間の維持管理

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■ まちづくり構想図(加古地域)