平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 -...

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(「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)

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Page 1: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

新 た な 防 衛 大 綱

(「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)

防 衛 省

Page 2: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

目 次

Ⅰ 22大綱策定までの経緯 ・・・・・・・・・・・・・・ 1

Ⅱ 22大綱策定の背景となった安全保障環境 ・・・・・・ 4

Ⅲ 22大綱が示す防衛力の在り方 -動的防衛力- ・・・ 9

Ⅳ 22大綱の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

平成22年度の防衛力整備等について ・・・・・・・・・・ 31 (平成21年12月17日 安全保障会議決定・閣議決定)

平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について ・・・・・ 33 (平成22年12月17日 安全保障会議決定・閣議決定)

内閣官房長官談話 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 (平成22年12月17日)

防衛大臣談話 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46 「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」及び 「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)」の決定について (平成22年12月17日)

(参考)防衛計画の大綱に示す防衛力構想の変遷 ・・・・・ 50

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- 1 -

Ⅰ 22大綱策定までの経緯

1 これまでの防衛計画の大綱 「防衛計画の大綱」(防衛大綱)は、我が国の安全保障の基本方針、防衛力の意義

や役割、さらに、これらに基づく自衛隊の具体的な体制、主要装備の整備目標の水準

といった今後の防衛力の在り方等について基本指針を示すものです。 防衛大綱は「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱」(昭和51年に策定された

ので、以下「51大綱」と呼びます。)、「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(0

7大綱)、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(16大綱)、とこれまで3度策

定されました。 今回策定した「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(22大綱)は4つ目の

防衛大綱となります。

2 16大綱の見直しの方針の決定(平成21年12月) 16大綱には、策定から5年後には、その時点における安全保障環境、技術水準の

動向等を勘案し検討を行い、必要な修正を行うことと明記されていることから、その

見直しは、当初、平成21年中に行われる予定でした。 しかしながら、平成21年夏に実施された総選挙の結果、政権交代があり、16大

綱の見直しという国家の安全保障にかかわる重要な課題については、新しい政府とし

て十分な検討を行うことになりました。このため、平成21年12月17日の閣議決

定「平成22年度の防衛力整備等について」によって、16大綱の見直しは、(平成

21年中ではなく)平成22年中に結論を得ることとしました。 また、この閣議決定においては、次の中期防衛力整備計画は16大綱の見直しの議

論を踏まえて策定することとしましたが、これにより、中期防衛力整備計画がない中

で平成22年度防衛予算を編成することとなりました。この点に対応するため、政府

はこの閣議決定において、平成22年度の防衛予算と16大綱との関係、中期防衛力

整備計画がない中で適切に防衛力の整備を行うための方針を示しました。この方針

(平成22年度の防衛予算の編成の準拠となる方針:31、32頁参照)は、平成2

昭和32 年 「国防の基本方針」(32.5.20)33 3335 35 37

414246

4751

-「防衛計画の大綱」策定(51.10.29)-

55 55

59 58

62 61

237

-「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」策定(7.11.28)-8

1213

16-「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」策定(16.12.10)-

1721

10

15

20

13中期防(政府5か年計画)(12.12.15)

17中期防(政府5か年計画)(16.12.10)

40

45

50

60

平成 元年

61中期防(政府5か年計画)(60.9.18)(GNP比1.02%)

03中期防(政府5か年計画)(2.12.20)

08中期防(政府5か年計画)(7.12.15)

一次防(政府3か年計画)(32.6.14)

二次防(政府5か年計画)(36.7.18)

三次防(政府5か年計画)(41.11.29)

四次防(政府5か年計画)(47.2.8)

53中業(防衛庁内部資料)

56中業(防衛庁内部資料)

08中期防(政府5か年計画)見直し(9.12.19)

03中期防(政府5か年計画)修正(4.12.18)

「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」(15.12.19)

「当面の防衛力整備について(GNP1%枠)」(51.11.5)

「今後の防衛力整備について」(62.1.24)「平成3年度以降の防衛計画の基本的考え方について」(2.12.19)

17中期防(政府5か年計画)見直し(20.12.20)「平成22年度の防衛力整備等について」(21.12.17)22

-「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」策定(22.12.17)-23中期防(政府5か年計画)(22.12.17)23

27

これまでの防衛力整備計画の推移これまでの防衛力整備計画の推移

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- 2 -

2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、①各種事態の抑止及び即応・実効的対応能力の

確保、②地域の安全保障環境の一層の安定化、③グローバルな安全保障環境の改善に

向けた取組の推進、④効率化・合理化に向けた取組といった四つの重点事項を示しま

した。これらの重点事項は、22大綱が打ち出した防衛力の在り方(Ⅲ及びⅣで紹介)

への連続性を有していたと言えるでしょう。 3 「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(平成22年2月~8月) 平成22年2月16日、政府として行う16大綱の見直しの検討に資するため、関

係する分野の有識者を委員等とする「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談

会」((座長:佐藤茂雄 京阪電鉄代表取締役CEO)以下「懇談会」と呼びます。)

の開催が決定されました。 懇談会は、同月18日の第1回会合以降、同年5月までに8回開催され、防衛省を

含む関係省庁からのヒアリングも行いつつ、委員間で精力的な議論が行われました。

その後、論点整理等の作業を経て、同年8月27日に開催された会合において、報告

書が佐藤座長から菅内閣総理大臣に提出されました。 この報告書では、まず、日本がこれからとるべき安全保障戦略として、日本の安全

と繁栄、日本周辺地域と世界の安定と繁栄、自由で開かれた国際システムの維持とい

う3つの安全保障上の目標を示し、そのための戦略及び手段として、日本自身の取組、

同盟国との協力、多層的な安全保障協力を提示するとともに、「平和創造国家」との

日本のアイデンティティーを提唱しています。 また、防衛力の在り方については、従来の装備や部隊の量・規模に着目した「静的

抑止」に対し、平素から警戒監視や領空侵犯対処を含む適時・適切な運用を行い、高

い部隊運用能力を明示することによる「動的抑止」の重要性が高まっていると指摘し

ています。その上で、従来の「基盤的防衛力構想」から脱却し、16大綱が示した「多

機能・弾力的・実効性を有する防衛力」を引き続き目指しつつ、多様な事態への対処

能力に裏打ちされた、信頼性の高い、動的抑止力を構築すべきことや、陸上・海上・

航空それぞれの防衛力について、必要とされる能力を高める一方で、優先度の低い装

備等を見直す「選択と集中」を進めるべきことなどを述べています。

新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会

【委員】佐 藤 茂 雄(座長) 京阪電気鉄道株式会社 代表取締役CEO 取締役会議長岩 間 陽 子 政策研究大学院大学 教授白 石 隆(座長代理)独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所 所長

添 谷 芳 秀 慶應義塾大学法学部 教授中 西 寛 京都大学大学院法学研究科 教授

広 瀬 崇 子 専修大学法学部 教授松 田 康 博 東京大学東洋文化研究所 准教授山 本 正 財団法人日本国際交流センター 理事長

【専門委員】伊 藤 康 成 三井住友海上火災保険株式会社 顧問 (元防衛事務次官)加 藤 良 三 日本プロフェッショナル野球組織 コミッショナー (前駐米大使)齋 藤 隆 株式会社日立製作所 特別顧問 (前防衛省統合幕僚長)

【委員】佐 藤 茂 雄(座長) 京阪電気鉄道株式会社 代表取締役CEO 取締役会議長

岩 間 陽 子 政策研究大学院大学 教授白 石 隆(座長代理)独立行政法人日本貿易振興機構 アジア経済研究所 所長添 谷 芳 秀 慶應義塾大学法学部 教授

中 西 寛 京都大学大学院法学研究科 教授広 瀬 崇 子 専修大学法学部 教授松 田 康 博 東京大学東洋文化研究所 准教授山 本 正 財団法人日本国際交流センター 理事長

【専門委員】伊 藤 康 成 三井住友海上火災保険株式会社 顧問 (元防衛事務次官)加 藤 良 三 日本プロフェッショナル野球組織 コミッショナー (前駐米大使)

齋 藤 隆 株式会社日立製作所 特別顧問 (前防衛省統合幕僚長)

これまでの議論の論点についての全般的な整理22.5.288

国際社会の課題と日本の対応22.3.93

周辺諸国の軍事動向22.2.242

これまでの防衛計画の大綱の考え方22.2.181

「自衛隊の将来体制」及び「財政事情」22.4.276

防衛力を支える基盤(①防衛生産・技術基盤、②人的基盤)22.4.85

米国の安全保障戦略と日米同盟22.3.174

報告書の取りまとめ及び総理への提出22.8.279

情報と情報保全(サイバー攻撃対処を含む)22.5.127

議題開催日回次

これまでの議論の論点についての全般的な整理22.5.288

国際社会の課題と日本の対応22.3.93

周辺諸国の軍事動向22.2.242

これまでの防衛計画の大綱の考え方22.2.181

「自衛隊の将来体制」及び「財政事情」22.4.276

防衛力を支える基盤(①防衛生産・技術基盤、②人的基盤)22.4.85

米国の安全保障戦略と日米同盟22.3.174

報告書の取りまとめ及び総理への提出22.8.279

情報と情報保全(サイバー攻撃対処を含む)22.5.127

議題開催日回次

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4 政府における検討(平成22年2月~12月) 懇談会の第1回会合が開催された平成22年2月18日、防衛省では、防衛大臣を

議長とする防衛会議が開催され、今後の防衛力の在り方等について専門的な検討を行

っていくこととしました。この会議以降、大臣、副大臣、政務官のリーダーシップの

下、省を挙げての総合的な検討が進められました。その中では、安全保障環境認識、

防衛力の役割及び自衛隊の体制といった中核的なテーマのほか、定員と実員の乖離や

年齢・階級構成の在り方といった「人」をめぐる問題、装備品等の取得の一層の効率

化、防衛生産・技術基盤の在り方等、防衛省・自衛隊が直面する多様な課題にも力点

が置かれました。こうした防衛省における検討の成果は、平成23年度防衛予算の概

算要求の基礎となるとともに、安全保障会議を中心とする政府全体としての検討に活

かされました。 政府全体としての検討は、平成22年9月から12月までの間に9回開催された安

全保障会議(注)を中心に、懇談会の報告書も検討材料の一つとしつつ、精力的に行

われました。特に、論点整理や意見集約のため、外務大臣、財務大臣、防衛大臣、官

房長官等の関係閣僚が頻繁に協議を行ったことは、22大綱の検討プロセスの一つの

特徴であったと言えるでしょう。 このような検討を経て、平成22年12月17日に開催された安全保障会議と閣議

において22大綱が決定されました。 (注)07大綱策定時には安全保障会議を10回開催。

16大綱策定時には安全保障会議を5回開催。

大綱見直しに係る政府における検討のプロセス(平成22年)大綱見直しに係る政府における検討のプロセス(平成22年)

4月3月2月1月 8月7月6月5月 12月11月10月9月4月3月2月1月 8月7月6月5月 12月11月10月9月

懇談会提言(8/27) ★

安保会議(防衛計画の大綱の見直し等に関する検討の進め方)(9/14) ●

★懇談会第1回(2/18)

(参考)「平成22年度の防衛力整備等について」

⇒ 平成21年12月17日安保会議・閣議決定

安保会議(新たな安全保障環境等)(10/1) ●

安保会議(我が国の安全保障の基本方針)(10/19) ●

安保会議(防衛力の役割等)(11/5) ●

安保会議(防衛生産・技術基盤等)(11/16) ●

安保会議(論点整理)(11/30) ●

安保会議(防衛計画の大綱①)(12/10) ●

安保会議(防衛計画の大綱②、中期防衛力整備計画)(12/14) ●

安保会議・閣議(防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画決定)(12/17) ●

関係閣僚による協議

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Ⅱ 22大綱策定の背景となった安全保障環境

今日の安全保障環境下では、我が国の存立を脅かすような外部からの侵略が起こる可

能性は低いものの、16大綱策定以降、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定要因は、

多様で複雑かつ重層的なものとなっています。また、地域とグローバルな安全保障課題

に対し、同盟国、友好国その他の関係各国と協力して積極的に取り組むことが重要にな

っています。 以下、22大綱策定にあたって考慮した事項につき説明します。 1 グローバルな安全保障環境(安全保障課題に一国で対応することがますます困難に) 今日の国際社会では、国家間の相互依存関係の進展により、一国で生じた混乱や安

全保障上の問題の影響が直ちに世界に波及するリスクが高まっています。また、民

族・宗教対立等による地域紛争に加え、領土や主権、経済権益等をめぐる対立や争い

が平時・有事とも言い難い緊張下に置かれることが多くなっています(いわゆる「グ

レーゾーンの紛争」の増加)。このような中、中国、インド、ロシア等の国力の増大

や米国の影響力の相対的変化により、グローバルなパワーバランスに変化が生じてい

ますが、米国は引き続き世界の平和と安定に最も大きな役割を果たしています。 国際社会では、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織、海賊行為等へ

の対応といった16大綱策定時から引き続く課題に加え、地域紛争、統治機構が弱体

化又は破綻した国家の存在もグローバルな安全保障環境に影響を与え得る課題とな

っています。さらに、海洋、宇宙、サイバー空間の安定的利用に対するリスクが新た

な課題となってきており、長期的には、気候変動の問題が安全保障環境にもたらす影響

にも留意する必要があります。 このようなグローバルな安全保障課題は、一国で対応することは極めて困難であり、

利益を共有する国々が平素から協力することが重要となっています。 こうした中、国際社会における軍事力の役割は一層多様化しています。武力紛争の

抑止・対処、国家間の信頼醸成・友好関係の増進のほか、紛争の予防から復興支援等

の平和構築、さらには非伝統的安全保障分野において、非軍事部門とも連携・協力し

つつ、軍事力が重要な役割を果たす機会が増加しています。 2 アジア太平洋地域 (1)国家間の協力関係が充実・強化 この地域では、相互依存関係が拡大・深化する中、安全保障課題の解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られています。特に人道支援・災害救援、海賊

対処等の非伝統的安全保障分野を中心に、問題解決に向けた具体的な協力が進展し

つつあります。

○グローバルなパワーバラ

ンスの変化

○「グレーゾーンの紛争」

○地域における協力関係充

実・強化

○複雑さを増す我が国周辺

の軍事情勢

○国際テロや弾道ミサイル

等の新たな脅威

○世界の平和が日本の平和

に直結する状況

○抑止重視から対処重視に

転換する必要性

○東西冷戦の終結

○不透明・不確実な要素が

ある国際情勢

○国際貢献等への国民の期

待の高まり

○東西冷戦は継続するが緊

張緩和の国際情勢

○我が国周辺は米中ソの均

衡が成立

○国民に対し防衛力の目標

を示す必要性

背景

22大綱(2010年)16大綱(2004年)07大綱(1994年)51大綱(1976年)

○グローバルなパワーバラ

ンスの変化

○「グレーゾーンの紛争」

○地域における協力関係充

実・強化

○複雑さを増す我が国周辺

の軍事情勢

○国際テロや弾道ミサイル

等の新たな脅威

○世界の平和が日本の平和

に直結する状況

○抑止重視から対処重視に

転換する必要性

○東西冷戦の終結

○不透明・不確実な要素が

ある国際情勢

○国際貢献等への国民の期

待の高まり

○東西冷戦は継続するが緊

張緩和の国際情勢

○我が国周辺は米中ソの均

衡が成立

○国民に対し防衛力の目標

を示す必要性

背景

22大綱(2010年)16大綱(2004年)07大綱(1994年)51大綱(1976年)

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(2)複雑化する我が国周辺地域の情勢

我が国周辺地域には、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が集中しており、

多数の国が軍事力を近代化し、各種の活動を活発化させています。 また、領土や海洋をめぐる問題や、朝鮮半島や台湾海峡等をめぐる問題が存在す

るなど不透明・不確実な要素が残されています。

西沙問題

竹島問題

沖ノ鳥島

尖閣諸島

我が国のシーレーン

グアム島

南沙問題

J-10

キロ級潜水艦

DF-31大陸間弾道ミサイル

露Tu-95が伊豆諸島沖を領空

侵犯(08年2月)

「第二列島線」

「第一列島線」

ソブレメンヌイ級駆逐艦等4隻が

中国海軍戦闘艦艇として初めて

津軽海峡を通過し、我が国を周回

(08年10月)

沖縄近海と伝えられる国際水域で、

中国ソン級潜水艦が米空母キティ

ホーク近傍に浮上(06年10月)

キロ級潜水艦、ソブレメンヌイ級駆逐

艦等中国艦艇10隻が沖縄本島と宮古

島の間を抜けて太平洋に進出。海自

護衛艦に対して中国艦載ヘリが近接

飛行(10年4月)

韓国海軍哨戒艦

「天安」沈没事件

(10年3月)

極東ロシア軍による活動の活発化

中国海軍による遠方海域

での作戦遂行能力の向上

朝鮮労働党代表者会で、金正恩氏が

党の役職に公式に就任(10年9月)

中台軍事バランスの

変化(中国側に有利に)

朝鮮半島の緊張の高まり

中国国防費の増大

2,100億元 (04年)

→5,191億元 (10年)

中国の軍事力

の更なる近代化 北朝鮮の後継体制構築の動き

大規模演習「ボストーク2010」

を実施(10年6月~7月)

北方領土問題

メドヴェージェフ露大統領、

国後島訪問 (10年11月)

複数の中国H-6爆撃機が、

日中中間線付近まで進出

(07年9月)

樫(天外天)ガス田付近を中国

ソブレメンヌイ級駆逐艦が航行

(05年9月)

中国公船2隻が尖閣諸島周辺

の我が国領海に侵入

(08年12月)

尖閣諸島周辺の我が国領海内

で、中国漁船が海保巡視船に

衝突(10年9月)

中国による我が国近海な

どにおける活動の活発化

北朝鮮による韓国

延坪島砲撃事件

(10年11月)

我が国周辺の安全保障事象(2004年~2010年)我が国周辺の安全保障事象(2004年~2010年)

我が国上空を超えるミサイルの発射(09年4月)

核実験実施の発表(06年10月、09年5月)

北朝鮮による核実験、弾道ミサイル能力の増強

中国による海洋調査(台湾

問題への対処以外の任務の

ための能力の獲得)

日本 中国 韓国 インド 豪州 ロシア 米国ニュージーランド

ADMM(ASEAN国防相会議)

(ブルネイ インドネシア マレーシア タイフィリピン シンガポール ベトナム

ラオス カンボジアミャンマー

日本 韓国 中国

EU

ペルー メキシコ チリ

香港 台湾太平洋諸島フォーラム(◆)

ASEAN事務局(◆)

カナダ

豪州 ニュージーランド インド

ASEAN+3

EAS(東アジア首脳会議)

ASEAN・PMC(ASEAN拡大外相会議)

(◆)は、オブザーバー参加

ASEAN

日中韓協力

ARF(ASEAN地域フォーラム)

カナダ EU モンゴル 北朝鮮 パキスタン

東ティモール バングラデシュ

スリランカ パプア・ニューギニア

ブルネイ インドネシア マレーシア タイラオス カンボジア ミャンマー フィリピンシンガポール ベトナム

貿易・投資、金融、保健、環境、エネルギー等の

様々な分野における地域協力の進展安全保障分野における域内枠組

ADMMプラス(拡大ASEAN国防相会議)

(米国) (ロシア)

ADMMプラスの下に以下の5分野を中心として、安全保障上の課題を議論するため、

各分野毎に専門家会合(EWG)を設置

①人道支援・災害救援 (中国・ベトナム)

②海上安全保障 (豪州・マレーシア)③防衛医学 (日本・シンガポール)

④テロリズムへの対応 (米国・インドネシア)⑤平和維持活動 (ニュージーランド・フィリピン)

※( )内は共同議長国

※( )内は2011年から正式に参加する国

地域協力枠組の現状地域協力枠組の現状

APEC(アジア太平洋経済協力)

注:中国軍関係者は、海軍の作戦海域上の概念として「列島線」を想定していると指摘されている。

(「列島線」の位置は、米国防省「中華人民共和国の軍事・安全保障の進展に関する年次報告2010年版」中の図表等を参考)

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① 北朝鮮 北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散等を継続するとと

もに、大規模な特殊部隊を保持しているほか、朝鮮半島において軍事的な挑発行

動を繰り返しています。このような軍事的な動きは、我が国を含む地域の安全保

障における喫緊かつ重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防止の努力

に対する深刻な課題となっています。 ② 中国 中国は、世界と地域のために重要な役割を果たしつつある一方で、国防費を継

続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力の広範かつ急速

な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか、周辺

海域において活動を拡大・活発化させています。このような動向は、中国の軍事

や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際社会の懸念事項とな

っています。 ③ ロシア ロシアは、極東地域における軍事力の規模を冷戦終結以降大幅に縮減している

ものの、軍事活動は引き続き活発化の傾向にあります。

(3)米国の姿勢 このような中、米国は、日本、韓国、オーストラリア等の同盟国及びパートナー

国との協力を一層重視して、二国間・多国間の枠組みを活用した安全保障関係の強

化を図るなど、この地域への関与を強めています。このような取組は、アジア太平

洋地域の平和と安定に重要な役割を果たすとともに、米国がグローバルな安全保障

課題に取り組むための基盤ともなっています。

テポドン

キテリョン 約540km

0km平壌

テポドン2テポドン2ノドンノドンスカッドスカッド テポドン1テポドン193

年98

06

09

06年7月5日にテポドン地区から発射された

93年5月下旬の日本海に向けた発射で使用された可能性が高い

09年7月4日にキテリョン地区から計7発の弾道ミサイルが発射されたと考えられ、それぞれスカッドまたはノドンであった可能性がある

06年7月5日にキテリョン地区から発射された計6発の弾道ミサイルは、スカッドおよびノドンであったと考えられる 09年4月5日にテポドン

地区からテポドン2または派生型を利用したものとみられる発射が行われた

98年8月31日にテポドン地区から発射された弾道ミサイルの基礎となったと考えられる

テポドン2テポドン2ノドンノドンスカッドスカッド テポドン1テポドン193

年98

06

09

06年7月5日にテポドン地区から発射された

93年5月下旬の日本海に向けた発射で使用された可能性が高い

09年7月4日にキテリョン地区から計7発の弾道ミサイルが発射されたと考えられ、それぞれスカッドまたはノドンであった可能性がある

06年7月5日にキテリョン地区から発射された計6発の弾道ミサイルは、スカッドおよびノドンであったと考えられる 09年4月5日にテポドン

地区からテポドン2または派生型を利用したものとみられる発射が行われた

98年8月31日にテポドン地区から発射された弾道ミサイルの基礎となったと考えられる

は物体の落下推定地点、各距離はテポドン地区からの距離を示す

危険区域2

危険区域1

3,000km以上

09年4月の発射

98年8月の発射

2段目以降の部分

1段目の推進装置

とみられる物体

残余の物体先端部の外郭覆い

の可能性

1段目の推進装置

と考えられる物体

約1,100km

ミサイル発射状況(イメージ)

約180km

約1,600km

核実験実施発表

プンゲ

50km

震源とされる位置の状況(09年と06年の比較)

USGS(米地質調査所)(2009年)

0954 M4.7 深度0㎞

気象庁(2009年)

0955 M5.3 深度0km

気象庁(2006年)

1035 M4.9 深度不明

USGS(米地質調査所)(2006年)

1035 M4.3 深度0km

CTBT機関準備委員会(2009年)

0954 M4.52 深度0.1㎞

(06年(M4.1)とほぼ同位置)

+0.4

+0.4

+0.4

12900N 12930N 13000N

テポドン50km50km

震源とされる位置の状況(09年と06年の比較)

USGS(米地質調査所)(2009年)

0954 M4.7 深度0㎞

気象庁(2009年)

0955 M5.3 深度0km

気象庁(2006年)

1035 M4.9 深度不明

USGS(米地質調査所)(2006年)

1035 M4.3 深度0km

CTBT機関準備委員会(2009年)

0954 M4.52 深度0.1㎞

(06年(M4.1)とほぼ同位置)

+0.4

+0.4

+0.4

12900N 12930N 13000N

テポドン

北朝鮮による核実験実施発表とミサイル発射状況北朝鮮による核実験実施発表とミサイル発射状況

Page 9: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 7 -

ソブレメンヌイ級DDG

排水量: 7,940t(満載)初就役: 1999年

キロ級SS

ジン級SSBN

ルージョウ級DDG

排水量: 7,000t (満載)初就役: 2006年

排水量: 2,325t(水上)、3,076t(潜没)

初就役: 1995年

排水量: 8,000t

初就役: 2007年

(Jane’s Fighting Ships 2010(電子版)、ミリタリーバランス各年版)

※ ルフ・ルーハイ・ソブレメンヌイ・ルーヤン・ルージョウの各級駆逐艦及びジャンウェイ・ジャンカイの

各級フリゲートの総隻数

30

20

10

(隻数)

0

91 93 95 97 99 01 03 05 07 10

新型駆逐艦・

フリゲート艦隻数

※ ジン・シャン・ソン・ユアン・キロの各級潜水艦の総隻数

20

10

(隻数)

91 93 95 97 99 01 03 05 07 10

33

0

30新型潜水艦隻数

35

中国の海軍力の近代化

中国の空軍力の近代化 2010年

J-10: 120機

Su-30:97機

Su-27:166機

計 383機

92年、Su-

27調達開始

01年、Su-30

調達開始

0

383

(ミリタリーバランス各年版)0

50

100

150

200

250

300

350

400

91年 93年 95年 97年 99年 01年03年 05年 10年

第4世代戦闘機機数

J-10戦闘機

中国の公表国防費 国防費対前年

度伸び率 %

国防費対前年度伸び率

億元

公表国防費額

億元

公表国防費額

88

90

年95

00

05

09

22年で24倍以上約215億元 約5,191億元

10

21年連続で2桁の伸び

日本の防

衛関係

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

0

5

10

15

20

25

公表国防費額

緊急発進の対象となったロシア機の経路

(平成21年度)緊急発進の対象となったロシア機の経路

(平成21年度)

対馬海峡

津軽海峡

宗谷海峡

我が国周辺におけるロシア軍の動向我が国周辺におけるロシア軍の動向

地上兵力 兵員数(万)

約39万人

約9万人

0

20

40

60

1976 1989 1990 1995 2005 2010

0

20

40

60

航空兵力 作戦機数

約2,430機

約570機

0

1000

2000

3000

1976 1989 1990 1995 2005 2010

海上兵力 左:主要水上艦艇

右:潜水艦

約20隻

約20隻

0

50

100

150

1976 1989 1990 1995 2005 2010

約100隻

約140隻

国際3海峡を通峡したロシア戦闘艦艇数の推移

(延べ隻数)

※2010年は9月末現在

0

5

10

15

20

2010

宗谷海峡

津軽海峡

対馬海峡

宗谷海峡

津軽海峡

対馬海峡

2009200820072006

極東における

ロシア軍の軍事力

ロシア機に対する空自戦闘機の

緊急発進回数の推移

(回数)

0

50

100

150

200

250

300

2001 02 03 04 05 06 07 08 09 10

Page 10: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 8 -

3 我が国の特性 我が国は、広大な海域を有し、外国からの食糧・資源や海外の市場に多くを依存す

る貿易立国であり、我が国の繁栄には海洋の安全確保や国際秩序の安定等が不可欠で

す。 また、我が国は、四方を海で囲まれ長大な海岸線と多くの島嶼を有するという地理

的要素を持つ一方、災害が発生しやすいことに加え、都市部に産業・人口・情報基盤が

集中する上、沿岸部に重要施設を多数抱えるといった安全保障上の脆弱性を持ってい

ます。

IMB(International Maritime Bureau) より、2009年データ

●は海賊襲撃事例の起こった場所

△は海賊襲撃未遂事例の起こった場所

海上輸送路(シーレーン)

海上輸送路(シーレーン)

マラッカ・シンガポール海峡

ロンボク海峡

ホルムズ海峡

バシー海峡

マカッサル海峡

アデン湾

は2009年に日本関係船舶が襲撃を受けた場所(5件)

●●

△ △

● △

● ●

●●

● ●●●●

●●

●●

●●●

● ●●

●△ △△ △

● ●

●●

●●△

△△△

△● ●

●●

△ △

ソマリア周辺海域

ナイジェリア

バングラデシュ

マレーシア

インドネシア

ペルー

インド

その他

217(54%)

28(7%)17(4%)

2009年の海域別の海賊発生件数

16(4%)

15(3%)

13(3%)

12(3%)

88(22%)

●●

●●●

△△ △

△△

● ●

△△ △

△△△

△△△△△

△△

△△

●△

△△△●

●△△

△△ △●● △

△●●

△△△

●△●

△△

タンザニア、

ガーナで1件ずつ

※日本関係船舶:日本船籍及び日本の事業者が運航する外国籍船

日本のシーレーンと周辺の海賊発生状況(2009年)日本のシーレーンと周辺の海賊発生状況(2009年)

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- 9 -

Ⅲ 22大綱が示す防衛力の在り方 -動的防衛力-

22大綱においては、新たな安全保障環境にふさわしい防衛力の役割を果たすため、

防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、従来の「基盤的防衛力構想」によること

なく、「動的防衛力」を構築することとしていることが大きな特徴となっています。 1 動的防衛力とは 動的防衛力とは、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定要因に起因する様々な事

態に対し、より実効的な抑止と対処を可能とし、アジア太平洋地域の安全保障環境の

一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行い得る

動的なものとして、即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術

水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた防衛力をいいます。

「基盤的防衛力構想によることなく、動的防衛力を構築する」とは、どういう意味ですか?

新しい安全保障環境の下で、今後の防衛力の目指すべき方向性をより徹底して追求する

ため、51大綱以来の基盤的防衛力構想にとらわれずに取り組む、という意味です。

基盤的防衛力構想にとらわれるべきでないと考えた理由は、基盤的防衛力構想は、防衛

力の存在による抑止効果に重点を置いていますが、新たな安全保障環境では、防衛力の運

用を重視し、抑止の信頼性を高めることなどが重要となっているためです。

また、動的防衛力の構築に向けては、厳しさを増す財政事情の下、防衛力の構造的な変

革を図ることが不可欠ですが、基盤的防衛力構想を今後の方向性として掲げていては、標

準的な装備の部隊をまんべんなく配置すればよい、という発想になりやすいことも考慮し

ました。

「動的防衛力」を構築する狙いはなんですか?

22大綱では、将来に向けて、我が国が持つべき防衛力の基本的方向性として「動的防衛

力」を構築するとの方針を示しました。これは、安全保障環境の変化(周辺国の軍事力近代

化や活動活発化、国際協力の重要性増大)等を踏まえ、①情報収集・警戒監視等の平素の活

動の常時継続的な実施、②各種事態への迅速かつシームレスな対応、③諸外国との協調的活

動の多層的な推進を重視し、「運用」に焦点をあてた防衛力を実現しようとする考え方です。

動的防衛力は、このような「運用」を重視し、これまでに構築された防衛力を前提に、こ

れに対して更に構造的な改革を行いつつ、より効果的・能動的に活用することに力点を置い

ています。

動的防衛力を実現するためには、統合的・横断的な観点から、自衛隊全体にわたる装備、

人員、編成、配置等の抜本的な効率化・合理化を図り、真に必要な機能に資源を選択的に集

中して、防衛力の構造的な改革を行うことが必要です。また、装備の質や量の確保というハ

ード面のみならず、防衛力の運用を支える各種制度の見直しといったソフト面の取組も必要

となります。

このため、平成22年12月、防衛大臣指示を発出し、これに基づき、副大臣を委員長と

する「防衛力の実効性向上のための構造改革推進委員会」及び「人的基盤に関する改革委員

会」等において、防衛省全体として総合的な検討を実施することとしています。

【防衛力の構造改革における検討項目】

・統合による機能強化・部隊等の在り方の検討 ・横断的な視点による資源配分の一元化・最適化の検討 ・人的基盤に関する抜本的な制度改革の推進 ・防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討や総合取得改革の推進

・衛生機能の強化に関する検討

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2 今までの防衛大綱に示す防衛力の在り方との違い 22大綱に至る前に、3つの防衛大綱が策定されましたが、それぞれその時代と安

全保障環境の中で最も適した考え方が採用され、我が国の平和と安全に大きく貢献し

てきました。(防衛計画の大綱に示す防衛力構想の変遷:50~52頁参照) 51大綱では、東西冷戦の下、自衛隊の「存在による抑止」を重視した基盤的防衛

力構想を打ち出し、全国に部隊を均衡配備していくなど防衛力(自衛隊)を構築する

ことに力点を置いていました。 07大綱では、東西冷戦終結後の不透明・不確実な状況下で「力の空白」を生じさ

せないよう、基盤的防衛力構想を基本的に踏襲し、一方、大規模な災害等の多様な事

態への「対処」や国際貢献等にも言及しました。 16大綱では、基盤的防衛力構想の有効な部分を継承した(取り込んだ)上で、

テロ等の新たな脅威等を踏まえ、「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」という新

たな方向性を打ち出し、「抑止」に加え、「対処」と「国際協力」を重視しました。

○ 戦略環境や地理的特性を踏まえた防衛力を保持すべきことといった考え方など こうした流れの中で、22大綱では、「動的防衛力」という方向性を打ち出しまし

た。これは、周辺国の軍・関係機関による各種活動が活発化する中、平素の情報収集・

警戒監視等がより重要となっており、また、特にアジア太平洋地域の一層の安定化の

ため、国際協力の重要性がより高まっているなどの新たな安全保障環境の下、自衛隊

の「運用」を重視し、「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」を発展させた考え方

です。

自衛隊の「運用」に焦点を当て、 ○ 事態発生時の対処のみならず、平素からの常時継続的な防衛力の運用による「動的な抑止力」を重視

○ 「アジア太平洋地域の安保環境の一層の安定化」を役割として明確化

○ 従来に増して即応性、機動性等を向上

○ 防衛力が備えるべき要素として、自衛隊の各種活動の常時継続的な実施を支える「持続性」にも着目

【基盤的防衛力構想の有効な部分】

【「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」から発展した点】

16大綱の「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」の記述と比べると、「動的防衛力」

には『持続性』が加わっています。これは何故ですか?

新たな安全保障環境の下では、事態発生時の対処だけではなく、安全保障上の目標の

達成に向けて効果的・能動的に防衛力を運用することが重要です。

このため、22大綱では、多様な活動を継続的・同時並行的かつシームレスに(切れ

目なく)行うことにより一定の負荷がかかった状態を、バランスよく長期にわたり維持

できるという「持続性」を防衛力の備えるべき要素としました。

なお、16大綱でも挙げられていた即応性・機動性等も、従来にも増して高めること

が必要です。

【22大綱で重視されている活動のうち、「持続性」が特に求められるもの】

・平素からの国として総力を挙げた取組及び事態の推移に応じたシームレスな対応

・常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動や訓練・演習等の適時・適切な実施

・複数の事態の連続的・同時的生起(複合事態)への対応

・幅広い分野での二国間・多国間協力の多層的推進

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3 動的防衛力のイメージ -「運用」重視の意味- 動的防衛力の考え方の下、情報収集・警戒監視等の平素の活動から、事態発生時の

対処まで、シームレスに(切れ目なく)効果的に自衛隊を運用します。さらに、国際

協力にも自衛隊を積極的に活用することで、我が国の安全保障を確保していきます。 22大綱策定時に発出した防衛大臣談話では、①情報収集・警戒監視等の平素の活

動の常時継続的かつ戦略的な実施、②各種の事態への迅速かつシームレスな対応、③

諸外国との協調的活動の多層的な推進を重視して、防衛力を運用することとしていま

す。これに即してその具体的なイメージを挙げると、次のとおりです。 ・ 情報収集・警戒監視・偵察活動等の平素の活動の常時継続的かつ戦略的な実施

我が国周辺で軍や関係機関による活動が活発化する中、平素の活動を常時継続的

かつ戦略的に実施することは、我が国周辺の環境が望ましくないものへ変化するこ

との防止にも寄与するものです。 (例)平素から航空機、艦艇、地上レーダーを運用して、我が国の周辺海空域や沿

岸部で情報収集や警戒監視を行うことにより、周辺国の活動状況やその意図等

をできるだけ早く正確に把握するとともに、我が国の意思と高い防衛能力を示

しておく ・ 各種の事態への迅速かつシームレスな対応

軍事科学技術等の進展に伴い、兆候が現れてから事態が発生するまでの間は短く

なる傾向にあることなどから、国内外における突発的な事態に適切に対応すること

が重要です。 (例)島嶼部が何らかの危機におちいった場合には、陸海空の部隊を迅速かつ機動

的に統合運用し、即座にそれに対処する ・ 諸外国との協調的活動の多層的な推進 多様化・複雑化する安全保障上の課題や不安定要因への対応に不可欠であり、ま

た、諸外国との協調的関係の発展や我が国の国際社会における存在感を高めること

にも寄与するものです。 (例)国外における大規模災害等に際して、自衛隊の特性を活かしつつ、可能な限

り迅速に展開し、医療活動、援助物資等の輸送活動を効果的、効率的に実施す

ることや、PKO、海賊対処、能力構築支援(キャパシティ・ビルディング支

援)等において多様でかつ長期的な任務を実施する

◆軍事情勢は複雑さを増大

・未解決の問題の存在(例:朝鮮半島、

台湾海峡)

・軍事力近代化に加え、活動も活発化

◆関係国と協力して対応する必要

・ 中・印・露の国力増大に伴う変化

・ 特に非伝統的安保分野での具体的

協力の進展

◆各国が平素から協力して取り組むこと

が不可欠

・複数の問題が絡み合いながら、国境

を越えた問題に発展

我が国周辺

アジア太平洋地域

グローバル

「装備の質・量」+「自衛隊の活動」

= より大きな効果

存在による抑止を重視した従来の「基盤的防衛力構想」によらず

「平時/有事」二分論 ⇒ 「グレーゾーンの紛争」

ハード中心 ⇒ ソフトも重視

我が国防衛中心 ⇒ 海外活動常態化

「平時/有事」二分論 ⇒ 「グレーゾーンの紛争」

ハード中心 ⇒ ソフトも重視

我が国防衛中心 ⇒ 海外活動常態化

「平時/有事」二分論 ⇒ 「グレーゾーンの紛争」

ハード中心 ⇒ ソフトも重視

我が国防衛中心 ⇒ 海外活動常態化

「 動 的 防 衛 力 」

「運用」に着眼した防衛力の在り方

アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化

各種事態に対するより実効的な抑止と対処

グローバルな安全保障環境の改善

情報

能力 即

応性

多目

的性

技術

柔軟

機動性

持続

「 動 的 防 衛 力 」

「運用」に着眼した防衛力の在り方

アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化

各種事態に対するより実効的な抑止と対処

グローバルな安全保障環境の改善

情報

能力 即

応性

多目

的性

技術

柔軟

機動性

持続

性各種の事態への迅速

かつシームレスな対応 平素の活動の常時継続的かつ戦略的な実施

諸外国との協調的活動

の多層的な推進

( 運 用 )

(役

割)

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Ⅳ 22大綱の内容

1 我が国の安全保障における基本理念 22大綱においては、我が国の安全保障における基本理念を冒頭で述べています。

これは、安全保障環境認識を冒頭で示していた16大綱とは異なる22大綱の特徴の

一つです。以下にその内容を紹介します。 まず、安全保障の目標として以下の3つを掲げています。 ・ 我が国に直接脅威が及ぶことを防止し、脅威が及んだ場合にはこれを排除するとともに被害を最小化すること(もって我が国の平和と安全及び国民の安心・安全を

確保すること) ・ アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善により脅威の発生を予防すること(もって自由で開かれた国際秩序を維持強化

して我が国の安全と繁栄を確保すること) ・ 世界の平和と安定及び人間の安全保障の確保に貢献すること そして、これらの目標を達成するため、我が国自身の努力、同盟国との協力、国際

社会における多層的な安全保障協力を統合的に推進することとしています。 また、我が国防衛の基本方針(日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与

えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則

を守りつつ、節度ある防衛力を整備する)を引き続き堅持することとしているのは、

これまでの防衛大綱と変わりませんが、それと同時に、国際平和協力活動により積極

的に取り組むとの姿勢を打ち出しています。 さらに、核兵器の脅威に対しては、2本の柱からなる方針を掲げました。 ・ 長期的課題として核兵器のない世界の実現へ向けて、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていくこと

・ 同時に、現実に核兵器が存在する間は、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくととも

に、併せて弾道ミサイル防衛や国民保護を含む我が国自身の取組により適切に対応

すること これは、我が国が弾道ミサイル対処能力を有するようになったことなど、16大綱

策定後の進展を踏まえたものです。 (参考:「人間の安全保障」とは) ・ 国家の安全保障を補完するものであり、人間の生存、生活、尊厳に対する脅威から各個人を守り、それぞれの持つ豊かな可能性を実現するために、一人ひとりの視点を重視する取組を強化しようとい

う考え方 ・ 我が国は、平成10年12月に小渕総理(当時)がベトナム・ハノイで行った演説を受け、平成11年3月に国連「人間の安全保障基金」の設置を主導した。さらに、平成12年9月の国連ミレニア

ム・サミットの演説において、森総理(当時)は、人間の安全保障を外交の柱と位置付けることを発

表し、以降我が国は同概念の普及及びその現場における実践を推進している。

2 我が国の安全保障の基本方針 (1)我が国自身の努力

22大綱においては、我が国の安全保障の目標を達成するための根幹となるのは

自らが行う努力であるとの認識に基づき、同盟国等とも連携しつつ、平素から国と

して総力を挙げて取り組むとともに、各種事態の発生に際しては、事態の推移に応

じてシームレスに(切れ目なく)対応することとしています。 また、以下の事項に国として統合的かつ戦略的に取り組むこととしています。

・ 関係省庁における情報収集・分析能力の向上、政府横断的な情報保全体制の強化、情報収集及び情報通信機能の強化等(宇宙の開発及び利用の推進、サイバー

攻撃への対処態勢及び対応能力の総合的な強化) ・ 関係機関の平素からの連携、事態発生時の政府一体となった対応、各種事態のシミュレーションや総合的な訓練・演習の平素からの実施、意思決定及び対処に

Page 15: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 13 -

係る機能・体制の検証、法的側面を含めた必要な対応についての検討 ・ 安全保障に関する内閣の組織・機能・体制等の検証、関係閣僚間の政策調整と総理への助言等を行う組織の官邸への設置

・ 各種災害への対応や国民の保護のための体制整備、国と地方公共団体等との緊密な連携

・ 国際平和協力活動への効率的かつ効果的な対応、非政府組織等との連携・協力、国連平和維持活動の実態を踏まえた我が国の参加の在り方の検討(PKO参加五

原則等) ・ 安全保障・防衛政策をより分かりやすくするための努力、国際社会における理解促進のための対外情報発信の強化

� アジア、中東、アフリカ、中米など、アジア、中東、アフリカ、中米など、約約330の国際活動0の国際活動を実施を実施

�� のべのべ約約44万人万人のの自衛隊員を派遣自衛隊員を派遣

(国際緊急援助活動)トルコ(99.9-99.11)・海上輸送部隊

(国際緊急援助活動)イラン(03.12-04.1)

・空輸隊

(人道的な国際救援活動)

アフガニスタン(01.10)

(パキスタンに派遣)・難民救援空輸隊

(国際緊急援助活動)

インド(01.2)・物資支援隊

・空輸隊

(国連政治ミッション)

ネパール(07.3-11.1)・軍事監視要員

(PKO)

ゴラン高原(96.2-継続中)・派遣輸送隊

・司令部要員

(人道的な国際救援活動)イラク(ヨルダンに派遣)

イラク難民救援(03.3-03.4)・難民救援空輸隊

イラク被災民救援(03.7-03.8)・被災民救援空輸隊

(イラク人道復興支援特措

法に基づく対応措置)(03.12-09.2)

・復興業務支援隊

・復興支援群

・復興支援派遣輸送航空隊

・派遣海上輸送部隊

(PKO)

スーダン(08.10-継続中)・司令部要員

(人道的な国際救援活動)

ルワンダ(ザイールに派遣)

(94.9-94.12)・難民救援隊

・空輸派遣隊

(PKO)モザンビーク

(93.5-95.1)・輸送調整中隊

・司令部要員

(国際緊急援助活動)

インドネシア・ジャワ島(06.6)・医療援助隊

・空輸部隊

(PKO)

カンボジア(92.9-93.9)・施設大隊

・停戦監視要員

(国際緊急援助活動)

タイ(04.12-05.1)・派遣海上部隊

(旧テロ対策特措法に基

づく協力支援活動等)(01.11-07.11)

・海上自衛隊

・航空自衛隊

(補給支援特措法に基づ

く補給支援活動)(08.1-10.1)

・海上自衛隊

(国際緊急援助活動)

インドネシア・西スマトラ州(09.10)・医療援助隊

(人道的な国際救援活動)

東ティモール(インドネシアに派遣)(99.11-00.2)・救難民援助空輸部隊

(PKO)(02.2-04.6)・施設部隊

・司令部要員

(国際緊急援助活動)ホンジュラス(98.11-98.12)

・航空援助隊

・空輸部隊

(国際緊急援助活動)パキスタン(05.10-05.12)・航空援助隊

・空輸部隊

(国際緊急援助活動)インドネシア(05.1-05.3)

・医療・航空援助隊

・海上輸送部隊

・空輸部隊

(国際緊急援助活動)ロシア(05.8)

・海上派遣部隊

(PKO)

ハイチ(10.2-継続中)・施設部隊

・司令部要員

(国際緊急援助活動)

パキスタン(10.8-10.10)・航空援助隊

・空輸部隊

・海上輸送部隊

(PKO)

東ティモール(10.9-継続中)・軍事連絡要員

(国際緊急援助活動)ハイチ(10.1-10.2)

・空輸部隊

・医療援助隊

自衛隊による国際平和協力活動(1992~2010年度)自衛隊による国際平和協力活動(1992~2010年度)

(国際緊急援助活動)

ニュージーランド(11.2-11.3)・空輸部隊

活動内容・期間

東ティモール避難民救援国際平和協力業務(

99年11月-

00年2月)

トルコ国際緊急援助活動(

99年9月-

99年11月)

99

ホンジュラス国際緊急援助活動(

98年11月-

98年12月)

98

ゴラン高原国際平和協力業務(

96年2月-

継続中)

9695

ルワンダ難民救援国際平和協力業務(

94年9月-

94年12月)

94

モザンビーク国際平和協力業務(

93年5月-

95年1月)

93

カンボジア国際平和協力業務(

92年9月-

93年9月)

92

ニュージーランド国際緊急援助活動(11年2月-

11年3月)

東ティモール国際平和協力業務(10年9月-

継続中)

パキスタン国際緊急援助活動(10年8月-

10年10月)

ハイチ国際平和協力業務(10年2月-

継続中)

ハイチ国際緊急援助活動(10年1月-

10年2月)

インドネシア国際緊急援助活動(09年10月)

スーダン国際平和協力業務(08年10月-

継続中)

補給支援特措法に基づく補給支援活動(08年1月-

10年1月)

ネパール国際平和協力業務(07年3月-

11年1月)

インドネシア国際緊急援助活動(

06年6月)

パキスタン国際緊急援助活動(

05年10月-

05年12月)

ロシア連邦カムチャッカ半島沖国際緊急援助活動(

05年8月)

インドネシア国際緊急援助活動(

05年1月-

05年3月)

タイ国際緊急援助活動(04年12月-

05年1月)

イラン国際緊急援助活動(

03年12月-

04年1月)

イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置(

03年12月-

09年2月)

イラク被災民救援国際平和協力業務(

03年7月-

03年8月)

イラク難民救援国際平和協力業務(

03年3月-

03年4月)

東ティモール国際平和協力業務(

02年2月-

04年6月)

旧テロ対策特措法に基づく協力支援活動等(01年12月-

07年11月)

アフガニスタン難民救援国際平和協力業務(

01年10月)

インド国際緊急援助活動(

01年2月)

111009080706050403020100

活動内容・期間

東ティモール避難民救援国際平和協力業務(

99年11月-

00年2月)

トルコ国際緊急援助活動(

99年9月-

99年11月)

99

ホンジュラス国際緊急援助活動(

98年11月-

98年12月)

98

ゴラン高原国際平和協力業務(

96年2月-

継続中)

9695

ルワンダ難民救援国際平和協力業務(

94年9月-

94年12月)

94

モザンビーク国際平和協力業務(

93年5月-

95年1月)

93

カンボジア国際平和協力業務(

92年9月-

93年9月)

92

ニュージーランド国際緊急援助活動(11年2月-

11年3月)

東ティモール国際平和協力業務(10年9月-

継続中)

パキスタン国際緊急援助活動(10年8月-

10年10月)

ハイチ国際平和協力業務(10年2月-

継続中)

ハイチ国際緊急援助活動(10年1月-

10年2月)

インドネシア国際緊急援助活動(09年10月)

スーダン国際平和協力業務(08年10月-

継続中)

補給支援特措法に基づく補給支援活動(08年1月-

10年1月)

ネパール国際平和協力業務(07年3月-

11年1月)

インドネシア国際緊急援助活動(

06年6月)

パキスタン国際緊急援助活動(

05年10月-

05年12月)

ロシア連邦カムチャッカ半島沖国際緊急援助活動(

05年8月)

インドネシア国際緊急援助活動(

05年1月-

05年3月)

タイ国際緊急援助活動(04年12月-

05年1月)

イラン国際緊急援助活動(

03年12月-

04年1月)

イラク人道復興支援特措法に基づく対応措置(

03年12月-

09年2月)

イラク被災民救援国際平和協力業務(

03年7月-

03年8月)

イラク難民救援国際平和協力業務(

03年3月-

03年4月)

東ティモール国際平和協力業務(

02年2月-

04年6月)

旧テロ対策特措法に基づく協力支援活動等(01年12月-

07年11月)

アフガニスタン難民救援国際平和協力業務(

01年10月)

インド国際緊急援助活動(

01年2月)

111009080706050403020100

(注)ペルシャ湾での機雷除去のため掃海艇等を派遣(91.4 - 91.10)(注)ペルシャ湾での機雷除去のため掃海艇等を派遣(91.4 - 91.10)

Page 16: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 14 -

(2)同盟国との協力 我が国の平和と安全を確保するためには、今後とも日米同盟は必要不可欠であり、

また、在日米軍の軍事的プレゼンスは、アジア太平洋地域の諸国に大きな安心をも

たらしています。さらに、我が国が多国間の安全保障協力やグローバルな安全保障

課題への対応を効果的に進める上でも日米同盟は重要です。これらの日米同盟の意

義を踏まえ、日米同盟を新たな安全保障環境にふさわしい形で深化・発展させてい

くことが必要です。このため、以下のような取組を進めることとしています。 ・ 戦略的な対話及び具体的な政策調整への継続的な取組(共通戦略目標及び役割・任務・能力に関する検討) ・ 従来の分野における協力(情報能力、計画検討作業の深化、各種の運用協力、弾道ミサイル防衛における協力、装備技術協力)の推進

・ 拡大抑止の信頼性向上、情報保全のための協議の推進 ・ 日米協力の充実を図るための措置の検討(地域における不測の事態に対する米

軍の抑止及び対処力の強化) ・ 平素からの各種協力(共同訓練、施設の共同使用等)の強化 ・ 地域的及びグローバルな協力(国際平和協力活動等、宇宙・サイバー空間、海上交通の安全確保等、気候変動等)の推進 また、こうした取組と同時に、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的

措置を着実に実施するとともに、接受国支援をはじめとする在日米軍の駐留をより

円滑・効果的にするための取組を積極的に推進することとしています。

計画検討作業の深化

拡大抑止の信頼性確保平素からの日米共同活動の強化・ 警戒監視、共同訓練、共同使用等・ 装備技術協力非戦闘員退避

弾道ミサイル攻撃への対処における運用協力情報保全・情報共有米軍再編在日米軍駐留経費負担

実効的な抑止及び対処

同盟等のネットワーク化・防衛協力の推進(日米韓、日米豪等)多国間の枠組み(EAS、ADMMプラス等)における日米協力

地域の安全保障環境の一層の安定化

国際平和協力活動における日米協力 (テロ・海賊対策、破綻国家

対策への貢献)核軍縮・核拡散への取組み海洋安全保障・気候変動・宇宙・サイバー攻撃対処等グローバルな課題への対応

グローバルな安全保障環境の改善

共通戦略目標

役割・任務・能力

日米防衛協力のための指針

総論

計画検討作業の深化

拡大抑止の信頼性確保平素からの日米共同活動の強化・ 警戒監視、共同訓練、共同使用等・ 装備技術協力非戦闘員退避

弾道ミサイル攻撃への対処における運用協力情報保全・情報共有米軍再編在日米軍駐留経費負担

実効的な抑止及び対処

同盟等のネットワーク化・防衛協力の推進(日米韓、日米豪等)多国間の枠組み(EAS、ADMMプラス等)における日米協力

地域の安全保障環境の一層の安定化

国際平和協力活動における日米協力 (テロ・海賊対策、破綻国家

対策への貢献)核軍縮・核拡散への取組み海洋安全保障・気候変動・宇宙・サイバー攻撃対処等グローバルな課題への対応

グローバルな安全保障環境の改善

共通戦略目標

役割・任務・能力

日米防衛協力のための指針

総論

日米同盟の深化のための協力項目(例)日米同盟の深化のための協力項目(例)

注:EAS(東アジア首脳会議)、ADMMプラス(拡大ASEAN国防相会議)

Page 17: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 15 -

(3)国際社会における多層的な安全保障協力 ① アジア太平洋地域における協力 アジア太平洋地域において、二国間・多国間の安全保障協力を多層的に組み合

わせてネットワーク化することは、この地域の安全保障環境の一層の安定化に効

果的に取り組むために不可欠であるとの認識の下、以下の取組を進めることとし

ています。 ・ 韓国、オーストラリア、ASEAN諸国、インド等との安全保障協力の強化 ・ 中国及びロシアとの信頼関係の増進と、協力関係の構築・発展 ・ 中国が国際社会において責任ある行動をとるよう積極的な関与 ・ ASEAN地域フォーラム(ARF)や拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)等を通じ、多国間の安全保障協力関係の構築に向け、適切な役割を

果たすこと ② 国際社会の一員としての協力 グローバルな安全保障環境を改善し、我が国の安全と繁栄の確保に資するよう、

以下の取組を進めることとしています。 ・ 政府開発援助(ODA)を戦略的・効果的に活用するなどの外交活動の積極的な推進 ・ 外交活動と一体となった国際平和協力活動への積極的な取組 ・ 欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)や欧州諸国との協力関係強化 ・ 海洋、宇宙、サイバー空間の安定的利用といった国際公共財の維持・強化、大量破壊兵器やミサイル等に関する軍縮・拡散防止への積極的な取組

・ 大規模災害やパンデミックに際しての人道支援・災害救援等への積極的取組 ・ 国連改革への積極的な取組

・同盟国・友好国

との緊密な連携

・多国間の安全保障

協力の推進

各種課題に対す

る実際的な協力

関係の構築

同盟等の

ネットワーク化

安全保障環

境の一層の

安定化

国際社会における多層的な安全保障協力国際社会における多層的な安全保障協力

未来志向の視点で

二国間・多国間の

交流・対話を実施

対立感や警戒感を低減し協力的・協調的雰囲気を醸成

戦略的協力パートナーシップ

未来志向のグローバルな関係

戦略的協力パートナーシップ

アジア太平洋地域におけるパートナー

戦略的互恵関係

周辺諸国との相互理解 ・ 信頼醸成の強化周辺諸国との相互理解 ・ 信頼醸成の強化 防衛協力の推進・同盟等のネットワーク化防衛協力の推進・同盟等のネットワーク化

ASEAN

日米豪三ヶ国防衛相会談

日米豪安保・防衛協力会合

日米韓三ヶ国防衛相会談

日米韓防衛実務者協議NATONATONATONATO

ブルネイ、カンボジア、

インドネシア、ラオス、

マレーシア、ミャンマー、

フィリピン、シンガポール、

タイ、ベトナム

Page 18: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 16 -

3 防衛力の在り方 (1)防衛力の役割

動的防衛力という考え方の下、「実効的な抑止及び対処」、「アジア太平洋地域の

安全保障環境の一層の安定化」及び「グローバルな安全保障環境の改善」を防衛力

の役割としています。 ① 実効的な抑止及び対処 我が国周辺における各国の軍事動向を把握し、各種兆候を早期に察知するため、

平素から我が国及びその周辺において常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活

動による情報優越を確保するとともに、各種事態の展開に応じ迅速かつシームレ

スに対応することとしています。 また、本格的な侵略事態への備えについて、不確実な将来情勢の変化への必要

最小限の備えを保持することとしています。 実効的な抑止及び対処に際しては、特に以下の点を重視することとしています。 ア 周辺海空域の安全確保 周辺海空域の安全確保に努め、我が国の権益を侵害する行為に対して実効的

に対応 イ 島嶼部に対する攻撃への対応

機動運用可能な部隊を迅速に展開し、平素から配置している部隊と協力して

侵略を阻止・排除 ウ サイバー攻撃への対応

自衛隊の情報システムを防護するために必要な機能を統合的に運用して対

処、サイバー攻撃に関する高度な知識・技能を集積し、政府全体として行う対応

に寄与 エ ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応 機動性を重視しつつ即応性の高い部隊により迅速かつ柔軟に対応

オ 弾道ミサイル攻撃への対応 常時継続的な警戒態勢を保持、多層的な防護態勢により迎撃回避能力を備え

防衛

力の

役割

防衛

力の

役割

51大綱 07大綱 16大綱 22大綱

【基盤的防衛力構想】

防衛力の役割の変化防衛力の役割の変化

侵略の未然防止・

侵略対処(限定小規模侵略独力対処)

【動的防衛力】

災 害 救 援 等 より安定した安保環境構築へ

の貢献

-PKO、国際緊急援助活動

-安保対話、防衛交流等

大規模災害等各種の事態へ

の対応

-大規模自然災害・テロ

-周辺事態新たな脅威・多様な事態への

実効的対応-弾道ミサイル

-ゲリラ・特殊部隊等

-島嶼部侵略

-ISR、対領侵、武装工作船等

-大規模・特殊災害等

国際安保環境改善への主体

的・積極的な取組-国際平和協力活動の本来

任務化

-安保対話・防衛交流

本格的侵略事態への備え(最も基盤的な部分を確保)

(基盤的防衛力構想の有効な部分は継承)

実効的な抑止・対処

-周辺海空域の安全確保-島嶼部攻撃-サイバー攻撃-ゲリラ・特殊部隊-弾道ミサイル-複合事態-大規模・特殊災害等

※本格的侵略事態への備え

(不確実な将来情勢変化への

必要最小限の備えを保持)

アジア太平洋地域の安保環境の

一層の安定化

-防衛交流、域内協力

-能力構築支援

グローバルな安保環境の改善

-国際平和協力活動への取組

-軍備管理軍縮、能力構築支援

-テロ対策・海上交通の安全確保等

我が国の防衛

-侵略の未然防止

-侵略対処

・ 防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織・配置において均衡のとれた態勢を保有

・ 限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処

・ 災害救援等を通じて国民の民生安定に寄与

・ 「限定小規模侵略独力対処」との表現は踏襲せず

・ 防衛力の役割として「我が国の防衛」に加え、「大規模災害等各種の事態への対応」及び「より安定した安全保障環境の構築への貢献」を追加

・ 新たな脅威や多様な事態に実効的に対応するとともに、国際安保環境改

善に主体的かつ積極的に取り組み得るもの

・ 各種事態に対して実効的な抑止と対処

を可能とし、アジア太平洋地域の安保環境の一層の安定化・グローバルな安保環境の改善のための活動を能動的に行い

得るもの

・ 多機能で弾力的な実効性のある防衛力

を発展させたもの

(基本的に踏襲) 【多機能で弾力的な実効性のある防衛力】

(基盤的防衛力構想にはよらず)

Page 19: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 17 -

た弾道ミサイルにも実効的に対応、万が一被害が発生した場合には、被害を局

限すべく事後対処 カ 複合事態への対応 複数の事態の連続的又は同時的生起も想定し、事態に応じ実効的な対応

キ 大規模・特殊災害等への対応 地方公共団体等と連携協力し、国内のどの地域においても災害救援を実施

② アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化 我が国周辺においては、常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活動や訓練・

演習等の各種活動を適時・適切に実施することにより、我が国周辺の安全保障環

境の安定を目指すこととしています。 また、アジア太平洋地域の安定化を図るため、以下の取組を行うこととしてい

ます。 ・ 二国間・多国間の防衛協力・交流、共同訓練・演習の多層的な推進 ・ 非伝統的安全保障分野における地雷・不発弾処理等を含む自衛隊が有する能力を活用した実際的な協力の推進 ・ 域内協力枠組みの構築・強化や域内諸国の能力構築支援への取組 ③ グローバルな安全保障環境の改善 グローバルな安全保障環境の改善のため、以下の取組を行うこととしています。 ・ 人道復興支援をはじめとする平和構築や停戦監視を含む国際平和協力活動 ・ 軍備管理・軍縮、不拡散等の分野における諸活動や能力構築支援 ・ 国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序の維持のための取組

能力構築支援とは

近年の国際情勢の変化に伴い、人道支援・災害救援、海賊対処等の非伝統的安全保障分野における課題に国際社会が一致して取り組むことが不可欠となっている。そのため、自国の防衛能力といった従来の伝統的安全保障分野における施策に加え、非伝統的な脅威や不安定性に対し、開発途上国の対処能力を向上させる

ための支援を行い、自らその解決策を講じるよう促す。

専門家の派遣、研修員の受入れ等

非伝統的安全保障分野(人道支援・災害救援、 海賊対処、 地雷・不発弾処理等)

開発途上国等の軍又は軍人の対処能力向上(キャパシティ・ビルディング)を支援

目 的

分 野

内 容

具体例

「平素」から継続的に非伝統的安全保障分野における人材育成や技術支援等を通じて途上国自身の対処能力を向上させるという取組を行うことにより、地域内における安定を積極的・能動

的に創出し、国際的な安全保障環境を改善するという、新たな発想に基づく取組み。

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動の一環として、①国連PKO、②国際緊急援助活動、③ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動等を行ってきた。こうした活動は、紛争や大規模災害など実際

に生起した安全保障上の問題への「事後的」な対応。

従来の政策 能力構築支援

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- 18 -

(2)自衛隊の態勢 防衛力の役割を実効的に果たし得るよう、各種事態等への対応に必要な以下の態勢を保持します。 ① 即応態勢

ア 待機態勢の保持、機動力の向上、練度・可動率の維持向上 イ 基地機能の抗たん性や燃料・弾薬(訓練弾を含む)を確保し、維持整備に万

全を期す

② 統合運用態勢 ア 迅速かつ効果的な対処に必要な情報収集態勢の保持

イ 衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した指揮統制機能・情報共有態勢、サイバー攻撃対処態勢の保持

③ 国際平和協力活動の態勢 多様な任務、迅速な派遣、長期の活動にも対応し得る能力、態勢等の充実

(3)自衛隊の体制

防衛力の役割を効果的に果たし得る体制を効率的に保持することとしています。

その際、以下について配意し、効果的・効率的な防衛力整備を行うことを基本的な考

え方としています。 ア 各種の活動に活用し得る機能、非対称的な対応能力を有する機能、非代替的な機能の優先的な整備 ・ 冷戦型の装備・編成を縮減し、部隊の地理的配置や各自衛隊の運用を適切に見直すこと

・ 南西地域も含め、警戒監視、洋上哨戒、防空、弾道ミサイル対処、輸送、指揮通信等の機能を重点的に整備し、防衛態勢を充実すること

イ 各自衛隊に係る予算配分について、安全保障環境の変化に応じ、前例にとらわれず、縦割りを排除し統合的な見地から思い切った見直しを実施すること ウ 統合運用の推進、日米共同による対処態勢構築の推進等の観点から、陸上自衛

システムの監視対処

部外から

の攻撃

海自

ネットワークの監視対処

空自

インターネット

部内から

の攻撃

情報漏洩

他機関陸自

システムの監視対処 システムの監視対処 システムの監視対処

サ イ バ - 攻 撃 対 処一元的指揮通信機能の整備一元的指揮通信機能の整備

Page 21: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 19 -

隊の作戦基本部隊・方面隊の在り方について指揮・管理機能の効率化にも留意し

つつ、総合的に検討すること エ 本格的侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するため

の最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持すること 以上の基本的な考え方を踏まえ、体制整備は、①統合の強化、②島嶼部における対応能力の強化、③国際平和協力活動への対応能力の強化、④情報機能の強化、⑤科学技術の発展への対応を重視しつつ、⑥効率的・効果的に行うこととしています。

①統合の強化 ②島嶼部における対応能力の強化(島嶼部攻撃への対応や周辺海空域の安全確保)

自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部に

ついて必要最小限の部隊を新たに配置

部隊活動を行う際の拠点の整備、機動力、輸送

能力及び実効的な対処能力の整備

尖閣諸島

下甑島

西表島

石垣島

宮古島

久米島沖縄本島

沖永良部島

奄美大島

与那国島

凡 例

陸自駐屯地

海自地区

空自基地

レーダーサイト

防空識別圏

0 200 km

尖閣諸島

下甑島

西表島

石垣島

宮古島

久米島沖縄本島

沖永良部島

奄美大島

与那国島

凡 例

陸自駐屯地

海自地区

空自基地

レーダーサイト

防空識別圏

0 200 km0 200 km

各自衛隊が一体となって対処し得る体制の検討

・衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した一元的な指揮統制、情報共有態勢の強化

・サイバー攻撃対処の中核となる組織の新設や専門的な人材の育成

・自衛隊統合演習や日米共同訓練を始めとする各種訓練の実施

統合運用基盤の強化

・海上及び航空自衛隊が担う陸上配備の航空救難機能の航空自衛隊

への一元化に向けた体制整備

・陸上及び航空自衛隊の高射部隊の体制整備

・その他、各自衛隊に横断的な機能について整理、共同部隊化、集約・拠点化等

(輸送、衛生、調達・補給・整備、駐屯地・基地業務等)

統合の観点からの効果的かつ効率的な体制の整備

・各自衛隊が保有する機動力、輸送能力及び実効的な対処能力向上

・統合幕僚監部の機能強化を始めとする指揮統制機能の向上

・動的防衛力の強化に資する実効的かつ効率的な組織・部隊編成・業務の在り方について検討

Page 22: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 20 -

③国際平和協力活動への対応能力の強化 ④情報機能の強化(各種事態の兆候の早期察知、情報収集・分析・共有等)

⑤科学技術の発展への対応(高度な技術力と情報能力に支えられた防衛力の整備)

各種装備品の改修 施設・衛生等の機能の充実

・既存装備品等を国際平和協力

活動にも対応し得るよう改修

し、各種の任務の遂行に必要

な機能の充実を図る

海上及び航空輸送能力の整備

・ヘリコプター搭載護衛艦

(DDH)、輸送機(C-1)の

後継機等を整備

・自衛隊病院等を拠点化・高機

能化し、統合後送体制、衛生

資器材等を整備

・海外派遣隊等に対する医療支

援機能を強化

情報収集・分析・共有体制の強化

○ 宇宙分野を含む技術動向等を踏まえた多様な情報収集能力の強化・広域における総合的な警戒監視体制の在り方について検討

・情報収集施設・器材・装置等の整備、更新と能力向上の強化

○ 情報本部等の総合的な分析・評価能力等を強化・能力の高い要員を確保し、多様な分野に精通した情報の専門家を育成

○情報・運用・政策の各部門を通じた情報共有体制を整備

情報支援体制の整備

・自衛隊の海外派遣部隊等が円滑かつ安全に任務を行い得るよう地図・地誌の整備等を推進

西

西

西

西

西

西

西

西

西

西

西

西

研究開発を推進し、各種の技術革新の成果を防衛力に的確に反映

確実な指揮命令と迅速な情報共有を確保

サイバー攻撃対処を統合的に実施する体制を整備

(例)

・新多用途ヘリコプター、機動戦闘車、新空対艦誘導弾の開発

・中距離地対空誘導弾の改善

・潜水艦の能力向上

・将来レーダー等の新規技術及び各種既存装備品の能力向上に関する研究開発

・将来戦闘機のための戦略的検討の推進

・高度な指揮通信システムや新野外通信システム等の情報通信ネットワークを整備

・防衛分野での宇宙利用促進にも資する高機能なXバンド衛星通信網を構築

Page 23: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 21 -

⑥効率的・効果的な防衛力整備 (4)各自衛隊の体制 22大綱においては、おおむね10年後までを念頭に置き、保持すべき陸上、海

上、航空自衛隊の主な編成、装備等を記述し、別表においてそれらの具体的な規模

を示しています。 ①陸上自衛隊 (ア)地域の特性に応じた部隊配置 高い機動力や警戒監視能力を備え、各地に迅速に展開することが可能で、か

つ国際平和協力活動等、多様な任務を効果的に遂行し得る部隊を、地域の特性

に応じて配置します。 この際、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部の防衛についても重視す

るとともに、部隊の編成及び人的構成を見直し、効率化・合理化を徹底します。 また、効果的・効率的な防衛力整備を行う観点から、装備品の近代化を図る

とともに、戦車及び火砲の数量の見直しを行います。

51大綱 07大綱 16大綱 22大綱51大綱 07大綱 16大綱 22大綱

51大綱 07大綱 16大綱 22大綱51大綱 07大綱 16大綱 22大綱

約1,200両

約900両

約600両

約400両

戦 車

約1,000門/両

約900門/両

約600門/両

約400門/両

火砲(主要特科装備)

約1,200両

約900両

約600両

約400両

戦 車

約1,000門/両

約900門/両

約600門/両

約400門/両

火砲(主要特科装備)

※22大綱については、地対艦誘導弾を除き、「火砲」として整理。16大綱の数量は、平成26年度を目途に達成することとしていたもの。

編成定数

160,120人編成定数

155,000人

51大綱 07大綱 16大綱 22大綱 22年度予算

自衛官定数

180,000人編成定数

160,000人編成定数

154,000人

即応予備自衛官員数8,479人

即応予備自衛官員数15,000人

即応予備自衛官員数7,000人

即応予備自衛官員数7,000人

常備自衛官定員151,641人

常備自衛官定員145,000人

常備自衛官定員148,000人

常備自衛官定員147,000人

22年度予算

(参考)

編成定数

160,120人編成定数

155,000人

51大綱 07大綱 16大綱 22大綱 22年度予算

自衛官定数

180,000人編成定数

160,000人編成定数

154,000人

即応予備自衛官員数8,479人

即応予備自衛官員数15,000人

即応予備自衛官員数7,000人

即応予備自衛官員数7,000人

常備自衛官定員151,641人

常備自衛官定員145,000人

常備自衛官定員148,000人

常備自衛官定員147,000人

22年度予算

(参考)

格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、

一層の効率化・合理化を図り、経費を抑制する

事業の優先順位を明確化(選択と集中)

国の他の諸施策との調和を図りつつ防衛力

全体として円滑に十全な機能を果たす

○優先整備する機能

・各種の活動に活用し得る機能

・非対称的な対応能力を有する機能

・非代替的な機能

防衛力の能力発揮のための基盤整備の取組を推進

○人的資源の効果的な活用

・階級・年齢構成の見直しによる一層の精強性の実現

・後方業務の合理化・効率化の推進

○装備品等の運用基盤の充実

・燃料・部品等の確保

・効率的・効果的な維持整備基盤により可動率を高い

水準で維持

○装備品取得の一層の効率化

・契約に係る制度全般の改善

・ライフサイクルコストの抑制

○南西地域を含む防衛態勢の充実・警戒監視、洋上哨戒、防空、弾道ミサイル

対処、輸送、指揮通信等○冷戦型装備・編成の縮減

Page 24: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 22 -

(イ)専門的機能を備えた機動運用部隊の保持 航空輸送、空挺、特殊武器防護、特殊作戦及び国際平和協力活動等に有効に

対応し得るよう、専門的機能を備えた機動運用部隊を、引き続き保持します。 (ウ)高射特科部隊の再編

作戦部隊及び重要地域の防空を行い得るよう、地対空誘導弾部隊を保持する

こととしています。これらの部隊が保有している地対空誘導弾ホークについて

は老朽化が進んでおり対処能力や機動力が向上した03式中距離地対空誘導

弾(中SAM)への更新を進めています。また、中SAMの配備に併せ全国に

8個群ある高射特科部隊を1個群削減するとともに、現在沖縄に配置されてい

る高射特科群を廃止し、能力向上型の装備を保有する連隊を新設します。

島嶼部における対応能力の強化

○ 自衛隊配備の空白地域となって

いる島嶼部について、必要最小限

の部隊を新たに配置

(23中期防衛力整備計画では、

沿岸監視部隊の配置や初動対処

部隊の新編事業着手を記載)

○ 部隊が活動を行う際の

拠点、機動力、輸送能力

及び実効的な対処能力を

整備

第5旅団(帯広)第7師団

(東千歳)

第9師団(青森)

第6師団(神町)

第12旅団(相馬原)

第10師団(守山)

第4師団(福岡)

第8師団(北熊本)

第13旅団(海田市)

第14旅団(善通寺)

第15旅団(那覇)

第2師団(旭川)

第11師団(真駒内)

第4高射特科群(名寄)

第1高射特科群(東千歳)

第2高射特科群(松戸)

第5高射特科群(八戸)

第8高射特科群(青野原)

第3高射特科群(飯塚)

第7高射特科群(竹松)

第6高射特科群(八重瀬)

北部方面総監部(札幌)

東北方面総監部(仙台)

東部方面総監部(朝霞)

中部方面総監部(伊丹)

第3師団(千僧)

西部方面総監部(健軍)

第1師団(練馬)

中央即応集団

[現体制]

8個高射特科群

[22大綱]

7個高射特科群/連隊

(03式中距離地対空誘導弾)

陸自基幹部隊の体制

(22大綱策定時)

Page 25: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 23 -

別表【陸上自衛隊関連部分】下線部分は16大綱からの主要な変更点

区分 22大綱 16大綱 主要な変更点

編成定数 常備自衛官定員 即応予備自衛官員数

15万4千人 14万7千人

7千人

15万5千人 14万8千人

7千人

・部隊編成の見直し等により、

効率化・合理化を徹底し、常

備自衛隊定員を見直し 平素(平時)地域配備する部隊

8個師団 6個旅団

8個師団 6個旅団

・高い機動力や警戒監視能力を

具備

機動運用部隊 中央即応集団 1個機甲師団

1個機甲師団 中央即応集団

・中央即応集団については、国

際平和協力活動等に有効に対

応し得るよう、より専門的機能

を具備

基幹部隊

地対空誘導弾部隊 7個高射特科群/連隊 8個高射特科群

・中SAM配備を進めるととも

に、その配備に併せ1個群を

削減し、沖縄の1個群を連隊

主要装備

戦車 火砲(主要特科装備)※

約400両 約400門/両

約600両 (約600門/両)

・本格的な侵略事態が生起する

可能性が低いことから戦車・

火砲の数量を見直し

※ 16大綱では「主要特科装備」としていたところ、22大綱では地対艦誘導弾を除き「火砲」と整理 ②海上自衛隊 (ア)機動的に運用する護衛艦部隊の保持

従来からの機動運用部隊については、対潜戦をはじめとする各種作戦を効果的

に遂行し得る護衛艦8隻による護衛隊群を基本単位とし、常時2個護衛隊群を即

応の態勢で維持するために必要な4個護衛隊群を引き続き保持します。 これまでの地域配備部隊については、沿岸海域の警戒・防護のため各警備区に

配備されていましたが、警備区を越えて活動できるように体制を変更し、南西方

面への警戒監視や国際平和協力活動にも運用することとします(機動運用化)。

その際、各種任務を効率的に実施し得る4隻を基本単位(護衛隊)とし、2個護

衛隊(8隻)を即応の態勢で維持するために必要な4個護衛隊(16隻)を保持

します。

○ 効率的な護衛艦部隊の管理のため、従来からの機動運用部隊に加え、これまでの地域配備護衛艦についても統一的な練度管理方式(即応A、即応B、部隊練成、修理・個艦練成)を導入

し、機動的に運用

DDG×1DD×3

DDH×1、DDG×1DD×2

即応

段階A

即応

段階B

部隊

練成

段階

修理・

個艦練成

段階

DD/DE×4

従来からの機動運用部隊

4個群=32隻 即応=16隻

新たに機動運用化する部隊(これまでの地域配備部隊)

4個隊:16隻 即応=8隻

DD/DE×4

DD/DE×4

DD/DE×4

8隻8隻

DDH×1、DDG×1DD×28隻8隻

8隻8隻DDH×1、DDG×1

DD×2DDH×1、DDG×1

DD×2

DDG×1DD×3

DDG×1DD×3

8隻8隻DDH×1、DDG×1

DD×2DDG×1DD×3

8隻8隻

8隻8隻

練練度度

(注)DDH:ヘリコプター搭載護衛艦 DDG:ミサイル護衛艦 DD:汎用護衛艦

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- 24 -

地域配備部隊の体制移行

(イ)増強された潜水艦部隊の保持 我が国周辺における常時継続的な情報収集・警戒監視による情報優越を確保し、

各種兆候を早期に察知する態勢を強化するため、潜水艦を16隻から22隻に増

勢します(部隊についても、4個潜水隊(1個隊4隻)を6個潜水隊(1個隊3

~4隻)に増強)。

(ウ)哨戒機部隊の保持 引き続き、固定翼哨戒機部隊を4個航空隊、回転翼哨戒機部隊を5個航空隊、哨戒機部隊全体で9個航空隊を保持します。また、航続距離や探知能力に優れた

固定翼哨戒機(P-1)の導入を通じて、情報収集・警戒監視を平素から我が国

周辺海域で広域にわたり実施します。

= 修理・練成段階を終了した練度の高い艦

我が国周辺

において新た

な脅威・多様

な事態の兆候

を事前に察知

するため、東

シナ海及び日

本海の海上交

通の要衝等に

おいて情報収

集等に当たる

潜水艦を配備

し得る体制

(注)赤い楕円の配備範囲はイメージであり、

実際の配備範囲ではない

東シナ海

日本海

第2潜水隊群(横須賀)

16大綱

第1潜水隊群(呉)

所要隻数は16隻(4個隊)

現在の安全保障

環境の下での突発

的事態生起の蓋然

性を考慮し、各警

備区に高練度艦が

少なくとも1隻必

要であり、各警備

区に常時高練度1

隻を派出し得るよ

う、護衛艦3隻か

ら成る護衛隊を1

個隊ずつ配備する。

所要隻数:3隻×5警備区=15隻

横須賀

湊舞鶴

佐世保

16大綱

横須賀

湊舞鶴

佐世保

16大綱

南西方面に

おける警戒監

視の強化、拡

大・長期化す

る国際任務等

を踏まえ、練

度に応じた編

成の考え方を

採り入れ、高

練度艦8隻を

確保する。

所要隻数:4隻×4練度段階=16隻

22大綱22大綱

所要隻数は22隻(6個隊)

東シナ海

日本海

22大綱 引き続き、

東シナ海及び

日本海の海上

交通の要衝等

に潜水艦を配

備するととも

に、南西方面

等に対する情

報収集・警戒

監視等を充実

し得る体制

(注)赤い楕円の配備範囲はイメージであり、

実際の配備範囲ではない

第1潜水隊群(呉)

第2潜水隊群(横須賀)

固定翼哨戒機の能力向上(P-3Cとの比較)

(P-1)

● 探知識別能力の向上

・ 対潜捜索能力(潜水艦の静粛化及び浅海域への対応)

・ 目標識別能力(光波システム(可視+赤外線)による

能力向上)

● 飛行性能の向上

・ 速度・高度がP-3Cの約1.3倍

・ 航続距離がP-3Cの約1.2倍

● 情報処理能力の向上

・ 高速大容量コンピュータによる戦術判断支援が可能

● 攻撃能力の向上

・ 搭載可能弾種・弾数の増加

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- 25 -

(エ)掃海部隊の保持 我が国は長い海岸線と複数の重要水路を周辺海域に抱えており、海外輸送に依

存する国民生活の安全を確保するためには、機雷の脅威除去を行う掃海艇は必要

不可欠であることから、引き続き1個掃海隊群を保持します。 別表【海上自衛隊関連部分】下線部分は16大綱からの主要な変更点

区分 22大綱 16大綱 主要な変更点

基幹部隊

護衛艦部隊 機動運用 地域配備

潜水艦部隊 掃海部隊 哨戒機部隊

4個護衛隊群(8個護衛隊) 4個護衛隊

6個潜水隊 1個掃海隊群 9個航空隊

4個護衛隊群(8個隊) 5個隊 4個隊

1個掃海隊群 9個隊

・地域配備護衛艦部隊の機動運

用化(1個護衛隊の廃止) ・潜水艦部隊の増強

主要装備

護衛艦 潜水艦 作戦用航空機

48隻 22隻

約150機

47隻 16隻

約150機

・地域配備護衛艦部隊の機動運

用化に伴う護衛艦の隻数増 ・潜水艦の増勢

③航空自衛隊 (ア)我が国のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するための体制

航空警戒管制部隊については、平素から我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的

に警戒監視するための態勢を保持しつつ、警戒群の一部業務の防空指令所等への

集約(8個警戒群・20個警戒隊体制→4個警戒群・24個警戒隊体制)により、

防空指令所等の機能を強化し、防空等を総合的に行う態勢の充実を図ります。

航空警戒管制部隊の体制

(22大綱策定時)

奥尻島

網走

根室

襟裳

当別

稚内

加茂大湊

山田

大滝根山

峯岡山

御前崎

串本

笠取山

佐渡

宮古島

久米島 与座岳

沖永良部島

高畑山

下甑島

福江島

海栗島

背振山

経ヶ岬高尾山輪島

見島

三沢

浜松

E-767

E-2C

(平成23年度完成予定)

:レーダーサイト(BMD対応)

:レーダーサイト

赤字 :警戒群

青字 :警戒航空隊

黒字 :警戒隊

奥尻島

網走

根室

襟裳

当別

稚内

加茂大湊

山田

大滝根山

峯岡山

御前崎

串本

笠取山

佐渡

宮古島

久米島 与座岳

沖永良部島

高畑山

下甑島

福江島

海栗島

背振山

経ヶ岬高尾山輪島

見島

三沢

浜松

E-767

E-2C

(平成23年度完成予定)

:レーダーサイト(BMD対応)

:レーダーサイト

赤字 :警戒群

青字 :警戒航空隊

黒字 :警戒隊

【 16 大 綱 】

航空警戒管制部隊 : 8個警戒群

: 20個警戒隊

警戒航空隊 : 2個飛行隊

【 22 大 綱 】

航空警戒管制部隊 : 4個警戒群

: 24個警戒隊

警戒航空隊 : 2個飛行隊

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(イ)防空等を総合的に行うための体制 戦闘機部隊については、我が国の防空等を総合的な態勢で行い得るよう、現在

の基幹部隊の体制を維持します。 また、能力の高い新戦闘機を整備するとともに、南西地域における即応態勢を

充実するため、那覇基地の戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊とします。 この他、航空偵察部隊、航空輸送部隊及び空中給油・輸送部隊については、引

き続き現在の体制を維持します。 このうち、航空輸送部隊については、現有の輸送機(C-1)より搭載量や航

続距離、巡航速度において格段に優れた新輸送機を整備します。 戦闘機を含む作戦用航空機については、我が国を取り巻く安全保障環境や厳し

い財政事情等を総合的に勘案し、各種事態における輸送機の運用構想の見直し等

により、機数を約350機から約340機とします。 別表【航空自衛隊関連部分】 下線部分は16大綱からの主要な変更点

区分 22大綱 16大綱 主要な変更点

基幹部隊

航空警戒管制部隊 戦闘機部隊 航空偵察部隊 航空輸送部隊 空中給油・輸送部隊 地対空誘導弾部隊

4個警戒群 24個警戒隊 1個警戒航空隊 (2個飛行隊) 12個飛行隊 1個飛行隊 3個飛行隊 1個飛行隊 6個高射群

8個警戒群 20個警戒隊 1個警戒航空隊 (2個飛行隊) 12個飛行隊 1個飛行隊 3個飛行隊 1個飛行隊 6個高射群

・警戒群の一部業務の防空指令

所等への集約により、4個警

戒群を警戒隊化

主要装備

作戦用航空機 うち戦闘機

約340機 約260機

約350機 約260機

・輸送機の運用構想見直し等に

より、作戦用航空機の機数を

見直し

【 16 大 綱 】

戦 闘 機 部 隊 : 12個飛行隊

戦 闘 機 数 : 約260機

【 22 大 綱 】

戦 闘 機 部 隊 : 12個飛行隊

戦 闘 機 数 : 約260機

⇒ 12個飛行隊を維持

⇒ 南西地域の即応態勢の充実のため、

那覇基地を2個飛行隊化

⇒ 能力の高い新戦闘機の整備

北部防衛区域

千歳

三沢

百里

小松

築城

那覇

新田原

中部防衛区域

西部防衛区域

南西防衛区域

北部防衛区域

千歳

三沢

百里

小松

築城

那覇

新田原

中部防衛区域

西部防衛区域

南西防衛区域

戦闘機部隊の体制(22大綱策定時)

F-15

F-4

F-2

F-15

F-15

F-4

F-15

F-15

F-2

F-2

F-15

F-15

機種

戦闘機部隊の配置(22大綱策定時)

第204飛行隊

第301飛行隊

第6飛行隊

第304飛行隊

第305飛行隊

第302飛行隊

第306飛行隊

第303飛行隊

第8飛行隊

第3飛行隊

第203飛行隊

第201飛行隊

飛行隊

南西航空

混成団

西部航空

方面隊

中部航空

方面隊

北部航空

方面隊

方面隊

第2航空団(千歳)

第3航空団(三沢)

第6航空団(小松)

第7航空団(百里)

第8航空団(築城)

第5航空団(新田原)

第83航空隊(那覇)

部隊(基地)

F-15

F-4

F-2

F-15

F-15

F-4

F-15

F-15

F-2

F-2

F-15

F-15

機種

戦闘機部隊の配置(22大綱策定時)

第204飛行隊

第301飛行隊

第6飛行隊

第304飛行隊

第305飛行隊

第302飛行隊

第306飛行隊

第303飛行隊

第8飛行隊

第3飛行隊

第203飛行隊

第201飛行隊

飛行隊

南西航空

混成団

西部航空

方面隊

中部航空

方面隊

北部航空

方面隊

方面隊

第2航空団(千歳)

第3航空団(三沢)

第6航空団(小松)

第7航空団(百里)

第8航空団(築城)

第5航空団(新田原)

第83航空隊(那覇)

部隊(基地)

1個飛行隊を

那覇に移動

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- 27 -

④弾道ミサイル防衛 我が国に飛来する弾道ミサイルに対しては、イージスBMDシステムによる上層

(大気圏外)での迎撃と、ペトリオットPAC-3による下層(大気圏再突入時)

での迎撃を連携して効果的に行う多層防衛の考え方を採用しています。 これまで、「イージス・システム搭載護衛艦4隻、航空警戒管制部隊7個警戒群・

4個警戒隊、地対空誘導弾部隊3個高射群」を当面の整備目標とし、弾道ミサイル

防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊の整備を現有装備を最大限活用する形で効

率的に進めてきており、平成15年度以降の重点的な取組みにより既に主要な整備

事業の予算化を完了したところです。 今後も、弾道ミサイル攻撃への対処体制の強化に向けて、イージス・システム搭

載護衛艦については、現有の「こんごう」型イージス艦4隻に加え、新たに「あた

ご」型イージス艦2隻にBMD能力を付与し、地対空誘導弾ペトリオットについて

も能力向上を引き続き行うとともに、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイル

に関する日米共同開発を推進することとしています。

別表【弾道ミサイル防衛関連部分】 下線部分は16大綱からの主要な変更点 区分 22大綱 16大綱 主要な変更点

イージス・システム

搭載護衛艦 (注2)6隻 4隻

新たに「あたご」型イージス

艦2隻にBMD能力を付与 弾道ミサイル防衛 にも使用し得る 主要装備・基幹部隊 (注1)

航空警戒管制部隊 地対空誘導弾部隊

11個警戒群/隊

6個高射群

7個警戒群 4個警戒隊 3個高射群

PAC-3の再配置により

全ての高射群にPAC-3

を配備 (注1)海上自衛隊の主要装備又は航空自衛隊の基幹部隊の内数。 (注2)弾道ミサイル防衛関連技術の進展、財政事情等を踏まえ、別途定める場合には、海上自衛隊の主要装備に示す

護衛艦隻数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする。

弾道ミサイル

ペトリオットPAC-3

防護地域

航空自衛隊

自動警戒管制システム

(改修)

BMD「統合任務部隊」指揮官

航空総隊司令官

ペトリオットPAC-3による

下層(大気圏再突入時)での迎撃

航空自衛隊 警戒管制部隊地上配備型レーダー

FPS-3改(能力向上型)FPS-5(新たなレーダー)

イメージ図イメージ図

イージスBMDシステム

防護地域

各種センサーによる探知・追尾

(地上配備型レーダー及びイージス艦)

イージスBMDシステムによる

上層(大気圏外)での迎撃

弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備構想・運用構想

海上自衛隊 海上構成部隊イージス艦

(既存艦の改修+ミサイルの取得)

航空自衛隊 高射部隊ペトリオットPAC-3

(既存システムの改修

+ミサイルの取得)

2隻で防護

1個高射隊のPAC-3化改修

PAC-3の再配置

地対空誘導弾ペトリオット(PAC-3)地対空誘導弾ペトリオット(PAC-3)

第3高射群

(千歳)

第6高射群

(三沢)

第1高射群

(入間)

第4高射群

(岐阜)

第2高射群

(春日)

第5高射群

(那覇)

第5高射群(沖縄)の1個高射隊を新たにPAC-3化改修するとともに、

既存のPAC-3の再配置によって全ての高射群にPAC-3を配備。

高射隊

高射隊

高射隊

高射隊

高射群

整備補給隊

指揮所運用隊

群本部

1個高射群の編成

×4

日米共同開発による弾道ミサイル防衛能力の向上能力向上型迎撃ミサイルは運動性能等の向上が図られる。これにより現在の迎撃ミサイル(SM-3)では、イージス艦2隻で

防護している範囲を、能力向上型迎撃ミサイルでは、1隻で防護することも可能

1隻による防護も可能

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- 28 -

4 防衛力の能力発揮のための基盤 防衛力の整備、維持及び運用を効率的・効果的に行うため、以下の事項を重視する

こととしています。 (1)人的資源の効果的な活用

① 隊員の高い士気及び厳正な規律の保持のための施策を推進 ・ 質の高い人材の確保・育成(社会の少子化・高学歴化と自衛隊の任務の多様化等に的確に対応) ・ 衛生基盤等の整備(隊員の壮健性維持) ・ 安全保障問題に関する研究・教育の推進、知的基盤の充実・強化 ・ 過酷又は危険な任務の遂行に対する適切な処遇の確保 ② 自衛隊全体の人員規模及び人員構成を適切に管理し、精強性を確保 ・ 階級及び年齢構成の在り方の見直し ・ 自衛官の職務の再整理(第一線部隊等に若年隊員を優先的に充当、その他の職務について最適化された給与等の処遇を適用)

・ 民間活力の一層の有効活用等による後方業務の効率化(人員の一層の合理化を進め、人件費を抑制することにより、厳しい財政事情の中で有効な防衛力を

確保) ・ 社会における退職自衛官の有効活用、公的部門での受入れを含む再就職援護や退職後の礼遇等の施策の推進、これらと一体のものとしての早期退職制度等

の導入

○ 動的防衛力の発揮には、各自衛隊の特性等に留意しつつ、大きな欠員を抱える士を増勢し、幹部及び准・曹の

構成比率を引き下げることが必要

○ 人的構成が高齢化・高階級化し、人件費の比率が高い防衛予算の構造

⇒ 人事制度の抜本的な見直しにより、 人件費を抑制・効率化精強性を一層向上

自衛官の階級構成

防衛関係費の内訳(H22年度)

人件・糧食費

一般物件費

歳出化経費

20,850

(44.5%)16,750

(35.8%)

9,225

(19.7%)

(単位:億円)

(人数)(人数)

0

5,000

25,000

50,000

英軍

50,000

250,000

500,000

17-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50+

米軍

米、英軍の年齢構成(参考)

士官 下士官・兵

17

-18

20

-24

25

-29

30

-34

35

-39

40

-44

45

-4950+

18 18

-19

20

-24

25

-29

30

-34

35

-39

40

-44

45

-4950

0

35.022.437.541.1

全体士准曹幹部

平均年齢

35.022.437.541.1

全体士准曹幹部

平均年齢

士 曹 准尉 尉官 佐官 将官

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

(人数)

低い 年齢 高い

自衛官の年齢構成

15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 61 62

100%

23.1%

58.6%

18.3%

定員比率

234,364

49,125

143,102

42,137

現員

100%

21.0%

61.1%

18.0%

現員比率

247,746

57,179

145,150

45,417

定員(22年度末)

准・曹

幹 部

100%

23.1%

58.6%

18.3%

234,364

49,125

143,102

42,137

100%

21.0%

61.1%

18.0%

247,746

57,179

145,150

45,417

准・曹

幹 部

(単位:人)自衛官の階級構成

※数字は平成22年4月

100%

23.1%

58.6%

18.3%

定員比率

234,364

49,125

143,102

42,137

現員

100%

21.0%

61.1%

18.0%

現員比率

247,746

57,179

145,150

45,417

定員(22年度末)

准・曹

幹 部

100%

23.1%

58.6%

18.3%

234,364

49,125

143,102

42,137

100%

21.0%

61.1%

18.0%

247,746

57,179

145,150

45,417

准・曹

幹 部

(単位:人)自衛官の階級構成

※数字は平成22年4月※数字は平成22年4月

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- 29 -

(2)装備品等の運用基盤の充実 装備品等の維持整備を効率的かつ効果的に行い、可動率を高い水準で維持するな

ど、防衛装備品の運用基盤を充実 (3)装備品取得の一層の効率化

契約に関する制度全般の改善や効率的調達方式の一層の採用等、調達価格を含む

ライフサイクルコストの抑制をさらに徹底し、費用対効果を向上 (4)防衛生産・技術基盤の維持・育成

選択と集中の実現により安定的かつ中長期的な防衛力の維持整備を行うため、防

衛生産・技術基盤に関する戦略を策定 (5)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討

平和貢献・国際協力、国際共同開発・生産における大きな変化に対応するための

方策について検討

○平和貢献・国際協力における防衛装備品の活用機会が増加。

① 日米物品役務相互提供協定下で行われる武器部品等の米軍への提供 (平成8年、平成10年、平成16年)② 人道的な対人地雷除去活動に必要な貨物等の輸出 (平成9年)③ 中国遺棄化学兵器処理事業の実施に伴い必要な装備品の輸出 (平成12年)④ テロ対策特別措置法に基づく武器等の輸出 (平成13年)⑤ イラク人道復興支援特別措置法に基づく武器等の輸出 (平成15年)⑥ ODAによるインドネシアへの巡視船艇の輸出 (平成18年)⑦ 補給支援特措法に基づく武器等の輸出 (平成19年)⑧ 海賊対処法等に基づく武器等の輸出 (平成21年)⑨ 日豪物品役務相互提供協定下で行われる武器部品等の豪軍への提供(平成22年)

武器輸出三原則等の例外を認めるため発出された内閣官房長官談話(平和貢献、国際協力等)

防衛装備品をめぐる国際環境の変化(平和貢献、国際協力)

○自衛隊がPKO等に携行した重機等について現地から寄贈を要請されたり、海賊対策に日本の巡視艇の供与を求められるケースがある。

PKO等に活用した重機等の寄贈要請

仕様によっては重機も武器に該当

する場合あり

供供 与与

(例)PKO等で被災国等へ携行される

自衛隊の重機等

被災国

○米国が参加する共同開発も米国の同盟国が複数参加する流れ。

○防衛装備品における技術の高度化、高価格化が進む中、自国のみで全ての防衛装備品の開発を進め

ることは難しく、国際共同開発・生産が先進諸国で拡大。

防衛装備品をめぐる国際環境の変化(国際共同開発・生産)防衛装備品をめぐる国際環境の変化(国際共同開発・生産)

○国際共同開発の具体例

米国・ドイツ

米国・イギリス・オランダ・イタリア等9カ国

米国・ドイツ・スペイン・オーストラリア等10カ国

米国・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン

参加国

2005年

2000年

1995年

1994年

開発開始時期

無人機(ユーロ・ホーク)

戦闘機(F-35)

改良型短距離艦対空誘導弾(ESSM)

通信システム(MIDS)

装備品

米国・ドイツ

米国・イギリス・オランダ・イタリア等9カ国

米国・ドイツ・スペイン・オーストラリア等10カ国

米国・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン

参加国

2005年

2000年

1995年

1994年

開発開始時期

無人機(ユーロ・ホーク)

戦闘機(F-35)

改良型短距離艦対空誘導弾(ESSM)

通信システム(MIDS)

装備品

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(6)防衛施設と周辺地域との調和 関係地方公共団体との緊密な協力の下、防衛施設の効率的な維持及び整備を推進

するため、当該施設の周辺地域とのより一層の調和を図るための諸施策を実施 5 留意事項 (1)情勢に重要な変化が生じた場合には、検討を行い必要な修正

22大綱に定める防衛力の在り方は、おおむね10年後までを念頭に置き、防衛

力の変革を図るものです。 また、安全保障環境には中期的に予測し難い面もあることから、「情勢に重要な

変化が生じた場合」には、その時点における安全保障環境等を勘案し検討を行い、

必要な修正を行うこととしています。 (2)計画的な移行管理と事後検証、あるべき防衛力の姿について不断に検討

22大綱に定める防衛力への移行に際しては、財政事情との関係、部隊の練度の

維持、隊員の士気への影響、地元への影響、防衛生産・技術基盤への影響といった

要素について配意した上で段階的に行う必要があることから、中期防衛力整備計画

や各年度の予算を通じて計画的な移行管理を行うこととしています。 中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)においては、22大綱に定

める防衛力の移行や事後検証も含めた防衛力の在り方について不断の検討を行う

ため、自衛隊の装備及び人員の配置や運用状況に関する情報を迅速かつ体系的に集

約の上、これを綿密に評価する体制を防衛省・自衛隊全体として確立するなどによ

り、あるべき防衛力の姿についての今後の政府としての検討に活かしていくことと

しています。

防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策

○植樹、草地整備など緑地帯の整備

○建物の移転などの補償

○土地の買入れ

○移転先地の住宅などの用に供する土地に係る道路、水道、排水施設その他の公共施設整備

移転補償など

○道路、無料放送施設、養護老人ホーム、消防、公園、ごみ処理施設、老人福祉センター、学習等供用施設など

○農業用施設、漁業用施設など

民生安定施設の助成生活・事業上の障害を

やわらげる

○交通・レクリエーション・社会福祉施設などの公共用施設の整備

○医療費・コミュニティバスの運営費・学校施設等耐震診断費など

特定防衛施設周辺整備

調整交付金の交付

周辺地域への影響を

やわらげる

○用水路、溜め池、道路、河川改修、テレビ放送の共同受信

施設など

障害を防ぐ工事の助成騒音以外の障害を防ぐ

○小・中学校・幼稚園などの教育施設、病院・診療所などの医療施設、保育所、老人デイサービスセンター、特別養護老

人ホームなどの社会福祉施設

○住宅

防音工事の助成

騒音障害を防ぐ

事業内容施策目的

○植樹、草地整備など緑地帯の整備

○建物の移転などの補償

○土地の買入れ

○移転先地の住宅などの用に供する土地に係る道路、水道、排水施設その他の公共施設整備

移転補償など

○道路、無料放送施設、養護老人ホーム、消防、公園、ごみ処理施設、老人福祉センター、学習等供用施設など

○農業用施設、漁業用施設など

民生安定施設の助成生活・事業上の障害を

やわらげる

○交通・レクリエーション・社会福祉施設などの公共用施設の整備

○医療費・コミュニティバスの運営費・学校施設等耐震診断費など

特定防衛施設周辺整備

調整交付金の交付

周辺地域への影響を

やわらげる

○用水路、溜め池、道路、河川改修、テレビ放送の共同受信

施設など

障害を防ぐ工事の助成騒音以外の障害を防ぐ

○小・中学校・幼稚園などの教育施設、病院・診療所などの医療施設、保育所、老人デイサービスセンター、特別養護老

人ホームなどの社会福祉施設

○住宅

防音工事の助成

騒音障害を防ぐ

事業内容施策目的

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平成22年度の防衛力整備等について

平成21年12月17日 安 全 保 障 会 議 決 定 閣 議 決 定

(「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」の見直し等について) 1 「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成16年12月10日安全保障会

議決定・閣議決定。以下「現大綱」という。)は、我が国の安全保障、防衛力の在り

方等についての指針を示すものであり、策定から5年後には、その時点における安全

保障環境、技術水準の動向等を勘案し検討を行い、必要な修正を行うこととされてい

る。かかる現大綱の見直しについては、国家の安全保障にかかわる重要課題であり、

政権交代という歴史的転換を経て、新しい政府として十分な検討を行う必要があるこ

とから、平成22年中に結論を得ることとする。その際には、国際情勢のすう勢や我

が国を取り巻く安全保障環境、我が国の防衛力や自衛隊の現状等を分析、評価した上

で、我が国の安全保障の基本方針を策定するとともに、効果的な防衛力の効率的な整

備に向けて取り組むこととする。 また、「中期防衛力整備計画(平成17年度~平成21年度)」(平成16年12月

10日安全保障会議決定・閣議決定)は、現大綱に定める防衛力の水準を達成するた

めの中期的な整備計画、対象期間内の防衛関係費の総額の限度等を定めるものである

が、次期の中期的な防衛力の整備計画は、現大綱の見直しの結論を踏まえて策定する

こととする。 (平成22年度の防衛予算の編成の準拠となる方針) 2 現大綱の見直し等の結論は平成23年度以降に反映されることとなる中で、平成22年度の防衛予算を編成するに当たって、その準拠となる方針を別紙のとおり定め、

平成22年度の防衛予算と現大綱との関係、中期的な防衛力の整備計画がない中で適

切に防衛力の整備を行うための方針等を明らかにすることとする。 (別紙)

平成22年度の防衛予算の編成の準拠となる方針 1 考慮すべき環境 我が国を取り巻く安全保障環境については、基本的には現大綱が示す認識を前提と

しつつ、北朝鮮の核・弾道ミサイル問題の深刻化や周辺諸国の軍事力の拡充・近代化

及び活動の活発化がみられる一方、アジア太平洋地域における安全保障協力や国際社

会における平和と安定のための取組が進展するといった我が国の安全保障に影響を

及ぼし得る新たな動向とともに、日米間の安全保障面での協力の深化も考慮する必要

がある。 また、財政事情については、「平成22年度予算編成の方針」(平成21年9月29

日閣議決定)において、「マニフェストに従い、新規施策を実現するため、全ての予

算を組み替え、新たな財源を生み出す」こととされていることに配慮が必要である。 2 基本的考え方

平成22年度においては、現大綱が定める防衛力の役割を実効的に果たせるよう、

現大綱の考え方に基づき防衛力を整備することとする。 その際、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、現下の喫緊の課題に対応すると

ともに、以下の事項を重視しつつ、老朽化した装備品の更新や旧式化しつつある現有

装備の改修による有効利用を中心として防衛力整備を効率的に行うことを原則とす

る。また、自衛官の実員について、極力効率化を図りつつ、第一線部隊の充足を高め、

即応性・精強性の向上を図る。

Page 34: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

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(1)各種事態の抑止及び即応・実効的対応能力の確保 弾道ミサイル攻撃、特殊部隊攻撃、島嶼部における事態への対応、平素からの常時

継続的な警戒監視・情報収集、大規模・特殊災害への対応等に必要な装備品等を整備

し、これら事態等への対応能力等を確保する。 (2)地域の安全保障環境の一層の安定化 アジア太平洋地域における安全保障環境の一層の安定化を図るため、人道支援・災

害救援をはじめとする各種協力、二国間及び多国間の対話等をさらに推進する。 (3)グローバルな安全保障環境の改善に向けた取組の推進 大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散防止、テロ・海賊への対処、国連平和維持活動

等国際社会が協力して行う各種の活動に主体的かつ積極的に対応するため、各種訓練

への参加等を推進するとともに、国際平和協力活動に活用し得る装備品等を整備する。 (4)効率化・合理化に向けた取組 厳しい財政事情の下、効果的・効率的な防衛力整備を行うため、事業の優先順位を

明確にしつつ、人的資源の効果的・効率的活用、装備品等の効率的な取得等の取組を

推進する。 3 弾道ミサイル攻撃への対応

平成22年度については、現大綱に定める体制の下、航空自衛隊の地対空誘導弾部

隊のうち弾道ミサイル防衛にも使用し得る高射群について、弾道ミサイル対処能力の

向上を図る。また、弾道ミサイル防衛能力を付加されていない高射群については、現

有機能の維持に必要なシステム改修に取り組む。 4 留意事項

我が国を取り巻く安全保障環境の新たな動向に対応するため、以下の事項について

特に留意する。 (1)装備品等のライフサイクルコスト管理の活用の推進等を通じた調達コストの縮減

その他装備取得の一層の効率化等を図るための取組を強化するとともに、中長期的

な視点から我が国の防衛生産・技術基盤の在り方について検討すること。 (2)人員を効率的・効果的に活用するため、可能な業務について部外委託等を行うほ

か、質の高い人材の確保・育成を図り、教育を充実するとともに、社会の少子化、

高学歴化が進む中で自衛隊の任務の多様化等に対応し得る隊員の階級・年齢構成等

の在り方について検討すること。 (3)地域住民・地域社会との関係の緊密化に留意しつつ、陸海空自衛隊が全体として

効果的・効率的に能力を発揮できる体制をめざす観点から、部隊等の効率化・合理

化等について検討すること。 (4)統合運用体制移行後の運用の実績等を踏まえつつ、自衛隊がその任務を実効的に

果たし得るよう、統合運用を強化すること。 5 経費の取扱い

国の最も基本的な施策の一つである防衛の重要性を踏まえつつ、厳しさを増す財政

事情を勘案し、歳出額及び新規後年度負担額を極力抑制する。

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平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について 平成22年12月17日

安 全 保 障 会 議 決 定 閣 議 決 定

平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について別紙のとおり定める。 これに伴い、平成16年12月10日付け閣議決定「平成17年度以降に係る防衛計

画の大綱について」は、平成22年度限りで廃止する。 (別紙)

平成23年度以降に係る防衛計画の大綱 Ⅰ 策定の趣旨 我が国を取り巻く新たな安全保障環境の下、今後の我が国の安全保障及び防衛力の在り方について、「平成22年度の防衛力整備等について」(平成21年12月17日

安全保障会議及び閣議決定)に基づき、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」

として、新たな指針を示す。 Ⅱ 我が国の安全保障における基本理念 我が国の安全保障の第一の目標は、我が国に直接脅威が及ぶことを防止し、脅威が及んだ場合にはこれを排除するとともに被害を最小化することであり、もって我が国

の平和と安全及び国民の安心・安全を確保することである。第二の目標は、アジア太

平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善により

脅威の発生を予防することであり、もって自由で開かれた国際秩序を維持強化して我

が国の安全と繁栄を確保することである。そして、第三の目標は、世界の平和と安定

及び人間の安全保障の確保に貢献することである。 これらの目標を達成するため、我が国の外交力、防衛力等をより積極的に用い、国際の平和と安全の維持に係る国際連合の活動を支持し、諸外国との良好な協調関係を

確立するなどの外交努力を推進することを含め、我が国自身の努力、同盟国との協力、

アジア太平洋地域における協力、グローバルな協力等多層的な安全保障協力を統合的

に推進する。 我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度あ

る防衛力を整備するとの我が国防衛の基本方針を引き続き堅持する。同時に、我が国

は、国連平和維持活動や、人道支援・災害救援、海賊対処等の非伝統的安全保障問題

への対応を始め、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活

動(以下「国際平和協力活動」という。)により積極的に取り組む。 核兵器の脅威に対しては、長期的課題である核兵器のない世界の実現へ向けて、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていく。同時に、現実に

核兵器が存在する間は、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その

信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくとともに、併せて弾道ミサイ

ル防衛や国民保護を含む我が国自身の取組により適切に対応する。 Ⅲ 我が国を取り巻く安全保障環境 1 グローバルな安全保障環境のすう勢は、相互依存関係の一層の進展により、主要国間の大規模戦争の蓋然性は低下する一方、一国で生じた混乱や安全保障上の問題

の影響が直ちに世界に波及するリスクが高まっている。また、民族・宗教対立等に

よる地域紛争に加え、領土や主権、経済権益等をめぐり、武力紛争には至らないよ

うな対立や紛争、言わばグレーゾーンの紛争は増加する傾向にある。 このような中、中国・インド・ロシア等の国力の増大ともあいまって、米国の影

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響力が相対的に変化しつつあり、グローバルなパワーバランスに変化が生じている

が、米国は引き続き世界の平和と安定に最も大きな役割を果たしている。 我が国を含む国際社会にとって、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散、国際テロ組織、海賊行為等への対応は引き続き差し迫った課題である。これらに加え、地域

紛争や、統治機構が弱体化し、又は破綻した国家の存在もグローバルな安全保障環

境に影響を与え得る課題であり、さらに、海洋、宇宙、サイバー空間の安定的利用

に対するリスクが新たな課題となってきている。また、長期的には、気候変動の問

題が安全保障環境にもたらす影響にも留意する必要がある。 こうしたグローバルな安全保障課題は、一国で対応することは極めて困難であり、利益を共有する国々が平素から協力することが重要となっている。 また、国際社会における軍事力の役割は一層多様化しており、武力紛争の抑止・対処、国家間の信頼醸成・友好関係の増進のほか、紛争の予防から復興支援等の平

和構築、さらには非伝統的安全保障分野において、非軍事部門とも連携・協力しつ

つ、軍事力が重要な役割を果たす機会が増加している。 2 アジア太平洋地域においては、相互依存関係が拡大・深化する中、安全保障課題の解決のため、国家間の協力関係の充実・強化が図られており、特に非伝統的安全

保障分野を中心に、問題解決に向けた具体的な協力が進展しつつある。 一方、グローバルなパワーバランスの変化はこの地域において顕著に表れている。我が国周辺地域には、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が集中しており、多

数の国が軍事力を近代化し、軍事的な活動を活発化させている。また、領土や海洋

をめぐる問題や、朝鮮半島や台湾海峡等をめぐる問題が存在するなど不透明・不確

実な要素が残されている。 この中で、北朝鮮は、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、配備、拡散等を継続するとともに、大規模な特殊部隊を保持しているほか、朝鮮半島において軍事的な

挑発行動を繰り返している。北朝鮮のこのような軍事的な動きは、我が国を含む地

域の安全保障における喫緊かつ重大な不安定要因であるとともに、国際的な拡散防

止の努力に対する深刻な課題となっている。 大国として成長を続ける中国は、世界と地域のために重要な役割を果たしつつある。他方で、中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心

とした軍事力の広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に

取り組んでいるほか、周辺海域において活動を拡大・活発化させており、このよう

な動向は、中国の軍事や安全保障に関する透明性の不足とあいまって、地域・国際

社会の懸念事項となっている。 ロシアについては、極東地域における軍事力の規模を冷戦終結以降大幅に縮減しているものの、軍事活動は引き続き活発化の傾向にある。 このような中、米国は、日本、韓国、オーストラリア等の同盟国及びパートナー国との協力を一層重視して、二国間・多国間の枠組みを活用した安全保障関係の強

化を図るなど、この地域への関与を強めている。このような取組は、アジア太平洋

地域の平和と安定に重要な役割を果たすとともに、米国がグローバルな安全保障課

題に取り組むための基盤ともなっている。 3 一方、我が国は、広大な海域を有し、外国からの食糧・資源や海外の市場に多くを依存する貿易立国であり、我が国の繁栄には海洋の安全確保や国際秩序の安定等

が不可欠である。また、我が国は、四方を海で囲まれ長大な海岸線と多くの島嶼を

有するという地理的要素を持つ一方、災害が発生しやすいことに加え、都市部に産

業・人口・情報基盤が集中するうえ、沿岸部に重要施設を多数抱えるといった安全

保障上の脆弱性を持っている。 4 以上を踏まえると、大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低いものの、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定

要因は、多様で複雑かつ重層的なものとなっており、我が国としては、これらに起

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- 35 -

因する様々な事態(以下「各種事態」という。)に的確に対応する必要がある。ま

た、地域の安全保障課題とともに、グローバルな安全保障課題に対し、同盟国、友

好国その他の関係各国(以下「同盟国等」という。)と協力して積極的に取り組む

ことが重要になっている。 Ⅳ 我が国の安全保障の基本方針 1 我が国自身の努力 (1)基本的考え方

我が国の安全保障の目標を達成するための根幹となるのは自らが行う努力であるとの認織に基づき、我が国防衛の基本方針の下、同盟国等とも連携しつつ、

平素から国として総力を挙げて取り組むとともに、各種事態の発生に際しては、

事態の推移に応じてシームレスに対応する。 (2)統合的かつ戦略的な取組

以下により、国として統合的かつ戦略的に取り組む。 ア 関係機関における情報収集・分析能力の向上に取り組むとともに、各府省が相互に協力しつつ、より緊密な情報共有を行うことができるよう、政府横断的

な情報保全体制を強化する。その際、情報収集及び情報通信機能の強化等の観

点から、宇宙の開発及び利用を推進する。また、サイバー空間の安定的利用の

ため、サイバー攻撃への対処態勢及び対応能力を総合的に強化する。 イ 平素より、内閣官房、防衛省・自衛隊、警察、海上保安庁、外務省、法務省その他の関係機関が連携し、各種事態の発生に際しては内閣総理大臣を中心と

する内閣が迅速・的確に意思決定を行い、地方公共団体等とも連携しつつ、政

府一体となって対応する。このため、各種事態のシミュレーションや総合的な

訓練・演習を平素から実施するなど、政府の意思決定及び対処に係る機能・体

制を検証し、法的側面を含めた必要な対応について検討する。 ウ 安全保障会議を含む、安全保障に関する内閣の組織・機能・体制等を検証した上で、首相官邸に国家安全保障に関し関係閣僚間の政策調整と内閣総理大臣

への助言等を行う組織を設置する。 エ 各種災害への対応や国民の保護のための各種体制を引き続き整備するとともに、国と地方公共団体等が相互に緊密に連携し、万全の態勢を整える。 オ 国際平和協力活動を始めとするグローバルな安全保障環境の改善のための取組においては、関係機関の連携はもとより、非政府組織等とも連携・協力を

図ることにより効率的かつ効果的に対応する。また、国連平和維持活動の実態

を踏まえ、PKO参加五原則等我が国の参加の在り方を検討する。 カ 安全保障・防衛問題に関する国民の理解を得つつ国全体としての安全保障を確保するため、我が国の安全保障・防衛政策をより分かりやすくするための努

力を行う。同時に、国際社会における我が国の安全保障・防衛政策への理解を

一層促進するため対外情報発信を強化する。 (3)我が国の防衛力―動的防衛力

防衛力は我が国の安全保障の最終的な担保であり、我が国に直接脅威が及ぶことを未然に防止し、脅威が及んだ場合にはこれを排除するという国家の意思と能

力を表すものである。 今日の安全保障環境のすう勢下においては、安全保障課題に対し、実効的に対処し得る防衛力を構築することが重要である。特に、軍事科学技術の飛躍的な発

展に伴い、兆候が現れてから各種事態が発生するまでの時間が短縮化される傾向

にあること等から、事態に迅速かつシームレスに対応するためには、即応性を始

めとする総合的な部隊運用能力が重要性を増してきている。また、防衛力を単に

保持することではなく、平素から情報収集・警戒監視・偵察活動を含む適時・適

切な運用を行い、我が国の意思と高い防衛能力を明示しておくことが、我が国周

辺の安定に寄与するとともに、抑止力の信頼性を高める重要な要素となってきて

いる。このため、装備の運用水準を高め、その活動量を増大させることによって、

より大きな能力を発揮することが求められており、このような防衛力の運用に着

Page 38: 平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」)€¦ · - 2 - 2年度の防衛力整備について、16大綱の考え方に基づき行うこととした上で、我が

- 36 -

眼した動的な抑止力を重視していく必要がある。 同時に、防衛力の役割は多様化しつつ増大しており、二国間・多国間の協力関係を強化し、国際平和協力活動を積極的に実施していくことなどが求められてい

る。 以上の観点から、今後の防衛力については、防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、従来の「基盤的防衛力構想」によることなく、各種事態に対し、よ

り実効的な抑止と対処を可能とし、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安

定化とグローバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行い得る動的

なものとしていくことが必要である。このため、即応性、機動性、柔軟性、持続

性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力

に支えられた動的防衛力を構築する。 一層厳しさを増す安全保障環境に対応するには、適切な規模の防衛力を着実に整備することが必要である。その際、厳しい財政事情を踏まえ、本格的な侵略事

態への備えとして保持してきた装備・要員を始めとして自衛隊全体にわたる装

備・人員・編成・配置等の抜本的見直しによる思い切った効率化・合理化を行っ

た上で、真に必要な機能に資源を選択的に集中して防衛力の構造的な変革を図り、

限られた資源でより多くの成果を達成する。また、人事制度の抜本的な見直しに

より、人件費の抑制・効率化とともに若年化による精強性の向上等を推進し、人

件費の比率が高く、自衛隊の活動経費を圧迫している防衛予算の構造の改善を図

る。

2 同盟国との協力 我が国は、これまで、基本的な価値を共有する超大国である米国と日米安全保障体制を中核とする同盟関係を維持しており、我が国の平和と安全を確保するために

は、今後とも日米同盟は必要不可欠である。また、我が国に駐留する米軍の軍事的

プレゼンスは、地域における不測の事態の発生に対する抑止及び対処力として機能

しており、アジア太平洋地域の諸国に大きな安心をもたらしている。さらに、日米

同盟は、多国間の安全保障協力やグローバルな安全保障課題への対応を我が国が効

果的に進める上でも重要である。 こうした日米同盟の意義を踏まえ、日米同盟を新たな安全保障環境にふさわしい形で深化・発展させていく。このため、日米間で安全保障環境の評価を行いつつ、

共通の戦略目標及び役割・任務・能力に関する日米間の検討を引き続き行うなど、

戦略的な対話及び具体的な政策調整に継続的に取り組む。また、情報協力、計画検

討作業の深化、周辺事態における協力を含む各種の運用協力、弾道ミサイル防衛に

おける協力、装備・技術協力といった従来の分野における協力や、拡大抑止の信頼

性向上、情報保全のための協議を推進する。さらに、地域における不測の事態に対

する米軍の抑止及び対処力の強化を目指し、日米協力の充実を図るための措置を検

討する。加えて、共同訓練、施設の共同使用等の平素からの各種協力の強化を図る

とともに、国際平和協力活動等を通じた協力や、宇宙、サイバー空間における対応、

海上交通の安全確保等の国際公共財の維持強化、さらには気候変動といった分野を

含め、地域的及びグローバルな協力を推進する。 こうした取組と同時に、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実

に実施する。また、接受国支援を始めとする在日米軍の駐留をより円滑・効果的に

するための取組を積極的に推進する。 3 国際社会における多層的な安全保障協力 (1)アジア太平洋地域における協力

アジア太平洋地域において、二国間・多国間の安全保障協力を多層的に組み合わせてネットワーク化することは、日米同盟ともあいまって、同地域の安全保障

環境の一層の安定化に効果的に取り組むために不可欠である。 特に、米国の同盟国であり、我が国と基本的な価値及び安全保障上の多くの利

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益を共有する韓国及びオーストラリアとは、二国間及び米国を含めた多国間での

協力を強化する。そして、伝統的パートナーであるASEAN諸国との安全保障

協力を維持・強化していく。また、アフリカ、中東から東アジアに至る海上交通

の安全確保等に共通の利害を有するインドを始めとする関係各国との協力を強

化する。 この地域の安全保障に大きな影響力を持つ中国やロシアとの間では、安全保障対話・交流等を通じて信頼関係を増進するとともに、非伝統的安全保障分野等に

おける協力関係の構築・発展を図る。特に、中国との間では、戦略的互恵関係の

構築の一環として、様々な分野で建設的な協力関係を強化することが極めて重要

との認識の下、中国が国際社会において責任ある行動をとるよう、同盟国等とも

協力して積極的な関与を行う。 多国間の安全保障協力については、ASEAN地域フォーラム(ARF)や拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)等の枠組み等を通じ、非伝統的安全

保障分野を中心として、域内の秩序や規範、実際的な協力関係の構築に向け、適

切な役割を果たす。 (2)国際社会の一員としての協力

グローバルな安全保障環境を改善し、我が国の安全と繁栄の確保に資するよう、紛争、テロ等の根本原因の解決等のために政府開発援助(ODA)を戦略的・効

果的に活用するなど外交活動を積極的に推進する。 このような外交活動と一体となって、国際平和協力活動に積極的に取り組む。その際、我が国の知識・経験等をいかした支援に努めるとともに、我が国が置か

れた諸条件を総合的に勘案して、戦略的に実施するものとする。 さらに、グローバルな安全保障課題への取組に関し、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)や欧州諸国とも協力関係の強化を図るとともに、海洋、

宇宙、サイバー空間の安定的利用といった国際公共財の維持・強化、大量破壊兵

器やミサイル等の運搬手段に関する軍縮及び拡散防止のための国際的な取組に

積極的な役割を果たす。このほか、大規模災害やパンデミックに際し、人道支援・

災害救援等に積極的に取り組む。 21世紀の新たな諸課題に対して、国際社会が有効に対処するためには、普遍的かつ包括的な唯一の国際機関である国際連合の機構を実効性と信頼性を高め

る形で改革することが求められており、我が国としても引き続き積極的にこの問

題に取り組む。 Ⅴ 防衛力の在り方 1 防衛力の役割 今後の我が国の防衛力については、上記の動的防衛力という考え方の下、以下の分野において、適切にその役割を果たし得るものとする。その際、平素からの関係

機関との連携を確保する。 (1)実効的な抑止及び対処

我が国周辺における各国の軍事動向を把握し、各種兆候を早期に察知するため、平素から我が国及びその周辺において常時継続的な情報収集・警戒監視・偵察活

動(以下「常続監視」という。)による情報優越を確保するとともに、各種事態

の展開に応じ迅速かつシームレスに対応する。また、本格的な侵略事態への備え

について、不確実な将来情勢の変化への必要最小限の備えを保持する。 その際、特に以下を重視する。 ア 周辺海空域の安全確保 周辺海空域において常続監視を行うなど同海空域の安全確保に努め、我が国の権益を侵害する行為に対して実効的に対応する。

イ 島嶼部に対する攻撃への対応 島嶼部への攻撃に対しては、機動運用可能な部隊を迅速に展開し、平素から配置している部隊と協力して侵略を阻止・排除する。その際、巡航ミサイル対処を

含め島嶼周辺における防空態勢を確立するとともに、周辺海空域における航空優

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勢及び海上輸送路の安全を確保する。 ウ サイバー攻撃への対応 サイバー攻撃に対しては、自衛隊の情報システムを防護するために必要な機能を統合的に運用して対処するとともに、サイバー攻撃に関する高度な知識・技能

を集積し、政府全体として行う対応に寄与する。 エ ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応 ゲリラや特殊部隊による攻撃に対しては、機動性を重視しつつ即応性の高い部隊により迅速かつ柔軟に対応する。特に、沿岸部での潜入阻止のための警戒監視、

重要施設の防護並びに侵入した部隊の捜索及び撃破を重視する。 オ 弾道ミサイル攻撃への対応 弾道ミサイル攻撃に対しては、常時継続的な警戒態勢を保持するとともに、多層的な防護態勢により迎撃回避能力を備えた弾道ミサイルにも実効的に対応す

る。また、万が一被害が発生した場合には、被害を局限すべく事後対処を行う。 カ 複合事態への対応 上記の事態については、複数の事態の連続的又は同時的生起も想定し、事態に応じ実効的な対応を行う。 キ 大規模・特殊災害等への対応 大規模・特殊災害等に対しては、地方公共団体等と連携・協力し、国内のどの

地域においても災害救援を実施する。 (2)アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化

我が国周辺において、常続監視や訓練・演習等の各種活動を適時・適切に実施することにより、我が国周辺の安全保障環境の安定を目指す。 また、アジア太平洋地域の安定化を図るため、日米同盟関係を深化させつつ、二国間・多国間の防衛協力・交流、共同訓練・演習を多層的に推進する。また、

非伝統的安全保障分野において、地雷・不発弾処理等を含む自衛隊が有する能力

を活用し、実際的な協力を推進するとともに、域内協力枠組みの構築・強化や域

内諸国の能力構築支援に取り組む。 (3)グローバルな安全保障環境の改善

人道復興支援を始めとする平和構築や停戦監視を含む国際平和協力活動に引き続き積極的に取り組む。また、国際連合等が行う軍備管理・軍縮、不拡散等の

分野における諸活動や能力構築支援に積極的に関与するとともに、同盟国等と協

力して、国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序の維持のための取組等を

積極的に推進する。 2 自衛隊の態勢 自衛隊は、1で述べた防衛力の役割を実効的に果たし得るよう、各種事態等への対応に必要な態勢に加え、以下に示す態勢を保持する。

(1)即応態勢 待機態勢の保持、機動力の向上、練度・可動率の維持向上等を行い、部隊等の即応性を高め、これを適切かつ効率的に配置することにより、迅速かつ効果的に

活動を行い得るようにする。また、自衛隊が動的防衛力として抑止・対処におい

て有効に役割を果たせるよう、基地機能の抗たん性を確保するとともに、燃料、

弾薬(訓練弾を含む)を確保し、維持整備に万全を期すものとする。 (2)統合運用態勢

迅速かつ効果的な対処に必要な情報収集態勢を保持するほか、衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した指揮統制機能及び情報共有態勢並びに

サイバー攻撃対処態勢を保持することにより、統合運用を円滑に実施し得るよう

にする。 (3)国際平和協力活動の態勢

多様な任務、迅速な派遣、長期の活動にも対応し得る能力、態勢等の充実を図ることにより、国際平和協力活動を積極的に実施し得るようにする。

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3 自衛隊の体制 (1)基本的な考え方

自衛隊は、2で述べた態勢を保持しつつ、1で述べた防衛力の役割を効果的に果たし得る体制を効率的に保持することとする。 その際、効果的・効率的な防衛力整備を行う観点から、各種の活動に活用し得る機能、非対称的な対応能力を有する機能及び非代替的な機能を優先的に整備す

る。具体的には、冷戦型の装備・編成を縮減し、部隊の地理的配置や各自衛隊の

運用を適切に見直すとともに、南西地域も含め、警戒監視、洋上哨戒、防空、弾

道ミサイル対処、輸送、指揮通信等の機能を重点的に整備し、防衛態勢の充実を

図る。 さらに、各自衛隊に係る予算配分についても、安全保障環境の変化に応じ、前例にとらわれず、縦割りを排除し総合的な見地から思い切った見直しを行う。 また、統合運用の推進や日米共同による対処態勢構築の推進等の観点から、陸上自衛隊の作戦基本部隊(師団・旅団)及び方面隊の在り方について、指揮・管理機能の効率化にも留意しつつ、総合的に検討する。 なお、本格的な侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持すること

とする。 (2)体制整備に当たっての重視事項

自衛隊の体制整備に当たっては、次の事項を重視する。 ア 統合の強化 統合の強化に向け、統合幕僚監部の機能の強化を始め、指揮統制、情報収集、教育訓練等の統合運用基盤を強化する。また、輸送、衛生、高射、救難、調達・

補給・整備、駐屯地・基地業務等、各自衛隊に横断的な機能について、整理、共

同部隊化、集約・拠点化等により、統合の観点から効果的かつ効率的な体制を整

備する。 イ 島嶼部における対応能力の強化 自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部について、必要最小限の部隊を新たに配置するとともに、部隊が活動を行う際の拠点、機動力、輸送能力及び実効的

な対処能力を整備することにより、島嶼部への攻撃に対する対応や周辺海空域の

安全確保に関する能力を強化する。 ウ 国際平和協力活動への対応能力の強化 各種装備品等の改修、海上及び航空輸送力の整備、後方支援態勢の強化を行うほか、施設・衛生等の機能や教育訓練体制の充実を図ることにより、国際平和協

力活動への対応能力を強化する。 エ 情報機能の強化 各種事態の兆候を早期に察知し、情報収集・分析・共有等を適切に行うため、宇宙分野を含む技術動向等を踏まえた多様な情報収集能力や情報本部等の総合

的な分析・評価能力等を強化し、情報・運用・政策の各部門を通じた情報共有体

制を整備する。また、自衛隊の海外派遣部隊等が円滑かつ安全に任務を行い得る

よう地理情報等の情報収集能力を強化するなど、遠隔地での活動に対する情報支

援を適切に行う体制を整備する。さらに、関係国との情報協力・交流の拡大・強

化に取り組む。 オ 科学技術の発展への対応 高度な技術力と情報能力に支えられた防衛力を整備するため、各種の技術革新の成果を防衛力に的確に反映させる。特に、高度な指揮通信システムや情報通信

ネットワークを整備することにより、確実な指揮命令と迅速な情報共有を確保す

るとともに、サイバー攻撃対処を統合的に実施する体制を整備する。 カ 効率的・効果的な防衛力整備 格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、一層の効率化・合理化を図り、経費を抑制するとともに、国の他の諸施策との調和を図りつつ防衛力全体として円滑に

十全な機能を果たし得るようにする。このため、事業の優先順位を明確にして選

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択と集中を行うとともに、Ⅵの取組を推進する。 (3)各自衛隊の体制 ア 陸上自衛隊 (ア)各種の機能を有機的に連携させ、各種事態に有効に対応し得るよう、高い機

動力や警戒監視能力を備え、各地に迅速に展開することが可能で、かつ国際平

和協力活動等多様な任務を効果的に遂行し得る部隊を、地域の特性に応じて適

切に配置する。この際、自衛隊配備の空白地域となっている島嶼部の防衛につ

いても重視するとともに、部隊の編成及び人的構成を見直し、効率化・合理化

を徹底する。 (イ)航空輸送、空挺、特殊武器防護、特殊作戦及び国際平和協力活動等に有効に

対応し得るよう、専門的機能を備えた機動運用部隊を保持する。 (ウ)作戦部隊及び重要地域の防空を有効に行い得るよう、地対空誘導弾部隊を保

持する。 イ 海上自衛隊 (ア)平素からの情報収集・警戒監視、対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行による

周辺海域の防衛や海上交通の安全確保及び国際平和協力活動等を実施し得る

よう、機動的に運用する護衛艦部隊及び艦載回転翼哨戒機部隊を保持する。ま

た、当該艦艇部隊は、ウ(ウ)の地対空誘導弾部隊とともに、弾道ミサイル攻

撃から我が国全体を多層的に防護し得る機能を備えたイージス・システム搭載

護衛艦を保持する。 (イ)水中における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広域にわたり

実施するとともに、周辺海域の哨戒を有効に行い得るよう、増強された潜水艦

部隊を保持する。 (ウ)洋上における情報収集・警戒監視を平素から我が国周辺海域で広域にわたり

実施するとともに、周辺海域の哨戒を有効に行い得るよう、固定翼哨戒機部隊

を保持する。 (エ)我が国周辺海域の掃海を有効に行い得るよう、掃海部隊を保持する。 ウ 航空自衛隊 (ア)我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するとともに、我が国に飛

来する弾道ミサイルを探知・追尾するほか、必要とする場合に警戒管制を有効

に行い得るよう、航空警戒管制部隊を保持する。 (イ)戦闘機とその支援機能が一体となって我が国の防空等を総合的な態勢で行い

得るよう、(ア)の航空警戒管制部隊に加え、能力の高い新戦闘機を保有する

戦闘機部隊、航空偵察部隊、国際平和協力活動等を効果的に実施し得る航空輸

送部隊及び空中給油・輸送部隊を保持する。 (ウ)重要地域の防空を実施するとともに、イ(ア)のイージス・システム搭載護

衛艦とともに、弾道ミサイル攻撃から我が国全体を多層的に防護し得る機能を

備えた地対空誘導弾部隊を保持する。 主要な編成、装備等の具体的規模は、別表のとおりとする。

Ⅵ 防衛力の能力発揮のための基盤 防衛力の整備、維持及び運用を効率的・効果的に行うため、以下を重視する。 (1)人的資源の効果的な活用

隊員の高い士気及び厳正な規律の保持のための各種施策を推進する。社会の少子化・高学歴化と自衛隊の任務の多様化等に的確に対応し得るよう、質の高い人

材の確保・育成を図り、必要な教育訓練を実施するとともに、隊員の壮健性維持

に資する衛生基盤等を整備する。また、安全保障問題に関する研究・教育を推進

し、同問題に係る知的基盤を充実・強化する。さらに、過酷又は危険な任務の遂

行に対して適切な処遇が確保されるよう、制度全般について見直しを行う。 同時に、自衛隊全体の人員規模及び人員構成を適切に管理し、精強性を確保する。その際、自衛隊が遂行すべき任務や体力、経験、技能等のバランスに留意し

つつ士を増勢し、幹部及び准曹の構成比率を引き下げ、階級及び年齢構成の在り

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方を見直す。さらに、人員配置の適正化の観点から自衛官の職務の再整理を行い、

第一線部隊等に若年隊員を優先的に充当するとともに、その他の職務について最

適化された給与等の処遇を適用するなど、国家公務員全体の人件費削減の方向性

に沿った人事施策の見直しを含む人事制度改革を実施する。以上に加え、民間活

力の一層の有効活用等により、後方業務の効率化等、人員の一層の合理化を進め、

人件費を抑制することにより、厳しい財政事情の中で有効な防衛力を確保する。

この際、社会における退職自衛官の有効活用を図り、公的部門での受入れを含む

再就職援護や退職後の礼遇等に関する施策を推進し、これらと一体のものとして

早期退職制度等の導入を図る。また、官民の協力や人的交流を積極的に進める。 (2)装備品等の運用基盤の充実

装備品等の維持整備を効率的かつ効果的に行い、可動率を高い水準で維持するなど防衛力の運用に不可欠な装備品等の運用基盤の充実を図る。

(3)装備品取得の一層の効率化 契約に係る制度全般の改善や短期集中調達・一括調達等効率的な調達方式の一層の採用を図るなど、調達価格を含むライフサイクルコストの抑制を更に徹底し、

費用対効果を高める。また、外部監査制度の充実を進め、調達の透明性を向上さ

せる。 (4)防衛生産・技術基盤の維持・育成

安全保障の重要性の観点から、防衛生産・技術基盤について、真に国内に保持すべき重要なものを特定し、その分野の維持・育成に注力して、選択と集中の実

現により安定的かつ中長期的な防衛力の維持整備を行うため、防衛生産・技術基

盤に関する戦略を策定する。 (5)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討

平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機等の装備品の活

用や被災国等への装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加

している。また、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実

現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。このよ

うな大きな変化に対応するための方策について検討する。 (6)防衛施設と周辺地域との調和

関係地方公共団体との緊密な協力の下、防衛施設の効率的な維持及び整備を推進するため、当該施設の周辺地域とのより一層の調和を図るための諸施策を実施

する。 Ⅶ 留意事項 1 この大綱に定める防衛力の在り方は、おおむね10年後までを念頭に置き、防衛力の変革を図るものであるが、情勢に重要な変化が生じた場合には、その時点にお

ける安全保障環境、技術水準の動向等を勘案し検討を行い、必要な修正を行う。 2 この大綱に定める防衛力へ円滑・迅速・的確な移行が行われるよう、計画的な移行管理を行うとともに、事後検証を行う。また、1の見直しに資するため、あるべ

き防衛力の姿について不断の検討を行う。

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別 表 編成定数 常備自衛官定員 即応予備自衛官員数

15万4千人 14万7千人

7千人

平素地域配備する部隊 8個師団 6個旅団

機動運用部隊 中央即応集団 1個機甲師団

基幹部隊

地対空誘導弾部隊 7個高射特科群/連隊

陸上自衛隊

主要装備 戦車 火砲

約400両 約400門/両

基幹部隊

護衛艦部隊 潜水艦部隊 掃海部隊 哨戒機部隊

4個護衛隊群(8個護衛隊) 4個護衛隊 6個潜水隊

1個掃海隊群 9個航空隊

海上自衛隊

主要装備 護衛艦 潜水艦 作戦用航空機

48隻 22隻

約150機

基幹部隊

航空警戒管制部隊 戦闘機部隊 航空偵察部隊 航空輸送部隊 空中給油・輸送部隊 地対空誘導弾部隊

4個警戒群 24個警戒隊

1個警戒航空隊(2個飛行隊) 12個飛行隊 1個飛行隊 3個飛行隊 1個飛行隊 6個高射群

航空自衛隊

主要装備 作戦用航空機 うち戦闘機

約340機 約260機

イージス・システム搭載 護衛艦

6隻 弾道ミサイル防衛にも

使用し得る主要装備・基

幹部隊 航空警戒管制部隊 地対空誘導弾部隊

11個警戒群/隊 6個高射群

注1: 「弾道ミサイル防衛にも使用し得る主要装備・基幹部隊」は海上自衛隊の主要装備又は航空自衛隊の基幹部隊の内数。

注2: 弾道ミサイル防衛機能を備えたイージス・システム搭載護衛艦については、弾道ミサイル防衛関連技術の進展、財政事情等を踏まえ、別途定める場合には、上

記の護衛艦隻数の範囲内で、追加的な整備を行い得るものとする。

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内閣官房長官談話

平成22年12月17日 1 政府は、本日、安全保障会議及び閣議において、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」及び「中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)につ

いて」を決定いたしました。 2 「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」の見直しについては、昨年12月に閣議決定された「平成22年度の防衛力整備等について」にあるとおり、昨年9月の政

権交代という歴史的転換を経て、政府として十分な検討を行う必要があることから、

平成22年中に結論を得ることとしたところであります。 3 政府としては、安全保障会議の場における検討等の結果、我が国を取り巻く安全保障課題や不安定要因が多様で複雑かつ重層的なものとなっている新たな安全保障環

境の下で、今後の我が国の安全保障及び防衛力の在り方について、新たな指針を示す

ことが必要であると判断し、今般、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」を策

定いたしました。 4 この新「防衛大綱」においては、まず、我が国の安全保障と防衛力を考えるに当たっての前提となる基本理念を明らかにしました。我が国の安全保障の目標について

は、第1として、我が国に直接脅威が及ぶことを防止・排除し、もって我が国の平和

と安全及び国民の安心・安全を確保すること、第2として、アジア太平洋地域の安全

保障環境の一層の安定化とグローバルな安全保障環境の改善により脅威発生を予防

し、もって自由で開かれた国際秩序を維持強化して我が国の安全と繁栄を確保するこ

と、第3として、世界の平和と安定及び人間の安全保障の確保に貢献することの三つ

を掲げております。 これらの目標を達成するためには、我が国自身の努力、同盟国との協力及び国際社会における多層的な安全保障協力を統合的に組み合わせることが必要であるとして

おります。また、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事

大国とならないとの基本理念に従い、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節

度ある防衛力を整備する、との我が国防衛の基本方針を引き続き堅持するとともに、

非伝統的安全保障問題への対応を含む国際平和協力活動に積極的に取り組むことと

しております。 5 新たな安全保障環境の下、我が国としては、各種事態に的確に対応するとともに、様々な安全保障課題に対し、同盟国等と協力して積極的に取り組むことが重要になっ

ております。我が国の安全保障の目標を達成するための取組については、まず、我が

国自身の努力として、平素から国として総力を挙げて取り組むとともに、各種事態の

発生に際しては、事態の推移に応じてシームレスに対応することとしております。具

体的には、統合的かつ戦略的な取組として、関係機関における情報収集・分析能力の

向上、情報保全体制の強化、内閣の迅速・的確な意思決定を挙げ、政府の意思決定及

び対処に係る機能・体制を検証し、必要な対応について検討すること、さらに、国家

安全保障に関し内閣の組織・機能・体制等を検証した上で、首相官邸に関係閣僚間の

政策調整と内閣総理大臣への助言等を行う組織を設置する方針を明らかにしており

ます。また、国際平和協力活動等に効率的かつ効果的に対応することや国連平和維持

活動の実態を踏まえ、PKO参加五原則等我が国の参加の在り方を検討することを挙

げております。 6 安全保障の最終的担保である我が国の防衛力については、安全保障環境の変化に対応して、防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、従来の「基盤的防衛力構想」

によることなく、「動的防衛力」を構築することを明らかにしており、これは今回の

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新「防衛大綱」の大きな特色の一つとなっております。 新たな安全保障環境のすう勢の下、今後の防衛力については、各種事態に対し実効

的な抑止と対処を可能とし、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化とグロ

ーバルな安全保障環境の改善のための活動を能動的に行い得る動的なものとしてい

くことが必要であります。このため、即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性

を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防

衛力を構築することとしております。 一層厳しさを増す安全保障環境に対応するには、適切な規模の防衛力を着実に整備

することが必要です。その際、厳しい財政事情を踏まえ、本格的な侵略事態への備え

として保持してきた装備・要員を始めとして自衛隊全体にわたる装備・人員・編成・

配置等の抜本的見直しによる思い切った効率化・合理化を行った上で、真に必要な機

能に資源を選択的に集中して防衛力の構造的な変革を図ることとしております。ま

た、人事制度の抜本的見直しにより、人件費の抑制・効率化とともに若年化による精

強性の向上等を推進し、人件費の比率が高く、自衛隊の活動経費を圧迫している防衛

予算の構造の改善を図ることとしております。 7 次に、同盟国との協力について、我が国は、これまで、基本的な価値を共有する超大国である米国と日米安全保障体制を中核とする日米同盟を維持しておりますが、そ

の意義を踏まえ、日米同盟を新たな安全保障環境にふさわしい形で深化・発展させて

いくこととしております。このため、共通の戦略目標や役割・任務・能力に関する戦

略的な対話等に取り組むとともに、情報協力、計画検討作業等の従来の分野における

協力や拡大抑止の信頼性向上のための協議等を推進し、さらに、日米協力の充実を図

るための措置を検討するとしております。これに加え、共同訓練、施設の共同使用等

の平素からの各種協力の強化を図るとともに、宇宙、サイバー空間における対応とい

った新たな分野を含め、地域的及びグローバルな協力を推進するとしています。 こうした取組と同時に、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負

担軽減を図るため、在日米軍の兵力態勢の見直し等についての具体的措置を着実に実

施し、また、接受国支援を始めとする在日米軍の駐留をより円滑・効果的にするため

の取組を積極的に推進するとしております。 8 さらに、国際社会における多層的な安全保障協力として、二国間・多国間の安全保障協力を多層的に組み合わせてネットワーク化することが、日米同盟ともあいまっ

て、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化に効果的に取り組む上で不可欠

であるという考え方を明らかにしております。その上で、米国の同盟国である韓国及

びオーストラリアとの協力、海上交通の安全確保等に共通の利害を有するインド等と

の協力、中国やロシアとの安全保障対話・交流等を通じた信頼関係増進等の具体的な

取組の方向性を示しております。また、国際社会の一員として、政府開発援助(OD

A)の戦略的な活用や国際平和協力活動への積極的取組を掲げるとともに、欧州連合、

北大西洋条約機構等とも協力関係の強化を図ることとしております。 9 今後の防衛力の在り方については、動的防衛力という考え方の下、防衛力が果たすべき役割として、実効的な抑止及び対処、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の

安定化及びグローバルな安全保障環境の改善を挙げております。このうち、実効的な

抑止及び対処については、周辺海空域の安全確保やサイバー攻撃への対応を新たな役

割として位置付けたほか、引き続き島嶼部に対する攻撃や弾道ミサイル攻撃に対応す

ることとしております。また、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化につ

いては、我が国周辺における常時継続的な警戒監視活動等の適時適切な実施、防衛協

力・交流等の多層的な推進、非伝統的安全保障分野における実際的な協力の推進等を

掲げております。さらに、グローバルな安全保障環境の改善については、国際平和協

力活動に引き続き積極的に取り組むとともに、軍備管理・軍縮や不拡散等のほか、国

際テロ対策等のための取組を推進することとしております。 これらの役割を実効的に果たすため、自衛隊は、即応態勢、統合運用態勢及び国際

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平和協力活動の態勢を重視することとしております。 10 次に、自衛隊の体制整備に当たっては、動的防衛力を効果的・効率的に構築する観点から、冷戦型の装備・編成を縮減するとともに、南西地域も含め、警戒監視、洋上

哨戒、防空、弾道ミサイル対処等の機能を重点的に整備し、防衛態勢の充実を図るこ

ととしております。さらに、縦割りを排除し各自衛隊に係る予算配分についても、安

全保障環境の変化に応じ、総合的な見地から思い切った見直しを行うとしておりま

す。こうした言わばメリハリ付けも、新「防衛大綱」の特色となっております。 11 防衛力がその能力を十全に発揮できるためには、物的な基盤とともに人的な基盤を充実させることが重要となります。このような観点から、自衛隊の人員規模及び人員

構成を適切に管理し、精強性を確保することとし、幹部及び准曹の構成比率の引下げ、

階級や年齢構成の在り方の見直し等人事制度改革の実施について、踏み込んだ方針を

明示したことも、新「防衛大綱」の特色であります。そのほか、契約制度や調達方式

の改善による装備品取得の一層の効率化、防衛生産・技術基盤の維持・育成のための

中長期的な戦略の策定、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討等

を明らかにしております。 なお、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであり、政府としては、この基本理念は引き

続き堅持します。 12 新「防衛大綱」における防衛力の目標水準の達成時期については、現大綱と同様におおむね10年後までを念頭に置くこととしました。また、情勢に重要な変化が生じ

た場合には、その時点における安全保障環境等を勘案して検討を行い、必要な見直し

を行うことを明らかにするとともに、この見直しに資するため防衛力について不断の

検討を行うこととしています。 13 新「中期防」は、新「防衛大綱」に定める我が国が保有すべき防衛力の水準を達成するために策定したものであります。動的防衛力を構築するため、5年間で達成すべ

き計画として、各自衛隊の基幹部隊の見直しや計画期間末の自衛官の定数について明

らかにするとともに、自衛隊の能力等に関する主要事業を掲げております。また、日

米安保体制強化のための施策についても明らかにしており、このうち、在日米軍の駐

留をより円滑かつ効果的に確保するための取組については、在日米軍駐留経費負担を

今後5年間、一層効率的かつ計画的な執行を行うことを前提に、平成22年度予算額

(1,881億円)の水準をおおむね維持することとします。 計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、将来における予見し難い事象への

対応等に安全保障会議の承認を得て措置することができる額を含め、平成22年度価

格でおおむね23兆4千9百億円程度をめどとしております。 14 政府は、今回の決定を国会に御報告いたします。 国民の皆様におかれましても、御理解と御協力を切に希望する次第であります。

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「平成 23年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画 (平成 23年度~平成 27年度)」の決定について(防衛大臣談話)

平成 22年 12月 17日

1 はじめに 本日、安全保障会議及び閣議において、「平成 23年度以降に係る防衛計画の大綱に

ついて」及び「中期防衛力整備計画(平成 23年度~平成 27年度)について」が決定されました。 現「防衛大綱」は、策定から 5 年後に必要な修正を行うこととされていましたが、

昨年 9月の政権交代という歴史的転換を経て、防衛大綱の見直しという国家の安全保障にかかわる重要課題は、新しい政府として十分な検討を行う必要があることから、

昨年 12月の閣議において平成 22年中に結論を得ることとしたものです。 防衛省としても、この閣議決定を受け、精力的な検討を行ってきたところであり、

本年 9月からは、安全保障会議や関係閣僚の間で、総合的な観点からの検討が行われてまいりました。これらの検討を経て、本日、新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画

の決定に至ったものであります。 2 新たな防衛力の構想 新「防衛大綱」では、実効的な抑止及び対処、アジア太平洋地域の安全保障環境の

一層の安定化、グローバルな安全保障環境の改善を防衛力の役割としています。そし

て、これら三つの役割を果たすため、防衛力の存在自体による抑止効果を重視した、

従来の「基盤的防衛力構想」によることなく、「動的防衛力」を構築することとして

います。その内容は次の通りです。 (1) 基本的考え方

我が国はこれまで、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力

の空白となって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要

最小限の基盤的な防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」の有効な部分を継

承することとした現「防衛大綱」に従って、防衛力を整備してきました。この「基

盤的防衛力構想」は、東西両陣営の対峙が国際関係の基本構造をなし、また、自衛

隊の海外派遣が想定されなかった時代に案出されたものですが、我が国が置かれて

いる状況は、当時から大きく変化しています。 現在の世界における多くの安全保障問題は地理的な境界を超えて広がるため、平

素からの各国の連携・協力が重要となっています。この中で軍事力の役割は一層多

様化し、人道支援・災害救援、平和維持、海賊対処等平素から常時継続的に軍事力

を運用することが一般化しつつあります。自衛隊も、これまで国際平和協力活動を

数多く実施してきており、自衛隊の海外での活動は日常化しております。 一方、我が国周辺においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在す

るとともに、多くの国が軍事力を近代化し、また各種の活動を活発化させています。

このような我が国周辺のすう勢下においては、防衛力の存在自体によって相手を抑

止する、いわば静的な抑止のみならず、平素から各種の活動を適時・適切に行うこ

とによって国家の意思や高い防衛能力を示す、いわば動的な抑止が重要となります。 このような状況を踏まえれば、新「防衛大綱」に定められた三つの役割を効果的

に果たすための各種の活動を通じて、我が国の主権、平和と安全及び繁栄を確保す

ることが重要になってきているといえます。このため、新「防衛大綱」では、防衛

力の「運用」に焦点を当てた「動的防衛力」を構築することとし、装備の量と質の

確保のみならず、自衛隊の活動量を増していくことを主眼としています。この考え

方の下、防衛力の適切な整備、維持及び運用を行ってまいります。 その際、日本国憲法の下、従来からの防衛の基本方針は堅持するとともに、東西

冷戦のような対立構造を前提とする、いわゆる脅威対抗のような考え方には立たず、

我が国が置かれた安全保障環境において重視すべき事態への実効的な対応態勢を

確保してまいります。

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(2)保有すべき防衛力の特性等 今後構築すべき動的防衛力は、即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を

備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられたものと

します。その際、優先して整備すべき機能・能力へ資源を適切に配分するほか、装

備品等の維持整備を効果的かつ効率的に行い、その可動率を高い水準で維持すると

ともに、要員の練度を向上させるなど防衛力の運用に不可欠な基盤の充実も図って

まいります。 また、日頃の訓練や演習、シミュレーション等を通じて、防衛力の運用に関する

計画・体制・制度を点検するとともに、関係機関や地方公共団体等との連携を強化

し、必要な措置を講じてまいります。 (3)動的防衛力の運用

新たな防衛力構想の下、以下の 3点を重視して、防衛力を運用することといたします。 第一に、情報収集・警戒監視・偵察活動等の平素の活動の常時継続的かつ戦略的

な実施です。我が国周辺で軍や関係機関による活動が活発化する中、こうした活動

は、我が国周辺の環境が望ましくないものへ変化することの防止にも寄与するもの

になります。 第二に、各種の事態への迅速かつシームレスな対応です。軍事科学技術等の進展

に伴い、兆候が現れてから事態が発生するまでの間は短縮化する傾向にあることな

どから、国内外における突発的な事態に適切に対応することが重要となっています。 第三に、諸外国との協調的活動の多層的な推進です。これは、多様化・複雑化す

る安全保障上の課題や不安定要因への対応に不可欠であり、また、諸外国との協調

的関係の発展や我が国の国際社会における存在感の高まりにも寄与するものです。 3 日米同盟の深化・発展 我が国の平和と安全を確保するため、今後とも日米同盟が不可欠であることに変わ

りはありません。加えて、今日では、日米同盟は、地域の国々に大きな安心をもたら

す存在ともなっています。さらに、日米同盟に基礎を置く両国の緊密な関係は、政治、

経済、社会等の幅広い分野における日米の包括的・総合的な友好協力関係の基盤とな

っており、また、安全保障に関する多国間対話の推進や国際社会の取組を効果的に進

める上でも重要です。このように日米同盟は、我が国の、地域の、そしてグローバル

な安全保障にとって重要な役割を担っています。そのため、我が国自身の防衛力の三

つの役割と相乗効果を発揮するように、自衛隊と米軍との一層緊密な連携を実現し、

新たな安全保障環境にふさわしい形で日米同盟を深化・発展させてまいります。 今後の日米防衛協力においては、日米両国が事態の推移に応じてシームレスに連

携・協力できる態勢の強化や自衛隊と米軍の相互運用性を向上させることにより、日

米両国の意思や高い防衛能力を示すことが重要です。このため、共同訓練及び施設の

共同使用の拡大や装備技術協力の更なる進展といった、平素の日米共同の活動の活発

化に努めてまいります。また、地域的課題やグローバルな課題の解決にも我が国が積

極的な役割を果たすことができるよう、協力を強化してまいります。

4 国際社会の責任ある一員としての努力 (1)アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化

アジア太平洋地域においては、多国間の枠組等を活用して域内の規範構築や具体

的な問題の解決に向けた協力を目指す動きが進んでいます。防衛省・自衛隊として

も、このような動向の中で適切な役割を果たすことが重要であると認識しておりま

す。このため、非伝統的安全保障分野を中心に、地雷・不発弾処理等を含む自衛隊

が有する能力を活用し、実際的な協力を推進するとともに、域内協力枠組の構築・

強化や域内諸国の能力構築支援等に取り組んでまいります。また、これらの取組に

当たっては、二国間・多国間の国際協力を多層的に組み合わせ、特に、韓国やオー

ストラリア等我が国と基本的な価値観や利益を共有し得る国との協力関係を一層

強化するとともに、米国を含めた三国間の協力等も推進してまいります。こうした

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多層的な協調的活動を通じ、地域の一層の安定化に努力してまいります。 (2)グローバルな安全保障環境の改善

国際社会の平和と安定は、我が国の平和と安全と不可分となっており、かかる認

識の下、国際社会の責任ある一員として、平和構築や停戦監視を含む国際平和協力

活動にさらに主体的、積極的かつ戦略的に取り組むとともに、自衛隊の保有する能

力を活かし、国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序の維持、破綻国家等の

能力構築支援等に取り組んでまいります。その際、効果的・効率的な活動を行う観

点から、施設、衛生、輸送等ニーズの高い分野を中心とする活動基盤の強化を図っ

てまいります。 また、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の運搬手段の拡散は、引き続き我が国を含

む国際社会にとっての差し迫った課題です。このほか、各国の経済活動や軍事活動

が海洋、宇宙、サイバー空間の利用に依存を深める中、新「防衛大綱」では、それ

らの安定的利用の維持・強化を図ることとしております。これらの国際社会の課題

に対応するための様々な国際協力に積極的に取り組んでまいります。 さらに、近年、国際的な安全保障に多大な影響を与えかねない問題が新たに注目

されており、防衛省としても、気候変動や資源の制約が安全保障環境や作戦環境に

及ぼす影響について検討を行い、必要な措置を講じてまいります。

5 防衛装備品をめぐる諸課題への対応 安全保障上の重要性等の観点から、国内に保持すべき重要な防衛生産・技術基盤の

維持・育成を重点的に実施するとともに、実効性ある防衛力整備を効率的に実施する

との観点も踏まえ、防衛生産・技術基盤に関する戦略を策定します。 また、自衛隊が携行する重機等の装備品の活用や被災国等への装備品の供与等を、

より迅速かつ柔軟に行うことで、平和維持・平和構築、人道支援・災害救援等の平和

への貢献や国際的な協力をより効果的に行える機会が増加しています。さらに、装備

品の技術が高度化し、開発費用が高騰する中、特に先端装備品の開発・生産における

各国の連携が顕著であり、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化

を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっています。防衛

省としても、このような大きな変化に対応するための方策について検討してまいりま

す。 6 今後の防衛力整備 防衛省としては、新「防衛大綱」に従い、動的防衛力を構築するため、新「中期防」

に基づいて防衛力を整備してまいります。その際、南西地域も含む防衛態勢の充実に

向け、機動力の向上等優先整備すべき機能を重点化し選択的に資源を集中する一方、

戦車・火砲を縮減するなど効率化・合理化を徹底し、従前の例にとらわれず縦割りを

排除した横断的な視点に立って、メリハリのある防衛力整備を進めてまいります。 特に、動的防衛力の強化に資するため、島嶼部への攻撃に対する対応や周辺海空域

の安全確保、さらには各種の事態が複合して発生した場合への対応においても、各自

衛隊が一体となって有機的に対処し、国民の安全を確保できる体制を構築します。こ

のため、統合的な観点から、各自衛隊における機動力、輸送能力及び実効的な対処能

力の向上や、部隊の在り方について検討します。また、統合幕僚監部の機能強化をは

じめとする指揮統制機能の向上についても検討します。検討に際しては、各自衛隊に

横断的な機能の整理等を行い、実効的かつ効率的な体制を構築してまいります。 さらに、人事制度改革や装備品等の取得改革を推進するとともに、装備品の維持整

備をはじめとする後方事業を重視してまいります。 これらの取組により、防衛力の構造的な変革を図り、限られた資源でより多くの成

果を達成しつつ、防衛力の精強性・実効性の向上に努めてまいります。 なお、これらの課題への対応は、動的防衛力を強化し、新たな時代の防衛力を構築

していく上で不可欠なものであり、こうした改革を総合的かつ集中的に推進するため

の体制を整備した上で、省を挙げて精力的に検討を行っていくこととしています。 新「中期防」に定める計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、将来におけ

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る予見し難い事象への対応等に措置できる額を含め、23兆4千9百億円をめどとし

ており、平成22年度予算と比較した場合の平均伸率は0.1%増であります。厳し

い財政事情の中にあっても、必要な経費はぎりぎり確保できたものと考えており、動

的防衛力の構築に向け、防衛力整備を着実に進めてまいる所存です。 7 おわりに 国の防衛は、国家の最も基本的な施策であるとともに、国民一人ひとりによって支えられているものであり、自衛隊の活動も国民や社会の支援なくしては成り立ち得ま

せん。防衛省としては、この新「防衛大綱」の下、国民各位の理解を得つつ、その期

待と信頼に応え得るよう、全力を尽くしてまいる所存です。国民の皆様におかれまし

ても、御理解と御協力を切に希望する次第であります。

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(参考) 防衛計画の大綱に示す防衛力構想の変遷 1 51大綱における防衛力構想(抑止効果を中心とした基盤的防衛力構想を採用) 51大綱の特徴は、防衛力整備の基本的な考え方として「基盤的防衛力構想」を取

り入れるとともに、この構想の下、整備すべき防衛力の具体的な目標ないし水準を明

示したことです。 51大綱は、1970年代のデタントを背景として策定されたものであり、当時の

国際情勢について、 ・ 全般的には、様々な国際関係の安定化の努力等により東西間の全面的武力衝突等が生起する可能性は少ない

・ 我が国周辺においては、米中ソの均衡的関係や日米安保体制の存在が国際関係の安定維持と我が国への本格的な侵略の防止に大きな役割を果たし続ける

との認識に立っていました。 51大綱では、このような情勢が当分の間大きく変化しないという前提に立って、

我が国が保有すべき防衛力は、 ・ 防衛上必要な各種の機能を備え、 ・ 後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼とし、 ・ これをもって平時において十分な警戒態勢をとり得るとともに、 ・ 限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処することができ、 ・ さらに情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行しうるよう配慮されたものとする

こととしました。この考え方は、それまでの防衛力整備には見られなかった新しい考

え方であり、「基盤的防衛力構想」として示されました。 この構想に立って防衛力の現状を見ると、それまでの4次にわたる防衛力整備計画

の策定、実施により漸進的に整備されてきた防衛力は、規模的には、この構想におい

て目標とするところとほぼ同水準にあると判断されました。 さらに、51大綱では、「防衛の構想」として、我が国の防衛は、我が国自ら適切

な規模の防衛力を保有し、日米安保体制と相まって、いかなる態様の侵略にも対応し

得る防衛体制を構築することにより、我が国への侵略を未然防止することが基本であ

るとしていました。 つまり、51大綱で導入した基盤的防衛力構想は、侵略が起きたときに戦いに勝つ

というよりは、我が国への侵略を起こさせないことに重点を置いた抑止効果を中心と

した考え方であるということができます。

基盤的防衛力構想

経済・財政上の制約均衡状態で安定化

が進む国際情勢

必要な機能の例

・対着上陸侵攻対処機能

・対航空侵攻機能

・対潜戦機能

・輸送機能

国際情勢

からの

許容性

51大綱における基盤的防衛力構想のイメージ51大綱における基盤的防衛力構想のイメージ

対日指向可能兵力

自国防衛用兵力

控 置 兵 力

(第三国への配慮)

情勢の変化に伴う

防衛力の拡充強化

日米安保体制

限定小

規模

侵略

・各種の防衛機能を具備

・組織・配備上の均衡

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2 07大綱における防衛力構想(国際貢献や各種事態を意識しつつ、基盤的防衛力構想を基本的に踏襲) 07大綱では、我が国の防衛力整備は、これまで、我が国に対する軍事的脅威に直

接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とな

らないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという「基盤的

防衛力構想」に基づいて行われてきたとした上で、この構想を基本的に踏襲すること

としました。 これは、51大綱策定後約20年が経過し、冷戦の終結等、国際情勢が大きく変化

したことを受けて、改めて防衛力の在り方について検討を行い、 ・ 不透明・不確実な要素をはらみながらも国際関係の安定を図るための様々な努力が今後も継続していく

・ 我が国の安全及び周辺地域の平和と安定にとって日米安保体制が引き続き重要な役割を果たし続ける という認識に立てば、この構想を基本的に踏襲することが適当と判断したものです。 一方、保有すべき防衛力の具体的な内容については、我が国周辺地域の一部におけ

る軍事力の削減や軍事態勢の変化が見られることに留意しつつ、その具体的な在り方

を見直し、最も効率的で適切なものとする必要があるとしました。 また、カンボジア等における国連平和維持活動や阪神淡路大震災の対応等、自衛隊

の役割に対する期待が高まっていたことなどを考慮すれば、自衛隊は、主たる任務が

我が国の防衛であることを基本としつつ、国際貢献や各種の事態への対応といった役

割も担っていくべきとしました。 以上の点を踏まえて、防衛力の規模及び機能の見直しを行い、その合理化・効率化・

コンパクト化を一層進めるとともに、必要な機能の充実・防衛力の質的な向上も図る

ことにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備し、同時に事態の推

移にも円滑に対応できるよう適切な弾力性を確保し得るものとすることが適当であ

るとしました。 このように、07大綱は、防衛力整備の基本的な指針である基盤的防衛力構想は踏

襲しつつ、国際情勢の変化や自衛隊の役割に対する期待の高まりなどを踏まえ、防衛

力の規模や機能を見直すことに加えて、我が国の防衛のみならず、さまざまな分野に

おいて自衛隊の有する能力をより一層活用することを重視するものとなっているの

が特徴でした。

基盤的防衛力構想

経済・財政上の制約均衡状態で安定化

が進む国際情勢

・各種の防衛機能を具備

・組織・配備上の均衡

必要な機能の例

・対着上陸侵攻対処機能

・対航空侵攻機能

・対潜戦機能

・輸送機能

07大綱で踏襲された基盤的防衛力構想のイメージ07大綱で踏襲された基盤的防衛力構想のイメージ

日米安保体制

自らが力の空白となって

我が国周辺地域において不安定とならない

我が国の防衛-侵略の未然防止

-侵略事態への対処

各種の事態への対応-災害派遣

-地震防災派遣

-原子力災害派遣

-在外邦人等の輸送

-周辺事態対応

より安定した安保環境の構

築への貢献-国際緊急援助活動

-PKO

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3 16大綱における防衛力構想(抑止効果重視から対処能力と国際平和協力重視へ) 16大綱の策定にあたっては、平成13年9月の米国同時多発テロに見られるよう

な特定困難な非国家主体による活動が安全保障上の重大な脅威として新たに注目さ

れる一方、テロ対策特措法やイラク人道復興支援特措法に基づく活動も含めて国際的

な活動において自衛隊に求められる任務が多様化し、拡大していたことなどを踏まえ、

防衛力の在り方について検討が行われました。その結果、自らが力の空白となって我

が国周辺地域における不安定要因とならないという我が国の防衛を中心とした「基盤

的防衛力構想」の考え方のみに基づいて、今後の防衛力を構築することは困難になっ

ていると判断しました。これは、以下のような認識に基づくものでした。 ・ 新たな脅威や多様な事態(注1)は、予測困難で突発的に発生する可能性があるため、従来のように防衛力の存在による抑止効果が必ずしも有効に機能しない。

・ 平和と安定に向けた多国間及び二国間の協力を推進する動きが定着するなど、これまで以上に国家間の相互依存関係が進展している状況の下では、我が国の安全保

障を確固たるものとするためには、国際社会の平和と安定が不可欠であり、国際平

和協力活動について、防衛力をもって主体的・積極的に取り組む必要がある。 このため、16大綱では、今後の防衛力について、「基盤的防衛力構想」の有効な

部分は継承しつつ(注2)、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応し得るものとする

とともに、国際平和協力活動の本来任務化を念頭に置き、これに主体的・積極的に取

り組み得るものとすることとされました。また、こうした防衛力の果たすべき役割が

多様化する一方、今後の防衛力を考える場合には、少子化による若年人口の減少、格

段に厳しさを増す財政事情等に配意する必要があるとしています。 このような点を踏まえて、即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術

水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力の下に、限られた資源でより多くの成

果を達成するため、部隊や装備等に多様な機能を持たせて、弾力的な運用を行い、こ

れによって、様々な事態に実効的に対応する「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」

を構築することとしました。 また、防衛力の本来の役割である本格的な侵略事態への備えについては、このよう

な防衛力構想の下で、最も基盤的な部分を確保することとしました。 (注1)大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と

安全に影響を与える多様な事態 (注2)平成17年版防衛白書は、「我が国の防衛力は、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するもの

ではないこと、我が国への侵略を未然に防止するため、引き続き、周辺諸国の軍備の動向といっ

続き有効であると考えられる。」と説明している。

「基盤的防衛力構想」

(「抑止」をより重視した防衛力)

◎ 日米安保体制と相まって侵略の

未然防止に寄与

新たな脅威や多様な事態への

実効的な対応

・弾道ミサイル攻撃への対応

・ゲリラや特殊部隊による攻撃等への対応

・島嶼部に対する侵略への対応

・周辺海空域の警戒監視及び領空侵犯対処や

武装工作船等への対応

・大規模・特殊災害等への対応

国際平和協力活動への

主体的・積極的な取組

「多機能で弾力的な実効性のある防衛力」(「対処」をより重視した防衛力)

◎ 即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力

に支えられたもの

◎ 要員・装備・運用にわたる効率化・合理化を図り、限られた資源でより多くの成果を達成

若年人口の減少、財政事情等に配慮

新たな安全保障環境の下で防衛力に求められる役割

16大綱における多機能で弾力的な実効性のある防衛力16大綱における多機能で弾力的な実効性のある防衛力

有効な部分は継承