20140308 cc enabled_open_innov
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当日版を少し増補しました。Q&Aの内容を盛り込み、それについての補足訂正も少し書きました。 p.51にAkanijiさんに教えていただいた判例を追記。TRANSCRIPT
クリエイティブ・コモンズが拓くオープン・イノベーション
渡辺智暁クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
( NPO 法人コモンスフィア常務理事)2014.3.8. 於 関内さくら WORKS
本日のメニュー・(自己紹介など)・クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
( CCL )の考え方・ CCL の仕組みと工夫・ CC 活用分野の広がり
自己紹介• コモンスフィア 常務理事(クリエイティブ・コモン
ズ・ジャパン:アウトリーチ、調査研究、ライセンス関連、国際リエゾン、人的資源ケア、雑務全般)
• 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 主幹研究員/准教授/研究推進部長 ( ICT 政策、情報社会論、など。米国の通信インフラ産業と政策、オープン化と社会変動・産業再編)
• オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン 副理事長(政策、国際リエゾン)
• ウィキペディア日本語版(長期休眠状態 – オープン化、著作権、ライセンスへの興味のきっかけ)
情報社会とオープン化
オープン化とは?・変化の一種( OO 化)・広義:従来よりも多数・多様な人の参加や影響
力行使を受け入れる仕組みになること→ 一般(?)的な用法・狭義:情報財に関して、利用目的や利用者の
別なく商業利用・改変も含めた広汎な利用を許諾すること。その際の条件がクレジット表記など一定範囲内に収まっていること。
→ 国際的に定式化・定義の共有化が進行中
社会や市場と制度のミスマッチ著作権制度: “ All rights reserved,” 無方式
主義
許諾なしに他人の著作物を使ってはいけない、というのが著作権法の基本
情報社会では、他人の著作物を自由に使ってよい、という領域が拡大しつつある。
技術環境の変化情報やコンテンツの複製・共有・加工が簡単に。
デジタル技術とデジタル・コンテンツ: 著作物の複製が簡単・無劣化に
ブロードバンド網とその普及: 著作物の流通が簡単・低コストに
ブログ、ウィキ、デジカメ、 CD バーナー、他: 著作物の制作コストも低減
→ 制作・流通とも、著しく安価になった→ 従来とは違うプレイヤーの参入余地
技術環境の変化掲示板、メーリングリスト、ウィ
キ、 SNS 、他 コミュニケーション用プラットフォーム: 遠隔・非同期コラボレーションが容易に
→集合知的な創作活動の基盤
PC の高機能低価格化、オープンソース・ソフトウェアによるサイト構築の低価格化( LAMP )
→ スタートアップの簡易化
クリエイター、コンテンツホルダーの変化
市民セクター:アマチュア・ボランティアの活動拡大 ・創作・流通などへのアマチュアの(大量)参入 ・そうしたコンテンツの中にも鑑賞に耐えるものが。 ・ある程度自由に利用してもよいコンテンツが増大 “commons-based peer production” (Benkler, 2006)
公共セクター:情報伝達・普及をミッションとする組織・機関
・ GLAM :政府、図書館、資料館、博物館・美術館
クリエイター、コンテンツホルダーの変化
企業セクター:無料化は広まる ・フリーミアム、クラウドソース、投稿型プラット
フォームなど流通や共有を前提にしたビジネス(特にウェブ上)
・無料情報戦略:競争の激化/広告収入/著名性獲得/パーソナルデータ収集等が背景
・コンテンツを持たずに、ユーザーやネットから情報を集める事業も可能に(センサーやオープンデータも)
・リーンスタートアップ以外にも、地域毎の市場分割がネット上では解消、相互参入による競争が生じることも。(新聞、テレビ、ラジオなど)
ミスマッチ・著作者による独占のスキーム・個別許諾による利用が前提
⇒こうした保護を必要としていないコンテンツやクリエイターが一方には存在し、他方にはそのようなコンテンツやクリエイターを欲する利用者などが存在する。
⇒補完的な制度としてのパブリック・ライセンスによるマッチング
「受け手」の変化いわゆる「一億総クリエイター時代」→専門家の世界に、アマチュアやボラン
ティアが参入し、産業を圧迫する部分も・メディア事業、流通の分散化も(創作だけではなく、広報や配信にも一般
人が進出)・違法コピーの規模拡大も、一部産業の圧迫
を加速
「受け手」の変化 II
多くのアマチュア・コンテンツの中には優れた作品・情報が入っていることも。
→ ランキング、タグづけ、レコメンデーション・エンジン、検索などを通じた「発見」のメカニズムが重要に
複数のアマチュア、ボランティアが集まって優れた作品を創作する例も。
→ ウィキのようなコラボレーション用プラットフォームが重要に;豊富な素材、それを組み合わせるツールも重要に
オープンデータ・主に政府(広くは企業なども含む)がデー
タを他の者に自由に利用させるような取り組み
・目的:経済効果、透明性向上など・政府はデータをオープン化する動機がある(抵抗する動機もある)
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとオープン化
ライセンスとは?著作権法上の原則:著作者の許諾なしには他
人の創作物を利用してはいけない
ライセンス:許諾や許諾書のこと
オープン化の文脈で話題になるのはパブリック・ライセンス。 = 公衆一般への許諾
(⇔特定の相手に対する許諾:相対契約)
ライセンスがあると・・・・現行の制度とは違う条件で、流通や利用を
許諾するためのツールが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス。
・万人が従うべき法ではなく、希望者が使えるツール。
(採否を決めるのは基本的にはクリエイター)
小まとめ・著作権制度は、著作者が何もしなくても、創作
物を「保護」する。これは著作物の創作・複製・流通などが簡便になった現状と必ずしもそぐわない。
・現にネット上では、従来よりも広い範囲の人々が創作・複製・流通に関与するような文化のあり方が広まっている
・その情報共有をより円滑に、法的に問題が置きにくい形にするためのツールが CC ライセンス
備考:情報社会とオープン化情報社会は必ずオープン化するのか?Yes: 技術環境の変化からNot exclusively: 違うベクトルの変化も生じている・アルゴリズム・自動処理による「無人化」:多数多様な者の参加
とは対照的。・巨大資本投下などによってのみ生み出せる価値の追求「集中
化」(特定少数化):ハリウッド映画、 DB 事業など。 ネットワーク効果や規模の経済など「一人勝ち」をもたらす条
件も部分的に存在する。・知り合い・信頼などを通じた「ネットワーク化」:不特定多数に開かれるオープン化が普遍・平等主義的であるのに対し、こちらは万人を平等に扱わないところから品質や効率性が生まれる。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの仕組みと工夫
(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」 http://creativecommons.jp/licenses/ より転載)
ライセンスの構成要素4つの基本要素BY 表示 AttributionNC 非営利 NonCommercialSA 継承 ShareAlikeND 改変禁止 NoDerivs
これにバージョン名、準拠法コードを足すと、ライセンスの名前になる。例 ) クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.1 日本
Creative Commons BY-NC 3.0 US
使いやすさを重視※アマチュアのクリエイターやスタート
アップ企業は、顧問弁護士や法務部に頼れるとは限らない。※ライセンスのついたコンテンツを利用す
る人も同様の場合が多い。
・ライセンスの文面を読みやすく・ FAQ を用意する
更なる工夫・アイコンの組み合わせで要点を表示・コモンズ証で要点を記述・内容と紐づいた名前をつける→ ライセンスの同一性・概要を即座に判断しやす
い
・ライセンスがたくさんあると、著作者は何を選べばいいかわからない。(読み比べるのも面倒)
→ ライセンス選択用のツールを提供
複数の利用場面にまたがる工夫※ライセンスがたくさんあると、理解するのが大変
・ライセンス名は、有限な要素の組み合わせ・ライセンスの共用部分を多くする。共用でない部分
もモジュール化する。・そもそもライセンスの数を増やしすぎない。(悩み
どころでもある)→「このライセンス、知ってる」という場面が増える。「このライセンス、知っているライセンスのバリアン
トになっている」という場面は更に増える。
ライセンスの種類をめぐるトレードオフ
ライセンスの種類が多いと…○著作者は自分の望みどおりのライセンスが
含まれている可能性が高い× 著作者は選ぶのが大変× 著作物の利用者はライセンスを読んで理解
するのが大変(作品ごとに別のライセンスを読まなければならない ! )
×互いに組み合わせが可能でない作品が増える(「コモンズ」の分断)
トレードオフライセンスの種類が少ないと…○わかりやすい×要望にあうライセンスがないために、著作
者はライセンスを使わない(コモンズが育ちにくい)○異なる作品が同一ライセンス下にある可能性が高く、互いに組み合わせやすい
技術的な工夫※「人間にわかりやすく、法律的に厳密に、機械的に処理しやすい」ライセンスをめざす
・ライセンスに関するメタデータを定義、付与を奨励。
小まとめ・クリエイターにも利用者にもわかりやすい・使い
やすいツールを目指す・多数のライセンスを理解する手間を省く・複数作品の組み合わせの可能性をできるだけ確保・検索エンジン等でも扱いやすいメタデータつき・そもそも個別の連絡・交渉・契約を不要に→ いわゆる「取引費用」の削減→ 情報の加工費用などと併せて、スタートアップ
や個人のエンパワーメントになる
使い方の例・気に入った画像http://www.flickr.com/photos/
29096781@N02/3595959623ライセンスの確認・右下の方に「 Attribution License」と記された部
分があり、以下のページへリンクされている。http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/・このライセンスは、 CC BY 2.0 Generic 版と呼ばれ
るもの。ライセンスの本文は、こちら:http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/legalcode
記載すべき事項1) 作品のタイトル (あれば) Sunflower 2) 著者名 (あれば) Kyle Rush 3) ライセンスの URL またはライセンス全文 (必ず) http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/ 4) 作品に関連する URL として指定された URL (あれば) 特になさそう5) ライセンスに関する但し書き (あれば – 普通ある) 「 Attribution License」がこれにあたるかも6) 免責事項に関する但し書き (あれば) 特になさそう7) 著作権表示(典型的には < マル C マーク >+<年 >+< 著者名 > の 3点セット)
(あれば) 特になさそう8) 元の作品を改変して利用している、という旨の記載 (翻案した場合)
※作品の提供のされ方などにより、判断に迷うこともある。
記載方法についての注意1)&2) 作品のタイトルと著者名 他の類似のクレジットの表示と比べて小さい扱いではいけ
ない。その他は合理的な表示方法であればよい。 “Sunflower” by Kyle Rush 3) ライセンスの URL またはライセンス全文特になし http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/ 5) ライセンスに関する但し書きそのまま掲載しなければならない。 Attribution License
結果
“Sunflower” by Kyle Rush Attribution Licensehttp://creativecommons.org/licenses/by/2.0/
翻案して利用する場合
“Sunflower” by Kyle Rush を加工した画像
※ライセンスに関する注意書きや、ライセンスの URL などは、翻案して利用する場合は記載しなくてよい。
CC ライセンスの活用分野の広がり
国際展開• 本部は米国の非営利組織 2002年• 各国・地域の著作権法に合わせてライセンスを調整
(ポーティング)。 70程度の国・地域で展開。 (最新版のライセンスでは、ポーティングをしない方針)
• 日本では・・・ 2003 GLOCOM でプロジェクトとして開始 2006 NPO 法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
として独立 2013 NPO 法人コモンスフィアに改称、 CCJP はその
プロジェクトに
著名な組織による採用例・米国ホワイトハウス(オバマ政権) サイト利用者の投稿につけるライセンス
として採用。 (CC BY)・ MIT OpenCourseWare – 同校の 2000以上の
授業について、シラバス、講義資料、動画などを CC ライセンスで公開。 (CC BY)
・ TED Talk – 入場料は有料だが、トークは無料配信。 (CC BY-NC-ND)
著名なアーティストによる採用例
• Nine Inch Nails “Ghost I-IV” アルバムに CC ライセンスを付与し、 Bit Torrent でも積極的に提供。 300 ドルのデラックス版を 30時間で完売した他、 2008年の Amazon の mp3 ストアで売り上げトップアルバム。 (CC BY-NC-SA)
• オノ・ヨーコ(広島市現代美術館 企画展) 来館者に写真撮影を許可・撮影した写真はネット上など
で CC ライセンスつきで公開可能に (CC BY-NC-ND)・坂本龍一 “ Chain Music” 多様なアーティストが音楽
を綴っていく試みを主宰。 CC ライセンスで提供。 (CC BY-NC-SA)
プラットフォームでの導入例・ウィキペディア– 2009年より導入。基本的に全
てのページの文章に適用される。 (CC BY-SA)・ Flickr – 初期から投稿者に CC ライセンスの付与
を奨励。 3億枚強の画像が CC ライセンス下で公開されている。
・ Google による震災記録の保存プロジェクト「未来へのキオク」 – CC ライセンスを選択可能に( YouTube や Picasa のインターフェースでサポート) (CC BY)
ミッション達成のため報道・言論系・ Pro Publica – 米国の調査報道機関。非営利
組織。ワシントンポストなどメジャーなメディアと組んだ調査報道で知られる
・ Global Voices-国際的ブログネットワーク
リミックス系・ウィキペディア 2009年に採用 (CC BY-SA) 元々は GFDL (GNU Free Documentation
License) だったが、 CC BY-SA との併用に
・初音ミク 2012年に採用 (CC BY-NC) ピアプロ・キャラクター・ライセンスだった
が、 CC でも利用可能に。
オープンデータの広がり・米国はパブリックドメイン(法律による)・オーストラリア、ニュージーランドは CC-
BY を採用・イギリスは Open Government License を策定、
CC-BY との互換性を担保・フランスは Licence Ouverte を策定、 CC-BY
との互換性を担保 CC-BY との互換性を担保
収益事業の場合・コンテンツは無料配信・複製許諾、ライブや
プレミアムグッズを収益源に・非営利利用を自由に、営利利用を収益源に・広告・宣伝から得られる増収と、逸失利益の
バランスがどこにあるか?※違法コピーの流通はアーティストの収益
にどう影響するか?
リミックスや再利用の盛んな分野
固有名詞のあるコミュニティ・ウィキペディア・初音ミクなど、ボーカロイドまわり
素材が充実・画像・写真系・音楽 ・教材 ( Open Education のひとつ) ・データも・・・?
ご清聴ありがとうございました!
Q&A ・討議 memo ・アーカイブ作成に必要な権利処理、孤児作品の法的扱い・チラシのアーカイブをつくるには・・・?テレビ番組などの権利処理が大変でビデオオンデマンドに差し支えるフィルムの劣化で失われる映画があっても、権利処理ができないので複製・保存ができな
い権利処理は予めしておくことが重要で、後から権利者を探して交渉するのは大変文化庁裁定制度はあまり使われていないし、利用希望者にとってのコストもかかる孤児著作物の扱いに関する法・制度改革は欧米でも議論・取り組みがある。日本の改革に加勢するというのがもうひとつのできること。
・ライセンスのつけかえ・のりかえ(ウィキペディアやオープンストリートマップ)の困難OSM の場合、データベース権をめぐる懸念から CC BY-SA -> ODbL へスイッチしたが、その
際に、連絡・合意がとれない投稿者からの貢献分は削除せざるを得なかった。そのときの教訓から、 OSM では、 OSM Foundation に権利を集約し、ライセンス移行を可能にした。
・観光ガイドの事例:オープンデータと第三者の権利の扱いコミュニティ形成による権利処理の容易化・円滑化が可能との指摘
Q&A ・討議 memo 2
・肖像権の扱い写真を撮影した際に、その写真について撮影者は
クリエイターとしての著作権を持つ。被写体になった人は肖像権(やパブリシティ権)を持つ。写真の利用の仕方によっては撮影者・被写体両方の
権利者から許諾を得る必要がある。CC ライセンスは撮影したクリエイターの著作権は
カバーしているが、被写体の権利は扱っていないので、被写体からの許諾は別途必要になる。
Q&A ・討議 memo 3 ・ CC4.0 の Sui Generis 権の扱い。 IODD で作成したライセンシングのあ
り方。データベース権: 50音順電話帳のように、事実を記載していて、取捨選択や配列にも創作性がないデータベースはいろいろある。こういうものは著作権法では保護していない。誰でも自由に使ってよい。
DB 作成には投資が必要になることもあり、インセンティブ確保などを考えて EU では DB 権を制定、 DB 制作者が、 DB の実質的な部分をコピーするなどの利用について独占的な権利を持つとした。著作物に対して著作権者が持つ権利と似ている。
DB 権をオープンライセンスで「扱っている」というのは、つまり、その権利に関する許諾が必要な人は、許諾を得られるようになっているということ。「扱っていない」場合は、著作権の許諾がない場合と同様、コピーができない、などの支障が生じる可能性がある。
Q&A ・討議 memo 4日本法には DB 権がないから、日本法が適用される文脈なら、ライセンスで
DB 権が扱われているかどうか、気にしなくてよさそう。欧州での利用者には、日本で作られたデータに対しても欧州の法律が適用
されることがあるかも知れない。その場合、 DB 権に関する許諾も含まれていないと、 DB を合法的に利用す
ることができない。CC-BY 2.1 JP ライセンスでは DB 権は扱っていないので、こういう利用者に
とっては不都合。 CC 4.0 では DB 権は対応しているので、こちらなら大丈夫。
※補足:後で調べたところ、そもそも実質的な投資をしていない人や、単に日本に住んでいる日本人などは EU の DB 権を持つことができない法制度になっているかも。それなら、ライセンス選びの際に気にする必要はなさそう。
<http://current.ndl.go.jp/ca1155>
DB 権を考えなければならない文脈( EU 加盟国とか)
DB 権を考えなくてもよい文脈(日本など)
DB 権を扱っていないライセンス:CC 2.1 JP など
利用者に不都合あり
OK
DB 権を扱っているライセンス:ODbL や CC 4.0
OK OK
データベースにつけるべきライセンスの考え方
データベースをどう扱えるか?
DB 権を扱っていないライセンス: CC 2.1 JPなど
データベースの実質的部分のコピーなどが許諾されていない場合がある。(どの国の法律が適用されるかによる。)
DB 権を扱っているライセンス: ODbL や CC 4.0
データベースの利用も許諾されている。
データベース権の扱いとその効果
ただし、前ページの補足も参照のこと。
Q&A ・討議 memo 5・古文書をスキャンしてCC-BY をつけるというのをどう考えるか?平面作品を正面から撮影して、作品をそのまま伝えようというのであれば、撮影者の創作性は認
められないという説をよく聞く。ただ、日本には判例がないはず。 →訂正:「版画写真事件」判決が参考になる。(Akanijiさんのご教示に感謝します。)スキャンした人は時間をかけてはいるが、著作権で保護できないとなると、スキャン・公開のイ
ンセンティブがないかも知れない。出版者隣接権について最近同様の議論がある。権利処理をする立場からすると、許諾をもらわなければならない権利者が増えるほど、アーカイビングや二次利用はやりにくくなる。
著作権法の保護が及ばない領域におけるイノベーションの研究も近年は存在する:手品のトリック(コミュニティのサンクションが機能している)、ファッションデザイン(真似されるからトップデザイナーのイノベーションが加速されているとの説がある)、スポーツの技巧(アメフトのフォーメーションなど)、など常に権利の創設が最適とは限らない。
著作権制度は一方で増改築を重ねた旅館のように複雑で、小説、映画、音楽レコード、放送、など様々なものを扱っている。これをシンプルにすることが重要、という論も一理ある。これだけ広い範囲の人が著作物を扱う時代に、100条以上もある法律は適さないのではないか。
一方、業界毎に最適な法制度が違う、という傾向もある。
Q&A ・討議 memo 6
著作物がどこで最初に発行されたか、などによって決まる著作物の「本国」は、その著作物の保護期間を考える上では重要。(ベルヌ条約の関係)ミュシャをめぐる件のように、その点をめぐるややこしい裁判例も。
※訂正:後で調べたらミュシャの裁判をめぐる争点は、本国ではなく、ミュシャの国籍でした。
日本を本国とする著作物の利用が世界中どこであっても、日本の法律によってのみ律されるわけではなく、文脈によってどの国の法律が適用されるかが決まる。どういう場合にどういう国の法律が適用されるかについては世界的な統一基準がない。全くのカオスではないが、よくわからない。
Q&A ・討議 memo 7・ウィキペディアのライセンシング CC-BY-SA 3.0 とGFDLのデュアルライセンシングから CC-BY-SA 4.0ある作品をGFDLのバージョンxで提供する際に、それ以降のバージョンでも利用可能にできる。CCではCC-BY-SA 3.0の下にあるものは3.0のまま。例えば3.0の文章にイラストを加えて絵本にした翻案物は、CC-BY-SA 4.0でリリースしてもいい、と書いてあるように思うかも知れないが、そうではなく、翻案物は文章部分は3.0、絵本部分は4.0で提供される。なので絵本を利用する人は3.0と4.0両方を読んで、遵守しなければならない。
この煩雑さについてはウィキメディアコミュニティからも懸念が表明され、4.0からはそういう負担を減らす形になった。
ウィキメディアコミュニティは、ライセンスの切り替えを希望し、ウィキメディア財団は、Free Software FoundationとCreative Commonsへ、ライセンス互換性確立を求めた。
FSFの対応は2つ ライセンスの改訂を通じて、ある一定時点までに、ウィキのようなサイトに投稿されたものは、そ
ういうサイトの運営者に当たる人の決定により、CC-BY-SAにつけかえてもいい、という条項の導入。→個別投稿者の合意を得なくてもライセンスを切り替えられる、という特殊な状況が成立した。
もうひとつは、ウィキメディア財団に対する要求として、ライセンス切り替えをせず、併用するようにというもの。財団側はこれを受け入れたので、切り替えではなく基本は併用になった。
この一連の議論や決定に4年ぐらいかかっている。
Q&A ・討議 memo 8・著作権法とクリエイティブ・コモンズの思想的な関係 Jack Valenti ( RIAA )の CC への賛辞:過激派の著作権廃止論とは違って CC はよい。
・解像度、ディテールと創作性・著作権の関係 雪月花事件。「同じ作品」とは何か。・グレーゾーンとイノベーションの関係ウィキペディアの利用者の感覚で考えるとグレーゾーンは、役に立た
ない。アマチュア・ボランティアとしてはあまりリスクをとりたくないので、明らかに合法なゾーンを増やして欲しい。
一方フェアユースについての議論からは、法制度の対応の遅れをグレーゾーンの広いフェアユースのような法制度で吸収し、技術環境にあった著作権の運用を可能にしていることが伺われる。検索エンジンのように、わかりやすい例もある。これはこれでとても重要。
Q&A ・討議 memo 9
・テレビ番組で新聞の紙面をそのまま使って議論しているものがあるが、あれをどう理解するか?時事の事件の報道に際しては、その事件に関する著作
物を複製することが OK とされている。誘拐事件や爆破テロについて犯行声明があった時に、
その複製など利用許諾を報道機関が求める必要はない。新聞でどのような報道があったか自体を報道するので
あればこの規定が援用できるかも?テレビを含めメディアはかなり権利処理が丁寧なので、
許諾をもらっているのかも?
懇親会での話題 memo (抄)・Citizen ScienceGalaxy Zoo からは学術論文になるような発見もある。アマチュアによる銀河の特徴判定が天文学者のものと遜色ないとの調査がある。・ウィキペディアの品質研究 薬学分野は副作用の記載が乏しいとの指摘があるが、他の分野ではかなりの調査で、正確性や網羅性の点で英語版ウィキペディアが優れているか、同等という結果が出る。比較対象は商業ベースのリファレンス資料や、研究者による研究者向けリファレンス資料
自分が専門とする分野のマスコミの記事はよく書けていると感じることは稀で、間違いが含まれているのが当たり前。
・Peer-grading (生徒同士の採点)教師による採点と比べて質が低いわけではないという調査結果がある。・脳波は著作物性を持つか? 脳波から、頭に浮かんだ著作物や肖像を再構成できるとしたら…? ・CCとオープン化CCはオープン化の推進者からは、半端な選択肢をサポートして足を引っ張る存在と見なされ
ることも。( NC やND要素のついたライセンスをサポートしている)CCは権利者やオープンデータの議論などではオープン化推進の過激派と見なされることも。