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平成25年度以降の我が国水産の動向 平成25年度以降の我が国水産の動向

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  • 平成25年度以降の我が国水産の動向平成25年度以降の我が国水産の動向

  • 第Ⅱ章

    第1部

    (1)漁業・養殖業の動向

    ア 漁業・養殖業の国内生産 平成25(2013)年の我が国の漁業・養殖業生産量は479万トンとなり、前年と比べ7万トン(2%)減少しました(図Ⅱ-1-1)。このうち海面漁業は373万トンとなり、前年と比べ2万トン(1%)減少しました。魚種別ではマイワシ、サケ類等が増加した一方、サンマ等が減少しました。また、海面養殖業は100万トンとなり、前年と比べ4万トン(4%)減少しました。魚種別ではギンザケ、ワカメ等が増加した一方、ノリ類、ホタテガイ、ブリ類等が減少しています。さらに、内水面漁業・養殖業は6万1千トンとなり、前年と比べ6千トン(9%)減少しました。 一方、平成25(2013)年の我が国の漁業・養殖業生産額は1兆4,396億円となり、前年と比べ215億円(2%)増加しました(図Ⅱ-1-1)。このうち海面漁業ではシラス、ビンナガ等が減少したものの、サケ類、サンマ、スルメイカ等が増加したことから9,480億円となり、前年と比べ322億円(4%)の増加となりました。また、海面養殖業ではノリ類、ワカメ類等が減少したことから4,059億円となり、前年と比べ73億円(2%)減少しました。さらに、内水面漁業・養殖業の生産額は857億円となり、前年と比べ34億円(4%)減少しました。

    1,500

    1,000

    500

    0

    万トン平成25年(2013)

    (千トン)

    合    計 4,791 海    面 4,730  漁   業 3,734   遠洋漁業 396   沖合漁業 2,188   沿岸漁業 1,150  養 殖 業 996 内 水 面 61  漁   業 31  養 殖 業 30

    生  

    産  

    遠洋漁業

    沖合漁業

    沿岸漁業海面養殖業

    内水面漁業・養殖業

    平成25(2013)年479万トン

    昭和59(1984)年生産量ピーク 1,282万トン沿岸漁業+沖合漁業の

    生産量(マイワシを除く)ピーク時:587万トン(昭和53(1978)年)

    マイワシの生産量

    昭和40(1965)

    45(1970)

    50(1975)

    55(1980)

    60(1985)

    平成2(1990)

    7(1995)

    12(2000)

    17(2005)

    22(2010)

    〈生産量〉

    図Ⅱ-1-1 漁業・養殖業の生産量・額の推移

    第1節 我が国水産業をめぐる動き

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    イ 漁業経営をめぐる動向(水産物価格の推移) 水産物の平均産地価格は、平成21(2009)年に128円/㎏となって以降、上昇傾向で推移していましたが、平成26(2014)年は前年から6円/㎏下落し、169円/㎏(概数値)となりました(図Ⅱ-1-2)。しかし、魚種別にみると、価格は当該魚種の好不漁等によって変動

    資料:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」注:1) 平成19(2007)~22(2010)年については、漁業・養殖業生産量の内訳である「遠洋漁業」、「沖合漁業」及び「沿岸漁業」は推計

    値である。2) 内水面漁業漁獲量は、平成13(2001)~15(2003)年は主要148河川28湖沼、16(2004)~20(2008)年は主要106河川24湖沼、21(2009)~25(2013)年は主要108河川24湖沼の値である。平成13(2001)年以降の内水面養殖業は、マス類、アユ、コイ及びウナギの4魚種の収獲量である。また、平成19(2007)年以降の収獲量は、琵琶湖、霞ヶ浦及び北浦において養殖されたその他の収獲量を含む。

    3) 平成18(2006)年以降の内水面漁業の漁獲量、生産額には、遊漁者による採補は含まれない。4) 漁漁業生産額は、漁業・養殖業の生産量に産地市場卸売価格等を乗じて推計したものである。5) 平成19(2007)年から海面漁業の部門別生産額については取りまとめを廃止した。

    3

    2

    1

    0

    兆円 (億円)

    内水面漁業・養殖業

    遠洋漁業

    沖合漁業

    沿岸漁業

    海面養殖業

    平成25(2013)年1兆4,396億円

    昭和57(1982)年生産額ピーク 2兆9,772億円

    平成25年(2013)

    合    計 14,396 海    面 13,539  漁   業 9,480   遠洋漁業 …   沖合漁業 …   沿岸漁業 …  養 殖 業 4,059 内 水 面 857  漁   業 169  養 殖 業 687

    生  

    産  

    昭和40(1965)

    45(1970)

    50(1975)

    55(1980)

    60(1985)

    平成2(1990)

    7(1995)

    12(2000)

    17(2005)

    22(2010)

    〈生産額〉

     日本近海には、約1,500種類もの海藻類が生息しているといわれています。その中でも、食用にされる

    コンブ、ワカメ、ノリ類、ヒジキ及びモズク等は、我々にも身近な存在として知られていますが、それ以

    外にも、テングサ、オゴノリ(寒天の原料)、スギノリ、ツノマタ(増粘ゲル化剤のカラギーナンの原料)

    及びフノリ類(織物用の糊のり

    の原料)等、昔から工業用原料等として利用されてきたものもあります。

     最近は、再生可能エネルギーの一つとして植物を原料とするバイオ燃料に注目が集まっていますが、そ

    の原料として海藻類を液状化してから発酵させたり、油脂を蓄積する性質がある植物プランクトン(微細

    藻類)を活用して代替燃料を作り出すといった研究が進められています。

     その一方で、いったんは廃れてしまった海藻の利用法を再評価する動きもみられます。江戸時代から我

    が国の沿岸部では海藻を肥料として農作物を育ててきましたが、こうした利用法は化学肥料の普及によっ

    て廃れました。しかし、化学肥料の長期にわたる使用は土壌中の微生物を減少させ、土壌の荒廃をもたら

    します。そこで、こうした荒廃した土壌を改善するとともに、植物の生育に必要な多糖類やミネラル、ビ

    タミン類を多く含む海藻を肥料として用いる昔ながらの方法が、再び見直されてきています。

    藻類の新しい利用方法コラム

  • 第Ⅱ章

    第1部

    が生じやすくなっています。平成16(2004)~26(2014)年の傾向をみると、マイワシ、サバ類、サンマ、イカ類といった多獲性の魚介類の価格は年ごとに大きく変動しています。

    (沿岸漁船漁家の経営状況) 近年の沿岸漁船漁家の平均漁労所得は、200万円台の黒字で推移してきましたが、平成25(2013)年の漁労所得は前年より15万円減少し190万円となり、200万円を割り込みました(表Ⅱ-1-1)。これは、漁労支出の減少幅を上回って漁労収入が大きく減少したためです。また、漁労外事業所得は、前年に比べ11万円減少して18万円となり、漁労所得を加えた事業所得は、208万円となりました。 漁労収入の減少は、漁獲量が前年と比べ912㎏減少したためと考えられます。また、平成24(2012)年と平成25(2013)年の漁労支出の構造を比べると、油費及びその他の費用が増加しているのに対し、販売手数料は前年と同じで、それ以外の費用は減少していることから、油費が漁業経営上の負担となっていると考えられます(表Ⅱ-1-1)。 このように漁労所得が低迷している中、水産加工業や民宿の経営等による漁労外事業所得が事業所得に占める割合は、平成18(2006)年の3%から平成25(2013)年には9%に上昇しており、沿岸漁船漁家の経営では、漁業以外の事業収入も重要な収入源となっています。

    300

    250

    200

    150

    100

    50

    0

    円/kg

    平成16(2004)

    17(2005)

    18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    26(2014)

    資料:平成16(2004)~21(2009)年は農林水産省「水産物流通統計年報」に基づき水産庁で作成。平成22(2010)~26(2014)年は水産庁調べ。

    注:1) 平成16(2004)~17(2005)年は203漁港、18(2006)年は197漁港、19(2007)~21(2009)年は42漁港、22(2010)~26(2014)年は48漁港の価格である。

    2) 水産物平均は、まぐろ(生鮮、冷凍)、びんなが(生鮮、冷凍)、めばち(生鮮、冷凍)、きはだ(生鮮、冷凍)、かつお(生鮮、冷凍)、まいわし、うるめいわし、かたくちいわし、まあじ、むろあじ、さば類、さんま、ほっけ、するめいか(生鮮、冷凍、遠洋)を加重平均して算出。

    水産物平均マイワシサバ類サンマスルメイカ(生鮮)

    図Ⅱ-1-2 水産物産地価格の推移

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (漁船漁業を営む会社経営体の経営状況) 漁船漁業を営む会社経営体の経営状況をみると、漁労利益の赤字が続いています。平成25(2013)年度の漁労収入は前年度並であったものの、漁労支出(漁労売上原価と漁労販売費及び一般管理費の合計値)が751万円増加したことから、漁労利益の赤字は前年度より拡大しました(表Ⅱ-1-2)。漁船階層別にみても、全ての階層で赤字となっています(表Ⅱ-1-3)。 漁労支出の増加の内訳をみると、漁船・漁具費(前年比14%増)、減価償却費(前年比18%増)、油費(前年比5%増)の増加がみられます(表Ⅱ-1-2)。なお、減価償却費は、漁船等の設備や業務用の建造物の取得等に関する費目であり、これらは一般的に時間が経つにつれ順次価値が減っていくものであることから、取得時に全額経費とするのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたって分割して費用として計上するものです。このように、減価償却費の増加は、設備投資の増大を意味し、必ずしも経営上悪い影響を与えるものとは限りません。 支出構造をみると、雇用労賃(労務費)が漁労支出の30%を占め、次いで油費(21%)となっています(表Ⅱ-1-2)。油費は、強力な集魚灯を用いるいか釣り漁業や、航海日数が長いかつお・まぐろ漁業で大きな割合を占めています(表Ⅱ-1-4)。 経常利益は、漁労外利益が前年度に比べ7万円増加し943万円となった一方で、事業外利益*1が前年に比べ305万円減少し1,088万円になったこと等から、前年に比べ1,150万円減少し170万円となりました。漁労事業での赤字を、水産加工業等の漁労外事業の利益(漁労外利益)及び事業外利益によって埋め合わせする傾向が続いています(図Ⅱ-1-3)。

    *1 地代・配当・利子収入や補助金・補償金収入等の営業外収益から支払利息、雑支出等の営業外費用を引いたもの。

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:1)「漁業経営調査報告」の個人経営体調査の漁船漁業の結果から10トン未満分を再集計し作成した。( )内は漁労支出の構成割合

    (%)である。2)「漁労外事業所得」とは、漁労外事業収入から漁労外事業支出を差し引いたものである。漁労外事業収入は漁業経営以外に経営体が兼営する水産加工業、遊漁、農業等の事業によって得られた収入のほか、漁業用生産手段の一時的賃貸料のような漁業経営にとって付随的な収入を含んでおり、漁労外事業支出はこれらに係る経費である。

    3) 平成22(2010)年、23(2011)年調査は、岩手県、宮城県及び福島県の経営体を除く結果である。4) 平成24(2012)年、25(2013)年調査は、福島県の経営体を除く結果である。また、情報収集等により把握した岩手県及び宮城県の被災漁業経営体数を用いウエイトを算出し集計した。

    5) 漁家の所得には事業所得のほか、漁業世帯構成員の事業外の給与所得や年金等の事業外所得が加わる。6)「その他」には期首期末棚卸増減が含まれているため、期末棚卸高が期首棚卸高を大きく上回る場合、負の値となることがある。

    事 業 所 得 2,550 2,864 2,463 2,330 2,201 2,210 2,339 2,078 漁 労 所 得 2,466 2,742 2,388 2,223 2,066 2,039 2,041 1,895漁労収入 6,321 6,716 6,645 6,211 5,868 6,087 6,141 5,954漁労支出 3,855 (100.0) 3,974 (100.0) 4,257 (100.0) 3,989 (100.0) 3,802 (100.0) 4,048 (100.0) 4,100 (100.0) 4,060 (100.0)雇用労賃 424 (11.0) 441 (11.1) 474 (11.1) 488 (12.2) 469 (12.3) 504 (12.3) 534 (13.0) 503 (12.4)漁船・漁具費 386 (10.0) 335 (8.4) 325 (7.6) 311 (7.8) 292 (7.7) 299 (7.3) 311 (7.6) 299 (7.4)修繕費 227 (5.9) 252 (6.3) 262 (6.2) 291 (7.3) 283 (7.4) 309 (7.5) 313 (7.6) 302 (7.4)油費 730 (18.9) 821 (20.7) 984 (23.1) 694 (17.4) 673 (17.7) 770 (18.8) 783 (19.1) 820 (20.2)販売手数料 386 (10.0) 417 (10.5) 415 (9.8) 402 (10.1) 360 (9.5) 357 (8.7) 375 (9.1) 375 (9.2)減価償却費 604 (15.7) 575 (14.5) 649 (15.2) 664 (16.7) 660 (17.4) 638 (15.6) 665 (16.2) 576 (14.2)その他 1,099 (28.5) 1,133 (28.5) 1,148 (27.0) 1,138 (28.5) 1,063 (28.0) 1,171 (28.6) 1,119 (27.3) 1,186 (29.2)

    漁労外事業所得 84 122 75 107 135 172 297 184

    (単位:千円)平成18年(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-1 沿岸漁船漁家の経営状況の推移

  • 第Ⅱ章

    第1部

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:漁労支出とは、「漁労売上原価」と「漁労販売費及び一般管理費」の合計値である。

    営 業 利 益 △3,248 1,124 △1,201 △11,291 △5,043 △2,831 △729 △9,177

    漁 労 利 益 △8,988 △3,676 △4,691 △16,682 △11,891 △9,232 △10,083 △18,604

    漁労収入(漁労売上高) 289,788 308,680 330,192 287,402 250,048 274,316 282,456 281,446

    漁労支出 298,776 (100.0) 312,356 (100.0) 334,883 (100.0) 304,084 (100.0) 261,939 (100.0) 283,548 (100.0) 292,539 (100.0) 300,050 (100.0)

    雇用労賃(労務費) 96,910 (32.4) 99,490 (31.9) 104,405 (31.2) 95,490 (31.4) 81,751 (31.2) 85,477 (30.1) 91,397 (31.2) 89,355 (29.8)

    漁船・漁具費 14,513 (4.9) 13,682 (4.4) 13,627 (4.1) 13,527 (4.4) 10,941 (4.2) 11,287 (4.0) 12,108 (4.1) 13,778 (4.6)

    油費 58,116 (19.5) 64,006 (20.5) 73,530 (22.0) 57,916 (19.0) 44,967 (17.2) 57,843 (20.4) 58,831 (20.1) 61,745 (20.6)

    減価償却費 21,594 (7.2) 22,433 (7.2) 24,402 (7.3) 25,139 (8.3) 22,985 (8.8) 24,441 (8.6) 22,583 (7.7) 26,570 (8.9)

    販売手数料 11,655 (3.9) 12,161 (3.9) 13,521 (4.0) 12,361 (4.1) 11,008 (4.2) 11,654 (4.1) 12,413 (4.2) 11,889 (4.0)

    漁労外利益 5,740 4,800 3,490 5,392 6,848 6,401 9,354 9,427

    経 常 利 益 6,546 8,871 6,705 △1,611 4,429 7,919 13,194 1,698

    (単位:千円)平成18年度(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-2 漁船漁業を営む会社経営体の経営状況の推移

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:漁労支出とは、「漁労売上原価」と「漁労販売費及び一般管理費」の合計値である。

    (単位:千円)

    漁労利益 漁労収入(漁労売上高) 漁労支出 漁労売上原価 うち雇用労賃(労務費) うち油費 うち減価償却費

    漁労販売費及び一般管理費

    平 均 △ 18,604 281,446 300,050 256,370 85% 89,355 30% 61,745 21% 25,347 8% 43,680 15%

    10~20t未満 △ 6,705 55,365 62,070 46,421 75% 18,315 30% 10,377 17% 5,161 8% 15,649 25%

    20~50 △ 9,005 90,790 99,795 76,607 77% 29,164 29% 15,300 15% 6,532 7% 23,188 23%

    50~100 △ 18,949 121,656 140,605 110,854 79% 48,368 34% 21,287 15% 9,768 7% 29,751 21%

    100~200 △ 34,160 267,566 301,726 243,284 81% 95,801 32% 50,325 17% 28,471 9% 58,442 19%

    200~500 △ 2,897 618,879 621,776 545,507 88% 192,926 31% 123,351 20% 72,964 12% 76,269 12%

    500t以上 △ 36,520 1,233,352 1,269,872 1,142,536 90% 359,504 28% 299,390 24% 98,030 8% 127,336 10%

    表Ⅱ-1-3 漁船階層別コスト構造と利益(会社経営体)(平成25(2013)年度)

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成

    25(2013)

    20(2008)

    平成13年度(2001)トン数階層漁業種類

    表Ⅱ-1-4 漁労支出に占める燃油費の割合の推移

    漁船漁業 平均 12.6 22.0 20.6 船びき網 20~50t 9.2 18.4 14.9 大中型まき網 500t~ 14.1 23.1 21.3 沖合底びき網1そうびき 50~100t 17.8 24.4 16.8 中・小型まき網 10~20t 7.8 15.1 11.2 遠洋まぐろはえ縄 100t~ 14.0 27.1 27.5 近海かつお一本釣 100t~ 15.8 27.1 25.4 近海いか釣 100t~ 19.0 27.0 28.9

    〈会社経営体〉 (単位:%)25

    (2013)20

    (2008)平成13年度(2001)トン数階層漁業種類

    漁船漁業 平均 14.7 22.1 20.8

    小型底びき網 3~5t 23.2 33.5 23.3

    5~10t 19.2 31.9 20.2

    刺網 3~5t 11.3 17.6 16.6

    5~10t 10.0 14.7 16.7

    沿岸いか釣 3~5t 27.2 42.3 39.7

    5~10t 18.6 30.7 27.9

    〈沿岸漁船漁家〉 (単位:%)

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (燃油の価格動向と省エネルギーへの取組) 燃油は、現在の漁業活動にとって欠かせない資材の一つですが、燃油の価格は、新興国における需要の拡大、主要産油地帯である中東情勢の流動化、投機資金の影響、為替相場の変動等様々な要因により、過去10年間で大幅に上昇し、漁業経営に大きな影響を与えています。原油価格は、平成26(2014)年7月以降低下に転じましたが、過去においては短期間で急上昇する場合もみられており、今後の動向については予断を許さない状況となっています。(図Ⅱ-1-4)。このため、国では、燃油高騰時の対策として、漁業者と国が2分の1ずつを負担してあらかじめ積立てを行い、これらの価格が一定以上上昇した際にその積立金から補塡金を交付する「漁業経営セーフティーネット構築事業」を実施しています。なお、平成25(2013)年7月から特別対策発動ラインを設け、これを超えた場合には国の負担割合を4分の3に増やす特別対策を実施しています。

     漁業支出に占める燃油費の割合は非常に高いことから、燃油価格に影響されない安定した漁業経営を確立するためには、燃油の使用量を削減していくことが必要となっています。こ

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:1)「漁労外利益」とは、漁労外売上高から漁労外売上原価、漁労外販売費及び一般管理費を差し引いたものである。漁労外売上高は漁業

    経営以外に経営体が兼営する水産加工業、その他の事業により得られた収入のほか、漁業用生産手段を貸与して得た賃貸料等の収入であり、漁労外売上原価、漁労外販売費及び一般管理費はこれらに係る経費である。

    2)「事業外利益」とは、営業外収益から営業外費用を差し引いたものである。営業外収益は地代・配当・利子収入や補助金・補償金収入等であり、営業外費用は支払利息及び割引料、雑支出等である。

    3) 平成22(2010)年度調査は、岩手県、宮城県及び福島県の経営体を除く結果である。4) 平成23(2011)年度、24(2012)年度及び25(2013)年度は、情報収集により把握した宮城県の被災漁業経営体数を用いウエイトを算出し集計した。

    平成18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    25(2013)

    24(2012)

    23(2011)

    22(2010)

    年度

    15

    10

    5

    0

    -5

    -10

    -15

    -20

    百万円漁労外利益 事業外利益

    漁労利益

    経常利益

    図Ⅱ-1-3 漁船漁業を営む会社経営体の利益の推移

    10.99.4

    1.7

    -18.6

    資料:水産庁調べ

    100

    90

    80

    70

    60

    50

    40

    30

    20

    円/L

    平成17(2005)

    18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    26(2014)

    27(2015)

    平成27(2015)年3月41.6円/L

    平成20(2008)年7月88.7円/L

    図Ⅱ-1-4 原油価格の推移

  • 第Ⅱ章

    第1部

    のためには、エンジンや発電機を省エネ効率の良いものに換装するといった機器整備だけでなく、船底を掃除して水の抵抗を減らすなどの取組も有効です。また、海水温の情報を分析し、魚群の位置を事前に予測することで無駄な航行を減らすといった対策も有効です。このような省エネ機器の導入や省燃油活動に対しても、国は燃油価格高騰に対する緊急対策として支援しています。

    (養殖業の経営状況) 平成25(2013)年の魚類養殖業等の海面給餌養殖経営体(個人経営体)の経営をみると、漁労所得は前年より237万円増加し、493万円となりました(表Ⅱ-1-5)。これは、漁労収入が322万円増加した一方で、漁労支出は85万円の増加にとどまったためです。なお、海面給餌養殖経営体(個人経営体)の経営は、沿岸漁船漁家に比べ漁労収入及び支出が大きいため、これらの比較的小さな変動でも漁労所得が大きく変動する傾向にあります。また、えさ代及び種苗代が漁労支出の大部分を占める経営構造は変化していないほか、期末在庫が大幅に増加しており、今後の経営の動向には予断を許さないものがあります。

     一方、平成25(2013)年度の海面給餌養殖経営体(会社経営体)の経営をみると、漁労利益の赤字幅が前年度より690万円縮小し、808万円の赤字となりました(表Ⅱ-1-6)。これは、漁労売上高が7,257万円増加した一方で、漁労支出は6,567万円の増加にとどまったためです。また、漁労外利益が大幅に増加したため、営業利益は389万円の黒字となりました。漁労売上高の増加は、平成24(2012)年度に増加した在庫を平成25(2013)年度に販売したためです。経営構造をみると、えさ代に比べ種苗代が大きく増加しており、養殖尾数の増加により、今後の経営においてえさ代の負担が増加することが懸念されます。

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:1)「漁業経営調査報告」の個人経営体調査の養殖業の結果から「ぶり類養殖業」と「まだい養殖業」分を再集計し作成した。( )内は

    漁労支出の構成割合(%)である。2)「漁労外事業所得」とは、漁労外事業収入から漁労外事業支出を差し引いたものである。漁労外事業収入は漁業経営以外に経営体が兼営する水産加工業、遊漁、農業等の事業によって得られた収入のほか、漁業用生産手段の一時的賃貸料のような漁業経営にとって付随的な収入を含んでおり、漁労外事業支出はこれらに係る経費である。

    3) 漁家の所得には事業所得のほか、漁業世帯構成員の事業外の給与所得や年金等の事業外所得が加わる。4)「その他」には期首期末棚卸増減が含まれているため、期末棚卸高が期首棚卸高を大きく上回る場合、負の値となることがある。

    事 業 所 得 6,175 5,713 △ 5,101 △ 4,022 △ 1,191 782 2,747 5,142 漁 労 所 得 7,039 5,638 △ 5,187 △ 4,174 △ 1,230 486 2,564 4,933漁労収入 75,168 72,949 74,241 62,943 68,933 73,474 70,168 73,389漁労支出 68,129 (100.0) 67,311 (100.0) 79,427 (100.0) 67,117 (100.0) 70,162 (100.0) 72,988 (100.0) 67,604 (100.0) 68,456 (100.0)雇用労賃 2,508 (3.7) 2,526 (3.8) 2,705 (3.4) 2,737 (4.1) 2,579 (3.7) 2,485 (3.4) 2,373 (3.5) 2,278 (3.3)漁船・漁具費 750 (1.1) 632 (0.9) 550 (0.7) 583 (0.9) 664 (0.9) 1,130 (1.5) 644 (1.0) 739 (1.1)修繕費 1,211 (1.8) 1,161 (1.7) 1,106 (1.4) 1,127 (1.7) 1,407 (2.0) 1,510 (2.1) 1,141 (1.7) 1,044 (1.5)油費 1,002 (1.5) 1,088 (1.6) 1,186 (1.5) 837 (1.2) 879 (1.3) 880 (1.2) 942 (1.4) 1,064 (1.6)餌代 44,818 (65.8) 46,738 (69.4) 49,129 (61.9) 41,171 (61.3) 43,336 (61.8) 45,589 (62.5) 44,980 (66.5) 50,256 (73.4)種苗代 9,760 (14.3) 11,131 (16.5) 12,683 (16.0) 9,985 (14.9) 10,580 (15.1) 10,733 (14.7) 10,119 (15.0) 11,287 (16.5)販売手数料 953 (1.4) 961 (1.4) 1,026 (1.3) 939 (1.4) 1,101 (1.6) 1,188 (1.6) 1,050 (1.6) 964 (1.4)減価償却費 2,796 (4.1) 2,294 (3.4) 3,161 (4.0) 2,505 (3.7) 2,410 (3.4) 2,756 (3.8) 2,635 (3.9) 2,087 (3.0)その他 4,332 (6.4) 780 (1.2) 7,882 (9.9) 7,234 (10.8) 7,205 (10.3) 6,717 (9.2) 3,720 (5.5) △1,263 (1.8)

    漁労外事業所得 △ 864 76 85 152 39 296 183 209

    (単位:千円)平成18年(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-5 海面給餌養殖経営体(個人経営体)の経営状況の推移

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

     平成25(2013)年の貝類・藻類養殖業等の海面無給餌養殖経営体(個人経営体)の経営をみると、漁労所得は前年より95万円増加し、507万円となりました(表Ⅱ-1-7)。これは、漁労収入が46万円増加した一方で、漁労支出が48万円減少したためです。漁労支出の構造も、前年とほぼ同様の構造となっています。

    (魚粉の価格動向) 給餌養殖で使用される配合飼料には、魚粉が多く使われています。このため、えさ代が経費の大部分を占める給餌養殖業にとって、魚粉価格の動向は経営を大きく左右します。

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:1)「漁業経営調査報告」の会社経営体調査の養殖業の結果から「ぶり類養殖業」と「まだい養殖業」分を再集計し作成した。( )内は

    漁労支出の構成割合(%)である。2)「漁労支出」とは、「漁労売上原価」と「漁労販売費及び一般管理費」の合計値である。3)「漁労外利益」とは、「漁労外売上高」から「漁労外販売費及び一般管理費」を引いたものである。「漁労外売上高」は、漁業経営以外に経営体が兼営する水産加工業、製氷、民宿経営等の事業によって得られた収入のほか、漁業用生産手段の賃貸料のような漁業経営の付随的な収入を含んでおり、「漁労外販売費及び一般管理費」はこれらに係る経費である。4)「その他」には期首期末棚卸増減が含まれているため、期末棚卸高が期首棚卸高を大きく上回る場合、負の値となることがある。

    営 業 利 益 3,141 △5,051 △11,499 △ 1,768 4,608 3,875 △10,645 3,889 漁 労 利 益 2,879 △4,816 △15,488 △ 4,059 978 1,534 △14,985 △8,083漁労売上高 191,144 208,013 203,566 173,076 250,506 238,950 210,276 282,845漁労支出 188,265 (100.0) 212,829 (100.0) 219,055 (100.0) 177,134 (100.0) 249,528 (100.0) 237,416 (100.0) 225,262 (100.0) 290,928 (100.0)給料手当・役員報酬 7,903 (4.2) 8,561 (4.0) 9,140 (4.2) 8,805 (5.0) 10,817 (4.3) 11,281 (4.8) 11,831 (5.3) 12,389 (4.3)漁船・漁具費 2,091 (1.1) 2,754 (1.3) 1,755 (0.8) 1,579 (0.9) 2,200 (0.9) 2,542 (1.1) 2,458 (1.1) 2,546 (0.9)修繕費 2,124 (1.1) 1,762 (0.8) 2,388 (1.1) 2,068 (1.2) 3,095 (1.2) 2,977 (1.3) 1,900 (0.8) 3,047 (1.0)油 費 1,776 (0.9) 2,267 (1.1) 2,925 (1.3) 2,226 (1.3) 2,071 (0.8) 2,839 (1.2) 2,917 (1.3) 3,099 (1.1)餌 代 114,544 (60.8) 137,291 (64.5) 133,043 (60.7) 104,975 (59.3) 161,032 (64.5) 164,869 (69.4) 175,585 (77.9) 178,196 (61.3)種苗代 28,332 (15.0) 23,379 (11.0) 27,082 (12.4) 25,333 (14.3) 20,005 (8.0) 22,785 (9.6) 22,933 (10.2) 33,153 (11.4)販売手数料 2,024 (1.1) 2,338 (1.1) 2,465 (1.1) 2,144 (1.2) 2,977 (1.2) 2,906 (1.2) 2,143 (1.0) 2,952 (1.0)減価償却費 6,640 (3.5) 7,970 (3.7) 7,190 (3.3) 7,907 (4.5) 14,133 (5.7) 11,223 (4.7) 12,000 (5.3) 10,445 (3.6)その他 22,831 (12.1) 26,507 (12.5) 33,067 (15.1) 22,097 (12.5) 33,199 (13.3) 15,995 (6.7) △6,506 2.9 45,103 (15.5)

    漁 労 外 利 益 262 △235 3,989 2,291 3,630 2,341 4,340 11,972経 常 利 益 3,027 △1,096 △7,475 △2,340 4,216 2,979 △13,350 3,077

    (単位:千円)平成18年度(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-6 海面給餌養殖経営体(会社経営体)の経営状況の推移

    資料:農林水産省「漁業経営調査報告」に基づき水産庁で作成注:1)「漁業経営調査報告」の個人経営体調査の養殖業の結果から「ほたてがい養殖業」、「かき類養殖業」、「わかめ類養殖業」、「のり類養殖

    業」及び「真珠養殖業」分を再集計し作成した。( )内は漁労支出の構成割合(%)である。2)「漁労外事業所得」とは、漁労外事業収入から漁労外事業支出を差し引いたものである。漁労外事業収入は漁業経営以外に経営体が兼営する水産加工業、遊漁、農業等の事業によって得られた収入のほか、漁業用生産手段の一時的賃貸料のような漁業経営にとって付随的な収入を含んでおり、漁労外事業支出はこれらに係る経費である。

    3) 平成22(2010)年、23(2011)年調査は、岩手県、宮城県及び福島県の経営体を除く結果である。4) 平成24(2012)年調査は、岩手県及び宮城県の経営体を除く結果である(かき類養殖業を除く。)。5) 平成25(2013)年調査ののり類養殖業は、宮城県の経営体を除く結果である。6) 漁家の所得には事業所得のほか、漁業世帯構成員の事業外の給与所得や年金等の事業外所得が加わる。7)「その他」には期首期末棚卸増減が含まれているため、期末棚卸高が期首棚卸高を大きく上回る場合、負の値となることがある。

    事 業 所 得 9,487 5,475 4,563 4,624 5,873 4,491 4,300 5,159 漁 労 所 得 9,358 5,358 4,418 4,569 5,896 4,549 4,124 5,069漁労収入 28,627 16,446 15,711 15,714 20,785 19,795 18,896 19,359漁労支出 19,268 (100.0) 11,088 (100.0) 11,294 (100.0) 11,145 (100.0) 14,889 (100.0) 15,246 (100.0) 14,771 (100.0) 14,290 (100.0)雇用労賃 3,354 (17.4) 1,727 (15.6) 1,834 (16.2) 1,918 (17.2) 3,330 (22.4) 3,308 (21.7) 3,185 (21.6) 2,834 (19.8)漁船・漁具費 1,085 (5.6) 455 (4.1) 445 (3.9) 497 (4.5) 789 (5.3) 756 (5.0) 630 (4.3) 890 (6.2)修繕費 749 (3.9) 424 (3.8) 511 (4.5) 452 (4.1) 888 (6.0) 693 (4.5) 921 (6.2) 914 (6.4)油費 1,478 (7.7) 1,126 (10.2) 1,288 (11.4) 919 (8.2) 1,157 (7.8) 1,184 (7.8) 1,240 (8.4) 1,254 (8.8)餌代 28 (0.1) 20 (0.2) 26 (0.2) 22 (0.2) 22 (0.1) 38 (0.2) 21 (0.1) 15 (0.1)種苗代 1,311 (6.8) 746 (6.7) 597 (5.3) 540 (4.8) 416 (2.8) 501 (3.3) 420 (2.8) 393 (2.7)販売手数料 1,563 (8.1) 780 (7.0) 754 (6.7) 734 (6.6) 745 (5.0) 613 (4.0) 620 (4.2) 669 (4.7)減価償却費 3,069 (15.9) 1,782 (16.1) 1,933 (17.1) 1,875 (16.8) 2,717 (18.2) 2,275 (14.9) 2,232 (15.1) 2,014 (14.1)その他 6,633 (34.4) 4,028 (36.3) 3,906 (34.6) 4,188 (37.6) 4,825 (32.4) 5,879 (38.6) 5,503 (37.3) 5,307 (37.1)

    漁労外事業所得 128 117 145 55 △ 23 △ 58 175 91

    (単位:千円)平成18年(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-7 海面無給餌養殖経営体(個人経営体)の経営状況の推移

  • 第Ⅱ章

    第1部

     このような中、世界の魚粉生産の約4分の1を占めるペルーにおいて、魚粉の原料として用いられているペルーカタクチイワシ(アンチョビー)の資源量が急減し、魚粉生産量も大幅に減少していること等から、同国産魚粉の価格が急速に上昇しており、我が国の魚粉価格も高騰しています(図Ⅱ-1-5)。 国では、配合飼料価格が高騰した際の対策として、燃油価格の高騰対策と同様に、漁業者と国が2分の1ずつを負担してあらかじめ積立てを行い、これらの価格が一定以上上昇した際にその積立金から補塡金を交付する「漁業経営セーフティーネット構築事業」を実施しており、本事業の円滑な実施を通じて、養殖魚の安定供給を図っています。

    (漁船の船齢) 我が国漁業で使用される漁船については、引き続き高船齢化が進んでいます。指定漁業(大臣許可漁業)の許可を受けている漁船の船齢分布をみると、全体の中央値は22年となっており、船齢30年以上の漁船は全体の15%、船齢20年を超える漁船は全体の56%となっています(図Ⅱ-1-6)。 また、沿岸漁業に従事する漁船も含む漁船保険の加入データをみると、船齢20年を超える漁船が全体の71%を占めています*1。

    *1 船齢が不明な漁船については、計算から除いた。

    資料:財務省「貿易統計」に基づき水産庁で作成

    20181614121086420

    万円/トン

    平成16(2004)

    17(2005)

    18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    26(2014)

    27(2015)

    平成27(2015)年2月191,428円/トン

    図Ⅱ-1-5 魚粉の輸入価格の推移

    250

    200

    150

    100

    50

    0

    船 齢%

    0 20 40 60 80 100

    資料:水産庁調べ注:1) 指定漁業のうち、大型捕鯨業、小型捕鯨業及び母船式捕鯨業を除く。2) 大中型まき網漁業については、探索船、灯船、運搬船及び海外まき網船を含む。

    0~5年 6~12年 13~20年 21~29年 30年以上中央値以西底びき網漁業北太平洋さんま漁業

    近海かつお・まぐろ漁業沖合底びき網漁業大中型まき網漁業

    遠洋かつお・まぐろ漁業中型さけ・ます流し網漁業

    いか釣り漁業遠洋底びき網漁業

    日本海べにずわいがに漁業50 10 15 20 25 30以上

    図Ⅱ-1-6 指定漁業許可船の船齢分布状況(平成26(2014)年)

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (新しい技術の導入) 漁船は、漁業にとって基幹的な生産設備ですが、漁船の高船齢化が進めば、設備の能力も低下し、安全な漁労活動や消費者が求める安全で品質の高い水産物の供給が困難となります。このため、積極的な投資を促進し、新しい技術を取り入れて漁業の収益性を高めていくことが喫きっ

    緊きん

    の課題ですが、漁業の収益性が低いものとなっている中で、新たな投資に伴うリスクを軽減することが必要となっています。 このため、国は、高性能漁船と高度な品質管理手法を導入するなどにより漁業の収益性を高めるモデル的な取組に対して、「漁業構造改革総合対策事業」により支援しています。また、空気の浮力を利用した定置網の自動揚網システム等、漁業者等が漁業現場で行う省エネルギー・省コスト化に資する新技術の実証の取組に対して支援をしています。さらに、漁業協同組合が中心となって、水産物の品質を高める技術開発に取り組み、その成果を漁業者に還元していく取組も行われています。 また、漁船漁業だけではなく、養殖業でも、陸上養殖関連技術や餌

    料りょう

    等において技術開発が進められており、このような技術が養殖生産の現場に導入され、養殖生産物の品質の一層の向上や養殖業の収益性の改善につながっていくことが期待されます。

    *1 魚は、水と体内の塩分の違いから、体内に過剰に水分を取り込んだり、逆に体外に水分が出すぎないよう常に浸透圧を調節している。

     岡山理科大学では、淡水にナトリウム等のミネラル数種類を少量加えた飼育水を使用し、完全閉鎖循環

    式陸上養殖の早期実用化に取り組んでいます。この飼育水を使用することにより、特に海から離れた地域

    で陸上養殖を行う際に大きな負担となる海水の輸送コストや人工海水を購入するコストを削減することが

    できます。また、飼育水の浸透圧は魚の体内の浸透圧に近いため、養殖魚は浸透圧調整*1に費やすエネ

    ルギーを使わずに済むことから、成長が早く、また、雑菌の繁殖が抑えられるため、病気にかかる危険性

    も低いとされています。

     岡山理科大学では、この飼育水を使用して陸上で養殖したトラフグ、ヒラメ、シマアジ、ニホンウナギ、

    クエ、クロマグロ等を試験出荷しており、一般市場で好評を得ています。これまでの研究成果として、

    18か月間飼育水の交換をしなくても、通常の養殖に比べ、トラフグでは約3倍、ニホンウナギでは約5

    倍まで生産性を高められることが確認されています。今後は更なるコストの削減や養殖魚の大型化・大量

    生産を目指していくとしています。

    陸上養殖に最適な飼育水の開発コラム

     養殖用配合飼料の主要原料である魚粉の価格が世界的に高騰している中、魚粉を使用しない配合飼料の

    開発は喫きっ

    緊きん

    の課題です。このため、各研究機関や関係企業等は、動物・植物を問わず様々な原料を用いた、

    魚粉を使わない養魚用配合飼料の研究を進めており、飼育試験により魚粉を主体とする配合飼料とほとん

    魚粉を使わない養殖用配合飼料の開発の状況コラム

  • 第Ⅱ章

    第1部

    ウ 漁業生産に関わる人々をめぐる動向(漁業経営体の動向) 2013年漁業センサスによると、平成25(2013)年における我が国の海面漁業の漁業経営体数は94,507経営体で、平成20(2008)年と比べ18%減少しました。特に個人経営体(平成20(2008)年比18%減)及び共同経営体(平成20(2008)年比20%減)が大きく減少した一方で、会社経営体は平成20(2008)年と比べ7%の減少にとどまっています(図Ⅱ-1-7)。 また、沿岸漁業経営体(養殖業を除く。)は平成20(2008)年と比べ17%減少したのに対し、中小及び大規模漁業経営体は平成20(2008)年と比べ13%の減少にとどまっています(図Ⅱ-1-8)。 営んだ漁業種類別にみると、平成25(2013)年と平成20(2008)年を比べると、さけ定置網経営体は増加したほか、大中型まき網経営体、さんま棒受網経営体及び大型定置網経営体等は平均の減少率より小さい10%前後の減少にとどまっています。一方、かつお一本釣り、さけ・ます流し網漁業や遠洋・近海まぐろはえ縄漁業は、20%以上の大幅な減少となっています(表Ⅱ-1-8)。 海区別にみると、東日本大震災で大きな被害を受けた太平洋北区*1では、平成20(2008)年と比べ36%減と大きく減少しました。同海区で減少した経営体数は、全国で減少した経営体数の23%を占めています(図Ⅱ-1-9)。一方、北海道太平洋北区*2では、さけ定置網や沿岸いか釣り漁業等の経営体が増加したため、平成20(2008)年と比べた減少率は全国で最も低い11%減にとどまりました。また、東シナ海区*3でも、まぐろ養殖等の経営体が増加したため、平成20(2008)年と比べた減少率は14%減にとどまりました。

    *1 青森県下北郡佐井村とむつ市の境界から、千葉県と茨城県の境界までの沿岸を指す。*2 北海道斜里郡斜里町と目梨郡羅臼町の境界から、北海道松前郡松前町と福島町の境界までの沿岸を指す。*3 山口県と島根県の境界から山口県下関市下関漁業地区と壇ノ浦漁業地区の境界までの沿岸、福岡県北九州市旧門

    司漁業地区と田浦漁業地区の境界から鹿児島県と宮崎県の境界までの沿岸及び沖縄県の沿岸を指す。

    資料:農林水産省「漁業センサス」

    140,000120,000100,00080,00060,00040,00020,000

    0

    経営体120,000100,00080,00060,00040,00020,000

    0

    経営体7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000

    0

    経営体

    平成20(2008)

    25(2013)

    図Ⅱ-1-7 経営組織別漁業経営体数の変化

    〈全体〉

    平成20(2008)

    25(2013)

    〈個人経営体〉

    平成20(2008)

    25(2013)

    〈団体経営体〉

    その他共同経営漁業生産組合漁業協同組合会社経営体

    115,196

    94,507

    109,451

    89,470 41

    2,678

    105206

    2,715

    35

    5,7455,037

    2,147

    110211

    2,534

    ど遜色なく成長することが実証されたものもあります。

     このような結果を受け、現在では、実際の養殖場において実用に向けた実証実験が進められており、近

    い将来において、従来よりも魚粉の割合が少ない養殖用配合飼料や、あるいは全く魚粉を使わない養殖用

    配合飼料の実用化が期待されています。

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

     個人経営体を専兼別にみると、専業経営体が平成20(2008)年比16%減であったのに対し兼業経営体は平成20(2008)年比20%減となり、専業経営体が全体の半数を占めるようになりました(図Ⅱ-1-10)。

    資料:農林水産省「漁業センサス」注:沿岸漁業経営体数には主として養殖業を営む経営体は含んでいない。

    100,000

    80,000

    60,000

    40,000

    20,000

    0

    経営体7,0006,0005,0004,0003,0002,0001,000

    0

    経営体

    図Ⅱ-1-8 沿岸漁業経営体数と中小及び大規模漁業経営体数の変化

    平成20(2008)

    25(2013)

    年 平成20(2008)

    25(2013)

    89,376

    74,16371

    6,103

    56

    6,1745,400

    5,344

    大規模漁業経営体中小漁業経営体

    〈沿岸漁業経営体〉 〈中小及び大規模漁業経営体〉

    資料:農林水産省「漁業センサス」注:複数回答である。

    大型定置網

    さけ定置網

    小型定置網

    大中型まき網

    沖合底びき網

    さんま棒受網

    遠洋・近海いか釣り

    沿岸いか釣り

    さけ・ます流し網

    遠洋・近海かつお一本釣り

    沿岸かつお一本釣り

    遠洋・近海まぐろはえ縄

    沿岸まぐろはえ縄

    表Ⅱ-1-8 営んだ漁業種類別漁業経営体数の変化

    490 906 6,251 98 303 258 80 9,340 130 93 767 380 499

    467 1,089 5,142 85 242 237 61 7,567 102 73 537 291 451

    △4.7% 20.2% △17.7% △13.3% △20.1% △8.1% △23.8% △19.0% △21.5% △21.5% △30.0% △23.4% △9.6%

    (単位:経営体)

    平成20年(2008)25

    (2013)

    増減率

    資料:農林水産省「漁業センサス」

    図Ⅱ-1-9 大海区別漁業経営体数の変化

    平成20(2008)年平成25(2013)年

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈瀬戸内海区〉

    19,360

    15,867

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈北海道日本海北区〉

    5,665 4,812

    30,000

    25,000

    10,000

    5,000

    0

    経営体

    〈東シナ海区〉

    27,51123,649

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈太平洋南区〉

    10,1918,426

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈太平洋中区〉

    15,67113,346

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈太平洋北区〉

    13,044

    8,297

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈北海道太平洋北区〉

    9,115 8,070

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈日本海西区〉

    7,9466,517

    20,000

    16,000

    12,000

    8,000

    4,000

    0

    経営体

    〈日本海北区〉

    6,693 5,523

  • 第Ⅱ章

    第1部

    (漁業就業者の動向) 平成26(2014)年の我が国の漁業就業者数は173,030人で、前年と比べ4%減少しました(図Ⅱ-1-11)。一方、漁業就業者の高齢化率(65歳以上の就業者の割合)は前年と同じ35%となりました。さらに、44歳以下の漁業就業者は42,830人で、前年と比べ1%増加しましたが、特に15~24歳は5,840人で、前年と比べ6%増加しており、若い漁業者の割合が増えています。

     これまでは、特に家族経営の漁家で漁業を身近なものとして育った子弟が親の家業を継ぐことを前提として漁業に就業することが一般的でしたが、漁業経営が厳しい中で漁家子弟が必ずしも漁業に就業するとは限らなくなっており、このことが漁業就業者の高齢化に拍車をかけています。その一方、職業・生活に対する価値観の多様化から、就業の場として漁業が注目されており、漁業への就業を希望する都市出身者も少なくなく、人手不足や高齢化が進む漁村地域にとって貴重な潜在的労働力であるといえます。 このため、漁業への就業希望者と新規漁業就業者を募集する漁業経営体や地域をつなぐとともに、専門的な技術や知識を要する漁業の現場に未経験者が円滑に就業できるようにすることが重要であり、国では「漁業就業フェア」の開催や漁業現場での長期研修等への支援を

    資料:農林水産省「漁業センサス」注:専業は、過去1年間の収入が自家漁業のみであっ

    た場合をいう。第1種兼業は、過去1年間の収入が自家漁業以外の仕事からもあり、かつ自家漁業からの収入がそれ以外の仕事からの収入の合計よりも大きかった場合をいう。第2種兼業は、過去1年間の収入が自家漁業以外の仕事からもあり、自家漁業以外の仕事からの収入の合計が自家漁業からの収入よりも大きかった場合をいう。

    60,000

    50,000

    40,000

    30,000

    20,000

    10,000

    0

    経営体60,000

    50,000

    40,000

    30,000

    20,000

    10,000

    0

    経営体

    図Ⅱ-1-10 個人経営体の兼業・専業別経営体数の変化

    平成20(2008)

    25(2013)

    年 平成20(2008)

    25(2013)

    44,49832,294

    24,148

    24,940

    44,972

    20,032

    第1種兼業第2種兼業

    〈専業〉 〈兼業〉

    53,009 56,442

    26(2014)

    24(2012)

    25(2013)

    25(2013)

    23(2011)

    資料:農林水産省「漁業センサス」(平成15(2003)年、20(2008)年、25(2013)年)及び「漁業就業動向調査報告書」(平成21(2009)~24(2012)年、26(2014)年)

    注:1)「漁業就業者」とは、満15歳以上で過去1年間に漁業の海上作業に30日以上従事した者2)( )内は漁業就業者の合計を100%とした構成割合(%)である。3) 平成20(2008)年以降は、雇い主である漁業経営体の側から調査を行ったため、これまでは含まれなかった非沿海市町村に居住している者を含んでおり、2003年漁業センサスとは連続しない。

    4) 平成23(2011)年、24(2012)年は、東日本大震災の影響により、岩手、宮城及び福島の3県を除く集計である。

    25

    20

    15

    10

    5

    0

    万人

    20(2008)

    21(2009)

    平成15(2003)

    22(2010)

    岩手・宮城・福島の3県を除く

    65歳以上60~64歳40~59歳25~39歳15~24歳

    (2.8) (3.0) (2.9) (2.8) (3.0)(11.8) (12.9) (12.6) (12.6) (13.1)

    (39.2) (37.4) (34.8) (34.5) (33.3)

    (12.9) (12.6) (14.0) (14.1)(14.5)

    (33.3)(34.2) (35.8) (35.9)

    (36.1)

    (32.5)

    (14.6)

    (36.9)

    22.2 21.2 20.317.8 17.4 16.8 18.1 17.3

    (2.9)(13.2)

    (33.3)

    (14.1)

    (35.4)

    (3.1)(14.1)

    (33.6)

    (14.3)

    (35.2)

    (3.0)(13.9)

    (33.9)

    (13.2)

    (35.0)

    (3.4)(14.5)

    図Ⅱ-1-11 漁業就業者数の推移

    23.8

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    通じて新規漁業就業者の確保に努めています。平成25(2013)年度からは、漁業への就業に向け、道県の漁業学校等で必要な知識や技術の習得に取り組む若者に対し給付金を給付する事業が開始されています。その結果、平成20(2008)年以降の漁業への新規就業者の数は概ね横ばいで推移しており、平成25(2013)年には新たに1,790人が漁業に就業しました(図Ⅱ-1-12)。これら新規就業者は比較的若い世代が多く、平成25(2013)年に沿岸漁業に就業した者のうち、40歳未満の者が7割近くを占めています(図Ⅱ-1-13)。

    (海技免状保持者の育成) 漁船の安全な運航と操業を確保するため、船のトン数等に応じて、定められた級の海技免状保持者の乗船が義務付けられています。遠洋・沖合漁業を行う漁船は漁船のトン数も大きいため、それだけ上級の海技免状保有者が必要となりますが、特に遠洋漁業の航海は長期にわたるため、乗組員にとって上級の海技免状を取得する時間的余裕が少ないという実態があります。このため、海技免状保持者の高齢化が深刻化し、必要な資格を持つ漁船員の確保が漁業経営上の重要な課題となっており、計画的な資格保有者の育成が必要です。

    資料:都道府県が実施している新規就業者に関する調査に基づき水産庁で作成

    注:沿岸漁業就業者を対象としたものである。

    10代18%

    20代28%

    30代20%

    40代13%

    50代11%

    60代10%

    図Ⅱ-1-12 新規漁業就業者数の推移

    資料:農林水産省「農林水産業新規就業者調査結果」(平成15(2003)年)及び「漁業センサス」(20(2008)年)。平成16(2004)年、21(2009)~25(2013)年は都道府県が実施している新規就業者に関する調査から推計。平成17(2005)~19(2007)年は(一社)大日本水産会による漁業協同組合へのアンケート調査結果

    注:1) 調査が異なるため、平成15(2003)年と16(2004)年、16(2004)年と17(2005)年、19(2007)年と20(2008)年、20(2008)年と21(2009)年の結果は連続しない。

    2) 平成22(2010)年は、東日本大震災により岩手県、宮城県、福島県の調査が実施できなかったため、21(2009)年の新規就業者数を基に、3県分を除いた全国のすう勢から推計した値を用いた。

    2,000

    1,500

    1,000

    500

    0

    16(2004)

    17(2005)

    18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    24(2012)

    25(2013)

    23(2011)

    22(2010)

    1,5141,242

    1,081

    2,0021,776

    1,920 1,7901,784

    1,4231,256

    (1,867)

    図Ⅱ-1-13 新規漁業就業者の年齢組成(平成25(2013)年)

    平成15(2003)

     (一社)責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)は、全国水産物商業協同組合連合会と連携し、まぐろの

    日とされている10月10日を中心に、全国の鮮魚小売店約230店において「天然・刺身マグロキャンペー

    ン」を行っています。平成26(2014)年のキャンペーンでは「マグロ再発見!」を標語とし、マグロの

    種類や漁獲方法、栄養面等を伝えるパンフレットを店頭で消費者に配布したほか、マグロを抽選でプレゼ

    ントする企画を実施し、マグロの魅力を改めて消費者に訴え、その消費拡大を図りました。

     また、日本かつお・まぐろ漁業協同組合は、まぐろの日にちなみ、平成26(2014)年10月に小学5年

    生の授業用に「遠洋まぐろはえ縄漁業の教材セット」の無償提供を行いました。セットには、マグロの種

    「まぐろの日」キャンペーン((一社)責任あるまぐろ漁業推進機構、全国水産物商業協同組合連合会、日本かつお・まぐろ漁業協同組合)

    事例

  • 第Ⅱ章

    第1部

    (漁業における外国人労働力) 多くの遠洋漁業の漁船は、ほとんど日本に帰港せず、主に海外の港で補給や乗組員の交代等を行いながら操業を行っています。このため、一定の条件を満たした遠洋漁業の漁船には、外国人が漁船員として乗り組んで操業を行うことが認められています。海外漁業船員労使協議会*1の調べによると、平成26(2014)年12月末現在で5,142人の外国人漁船員が日本漁船に乗り組んで漁業に従事しています。 我が国の遠洋漁船に外国人が乗り組む方式としては、海外の港を根拠地として水揚げや補給を行っている漁船に外国人が乗り組む海外基地方式と、我が国の漁業会社から漁船を借り受けた外国法人が当該漁船に外国人を配乗させ、貸渡人たる我が国の漁業会社が定期用船するマルシップ方式がありますが、現在はマルシップ方式が主流です。マルシップ方式においては、労使間で日本人乗組員の最低人数が決められていますが、人材の確保や経営面の理由

    *1 外国人漁船員の乗船状況等を管理する機関として関係業界団体によって設立された協議会。

     宮城県の三陸海岸沿岸の若手漁師らは、漁業を格好良くて稼げる憧れの職業にし、将来の担い手確保に

    つなげたいとの思いで、平成26(2014)年7月に(一社)フィッシャーマン・ジャパンを立ち上げました。

    (一社)フィッシャーマン・ジャパンでは、これまでばらばらに行ってきた

    生産・加工・流通・販売の業務をチームで一貫して行うことによって6次

    産業化に取り組んでいるほか、国内外の販路の開拓や新たな商品開発を積

    極的に行っています。水産業のIT化の推進にも取り組み、オンラインショ

    ップを開設し、統一ブランドの下、地元水産物の販売を行っています。

     同年8月には(一社)フィッシャーマン・ジャパンのファンクラブも設

    立され、会員へ会報や水産物を届けるとともに、イベント等の開催によっ

    て会員や一般の消費者と直接つながるネットワークづくりを推進していく

    とのことです。浜の垣根を越えたこのような取組が更に拡大し、漁師を目

    指す若者が増えることが期待されます。(一社)フィッシャーマン・ジャパンのロゴマーク

    格好良く稼げる漁師が担い手を育成((一社)フィッシャーマン・ジャパン)事例

    類やまぐろはえ縄漁法についての説明パンフレット・ポスターやDVD、実際のはえ縄漁業で使う釣り針、

    メバチマグロのビニール風船等が含まれています。70校を超える小学校から応募があり、この教材を使

    って、多くの子供達が日頃食べているマグロがどこでどのように獲られているかを学びました。また、遠

    洋まぐろはえ縄漁業に親しんでもらうこと、マグロの本当のおいしさを知ってもらうことを目的として、

    14の小学校で組合職員が先生となって出前授業を実施し、その出前授業の中でメバチマグロ漬丼の試食

    を行ったところ、子供達から「こんなおいしいマグロを食べたことがない」等の感想が寄せられました。

    さらに、10月10日と30日に、主として女性層を対象としたマグロの料理教室を実施しました。日本かつ

    お・まぐろ漁業協同組合は、こうした取組を通じ、もっと消費者にまぐろ漁業とマグロに親しんでもらう

    よう工夫していきたいとしています。

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    から、操船や漁労活動の指揮をとる漁労長・船長・機関長等の幹部乗組員以外の船員のほとんどを外国人が占めている漁船もみられます。

    (水産業を支える女性の力) 平成26(2014)年の女性漁業就業者数は22,580人で、全体の13%となっています。特に、日帰りで操業する漁業や養殖業では女性が比較的多く就業しており、特に採貝・採藻漁業では伝統漁法である「海

    女ま

    」として活躍していますが、女性の漁業就業者についても高齢化が進んでいます。 漁業は海上で長時間の作業を行うため、家事や育児と両立しがたいこと、漁船は居住区画が限られ女性専用のスペースを設けることが困難なこと、肉体労働が占める部分が依然として大きいことから、女性にとって課題の多い職場となっています。このため、女性が漁業現場で活躍するためには、保育所や家事代行の充実等、漁業に従事しながら育児・家事の両立を図るための支援の充実が課題と考えられます。 一方で、漁獲物の選別や仕分け、水産加工といった陸上での作業においては、多くの女性が就業しています。平成25(2013)年における漁業に付随する陸上作業の従事者のうち女性が占める割合は38%、水産加工業従事者のうち女性が占める割合は62%となっており、女性は漁業に関連する活動で力を発揮し、漁業を支えています。 このような浜の女性の活動組織として、多くの漁業協同組合には組合員の家族である女性等で構成される女性部が設置されており、平成26(2014)年4月1日現在で、全国で702組織があり、43,521人が所属しています。また、全国組織として全国漁業協同組合女性部連絡協議会(JF全国女性連)が組織されています。漁業協同組合女性部は、健全な漁業協同組合の発展と豊かな漁村を実現するため、海浜清掃、植林等の環境保全活動、地場の水産物の販売や飲食店の運営等、多岐にわたる活動を通じて漁業地域の活性化に貢献しています。一方、女性の組合員加入や漁業協同組合役員への登用促進等により、女性の意見を漁業現場等に反映させていくことが課題となっています。

     山口県萩市に所在する中型まき網漁業者3社は、漁獲量・漁獲金額の減少に直面していました。このた

    め、当該3社が所有する3船団のグループ化と6次産業化による経営改善を図ることとし、平成24

    (2012)年に当該3社が出資して萩大島船団丸を設立しました。また、それに際して、萩市内で経営コン

    サルタントをしていた坪内知佳さんを萩大島船団丸の代表に招きました。坪内さんは、萩大島船団丸代表

    として、漁業者の経営に対する意識改革を推進し、料理店等の販売先の開拓に努め、多くの顧客を獲得し

    ました。また、漁業者の不慣れな会計事務や配送手配等を担当しています。

     萩大島船団丸では、鮮魚を船上で箱詰めした鮮魚BOXの直接販売や、高級干物の製造・販売等に挑戦

    しています。直接販売においては、市場や卸売業者を通さず流通時間を短縮し、鮮度の高い漁獲物を届け

    ることで、単価向上を目指しています。さらに、スマートフォンでその日の出漁状況や漁獲物の情報を船

    上から顧客に提供し、顧客はその情報に従って発注内容を決めるという新しい仕組みを取り入れ、販売量

    の増加に取り組んでいます。

    獲るだけではない漁業に取り組む女性(山口県 萩大島船団丸)事例

  • 第Ⅱ章

    第1部

    エ 働きやすい漁業労働環境の確保(漁船海難事故及び海中転落者の状況) 漁船の航行は、漁場探索中は航路や速度が大きく変化し、また漁労作業のため海上に停船したりと、商船の航行とは大きく異なります。また、漁労作業に集中するあまり見張りが不十分になりがちです。さらに、商船等が大型化する一方で、漁船は小型船が多いことから、商船側からの視認がしにくくなっています。 平成26(2014)年の漁船海難隻数は596隻、漁船海難による死者・行方不明者数は65人でした(図Ⅱ-1-14)。全船舶の海難事故に占める漁船海難の割合は、船舶隻数の28%、死者・行方不明者数の65%を占めています。漁船海難の種類では衝突が最も多く、事故原因は、見張り不十分や操船不適切といった人為的要因によるものが多くを占めています。 我が国では、漁船の9割が5トン未満漁船*1であり、このような小型漁船が安全に航行するためには、大型の漁船と比べて船体の安定性の確保がより重要となることから、安全面に一層の配慮をした操業が求められます。 また、漁労作業は基本的に船上で行われるため、不慮の海中転落も多く発生しています。平成26(2014)年における漁船からの海中転落者*2は104人と、全海中転落者194人の半数以上を占めています。さらに、漁船からの海中転落による死者・行方不明者数は76人と、全海中転落による死者・行方不明者数118人の6割を占めています。 海難事故は、人命に関わるとともに漁業への就業意欲にも関わる重要な問題であり、関係者が一丸となって事故件数ゼロを目指すことが必要です。

    *1 平成25(2013)年末現在で漁船登録されたものの割合。*2 ここでいう海中転落は、船舶事故ではなく人身事故によるものをいう。

    資料:海上保安庁注:山陰地方豪雪関連の海難(平成22(2010)年2隻、平成23(2011)年215隻)を除く。

    平成18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    25(2013)

    24(2012)

    23(2011)

    死者・行方不明者数(右目盛)

    1,200

    1,000

    800

    600

    400

    200

    0

    隻100

    80

    60

    40

    20

    0

    死者・行方不明者数

    漁船海難船舶隻数

    892795

    732812

    705 665 651 646596

    5950

    96

    6857

    6455

    39

    65

    100t以上20~100t5~20t5t未満

    図Ⅱ-1-14 漁船海難船舶隻数及び死者・行方不明者数の推移

    26(2014)

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (船員及び陸上労働者の災害の状況) 狭い漁船内には可動部分がむき出しの機械が装備されていたり、波で揺れる上に海水等で滑りやすくなっています。さらに、操業中は漁労作業にのみ神経が集中しがちなため、機械に巻き込まれたり、転落や転倒等思わぬ事故が発生しがちです。平成25(2013)年度の漁業における災害発生率をみると、全産業平均の約6倍と高い水準にあります(表Ⅱ-1-9)。

     近年、衛星通信を利用した救難救命通信機器「BEBor TBB-

    100」が開発され、救難救命通信機器分野の発展に貢献しています。

    この救難救命通信機器は、イリジウム衛星を利用するため、携帯電

    話が通じない場所でも通信が可能です。遭難者は、本体の通報ボタ

    ンを押すだけで、事前に登録した最大5件のメールアドレスに対し、

    救助要請と自己位置情報を同時に送信できます。また、送信先がパ

    ソコンの場合には、遭難者に対して、救難信号受理の確認や救助隊

    到着予想時間等の情報を返信することができるので、遭難者が救助

    を待つ際の孤独感や焦燥感も軽減されるものと期待されます。この

    ような双方向通信機能の実用化は、世界でも初めての試みです。

    世界初の双方向通信機能搭載の携帯型救急衛星通信装置。免許や公的機関への届出は不要。どこからでも救難信号を発信することが可能。

    双方向通信が可能な救難救命通信機器の開発事例

    250200150100500

    資料:海上保安庁注:プレジャーボート等とは、プレジャーボート及び遊漁船、一般船舶とは、貨物船、タンカー、旅客船、作業船及びその他の船舶をいう。

    資料:海上保安庁注:プレジャーボート等とは、プレジャーボート及び遊漁船、一般船舶とは、貨物船、タンカー、旅客船、作業船及びその他の船舶をいう。

    25(2013)

    26(2014)

    24(2012)

    23(2011)

    平成22(2010)

    海中転落者漁船プレジャーボート等一般船舶

    250200150100500

    25(2013)

    26(2014)

    24(2012)

    23(2011)

    22(2010)

    海中転落者漁船プレジャーボート等一般船舶

    48

    36 37 4541

    47 49 4586 90 91 104

    5922 34 28 20 3113 19 20 19 11

    61 64 61 76

    147175 173 177 194

    114 112 100 118

    図Ⅱ-1-15 海中転落者数の推移 図Ⅱ-1-16 海中転落による死亡・行方不明者数の推移

    87

    32

    28

    94

    資料:国土交通省「船員災害疾病発生状況報告(船員法第111条)集計書」注:1)「漁業」は船員、その他の産業は陸上労働者の数値である。2) 陸上労働者の災害発生率は、厚生労働省労働基準局による統計値から算出。また、同災害発生率は暦年である。なお、平成24(2012)年以降は集計方法が異なるため、それ以前の結果とは連続しない。

    3) 災害発生率は、職務上休業4日以上の者の数値である。

    平成16年度(2004)産業名

    17(2005)

    18(2006)

    19(2007)

    20(2008)

    21(2009)

    22(2010)

    23(2011)

    24(2012)

    25(2013)

    表Ⅱ-1-9 船員及び陸上労働者災害発生率と推移

    全産業 2.5 2.4 2.4 2.3 2.3 2.0 2.1 2.1 2.3 2.3  林業 27.7 26.8 26.3 29.5 29.9 30.0 28.6 27.7 31.6 28.7  鉱業 18.3 18.8 16.9 16.3 14.0 14.2 13.9 13.9 9.9 12.0  漁業 15.2 13.5 15.6 14.1 14.7 13.5 13.8 13.4 14.9 13.5  建設業 6.0 5.8 5.7 5.6 5.3 4.9 4.9 5.2 5.0 5.0  運送業(陸上貨物) 8.9 8.4 8.3 8.2 7.9 6.4 7.0 7.1 8.4 8.3  運送業(港湾荷役) 7.7 7.2 6.7 6.7 6.3 4.8 4.7 5.3 - -

    (単位:千人率)

  • 第Ⅱ章

    第1部

    (漁業労働環境の改善) 漁労作業においては、労働災害が発生する要因が多いため、より安全性に配慮することが必要です。また、就業者を確保する上でも、安全な漁業労働環境の確保は重要です。そのためには、転覆しにくい漁船、海中に転落した際の安全確保、安全性を確保するための漁業労働環境づくりが重要と考えられます。 漁船の転覆防止の対策に関しては、復原性が高く転覆しにくい漁船の研究開発や、そのための船体改造技術の開発が国の支援の下で進められているほか、漁船の復原性を向上する目的での漁船の大型化も認められています。また、船舶同士の衝突による海難を防ぐため、船舶の位置や進行方向等を自動的に周囲に知らせるAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)の普及を推進しています。 海中に転落した際の生存率を高めるためには、ライフジャケットの着用が極めて重要です。過去5年間の平均をみると、ライフジャケット着用者の海中転落者の生存率は75%で、非着用者の48%よりも大幅に高くなっています(表Ⅱ-1-10)。しかし、「着用が面倒」「格好悪い」「暑い」等の理由でライフジャケットを着用しない漁業者も依然として多く、着用率が伸び悩んでいることから、国では、漁労作業への影響が少なく着用しやすいライフジャケットの選定や、漁業団体等による着用推進活動を支援しています。近年では、ライフジャケットに小型の発信器を取り付け、海中転落時に電波を発信することで自分の位置を知らせる技術も開発されています。これにより、漁船の移動中に転落した場合でも捜索に要する時間を大幅に短縮できるほか、漁船上で急に体調が悪化した場合の緊急連絡にも応用でき、様々な緊急時に生存率を大幅に高めることができます。 また、我が国では、平成25(2013)年度から、漁船の航行や操業時の安全性に関する知識や、漁労作業時の危険箇所を事前に特定し対策を講ずる「参加型自主改善活動」に関する知識を身につけた者を「安全推進員」として養成し、安全に対する知識の習得や普及啓発活動を通じて、漁業者が自ら安全な漁業労働環境を構築することを支援しています。 今後、漁業就業者を増やしていくためには、漁労作業の安全性の改善や漁船の居住性を含め、漁業に従事する者の労働条件の改善についても努めていくことが必要です。

    生 存 死亡・行方不明 ライフジャケット着用 75.2% 24.8% ライフジャケット非着用 47.9% 52.1%

    資料:海上保安庁「海難の現況と対策について(資料編)」に基づき水産庁で作成

    注:平成22(2010)~26(2014)年の5年間の平均値。

    表Ⅱ-1-10 漁船からの海中転落者の生存率

     漁労活動は肉体的に厳しいと一般的にいわれていますが、近年になって漁業・養殖業の現場を支える

    様々な技術の開発及び現場への導入実証が行われており、漁業現場における漁業労働環境の改善や、作業

    の効率化による収益の改善につながることが期待されます。

    ①船底清掃ロボット(漁船の船底を自動で清掃するロボット)

     漁船の船底は、ダイバーが手作業等で清掃するか、船を船台に上架して清掃を行っており、その労力と

    漁労作業の負担を減らす技術開発コラム

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (2)漁業協同組合をめぐる動向

    (漁業協同組合の役割) 漁業協同組合は、漁業者による協同組織であり、組合員のために販売、購買、信用、共済等の事業を行っているほか、漁村地域において地域経済や社会活動を支える重要な役割を担っています。さらに、漁業権の管理や組合員に対する指導を通じ、漁業資源の適切な利用と管理について主体的な役割を果たしています。 また、水産加工施設や直販施設を持つ漁業協同組合では、地域の水産物の加工や販売を通じて付加価値の向上に貢献したり、外国で地元水産物の販路の開拓を行う事例もあるなど、漁業経営の向上に様々な形で貢献しています。水産業をとりまく状況や消費者の意識が変化し、安全かつ安心で手軽に食べられる水産物を安定的に供給することが求められている現在、漁業協同組合は、漁業・漁村における中核的組織として、資源管理や水産物の販売力の強化等に率先して取り組むことが求められています。

    (漁業協同組合の経営状況) 漁業者数及び漁業生産額が減少傾向にあることから、漁業協同組合の経営は総じて困難なものとなっています。平成24(2012)年度には、沿海地区漁業協同組合のうち7割の漁業協同組合で事業利益が赤字となっており、その総額は63億円となっています。漁業協同組合の事業規模が縮小する中で事業管理費の削減が進まず、経営が困難になっているものも少なく

    費用は漁業者にとって大きな負担となっています。この船底清掃をロボットに任せることにより労力・費

    用の削減及び作業工程の短縮が可能となるほか、船底清掃を頻繁に実施することが可能となり、船体の抵

    抗の低減による燃費の向上にも寄与すると考えられます。

    ②養殖用網水中洗浄ロボット・水槽底掃除ロボット(養殖網や水槽を自動で掃除するロボット)

     養殖網にホヤ類・藻類等が付着したり、飼育水槽の底に残餌・排泄物等の汚物が堆積すると、飼育環境

    が悪化し、魚の成長が阻害されたり、病気にかかりやすくなります。このため、定期的な清掃が欠かせま

    せんが、大きな労力や費用を要します。この清掃をロボットに任せることにより、労力・費用の削減及び

    作業工程の短縮が可能となるほか、清掃を頻繁に実施することが可能となり、飼育環境の維持改善が図ら

    れ、生産力の向上に寄与すると考えられます。

    ③コンブ漁業用アシストスーツ(漁労作業時の肉体的負担を軽減するスーツ)

     コンブ漁業は、採取や干す際等に無理な姿勢での作業が多く、肉体的疲労が大きい仕事です。前かがみ

    姿勢の作業を楽にする漁業用アシストスーツによって作業の効率化を図ることができ、また、力の弱い女

    性や高齢者でも楽に作業できるようになり、労働力の確保につながると考えられます。

    【コンブ漁業用アシストスーツ】【養殖用網水中洗浄ロボット】

  • 第Ⅱ章

    第1部

    ありません。 漁業協同組合は漁業者の自主的な協同組織であり、その再建には自助努力が不可欠です。国では、経営改善計画を策定し、実行に取り組む漁業協同組合に対し、欠損金見合いの借換資金への金利等の助成を行い、自主的な再建を支援しています。

    (漁業協同組合の組織状況) 今後とも漁業協同組合が漁業者の様々なニーズに応え、漁業・漁村における中核的組織として役割を果たしていくためには、漁業協同組合の組織及び基盤を強化し、販売事業を始めとする漁業協同組合の事業を効率的かつ効果的に運営していく必要があります。このような背景から、各都道府県において漁業協同組合の合併に取り組んでおり、平成16(2004)年3月末現在で1,510組合だった沿海地区漁業協同組合数は、平成26(2014)年3月末現在で974組合となっています(図Ⅱ-1-17)。

    資料:水産庁「水産業協同組合年次報告」

    160

    140

    120

    100

    80

    60

    40

    20

    0平成元(1989)

    合併参加漁協数

    2,500

    2,000

    1,500

    1,000

    500

    0

    沿海地区漁協数

    11(1999)

    9(1997)

    7(1995)

    5(1993)

    3(1991)

    13(2001)

    15(2003)

    17(2005)

    19(2007)

    21(2009)

    23(2011)

    25(2013)

    年度

    2,134

    7 7 8

    4640

    49 4450

    59

    33

    52

    8070

    52

    132124

    149

    103

    125

    76 73

    35

    12

    30

    4

    974

    沿海地区漁協数

    合併参加漁協数

    図Ⅱ-1-17 沿海地区漁業協同組合数・合併参加漁業協同組合数の推移

     山口県漁業協同組合田布施支店(山口県熊毛郡田布施町)では、ベテラン漁業者による新規就業希望者

    への漁業技術研修に積極的に取り組み、若い漁業就業者を育てることにより後継者の確保に努めています。

    その結果、平成11(1999)年以降、県外からのIターン者を中心に6名の若年就業者が新規加入していま

    す。

     さらに平成17(2005)年には、漁業経営の安定を図るため、新たに漁業に参入した若い就業者夫婦4

    組とその師匠にあたるベテラン漁業者夫婦4組が中核的漁業者協業体「新鮮田布施」を結成し、日頃の経

    験から「鮮魚販売からステップアップし、加工で付加価値を付ければ絶対にもうかる。」と考えるベテラ

    ン漁業者たちの指導の下で、未利用魚や、規格外で従来は安価で取引されていた魚を冷凍フライや一夜干

    し等に加工・販売することにより、販売単価を10倍近くまで引き上げることができました。組織の運営

    においても、元会社員の漁業者が経理に関する知見を活かして会計を担当したり、元自営業者の漁業者が

    これまでの経験を活かして宣伝を担当するなど、自らの経験を活かした役割を担い、適材適所で助け合っ

    ています。

    ベテランと若手が連携した漁業経営を推進(山口県漁業協同組合田布施支店)事例

  • 第1節 我が国水産業をめぐる動き

    第Ⅱ章

    第1部

    (3)水産物の流通・加工をめぐる動向

    (水産物流通の特徴と卸売市場の機能) 漁業生産は、天候や漁業資源の動向によって大きな影響を受けるため、常に同じ種類の水産物が一定量水揚げされるわけではありません。また、1回の水揚げで多種類かつ大きさも様々な魚介類が水揚げされることが一般的です。しかし、水揚げする漁業者は複数いるため、一人の漁業者では魚種・大きさごとにまとまった量にならなくとも、合わせれば流通に必要な量にまとめることができます。このため、水産物流通においては、水揚後に、漁獲物を種類や大きさ等で仕分けすることが重要です。この機能を担っているのが産地卸売市場です。 また、産地卸売市場は、その産地の限られた種類の水産物しか出荷できませんが、各産地卸売市場から出荷された水産物をまとめれば、多様な魚介類を十分に集めることができます。その上でさらに用途別に仕分け、小売店等に販売することで、多様な水産物を効率的に流通させることができます。この機能を担っているのが消費地卸売市場です。 このように、特に鮮魚については、その多くが産地卸売市場と消費地卸売市場の2つの卸売市場を経由して消費者に供給されています。一方、加工用の原料となる水産物は産地卸売市場から、また一部は直接漁業者から加工業者に供給されます。その加工品は加工業者から小売店等に直接販売される市場外取引の比重が高まりつつあります(図Ⅱ-1-18)。 なお、水産物の輸送においては、かつては鉄道輸送が主流でしたが、現在ではトラック輸送が主流となっており、円滑な水産物流通にはトラック及びその運転手の確保が欠かせないものとなっています。

     水産物は一般に腐敗しやすいため、流通の全ての段階で冷蔵又は冷凍により鮮度を維持することが必要です。また、いったん解凍したものを再び冷凍すると品質が低下することから、解凍後は売り切らざるを得ない場合も多く、これらの要因により流通コストがかさむ傾向があります。しかし、近年では、小売価格に占める小売経費の割合が減少するとともに、生産

    生産者(漁獲�