2017年9月 佐賀大学大学院工学系研究科システム創成科学専攻 亀...

91
地域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着の研究 2017 年 9 月 佐賀大学大学院工学系研究科システム創成科学専攻 亀山清美

Upload: others

Post on 22-May-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

地域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着の研究

2017 年 9 月

佐賀大学大学院工学系研究科システム創成科学専攻

亀山清美

目 次

第 1 章 研究の背景と目的

第 1 節 研究の背景と目的 ……………………………………………………….. 1

第 2 節 研究の方法 ……………………………………………………………….. 4

第 2 章 中学生の地域とのふれあいと地域愛着の現状

第 1 節 中学生の地域とのふれあいと地域愛着 ……………………………….. 5 第 1 項 地域とのふれあいと地域愛着の課題 ……………………………….. 5

第 2 項 調査概要と調査項目 ………………………………………………….. 5

第 2 節 調査結果の分析 ………………………………………………………… 11

第 1 項 調査結果 ……………………………………………………………… 11

第 2 項 分析と考察 …………………………………………………………… 12 <小括> …………………………………………………………………………… 14

第 3 章 自治基本条例と子どもの役割

第 1 節 自治基本条例の制定 …………………………………………………… 15

第 1 項 自治基本条例制定の背景 …………………………………………… 15

第 2 項 自治基本条例の制定状況 …………………………………………… 16

第 2 節 佐賀市まちづくり自治基本条例 ……………………………………… 17

第 1 項 自治基本条例検討会議による素案作成 …………………………… 17

第 2 項 佐賀市まちづくり自治基本条例の概要 …………………………… 18

第 3 節 自治基本条例における子どもに関する条項 ………………………… 19

第 1 項 子どもに関する条項の分析 ………………………………………… 19

第 2 項 子どもに関する条項の推移と広がりの分析 …………………….... 20

第 3 項 子どもに対する見方の分析 ………………………………………… 21

第 4 項 子どもに対する見方と子どもの役割 ……………………………… 32

<小括> …………………………………………………………………………… 33

第 4 章 コミュニティ・スクールにおける住民参加と協働

第 1 節 コミュニティ・スクール ……………………………………………… 34

第 1 項 コミュニティ・スクール制度 ……………………………………… 34

第 2 項 全国におけるコミュニティ・スクールの現状 …………………… 35

第 2 節 佐賀県におけるコミュニティ・スクール ………………………….. 36

第 1 項 佐賀県におけるコミュニティ・スクールの現状 ……………….. 36

第 2 項 赤松コミュニティ・スクールの組織と活動 …………………….. 38

第 3 項 赤松コミュニティ・スクールにおける住民参加と協働 ……….. 40

第 4 項 赤松・北川副・城南コミュニティ・スクール 3 校の

城南豊夢学園活動 …………………………………………………... 43

第 5 項 コミュニティ・スクールの成果と課題 ………………………….. 45

<小括> ………………………………………………………………………….. 46

第 5 章 住民参加と協働による子どもの育成

第1節 「子どもへのまなざし運動」における住民参加と協働 ………….. 48

第 1 項 佐賀市の共育の取り組み ………………………………………….. 48

第 2 項 「子どもへのまなざし運動」の展開 …………………………….. 48

第3項 住民参加と協働の効果と課題 …………………………………….. 50

第2節 地域教育コーディネーターの役割と課題 ………………………….. 54

第1項 地域教育コーディネーターが果たす役割 ……………………….. 54

第2項 地域教育コーディネーターの実践事例 ………………………….. 57

第3項 地域教育コーディネーターの成果と課題 ……………………….. 60

第3節 佐賀市の住民参加と協働による子どもの育成 …………………….. 69

<小括> ………………………………………………………………………….. 71

第 6 章 地域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着

第 1 節 中学生の意識調査 …………………………………………………….. 72

第 2 節 子どものまちづくり参加 …………………………………………….. 80

<小括> ………………………………………………………………………….. 81

第 7 章 まとめ ……………………………………………………... 82

引用・参考文献 ……………………………………………………... 86

1

第 1 章 研究の背景と目的

第 1 節 研究の背景と目的

近年、日本は少子高齢化が進展し、加えて人口減少社会が到来している。一

方で、行政のしくみが中央集権から地方分権へと移行し、自治体も財政に余裕

がない。また、核家族化や独り暮らしの増加に伴い近隣の人々のつながりが希

薄化し、地域を支える様々な機能が維持できない状況が顕在化しつつある。こ

のように、日本の地域社会をとりまく状況は大きく変化している。そのために、

この地域社会の現状を活性化させ、子どもや若者から高齢者までが、住み慣れ

た地域で生き生きとして暮らせるような地域づくりが、今、求められている。

地域活性化については、各地で様々な取り組みが行われている。事例として

最初に徳島県上勝町を取り上げる。上勝町は人口約 2 万人、その半分が高齢者

という高齢化の進んだ町である。上勝町は、かつて温州みかんの栽培が盛んで

あったが、1981(昭和 56)年の異常寒波で多大な被害を受け、深刻な状況に陥っ

た。その後、地域資源とマンパワーを最大限に活用した情報戦略型産業の振興、

いわゆる葉っぱビジネスで、高齢者の生きがいと元気を生み出している彩農業

の推進で活路を開いた。上勝町は、他にごみの 34 分別・自然エネルギー導入に

よる CO2削減・ブナ原生林の保全等、持続可能な地域社会づくりを目標に環境

政策も実施している(総務省, 2007)。

次に、大分県豊後高田市の昭和の町を事例として挙げる。大分県豊後高田市は

国東半島に位置し、域内には瀬戸内海国立公園及び国東半島県立自然公園を擁

し、豊かな自然と史跡などの歴史的文化が豊富な市である。豊後高田市の中心

商店街は、江戸時代から昭和 30 年代にかけて国東半島で一番栄えた町であった

が、時代の波に取り残され多くの商店街と同じように寂しい町になった。そこ

で、商店街が元気だった最後の時代、昭和 30 年代の元気・活気を甦らせようと、

2001(平成 13)年に地域の人々が豊後高田市観光まちづくり株式会社「昭和の町」

を立ち上げた。当初 7 店舗からスタートした認定店も現在 40 店舗ほどになり、

550m の通りには昭和時代の店が立ち並び、年間約 40 万人もの来訪者を迎える

商店街になっている。昭和の町には現代人が置き忘れている心の交流がある。

最後に、滋賀県長浜市の黒壁スクエアの事例を挙げる。黒壁は国立第百三十

銀行長浜支店が黒漆喰の壁であったことから黒壁銀行という愛称で市民に親し

まれていた。その後、建物は幾度かの変遷を経て、売却の憂き目に遭う。その

黒壁の保存・活用を目指して、長浜市や地元有志が株式会社黒壁を設立した。

黒壁保存のためには、地域の自治会や曳山祭りの関係者などの活動もあった。

1989(平成元)年、黒壁ガラス館を中心に、ガラスショップや工房、ギャラリー、

2

体験教室、レストランやカフェなどが点在する黒壁スクエアがオープンした。

この長浜・黒壁スクエアには、古い街並みの中の伝統、新しいアート、琵琶湖、

山々に囲まれた自然の豊かさ等を求めて多くの人々が訪れている。

地域活性化成功事例の中で上記 3 事例を取り上げたが、一方で商店街や中心

市街地の活性化、地域活性化は失敗に終わった事例が多い。その中で地域活性

化で成功した事例では、いくつかの共通点が見られる。歴史・文化・自然等の

地域特有の資源に価値をつけ、ブランド化し、経済効果を上げる。女性や若者

等の視点を取り入れ、幅広い関係者をまちづくりに取り込む。IT を活用して情

報を発信し、人を呼び込む仕掛けづくりをして集客増を図り経済効果を上げる。

また、中心になって地域活性化を推進する人材の存在等である。

従来、日本は若者の進学や就職等で大都市に人口が集中し、地方は少子高齢

化や人口減少が進展してきた。この現状を打開するために、各自治体は住まい・

子育て・仕事等に支援制度を設け、地方移住や定住のために地域独自の促進対

策を打ち出した結果、少しずつ地方移住も増えているが、都市への人口移動は

依然として継続している。若者の大都市圏への流出を減少させ、大都市圏から

故郷にもどるUターンや地方移住者等を増加させるためには、雇用の場の確保

と拡大のほかに、生活環境の安心・安全と子どもの地域に対する愛着の醸成が

必要だと考えられる。そこで、本研究においては、子どもの地域に対する愛着

が大都市圏への流出を抑制し、あるいは、大都市圏に出ても再びふるさとに戻

る一つの要因になると捉え、子どもの地域愛着の醸成を研究課題として設定し

た。そのためにも、中学生の祭りや行事への参加が地域愛着にいかなる効用を

もたらすかを明らかにして、子どもの地域愛着の醸成に役立たせたい。

地域に対する愛着意識についての研究は、これまで地理学における「場所」

の領域として研究が進められ、近年においては環境心理学や社会心理学で研究

がなされ、土木計画学においても様々な分野で研究が進められている。

地域愛着に関する先行研究は、鈴木・藤井(2007), 鈴木・藤井(2008a, 2008b,

2008c), 引地・青木 (2005), 引地ほか (2009) , 谷口ほか (2012) , 等、数多くな

されている。その中で、鈴木・藤井 (2007) によると、地域に対する愛着は、当

該地域内の個々の店舗に対する愛着によって影響を受けているという可能性を

確認したと述べている。同じく、鈴木・藤井 (2008a) は、移動途上において風

土との接触が多くなると、地域への選好が高まることが統計的に示されたとし

ている。また、鈴木・藤井 (2008b) は、消費行動の違いが地域愛着に与える影

響を検証することを目的に、香川県高松市・愛知県豊橋市・鹿児島県鹿児島市

で質問紙調査を実施し、消費行動においても人々と風土との関与が強いほど地

域への愛着が強くなるという仮説が支持されたとしている。そのうえで、理論

的に想定される因果仮説を支持することはできても証明することは不可能で、

3

今後の課題として消費行動と地域愛着の関係について、さらなる実証的知見を

重ねていく必要があるとしている。そのほかに、鈴木・藤井 (2008c) によると、

地域愛着が地域への協力行動に及ぼす影響に関する研究で、静岡県浜松市・愛

知県豊橋市の住民対象に質問紙調査を実施、分析の結果、地域愛着が高い人ほ

ど地域活動に熱心であることを明らかにしている。鈴木・藤井のほかに、引地・

青木 (2005) は、地域に対する愛着形成の心理過程を検討するために、全国の有

権者 3,000 名を対象に質問紙調査を行い、集団への肯定的な印象が愛着形成に

大きな影響を与えていることを明らかにしている。また、居住年数は愛着形成

に大きな影響を与えず、居住年数よりも集団に対する肯定的な印象の方が愛着

形成に大きな影響を与えていることが認められたとしている。さらに引地ほか

(2009) は、地域に対する愛着の形成過程を検討するため、全国の有権者 4,000

名を対象に質問紙調査を行い、地域の物理的環境や社会的環境に対する評価が

高い人ほど、地域に対する愛着が強く、社会的環境に対する評価は物理的環境

に対する評価に比べて、より愛着を高めうるという知見を得たとしている。ト

ゥアン (1988) は、人が自分の地域に抱く愛着の強さは、文化や時代によって異

なり、地域との結びつきがしっかりしていればいるほど愛着も強くなると述べ

ている。また、レルフ (1991) は、場所は人間の意識と体験に組み込まれていて、

意義のある場所と結びつきたいという強い気持ちで規格化された景観の没場所

性を克服するなら、場所が人間の経験を高めるような環境が生まれる可能を示

唆している。

これらの研究は、いずれも大人が研究対象で、子どもの地域に対する愛着に

ついての研究は、中野ほか (2013) の「地域が子どもを育む」と樋野ほか (2012)

の「子どもの地域活動の参加要因と健康関連要因の構造分析」以外に子どもに

関する地域愛着の研究は進んでいない。中野ほかは、この研究で、博多祇園山

笠に参加している子どもほど地域に対する愛着が強いことを明らかにしている。

この研究と本研究の違いは、中野ほかが博多祇園山笠という一つの大きな祭り

を対象に、参加した子どもの地域愛着を研究しているのに対し、本研究では、

子どもが住んでいる地域の行事全体を対象に、子どもの地域愛着を研究してい

ることに相違があり、そこに本研究の独自性がある。また、樋野ほかの研究で

は、子どもの地域活動の参加要因と健康関連要因の構造分析が主目的であるた

め、本研究とは研究目的を異にする。

以上のように、子どもの地域愛着に関する研究は進んでいないが、近年の社

会情勢から地方創生の重要さが課題とされている現在、地域で育っている子ど

もに地域愛着を育てることが、地域活性化に向けて重要であると考える。研究

目的は子どものあいさつや地域の祭り・行事への参加が地域愛着にいかなる効

用をもたらすかを明らかにすることである。一方で地域活性化には、子どもの

4

地域愛着の醸成と行政の施策に加えて地域住民の参加と協働が不可欠であると

考えた。地域活性化における住民参加と協働は、活動が広範囲にわたるため、

子どもとの関わりの面からの住民参加と協働に研究範囲を定め、研究テーマを

「地域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着の研究」とした。

第 2 節 研究の方法

上述の研究目的を解明するために、以下の研究方法を採用した。まず初めに、

地域で育っている子どもが、地域の大人や地域環境に対して、どのような感情

を持っているのかを調査し、地域との関わりと地域愛着の関連を調べる。次に、

地域の祭りや行事に参加している子どもに聞き取り調査を実施し、地域との関

わりが子どもに及ぼす内面的効果を調査・研究する。最後に、子どもの育成に

関わっている地域住民の参加と協働の状況から、活動の効果と課題を検証する。

特に、地域教育コーディネーターの役割については、聞き取り調査から活動の

実情を把握し、活動の効果と課題を検証する。以上のことから子どもの地域愛

着醸成の手掛かりを得て、子どもや若者から高齢者までが、住み慣れた地域で

生き生きと暮らせるような地域づくりに研究結果を役立たせたい。研究対象地

域として、佐賀市を事例に研究を進めることとする。

以下、本論文では次のような構成を設定した。

第 1 章では、研究の背景と目的について考察する。

第 2 章では、中学生の地域活動と地域愛着の実態を明らかにする。

第3章では、全国の自治基本条例を対象に、大人がどのように子どもに関わ

っているかを明らかにする。

第4章では、コミュニティ・スクール活動における住民参加と協働の成果と

課題について明らかにする。

第5章では、子どもへのまなざし運動や地域教育コーディネーターの活動を

通して住民参加と協働の成果と課題を明らかにする。

第6章では、中学生の地域活動と地域愛着の関連性を調査し、子どもの地域

愛着の醸成に向けての要因を明らかにし、実践的提言を行う。

第7章では、まとめを行う。

5

第 2 章 中学生の地域とのふれあいと地域愛着の現状

第 1 節 中学生の地域とのふれあいと地域愛着

第 1 項 地域とのふれあいと地域愛着の課題

第 2 章においては、中学生の地域活動と地域愛着の実態を明らかにするため

にアンケート調査を実施し、中学生の地域とのふれあいと地域愛着の課題につ

いて考察する。

先行研究において、園田 (2002) は、地域への愛着の定義として「人間と場所

との間の感情的なつながり」という定義がほとんどの研究のなかで見られると

述べ、鈴木・藤井 (2008a)も同じように「人間と場所との感情的なつながり」

としていることから、これに倣い、本研究における地域への愛着の定義は「人

間と場所との感情的なつながり」とする。

また、研究分析の対象となる地域については、鈴木・藤井 (2008a) は居住地

の小中学校の学区(校区)程度の広さとし、引地ほか (2009) は愛着が形成される

地域を「日常の生活行動圏」としている。本研究においては、佐賀市が地域活

動の単位としている「小学校区」を地域とする。

子どもの地域活動としては、小学生、中学生、高校生の活動が見られる。そ

の中で、最も心身ともに成長著しい時期で、社会に対する視野が広がり、未知

の世界に対して興味・関心を持つとされる中学生を研究対象に選定する。これ

らの前提を踏まえ、本研究においては、中学生の地域とのふれあいと地域愛着

の関係について調査研究をする。

先行研究において鈴木・藤井 (2008a, 2008b) は、風土という概念を和辻

(1948) の考え方を踏襲して、「<自然>と<人々>における様々な関わりの総体」

と定義した上で、個人と地域風土との関わりが多いほど、地域愛着が強いであ

ろうという仮説を提案している。さらに、家の近くの商店街や小規模専門店舗

での買い物行動が多くなると、買い物中のコミュニケーションの増加を通じて

地域愛着の醸成が促進される可能性も示している。この既往研究を背景に、子

どもが、自然環境や地域の人々と交わすあいさつや地域の祭りや行事への参加

が増加することにより地域愛着の醸成が促進される可能性も想定できる。

第 2 項 調査概要と調査項目

中学生の地域愛着がどのような形で生み出されるかを検証するため、本研究で

はアンケート調査を用いて中学生の意識を分析した。調査対象を佐賀市立東与賀

6

中学校 (以下、東与賀中学校とする) に選定した。選定理由の一つは、佐賀市内

の中学校で、1 小学校からのみの生徒が進学し、同じ風土のなかで生活し、祭り

や地域行事に触れる機会も同一と考えられるからである。二つには、シチメン

ソウまつりの観光ジュニアガイドや、東与賀ラムサールクラブ活動等、子ども

の地域活動が活発なことである。

東与賀中学校が所在する東与賀町は、2007 (平成 19) 年まで佐賀郡に属して

いたが、編入合併により同年 10月 1日付で佐賀市東与賀町となった。地理的に、

佐賀市の南端に位置しており、町の南部は有明海に面している。町域の大半が、

江戸時代から第二次世界大戦後まで続けられた干拓によって造成された土地で、

最高点でも海抜 2.8m しかない低平地で、起伏がほとんどない地形である。人家

は町の北部に多い。東与賀海岸にはシチメンソウが群生し、毎年、シチメンソ

ウが紅葉する晩秋にシチメンソウまつりが開催されている。この東与賀海岸は

2015 (平成 27) 年に国際的に重要な湿地として、ラムサール条約に登録された。

東与賀小学校区(以下、東与賀校区とする)では、公民館を中心に子どもに活動

の場を提供し、東与賀まちづくり協議会、小中学校 PTA、子どもクラブ等と協

力し「子どもへのまなざし運動」を推進している。具体的活動として、東与賀

公民館では、東与賀小学校 6 年生と東与賀中学生を対象に、シチメンソウまつ

りの観光ジュニアガイドの養成講座や、東与賀小学生を対象に佐賀市指定無形

民俗文化財東与賀銭太鼓の体験教室等を開催している。

以上のような背景を持つ東与賀中学校の全生徒を対象に、質問紙による「中

学生の地域活動と地域への愛着に関するアンケート調査」を依頼した。学校長

等の管理職への趣旨説明を行った後、学級ごとに教室で、担任がアンケート票

を配布して調査する方法を取った。調査は 2016 (平成 28) 年7月 22 日(木)帰り

の会、23 日(金) 朝の会のいずれかで実施した。アンケート票の回収数は 253 (1

年 83, 2 年 88, 3 年 82) であったが、未記入項目が含まれているアンケート票

22 を除外したため、分析サンプル数は 231 である。

7

中学生の地域活動と地域への愛着に関するアンケート

このアンケートは、まちづくり研究のためのアンケートです。中学生のみなさんが住んでいる

地域(東与賀校区)について、どのように考えているかをおたずねします。目的以外には使いませ

ん。名前を書く必要はありませんので、ありのままに答えてください。

佐賀大学大学院生 亀山清美

1. あなたの学年と性別で、当てはまる番号を〇で囲んでください。

1 1年男子 2 1年女子 3 2年男子 4 2年女子

5 3年男子 6 3年女子

2. あなたは、現在東与賀校区に何年間住んでいますか。(校区外に住んでいる人は 2 に記入 )

1 東与賀校区 (約 年間) 2 ( )校区 (約 年間)

3. あなたの地域(東与賀校区)での行動や意識についておたずねします。東与賀校区で行われる祭

りや行事(シチメンソウまつり、町民体育祭、干がた清掃活動など )について最も当てはまる

ところ(□)に、√ をつけてください。

1)あなたは、あなたの地域で

行われる祭りや行事に興

味がありますか。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

2)あなたは、あなたの地域で

行われる祭りや行事は必

要だと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

3)あなたは、過去一年間に地

域の祭りや行事に参加し

ましたか。

全然、参加しなかった どちらともいえない 多く参加した

□ □ □ □ □

4)あなたは、地域の祭りや行

事は熱心な人にまかせて

おけばよいと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

5)あなたは、地域の祭りや行

事の企画に参加したいと

思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

4. あなたの地域(東与賀校区)でのボランティア活動や意識についておたずねします。最も当ては

まるところに、√ をつけてください。

8

1)あなたは、子どもや高齢者が

困っているのを見たら手助

けしようと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

2)あなたは、ボランティア活動

に興味がありますか。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

3)あなたは、あなたの地域でボ

ランティア活動は必要だと

思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

4)あなたは、過去一年間に地域

でボランティア活動をしま

したか。

全然、活動しなかった どちらともいえない とても、活動した

□ □ □ □ □

5)あなたは、ボランティア活動

は熱心な人にまかせておけ

ばよいと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

6)あなたは、ボランティア活動

は地域のために役立つ活動

だと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

5. あなたが、地域(東与賀校区)の人々と交わすあいさつや意識についておたずねします。最も当

てはまるところに、√ をつけてください。

1)あなたは、地域の人々に親し

みを感じますか。

全然、感じない どちらともいえない とても、感じる

□ □ □ □ □

2)あなたは、家庭や学校であい

さつの指導を受けたことが

ありますか。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

3)あなたは、地域の人々にあい

さつをしますか。

全然、しない どちらともいえない とても、よくする

□ □ □ □ □

4)あなたは、友だちや地域の

人々にあいさつをしたとき

気持ちよいと感じますか。

全然、感じない どちらともいえない とても、感じる

□ □ □ □ □

5)あなたは、あいさつは必要な

ことだと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

9

6. あなたの地域(東与賀校区)に対する意識についておたずねします。最も当てはまるところに、

√ をつけてください。

1)あなたは、あなたの地域を大切

だと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

2)あなたは、地域にいつまでも変

わってほしくないものがありま

すか。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

3)あなたは、地域になくなってし

まうと悲しいものがあります

か。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

4)あなたは、地域に 愛 着

あいちゃく

を感じ

ていますか。

全然、感じない どちらともいえない とても、感じる

□ □ □ □ □

5)あなたは、地域に自分の居場所

がある気がしますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

6)あなたは、いま住んでいる地域

は、「自分のまち」という感じが

しますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

7)あなたは、この地域は、住みや

すいと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

8)あなたは、この地域に、ずっと

住み続けたいと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

9) あなたは、地域にお気に入りの

場所がありますか。

全然、ない どちらともいえない とても、ある

□ □ □ □ □

10)あなたは、この地域を歩くのは

気持ちよいと思いますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

11)あなたは、地域の雰囲気

ふんいき

や土地

がらが気に入っていますか。

全然、そう思わない どちらともいえない とても、そう思う

□ □ □ □ □

10

12)あなたは、この地域が好きです

か。

全然、好きでない どちらともいえない とても、好き

□ □ □ □ □

13)あなたは、この地域では、リラ

ックスできますか。

全然、できない どちらともいえない とても、できる

□ □ □ □ □

アンケートにご協力いただき、ありがとうございました。

表 2-1 アンケート調査票の概要

n=231

学年 1 年 78 2 年 77 3 年 76

性別 男子 114 女子 117

居住地 東与賀校区 228 その他の校区 3

居住年数 10 年以上 175 10 年未満 56

アンケート調査票の質問項目の概要

前記、アンケート票の質問項目は 31 項目である。質問内容は、回答者個人に

関する内容2項目、地域の祭りや行事に関する内容 5 項目、ボランティア活動

に関する内容 6 項目、あいさつに関する内容 5 項目、地域愛着に関する内容 13

項目で構成されている。地域愛着の 13 項目については、先行研究にて使用され

ている項目を用いた (鈴木・藤井, 2008b:193) 。

11

第2節 調査結果の分析

第 1 項 調査結果

アンケート票では、3.-1)から 6.-13)までは「全然そう思わない」から「とても

そう思う」まで、5 段階で回答を要請した。その回答に、「全然そう思わない」

1から「とてもそう思う」5までの数値を付与し、それらの測定値の平均と標

準偏差を求めた。その結果が、下記の表 2-2 である。

表 2-2 調査項目の平均と標準偏差

n=231

項 目 平 均 標準偏差 項 目 平 均 標準偏差

3.1) 祭りや行事に興味がある 3.23 1.12 5.5.) あいさつは必要だ 4.51 0.78

3.2) 祭りや行事は必要だと思う 3.74 1.09 6.1) 地域を大切だと思う 4.28 1.00

3.3 )過去一年間に祭りや行事参加 3.55 1.27 6.2) 変わってほしくない 3.65 1.25

3.4) 熱心な人に任せておけばよい 2.62 0.99 6.3) なくなると悲しい 3.52 1.30

3.5) 企画に参加したいと思う 3.25 1.12 6.4) 地域に愛着を感じる 3.58 1.14

4.1) 手助けしようと思う 4.24 0.82 6.5) 自分の居場所がある 3.97 1.06

4.2) ボランティア活動に興味ある 3.36 1.17 6.6) 自分のまちと感じる 3.85 1.11

4.3) ボランティア活動は必要だ 3.99 0.97 6.7) 地域は住みやすい 3.95 1.11

4.4) 過去一年間ボランティアした 3.05 1.43 6.8) ずっと住み続けたい 3.23 1.24

4.5) 熱心な人に任せておけばよい 2.59 1.03 6.9) お気に入りの場所 3.32 1.27

4.6) ボランティアは役立つ活動だ 4.15 0.97 6.10) 歩くのは気持ちよい 3.48 1.19

5.1) 地域の人々に親しみを感じる 3.70 1.04 6.11) 土地がらが気に入る 3.49 1.21

5.2) あいさつの指導を受けた 3.05 1.37 6.12) この地域が好き 3.77 1.14

5.3) 地域の人々にあいさつをする 4.23 0.95 6.13) リラックスできる 3.77 1.12

5.4) あいさつをした時気持ちよい 3.71 1.19

表 2-2 から、5.5)「あいさつは必要なことだと思う」や 5.3)「地域の人にあい

さつをする」の項目については、平均も高くばらつきも小さいことから、調査

対象の中学生のほとんどがあいさつは必要なことだと思い、あいさつをしてい

ることが判明した。ボランティア活動については、4.6)「役立つ活動だ」4.3)「必

要だ」と思いながらも、4.4)「過去一年間にボランティア活動をした」について

は、平均が低くばらつきが大きいことから、ボランティア活動は必要だと思い

ながらも実行できていない状況が分かる。一方、4.1)「子どもや高齢者が困って

いるのを見たら手助けしようと思う」は、平均が高くばらつきが小さいことか

12

ら、中学生のほとんどが手助けしようと思っていることが判明した。また、3.4)

「地域の祭りや行事は熱心な人にまかせておけばよい」や 4.5)「ボランティア

活動は熱心な人にまかせておけばよい」などとは思っていないことも判明した。

第 2 項 分析と考察

まず、あいさつをする行為及び、地域の祭りや行事参加が地域愛着に及ぼす

影響について探索するため、両項目間の相関分析を行った。結果は下記の通り

である。

表 2-3 あいさつや地域行事参加と地域愛着の相関係数

項 目 相関係数

地域の祭りや行事に興味がある一地域愛着 0.37

地域の祭りや行事は必要だと思う一地域愛着 0.41

過去一年間に祭りや行事に参加した一地域愛着 0.27

地域の人にあいさつをする一地域愛着 0.36

あいさつした時気持ちよいと感じる一地域愛着 0.44

あいさつは必要なことだと思う一地域愛着 0.40

あいさつについては、地域の人々にあいさつをする行為と地域愛着の間の相

関係数から、ある程度相関があると評価できる。しかし、地域の祭りや行事参

加については、設問で「過去一年間に」と期間を限定したことによる影響も否

めないが、相関があるとは言い難く、極めて弱い相関関係である。

次に、あいさつや地域活動参加の変化によって、地域風土との関わりに変化

が生じるであろうという因果関係を想定して、地域風土との接触を「人とのふ

れあい」及び、「自然とのふれあい」と設定した。あいさつや地域活動参加によ

って変化するのは、主として「人とのふれあい」との関連を予想した。「自然と

のふれあい」は、あいさつや地域活動参加以外の日常的な行動との関連が想定

されることを考慮して、東与賀中学生のアンケート調査で得られた値で共分散

構造分析を行った。地域愛着との相関が推定される観測変数との因果関係を分

析した結果が、図 2-1 パス図である。

13

図 2-1 パス図(東与賀中学生の地域愛着)

0.68

Q5-3,Q5-4,Q5-5 Q6-6

0.57 0.23 0.79

Q3-1,Q3-2,Q3-3

0.9 0.82

Q6-12 0.69

0.82

Q6-10

0.87

Q6-8

Q6-13

中学生の地域愛着は「人とのふれあい」と「自然とのふれあい」により形成

されると予測してパス図を考えたが、 標準化推定値から、「人とのふれあい」

<「自然とのふれあい」であり、「自然とのふれあい」は「地域愛着」に対して

強い影響を与え、「人とのふれあい」は影響が弱いことが判明した。なお「地域

愛着」は、「自分のまち」や「住み続けたい」という意思の大きな要因であるこ

とが判明した。

先行研究においては、社会的環境は物理的環境に比べて、愛着形成により強

い影響を与えることが示されたとしたうえで、地域によっては適合しない可能

性もあり、地域差を考慮にいれて愛着形成過程を検討する必要が示唆されてい

る (引地ほか, 2009:107-108) 。この指摘は、今回のアンケート調査に二つの側

面から適合している。一つは、東与賀町の地域性である。先述したように、ま

ちの南部は有明海に面しており干満の差が緩やかなことから、広大な東与賀干

潟には渡り鳥であるシギ・チドリ類が多く飛来し、四季を通じて野鳥を見るこ

あいさつ

地域行事参加

人とのふれあい

この地域が

好き

地域を歩くの

は気持ちよい

自分のまち

自然とのふれあい

リラックス

できる

住み続けたい

地域愛着

14

とができる。泥の干潟には、ムツゴロウ、ワラスボなどの有明海特有の生物も

生息している。また、東与賀干潟は国内最大のシチメンソウの群生地でもある。

このように豊かな自然環境のなかに東与賀中学生は生活していて、自然環境が

強く表れている。二つに、中学生は一日の大半を学校で過ごすため、人とのふ

れあいと地域愛着の間には強い関係は認められなかったと考えられる。

続いて佐賀市全体において、中学生の地域愛着と大人の地域愛着を比較して

みたい。2016 (平成 28) 年度佐賀市民意向調査から、地域愛着に関する項目を

抽出した。佐賀市民の地域への愛着は、91.4%が愛着ありで、約 9 割の市民が地

域に愛着をもっていることを示している。また、愛着を感じるのは、「自然環境、

気候などの風土」が 60.3%で最も高く、「地域などでの人と人とのつながり」は、

24.4%である (佐賀市市民意向調査, 2016:10-11) 。

この市民意向調査の結果と東与賀中学生の共分散構造分析結果には、共通点

がみられる。気候は温暖、大きな災害にも合わず、自然に恵まれた環境が共通

して地域愛着の主要因になっていることである。しかし、愛着を感じる点で、

若い世代が「思い出がある(多い)」や「生まれ故郷であること」の割合が高いこ

とは、自然環境だけでなく「人とのふれあい」も含めて地域愛着が醸成された

ものと考える。図 2-1 パス図が示すように「人とのふれあい」は地域愛着への

影響が弱いが、中学生であるという年齢を考慮すれば、愛着形成策が必要であ

ると考える。

<小括>

本章では、中学生の地域愛着がどのような形で生み出されるかを検証するた

め、アンケート調査を用いて中学生の意識を分析した。単一小学校から進学し

同じ風土のなかで生活していること、及び子どもの地域活動が活発なことが調

査対象を東与賀中学校の生徒に選定した理由である。東与賀中学生のアンケー

ト調査で得られたデータで共分散構造分析を行った結果、「自然とのふれあい」

は「地域愛着」に対して強い影響を与え、「人とのふれあい」は影響が弱いこと

が判明した。「人とのふれあい」>「自然とのふれあい」の予想に反したこの結

果については、東与賀町が豊かな自然環境に恵まれており中学生はその環境の

なかで生活していることと、中学生は一日の大半を学校内で過ごすため、人と

のふれあいの機会が少ないことに起因していると考える。このことから、中学

生であるという年齢を考慮すれば、愛着形成策が必要になる。愛着形成策につ

いては、第 5 章・第 6 章で明らかにしたい。

15

第 3 章 自治基本条例と子どもの役割

第 1 節 自治基本条例の制定

第 1 項 自治基本条例制定の背景

本章では、全国の自治基本条例を対象に、大人がどのように子どもに関わり

育てようとしているかについて、子どもに関する条項の内容分析・子どもに対

する見方の分析を行い、地域社会における子どもの役割を明らかにしたい。

近年、日本の社会は、人口減少、少子高齢化、生産人口の減少に伴う経済活

動の停滞等、課題が山積している。そのような状況のなかで、2000(平成 12)年

4 月 1 日施行の「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」

(以下、「地方分権一括法」という)により、地方分権の流れは加速してきた。明

治以来の中央政府から地方自治体に権限や財源が移譲され、地方自治の自由度

が拡大している。しかし、民主主義の定着により市民ニーズは多様化し、各自

治体は、財政的にも人材的にも、それらに対応できなくなっているのが現状で

ある。これに対応するため、自治基本条例が各地で制定されている。自治基本

条例がなぜ必要になっているのかを以下で検証してみたい。

神原 (2008) は、自治基本条例の今日的背景として、次の 3 点を挙げている。

一つに、自律責任の自治体運営である。地方分権一括法により、機関委任事務

や通達が廃止され、国と自治体の関係は上下・主従の関係から、対等・協力の

関係に変わり、地方自治体はその権限が増すと同時に、自己判断・自己責任が

求められることとなった。二つに政策資源の減少と少子高齢化に伴う市民ニー

ズの変化・増大のギャップの調整である。お金と人という政策資源が減少する

一方で、少子高齢化時代を迎えて、保健・医療・福祉の一体的推進による充実、

あるいは子育て環境の充実など、解決すべき公共課題は変化し多様化しながら

増えていく。この相反する二つの問題をどう調整していくか。市民合意を形成

する自治体運営と政策活動のルールづくりが不可欠になった。三つに補完性原

理による要請である。補完性の原理とは、主権者市民から発して、上昇型の政

府間関係をつくる考え方であり、国という中央政府には憲法という基本法があ

り、国際機構という国際政府には国連憲章という基本法がある。それならば、

当然、自治体にも基本法があるべきではないか。この自治体レベルの基本法が

自治基本条例ということになる。以上が自治基本条例の必要性の背景であると

神原は述べている。

これまで、明治以来の中央集権、特に第二次世界大戦後の政府は、政治、社

会、経済の全てを引き受け、国民は国や地方自治体に依存してきたといえる。

16

しかし、経済成長が順調であった時代には国民の要望に応じて対応できていた

政府も、経済が伸び悩み、生産人口の減少や少子高齢化による税収減少、社会

保障費増大等で大きな壁にぶつかっている。政府は、税の不足分を国債で補う

ため債務残高は増大する一方である。また、国民も全体より個人を重視する傾

向が強まり、そのために住民ニーズも多様化し、各自治体は財政的にも人材的

にもそれらに対応できなくなっているのが現状である。

更に、これまでは国会が法律を作り、各省庁に行政事務が発生したものを、

通達により都道府県知事から市町村長へと指示される機関委任事務体制であっ

たが、地方分権改革が行われて、この制度が廃止され、自治体で処理する事務

については原則として条例制定権が認められるようになった。

加えて、住民にまちづくりについての主体的な意識が芽生え、自分たちの地

域を住みよくするために行動する動きが活発化し、ボランティアや NPO 活動等

が盛んに行われるようになった。このような状況のなかで、行政・議会・市民

のそれぞれの役割や連携・協働のために、自治体独自のルールづくりが必要に

なった。これらが自治基本条例制定の必要とされる主な理由であると考える。

第 2 項 自治基本条例の制定状況

本論文では、特定地域において、住民生活に影響を及ぼす政策の形成や決定、

執行がなされる場合、その地域の住民自身が、直接その政策過程に参加して意

志表明を行うことを住民参加と定義する。また、住民とはその地域に居住する

者のほかに、その地域に通勤・通学している者等も含む広義の住民とし、市民

と同義語とする。協働については、課題を解決するためには、行政・事業者・

市民・市民活動団体が単独で課題解決に取り組むのではなく、それぞれが対等

な立場で、協力して課題解決に取り組むことが効果的であると理解されるよう

になっている。本論文では、同じ目的のために、対等の立場で協力して共に働

くことを、協働と定義する。

「自治基本条例」、あるいは「まちづくり基本条例」等の名称を持つ条例の先

駆けとなったのが、2001(平成 13)年 4 月1日施行の北海道ニセコ町「まちづく

り基本条例」である。翌年には、兵庫県宝塚市「まちづくり基本条例」、北海道

「行政基本条例」が制定、施行されている。その後、各地の地方自治体で自治

基本条例が制定され、NPO 法人公共政策研究所の「全国の自治基本条例一覧」

(更新日:2014 年 3 月 26 日)によれば、全国の地方自治体数 1741 のなかで、308

の地方自治体で自治基本条例が制定されている1。

1 更にその後も自治基本条例を制定する自治体が増え続け、同資料によれば、2016 年 6 月

12 日時点において 351 の自治体で自治基本条例が制定、施行され、制定率は約 2 割である。

17

第 2 節 佐賀市まちづくり自治基本条例

第 1 項 自治基本条例検討会議による素案作成

佐賀市の自治基本条例制定の背景も、前記と同様に、地方分権の進展・住民

意識の変化・新しい公共の時代を制定の背景としているが、そのほかに、二度

の合併により誕生した佐賀市においては、市民の一体化を高める必要性が背景

にあると見られる (佐賀市, 2013:4) 。

佐賀市における条例制定の取り組みは、公募委員を中心に構成された自治基

本条例検討会議で素案作成が行われた。素案作成までの過程は、下記の通りで

ある。

2012(平成 24)年 2 月、自治基本条例検討会議を設置した。検討会議の委員は

学識経験者 10 名と公募 25名の合計 35 名で構成した。委員の構成については、

下記の表 3-1 で分かるように、地域、年代、性別等、合併した町村に対する配

慮が見られる。

表 3-1 自治基本条例検討会議委員分布表

(単位:人)

地域別 旧佐賀 諸富 大和 富士 三瀬 川副 東与賀 久保田 市外 総計

性別 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 男 女 計

20 代以下 1 1 1 1 2 3

30 代 4 1 1 1 1 7 1 8

40 代 0 0 0

50 代 2 2 1 3 2 5

60 代 3 2 1 1 2 1 1 5 6 11

70 代以上 3 2 1 1 1 4 4 8

総計 12 7 1 0 2 2 1 0 0 2 2 2 0 1 1 1 1 0 20 15 35

2012(平成 24)年 2 月に第 1 回自治基本条例検討会議が開催され、2013(平成

25)年 6 月の最終回までに、全体会議 16 回、起草部会 9 回の会議が開催され検

討が重ねられてきた。条例案の検討状況は、自治基本条例についての講演や行

政運営の仕組み等についての研修を交えて、ワークショップにより班ごとに意

見の整理と発表→ワークショップでの意見を踏まえて起草部会で整理→起草部

会での整理内容を次回の全体会議へ報告するという流れで、条例素案の検討・

決定がなされた。

素案は 2013(平成 25)年 4 月に市長へ提言され、市報に掲載された後、市内 3

18

会場に於いて市民説明会が開催された。ほかに、市民やインターネット市政モ

ニターへのアンケート実施、意見公募手続(パブリックコメント)による意見聴

取、市民活動団体や事業者にも条例についての説明が実施され、周知・広報の

努力がなされた。同年 6 月に条例案を議会へ提出、一部修正のうえ、議決され、

佐賀市まちづくり自治基本条例として、2014(平成 26)年4月 1 日に施行された。

第 2 項 佐賀市まちづくり自治基本条例の概要

佐賀市まちづくり自治基本条例の構成は、以下のようになっている。

前文

第 1 章 総則

第2章 市民等の権利並びに市民等、議会及び市長の役割及び責務

第 3 章 情報共有、市民参加及び協働

第 4 章 市政運営

第 5 章 国及び他の地方公共団体との関係等

第 6 章 条例の検証

附則

前文は、「わたしたちが暮らす佐賀市は、脊振山系の緑豊かな山々、そこから

流れ出す嘉瀬川を抱く佐賀平野、有明海といった自然に恵まれたまちです。」に

始まり、「参加と協働によるまちづくりを進めるために、この条例を制定します。」

と結ばれている。全体として、分かりやすく親しみがもてるような表現となっ

ている。

条文のなかで、特に重要な条文は以下の三条文である。

(自治の基本理念)

第 4 条 安心して暮らし続けることができる地域社会を実現するため、市民等

が主体となり、まちづくりを行うことを自治の基本理念とする。

(まちづくりの基本原則)

第 5 条 次に掲げる事項をまちづくりの基本原則とする。

(1) 情報共有の原則

(2) 市民参加の原則

(3) 協働の原則

19

(子どもへのまなざし)

第 25 条 市民等、議会及び市長等は、総ての大人が未来を担う子どもの育成及

び健やかな成長に関心を持ち、主体的に関わる社会の実現を図るよう努めるも

のとする。

第 4 条で、市民等が主体のまちづくりを自治の基本理念とし、そのために必

要な情報共有、市民参加、協働を第 5 条でまちづくりの基本原則として掲げて

いる。また、第 25 条は、佐賀市が「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人

の役割に関する条例」を 2007(平成 19)年に制定し、市民総参加子ども育成運動

を展開していることを条文化したものである。

自治基本条例で議論の対象となる市民については、第 2 条第 1 号において、

ア 本市の区域内に住所を有する者

イ 本市の区域内に通勤し、又は通学する者

ウ 本市の区域内に不動産を有する者

と定義している。市民の定義については、素案の公表後のアンケートやパブリ

ックコメントにも、市民の定義が不明瞭、市民は住民に限定すべき等の意見が

寄せられている。これに対して佐賀市は、まちづくりの主体となる市民につい

ての定義であり、住民のみでなく、佐賀市を生活圏としている人や市民活動団

体・事業者もイベントへの参加、清掃活動等の地域活動への参加など、様々な

形でまちづくりへの関与がみられ、広く市民等と定義した基本的な考えを説明

している。本論文においても、市民の定義は佐賀市まちづくり自治基本条例と

同様とする。まちづくりについても、佐賀市まちづくり自治基本条例に倣って

公共の福祉を増進するために行われる活動の総体と定義する。

第 3 節 自治基本条例における子どもに関する条項

第 1 項 子どもに関する条項の分析

前項で述べたように、近年、日本の社会は人口減少、少子高齢化、生産人口

の減少等の課題が山積しているが、その中でも特に、出生率の低下による子ど

もの急激な減少は、日本の将来に関わる大きな問題である。しかも、子どもの

貧困、後を絶たない児童虐待等、子どもに関わる問題は深刻である。このよう

な状況において、それぞれの地域の未来を担い、ひいては日本の将来を築く子

どもたちのことが、自治基本条例のなかでどのように取り扱われているのか、

また、地域の人々は子どもにどのように関わろうとしているのかを第3節で探

っていきたい。

20

分析方法として、最初に、NPO 法人公共政策研究所「全国の自治基本条例一

覧」(2014 年 3 月 26 日時点)による 308 の自治体で制定されている自治基本条

例の内容分析を行い、子どもに関する条項が含まれている自治基本条例と、含

まれていない自治基本条例に分類し、そのデーターを基にして、子どもに関す

る条項の推移と広がりを調べた。

次に、子どもに関する条項が含まれている自治基本条例140の内容分析から、

子どもに対する見方が、以前とどのように変化しつつあるかを明らかにする。

第 2 項 子どもに関する条項の推移と広がりの分析

2001(平成 13))年施行の北海道ニセコ町「まちづくり基本条例」を先駆けとし

て、2014(平成 26)年 4 月までに 308 の自治体で自治基本条例が制定、施行され

ている。それら 308 の自治基本条例の内容に、子どもに関する条項が含まれて

いるか、含まれていないかを分析した。

まず、308 の自治基本条例の内容分析から、子ども関する条項が「ある」自治

基本条例と「ない」自治基本条例に分別した。その結果、子どもに関する条項

が「ある」自治基本条例が計 140、子どもに関する条項が「ない」自治基本条例

が計 168 と判明した。子どもに関する条項が「ある」「ない」を時系列にグラフ

化すると図 3-1 のようになる。

出典:NPO 法人公共政策研究所「全国の自治基本条例の施行状況」より筆者

作成

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

条例数

年度

図3-1 自治基本条例の制定数の推移

子どもに関する条項あり 子どもに関する条項なし

21

図 3-1 から、自治基本条例が制定され始めた 2001(平成 13)年度及び 2002(平

成 14)年度は条例数も少なく、子どもに関する条項のあり・なしを比較すること

には無理があるが、2003(平成 15)年度から 2006(平成平成 18)年度までは、子ど

もに関する条項がない自治基本条例があるものを上回っているといえる。次に、

2007(平成 19)年度から 2011(平成 23)年度になると、子どもに関する条項がない

自治基本条例とある自治基本条例は拮抗状態になり、2012(平成 24)年度以降に

なると、逆に子どもに関する条項がある自治基本条例が、ない自治基本条例を

上回っているという推移が判明した。

北海道ニセコ町で最初の自治基本条例が制定されて以来、すでに十数年が経

過している。国連の「児童の権利に関する条約」に日本が批准(1994 年)したこ

とを契機として、子どもに対する見方・考え方が変わり、子どもの人権の尊重、

保護の促進に関心が寄せられている。政府においては、幼児教育無償化に向け

た動きや子育て世代支援の予算増額等に見られるように、子どもの育成に目が

向けられてきた状況である。また、自治体においても、子どもの置かれた状況

の改善や子どもを権利の主体者とする視点から、施策の見直しが模索され始め

てきた。

図 3-1 の分析結果と、政府や自治体が子どもの育成に関心を寄せている現状

から、今後も、子どもに関する条項がある自治基本条例が多くなり、子どもへ

の関心が広がりを見せるだろうと予測される。

第 3 項 子どもに対する見方の分析

全国の自治体のうち、自治基本条例を制定している 2014 年時点での 308 の自

治体の自治基本条例のなかで、子どもに関する条項が入っている自治基本条例

140 の内容分析を行った結果、条項の内容を以下のように大別することができた。

① 子どもがまちづくりに参加・参画する内容のもの (66)

② 子どもが健やかに育つ環境を整える内容のもの (33)

③ 子どもがまちづくりに参加・参画する内容と、子どもが健やかに育つ環

境を整える内容の両方が入っているもの (35)

④ その他 (6)

これらの中で、④は少数であり多様化しているので除き、主となる①、②、

③について、子どもに関する条項の具体的な内容分析を行った。

22

① まちづくりに参加・参画する内容の、子どもに関する条項具体例

ニセコまちづくり基本条例

第 11 条 満 20 歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢にふさわしいま

ちづくりに参加する権利を有する。

2 町は前項の権利を保障するため、規則その他の規定により具体的な制度を設

けるものとする (二次見直し時に追加) 。

川西町まちづくり基本条例

第 10 条 満 20 歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢にふさわしいま

ちづくりに参画する権利を有する。

隠岐の島町まちづくり基本条例

第 12 条 町は、満 20 歳未満の青少年及び子供が、それぞれの年齢にふさわし

いまちづくりに参加できるように努めなければなりません。

三春町町民自治基本条例

第 9 条 町民、議会及び町は、子どものそれぞれの年齢にふさわしい参画によ

りまちづくりを進めることを原則とする。

② 子どもが健やかに育つ環境を整える内容の、子どもに関する条項具体例

大和市自治基本条例

第 11 条 市は、子どもが健やかに育つ環境をつくる責務を有する。

③ 「まちづくりに参加・参画する」と、「子どもが健やかに育つ環境を整える」

の両方が入っている内容の、子どもに関する条項具体例

須崎市自治基本条例

第 8 条 満 20 歳未満の青少年や子どもは、それぞれの年齢に応じたまちづくり

に参画する権利を有します。

2 市民、市議会及び市は、次の時代を担う子どもが健やかに育つ環境を作る責

務を有します。

以上のように、子どもに関する条項が入っている自治基本条例 140 のうち、

23

約半数が「満 20 歳未満の青少年及び子どもは、それぞれの年齢にふさわしいま

ちづくりに参加・参画できる」とした内容のものである。残りの約半数が、「子

どもが健やかに育つ環境を整える」ものと、「まちづくりに参加・参画できる」

「健やかに育つ環境」の両方が入っている自治基本条例であるという分析結果

であった。

この結果を基に、子どもに関する条項が入っている自治基本条例 140 の内容

を年度別・内容別にグラフ化したものが図3-2 である。

出典:NPO法人公共政策研究所「全国の自治基本条例の施行状況」より筆者

作成

図 3-2 から、以下のことが分かった。条項内容として最も多い「満 20 歳未満

の青少年及び子どもは、それぞれの年齢に応じてまちづくりに参加・参画でき

る」という条項内容は、2001(平成 13))年度のニセコ町まちづくり基本条例以来、

2002(平成 14)年度を除き 2014(平成 26)年度まで、自治基本条例の子どもに関す

る条項として継続して取り入れられている。また、「子どもが健やかに育つ環境

を整える」という条項内容も、ほぼ継続して取り入れられている。更に注目す

べきことは、2005(平成 17)年度から「まちづくりに参加・参画できる」と「健

やかに育つ環境を整える」の両方の条項内容が取り入れられた自治基本条例が

制定され始められたことである。

そこで、① 子どもがまちづくりに参加・参画する内容のもの、② 子どもが

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

図3-2 子どもに関する条項の内容(年度別・内容別)

その他 6

両方ある 35

健やかに育つ 33

参加できる 66

年度

条例数

24

健やかに育つ環境を整える内容のもの、③ 子どもがまちづくりに参加・参画す

る内容と、子どもが健やかに育つ環境を整える内容の両方が入っているもの 、

それぞれについて、子どもに対する見方及びその具体例について述べる。

① 「子どもがまちづくりに参加・参画する」内容のものとその具体例

子どもに関する条項が入っている自治基本条例140の内容分析を行った結果、

一番多かったのは、「子どもがまちづくりに参加・参画する」内容(66)であった。

「子どもがまちづくりに参加・参画できる」ということは、子どもを権利の

主体者とする見方であり、従来の子どもに対する見方とは大きく異なる見方で

ある。従来の日本の社会では、子どもを保護の客体として、また指導や管理の

対象として見る傾向が強かった。その子どもの見方を変えた背景についてはさ

まざま考えられるが、最も大きな影響を与えたのは国連の「児童の権利に関す

る条約」であると考える。

「児童の権利に関する条約」は、1989(平成元)年国連総会において採択され、

1990(平成 2)年に発効している。この条約では、子どもは保護や管理の客体では

なく、大人と同様に権利の主体であることを明確に示している。更に、これは

「宣言」ではなく「条約」であり、法的拘束力を持つため、各国政府はその条

約を尊重する責任を負うものである。日本は、1990(平成 2)年にこの条約に署名

し、「児童の権利に関する条約」を 1994(平成 6)年に発効している。

前述したように 2001(平成 13)年に、ニセコ町まちづくり基本条例が日本で最

初に制定された。木佐ほか(2012)によると、「本条 (第 11 条) は、1994(平成 6)

年に日本政府が批准している『子どもの権利条約 (児童の権利に関する条約の別

訳) 』を理念の基礎とし、その権利の具現化を図ったものである」と記されてい

る。第 11 条は、満 20 歳未満の町民のまちづくりに参加する権利の条項である。

このことからも、国連の「児童の権利に関する条約」が子どもに対する見方を

変えた大きな要因であるといえる。「児童の権利に関する条約」が子どもに対す

る見方を変え、自治基本条例のなかに謳われている「子どもに関する条項」の

内容に大きな影響を与えていることは否定できない。

そこで、更に深く、「児童の権利に関する条約」と自治基本条例のなかに謳わ

れている「子どもに関する条項」の内容との関係について論を進めたい。

「児童の権利に関する条約」のなかで「子どもがまちづくりに参加・参画で

きる」という内容と関係があるのは、第 12 条、第 13 条、第 14 条であるが、そ

のなかで最も関係が深いのは、永井ほか編 (2001) によると意見表明権とされる

第 12 条 1 項である。

25

児童の権利に関する条約

第 12 条

1 締結国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼす

すべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合

において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮され

るものとする。

2 このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の

手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若し

くは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。

この第 12 条 1 項では、児童を「自己の意見を形成する能力のある児童」とし

たうえで、「その児童に影響を及ぼす全ての事項について」意見表明権を認めて

いる。ニセコ町まちづくり基本条例では、大人たちによるまちづくりの成果を

子どもたちも直ちに享受するものであるとしている。そのため、ニセコ町では

子どもたちの声を大人たちが真剣に聞き、まちづくりに反映させる仕組みが今

後の日本には必要であるとして、子どもたちのまちづくり参加を条例のなかに

取り入れている。また、「児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相

応に考慮される」という第 12 条の条約内容は、自治基本条例のなかでは、子ど

もに関する条項の「それぞれの年齢に応じてまちづくりに参加・参画できる」

につながったと考えられる。

子どもがまちづくりに参加する具体例として、ニセコ町を挙げる。ニセコ町

まちづくり基本条例第 11 条ついて、神原 (2009:3) は、二十歳未満の青少年や

子どもに対する参加の権利の保障条項には、さまざまな主体の協調のよるまち

づくりを重んじる条例にふさわしく、その精神の堅固さが端的に表現されてい

ると述べている。この第 11 条については前記しているので省略する。子どもた

ちのまちづくりに参加する権利を保障する具体的な手だてとして、「子ども議会」

「一日町長」「子どもまちづくり委員会」などを実施している (木佐・逢坂編 ,

2003:151-153 ) 。

「子ども議会」は、小学生と中学生が半々ずつ議員となる模擬議会で、町へ

の質問や意見を出す場で実際の町議会と同じ一般質問形式で実施されている。

「子ども議会」の議員は、議会での質問を考える際、問題個所の現地調査をし

て写真を撮ったり、クラスメートにアンケート調査をしてデーターを集約した

り、リーダーシップを持って何かの問題に取り組む等の活動をしている。町の

担当者は、木佐ほか (2012:83) のなかで、子ども議会が始まって 10 年近く経過

26

し、その間、子どもたちは自ら問題を発見し考察する力を養ったと「子ども議

会」の成果を述べている。

「子どもまちづくり委員会」は、小学生まちづくり委員会と中学生まちづく

り委員会から成り、それぞれ 10 名程度の委員で構成された設置要綱に基づく町

長の諮問機関である。年に 4~5 回程度夏から秋にかけて集中して開催されてい

る。テーマは子どもたちが議論して決める方法と町長から具体的なテーマを諮

問する方法の 2 つの形式をとっている。2006(平成 18)年度のテーマは、諮問方

式を導入して「町の景観条例に指定する眺望点を初選定しよう」であったが、

子どもの力で初めて眺望点の指定が実現している。2007(平成 19)年度のテーマ

は「ふるさと給食」で、自分たちの給食メニューを子どもたちが考える企画で

ある。議論には、給食センターの主任栄養士が加わりサポートしている (木佐ほ

か, 2012:87-88-90) 。

このように、子どもの目線で自分の考え述べ、眺望点の指定・給食メニュー

の考案等の活動をすることによって、子どもたちに達成感や充実感を感じさせ

る工夫がなされている。小・中学生と比べてまちづくりに参加することが難し

いのは、高校生の参加である。これは国内のどの地域も同じであると考える。

ニセコ町の場合は、一日町長や高校のクラブ活動でニセコ町の食材を使ったレ

シピを考える等の取り組みをしている。

以上、子どもがまちづくりに参加する具体例としてニセコ町を挙げたが、子

どもがまちづくりに参加することにより、子どもに意欲や行動力が備わったの

ではないかと考える。木佐ほか (2012:93) のなかで、まちづくり活動に対する

評価として、子どもの達成感、やりがい、意識向上などの成果が、子どもに対

するアンケートで高く評価されている。このことは、地域社会において、子ど

も・若者に活躍できる場が設定されれば活動意欲も高まり、その結果、地域愛

着も生まれてくるのではないだろうか。

② 「子どもが健やかに育つ環境を整える」内容のものとその具体例

子どもに関する条項が入っている自治基本条例140の内容分析を行った結果、

約四分の一の 33 条例が、子どもが健やかに育つ環境を整える内容のものであっ

た。「子どもが健やかに育つ環境を整える」という条項内容は、2002(平成 14)

年度から継続して取り入れられている。これは、従来からの日本における子ど

もを保護の客体とする見方を踏襲したものともいえる。「児童の権利に関する条

約」のなかで、「子どもが健やかに育つ環境を整える」という子どもに関する条

項内容と関係が深いのは、生命権、生存・発達の確保の第 6 条である。第6条

は以下の 2 項から成っている。

27

児童の権利に関する条約

第 6 条

1 締結国は、すべての児童が生命に対する固有の権利を有することを認める。

2 締結国は、児童の生存及び発達を可能な最大限の範囲において確保する。

第 6 条 1 項「生命に対する固有の権利を有する」ことや、2 項「生存及び発達

の確保」という内容は、未来を託す子どもたちを育むための大人の役目であり、

「子どもが健やかに育つ環境を整える」という子どもに関する条項が自治基本

条例に加えられていることは、当然であると考える。また、「児童の権利に関す

る条約」の前文で、児童は、家庭や社会において必要な保護及び援助を与えら

れるべきであると示されていることからも、「子どもが健やかに育つ環境を整え

る」という条項内容は「児童の権利に関する条約」の前文とも関係が深いとい

える。

子どもが健やかに育つ環境を整える具体例として佐賀市を挙げる。佐賀市ま

ちづくり自治基本条例は 2013(平成 25)年に制定され、2014(平成 26)年4月 1 日

から施行されている条例である。この条例の中で子どもに関する条項は、第 25

条である。

佐賀市まちづくり自治基本条例

第 25 条 市民等、議会及び市長等は、全ての大人が未来を担う子どもの育成及

び健やかな成長に関心を持ち、主体的に関わる社会の実現を図るよう努めるも

のとする。

佐賀市まちづくり自治基本条例のなかに、子どもに関する条項が取り入れら

れたことについては、佐賀市の市民総参加子ども育成運動「子どもへのまなざ

し運動」の活動が背景になっている。佐賀市は、2007(平成 19)年に「佐賀市未

来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」を制定し、市民総参加

子ども育成運動を展開している。この条例の前文において、「佐賀市は未来を託

す子どもを育むため、すべての大人が子どもの育成に関心を持ち、主体的に子

どもの育成に関わる社会の実現をめざす」と記している。

具体的な活動の場として、家庭、地域、学校等、企業等を挙げ、共育の活動

を行っている。共育を「大人が子どもと共に育つ」という意味と、「大人どうし

が共に子どもを育てる」という二つを合わせた意味で使っている (田部井, 2010:

8-9) 。

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

になる。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

ができると考える。

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

実感や達成

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

になる。

(家庭の役割)第

(地域の役割)第

(企業等の役割)第

(学校等の役割)第

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

ができると考える。

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

実感や達成感を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

出典:イメージを基に筆者作成

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

(家庭の役割)第

習慣及び社会の規範を身に付けさせること。

(地域の役割)第

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

機会を提供すること。

(企業等の役割)第

の子ども育成に関する活動に協力すること。

(学校等の役割)第

及び仲間と共に学び合う姿勢を身に付けさせること。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

ができると考える。

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

学校

図 3-3 共育の関係図

出典:イメージを基に筆者作成

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

(家庭の役割)第 4 条(2)

習慣及び社会の規範を身に付けさせること。

(地域の役割)第 5 条(2)

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

機会を提供すること。

(企業等の役割)第 6 条(2)

の子ども育成に関する活動に協力すること。

(学校等の役割)第 7 条(2)

及び仲間と共に学び合う姿勢を身に付けさせること。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

共育学校等

28

共育の関係図

出典:イメージを基に筆者作成

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

(2) 家庭での生活リズムを確立し、子どもに基本的な生活

習慣及び社会の規範を身に付けさせること。

(2) 地域社会で行われる行事等への子どもの参加を促し、

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

(2) 地域及び学校等が行なう職場見学、就業体験その他

の子ども育成に関する活動に協力すること。

(2) 子どもへの指導方法を改善し、子どもに自ら学ぶ力

及び仲間と共に学び合う姿勢を身に付けさせること。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

共育

家庭

企業等

共育の関係図

出典:イメージを基に筆者作成

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

家庭での生活リズムを確立し、子どもに基本的な生活

習慣及び社会の規範を身に付けさせること。

地域社会で行われる行事等への子どもの参加を促し、

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

地域及び学校等が行なう職場見学、就業体験その他

の子ども育成に関する活動に協力すること。

子どもへの指導方法を改善し、子どもに自ら学ぶ力

及び仲間と共に学び合う姿勢を身に付けさせること。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

これらの活動で、子どもたちは地域の人々と触れ合いながら、仕事の苦労やや

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

地域

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

家庭での生活リズムを確立し、子どもに基本的な生活

地域社会で行われる行事等への子どもの参加を促し、

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

地域及び学校等が行なう職場見学、就業体験その他

子どもへの指導方法を改善し、子どもに自ら学ぶ力

及び仲間と共に学び合う姿勢を身に付けさせること。

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

て努力している。小学生の「キャリア教育事業」や「大豆 100 粒運動」、中学生

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

れ合いながら、仕事の苦労やや

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

家庭での生活リズムを確立し、子どもに基本的な生活

地域社会で行われる行事等への子どもの参加を促し、

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

地域及び学校等が行なう職場見学、就業体験その他

子どもへの指導方法を改善し、子どもに自ら学ぶ力

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

粒運動」、中学生

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

れ合いながら、仕事の苦労やや

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」のなかの

条文とまなざし運動の関係を、「自立の支援」について示すと以下のような役割

家庭での生活リズムを確立し、子どもに基本的な生活

地域社会で行われる行事等への子どもの参加を促し、

活躍の場を与え、かつその行動を称するとともに、多くの他者と関わりあえる

地域及び学校等が行なう職場見学、就業体験その他

子どもへの指導方法を改善し、子どもに自ら学ぶ力

これらの役割は、相互に協力して活動(協働)すれば更に効果を上げること

佐賀市は、大人が子どもの教育に関心を持ち、家庭・地域・企業等・学校等

が連携して「子どもが健やかに育つ環境を整える」ための地域社会構築に向け

粒運動」、中学生

の「職場体験活動」等の活動は、学校と家庭・地域・企業等の協働事例である。

れ合いながら、仕事の苦労やや

りがいなどを学ぶ。「キャリア教育事業」の活動の様子は、毎年テレビで放映さ

れているが、子どもたちの元気のよい声、生き生きと活動している様子から充

を得ていることが伝わってくる。また、東与賀小中学生のシチメ

29

ンソウまつりジュニアガイド・循誘小学生の佐賀城下ひなまつり子えびすガイ

ド・日新小学生の「日新小反射炉ガイド」・中川副小学生や西川副小学生の「佐

野常民記念館」子どもボランティアなど地域の特色を生かし、豊かな心を育む

体験活動をしている。

また、市内のコミュニティ・スクール実施校(赤松小・北川副小・城南中)

では、子どもたちが主体となり、小中合同で「クリーン大作戦」と称する地域

の清掃活動を行っている。2014(平成 26)年度は、11 月の「学校フリー参観デー」

の午後に、小中合同でこの清掃活動を実施している。城南中の生徒は、自分の

出身校である小学校に行き、それぞれ小学生と一緒に活動を行っている。両校

とも、小学 1・2 年生は校内の清掃活動を中学生と共に行い、小学 3 年生~6 年

生は中学生と共に校外に出て活動をしている。校外活動の場は、北川副小では、

校区内の公園や公民館等の公共施設のごみ拾い、赤松小では、鯱の門周辺とお

堀周り(3 年生)、県立美術館南側(4年生)、県立博物館南側(5年生)、県立

図書館南側と市村記念館周辺(6年生)を中学生と一緒になって、地域の美化

活動を行っている。この取り組みについては、安全確保のため地域の有志や保

護者の参加もあり、集めたごみの分別にも協力を得ている。分別後のごみは主

として佐賀市に依頼して処理するが、落ち葉は城内公園管理事務所の指導のも

とに、樹木の根もとに堆肥として処理されている。このような体験活動や地域

貢献活動は、子どもたちに郷土愛を育て、地域の一員としての自覚を持たせ、

地域愛着を育むのではないかと考える。

③ 「子どもがまちづくりに参加・参画する」内容と、「子どもが健やかに育つ

環境を整える」内容の両方が入っているものとその具体例

子どもに関する条項が入っている自治基本条例140の内容分析を行った結果、

約四分の一の 35 条例が、「子どもがまちづくりに参加・参画する」内容と、「子

どもが健やかに育つ環境を整える」内容の両方が入っていた。これは、2005(平

成 17)年度から子どもに関する条項の新たな傾向である。

「まちづくりに参加・参画できる」内容には、「それぞれの年齢にふさわしい」

とか「それぞれの年齢に応じた」という説明文が付記されているが、これは、

満 20 歳未満の青少年及び子どもは、成人した大人とは違い、人間として発達途

中であることを意味している。特に、子どもは成長・発達の過程にあることか

ら、「健やかに育つ環境を整える」ことが必要とされて両方入った自治基本条例

が制定され始めたと考えられる。

このように、「子どもがまちづくりに参加・参画する」「子どもが健やかに育

つ環境を整える」のどちらも「児童の権利に関する条約」と関係が深く、重要

30

な内容であるため、2005(平成 17)年度から「満 20 歳未満の青少年及び子どもは、

それぞれの年齢にふさわしいまちづくりに参加・参画する」と「子どもが健や

かに育つ環境を整える」の両方が入った自治基本条例が出てきたと考えられ、

子どもに対する見方の変化を知ることができる。

「まちづくりに参加・参画する」内容と「健やかに育つ環境を整える」内容

の両方が取り入れられた具体例として、日田市を挙げる。日田市自治基本条例

は 2013(平成 25)年に制定され、2014(平成 26)年4月 1 日から施行されている条

例である。この条例の中で子どもに関する条項は、第 8 条 1,2,3,4,5 項である。

日田市自治基本条例

第 8 条 子どもは、まちづくりに参加する権利を有するものとする。

2 子どもは、それぞれの年齢に応じて、まちづくりに参加するよう努めるもの

とする。

3 市民及び地域コミュニティは、子どもが未来を担う大事な存在であることを

認識し、地域における世代間交流や見守り活動等により、子どもの健全育成及

び安全の確保に努めるものとする。

4 市長等は、子どもがまちづくりに関して自らの意見を表明できる環境の整備

に努めるとともに、表明された意見をまちづくりに活用する仕組みの構築に努

めるものとする。

5 市長等は、咸宜園教育の理念を生かすとともに、教育環境の充実等を図り、

子どもの健全育成に努めるものとする。

日田市自治基本条例の逐条解説によれば、第 1 項では、子どもも「まちづく

り参加権」を持っていることを明らかにして、第2項では、子どもも地域のま

つりやボランティア活動に参加するなど、それぞれの年齢に応じたまちづくり

における役割があることを表わしている。第3項では、子どもが、将来の日田

市・日本、さらには世界で活躍するような人材になることを願い、市民や地域

コミュニティが子どもたちの健全育成や安全の確保に努めることを表わしてい

る。第4項では、子どもたちの考えも参考にしながらまちづくりを行うことが

必要と考え、そのための仕組みづくりに取り組むことを表わし、第5項では、

子どもの教育や健全育成について規定している。

このように、子どもに関する条項が、多項目にわたって謳われている自治基

本条例は数少ない。この背景には、広瀬淡窓の思想とその私塾「咸宜園」の教

育理念が、今も受け継がれているためと考える。

日田市は、少子高齢化が進行するなかで、子どもたちは日田市の将来を担う

「宝」であると考え、第8条に「子どもの権利等」を規定している。しかし、

31

自治基本条例が制定されて間もないことであり、今後、条例に基づいた取り組

みが開始される予定である。そのような状況のなかで、いち早く動きだした活

動もある。

2014(平成 26)年 4 月 1 日から施行された日田市自治基本条例第8条第2項関

係の活動として、「咸宜園子どもガイド」の活動を挙げることができる。日田市

では、毎年、「天領日田おひなまつり」が盛大に開催され、多くの観光客が訪れ

る。西日本新聞 (2015) によると、それらの観光客に対し、咸宜小学校の 5、6

年生 13 人が「咸宜園」跡地で歴史解説を行う活動を 2015(平成 27)年から始め

ている。「咸宜園」は広瀬淡窓が開いた江戸時代最大の私塾である。子どもたち

は、咸宜園教育研究センター職員の指導で事前学習会を受け、2015(平成 27)年

3 月 1 日と 15日に子どもガイドの活動を行った。このように、年齢に応じたま

ちづくり活動を始めている。

また、第 3 項の子どもの健全育成活動の事例として、市民有志で「絵本と音

楽で心を育てよう」を掲げ、エホント(ehonte)を結成、ジャズやクラシック、

邦楽の BGM のなかで、絵本の読み聞かせを体験するライブを行っている活動

を挙げることができる (熊谷, 2014:20) 。エホントは、人付き合いが希薄になっ

ている時代だからこそ、人が集まって何かを共有・共感することが大切だと考

え活動している。このグループは、2013(平成 25)年度から市との協働事業で、

統廃合された廃校の学校図書を活かすための配本サービスも実施している。こ

のように市民レベルでの活動も少しずつ動き出し、広がりを見せている。

第 5 項関係では、日田市役所に「こども未来室」という担当課が設置され、「ひ

たっ子」子育てガイドブックを発行し、子育て支援を行っている (日田市,

2012:1) 。また、日田市次世代育成支援行動計画の作成に際しても、少子化に係

わる現状分析のために、育児者の子育て意識や生活実態、保育サービスニーズ

量等のアンケート調査を実施し、次世代育成支援行動計画を作成している (日田

市, 2010:72-84) 。調査対象者は就学前児童を持つ保護者 1100 人と小学 1~6 年

生を持つ保護者 900 人である。調査内容は、前者に対しては、家族類型、保育

機能、子育て支援サービス、家庭・地域の子育て環境、情報提供、行政サービ

スへの期待等に関する設問で、郵送や保育園・幼稚園を通じて配布・回収し70.9%

の回収率である。後者に対しては、家族類型、放課後児童クラブ、子育て支援

サービス、家庭・地域の子育て環境、情報提供、行政サービスへの期待等に関

する設問のアンケート調査を小学校を通じて配布・回収して 85.8%の回収率を

上げている。この調査分析を基に次世代育成支援行動計画を作成していること

からも日田市役所の構えが窺える。行政や市民の今後の活動に期待したい。

32

第 4 項 子どもに対する見方と子どもの役割

これまで、自治基本条例に謳われている子どもに関する条項についての内容

を分析した結果、① 子どもがまちづくりに参加・参画する内容のもの、② 子

どもが健やかに育つ環境を整える内容のもの、③ 子どもがまちづくりに参加・

参画する内容と、子どもが健やかに育つ環境を整える内容の両方が入っている

もの 、この 3 パターンがあることが分かった。

特に、① 子どもがまちづくりに参加・参画する内容のものと、② 子どもが

健やかに育つ環境を整える内容のものとの違いは、子どもに対する見方の違い

である。① は子どもを権利の主体者とする新しい見方で、「それぞれの年齢に

応じてまちづくりに参加・参画できる」と考え、子どもをまちづくりに参加さ

せている。② は子どもを保護の客体とする従来の見方で、子どもは成長・発達

の過程にあることから、「健やかに育つ環境を整える」ことが必要である考え、

地域の大人が子どもの育成に関わっている。このように、① と ② の大きな違

いは子どもに対する見方の違いであることが分かった。③ は ①、②の両方共

に含む見方、考え方である。

この三つの違いは、それぞれの自治基本条例にも反映されてきた。しかし、「児

童の権利に関する条約」によって、子どもは保護や管理の客体ではなく、大人

と同様に権利の主体者であることが明確に示されて以来、子どもに対する見方

が、以前のような子どもは保護や管理の客体ではなく、権利の主体者であると

する新しい見方に変化しつつあることが分析の結果、明らかになった。自治基

本条例の浸透により、地域社会において子どもも活躍できる場が増加すれば、

活動意欲も高まり、その結果、自己肯定感も生まれると考える。また、前項、

小中合同の「クリーン大作戦」と称する地域清掃活動や「天領日田おひなまつ

り」開催時の「咸宜園子どもガイド」のような体験活動や地域貢献活動は、子

どもに郷土愛を育て、地域の一員としての自覚を持たせ、地域愛着を育むこと

につながる。これらのことから、子どもも大人と同様に、それぞれの年齢に応

じてまちづくりに参加・参画できるようにすることが、望ましいと考える。更

に、「自治基本条例」の先駆けとなった北海道ニセコ町では、「子どもまちづく

り委員会」が設置され、眺望点の選定やふるさと給食のメニュー考案に取り組

んでいる。以上の事例からも分かるように、子どもは従来のような保護の客体

ではなく、大人と同様な権利の主体者であり、それぞれの年齢に応じてまちづ

くりに参加し、地域の一員として活動することが望まれている。

第 1 章で述べたように、地域社会の現状から地域活性化が模索されている昨

今、子どもから高齢者までが、住み慣れた地域で生き生きととして暮らせるよ

うな地域づくりのためには、子どものまちづくり参加は少子高齢社会における

33

子どもの役割になってきていると考える。

<小括>

明治以来の中央集権から地方分権一括法の施行により、地方分権の流れは加

速し、地方自治体に権限や財源が移譲され、地方自治の自由度が拡大している。

このために、行政・議会・市民の役割や連携・協働のためのルールづくりが必

要になり、各地で自治基本条例が制定されてきた。その自治基本条例の中の子

どもに関する条項の内容を分析した結果、① 子どもがまちづくりに参加・参画

する内容のものが約半数、② 子どもが健やかに育つ環境を整える内容のものが

約四分の一、③ 両方の内容が入っているものが約四分の一、に大別できた。①

は子どもを権利の主体者とする新しい見方で、子どもをまちづくりに参加させ

ている。② は子どもを保護の客体とする従来からの見方で、健やかに育つ環境

を整えて子どもを育成している。① と ② の大きな違いは子どもに対する見方

の違いであることが分かった。「児童の権利に関する条約」によって子どもも権

利の主体者であることが明確に示されて以来、子どもに対する見方が新しい見

方に変化しつつあることが分析の結果、明らかになった。地域社会の現状に鑑

み、地域活性化のために子どもが年齢に応じてまちづくりに参加することが、

子どもの役割になってきていると考える。

34

第 4 章 コミュニティ・スクールにおける住民参加と協働

第 1 節 コミュニティ・スクール

第 1 項 コミュニティ・スクール制度

近年、学校が抱えている問題として、いじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、

モンスターペアレント等が挙げられるが、それらの問題が急増し深刻化したこ

とにより、学校だけでは対応できなくなり、保護者を含めた地域社会の教育力

が必要になっている。そのため、本章ではコミュニティ・スクール活動におけ

る住民参加と協働の成果と課題を明らかにする。

2004(平成 16)年 6 月、国会での地方教育行政の組織及び運営に関する法律の

改正に伴い、公立学校でのコミュニティ・スクール設置が可能となった。文部

科学省によると、コミュニティ・スクール制度とは、学校・保護者・地域がと

もに知恵を出し合い、一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支えてい

く地域とともにある学校づくりを進める仕組みのことであるとされている。文

部科学省は、地域とともにある学校づくりを進めていくために、① 学校と地域

の人々が、みんなでよく考え、話し合っていくこと(熟議)② 同じ目標に向か

って、一緒になって活動していくこと(協働)③ 校長を中心に、人をつなぎ、

学校の組織としての力を上手く引き出すこと(学校のマネジメント)を強く求

めている。コミュニティ・スクールの導入は、小・中学校はもちろん幼稚園や

高等学校などの地域の公立学校に導入可能で、導入するかどうかは、学校や地

域住民の意向等を踏まえて、学校を設置する地方公共団体の教育委員会が決定

することとなっている。文部科学省によれば、コミュニティ・スクールに指定

された学校には学校運営協議会の設置が義務付けられ、教育委員会から任命さ

れた保護者や地域住民が一定の権限と責任をもって、学校運営の基本方針を承

認したり、教育活動について意見を述べたりすることを通じて、学校の様々な

問題解決に参画していくことが仕組みとして保障されている。本論文において

も、学校運営協議会を設置した学校をコミュニティ・スクールと定義する。

第 2 節第 2 項で研究対象とする赤松コミュニティ・スクールの地域学校運営

協議会の設置については、佐賀市教育委員会の佐賀市立学校における地域学校

運営協議会の設置等に関する規則に則り設置されている。学校運営協議会の委

員は保護者・地域住民・教育委員会・校長のほかに、学校や地域の実情をふま

えて教育委員会で定めることになっている。また、委員の選出方法など具体的

な手続きについても教育委員会で定めるようになっているが、委員構成のバラ

ンス等にも配慮しつつ、熱意ある人材を選ぶことを文部科学省は期待している。

35

学校運営協議会の主な役割は、3つある。その一つ目は、校長の作成する学

校運営の基本方針の承認を行うことで、学校の重点目標や年間の学校行事計画

などの基本方針について、校長の説明を受け承認をする。二つ目は、学校運営

に関する意見を教育委員会又は校長に述べることで、例えば、あいさつの指導

に力を入れて欲しい、地域に協力を求めて欲しい、学校にエアコンを入れて欲

しい、学校予算を増やして欲しいなどの教育目標や地域との連携、施設・設備

に関する要望、予算要求などについての意見を述べることができる。三つ目は、

教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べることで、例えば、若手の先生、

体育が得意な先生が必要、A 校長や B 先生に次年度も残って欲しい、など学校

の教育目標にかなった教職員の配置に関する意見を述べることができる。この

役割は、地域や学校の実情に応じて多様な形で運用され、人事に関する意見を

述べない学校運営協議会もある。また、人事に関する意見については、このほ

かにも、意見を出す前に校長の意見を聞いている例や、校長を経由して教育委

員会に意見を述べている例など、地域の実情に応じた多様な運用が見られる。

第 2 項 全国におけるコミュニティ・スクールの現状

コミュニティ・スクールの指定状況は、2014(平成 26)年 4 月 1 日現在、全国

で 1919 校が指定されている。学校種別の内訳は、幼稚園 94 園、小学校 1240

校、中学校 565 校、高等学校 10 校、特別支援学校 10 校で、42 都道府県、187

市町村にわたっている。

公立学校の教育の中心は義務教育の小学校・中学校であり、この 9 年間は日

本の教育の根幹をなすものである。この考えに立って、コミュニティ・スクー

ルの公立小・中学校における普及状況について検討する。文部科学省が毎年行

っている調査に「学校基本調査」がある。2014(平成 26)年度の「学校基本調査」

によると、コミュニティ・スクール指定状況は表 4-1 のようになる。

表 4-1 コミュニティ・スクールの指定状況(2014 年)

全国の公立学校数 コミュニティ・スクールの指定校数(%)

小学校 20,558 1240 (6.03 %)

中学校 9,707 565 (5.82 %)

計 30,265 1805 (5.96 %) 「学校基本調査」による

36

2014(平成 26)年度は前年度より公立小中学校の指定校が 314 校増加している

が、制度開始から 10 年が経過しても、指定校比率が約 6%で制度が浸透してい

るとは言い難い状況である。制度が浸透しない背景には、コミュニティ・スク

ールの認知度の低さの他に、新たな業務負担により教員の多忙化と捉える現場

の根強い懸念や、公共を担う地域住民の当事者意識の希薄などが指摘される。

その他に、学校評議員制度、学校地域支援本部事業、放課後子ども教室等、類

似制度や事業もあり、それらの施策内容とコミュニティ・スクールが重なる部

分もあり、コミュニティ・スクール制度の選択を拒んでいることも考えられる。

第 2 節 佐賀県におけるコミュニティ・スクール

第 1 項 佐賀県におけるコミュニティ・スクールの現状

近年、地域住民や保護者等が学校づくりに参画するコミュニティ・スクール

の指定校が、佐賀県内の公立小中学校において増加している。佐賀県では、

2005(平成 17)年に佐賀市立赤松小学校(以下、赤松小学校とする)が初のコミュニ

ティ・スクールを試行し、2007(平成 19)年 4 月 1 日に佐賀市教育委員会からコ

ミュニティ・スクールの指定を受けた。続けて、同年 4 月 19 日に嬉野市立嬉野

中学校が嬉野市教育委員会からコミュニティ・スクール指定を受け、この両校

が佐賀県におけるコミュニティ・スクールの先駆けとなった。

その後、表 4-2 のように県内の指定校は徐々にではあるが増加し、2013(平成

25)年 4 月 1 日に 11 校(小学校 4 校・中学校 7 校)であった指定校は、2014(平成

26)年 4 月 1 日には小学校 11 校と中学校 2 校が指定を受け、合計 24 校となり倍

増した。この増加については、嬉野市教育委員会が市内の小中学校の全てを指

定したことが要因として挙げられる。しかし、地域別にみると、県内指定校は

図 4-2 に見られるように嬉野市と佐賀市、武雄市、唐津市に偏在している。

表 4-2 佐賀県内コミュニティ・スクール指定状況

注)新たに指定を受けた学校数

「文部科学省コミュニティ・スクール指定状況」 資料より筆者作成 2014

年 度 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 累計

小 学 校 1 0 1 0 0 1 1 11 15

中 学 校 1 0 1 1 0 3 1 2 9

累 計 2 2 4 5 5 9 11 24 24

37

図 4-1 佐賀県内コミュニティ・スクール指定状況の変化

「文部科学省コミュニティ・スクール指定状況」 資料より筆者作成 2014

図 4-2 地域別コミュニティ・スクール指定状況

「文部科学省コミュニティ・スクール指定状況」 資料より筆者作成 2014

38

第 2 項 赤松コミュニティ・スクールの組織と活動

このような状況のなかで、本論では赤松小学校が実施している赤松コミュニ

ティ・スクールの活動を中心に分析し、地域の参加と協働について考察する。

赤松小学校を研究対象校に選んだ理由は、赤松小学校が県内最初のコミュニテ

ィ・スクール指定校であることによる。

赤松小学校の概要は以下のとおりである。1908 年 4 月開校で 2014 年現在、

創立 106 年目の長い歴史を持つ学校である。学校規模は中規模校で、児童数 606

人、学級数 22 の学校(2014 年 5 月 1 日現在)である。校区は堀に囲まれた佐賀城

内、鍋島藩士の屋敷のあった赤松町、鬼丸町、中の館町等からなり、学校は佐

賀城本丸跡に所在していた。その後、城跡に佐賀城本丸歴史館の建設が予定さ

れたため、堀を挟んで南側にあった佐賀市立城南中学校の跡地に移転し現在に

至っている。校区内には県の行政機関、文化施設、歴史的建造物も数多く所在

する文教地区である。幕末・明治維新期に活躍した大隈重信・大木高任・島義

勇・副島種臣は赤松校区の出身で、このことは地域住民の誇りであり住民の教

育に対する関心も高い。

赤松コミュニティ・スクールは学校教育目標として「ふるさと赤松を大切に

する、夢をもった子どもの育成」を掲げ、地域コミュニティとともに創り上げ

る地域運営型学校を目指している (赤松小学校, 2012 ) 。地域学校運営協議会導

入の背景には、① 学校の教育活動に地域・保護者の力を効率的・組織的に生か

したい。② 地域・保護者の声を建設的かつ責任のあるものに変容させたい。③

ふるさと赤松を大切にする子を育てたい。という学校側の願いがある (石橋,

2012 : 8) 。赤松コミュニティ・スクール協議会の委員については、佐賀市教育

委員会前記規則第 4 条に則り、学識経験者 1 名、地域住民 7 名、保護者 2 名、

学校教職員 2 名、合計 12 名の委員で構成され、佐賀市教育委員会が任命してい

る。他に、事務局としてコミュニティ主幹教諭、教務主任、事務主幹、教育委

員会の職員が会議に参加して、2011(平成 23)年度は 7 回地域学校運営協議会が

開催されている。

赤松コミュニティ・スクールの組織は、第 1 回全国コミュニティ・スクール

研究大会 in 春日市での発表資料と発表者のコミュニティ主幹教諭との面談によ

れば、安全推進・学校教育・地域連携の 3 コミュニティ委員会で構成され、そ

の下部組織として 9 つのコミュニティがあり、常時活動している。

39

図 4-3 赤松コミュニティ・スクール組織図

(第 1 回全国コミュニティ・スクール研究大会 2012) 引用

各コミュニティの具体的活動は以下のとおりである。

・安全コミュニティ----毎日の子どもの安全な下校支援。「交通安全教室」開催

時の指導。春の遠足の交差点における安全誘導。水難避

難訓練時の保護者の車の誘導等。メンバーは交通安全協

会、交通安全指導員、青少年センター、青少年健全育成

会、少年補導員、自治会、子どもお守り隊。

・ふれあいコミュニティ----1 年生の生活科「昔遊び」の講師。毎日、下校する

子どもにあいさつや言葉かけをする「3 時に会いましょう」

活動。メンバーは老人会、子どもの祖父母等。

・赤ずきんの会コミュニティ----常時活動として金曜日の朝の時間の読み語り。

その他、「1 年生歓迎お話会」や「6 年生卒業読書会」、図

書館祭りでの読み語り等。

赤松コミュニティ

・スクール

組織図

安全推進コミュニティ委員会

安全コミュニティ

児童防犯・安全

ふれあいコミュニティ

生活科の講師

学校教育コミュニティ委員会

赤ずきんの会コミュニティ

読み語り

グローバルコミュニティ

外国語活動の学習支援

しゃちの門コミュニティ

郷土科への学習支援

クラブコミュニティ

クラブ活動の指導

はすのみコミュニティ

学習の補助・支援

地域連携コミュニティ委員会

環境コミュニテ ィ

はすの再生

花いっぱいコミュニティ

栽培活動・花や植物の世話

赤松コミュニティ・スクール組織図

40

・グローバルコミュニティ----学級担任や ALT の外国語活動の学習支援。英語に

よる読み聞かせ。

・しゃちの門コミュニティ----地域のことを学ぶ「きょうど科」(地域学習)を総

合的な学習の中に位置付け、大隈重信生家や大隈記念館、

佐賀城本丸歴史館で学ぶ 3 年生の学習支援。

・クラブコミュニティ----卓球クラブ、音楽クラブ、お茶・生け花クラブ、佐賀

城太鼓クラブ、よさこいクラブ等の指導。

・はすのみコミュニティ----入学後の 1 年生の給食指導の手伝い。1 年生の学習

支援。春の遠足や佐賀インターナショナルバルーンフェ

スタ等の校外学習の引率補助。校内掲示板の掲示物制作。

年 2 回実施の「赤松漢字検定」の解答チェック。

・環境コミュニティ----環境に関わる教育活動支援で、はすの再生活動や公園の

樹木について調べる活動の指導と支援。メンバーは博物

館職員、公園管理事務所、地域の専門家等。

・花いっぱいコミュニティ----学校敷地内を南北に通る道路は佐賀市道で、学校

ではここを「あいさつ通り」とよび、児童会の栽培委員

会と花いっぱいコミュニティ・メンバーが四季色とりど

りの花を栽培して飾る活動。

以上の活動内容分析から、以下のことが分かった。

赤松コミュニティ・スクール協議会の委員には、保護者の他に地域住民 7 名が

任命されており、各コミュニティにも、保護者の他に自治会、老人会等地域の

各種団体が教育支援に参加している。また、校区内に所在する博物館や城内公

園管理事務所の職員が参加し、地域の総力を挙げての学校支援である。これが

正に住民参加と協働であるといえる。住民参加と協働の成果と課題については、

次項でふれる。

第 3 項 赤松コミュニティ・スクールにおける住民参加と協働

赤松小学校の地域学校運営協議会導入の背景は前記の通りであるが、1 年半の

試行期間を経て、正式に佐賀県初のコミュニティ・スクールとして指定を受け

て 2014 年現在で 7 年目になる。この期間に学校と地域は住民参加と協働の関係

作りに努力し、成果を上げてきている。赤松小学校コミュニティ・スクール主

幹教諭との面談・聞き取り調査(2014 年 5 月 12 日)によると、活動成果は以下の

ようになっている。

41

1. コミュニティ・スクールの活動を支えるメンバー確保のために、新入児保護

者説明会、入学式、PTA 総会、フリー参観デー等でコミュニティ・スクールに

ついて説明し、チラシ配布をするほかに、地域住民に対しては、学校長発行の

「学校だより」の回覧により広報活動に努力している。その結果、メンバー数

の変化をみると発足当時、学生ボランティアを含め 85 名であったメンバーが、

2013(平成 25)年のメンバーは学生ボランティア 48 名を加えて 161 名、2014(平

成 26)年には学生ボランティア 36 名を加えて 154 名となり、地域住民の理解を

得て参加メンバーが増加していることが分かる。

2. 子どもの地域行事への参加促進のためのしくみを、赤松公民館と赤松小学校

が考案している。子どもが校区や町区の地域行事に参加すると「赤松わくわく

カード」と名付けられたカードにスタンプが 1 個押され、スタンプ 2 個で赤松

小学校図書館のプラス貸し出し券がもらえるしくみで、2011年度は目標一人 1.3

に対し実績一人平均 2.6 であり、子どもの行事参加に効果があったといえる。

3. 2 の活動の発展として、子どもに地域行事協力ボランティアとして参加を

促す工夫を公民館と学校がシステム化している。一例として毎年、佐賀城本丸

歴史館で開催される赤松公民館主催の「赤松ふれあいコンサート」の行事があ

る。会場で出演者に感謝の花束を贈呈する子どもを地域行事協力ボランティア

として募集をかけ、活動する子どもに委嘱状や感謝状を出している。このこと

により、地域の大人に承認されたということが子どもの活動意欲を高めている。

4. 地域住民対象に、赤松公民館と赤松小学校共催でパソコン教室を開催してい

る。会場は赤松小学校パソコン教室で、講師は赤松小学校職員が担当している。

この行事により学校と無縁だった地域住民が学校に来る機会を得るとともに、

講師の学校職員も子どもと違う相手で雰囲気が新鮮だったと担当教諭は感想を

述べていた。このパソコン教室開催により、地域住民と学校職員の交流の場が

でき、相互関係づくりが形成された。

5. 赤松公民館主催「赤松子どもまつり」で、地元講師に交じって赤松小学校職

員が落語講座に参加した。これは、学校職員が地域行事に初めて参加した事例

であり、学校職員と地域住民の協働である。

課題としては、地域住民の意識向上が挙げられる。コミュニティ・スクール

の活動を支えている地域住民のメンバーには、ふれあいコミュニティのメンバ

ーのように高齢者も含まれており、常に補充の必要がある。学校は、メンバー

確保のためにあらゆる機会をとらえて広報活動に努力しなければならない状況

である。2007(平成 19)年度に、交通安全指導員・青少年育成会・老人クラブ・

佐賀大学・地域ボランティア等がメンバーとなり 85 名で出発した赤松コミュニ

ティ・スクールも、2012(平成 24)年度には 134 名のメンバーが登録されている

42

が、その増加分は、佐賀大学・西九州大学・佐賀女子短期大学の学生の参加に

よるものである。コミュニティ・スクールの趣旨から考えても、さらなる地域

住民の理解と参加が望まれるところである。

一方、学生ボランティアの参加には、ボランティア保険や交通費等の経費が

必要になる。ボランティア保険は学生ボランティアだけでなく、地域ボランテ

ィアにも必要である。

表 4-3 2015(平成 27)年度 赤松コミュニティ・ファンド事業収支決算

収入

2014(平成 26)年度からの繰越金 589,688

PTA より 60,000

利子 118

計 649,808 円

支出

コミュニティ関係(花苗、材料、エプロン代等) 44,599

ボランティア活動保険等 84,180

ボランティア通信費(切手、はがき) 15,182

ボランティア給食代 7,050

社会福祉協議会会費 5,000

赤松わくわくカード 30,000

計 186,011 円

収支決算 649,808 円-186,011 円=463,795 円

残金 463,795 円

表 4-3 にみられるように赤松コミュニティ・スクールの活動は、毎年、赤松

小学校 PTA から 60,000 円、及び二年に一回開催されるバザー収益金 120,000

円の収入によって賄われ、不足分は繰越金で補われている。2016(平成 28)年度

赤松コミュニティ・ファンド予算も前記の赤松小学校 PTA から 60,000 円及び、

バザー収益金 120,000 円を主な収入源として予算が作成されている。しかし、

不足分を繰越金で補っているため、創立 100 周年行事の基金 100 万円も年々、

繰越金として減少している状況である。このような活動資金の確保もコミュニ

ティ・スクール継続のための課題である。

43

第 4 項 赤松・北川副・城南コミュニティ・スクール 3 校の城南豊

夢学園活動

赤松小学校の子どもたちの多くは、佐賀市立城南中学校(以下、城南中学校と

いう)に進学する。赤松小学校に隣接している佐賀市立北川副小学校(以下、北川

副小学校という)の子どもたちも、同じように多くは城南中学校に進学する。こ

れら 2 校は兄弟校である。北川副小学校と城南中学校は共に 2009(平成 21)年 4

月 1 日に佐賀市教育委員会からコミュニティ・スクールの指定を受け活動して

いる。この 2 校について以下、簡単に紹介する。

北川副小学校は 1885 年創立の歴史ある学校で、児童数 536 人、学級数 20 の

学校(2014 年 5 月 1 日現在)である。地域学校運営協議会の構成は、地域代表

9 人、保護者代表 2 人、学校代表 2 人、行政 1 人の 14 人の委員で構成されてい

る。

北川副コミュニティ・スクールは、「地域に根ざした学校づくり」「保護者・

地域の声を大切に」「学校・地域・行政の連携強化」を目指している。コミュニ

ティ・スクールの活動は、「学びの応援団」(5 年生の総合的な学習で、田植えや

稲刈り体験学習の指導・支援等)、「生活安全応援団」(朝の登校指導等)、「心の

応援団」(朝の読み聞かせ等)、「ふれあい応援団」(家庭科のミシン練習支援等)

の 4 つの応援団から構成され、その下部組織として「学校はげまし応援団」「学

習づくり応援団」「総合的な応援団」「体づくり応援団」「安全活動応援団」「シ

ニア応援団」「読み聞かせ応援団」「ちょボラ応援団」「クラブ・金管応援団」「ふ

れあい応援団」があり、「応援団」として活動している。

この校区は、これまでも地域諸団体の活動が活発に行われていた地域で、子

どものためのボランティア活動も様々な形で行われていた。コミュニティ・ス

クール指定後は、それらを土台にして、更に組織的・継続的に支援・応援活動

が続けられている。この多様な体験活動を通して、地域住民と子どもたちの絆

が生まれていることが成果である。

城南中学校は生徒数 523 人、学級数 18 の学校(2014 年 5 月 1 日現在)であ

る。城南中コミュニティ・スクールは「地域と共生・協働する子どもを通わせ

たい中学校 No.1 を目指して」活動している。構成は 3 部会からなり、「学力向

上部」(学習会、教育相談室指導支援、特別支援学級指導支援等)、「心育て・生

活力向上部」(福祉体験・職場体験、読み語りボランティア、あいさつ運動、安

全・夜間パトロール等)「地域活動支援部」(城南コミュニティクリーン大作戦、

小中連携、地域ボランティア活動等)の活動が行われている。

城南コミュニティ・スクールは、活動の効果として、学校運営に地域住民や

44

保護者が参画することにより、地域の潜在的な力を学校教育に生かすことが可

能になることや、生徒の基本的な生活習慣・家庭学習・豊かな心の育成などが、

地域・保護者と一体となって行うことができることを挙げている。

城南コミュニティ・スクールの課題としては、学校ボランティアの不足が挙

げられている。学習支援(技術・家庭科の木工指導や編み物・パッチワークの

指導支援、学習会の指導支援等)、学校環境支援(樹木の手入れ、花づくり等)、

放課後活動支援(美術・書写・コーラス等)のボランティアが現状では不足し

ている。これは、小学校に比べて中学校は学習内容も高度になり、専門的な知

識・技術がないと指導支援に躊躇することや、小学校・中学校のどちらもボラ

ンティアを必要としているため、結果的に不足の状況が生じると考えられる。

今後は、更なる地域の理解と地域人材の掘り起し、地域住民の積極的な参加が

望まれるところである。

赤松小学校・北川副小学校・城南中学校の 3 校は、コミュニティ・スクール

「城南豊夢学園」として連携・協働の活動を行っている。「城南豊夢学園コミュ

ニティ・スクール」は「ふるさとを大切にし、心豊かで、夢を育む城南っ子」

をスローガン掲げ活動している。活動内容は「学力向上プロジェクト」「まなざ

しプロジェクト」「地域交流プロジェクト」の 3 プロジェクトに分かれている。

「学力向上プロジェクト」では、具体的な活動として「城南豊夢学園ドリーム

スクール」と名付けて、小学校 5・6 年生が中学校へ出かけ、部活動体験や学校

説明会を受けている。また、中学校教師による小学校への出前授業や教職員の 3

校合同の研修会開催等も実施されている。このような小中学校の交流活動は、

中学校入学時の子どもの不安や不登校の要因を取り除くことに効果があると考

えられる。「まなざしプロジェクト」では、具体的な活動として、中学生出前あ

いさつ運動(写真 4-1)がある。これは、朝、自分が卒業した小学校の校門に立っ

て、登校してくる小学生にあいさつをする活動である。また、地域ぐるみの見

守り活動が中学校に新設された「父親委員会」によって行われている。「地域交

流プロジェクト」では、3 校合同の「城南豊夢学園クリーン大作戦」(写真 4-2)

を行い、地域の美化活動に貢献している。このような活動は、子どもたちの郷

土を愛する心を育てると共に、異年齢の子どもたちに交流の機会を与え、少子

化で欠けている子ども同士の信頼や尊敬を育む機会にもなっている。その他に、

城南校区ラジオ体操会や各種地域行事への参加と地域貢献活動を行っている。

「城南豊夢学園」の活動は、2 つの小学校間の連携・交流を深めたことや小中

学校間の連携・交流を飛躍的に進めたことで高く評価できる活動である。また、

学校間のみならず、子どもたちの体験活動や地域行事支援のボランティア活動

に、参加がスムーズになった。

45

写真 4-1 出前あいさつ運動 写真 4-2 城南豊夢学園クリーン大作戦

赤松小学校校門前

城南豊夢学園パンフレットより 城南豊夢学園パンフレットより

第 5 項 コミュニティ・スクールの成果と課題

前項で述べたように、コミュニティ・スクールは多くの成果をあげているが、

課題も残されている。本項では、それらの総括を試みる。

コミュニティ・スクールの成果としてまず挙げられるのは、これまで閉鎖的

であった学校が開かれた学校へと変化したことである。いじめ、不登校、校内

暴力、学級崩壊、モンスターペアレント等、抱えきれないほどの問題で悩む学

校の現状を、情報公開して地域住民と共に解決しようとした。赤松小学校では、

学校運営協議会制度導入の背景の一つに、「地域、保護者の声を建設的かつ責任

のあるものに変容させたい」ことを挙げていた。それが、コミュニティ・スク

ールとして活動を始めてから 5 年後には、「保護者・地域からの建設的な意見が

増加し、苦情が減少した。」「子どもの地域に対する思いが醸成されつつある。」

「地域と学校の相互関係作りへ向かっている。」(石橋, 2012:24)に変容している。

これらの変容が、コミュニティ・スクールの効果である。また、城南中学校で

も、学校運営に保護者や地域住民が参画することにより、地域の潜在的な力を

学校教育に生かすことが可能になることや、子どもの基本的な生活習慣・家庭

学習・豊かな心の育成などを、保護者・地域と一体となって行うことができる

ことを効果として挙げている。

コミュニティ・スクールの他の成果として、子どもや学校職員が地域に関心

を持ち、地域行事に参加することによる相互作用の効果がある。地域に援助し

てもらうだけでなく、学校側も地域のために役立とうとする姿勢が生まれてき

ている。少子高齢化の日本の現状では、災害時には中学生が貢献した実例もあ

る。地域の美化活動「城南豊夢学園クリーン大作戦」も大いに期待される活動

46

である。コミュニティ・スクールの活動が始まってから、中学生のボランティ

ア派遣や地域行事への参加がスムーズになったとされる。このように、学校(子

ども・教職員)と地域(地域住民・保護者)が相互関係を深めることができる

ようになったのも、大きな効果である。

最後に、赤松小学校・北川副小学校・城南中学校のコミュニティ・スクール

の活動で注目すべきは、公民館との連携活動である。公民館は校区自治会の拠

点であり、地域の情報が集約できている。そういう意味で、地域の各種団体の

活動状況も把握でき、コーディネーターの機能も果たすことができる機関であ

る。上記、三校は公民館との連携活動により、子どもの育成に地域住民の参加

を得て、地域各種団体の協働により、コミュニティ・スクール活動を容易にし

ている。

コミュニティ・スクールの課題として、一つ目に効果的な情報発信方法の検

討がある。コミュニティ・スクールも指定を受けて年数が経過すると、学校支

援のボランティアが固定化し、新しいメンバーに広がらない傾向がみられる。

指定を受けた当初は、地域の各種団体に呼び掛けてメンバーを募集し支援を受

けることができても、常に情報発信を工夫しておかなければメンバーの高齢化

等のために、必要な人数を確保できない状況になる可能性がある。学校は機会

をとらえてコミュニティ・スクールへの理解を得るための情報発信を心掛ける

必要がある。このことについては、コミュニティ・スクール担当の主幹教諭や

管理職のみならず、教職員全員で取り組む必要があると考える。また、高校生・

大学生等の若い人たちの支援、協力を得る工夫も必要であろう。地域の各種団

体も、形骸化しつつある現状では、地域住民個々のコミュニティ・スクーに対

する理解を深め、活動意欲を喚起することが必要で、そのための効果的な情報

発信を工夫すべきである。

課題の二つ目は、活動資金の問題である。ボランティアでの活動といっても、

ボランティア保険や諸経費が必要になる。国から指定校に交付される金額はわ

ずかである。赤松小学校では、創立 100 周年行事の基金百万円を基に「赤松コ

ミュニティファンド」が立ち上げられ、ファンド事業運営委員会が運営してい

る。ボランティア保険、活動に係る費用、会議費、連絡用消耗品等はファンド

から支出している。ファンドの収入源はPTAからの支援で、バザーの益金やPTA

会費からの補助である。このように活動資金が確保されることによって、コミ

ュニティ活動の継続が可能になるのである。

<小括>

本章では、地域住民が次の世代を担う子どもに対して、どのように関わろう

としているかを、コミュニティ・スクールにおける住民参加と協働の視点を通

47

して考察した。近年、学校はいじめ、不登校、校内暴力、学級崩壊、モンスタ

ーペアレント等、多くの問題を抱え、更に、これらの問題が急増・深刻化した

ことにより学校だけでは対応できず、保護者を含めた地域社会の教育力が必要

になっている。佐賀県で、最初にコミュニティ・スクールの指定を受けた赤松

小学校は、学校運営協議会制度導入の背景に「保護者・地域の声を建設的かつ

責任のあるものに変容させたい」ことを挙げていた。それが、コミュニティ・

スクールとして活動を始めてから 5 年後には、「保護者・地域からの建設的な意

見が増加し、苦情が減少した」に変容している。これまで閉鎖的であった学校

がコミュニティ・スクールの指定を受けて、子どもに関わる問題を地域住民と

共に解決しょうとしたことがコミュニティ・スクールの始まりである。コミュ

ニティ・スクール活動に地域住民が参加し、子どもの教育支援を続けているう

ちに、子どもの地域行事参加が増加し、地域に対する関心を深め、ボランティ

ア活動がスムーズになったが、コミュニティ・スクール活動だけでは子どもの

地域愛着醸成には限界があり、愛着形成策が必要である。一方、学校運営に保

護者や地域住民が参画することにより、地域の潜在的な力を学校教育に生かす

ことが可能になることや、子どもの基本的な生活習慣・家庭学習・豊かな心の

育成などを、保護者や地域と一体となって行うことができることがコミュニテ

ィ・スクールの成果である。

48

第 5 章 住民参加と協働による子どもの育成

第 1 節 「子どもへのまなざし運動」における住民参加と協働

第 1 項 佐賀市の共育の取り組み

本章では、子どもへのまなざし運動や地域コーディネーターの活動を通して

住民参加と協働による子どもの育成の効果と課題を明らかにしたい。近年、地

方都市である佐賀市においても、人口減少、少子高齢化、核家族化等の進展に

伴い、近隣の人々の人間関係が希薄化し地域の絆が失われつつある。このよう

な状況のなかで育つ子どもたちに、市民が関心を寄せ協働による子どもの育成

を図るために、「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」

を 2007(平成 19)年に制定し、2008(平成 20)年度からこの条例に基づく市民総参

加子ども育成運動「子どもへのまなざし運動」を展開している。

まなざし運動の基礎を築いたのは、佐賀市の前教育長、田部井洋文である。

田部井 (2010:8-9) の「子どもの教育を市民と共に考え創る」という「共育」の

考えが「子どもへのまなざし運動」につながったのである。「子どもへのまなざ

し運動」は、個人や地域の各種団体、会社・事業所等が一体となり小学校区を

単位として活動が展開されている。そのなかで、特徴的なことは各校区内に点

在するコンビニまでが協力会員になっていることである。佐賀市は、このよう

な市民全体の活動を「子どもへのまなざし運動」推進の目的で支援している。

支援策の一つが市内の小中学校に配置されている地域教育コーディネーターで

ある。

第 2 項 「子どもへのまなざし運動」の展開

佐賀市では、小学校区ごとに公民館を中心に「子どもへのまなざし運動」を

展開している。本項では、その活動事例として循誘小学校の「えびすでまちづ

くり」を取り上げ、循誘小学校区 (以下、循誘校区とする) 内で行われている「恵

比須 DE まちづくりネットワーク」の活動状況の聞き取り、及び、循誘小学校 3

年生の総合学習の実施状況を調査し、「学校」「家庭」「地域」の協働がどのよう

に行われているのかを分析する。

活動の中心となっている「恵比須 DE まちづくりネットワーク」は、えびす

像を活かしたまちづくりのために 2003(平成 15)年に結成された団体である。市

内に 800 体以上あるえびす像を活かしたまちづくりを行うことにより、中心市

街地の集客増を図り、まちの賑わいを創出するための活動を行っている。具体

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

2014(

学習については、教師の他に「恵比須

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

11 月の学習後、

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

発展として、

写真

出典:恵比須

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

で制作する。子どもが考えた文字札

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「子えびすガイド」活動は

4,5,6

ている。

須 DE

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

2014(平成 26)年度は

学習については、教師の他に「恵比須

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の学習後、

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

発展として、3

写真 5-1 総合学習

出典:恵比須

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

で制作する。子どもが考えた文字札

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「子えびすガイド」活動は

4,5,6 年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

ている。子えびすガイドの募集及び養成講座については、

DE まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

年度は 11 月に校区

学習については、教師の他に「恵比須

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の学習後、12 月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

3 年生は 2

総合学習

出典:恵比須 DE まちづくりネットワーク

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

で制作する。子どもが考えた文字札

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「子えびすガイド」活動は

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

子えびすガイドの募集及び養成講座については、

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

月に校区内の歴史やえびす像について学んでいる。この

学習については、教師の他に「恵比須

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

2 年生対象に「えびす発表会

まちづくりネットワーク

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

で制作する。子どもが考えた文字札

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「子えびすガイド」活動は「えびすはかせになろう」の学習をした

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

子えびすガイドの募集及び養成講座については、

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、

49

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

内の歴史やえびす像について学んでいる。この

学習については、教師の他に「恵比須 DE まちづくりネットワーク」関係者が

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

年生対象に「えびす発表会

写真

出典:恵比須

まちづくりネットワーク 出典:恵比須

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

で制作する。子どもが考えた文字札(写真 5-2)

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「えびすはかせになろう」の学習をした

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

子えびすガイドの募集及び養成講座については、

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

催、えびす像の調査・広報・宣伝活動等がある。

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

内の歴史やえびす像について学んでいる。この

まちづくりネットワーク」関係者が

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この

年生対象に「えびす発表会」で成果を示している。

写真 5-2

出典:恵比須 DE

出典:恵比須

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

2)の選考については、

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「えびすはかせになろう」の学習をした

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

子えびすガイドの募集及び養成講座については、

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構

ついて学習した後、ガイド台本作りやリハーサル等、5

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

循誘小学校では、校区内にえびす像が多いことに着目して、3 年生が総合学習

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

内の歴史やえびす像について学んでいる。この

まちづくりネットワーク」関係者が

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

ている。これは、学校・地域・家庭の協働事例である。この 2 回の総合学習の

」で成果を示している。

「えびすカルタ」

DE まちづくりネットワーク

出典:恵比須 DE まちづくりネットワ

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

の選考については、

主として関わっているが、これは循誘公民館と「恵比須 DE まちづくりネット

ワーク」が支援をしている「家庭」「地域」の協働事例である。

「えびすはかせになろう」の学習をした

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

子えびすガイドの募集及び養成講座については、循誘公民館と「恵比

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

子えびすガイドの養成は、大人のガイド見学やガイドの心構え・言葉づかいに

5 回の事前学習を行いガイ

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

年生が総合学習

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

内の歴史やえびす像について学んでいる。この

まちづくりネットワーク」関係者が

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

回の総合学習の

」で成果を示している。

「えびすカルタ」

まちづくりネットワーク

まちづくりネットワ

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

の選考については、循誘公民館が

まちづくりネット

「えびすはかせになろう」の学習をした 3 年生が、

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

循誘公民館と「恵比

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

え・言葉づかいに

回の事前学習を行いガイ

的な活動として、えびす巡りツアーの企画・案内、えびすに関するイベント開

年生が総合学習

の時間に「えびすはかせになろう」というテーマで郷土学習を展開しており、

内の歴史やえびす像について学んでいる。この

まちづくりネットワーク」関係者が

指導に加わっている。学校では、事前にえびすについて知りたいことの調査を

行い、それを基に当日の授業展開について関係者と連絡・協議を行っている。

月の総合学習の時間には、校区内のえびす像めぐりを行って

いるが、この学習についてもネットワークの人々や保護者が指導補助に参加し

回の総合学習の

」で成果を示している。

まちづくりネットワーク

また、えびす関係では「えびすカルタ」の制作と「子えびすガイド」活動が

ある。「えびすカルタ」の文字札は子どもが考え、大人が絵札を考える共同作業

循誘公民館が

まちづくりネット

年生が、

年生になると佐賀城下ひなまつり期間に「子えびすガイド」の活動を行っ

循誘公民館と「恵比

まちづくりネットワーク」の共催事業で、循誘小学校も支援している。

え・言葉づかいに

回の事前学習を行いガイ

50

ドとしてデビューしている。これも「学校」「家庭」「地域」の協働事例である。

この事例で見られるように、佐賀市内では公民館を中心にして、住民参加と協

働による子どもの育成、及びまちづくりが行われている。

第 3 項 住民参加と協働の効果と課題

佐賀市では、小学校区ごとに公民館を中心に「子どもへのまなざし運動」を

展開しているが、この「子どもへのまなざし運動」の活動が、条例制定後、市

民にどのような広がりを見せているのか、また、「子どもへのまなざし運動」の

効果が、子どもたちの心にどのような変化を及ぼしているかを本項で明らかに

する。

最初に、佐賀市教育委員会が毎年実施している調査のなかに、佐賀市教育政

策市民満足度調査がある。調査目的は、「第二次佐賀市教育基本計画」の進捗状

況の確認と市民意向の反映のためである。調査対象者は、小学 4 年生から中学 3

年生までの子どもとその保護者各 700 人、及び 20 歳から 69 歳の一般市民 2,000

人である。調査方法は、子どもと保護者は学校経由で配布・回収、一般市民は

郵送による配布・回収でアンケートが実施されている。

図 5-1 子どもが「学校以外で参加したいイベント・行事」

出典:2014(平成 26)年度佐賀市教育政策市民満足度調査報告書

そのアンケートのなかで、子どもの調査項目に、「学校以外で参加したいイベ

ント・行事」がある。「あなたは、学校以外でどのようなイベントや行事があれ

51

ば、参加したいと思いますか」という問いに対し、2014(平成 26)年度の子ども

たちの回答は、「スポーツ活動」が 39.6%で最も高く、次いで「キャンプなどの 野外活動」が 31.8%、「地域のお祭り・伝統行事」が 31.6%となっている(図 5-1)。

上位の「スポーツ活動」や「キャンプなどの野外活動」がいずれも減少傾向で

あるのに対し、「地域のお祭り・伝統行事」は 2010(平成 22)年度から、27.1%

→25.6%→30.9%→29.6%→31.6%と緩やかに増加傾向になっていることは、注

目すべきことである。

次に、地域の祭り・伝統行事等に参加した子どもたちに、活動に対する聞き

取り調査を行った。最初の事例として第 2 項の 2015(平成 27)年に循誘小学校で

「子えびすガイド」の活動をした子どもたちで、対象者は、城東中学校に進学

した 1 年生 5 名と循誘小学校 5 年生 2 名である。参加理由は、家族に勧められ

た、えびすのことをもっと知りたいと思って、友達で誘い合って等が多かった。

また、活動に対する感想は、えびす像のことをくわしく知ることができてよか

った、案内した人からお礼の言葉やお礼の手紙をもらって嬉しかった等であっ

た。今後の祭りや地域行事への参加については、参加しようと思っていると意

欲的な答えが多かった。

次の事例として北川副小学校校区 (以下、北川副校区とする) で行われている

冬まつり「ほんげんぎょう」を取り上げる。「ほんげんぎょう」は、1 月 7 日に

門松やしめ縄を持ち寄り、村のはずれ等で焼いていた火祭り行事で、以前は各

地で行われていた。北川副校区では、1978(昭和 53)年から北川副小学校 PTA と

農政協議会が主催して、小学校の運動場で「ほんげんぎょう」が行われ始めた。

その後、各種団体が参加し、1989(平成元)年からは 1 月 7 日に近い日曜日の早

朝に行われるようになった。近年は、北川副校区の一大イベント伝統行事とし

て継承され、参加者は 3,000 人とも言われている。この行事のため、前日に櫓

組み用の孟宗竹 300 本の切り出しやもぐらうち用の棒つくり、カッポ酒用盃作

り等一日がかりで準備が行われている。

写真 5-3 「ほんげんぎょう」

出典:館長コラム~ほんげんぎょう~

52

「ほんげんぎょう」行事には多くの子どもたちが参加しているが、特に、前

日の準備にボランティアとして参加した小学生・中学生・高校生に聞き取り調

査を行った。最初の聞き取り調査の対象者は、佐賀県立佐賀東高等学校 2 年生

13 名及び 3 年生 5 名の男子生徒である。参加理由は、全員、依頼されて参加し

たと答えた。作業内容は、竹切りや切った竹をトラックまで運搬する作業、木

材運搬や櫓組みの作業等であった。活動に対する感想は、竹を切る作業が大変

で手がしびれたが、櫓が出来上がったときは嬉しかった、竹を運ぶのは重かっ

たが、みんなで協力して仕事ができてよかった、櫓を組み立てる作業が楽しか

った、櫓が出来上がって嬉しかった、達成感があった等で、肯定的・建設的な

感想であった。今後の祭りや地域行事への参加については、参加しようと思っ

ていると発言した 3 年生に、うなずく動作や、自分たちも参加したいと発言す

るなど、ほとんどの生徒が同意を示した。聞き取り調査に応じてくれた生徒は

全員野球部で、ここ数年は、野球部員が参加しているという顧問の先生の話で

あったが、校区内に所在する県立高校として地域から参加を依頼されている。

一方、城南中学校では、「ほんげんぎょう」のボランティア募集に応募した 3

年生 12 名は卒業していてインタビューが不可能で、対象者は、代表で現 3 年生

女子 1 名が調査に応じた。参加理由は、小学生のころから毎年ボランティアと

して参加し、今回も自分で希望して参加したと答えた。作業内容は、竹製の振

る舞い酒用の器を水で洗う作業、本部テントの机・椅子の設置及び雑巾でふく

作業、ブルーシートを敷く作業等であった。活動に対する感想は、人のために

自分が役立つことができてよかった、という感想であった。今後の祭りや地域

行事への参加については、これからも、参加したいと答えた。

最後に、北川副小学校で聞き取り調査を行った。対象者は、代表の 6 年生女

子 2 名である。参加理由は、どんな準備をするのか知りたくて、ボランティア

活動をやってみたいと思って等であった。作業内容は、ごみ箱の設置やテント

に椅子を運ぶ作業等である。活動に対する感想は、どんな準備をするのか分か

ってよい経験になった、準備に参加できてよかった等と答えた。今後の祭りや

地域行事への参加については、二人とも参加しようと思っていると答えた。

前項で述べたように、佐賀市では、小学校区ごとに公民館を中心に「子ども

へのまなざし運動」を展開している。その活動事例として、循誘校区の「えび

すでまちづくり」や北川副校区の「ほんげんぎょう」を取り上げた。これらの

地域活動事例に見られるように、それぞれの地域においては、公民館を中心と

した各種団体の努力で、「学校」「家庭」「地域」の協働による子どもに出番・役

割を持たせる動きが出てきている。その結果、ボランティアで祭りや地域行事

に参加した子どもたちの聞き取り調査からも分かるように、子どもの地域に対

する関心・意欲が徐々に高まってきている。これが「子どもへのまなざし運動」

53

の効果ではないだろうかと考える。

写真 5-4 竹の運搬 写真 5-5 竹の器洗い

出典:館長コラム~ほんげんぎょう~ 出典:城南だより第 33 号

次に、「子どもへのまなざし運動」の課題について述べる。佐賀市教育政策市

民満足度調査のなかで、あなたは、「子どもへのまなざし運動」を知っています

かという問いに対し、「運動を理解している」「運動をある程度理解している」

と答えた一般市民及び保護者の肯定的意見の推移を、時系列にグラフ化すると、

認知度の変化は図 5-2 のようになる。図から分かるように、保護者の認知度は

2010(平成 22)年度から継続して 50%前後を示しており、一般市民の認知度をか

なり上回っている。これは保護者の関心の高さを示している。しかし、一般市

民・保護者共に、市の広報活動にもかかわらず、認知度は横ばい状態である。

図5-2 一般市民及び保護者の「子どもへのまなざし運動」に対する認知度の変

資料:佐賀市教育政策市民満足度調査

また、同調査のなかで、「子どもへのまなざし運動」を意識して子ども(自分の

子ども・地域の子ども)と関わるようになりましたかという問いに対し、「関わる

54

ようになった」「意識はするようになった」と答えた肯定的実践活動の推移を、

時系列にグラフ化すると図 5-3 のようになる。

図 5-3 一般市民及び保護者の「子どもへのまなざし運動」を意識した子どもへ

の関わりの変化

資料:佐賀市教育政策市民満足度調査

図から分かるように、保護者の実践度は 2010(平成 22)年度から継続して 50%

台を示しており、一般市民の実践度をかなり上回っている。しかし、2010(平成

22)年度から一般市民及び保護者の「子どもへのまなざし運動」を意識しての子

どもとの関わりに大きな変化は見られない。

これまでの分析結果から、条例制定後、直接子どもの育成に関わっている保

護者の認知度は高いものの、一般市民にまで広がりを見せていない。また、「子

どもへのまなざし運動」を意識した子どもとの関わりには、直接子どもの育成

に関わっている保護者の実践度は高いが、条例制定後も変化が見られないこと

から、運動を意識した実践活動に結びつくまでには至っていないと結論できる。

以上のことから「子どもへのまなざし運動」は、まだ市民総参加子ども育成運

動にまでは至っていない状況であるといえる。第 2 節では、佐賀市が「子ども

へのまなざし運動」推進のために配置している地域教育コーディネーターの役

割と課題について述べる。

第 2 節 地域教育コーディネーターの役割と課題

第1項 地域教育コーディネーターが果たす役割

近年、社会状況がますます複雑多様化し、子どもを取り巻く環境も大きく変

化する中で、学校はいじめ、不登校等の様々な課題を抱えている。また、これ

まで学校を支えてきた家庭や地域の教育力が著しく低下し、学校は以前にも増

した役割が求められている。このような状況のなかで、これからの教育は、学

55

校だけが役割と責任を負うのではなく、これまで以上に学校、家庭、地域の連

携協力が不可欠になってきた。

このような状況に鑑み、2006(平成 18)年 12 月におよそ 60 年ぶりに教育基本

法 (平成 18 年法律第 120 号) が改正され、学校、家庭及び地域住民等の相互の

連携協力が新たに第 13 条に規定された。また、13 条を具現化するために、

2008(平成 20)年に文部科学省の「学校支援地域本部事業」施策が開始された。

この「学校支援地域本部事業」は、学校・家庭・地域が一体となって地域ぐる

みで子どもを育てる体制を整えることを目的にしている。更に、2008(平成 20)

年6月に社会教育法が改正され(社会教育法の一部改正)、第3条「国及び地方公

共団体の任務」の第 3 項に、学校、家庭、地域住民等の連携、協力の促進に努

めることも明記された。前記のような社会状況の変化や、法改正に伴う施策等

により、各地にコーディネーターが誕生しつつある。

文部科学省の施策である学校支援地域本部は、原則として中学校区に設置さ

れ、本部は、地域コーディネーター、学校支援ボランティア及び地域教育協議

会で構成されている。そのなかで地域コーディネーターは学校側とボランティ

アの連絡調整を行い、学校のニーズに応じてボランティアを派遣する。また、

地域教育協議会は学校、地域、コーディネーターやボランティアで構成され、

学校支援の方向性について議論し、情報共有や共通理解を図る仕組みになって

いる。

以上のような子どもを取り巻く社会状況の変化と、法改正及びそれに伴う施

策等と前後して、自治体の中にもいくつかの動きがみられる。その一つが、子

どもたちの教育活動に企業、大学、NPO 等の専門的な教育力を導入するために

設立された、東京都の「地域教育推進ネットワーク東京都協議会」である。こ

の協議会は、2005(平成 17)年に設立され、子どもたちに豊かで、多様な体験学

習活動が提供できるようにサポートし、活性化していく仕組みづくりを目指し

ている。ここでは、ネットワーク協議会とともに地域教育コーディネーターが

教育支援プログラムの橋渡しを行っている。

また、新潟市も平成 2006(平成 18)年に市の教育が目指す方向とあり方を明確

にするために「教育ビジョン」を策定し、翌 2007(平成 19)年から「地域と学校

パートナーシップ事業」を開始している。この教育ビジョンでは「学・社・民

の融合」を根底に据え、豊かな心を持ち、将来の夢や目標に向かって挑戦する

子どもを育てると共に、生涯にわたって学び続ける新潟市民の姿を目指してい

る。「地域と学校パートナーシップ事業」は、市立のすべての小・中・中等教育・

特別支援学校で実施され、地域教育コーディネーターが配置されている。

東京都、新潟市の他にも地域教育コーディネーターを配置している自治体は、

千葉県野田市、佐賀市、島根県 6 市 5 町、熊本県南関町等であるが、地方分権

56

の進展に伴い、地方自治体の裁量の幅も少しずつ拡大しつつあるなかで、その

背景は多様であり役割もまた地域によって異なっている。

和歌山大学教育学部附属小中学校や京都教育大学附属桃山小学校のように、

教育基本法第 13 条の具現化方策である学校支援地域本部事業の実施校として、

コーディネーターを活用した学校もある。特に附属小中学校の場合は、特定の

「地域」を持たないため、地域の捉え方や連携の方法に工夫がなされたことが

実施報告書に見られる。これらの学校では、地域をそれぞれの子どもたちの生

活圏のほかに、学校の建造物が存在する地域が実質的な地域であると捉え、学

校近隣の地域や同窓会、公的機関・大学などを地域として考え連携している。

また、文部科学省委託事業「学校支援地域本部事業」を受け、学校地域連携コ

ーディネーター配置事業を実施した都道府県も多い。しかし、「学校支援地域本

部事業」の委託事業は 2010(平成 22)年度で終了し、2011(平成 23)年度からは、

「学校・家庭・地域の連携協力推進事業」(補助事業)が開始され、「学校・家

庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」が新規事業として展開されてい

る。その事業内容は、地域住民等の参画による「学校支援地域本部」と「放課

後子ども教室」、「家庭教育支援」等であり、教育支援活動を引き続き支援する

と共に、文部科学省は、各地域の実情に応じたそれぞれの取組を有機的に組み

合わせることを可能とし、より充実した教育支援活動を支援している。地域教

育コーディネーターは、このように様々な経過を経て生まれており、名称も役

割も地域によって多少異なるが、主な役割は学校と地域活動や社会教育施設の

間の調整を担うことで共通している。このような経過を踏まえ、本論文では、

学校教育活動と地域社会活動との連絡調整を行い、子どもに生きる力を育てる

と共に、大人にも市民性を育むための広報活動を行う役目を担う人を地域教育

コーディネーターと定義する。

本研究が研究の対象としている「佐賀市子どもへのまなざし運動」において

も、学校地域連携支援事業として地域教育コーディネーター配置事業を実施し

ている。この学校地域連携支援事業は佐賀市単独の事業であり、ここでは地域

を小中学校区としている。佐賀市は、地域教育コーディネーター配置の目的と

して次の二つを挙げている。

(1)学校と家庭・地域との連携体制を構築し、地域に根付いた教育活動を通

して地域の教育力を高めたり、ふるさと意識を高めたりする。

(2)学校と教育行政の一体化と「市民性を育む教育」の効果的な取り組み、「子

どもへのまなざし運動」との連携を図る。

この佐賀市における地域教育コーディネーター配置は、2008(平成 20)年度か

ら開始され、2008(平成 20)年度と 2009(平成 21)年度は市内小中学校 2校に配置、

2010(平成 22)年度 以降は 4 校配置になっている。コーディネーターの役割と具

57

体的な活動の流れは以下の通りである。

① 受け止める:市民・団体からの多様な相談の受け止め

② 求める :活動の場やボランティアの募集・開拓

③ 集める :情報の収集と整理

④ つなぐ :調整や紹介

⑤ 高める :気づきや学びの機会の提供

⑥ 創り出す :新たなネットワークづくりやプログラム開発

⑦ まとめる :記録・統計

⑧ 発信する :情報発信・提言

この役割と活動の成果は、毎年、「地域の中で育つ子どもたち」地域教育コー

ディネーター実践事例集としてまとめられている。

第 2 項 地域教育コーディネーターの実践事例

地域教育コーディネーターの主な役割は、学校と地域の連携をコーディネー

トすることである。具体的に佐賀市では「子どもへのまなざし運動」を推進す

るために、地域の人々を学校支援へ、そして子どもたちを地域活動へと目を向

けさせ、総ての大人・子どもに出番・役割・承認を創出し、市民性を育む教育

を推進している。

佐賀市における地域教育コーディネーターの配置は、原則として 2 年間であ

るが、小中一貫校は 3 年間配置されている。「地域の中で育つ子どもたち」地域

教育コーディネーター実践事例集によると、2010(平成 22)年度以降、2013(平成

25)年度までの主な実践事例は以下のとおりであり、配置された地域教育コーデ

ィネーターが、地域の実情に応じて子どもや地域の人々のボランティア活動の

推進や地域の人々をゲストティーチャーとして学校へ招くことなどの工夫をし

ていることが分かる。その他、地域の人々に子どもたちへの応援メッセージを

寄せてもらうなどしながら、「子どもへのまなざし運動」を推進するために活動

している。また、広報誌の発行により、わずかながら行事参加人数も増加し、

地域の人々を学校支援へ、そして子どもたちを地域活動へと目を向けさせてい

るといえる。

58

地域と学校を結ぶ実践事例

配置校 主な活動実績 参加人数等

2010(平成 22)年度 2011(平成 23)年度

城南中学校

・「赤松校区鯱の門ふれあいコンサート」ボランティア活動

・「北川副校区ふれあい夏まつり」ボランティア活動

・「鯱の門まつり」ボランティア活動

・「赤松校区民体育祭」ボランティア活動

・「北川副校区民体育大会」ボランティア活動

・「北川副校区文化祭カレーショップ」ボランティア活動

・「赤松校区もちつき、しめ縄作り」ボランティア活動

・「北川副校区ふれあい冬まつり」ボランティア活動

・「花壇つくり・花苗植え」活動

・城南中・北川副小合同チャリティーコンサート

・広報誌発行、<年間 12 回発行>

・4 名(中)

・63 名(小・中・高)

・15 名(小・中)

・21 名(中)

・32 名(小・中・高)

・7 名(中)

・13 名(中)

・69 名(小・中・高)

・6 名(地域), 15 名(中)

_______

・5 名(中)

・71 名(小・中・高)

・雨天中止

・60 名(中)

・44 名(小・中・高)

・18 名(中)

・23 名(中)

・74 名(小・中・高)

・18 名(地域), 12 名(中)

・18 名(地域), 63 名(小中)

城北中学校

・「高木瀬町区民体育まつり」ボランティア活動

・「若楠校区民体育大会」ボランティア活動

・「若楠納涼まつり」準備ボランティア活動

・「高木瀬校区通学合宿宿題指導」ボランティア活動

・校内河川清掃に地域住民の応援

・「若楠校区文化祭」ボランティア活動

・「高木瀬校区災害時要援護者避難訓練」ボランティア活動

・広報誌発行、<年間 6 回発行>

・9 名(中)

・19 名(中)

_______

_______

_______

_______

・15 名(中)

・20 名(中)

・20 名(中)

・15 名(中)

・9 名(中)

・3 名(地域)

・61 名(中)

東与賀中学

・「東与賀町民体育祭」ボランティア活動

・「じどうかんまつり」ボランティア活動

・「シチメンソウ祭り」観光ジュニアボランティアガイド

・「シチメンソウまつり」ボランティア活動

・「生け花活動」に地域住民の応援

・広報誌発行、<年間 11 回発行>

・16 名(小・中)

・2 名(中)

・13 名(小中),7 名(地域)

・102 名(中)

・24 名(地域)

・33 名(小・中)

・11 名(中)

・18 名(小中),7 名(地域)

・91 名(中)

・24 名(地域)

小中一貫校

思斉館中学

・「久保田町内一斉清掃作業」活動

・「久保田町民体育祭」ボランティア活動

・「総合的な学習(7・8 年生)」ゲストティーチャー

・「社会科授業(6 年生)」ゲストティーチャー

・「浮立」披露(まなざしフェスタ)

・「昔の遊び(1 年生)」ゲストティーチャー

・広報誌発行、<年間 8 回発行>

・153 名(小 5・6 年、中)

・12 名(小),88 名(中)

・45 名(地域)

・21 名(地域)

・81 名(中)

・19 名(地域)

・150 名(小 5・6 年、中)

・7 名(小),60 名(中)

・60 名(地域)

・23 名(地域)

・70 名(中)

_______

59

配置校 主な活動実績 参加人数等

2012(平成 24)年度 2013(平成 25)年度

城東中学校

・「兵庫の里まつり」ボランティア活動

・「巨勢まつり」ボランティア活動

・「兵庫校区町民体育大会」ボランティア活動

・「佐賀市障がい者体育大会」ボランティア活動

・「循誘ふれあいふるさと祭り」ボランティア活動

・「巨勢町餅つき・しめ飾り作り会」ボランティア活動

・「巨勢七輪餅焼き会」ボランティア活動

・「春のじゅんゆう文芸賞」ボランティア活動

・「兵庫校区文化祭」ボランティア活動

・「読み聞かせ」ボランティア活動

・広報誌発行、<年間 12 回発行>

・54 名(中)

・8 名(中)

・8 名(中)

・14 名(中)

・59 名(中)

・12 名(中)

・14 名(中)

・40 名(中)

・1 名(中)

_______

・52 名(中)

・8 名(中)

・17 名(中)

・17 名(中)

・20 名(中)

・10 名(中)

・12 名(中)

・35 名(中)

・5 名(中)

・6 名(地域)

大和中学校

・「大和中学校体育大会」への応援メッセージ

・「川上花火大会」ゴミ拾いボランティア活動

・「シオンの園訪問」ボランティア活動

・「校区内 3 小学校運動会」ボランティア活動

・「春日小学校見守り隊」組織づくりの支援

・「大和中文化発表会」応援メッセージ・アンケート

・「学校支援ボランティア募集」

・「川上校区独居老人ふれあい会食会」ボランティア活動

・広報誌発行、<年間 11 回発行>

・19 名(地域)

・43 名(中)

・21 名(中)

・37 名(中)

・約 40 名(地域)

・28 名(地域)

・(自治会・社福協他)

・90 名(小),30 名(中)

・29 名(地域)

・19 名(中)

・26 名(中)

・43 名(中)

_______

・31 名(地域)

・(自治会・社福協他)

・40 名(小),46 名(中)

兵庫小学校

・「ひょうごふれ愛ランド」

・「まなざし田植え(4 年生)」

・「兵庫の里まつり」

・「木工教室」

・「子どもクッキング」

・「昔遊び(1 年生)」

・「兵庫の歴史を語る会との交流(6 年生) 」

・「親子活動とうふ作り(2 年生)」ゲストティーチャー

・広報誌発行、<年間 7 回発行>

・83 名(小),23 名(地域)

・125 名(小),60 名(地域)

・児童生徒、地域多数

・12 名(小),15 名(地域)

・14 名(小),6 名(地域)

・130 名(小), 36 名(地域)

・31 名(小), 15 名(地域)

・117 名(小), 87 名(地域)

・87 名(小),27 名(地域)

・107 名(小),60 名(地域)

・児童生徒、地域多数

・19 名(小),18 名(地域)

_______

・127 名(小), 30 名(地域)

_______

・130 名(小), 25 名(地域)

60

第 3 項 地域教育コーディネーターの成果と課題

地域教育コーディネーターの成果と課題については、年度ごとにまとめられ

た地域教育コーディネーター実践事例集に掲載されている。しかし、地域教育

コーディネーターが配置されている校区の実状や配置された年数の違いも考え

られるため、2016(平成 28)年度に配置されている地域教育コーディネーター4

人に、2016(平成 28)年 8 月 18 日から 25 日にかけて聞き取り調査を行った。

調査対象 1 (女性)

配置校 鍋島小学校(配置 3 年目)

就任の動機 子どもが好き。学校長の依頼及び公民館長の推薦。

就任前の地域活動 小中学校でPTA役員。青少年健全育成役員。公民館主事。

主な活動内容

1. キャンドルナイ

トコンサート

主 催 鍋島ふれあい協議会、鍋島小学校

日 時 2015(平成 27)年 7 月 4 日(土)17:30~20:30

場 所 鍋島公民館

参加者 児童(乳幼児を含む)、職員、地域住民合わせて 170 名

目 的 キャンドルの光の中で、環境について考える。

内 容 6 年生が公民館に飾るキャンドルを作り、地域の人・

小中一貫校

思斉館

(3 年目)

・「小学部 5・6 年生通学合宿」

・「総合学習(7 年生)久保田町の特色・伝統芸能」

・「総合学習(8 年生)職場を知る・職場体験」

・「浮立」披露(まなざしフェスタ)

・「総合学習(9 年生)保育体験学習」

・「昔遊び(1 年生)」ゲストティーチャー

・広報誌発行、<年間 8 回発行>・

・25 名(小 5・6 年)

・75 名(中)

・71 名(中)

・75 名(中)

・82 名(中)

・73 名(小), (地域)

昭栄中学校

(1 年目)

・「どようひろば」ボランティア

・「盲学校体育祭」(交流教育)

・「おいしい芋を作ろう」パワーアッププラン

・「日新小学校区通学合宿」

・「日新まつり」ボランティア活動

・「愛鳥週間ポスターに挑戦!」

・「昭栄中学校体育大会」応援メッセージ

・「校区民運動会」ボランティア活動

・広報誌発行、<年間 8 回発行>

・50 名(地域)

・15 名(中)

・634 名(中), 5名(地域)

・15 名(小),138 名(地域)

・57 名(中)

・25 名(小), 9 名(中)

・18 名(地域)

・28 名(中)

61

2. 養正ふれあいま

つり

3. 仮設科学授業

保護者・教師と共に点灯式を行い、5 年生が環境学習

の報告を行った。校区在住のソプラノ歌手の独唱、ハ

ープとバイオリン演奏、幼児でも楽しめるハンドベル

演奏、お話会の後に参加者がカレーライスを食した。

特 徴 この行事では、二つの改革がなされている。一つはマ

ンネリ化を防ぐために幼児でも楽しめる内容が企画さ

れていること。もう一つは、地域行事にこだわり、こ

れまでは外部から演奏者を招いていたが、今回は校区

在住の人材を発掘し演奏を依頼したことである。

主 催 鍋島栄の国まつり実行委員会、鍋島小学校PTA

日 時 2015(平成 27)年 10 月 11 日(日) 14:00~20:00

場 所 鍋島小学校運動場

参加者 校区民及び校区外の人を合わせて 5,000 名

目 的 これまで別々に開催されていた、PTA主催の行事と

栄の国まつり実行委員会主催の行事を一本化し、地

域・学校・PTAの連携強化を図ること。加えて参加

人数増加・参加年齢層拡大・役員負担軽減も期待する。

内 容 小学校の運動場を会場に、テント設営・仮装パレード・

櫓の上での子どもたちの踊り・先生たちのダンス披露・

中学生の音楽演奏・太鼓演奏・物品販売等を行ない多

くの町民参加の祭りとなった。

特 徴 大きな二つの祭りを一本化し、盛大に祭りが実行できた

ことである。しかし、初回開催のため開催時期や開催時

間その他の課題も多く、今後、これらの課題について話

し合い、次年度につなぐ予定である。

主 催 仮設実験授業@未来の教室、鍋島公民館

日 時 2015(平成 27)年 12 月 5 日(土) 9:00~15:00

場 所 鍋島公民館

参加者 児童・生徒 50 名、高校生 10 名、ゲストティーチャー

10 名

目 的 数時間を使い、一連の繫がりのある授業で学ぶ喜びと

学びたい意欲を育む。

内 容 公民館から「子ども体験事業」を実施したいとの要請

があり新事業を企画した。対象は小学 2 年生で、指導

62

4. ありがとう集会

者は、校区在住の小学校教師と唐津仮設サークルの教

師たち。授業は三部からなり、初めに「体重は体重計

に乗った姿勢で変化するか」について予想・話し合

い・実験・結論に導く仮設実験授業、続いてプラトン

ボやクリスマスリース製作の楽しいものづくり、最後

に切り餅の上に海苔やチーズを載せて焼き、変形の様

子を調べるおいしいものづくりに構成した。

特 徴 子どもたちのメッセージからは、楽しかった、面白く

やる気が出た、高学年向きもやって欲しいなどと好評

だったことが窺われ、科学に対する子どもたちの意欲

が伝わってくる。

主 催 鍋島小学校

日 時 2016(平成 28)年 1 月 26 日(火) 8:15~9:30

場 所 鍋島小学校体育館

参加者 児童・職員 900 名、地域の人・保護者 80 名

目 的 子どもや学校のために支援や協力をしてもらった「ま

なざし共同体」会員・保護者・校区内外の人々に一年

間の感謝の意を表す。

内 容 子どもたちの学力向上のために活動している「花丸先

生」、心の充実を図る「おはなし会」、体験授業「大豆

100 粒運動」の指導協力者、環境整備に尽力している

大掃除協力の人々や雑巾提供の長生会女性部、子ども

の安心安全のための「見守り部」等のそれぞれに子ど

もたちが感謝の気持ちを伝える。

特 徴 2014(平成 26)年度に「まなざし共同体」が結成され、

7 月の行事「まなざし共同体対面式」と 1 月の「あり

がとう集会」がセットになっている。ただ、寒くてイ

ンフルエンザ流行の時期であり、早朝の時間帯で参加

者が少ない。開催時期を考慮する必要がある。

活動成果 1. 2014(平成 26)年度に「まなざし共同体」の組織ができ、子ど

もたちに「まなざし共同体」の活動が浸透しつつある。子ど

もたちのための活動の柱(学力向上・心の充実・体験授業・環

境整備・安心安全)が完成した。

2. 2015(平成 27)年度は、地域行事の企画段階からコーディネー

ターとして参加し意見を述べることができたので、学校側へ

63

の協力要請もスムーズにできた。そのために子どもたちの地

域行事参加も増加した。

3. これまで別々に開催されていた祭りを「養正ふれあいまつ

り」として行事の一本化に成功した。

4. 鍋島まちづくり協議会が設立され、子どもたちのための部会

や地域行事を司る部会もできた。小学校の教師も協議会の会

員になり積極的に地域活動に参加している。また、コーディ

ネーターは、校区内の幼稚園・中学校にも活動範囲を広げ、

その存在が周知されつつある。

5. 年度当初から、公民館についての授業を学年や学級ごとに実

施し、公民館利用が増えた。また、学校耐震化工事で家庭科

室が使えなくなったため、公民館の調理室使用が許可され、

子どもたちにとって公民館が近い存在になっている。

6. 毎月「まなざしニュース」を発行して広報活動に努力してい

る。その結果、地域内の人材を掘り起し、地域内に住んでい

る人を活用して行事を組むことができた。

今後の課題 1. 行事のマンネリ化を防ぐために、企画段階で事業内容の見直

しを継続的に行うこと。

2. 小学校だけでなく、校区内の幼稚園・中学校の子どもたちに

も活動を広げていきたい。

3. 今後、地域教育コーディネーターが配置されなくなっても、

活動が維持できるような工夫が必要である。

調査対象 2 (男性)

配置校 諸富中学校(配置 2 年目)

就任の動機 学校長からの依頼。

就任前の地域活動 校区自治会長。公民館館長。まちづくり協議会長。元諸富中学

校事務長

主な活動内容

1.「諸富町民スポー

ツ祭」

主 催 諸富町体育協会

日 時 2015(平成 27)年 4 月 29 日(水・祝日) 8:30~12:00

場 所 スポーツパーク諸富グランド

参加者 4 校区民と諸富中学校ボランティア 15 名

目 的 中学生が町民と一緒に競技に参加し、地域の人々と交

流すると共に、ボランティアとして係を担当すること

により地域の一員として自覚を深め、郷土愛を育む。

64

2. 「西川副夏休み

宿題お助け隊」

ボランティア

活動

内 容 開会式で会長からボランティアとして中学生が参加し

ていることを紹介され、用具係、決勝係、召集係とし

て体育協会役員と一緒に活動した。オープン競技には、

係の合間を見て積極的に参加した。

特 徴 中学生の参加はこれまで皆無であったので、コーディ

ネーターが参加申し入れをした時、主催者側は受け入

れ体制ができていなかった。中学生の競技種目や吹奏

楽部の出場も要望したが、自治会単位の得点種目との

絡みや時間制約で実現できなかった。しかし、競技の

途中で、中学生の参加に対する感謝のメッセージがア

ナウンスされ、閉会式でも会長よりお礼の言葉があり

参加は歓迎された。

主 催 西川副まちづくり協議会、西川副公民館

日 時 第1回 2015(平成 27)年 7 月 27 日(月)~8 月 6 日(木)

13:00~16:00

第 2 回 2015(平成 27)年 8 月 10 日(月)・11 日(火)、8

月 17 日(月)~8 月 19 日(水) 13:30~16:00

場 所 西川副公民館

参加者 小学生 40 名、中学生ボランティア 20 名、西九州大学

生 5 名、竜谷高校生 12 名、一般のボランティア 4 名

目 的 中学生のボランティアが地域の人、大学生、高校生と

一緒に、西川副小学校の児童の夏休み宿題について助

言と手助けを行い、参加者との交流を図る。

内 容 初日にボランティアが紹介され、宿題の手助けをした。

最初は慣れなくて戸惑っていた中学生も、次第に小学

生や他のボランティアとも打ち解けて活動がスムーズ

にできるようになった。毎日、活動終了後に公民館か

ら菓子付きの湯茶の接待があり、30 分程度交流の場が

設けられていた。最終日にはアンケートの記入を依頼

した。

特 徴 毎日、公民館長やまちづくり協議会役員から褒めても

らい、自分たちの活動が承認されたことを知り生徒た

ちはやりがいを感じていた。活動終了後の雑談の場は、

中学生には刺激がありとても良かった。

65

3. 海童神社子ども

浮立

主 催 海童神社奉納浮立保存会、海童神社

共 催 南川副まちづくり協議会

日 時 2015(平成 27)年 10 月 17 日(土) 4:30~14:00

場 所 海童神社及び南川副校区巡行

参加者 小学生 60 名、中学生 9 名

目 的 海童神社秋祭り例大祭における浮立の打ち手(若者)不

足のため、子ども浮立を参加させ奉納浮立の活性化と

若者の定着を図る。

内 容 事前にまちづくり協議会の役員と一緒に南川副小学校

と川副中学校に募集のチラシ配布依頼と児童生徒の参

加を要請。小学生及び保護者へ浮立学習会を実施。夜

間(19:00~20:00)の練習を約 40 日間続け、小学生は当

日神輿行列の中で子ども浮立の道行浮立を披露。笛、

小太鼓、鉦、大太鼓も小学生が担当し演舞した。中学

生は神輿 2 台と大太鼓台車を大人と共に牽引した。

特 徴 小・中学生が地域に伝わる伝統行事に参加したことで

例年になく沿道の人も多く、地域の活性化に貢献でき

た。特に人数は少なかったが、中学生の参加は浮立の

担い手として今後が期待される。

活動成果 1. これまで中学生は勉強と部活動で忙しいと認識され、中学校

には地域の人々の関わりが遠慮されている傾向があり、また、

中学生も地域活動への参加が少なかったので、その改善に努

力した。昨年は前記「海童神社子ども奉納浮立」で神輿及び

大太鼓の牽引を中学生 9 名が大人と一緒に行い、中学生を地

域活動へ参加させることができた。

2. 川副中学校の文化発表会を佐賀市フリー参観デーの日に行

い、地域の人々を学校に招き応援メッセージを依頼した。こ

のように地域の人々を中学校へ、中学生を地域活動へ参加さ

せる動きができつつある。

今後の課題 1. 佐賀市に合併前は、川副町として一体化されて活動していた

ものが、合併後は、校区単位となり四小学校校区に分かれた

ために活動がやりにくいところがある。

2. 地域行事の時期と学校行事が重なると、中学生に対し行事参

加を勧めにくいので、行事の開催時期決定に配慮する必要が

ある。

66

調査対象 3 (男性)

配置校 西与賀小学校(配置 1 年目)

就任の動機 学校長からの依頼。

就任前の地域活動 小学校PTA会長。少年育成委員。まちづくり協議会委員。

主な活動内容

1. あいさつ・協力

依頼

2. 年間計画作成

3. 交通安全教室

公民館・中学校・校区内の各種団体への就任あいさつと協力依

頼。

これまでの学校行事と地域行事から2016(平成28)年度地域教育

コーディネーターの年間活動計画表を作成。

主 催 西与賀小学校

日 時 2016(平成 28)年 4 月 18 日(月)

場 所 西与賀小学校

参加者 西与賀小学校 1 年生及び 2 年生

目 的 入学して間もない 1 年生の登下校安全確保のために、

関係諸団体に依頼し、2 年生と共に交通安全のための

教室を開催する。

内 容 西与賀交通安全支部、西与賀駐在所、佐賀市生活安全

課、佐賀市交通安全教育指導員から講話と実地指導を

受ける。

特 徴 入学直後に交通安全教室が実施できたことと、今後一

緒に下校する機会が多い 2 年生と合同で開催できたこ

と。特に 2 年生にとっては交通安全の再確認になる。

活動成果 1. 就任して 5 ヶ月目で、現在は子どもたちを地域行事に参加さ

せるために学校と公民館・地域活動諸団体との連絡調整に努

力している。

今後の課題 1. 学校と地域が協働して教育活動を行うために、広報紙の発行

が必要だと考えている。

調査対象 4 (女性)

配置校 諸富中学校(配置 2 年目)

就任の動機 子どもが好き。学校長及び公民館長からの依頼。

就任前の地域活動 佐賀市に合併前、地域で社会福祉法人「ふれあい広場」を設立

し育児サポーターを務めた。その時、関わった子どもたちが現

在、中学生になっている。

67

主な活動内容

1. 「諸富町民体育大

会」ボランティア

活動

2. 1 年生伝統芸能

「太田浮立の披露

(諸富中学校文化発

表会)」

3. 歳末ふれあい事業

主 催 諸富町体育協会、諸富校区自治会

日 時 2015(平成 27)年5月 10 日(日) 8:00~15:00

場 所 諸富町町民グラウンド

参加者 諸富町民、中学生ボランティア

目 的 校区内住民が一堂に会する場で、大会運営や清掃等の

活動をすることで、地域の一員としての自覚と地域へ

の愛着を深めること。

内 容 地域からボランティアの要請があり、募集を生徒会に

依頼。当日、開会式で中学生ボランティアの参加が紹

介された。召集・出発・用具・記録・賞品・放送等の

の係で生徒が活躍し、最後には、体育協会の誘いで玉

入れにも参加した。

特 徴 地域からのボランティア要請に多くの生徒が応えた

ことは、地域と学校との連携・協力の積み重ねの結果

だと思われる。

主 催 諸富中学校

日 時 2015(平成 27)年 10 月 30 日(金) 8:30~12:20

場 所 諸富中学校体育館

参加者 中学校生徒全員、保護者、地域住民

目 的 地域の文化に触れ、学習の成果を総合的に生かす場と

する。

内 容 総合的な学習として太田浮立を発表することが決ま

り、担当の教師から地域ボランティアへ指導要請があ

り、地域に協力を依頼したところ快諾してもらった。

8 月末から 10 月末まで、太田地区ボランティアの指

導を受ける。神の舞、太鼓、鉦打ち、謡い、もらしに

分かれ練習を行う。当日は、着物の着付けや傘をつけ

てもらい浮立を発表した。事後、生徒に感想を書いて

もらう。

特 徴 1 年生全員が地域ボランティアから指導を受け、師匠

への感謝、達成感、自信など多くのものを得て成長し

たことが感想文から分かる。

主 催 佐賀市社会福祉協議会諸富支所

68

「餅つき会」ボラ

ンティア活動

日 時 2015(平成 27)年度 12 月 28 日(月) 8:00~11:00

場 所 諸富町産業振興会館

参加者 小学生 11 名、中学生 21 名、地域の人 58 名

目 的 独居老人宅に配る餅を、地域のボランティアと共に作

ることで、小・中学生に地域の一員としての自覚を促

す。

内 容 社会福祉協議会諸富支所よりチラシ持参で小・中学生

のボランティア要請があり、生徒会を通して募集をす

る。当日は餅を丸めてパックに詰める作業をした。

特 徴 日頃、中学生が家庭や学校では体験できないようなこ

とを、地域の人と交流しながら体験し、奉仕活動がで

きたことに活動の意義や喜びを感じている。

活動成果 1. 町民体育大会ボランティア募集については、生徒会が中心

になって募集を行い、加えて学校長の声掛けもあり、地域か

らの派遣要請人数以上の中学生の参加があった。

2. 中学 1 年生の総合的な学習で浮立を発表するため、コーデ

ィネーターに学校側から地域ボランティアの依頼があり、地

域に相談したところ快く引き受けてもらった。地域ボランテ

ィアは、9 月から 2 ヶ月間指導のため来校してもらい、文化

発表会で伝統芸能を発表することができた。その後、地域か

ら中学生に祭り参加要請があり、中学生が特別参加した。

3. 諸富北小学校 2 年生「まちたんけん」の実施に当たっては、

事前に「地域見守り隊」に協力を依頼し、児童の安全確保に

努めた。訪問先の産婦人科病院・セブンイレブン・歯科医院

等も事前にお願いに出向いていたため、快く対応してもらえ

た。産婦人科病院では赤ちゃんを抱かせてもらい、セブンイ

レブンでは店の裏側まで案内してもらう等、地域の協力で子

どもに貴重な体験学習をさせることができた。

今後の課題 1. 中学校区内にある二つの小学校に、平等に役に立ちたい。

2. 地域へのボランティア依頼が一部の人々に片寄ることが多

いので、広く募集できるような工夫の必要性を感じている。

3. 学校と地域を結ぶ広報紙を出し、活動を地域に広く浸透さ

せたい。

以上の聞き取り調査をまとめてみたい。

佐賀市における地域教育コーディネーターの配置開始から8年が経過した。

69

総括すると、コーディネーターが配置された校区では、地域の人々を学校支援

へ、子どもたちを地域活動参加へと導く動きができつつある。このことは、地

域教育コーディネーター配置の大きな成果といえる。

次に、佐賀市のコーディネーター人選方法については、配置が開始された当初

は、校長退職者がコーディネーターに就任している。その後、コーディネータ

ーは次第に地域在住の人に移行し、現在はすべて地域在住の人である。更に現

在の 4 人は、就任以前から地域活動を活発に行っていた人たちであり、それぞ

れに地域の人々との間に強いつながりを持っているため、活動がスムーズにで

きている。このように、コーディネーターの選出については、好ましい方向へ

移行しているといえる。

また、4 人のコーディネーター活動年数は、1 年目・2 年目・3 年目と異なり、

年数と活動内容には次のような関係が見られた。就任 1 年目は、地域行事に如

何にして子どもたちを参加させるかを模索し、地域の事情も勘案しながら活動

している。しかし、2 年目になると、地域の課題を把握し、その改善策を考えな

がら活動の範囲を広げている。更に 3 年目になると、行事の改善・新設やコー

ディネーターが配置されなくなっても地域行事が運営できるように組織の構築

まで考えて活動している。このことから、コーディネーターの任用期間を原則 3

年間としたほうが効果的であるといえる。

更に、コーディネーターが学校と地域との連携を円滑に進めるためには、学

校側の協力が不可欠である。特に、学校長の理解と教職員に対する指導が重要

であることが聞き取り調査から明らかになった。

最後に、聞き取り調査のなかで、あるコーディネーターから、ボランティア

として活動しているので、手当は半分にしてでも現在の 2 倍のコーディネータ

ーを雇用してほしいという要望を聞いた。佐賀市内の校区は32小学校区であり、

小中兼ねて担当しても現在の 4 人体制ではなかなか行き届かないのでコーディ

ネーターの増員が望まれるところである。

第 3 節 佐賀市の住民参加と協働による子どもの育成

他の地域の学校でも同様なことを実施していると思うが、佐賀市は学校教育

の様子を地域の人々に理解してもらうために、2002(平成 14)年度より、年に 2

回「学校フリー参観デー」を設け、1日中、佐賀市立幼・保・小・中学校、佐

賀大学附属幼・小・中学校の教育活動を公開している。1 回目は、毎年 6 月の第

2 日曜日に開催され、2 回目は、10 月下旬から 11 月上旬にかけて開催されてい

る。佐賀市教育委員会資料によると、年度ごとの総参加者数は、2010(平成 22)

年度 38,189 人、2011(平成 23)年度 38,961 人、2012(平成 24)年度 41,525 人、

70

2013(平成 25)年度 40,683 人、2014(平成 26)年度 43,133 人となっている。この 参加者増については、「子どもへのまなざし運動」や「佐賀市まちづくり自治基

本条例」の効果とも考えられる。また、この「学校フリー参観デー」について

は、佐賀市報に毎回事前に掲載され、広報活動が行われている。その結果、卒

業生や地域の人々がスクールボランティアやアシスタントティチャー、ゲスト

ティチャーとして学校教育に参加するようになり、地域と学校の垣根が少しず

つ低くなっている。

子どもたちが地域に出て、社会と関わっていく取り組みとして小学生の「キ

ャリア教育事業」がある。「キャリア教育事業」は、教育活動の一環として以前

から佐賀市立神野小学校及び勧興小学校の 2 校が実施していたが、次第に他の

小学校にも広がっている。活動は佐賀駅前や地元商店街で行う販売体験活動(キ

ッズマート)で、4 年生、5 年生が取り組んでいる。活動では、市場調査、商品

の仕入れ、値付け、広報活動、販売実践、収支決算に至るまでの一連の販売活

動を、地域の生産者・販売者・金融機関・消費者等の協力・協働で進めている。

この過程で、子どもたちは地域の人々と触れ合いながら、仕事の苦労や魅力・

やりがいなどを学び、将来の仕事や働くことについて関心を高めていくことが

活動の効果といえる。毎年、活動の様子は、テレビで放映されているが、その

映像から子どもたちの充実感が伝わってくる。

中学生の職場体験活動も、ほとんどの中学校で実施している体験活動で、職

業観や就業観の養成、ビジネススキルの醸成を図ることを狙いとして実施して

いる。これは、学校の中だけでは学べないことを、社会に出て生産者・消費者・

企業の関係者等と接することで、経済のしくみや職場の現状などを学ぶ貴重な

体験活動である。この活動を実施するためには、受け入れ先の協力が必要であ

るが、「佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条例」も制定

されており、企業等も協力的であると聞く。実際、郵便局、幼稚園、介護施設、

飲食店等で職場体験活動をしている中学生の姿をよく見かける。

また、佐賀市は佐賀平野の中央部に位置しており、JA の協力により農業体験

活動を行っている学校も多い。稲作体験活動や「大豆 100 粒運動」(大豆育成か

ら豆腐・納豆づくり・販売)を行っている小学校も増えている。2015(平成 27)

年佐賀市報によると、「子どもたちが大切に育てた大豆で作った納豆を販売しま

す!」というキャッチフレーズで市内小学校 11校の販売日時が掲載されている。

このようにして、市民総参加子ども育成運動「子どもへのまなざし運動」は、

小学校区ごとの地域で、夏まつり・冬まつり、町民体育大会、公民館から学校

に通う通学合宿、夏休みチャレンジ教室、地域元気アップ事業等として展開さ

れている。地域行事に子どもたちが参加する出番と役割が増えている。

71

<小括>

住民参加と協働による子どもの育成について、「子どもへのまなざし運動」を

中心にどのように活動が展開され、子どもの心にどのような変化を及ぼしてい

るかを分析した。その結果、どの校区でも「子どもへのまなざし運動」は公民

館を中心に活動が展開され、学校、家庭、地域の各種団体の協働に加えて、地

域教育コーディネーターの努力もあり、地域の人々を学校支援へと促し、住民

参加と協働による子どもの育成に効果を上げてきている。また、子どもが地域

行事に参加することにより、佐賀市教育政策市民満足度調査にみられるように、

子どもの心に地域に対する関心も徐々に生まれてきている。地域の祭りや行事

にボランティアとして参加した子どもの聞き取り調査からも、子どもは地域の

ために役立った充実感や大人に認められた喜びを感じ、地域に関心を持ち今後

も地域行事に参加したいと思っている。このような現状から、多くの子どもに

地域ボランティアとして活動できる場を与え、地域の一員として自覚を持たせ

ることが地域愛着の醸成につながり、地域活性化の要因になると考える。

72

第 6 章 地域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着

第 1 節 中学生の意識調査

本章では、中学生の地域活動と地域愛着の関連性を分析し、子どもの地域愛

着の醸成に向けての要因を明らかにし、実践的提言を行う。その目的で、中学

生の意識調査を城南中学校の全生徒対象に行った。調査対象校が位置する佐賀

市は、佐賀県の中央に位置し、同県最大の人口を擁する市である。城南中学校

区(以下、城南校区とする)は、赤松小学校校区(以下、赤松校区とする)と北川副

校区からなり、佐賀市校区別男女統計表によると、2015(平成 27)年 9 月末現在、

赤松校区の人口は 7,969 人、北川副校区の人口は 12,405 人で、2008(平成 20)

年 12 月末の人口(赤松校区 8,004 人、北川副校区 12,586 人)と比較すると、両校

区共に人口は緩やかに減少している。この城南中学校には、赤松小学校と北川

副小学校から生徒が進学してくる。赤松校区は、歴史・文化施設が多い文教地

区であり、一方、北川副校区は、校区内に官公庁の宿舎や新興住宅が多く、周

辺部は田園地帯である。第 5 章で述べたように「子どもへのまなざし運動」の

活動は、各校区の公民館を中心に活動が行われている。城南中学校のボランテ

ィア担当の職員によると、数多くの祭りや行事の中で、多くの子どもたちが参

加する行事は以下であることが分かった。赤松校区では、「鯱の門祭り」「校区

民体育祭」「少年の主張」「もちつき、しめ縄作り」の行事で、北川副校区では、

「ふれあい夏祭り」「校区民体育大会」「少年の主張」「ふれあい冬祭りほんげん

ぎょう」である。これらの祭りや行事には、事前準備や当日の係として小・中・

高校生の子どもがボランティアとして参加している。また、城南中学校、赤松

小学校、北川副小学校の三校は、佐賀県内でもいち早くコミュニティ・スクー

ルの指定を受けた学校である。この三校は、コミュニティ・スクール「城南豊

夢学園」として連携・協働の活動を行い、「ふるさとを大切にし、心豊かで、夢

を育む城南っ子」をスローガンに掲げ活動している。地域との交流としては、

個人でボランティアとして地域活動に参加するほかに、三校合同で「城南豊夢

学園クリーン大作戦」として地域の美化活動に貢献している。

以上のような背景を持つ城南中学校の全生徒を対象に、質問紙による「中学

生の地域活動と地域への愛着に関するアンケート調査」を依頼した。学校長等

の管理職への趣旨説明及び学校側と質問項目等の内容検討を行った後、学級ご

とに教室で、担任がアンケート票を配布して調査することになった。調査は

2015(平成 27)年 10 月 22 日(木)帰りの会、23 日(金) 朝の会のいずれかで実施し

た。内容には一切触れることなく調査したが、または 1 年生などで「愛着」の

用語の意味について質問があれば教えてもらうように依頼した。

73

中学生の地域活動と地域への愛着に関するアンケート

このアンケートは、まちづくり研究のためのアンケートです。中学生のみなさんが住んでいる

地域(小学校校区と同じ範囲)について、どのように考えているかをおたずねします。目的以外

には使いません。名前を書く必要はありませんので、ありのままに答えてください。

佐賀大学大学院生 亀山清美

1. あなたの学年と性別で、当てはまる番号を〇で囲んでください。(以下同じ)

1 1年男子 2 1年女子 3 2年男子 4 2年女子

5 3年男子 6 3年女子

2. あなたは、現在どの校区に何年間住んでいますか。

1 赤松校区( )年間 2 北川副校区( )年間 3 ( )校区( )年間

3. あなたは、地域(校区)の人々にあいさつをしますか。

1 よくする 2 ときどきする 3 あまりしない 4 まったくしない

4. あなたは、住んでいる地域(校区)の大人に、見守られていると思いますか。

1 思う 2 すこし思う 3 あまり思わない 4 思わない

5. あなたは、住んでいる地域(校区)で行われる下記の祭りや行事に参加したことがありますか。

あれば番号に〇をつけてください。(複数可) (ない人はつけない)

1 赤松校区に住んでいる人

1 赤松鯱の門まつり 2 赤松校区民体育祭

3 赤松少年の主張 4 赤松餅つき・しめ縄つくり

2 北川副校区に住んでいる人

1 北川副ふれあい夏まつり 2 北川副校区民体育大会

3 北川副少年の主張 4 北川副冬まつり「ほんげんぎょう」

3 それ以外の校区に住んでいる人は、これまでに参加した、地域で行われる祭り

や行事名と校区名を( )の中に記入してください。

1( 校区) 2( 校区)

3( 校区) 4( 校区)

6. あなたは、現在住んでいる地域(校区)に愛着を感じていますか。

1 感じている 2 すこし感じている 3 あまり感じていない 4 感じていない

7. あなたは、現在住んでいる地域(校区)に大人になっても住みたいと思いますか。

1 住みたい 2 できれば住みたい 3 あまり住みたくない 4 住みたくない

アンケートにご協力いただきありがとうございました。

74

表 6-1 アンケート調査票の概要 人数(%)

n=478

性別 1 年 2 年 3 年

男 78 (50.3 ) 72 (50.3) 84(46.7)

女 77 (49.7 ) 71 (49.7) 96 (53.3)

学年

1 学年 155(32.4)

2 学年 143(29.9)

3 学年 180(37.7)

居住地

赤松校区 183(38.3)

北川副校区 266(55.7)

その他の校区・無回答 29( 6.0)

調査票の質問項目は、7 項目である。質問項目の 3 から 7 については 4 択法

で回答を求めた。同 5 の祭りや地域行事への参加については、第 5 章第 2 節で

取り上げた「地域教育コーディネーター実践事例集」を参考に、当該中学校の

ボランティア活動担当の先生と相談のうえ、それぞれの校区の行事で中学生が

多く参加している祭りや行事を 4 つ選定し、その中から参加したことがある祭

りや行事を選ぶように指示した。校区外の生徒については、参加行事の名称を 4

つ書き込めるように記入欄を設けたうえで、参加した祭りや行事名を記入する

ようにした。

アンケート調査結果は以下のとおりである。最初に、調査対象者の属性が地

域愛着に関連があるかどうかを調べた。愛着については、1 感じている 2 少し

感じている 3 あまり感じていない 4 感じていない をグループ化し、1,2 を感

じている 3,4 を感じていない として作成したのが 表 6-2 である。中学生の男

子と女子で地域愛着の有無に差が見られるかどうか、カイ二乗検定を行った結

果、両者に有意な差は確認されなかった(p=0.770)。

また、中学生の主な住区である二つの校区で、地域愛着の有無に差がみられ

るかを調べるために、表 6-3 を作成した。愛着については、性別と同様に、感

じていると感じていないにグループ化してカイ二乗検定を行った結果、有意な

差は確認されなかった(p=1.00)。

二つの結果から、地域愛着の有無は、中学生の性別や住んでいる地域には関

係がないといえる。なお、表 6-3 については、主な二つの校区に住んでいる生

徒の校区と地域愛着を調べることが目的であるため、校区外に住んでいる生徒

と無回答の数は、除外している。

75

表 6-2 性別による地域愛着の有無

あなたは、現在住んでいる地域(校区 )に愛着を感じていますか。

感じている 感じていない 合計

男子 180 51 231

女子 180 64 244

合計 360 115 475

(NA= 3)

表 6-3 住区による地域愛着の有無

あなたは、現在住んでいる地域に愛着を感じていますか。

感じている 感じていない 合計

赤松校区 141 40 181

北川副校区 206 59 265

合計 347 99 446

(NA =3)

次に、地域の人々と交わすあいさつの有無と地域愛着の有無に有意差がある

かどうかを調べた。地域の人々と交わすあいさつについて、1 よくする 2 と

きどきする 3 あまりしない 4 まったくしない の 4 択法で回答したものを

1,2 はあいさつをする、 3,4 はあいさつをしない グループにした。愛着につい

ても 2 グループ化し、感じているグループは愛着あり、感じていないグループ

は愛着なしとした。その集計結果が 表 6-4 である。表 6-4 についてカイ二乗検

定を行った結果、あいさつと愛着には有意な差がみられた(p=0.001)。このこと

から、あいさつの有無と地域愛着の有無には関連があるといえる。

表 6-4 あいさつと地域愛着の有無

あなたは、地域の人々にあいさつをしますか。

あいさつをする あいさつをしない 合計

地域愛着あり 326 30 356

地域愛着なし 91 23 114

合計 417 53 470

(NA=8)

76

表 6-5 は、生徒たちが地域の大人に見守られていると思っているかどうかと

地域愛着の有無の関連を示したものである。 1 思う 2 すこし思う 3 あまり

思わない 4 思わない をグループ化し、1,2 を思う 3,4 を思わない にした。愛

着についてもグループ化し、あいさつの集計と同様に処理した。カイ二乗検定

を行った結果、有意の差がみられなかった(p=1.686)。見守られているという思

いの有無と地域愛着の有無には、関連があるとはいえない。

表 6-5 見守られているという思いと地域愛着の有無

あなたは、地域の大人に、見守られていると思いますか。

思う 思わない 合計

地域愛着あり 276 71 347

地域愛着なし 55 68 123

合計 331 139 470

(NA=8)

大人の 居住年数と地域愛着の有無については、これまでの先行研究の多くで

関連があるとされている。しかし、居住年数が短くても地域活動を活発に行っ

た場合には、地域愛着が生まれ、居住年数と地域愛着の有無は関連がないとい

う引地・青木(2005)の研究報告もみられる。本調査においては、居住年数を 10

年以上と 10 年未満の 2 群に分けて 表 6-6 を作成した。地域愛着については、

性別や住区と同様に 感じている、感じていない にグループ化した。居住年数

と地域愛着の有無について調べたが、カイ二乗検定の結果、有意な差がなく、

居住年数と地域愛着の関連はみられなかった(p=0.054)。

表 6-6 居住年数と地域愛着の有無

あなたは、現在住んでいる地域に愛着を感じていますか。

感じている 感じていない 合計

10 年未満 139 54 193

10 年以上 220 56 276

合計 359 110 469

(NA=9 )

77

今回の調査で最も重要な項目である、地域の祭りや行事への参加と地域愛着

について調べた。参加については、祭りや行事のための準備や当日の係などボ

ランティアとしての参加と一般参加とを区別せずに参加とした。また、参加回

数でなく具体的に祭りや行事の名称を挙げ、参加したことがあるかを質問した。

中学生が多く参加する祭り・行事を校区毎に 4 つ挙げ、回答を 0 から 4 に数値

化した。地域愛着も、1. 感じている から 4. 感じていない まで四択法とした。

校区外から通学している生徒には、参加したことがある地域の祭りや行事を 4

つ記入してもらった。結果は、表 6-7 に示すとおりである。参加度 4 において

は、参加度数が多ければ地域愛着が強くなることが明確になったが、参加度 3,2,1

については、いずれも 2. 少し愛着を感じているが頂点になっている。参加度 0

については、逆に 3. あまり感じていないが頂点になっている。また、参加度別

の地域愛着の割合からも参加度と地域愛着は関連がみられる。カイ二乗検定の

結果、5%水準で有意な差がみられた(p=0.002)。即ち参加の有無と地域愛着の有

無には関連があるといえる。

表 6-7 参加度数と地域愛着の有無

あなたは、現在住んでいる地域で行われる下記の祭りや行事に参加したことがありますか。

あれば番号に○をつけてください。

1.愛着を感じる 2.少し感じる 3. あまり感じない 4. 愛着を感じない

(度数) 4 19 17 5 1 合計 42

3 71 81 22 6 180

2 35 50 21 9 115

1 21 31 17 5 74

0 13 23 24 4 64

合計 159 202 89 25 475

(NA=3)

図 6-1 は参加度による愛着の割合がどのように変化するのかを示したもので

ある。愛着を感じている割合は参加度が増すごとに増加し、愛着をあまり感じ

ていない割合は参加度が増すごとに減少している。このことから、子どもたち

が地域の祭りや行事に参加する回数が増加すれば、地域愛着が増す可能性が窺

われる。

78

図 6-1 祭りや行事の参加度と地域愛着

最後に、現在住んでいる地域に大人になっても住みたいと思うかどうかと地

域愛着の有無について、表 6-8 を作成しその関連性を調べた。住みたい思いに

ついて 1 住みたい 2 できれば住みたい 3 あまり住みたくない 4 住みたくな

い の 4 択法の調査結果をグループ化し 1,2 を住みたい 3,4 を住みたくないと

した。愛着についてもグループ化した。住みたいという思いと地域愛着の有意

差を、カイ二乗検定で調べた結果、両者の間に関連はみられなかった(p=1.170)。

また、アンケート集計の結果から、調査対象の中学生は、大人になったら現在

住んでいる地域に住みたくないと思っている生徒が 4割もいることが分かった。

表 6-8 現在の地域に大人になっても住みたいかどうかと地域愛着の有無

あなたは、現在住んでいる地域に大人になっても住みたいと思いますか。

住みたい 住みたくない 合計

地域愛着あり 254 102 356

地域愛着なし 25 90 115

合計 279 192 471

(NA=7)

以上のアンケートの分析結果から、以下のことが分かった。

1. アンケートの分析結果から、男女の性差と地域愛着の有無には有意差がない

ことが分かった。近年の学校教育では、教育のすべてで男女差なく、人間とし

て平等に取り扱われているため、男女の身体的能力の差はあっても精神的な差

79

は少なくなっている。地域愛着の有無は男女の性差ではなく個人の差であると

いえる。

2. 居住地の違いと地域愛着の有無にも、有意差がないことが分かった。2 つの

小学校区は、地域の住環境にかなりの違いが見られる。しかし、文教地区と住

宅地区の住環境の違いも、地域愛着の有無には関わりがないことが判明した。

3. 居住年数と地域愛着についても、分析結果から有意差がないことが判明した。

しかし、居住年数と地域愛着については、先行研究に倣い、大人と同様に 10 年

未満と10年以上でグループ化して分析したための結果であることも考えられる。

中学生の年齢を考えると 10 年を境に以上、以下に区切ったことに考慮の余地が

ある。しかし、引地・青木 (2005:232-235) の研究で述べられているように、居

住年数や年齢のような時間の経過は、地域への愛着形成に大きな影響を与えな

い可能性がある。

4. 地域の人々と交わすあいさつについては、分析結果から地域愛着の有無と有

意差があることが分かった。あいさつについては、家庭や学校の教育の効果も

影響して、中学生のあいさつという行為を形成していると考える。

また、あいさつは相互作用であることから、地域の人々も「子どもへのまな

ざし運動」の一環として、あいさつ運動を展開したほうがよいのではないだろ

うか。地域の人々も地域で育っている子どもとあいさつを交わすことによって、

子どもに対する関心や思いも深まるので、あいさつ運動は効果的であると提案

したい。今後の国際社会のなかで、あいさつは最低のマナーであり、地域愛着

を醸成させる要因の一つとして重要視されるべきである。

5. 生徒たちが地域の大人に見守られていると思っているかどうかと地域愛着の

有無については、関連があるとは言えないというカイ二乗検定の結果が出た。

これは、大人に見守られていることは感じていても、それがストレートに地域

愛着に結びつくものではないことを意味する。即ち、見守られているという思

いの有無と地域愛着の有無は別物であるということに他ならない。見守られて

いるという思いは受動的で、地域愛着という主体的な域にまで達しないのでは

ないかと考える。この調査は、調査対象が中学生であるため上記のような結果

が出たが、子どもにとっては見守られているという思いが安心感につながるの

で、見守り運動は必要であると考える。

6. アンケートの主目的であった地域の祭りや行事への参加の有無と地域愛着の

有無については、カイ二乗検定の結果、有意差が確認された。これまで大人に

ついては、関連があるとする研究が多く見られるが、中学生においても同様に

関連があることが判明した(亀山, 2016:94-95)。

80

第 2 節 子どものまちづくり参加

前項において、カイ二乗検定の結果、子どもが地域の祭りや行事へ参加する

ことと地域愛着には関連性があることが判明した。図 6-1 祭りや行事の参加度

と地域愛着のグラフからも、子どもが地域の祭りや行事に参加する回数が増加

すれば、地域愛着が増す可能性が窺われた。このことから、子どもの地域愛着

醸成のためには、子どもの祭りや行事参加が効果的であるといえる。博多祇園

山笠が博多部の子どもたちにいかなるインパクトを与えているかを調査した中

野ほか (2013:362-388) の研究では、山笠に参加している子ども、さらには、家

族も山笠に参加している子どもほど、地域住民とあいさつを交わしていること、

及び、博多部という土地に対する愛着が強いことが明らかになったとしている。

このことは、子どもが地域の人と交わすあいさつや地域の祭りや行事に参加す

ることが、地域愛着につながるという本研究の証左となる。

佐賀市が実施している「子どもへのまなざし運動」は、個人や地域の各種団

体、会社・事業所等が一体となり、小学校区を単位として活動が展開されてい

る。具体的な活動についてはこれまで述べてきたとおりであるが、大人からの

まなざし運動は、子どもにどのような効果を生んでいるのだろうか。佐賀市教

育政策市民満足度調査のなかで、学校以外で参加したいイベント・行事の調査

結果や、地域の祭りや行事にボランティアとして参加した子どもへの聞き取り

調査から、子どもの関心が地域の祭りや行事に向けられてきたことが分かる。

子どもの関心が地域の祭りや行事に向けられてきたことを機会に、子どもの

まちづくり参加を提案したい。第 3 章では、全国の自治基本条例 308 の中から、

子どもに関する条項が入っている条例 140 の推移と広がりとその条項内容の分

析を行った。佐賀市まちづくり自治基本条例の子どもに関する条項は、第 25 条

であり、子どもが健やかに育つ環境を整える内容となっている。近年、日本の

社会は人口減少、少子高齢化、生産年齢人口の減少等の課題が山積しているが、

その中でも特に、出生率の低下による子どもの急激な減少は、日本の将来に関

わる大きな問題であり、社会状況の変化に応じて、子どもに対する見方も変え

ることが必要と考える。日本で 1994(平成 6)年に発効した国連の「児童の権利

に関する条約」では、子どもは保護や管理の客体ではなく、大人と同様に権利

の主体者であることを明確に示している。また、少子高齢化の日本の現状にお

いては、東北大震災時に中学生が貢献した実例もある。これらの諸状況を勘案

して、佐賀市まちづくり自治基本条例にも、子どもが健やかに育つ環境を整え

る内容のものに、新たに子どもがまちづくりに参加・参画する内容のものを加

えることが必要である。佐賀市まちづくり自治基本条例が施行され、2 年が経過

81

して条例見直しのための検証委員会が開催されている。ぜひこの機会に、第 25

条に子どもがまちづくりに参加・参画する内容のものを加えることを要望する。

佐賀市では、「まちづくり」に関する副読本を制作し、小学 3 年生以上と中

学生に配布している。副読本では、子どももまちの一員であることや花づくり

ボランティア・清掃活動等、自主的にできることを行うことがまちづくりであ

ると説明して、子どものまちづくり参加を促している (佐賀市・地球市民の会,

2015) 。

これまで、小学生・中学生・高校生が地域で行われる祭りや地域行事にボラ

ンティアとして参加している事例を紹介してきたが、これらの活動はまちづく

りへの参加である。赤松小・北川副小・城南中学生の地域清掃活動や東与賀小

中学生のシチメンソウまつりジュニアガイド、循誘小学生の佐賀城下ひなまつ

り子えびすガイド、日新小学生の日新小反射炉ガイド、中川副小学生や西川副

小学生の佐野常民記念館子どもボランティア等は、子どものまちづくりへの参

加事例である。これらのまちづくり活動によって、子どもには地域の一員とし

ての自覚が生まれ、中野ほか (2013) の研究で明らかになったように地域愛着も

育ってくると考えられる。

本研究では、子どもが地域の人と交わすあいさつや地域の祭りや行事に参加

することが、地域愛着につながるという結論を得た。今後は、地域で大人と子

どもがあいさつを交わし合い、地域の祭りや行事に子どもの出番を設け、役割

を与え、まちの一員として承認し子どもの地域愛着を醸成することが、地域活

性化のための一つの道であると考える。

<小括>

中学生の意識調査の値でカイ二乗検定を行った結果、地域の人と交わすあい

さつの有無と地域愛着の有無には有意な差がみられた。地域の祭りや行事への

参加と地域愛着については、参加度数が多くなれば地域愛着が強くなることが

明確になった。地域の祭りや行事への参加の有無と地域愛着の有無には関連が

あるといえる。更に、参加度による愛着の割合の変化から、愛着を感じている

割合は参加度が増すごとに増加していることから、子どもが地域の祭りや行事

に参加する回数が増加すれば、地域愛着が増す可能性が窺われる。このことか

ら、子どもの地域愛着醸成のためには、子どもの祭りや行事参加が効果的であ

ることが判明した。また、子どもの関心が地域の祭りや行事に向けられてきた

ことを機会に佐賀市まちづくり自治基本条例第 25 条に、子どもがまちづくりに

参加・参画する内容を加えることを提案したい。

82

第 7 章 まとめ

従来、日本は若者の進学や就職等で大都市に人口が集中し、地方は少子高齢

化や人口減少が進展してきた。この現状を打開するために、各自治体は住まい・

子育て・仕事等に支援制度を設け、地方移住や定住のために地域独自の促進対

策を打ち出しているが、その効果は十分でない。若者の大都市圏への流出を抑

制する方策として、雇用の場の確保と拡大のほかに、生活環境の安心・安全の

確保と、子どもの地域に対する愛着の醸成が考えられる。そこで、本研究にお

いては、子どもの地域に対する愛着が大都市圏から地方へと人々を呼び戻す一

つの要因になると考え、子どもの地域愛着の醸成を研究課題として設定した。

地域愛着に対する先行研究は、数多くなされているが、子どもの地域愛着に

ついての解明は十分になされていない。本研究では、近年の社会情勢から地方

創生の重要さが課題とされている現在、地域で育っている子どもに地域愛着を

育てることが地域活性化に向けた一方策と考え、中学生の祭りや行事への参加

が地域愛着にいかなる効用をもたらすかを明らかにすることを目的に研究を進

めた。

また、核家族化や独り暮らしの増加に伴い近隣の人々のつながりが希薄化し、

地域を支える様々な機能が維持できない状況が顕在化しつつある。そのような

地域社会の現状を活性化させ、子ども・若者から高齢者までが、住み慣れた地

域で生き生きとして暮らせるような地域づくりが、今、求められている。その

ためには、子どもの地域愛着の醸成と行政の施策に加えて地域住民の参加と協

働が不可欠である。地域活性化における住民参加と協働は、活動が広範囲にわ

たるため、子どもとの関わりの面に研究範囲をおくこととし、研究テーマを「地

域活性化に向けた子どもの地域活動と地域愛着の研究」とした。子どもの地域

活動と地域愛着を研究対象として、心身ともに成長著しく社会に対する視野が

広がる中学生を選定した。

まず、最初に、中学生の地域とのふれあいと地域愛着の現状を検証するため、

アンケート調査を用いて東与賀中学生の意識を分析した。あいさつや地域の祭

り・行事参加が地域愛着に及ぼす影響について相関関係を探った。あいさつに

ついてはある程度、地域愛着との相関があると評価できるが、地域の祭りや行

事参加については極めて弱い相関関係であることが分かった。次に、アンケー

ト調査結果を基に共分散構造分析を行ったところ、中学生の地域愛着は、人と

のふれあいと自然とのふれあいにより形成されると予測したが、自然とのふれ

あいは地域愛着に対して強い影響を与え、人とのふれあいは影響が弱いことが

判明した。この分析結果から東与賀町の豊かな自然環境に加え、中学生は一日

の大半を学校で過ごすため、人とのふれあいと地域愛着の間には強い関係は認

83

められなかったと考えられる。このように、人とのふれあいの面ではは地域愛

着への影響が弱いが、いかなる地域においても中学生であるという年齢を考慮

すれば、愛着形成策が必要である。

次に、大人がどのように子どもに関わり育てようとしているかについて、自

治基本条例における子どもに関する条項の分析から、子どもに対する見方と子

どもの役割について考察し、愛着形成策を探った。全国の自治体のうち、自治

基本条例を制定している 308 の自治体の自治基本条例のなかで、子どもに関す

る条項が入っている自治基本条例 140 の内容分析を行った結果、①子どもがま

ちづくりに参加・参画する内容のもの、②子どもが健やかに育つ環境を整える

内容のもの、③子どもがまちづくりに参加・参画する内容と、子どもが健やか

に育つ環境を整える内容の両方が入っているもの 、この 3 パターンがあること

が分かった。しかし、「児童の権利に関する条約」によって、子どもは保護や管

理の客体ではなく、大人と同様に権利の主体者であることが明確に示されて以

来、子どもに対する見方が、権利の主体者であるとする新しい見方に変化しつ

つある。自治基本条例の浸透により、地域社会において子どもも活躍できる場

が増加すれば、活動意欲も高まり、その結果、自己肯定感も生まれると考える。

また、体験活動や地域貢献活動は、子どもに郷土愛を育て、地域の一員として

の自覚を持たせ、地域愛着を育むことにつながる愛着形成策である。これらの

ことから、子どもも大人と同様に、それぞれの年齢に応じてまちづくりに参加・

参画できるようにすることが、望ましいと考える。

自治基本条例の子どもに関する条項にみられるように、子どもが未来を担う

存在であることを認識して、子どもの育成に関わる住民参加と協働の活動が各

地で実施されている。そのなかで、佐賀県で最初にコミュニティ・スクールの

指定を受けた赤松コミュニティ・スクールの活動を中心に、学校と地域住民の

参加と協働について検討した。赤松コミュニティ・スクールの組織は、安全推

進、学校教育、地域連携の 3 コミュニティ委員会で構成され、その下部組織と

して 9 つのコミュニティがあり、常時活動している。この活動には、保護者の

他に自治会、老人会等、地域の各種団体が教育支援に参加している。また、校

区内に所在する博物館や城内公園管理事務所の職員までが参加し、地域の総力

を挙げての子どもに対する教育支援である。子どもの地域行事への参加促進や

地域行事協力ボランティア参加を促す工夫も公民館と学校が考案して、子ども

の地域行事参加を推進している。このようにしてコミュニティ・スクールの活

動を継続しているなかで、地域住民が学校に来る機会も増加し、子どもと共に

学校職員も地域行事に参加するようになり、学校と地域住民の協働が効果を上

げている。また、赤松小学校・北川副小学校・城南中学校の 3 校はコミュニテ

ィ・スクール「城南豊夢学園」として連携・協働の活動を行っている。多くの

84

活動のなかで、中学生出前あいさつ運動及び、3 校合同の「城南豊夢学園クリー

ン大作戦」の地域美化活動は、子どもに郷土を愛する心を育てると共に、異年

齢の子どもとの交流の機会を与え、少子化で欠けている子ども同士の信頼や尊

敬を育む機会にもなっている。コミュニティ・スクールの活動が始まってから、

中学生のボランティア派遣や地域行事への参加がスムーズになったことからも、

地域に対する関心が深まり地域愛着が醸成されつつある。

住民参加と協働による子どもの育成を、佐賀市「子どもへのまなざし運動」

を中心に活動展開と子どもの心の変化を検討した。活動事例として循誘小学校

の「えびすでまちづくり」を取り上げ、循誘校区内で行われている「恵比須 DE

まちづくりネットワーク」の活動状況の聞き取り、及び、循誘小学校 3 年生の

総合学習の実施状況を調査した結果、「学校」「家庭」「地域」の協働が進んでい

ることが判明した。この事例で見られるように、佐賀市内では公民館を中心に

して、住民参加と協働による子どもの育成、及びまちづくりが行われている。

また、「子どもへのまなざし運動」推進のために配置されている地域教育コーデ

ィネーターの努力もあり、地域の人が学校へ関心を寄せ、学校の職員や子ども

が地域行事に参加するようになってきた。住民参加と協働による子どもの育成

の効果は、次の点に現れている。一つには、佐賀市教育委員会が毎年実施して

いる調査で、子どもが「学校以外で参加したいイベント・行事」の調査項目で、

「地域のお祭り・伝統行事」は緩やかに増加傾向になっていることである。こ

のことは、子どもの心に地域に対する関心が徐々に生まれてきたことを示して

いる。二つには、地域の祭り・伝統行事等に参加した子どもたちに、活動に対

する聞き取り調査を行った結果、子どもは地域のために役立った充実感や大人

に認められたことに喜びを感じ、地域に関心を持ち今後も参加したいと思って

いることが分かった。

最後に、子どもの地域活動と地域愛着の関連を調べるために、中学生の意識

調査を城南中学校の全生徒を対象に、質問紙による「中学生の地域活動と地域

への愛着に関するアンケート調査」を実施した。アンケートの分析結果から、

以下のことが分かった。

1. 中学生においては、男女の性差・居住地・居住年数と地域愛着の有無には、有

意差がない。

2. 地域の人々と交わすあいさつについては、地域愛着の有無と有意差がある。

あいさつについては、家庭や学校の教育の効果も影響して、中学生のあいさつ

という行為を形成している。また、あいさつは相互作用であることから、地域

の人々にも「子どもへのまなざし運動」の一環として、地域でのあいさつ運動

を提案したい。

3. 中学生が地域の大人に見守られていると思っているかどうかと地域愛着の有

85

無については、有意差があるとは言えない。この調査は、調査対象が中学生で

あるため上記のような結果が出たが、幼児や小学生においては、見守られてい

るという思いが安心感につながるので、見守り運動は必要であると考える。

4. アンケートの主目的であった地域の祭りや行事への参加の有無と地域愛着の

有無については、有意差がある。大人については、関連があるとする研究が多

く見られるが、中学生においても同様に関連があることが判明した。

以上から、子どもが地域の人々と交わすあいさつ、及び、地域の祭りや行事

への参加と地域愛着には有意差があることが判明した。愛着を感じている割合

は参加度が増すごとに増加している。このことから、子どもたちが地域の祭り

や行事に参加する回数が増加すれば、地域愛着が増す可能性が窺われる。

子どもの関心が地域の祭りや行事に向けられてきたことを機会に、子どもの

まちづくり参加を提案したい。佐賀市まちづくり自治基本条例の子どもに関す

る条項は、第 25 条であり、子どもが健やかに育つ環境を整える内容のものとな

っている。国連の「児童の権利に関する条約」では、子どもは保護や管理の客

体ではなく、大人と同様に権利の主体者であることが明確に示されている。佐

賀市まちづくり自治基本条例にも、新たに子どもがまちづくりに参加・参画す

る内容を加えることが必要である。これまで紹介してきた、赤松小・北川副小・

城南中学生の地域清掃活動や東与賀小中学生のシチメンソウまつりジュニアガ

イド、循誘小学生の佐賀城下ひなまつり子えびすガイド、日新小学生の日新小

反射炉ガイド、中川副小学生や西川副小学生の佐野常民記念館子どもボランテ

ィア等は、子どものまちづくりへの参加事例である。これらのまちづくり活動

によって、子どもには地域の一員としての自覚が生まれ、地域愛着も育ってく

ると考えられる。本研究では、子どもが地域の人と交わすあいさつや地域の祭

りや行事に参加することが、地域愛着につながるという結論を得た。今後は、

地域で大人と子どもがあいさつを交わし合い、地域の祭りや行事に子どもの出

番を設け、役割を与え、まちの一員として承認し、子どもの地域愛着を醸成す

ることが地域活性化のための一つの道であると考える。

86

引用・参考文献

赤松小学校 (2012). 赤松・スクール パンフレット .

トゥアン,Y. (山本浩訳) (1988). 『空間の経験―身体から都市へ』筑摩書房 .

石橋一徳 (2012). トライ・ザ・赤松~個人レベルへの進化を目指す参画意識改

革~ . 2012 年度全国コミュニティ・スクール研究大会発表資料 .

レルフ,E. (高野武彦・阿部隆・石山美也子訳) (1991). 『場所の現象学―没場

所性を超えて』 筑摩書房 .

NPO 法人公共政策研究所 (2014:2016) . 全国の自治基本条例一覧 (2014 年 3

月 26 日更新. 2016 年 6 月 12 日更新) .

岡田浩一・石川公彦(2010) . 『ケースで学ぶまちづくり一協働による活性化へ

の挑戦―』創成社 .

角谷嘉則 (2009) . 『株式会社黒壁の起源とまちづくりの精神』創成社 .

神原勝 (2005) . 『自治基本条例の理論と方法』 公人の友社 .

神原勝 (2009) . 『自治・議会基本条例論 自治体運営の先端を拓く』 公人の

友社 .

亀山清美 (2016). 地域活動や挨拶と地域への愛着に関する考察~中学生の意識

調査を事例として~. 地域活性研究, 7, 90-98 .

木佐茂男・逢坂誠二編 (2003) . 『わたしたちのまちの憲法 ニセコ町の挑戦』

日本経済評論社 .

木佐茂男・片山健也・名塚昭 編 (2012) . 『自治基本条例は活きているか!?ニセ

コ町まちづくり基本条例の 10 年』 公人の友社 .

教育基本法(2006) . 平成 18 年法律第 120 号 .

熊谷健二 (2014) . 淡窓先生に続け 月刊ヒタスタイル 9 月号 .

佐賀市教育委員会(2007) . 佐賀市立学校における地域学校運営協議会の設置等

に関する規則 .

佐賀市 (2007) . 佐賀市未来を託す子どもを育むための大人の役割に関する条

例 .

佐賀市 (2010) . 地域の中で育つ子どもたち一地域教育コーディネーター実践事

例集 .

佐賀市 (2011) . 地域の中で育つ子どもたち一地域教育コーディネーター実践事

例集 .

佐賀市 (2012) . 地域の中で育つ子どもたち一地域教育コーディネーター実践事

例集 .

佐賀市 (2013) . 地域の中で育つ子どもたち一地域教育コーディネーター実践事

例集 .

87

佐賀市 (2013) . 第 7 回佐賀市行政改革推進会議資料2-② .

佐賀市 (2014) . 地域の中で育つ子どもたち一地域教育コーディネーター実践事

例集 .

佐賀市 (2014) . 平成 26 年度佐賀市教育政策市民満足度調査報告書, 88 .

佐賀市・地球市民の会 (2015) . できることからはじめよう!みんなでまちづく

り.佐賀市 .

佐賀市 (2016) . 平成 28 年度佐賀市市民意向調査報告書 .

社会教育法(2008) . 社会教育法の一部改正 .

児童の権利に関する条約 (1994) . 本論では、政府訳の児童の権利に関する条約

を採用する。

鈴木春菜・藤井聡 (2007) . 利用店舗への愛着が地域愛着へ及ぼす影響とその規

定因に関する研究. 都市計画論文集, 42(3), 13-18 .

鈴木春菜・藤井聡 (2008a) . 「地域風土」への移動途上接触が「地域愛着」に

及ぼす影響に関する研究. 土木学会論文集 D, 64 (2), 179-189 .

鈴木春菜・藤井聡 (2008b) . 「消費行動」が「地域愛着」に及ぼす影響に関す

る研究. 土木学会論文集 D, 64 (2), 190-200 .

鈴木春菜・藤井聡 (2008c) . 地域愛着が地域への協力行動に及ぼす影響に関する

研究. 土木計画学研究・論文集, 25 (2), 357-362 .

総務省 (2007) . 資料 特色ある地域活性化事例 .

園田美保(2002) 住区への愛着に関する文献研究. Kyushu University

Psychological Research, 3, 187-196 .

谷口綾子・今井唯・原文宏・石田東生 (2012) . 観光地における多様な主体の地

域愛着の規定因に関する研究―ニセコ・俱知安地域を事例として一. 土木学

会論文集 D3, 68(5), (土木計画学研究・論文集 29), I_551-I_562 .

田部井洋文 (2010) . 『佐賀の「共育」を創る』 モリモト印刷 .

中野苑香・立石武泰・杉万俊夫 (2013) . 地域が子どもを育む一博多祇園山笠と

子どもたち一. 集団力学, 30, 362-407 .

永井憲一・市川昭午編 (2001) . 『子どもの人権大辞典』 エムティ出版 .

新潟市(2006) . 地域と学校パートナーシップ事業実施要項 第 9 条 .

西日本新聞 (2015) . 日田の小学生咸宜園ガイド. 2015年2月25日の新聞記事 .

引地博之・青木俊明 (2005) . 地域に対する愛着形成の心理過程の検討. 景観・

デザイン研究講演集, 1, 232-235 .

引地博之・青木俊明・大渕憲一 (2009) . 地域に対する愛着の形成機構―物理的

環境と社会的環境の影響―. 土木学会論文集 D, 65(2), 101-110 .

日田市 (2010) . ひたし子ども育成支援行動計画 (後期計画) 日田市役所 .

日田市 (2012) . 平成 24 年度ひたっ子 子育てガイドブック 日田市子ども未

88

来室 .

樋野公宏・白石靖幸・星旦二・伊香賀俊治 (2012) . 子どもの地域活動の参加要

因と健康関連要因の構造分析-保護者の意識・行動及び地域の安全環境に

着目して一. 日本建築学会計画系論文集, 77 (679), 2119-2125 .

藤井聡 (2006) . 風土に関する土木工学的考察一近代保守思想に基づく和辻『風

土―人間的考察―』の実践的批評―, 土木学会論文集D, 62 (3), 334-350 .

槇野光聡・添田昌志・大野隆造 (2001) . 地域に関する情報が居住地への愛着形

成に与える影響. 日本建築学会大会学術講演梗概集(関東), 769-770 .

文部科学省 (2012). コミュニティ・スクール 文部科学省から各教育委員会に配

布された資料 .

文部科学省 (2014). コミュニティ・スクールの指定状況(平成 26 年 4 月 1 日) .

和辻哲郎 (1948) . 『風土―人間的考察―』 岩波書店 .