平成27年度経済産業省 調査実施報告書...平成 28年3月 経済産業省...

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平成28年3月 経済産業省 九州経済産業局国際部国際企画調査課 株式会社プリミティブ・ドライブ 平成27年度経済産業省 調査実施報告書

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Page 1: 平成27年度経済産業省 調査実施報告書...平成 28年3月 経済産業省 九州経済産業局国際部国際企画調査課 株式会社プリミティブ・ドライブ

平成28年3月

経済産業省 九州経済産業局国際部国際企画調査課

株式会社プリミティブ・ドライブ

平成27年度経済産業省 調査実施報告書

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調査の背景と視点 調査の背景 少子高齢化や労働力人口の減少が進行していく中、多くの中小企業が販路拡大のため、海外事業展開に着手している。特に、九州は、アジアに地理的・歴史的にも近いという優位性を活かして、他地域よりも海外事業展開が積極的な地域である。 昨今、海外事業展開の中核をなす人材として、グローバル人材の採用が拡大しており、多くの中小企業の海外事業部門において元留学生である外国人社員が活躍している。 九州における海外進出企業については、現在、進出企業1,065件のうち80%強がアジアへの進出であり、その中でもASEAN地域への進出が増加傾向にある。また、当局国際部が平成25年8月に九州管内の企業約2,000社に実施した「海外展開にかかる実態調査」においても、海外展開を拡大していきたい企業が65%存在し、展開先としてはタイ、ベトナム、インドネシア等のASEAN地域への関心が高いことを窺い知ることができる。 前回調査で得られた結果をもとに、本事業においては海外展開を図るうえで、企業の代表的な課題として、「知的財産権への対応」、「人材の確保」の2点に焦点をあて、深掘り調査を実施し、課題解決の糸口を検証していく。

調査の視点 本事業において、「海外展開」「知的財産」「人材獲得」をキーワードに、九州の中小企業が具体的にどのような課題を海外事業展開において抱えているかを把握する。 海外展開の状況、留学生の活用状況、海外展開における知的財産の状況等について調査し、そこで得られた結果の中から課題を抽出する。参考意見については、個別に企業ヒアリングを行い、課題解決のための企業の取組みを事例として紹介する。また、本事業の一環としてセミナーを開催し、九州における海外展開を先駆的に推進している企業や専門家を招き、円滑な海外事業展開に資することを目指す。 ※調査の目的・問題意識

(1)九州から海外へ進出している企業が抱える知的財産権に関する現状と課題の把握 (2)海外の公的機関等による知的財産権に係る支援の現状の把握 (3)九州の企業等による海外展開における知的財産権に関する今後の支援のあり方を 検討

課題の抽出

資金

情報人材

支援体制の構築

成功事例各種情報

支援人材の不足ライセンサーの求める能力を有する仲介人材、弁理士等

資金調達が困難特許出願費用、維持費用

各種情報の不足海外支援機関、ライセンシー側の商習慣

※今年度は、報告書の作成、知財スキル向上セミナーの開催等

九州における海外進出企業の増加

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ASEAN(アセアン)地域 東南アジア諸国連合(Association of South‐East Asian Nations) インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、 マレーシア、ミャンマー、ラオスの10ヵ国。 知財(知的財産) 特許・商標・意匠・実用新案・著作等の財産的価値のあるもの。 特許(権) 有用な発明をなした発明者またはその承継人に対し、その発明の公開の代 償として、一定期間、その発明を独占的に使用しうる権利(特許権)を国が付 与するもの。 商標(権) 事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別 するために使用するマーク(識別標識)。 意匠(権) 美感を起こさせる外観を有する物品の形状・模様・色彩のデザインの創作に ついての権利。 実用新案(権) 物品の形状、構造、組み合わせに係る考案を独占排他的に実施する権利。 弁理士 産業財産権に関わるすべての事務手続を代理することができる国家資格保 有者。 模倣品 特許権、実用新案権、意匠権、商標権を侵害する物品。 冒認商標(出願) 他人の発明を盗み、自己もしくは第三者を発明者であるとしてした出願。 PCT出願(Patent Cooperation Treaty) ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国である すべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度。 商標マドプロ出願(マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコール)) 加盟国(締約国)97ヶ国(2015年12月現在)の中から商標権を取得したい国 を指定して1つの国際出願を行う事によって「複数国へ出願するのと同等の 効果」を得ることができるという非常に便利な制度。

<用語集> 直接貿易 製品の販売や原材料調達など、海外企業との間の輸出入を自社で直接行 なうもの。 間接貿易 商社や貿易会社等に輸出入にかかる諸手続き等を委託する取引形態。 直接投資 資金を投入し、海外に現地法人や支店など拠点を設置し、実際に事業を行 なうもの。 輸出依存度 一国の国内総生産(GDP)または国民所得に対する輸出額の比率。 鉱工業生産指数 約500品目の鉱工業製品について、1か月間の生産量を、直近の基準年(西 暦末尾が0か5の年)のそれを100として指数化したもの。 アジア度 九州の経済活動全体に占める対アジアの割合。 (海外進出企業件数、輸 出額、輸入額、姉妹提携自治体数、国際航空路線数、外国人入国者数) 工業所有権の保護に関するパリ条約 1883年にパリにおいて、特許権、商標権等の工業所有権の保護を目的とし て、「万国工業所有権保護同盟条約」として作成された条約。「内国民待遇 の原則」、「優先権制度」、「各国工業所有権独立の原則」などについて定め ており、これらをパリ条約の三大原則という。 PPH(特許ハイウェイ)制度 各特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された 発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において 簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。 PDCA 事業活動における生産管理や品質管理などの管理業務を円滑に進める手 法の一つ。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4 段階を 繰り返すことによって、業務を継続的に改善する。 留学生 大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校、準備教育課程を設置 する教育施設において教育を受ける外国人学生。

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目 次

調査結果のポイント 1 1. 調査の概要 2 2. 回答企業の属性 3 3. 海外展開の現状 5 4. 海外展開に関する今後の展開 16 5. 留学生の採用について 20 6. 海外展開における知的財産の状況 24 7. 中小企業の海外展開における知的財産活動の課題 36 8. 成功のポイント 38 9. 知的財産活動支援における今後の取組 49 10. 支援機関の支援内容 50 11. 知的財産セミナーの開催結果 52

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調査結果のポイント 1.九州の中小企業の海外展開状況については約58%が海外展開に対して前向き。一方で、展開したものの撤退の方向

性である企業が5%程度。現在の海外展開の状況は、「直接貿易」が最も多い。 2.海外売上比率について10%未満の企業が7割強を占めている。海外売上比率が50%を超える企業は卸売業の割合が

高く、展開先は中国が多い。 3.現在の海外展開先は、中国、台湾、韓国、北米の順。アセアン地域は、タイ、シンガポール、ベトナム、インドネシア等

となっている。 4.今後の展開内容は、「直接貿易」、「間接貿易」、「業務・技術提携」の順に多い。 5.今後関心のある国・地域は、ベトナム、タイ、中国、北米の順。以下、僅差でヨーロッパ、インドネシア、ミャンマー、台湾

が続いている。アセアン地域は合わせて198件に上り、関心の高さが窺える。 6.留学生の活用(採用)実績は、ある(43.4%)、ない(検討していない)(40.6%)の割合。 7.留学生の出身国・地域は、中国が突出。以下韓国、ベトナム、台湾等の順。アセアン地域では、ベトナム、インドネシア、

タイ、マレーシア、シンガポール等の順。 8.海外展開中の企業の業種別留学生の活用比率は、サービス業が最も高い。留学生の職種では、営業・販売・サービ

ス業が最も多い。 9.海外での知的財産権取得状況は、「特許」、「商標」がそれぞれ5~6割程度。「意匠」、「実用新案」はそれぞれ1割程

度。該当企業は、製造業が多くを占めている。 10.海外展開中の企業の業種別知財権取得比率では、製造業が最も高く、サービス業は海外展開比率が高い割には取

得比率が低い。 11.知的財産権出願先、検討先の国・地域は、中国、アメリカ、台湾、韓国、EU、香港の順。アセアン地域では、シンガ

ポール、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア等の順。 12.被害内容は、模倣品が多く、冒認商標、情報流出(サンプル、営業資料等)」の順。 被害を受けた国・地域は、中国、韓国、アメリカ等の順。 13.海外で知的財産権の出願の際に国内支援機関・弁理士等を利用した企業は多く、満足度もそれなりに高い状況。 デメリットとしては、コスト面と時間が挙げられる。

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1.調査の概要

目的・主旨:九州から海外へ進出している中小企業が抱える知的財産権に関する現状と 課題、また、公的機関等による知的財産権に係る支援の現状を把握すること により、九州の中小企業による海外展開における知的財産権の課題に関する 今後の支援のあり方を検討するためにアンケート調査、ヒアリング調査等を実 施。 調査対象 :当局が行った2013年度調査「九州企業の海外展開に係る実態調査」の結果 より、特許等の知的財産権への対応が最大の課題と回答した企業及び九州の 既海外進出企業1,054件(2013年度調査重複分を除く)等。 各県支援 センター、JETRO等 実施主体 : 経済産業省 九州経済産業局、株式会社プリミティブ・ドライブ 調査期間 : 2015年9月~11月(アンケート調査)、11月~1月(ヒアリング調査) アンケート発送数: 2,571社(郵送にて配布) 有効回答数: 724社(回収率:28.2%)

ヒアリング件数:60件

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2.回答企業の属性 ①

【業種】 【従業員数(パート除く)】

業種は製造業が42.1%と最も多く、次いでサービス業の14.5%。 従業員数は、300人以下がほとんど(80.1%)。

42.1

14.5 14.2

9.7

5.5

18.6

製造業

サービス業

卸売業

建設業

小売業、飲食店

その他

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

※複数回答した事業者があるため、構成比の合計は100にならない

(%)

(N=724)

~5人

11.2%

6~20人

15.9%

21~50人

21.7%51~100人

14.6%

101~300人

16.7%

301人~

18.8%

無回答

1.1%

(N=724)

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2.回答企業の属性 ②

【資本金】 【売上高】

資本金は、5,000万円以下が半数以上(54.3%)を占める。 売上高は、10億円未満が41.3%。その内1億円未満の企業が12.2%。 所在県別では、福岡県が50.8%と約半数を占め、次いで熊本県(11.5%)、大分県(9.7%)の順。

【所在県】

~5000万円

54.3%

5000万円

~1億円

17.5%

1億円~3億円

7.5%

3億円~

18.1%

無回答

2.6%

(N=724)

~1億円

12.2%

1~9億円

29.1%

10~49億円

26.7%

50~99億円

9.3%

100億円~

19.9%

無回答

2.9%

(N=724)

福岡県

50.8%

佐賀県

5.9%

長崎県

7.2%

熊本県

11.5%

大分県

9.7%

宮崎県

6.2%

鹿児島県

8.7%

(N=724)

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現在の海外展開中の企業は46.4%、「展開を検討中」が11.3%、合わせて約58%が海外展開に対して前向き。一方で、展開したものの撤退の方向性である企業が5%程度。

海外展開中の国・地域は、「中国」(198件)、「台湾」(77件)、「韓国」(55件)、「北米」(54件)の順。アセアン地域への展開は、「タイ」(52件)、「シンガポール」(41件)、「ベトナム」(40件)、「インドネシア」(28件)等となっており、合わせて200件の海外展開。

【海外展開中の対象国・地域】

3.海外展開の現状 ①

<業種別> ※アジア・アセアン抜粋 <全体>

中国

台湾

韓国

北米

タイ

シンガポール

香港

ベトナム

ヨーロッパ

インドネシア

その他

198

77

55 54 52 41 41 40 37

28

93

0

50

100

150

200

250(n)

(n=716)

※複数回答設問を実数ベースで図表化

中国

台湾

韓国

タイ

シンガポール

ベトナム

インドネシア

その他

108

49

26 28 22 24

13

125

9 3 2 3 4 3 2

14

47

17 12

7 7 6 3

31

2 2 0 2 4 1 1

12 21

3 6 6 1 2 4

24 21

9 9 10 8 7 8

34

0

50

100

150

製造業 建設業 卸売業 小売業、飲食店 サービス業 その他

(n)

(n=716)

※複数回答設問を実数ベースで図表化

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展開理由は、「海外市場を新たに開拓するため」が427件で最も高く、新たな市場を求めて海外に出るケースが多い。

現在の海外展開の状況は、「直接貿易」が26.8%で最も多く、事務所を設ける「情報収集拠点」は8.0%に留まる。

3.海外展開の現状 ②

【海外進出・展開理由】

【現在の海外展開の状況】

海外市場を新たに開拓

するため

取引先の海外展開に追

随するため

国内市場の今後の成長

に期待が持てないため

コスト削減のため

新規事業に着手するた

め 海外での調達や配送拠

点を確保するため

相手国との橋渡し役に

なる人の存在

その他

427

147 135 134

88 80 65

141

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450(n)

※複数回答設問を実数ベースで図表化(n=1,217)

直接貿易

直接投資

間接貿易

業務・技術提携

情報収集拠点

どれにも当てはまらない

海外展開をしていない

26.8

21.3 21.0

16.7

8.0

10.9

30.9

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0(%)

(N=724)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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九州は、全国と比較して輸出依存度がやや低いが、輸出の増減に影響され、鉱工業生産指数が変動しやすい傾向となっている。

最近では、北米を中心に海外経済の回復基調で、更に円安に伴い国際競争力も向上し、輸出型企業(主に製造業)を中心に生産が持ち直している。業種別では輸出割合の高い輸送用機械、電子部品・デバイス(IC、半導体等製造装置)等の生産が増加傾向。

2014年の九州と全国の「アジア度」を比較すると、「輸入額」を除いた5項目について、九州の「アジア度」が全国よりも高く、九州経済はアジアとの結びつきが強いことが窺える。

3.海外展開の現状 ③

【九州の輸出依存度と鉱工業生産指数】 【九州と全国のアジア度比較】

0

20

40

60

80

100

120

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

18.0%

06年 07年 08年 09年 10年 11年度 12年度

九州(輸出依存度)

全国(輸出依存度)

九州(鉱工業生産指数)

全国(鉱工業生産指数)

輸出依存度 鉱工業生産指数

九州と全国の輸出依存度、鉱工業生産指数06年 07年 08年 09年 10年 11年度 12年度

九州(輸出依存度) 11.3% 13.2% 13.1% 9.3% 12.2% 11.9% 11.8%全国(輸出依存度) 14.6% 16.1% 15.4% 10.8% 13.9% 13.2% 12.7%

九州(鉱工業生産指数) 107.5 110 107.5 85.6 102.5 103.6 103.6全国(鉱工業生産指数) 104.5 107.4 103.8 81.1 94.4 92.2 91.9

80.6%

38.6%

54.3%

91.2%

94.3%

59.3% 62.8%

45.0%

35.3%

67.6%

80.7%

54.1%

海外進出企業件数

輸入額

姉妹提携自治体数

国際航空路線数

外国人入国者数

輸出額

九州 全国

輸入額

外国人入国者数

姉妹提携自治体数

海外進出企業件数

国際航空路線数

輸出額

出所:「九州経済国際化データ2015」より 7

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3.海外展開の現状 ④ 参考

輸出の増減に影響され、鉱工業生産指数が変動しやすい傾向となっている。 ※今回の調査においても、海外展開の業種別状況では、特に直接貿易、間接貿易等で貿易依存型の製造業が高い傾向にある。

直接投資

情報収集拠点

業務・技術提携

直接貿易

間接貿易

91

16

53

111

101

11

2

15 9

4

21

11

20

51

31

6 2 3 5 8

14 13 21

8 8

20 18 19 20 15

0

20

40

60

80

100

120

製造業 建設業 卸売業 小売業、飲食店 サービス業 その他

(n)

(n=727)

※複数回答設問を実数ベースで図表化

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2014年の九州の対世界貿易総額は12兆5,850億円。輸出額が5兆7,719億円(前年比2.7%増)と2年連続で前年を上回ったものの、輸入額も6兆8,131億円(前年比3.0%増)と増加し、4年連続で貿易赤字となった。

貿易額は2008年まで増加傾向にあったが、リーマンショックにより2009年に激減し、その後回復はしている。2014年現在ではまだ2008年の水準には至らないものの、徐々に戻りつつある。

3.海外展開の現状 ⑤

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14年

輸出額 3.0 2.8 3.3 3.4 4.0 4.4 5.1 5.9 5.9 4.1 5.2 5.2 5.2 5.6 5.8

輸入額 2.5 2.7 2.7 2.8 3.4 4.3 5.4 6.1 7.2 4.1 4.9 5.6 5.6 6.6 6.8

輸出全国比 5.8 5.8 6.2 6.2 6.5 6.6 6.7 7.0 7.3 7.6 7.7 8.0 8.1 8.1 7.9

輸入全国比 6.2 6.3 6.5 6.4 6.9 7.5 8.1 8.4 9.1 7.9 8.1 8.3 8.0 8.1 7.9

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

0

1

2

3

4

5

6

7

8

全国比(%)(兆円)

【九州の対世界貿易額の推移】

出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

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1986年~2014年の九州企業の海外進出累計件数は、1,065件となっている。このうち2014年の新規海外進出件数は12件で、前年比60.0%減(18件)となっている。全国の2014年時点の海外進出累計件数は28,013件で、うち新規海外進出件数は549件である。

進出先を構成比でみると、九州企業の進出先(累計)はアジア858件、北米101件、EU65件、その他41件と圧倒的にアジアが多く、その内訳は中国43.0%、ASEAN20.8%、アジアNIEs16.7%となっている。

2014年時点での海外進出件数を進出年次別にみると、2004年から2006年は年間60件を超え、2010年では69件に達した。

3.海外展開の現状 ⑥

不明

構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) 構成比(%) (累計) 構成比(%) 掲載ベース 構成比(%)

アジア 38 70.4 112 76.2 112 76.7 213 83.9 241 85.8 49 84.5 34 72.3 25 83.3 9 75.0 25 858 80.6 17,604 62.8

中国 10 18.5 62 42.2 55 37.7 144 56.7 128 45.6 27 46.6 11 23.4 6 20.0 2 16.7 13 458 43.0 6,707 23.9

香港 2 3.7 6 4.1 3 2.1 10 3.9 9 3.2 3 5.2 1 2.1 3 10.0 - - - 37 3.5 1,288 4.6

台湾 7 13.0 4 2.7 10 6.8 10 3.9 12 4.3 3 5.2 2 4.3 3 10.0 1 8.3 4 56 5.3 1,038 3.7

韓国 3 5.6 6 4.1 9 6.2 13 5.1 11 3.9 3 5.2 2 4.3 2 6.7 - - 3 52 4.9 904 3.2

ASEAN 16 29.6 32 21.8 32 21.9 33 13.0 64 22.8 9 15.5 16 34.0 9 30.0 6 50.0 5 222 20.8 6,859 24.5

その他アジア - - 2 1.4 3 2.1 3 1.2 17 6.0 4 6.9 2 4.3 2 6.7 - - - 33 3.1 808 2.9

<ASEAN4> 13 24.1 19 12.9 24 16.4 26 10.2 29 10.3 6 10.3 11 23.4 3 10.0 1 8.3 4 136 12.8 4,668 16.7

<アジアNIEs> 14 25.9 23 15.6 28 19.2 34 13.4 41 14.6 12 20.7 6 12.8 11 36.7 2 16.7 7 178 16.7 4,478 16.0

北米 11 20.4 12 8.2 21 14.4 21 8.3 19 6.8 7 12.1 4 8.5 - - 2 16.7 4 101 9.5 3,893 13.9

EU 3 5.6 18 12.2 6 4.1 14 5.5 13 4.6 - - 4 8.5 1 3.3 1 8.3 5 65 6.1 3,676 13.1

その他 2 3.7 5 3.4 7 4.8 6 2.4 8 2.8 2 3.4 5 10.6 4 13.3 - - 2 41 3.8 2,840 10.1

54 100.0 147 100.0 146 100.0 254 100.0 281 100.0 58 100.0 47 100.0 30 100.0 12 100.0 36 1,065 100.0 28,013 100.0

全 国

2014年時点13年86~90年 91~95年 96~00年 01~05年

九 州

14年06~10年 11年 12年 86~14年

世 界 合 計

【九州企業の国・地域別海外進出状況】 単位:件、%

10

出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

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3.海外展開の現状 ⑦

2013年調査の際は、海外展開中の企業の売上に占める海外比率は「10%未満」が6割弱、海外比率が50%を超えている企業は1割程度だった。

今回の調査では、海外比率は「10%未満」が7割強を占めており、海外比率が50%を超えている企業は5%程度に減っている。

※海外比率が50%を超えている企業は、卸売業の割合が高く、展開先は中国が多い。

【売上に占める海外比率】 ※2013年九州企業の海外展開にかかる実態調査

【売上に占める海外比率】 ※今回調査

11

10%未満

58.2%10~30%未満

19.3%

30~50%未満

5.7%

50~80%未満

5.7%

80%以上

4.3%

無回答

6.8%

(N=352)

10%未満

75.0%

10~30%未満

8.8%

30~50%未満

3.3%

50~80%未満

2.9%

80%以上

2.1%

無回答

7.9%

(N=724)

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3.海外展開の現状 ⑧

世界で稼ぐ力:輸出による国際競争力の向上

1.近年の経常収支の黒字幅の縮小は貿易収支の赤字化による。

2.高度経済成長を成し遂げた、1990年代までは「安い原材料を輸入して高い製品にして輸出して稼ぐ加工貿易の国」として稼いでいた。しかし最近は減少傾向。

3.少子高齢化が進む現在、世界で稼ぐ力「輸出力」は重要。

4.全国に比べ、九州の輸出依存度(GDPに対する輸出額の割合)は

やや低い。

5.九州は輸出の増減に影響され、鉱工業生産指数が変動しやすい傾向となっている。(輸出依存型製造業が多い。)

※円安、新興国の人件費上昇に伴い、日本の製造業が国内でものづくりを強化する動き。相次ぎ工場新設。2015年3/27(日本経済新聞) ※知的財産の国際収支、黒字最大の1兆6,950億円も、8割は海外子会社と

の企業内取引によるものとみられる。いわゆる上げ底状態。電機は実質赤字。新興国で権利保護が課題。企業4割、模造品被害増。収入を日本に戻すための国際ルールづくりも課題。中国やタイなどで日本へのロイヤリティー送金を制限されるケースが多い。2015年3/16(日本経済新聞)

キーワード:ASEAN

12

平成2 7 年5 月2 5 日「日アセアン知財共同声明」を採択

日本国特許庁とアセアン各国知財庁による第5 回日アセアン特許庁長官会合が奈良市において開催されました。 本会合では、2015 年度の知的財産分野の協力プログラムを策定するとともに、知財協力の深化を通じてアセアン経済共同体の実現に貢献することを確認し、「日アセアン知財共同声明」を採択しました。

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3.海外展開の現状 ⑨

東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長加速を目指す広域経済連携の枠組み「ASEAN経済共同体(AEC)」が12月31日、発足する。域内人口は欧州連合(EU)を上回る計6億2000万人で、域内総生産が2兆5000億ドル(約300兆円)に達する巨大な経済圏が本格始動する。 国境の障壁が取り払われればASEANを「単一の生産基地」と位置づけ、域内で分業する動きが一段と活発になる。 企業がAECの発足を見越し、人手に頼る作業が多い一部の自動車部品の生産を、タイから賃金が割安なカンボジアやラオスに移すといった動きが広がり始めている。 こうした動きを背景にAEC域内ではすでにモノの往来が盛んになっている。14年の域内貿易額は6083億ドルと、10年間で2.3倍に増えた。 インフラ整備の進展も物流を助ける。域外からの投資誘致には鉄道、道路といった輸送部門を中心にインフラの拡充が欠かせない。製造拠点で巨大市場でもあるAECの潜在力は魅力的で、隣接する大国、中国もインフラ建設に協力する形で接近を加速させている。 東南アジアは日本企業にとって主要な投資先の一つだ。拡大するインフラ整備も大きな商機となる。ASEANでは30年までに3兆3000億ドルものインフラ投資が必要になるという試算も浮上した。例えば、日本貨物鉄道(JR貨物)と豊田通商は、製造業が集まるタイの南部経済回廊沿いでの鉄道輸送事業への参入を目指している。 出所:12月31日付 日本経済新聞より一部抜粋

これからのASEAN地域は・・・・。

13

参考:「ASEAN Intellectual Property Portal」について

ASEANでは2015年のASEAN経済統合に向けて様々な取組みを行っているが、知財分野について協働する組織として、ASEAN各国の知財当局から構成されるASEAN知的財産協力作業部会(AWGIPC)が存在する。AWGIPCではASEAN知財行動計画2011‐2015(ASEAN IPR Action Plan 2011‐2015)を策定し、この計画に沿って活動を行っている。この計画には28のイニシアチブが定められており、その中で、ASEAN諸国の知財知識ネットワーク内における情報の共有や流れの促進、ASEAN諸国における知的財産制度の強化、ASEAN地域における知財意識のレベルアップのためのASEAN IP Portalサイトの開設・運営・定期的な更新等が掲げられている。計画では、2012年開設を目指していたようだが、AWGIPCは、2013年4月26日に、ASEAN IP Portal(http://www.aseanip.org)を立ち上げた。これは、ASEAN諸国の知的財産に関する情報を総合的・包括的に収集・提供するワンストップポータルサイトである。

詳細: https://www.globalipdb.jpo.go.jp/country/ https://www.globalipdb.jpo.go.jp/laws/6134/ 各国情報等(特許庁HPより)

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3.海外展開の現状 ⑩

●2014年の九州の対ASEAN貿易額は、輸出が8,049億円(前年比0.9%増)で3年連続の増加。輸入は9,552億円(前年比7.5%増) で2年連続の増加。輸出入額ともに過去最高だった。 ●ASEANにおいて、九州からの輸出額が最も多い国はシンガポールで、タイ、ベトナムが続いている。一方、九州の輸入額が最も多い国 はインドネシアで、タイ、マレーシアが続いている。 ●輸出品目は、半導体等電子部品の輸出額が最も多く、次いで鉄鋼のフラットロール製品、金等となっている。輸入品目は、石油ガス類 (液化天然ガス)の輸入額が最も多く、次いで原油及び粗油、石炭等となっている。

ASEAN地域へのアプローチ:貿易動向➀

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14年

輸出額 5,125 4,758 5,931 5,763 6,374 6,654 6,083 7,632 7,313 5,592 7,072 6,878 6,939 7,979 8,049

輸入額 4,351 4,491 4,819 4,953 5,260 6,089 7,530 8,263 9,119 5,665 7,099 8,399 7,969 8,884 9,552

輸出全国比 6.9% 7.2% 8.5% 8.1% 8.1% 8.0% 6.9% 7.5% 6.8% 7.5% 7.2% 7.0% 6.7% 7.4% 7.3%

輸入全国比 6.8% 6.8% 7.5% 7.3% 7.2% 7.6% 8.1% 8.1% 8.2% 7.8% 8.0% 8.4% 7.7% 7.7% 7.8%

0%

1%

2%

3%

4%

5%

6%

7%

8%

9%

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

貿

全国比(%)(億円)

【九州の対ASEAN貿易額の推移】

金額 構成比 伸び率 寄与度 全国比 金額 構成比 伸び率 寄与度 全国比

ベトナム 1,165 14.5% 18.4% 2.3% 9.3% 963 10.1% 0.5% 0.1% 5.9%

タイ 1,955 24.3% 4.0% 0.9% 5.9% 1,821 19.1% 2.8% 0.6% 7.9%

シンガポール 2,224 27.6% -9.5% -2.9% 10.0% 180 1.9% -11.8% -0.3% 2.2%

マレーシア 1,082 13.4% -8.8% -1.32% 7.2% 1,390 14.5% 13.7% 1.9% 4.5%

ブルネイ 11 0.1% 75.3% 0.06% 9.8% 306 3.2% 160.8% 2.1% 7.2%

フィリピン 565 7.0% 10.9% 0.7% 5.4% 1,079 11.3% 21.0% 2.1% 10.0%

インドネシア 949 11.8% 7.0% 0.8% 6.1% 3,750 39.3% 2.2% 0.9% 13.8%

カンボジア 17 0.2% 55.6% 0.08% 6.2% 41 0.4% 17.0% 0.1% 5.0%

ラオス 1 0.01% 477.4% 0.01% 0.5% 3 0.03% 26.3% 0.01% 2.1%

ミャンマー 80 1.0% 39.9% 0.3% 6.4% 20 0.21% 56.6% 0.08% 2.2%

ASEAN 計 8,049 100.0% 0.9% 0.9% 7.3% 9,552 100.0% 7.5% 7.5% 7.8%

国名輸出 輸入

【九州のASEAN域内における国別輸出入動向(2014年)】

ASEAN地域の連携も深まり、様々な可能性が広がる。

14 出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

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3.海外展開の現状 ⑪

●日本からのASEANへの投資が量だけでなく質としても深化し、日本とASEANはビジネスパートナーとしても緊密な関係を構築している。 ●日本とASEANの貿易額は増加傾向にある。過去10年で、日本からの輸出額が1.4倍、輸入額が1.7倍に増加。2014年の日本とASEANの 貿易総額は23.3兆円。 ●九州とASEANの貿易額も全国同様、増加傾向にある。過去10年で、九州からの輸出額が1.3倍、輸入額が1.8倍に増加。2014年の九州 とASEANの貿易総額は1.8兆円。

ASEAN地域へのアプローチ:貿易動向②

‐2000

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

22000

24000

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

ASEAN中国

台湾

韓国

香港

単位:億円 日本の対外直接投資(対東アジア主要国・地域)

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

日本からの輸出額

日本への輸入額

単位:億円 日本・ASEAN貿易額の推移

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

九州からの輸出額

九州への輸入額

単位:億円 九州・ASEAN貿易額の推移

15 出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

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今後関心のある国・地域は、「ベトナム」(50件)、「タイ」(34件)、「中国」「北米」(ともに31件)の順。以下、僅差で「ヨーロッパ」(27件)、「インドネシア」「ミャンマー」「台湾」(いずれも26件)が続いている。アセアン地域は合わせて198件に上り、関心の高さが窺える。

今後の展開内容は、「直接貿易」(149件)、「間接貿易」(141件)、「業務・技術提携」(133件)の順。「間接貿易」や「業務・技術提携」に対する関心が高い。

【今後関心のある対象国・地域】 【今後の展開内容】

4.海外展開に関する今後の展開 ①

16

ベトナム

タイ

中国

北米

ヨーロッパ

インドネシア

ミャンマー

台湾

シンガポール

その他

50

34 31 31 27 26 26 26 21

126

0

30

60

90

120

150(n)

※複数回答設問を実数ベースで図表化(n=398)

直接貿易

間接貿易

業務・技術提携

直接投資

情報収集拠点

149 141

133

87

62

0

50

100

150

200(n) ※複数回答設問を実数ベースで図表化

(n=572)

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検討段階の企業は82社程度だが、情報収集をはじめ何らかの形で検討を進めている。 海外展開の検討に至らない251社に関しては、「国内需要を獲得するだけで十分」(33.9%)、「自社製品・サービ

スが海外向きでない」(30.7%)、「国内の経営で手一杯で海外展開に手が回らない」(26.3%)の順で、これら上位は現状満足層と海外展開自体への否定層である。

以下、「海外展開はリスクが大きい」(19.1%)、「海外展開をするためのノウハウがない」(18.7%)、「海外展開をするための人材がいない」(17.9%)、「海外展開をするための資金がない」(12.0%)が続き、これらの理由は、支援や相談により解決する可能性があり、海外展開に向けたポイントのひとつと思われる。

4.海外展開に関する今後の展開 ②

【現在の検討段階の状況】 【海外展開の検討に至らない理由】

17

関心はあるが

具体的な検討には

至っていない

25.6%

相手国に関する

情報収集段階

26.8%

現地での

情報収集段階

24.4%

情報収集が終わり

開設準備段階

11.0%

無回答

12.2%

(n=82)

国内需要を獲得するだ

けで十分

自社製品・サービスが

海外向きでない

海外展開に手が回らな

い 海外展開はリスクが大

きい

海外展開をするための

ノウハウがない

海外展開をするための

人材がいない

海外展開をするための

資金がない

その他

無回答

33.930.7

26.3

19.1 18.7 17.9

12.0

39.4

1.6

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0(%)

(n=251)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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現在海外展開中の357社について、≪会社全体での売上≫は半数以上(55.2%)が「増えた」と回答。≪国内での売上≫は、「増えた」が約3割。海外展開が何らかの形で売上げに貢献している。

≪国内での取扱品目≫は「高付加価値品が増えた」(25.8%)、「汎用品が増えた」(12.3%)の割合で、比較的、高付加価値品の取扱が増加する傾向が強い。

≪国内での雇用≫≪国内での設備投資≫は「増えた」企業が2割台であり、海外展開による国内の雇用や設備投資の減少はほとんど見られない。

4.海外展開に関する今後の展開 ③

【会社全体での売上】 【国内での売上】 【国内での雇用】 【国内での設備投資】 【国内での取扱品目】

18

今回調査結果

増えた

55.2%

変わらない

34.2%

減った

5.0%

無回答

5.6% (n=357)

前回調査結果

増えた

58.8%

変わらない

37.7%

減った

3.5% (n=342)

増えた

31.7%

変わらない

53.2%

減った

9.0%

無回答

6.2% (n=357)

増えた

35.4%

変わらない

55.0%

減った

9.6%(n=342)

増えた

24.1%

変わらない

63.3%

減った

6.2%

無回答

6.4% (n=357)

増えた

21.8%

変わらない

67.4%

減った

10.8%(n=342)

増えた

22.4%

変わらない

65.8%

減った

5.6%

無回答

6.2% (n=357)

増えた

20.7%

変わらない

71.7%

減った

7.6% (n=342)

高付加価値

品が増えた

25.8%

汎用品が

増えた

12.3%

変わらない

54.1%

無回答

7.8%(n=357)

高付加価値

品が増えた

27.1%

高付加価値

品が減った

3.6%汎用品が

増えた

8.3%

汎用品が

減った

3.3%

変わらない

57.7%

(n=342)

前回調査結果 : 2013年九州企業の海外展開にかかる実態調査

前回調査結果

今回調査結果

前回調査結果

今回調査結果 今回調査結果

前回調査結果 前回調査結果

今回調査結果

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海外展開状況のポイント ・リーマンショック以来の急激な不況を脱し、現在では景気は回復傾向にある。貿易額については、過去最高の2008年に近づきつつ ある回復ぶり。 ・海外進出(直接投資)企業は2010年をピークに最近減少傾向にある。 ・海外進出に関心のある企業は増加しているものの、具体的な展開(直接投資)を行っている企業は少ない。 ・海外進出をしない理由として、国内展開で満足している企業、海外展開のリスクを懸念している企業、ノウハウ・人材不足・資金不足 等が理由の企業が存在する。 ・一方で、海外展開をしている企業では、何らかの形(売上げの増加等)で海外展開が利益に貢献している。

★海外展開の形態が、直接投資から直接貿易や間接貿易にシフトしている。 (近年の円安の影響等もあり) ★景気の回復とともに、国内での展開が安定してきた。 ★海外展開に決して否定的なのではなく、リスクの回避、何らかの支援策を講じることにより、直接投資も増加す る可能性がある。 ★更に九州においては、近年ASEAN地域への進出が増加傾向となっており、今後の海外展開 先としても、高い 関心が寄せられている。

中小企業の海外展開が進んでいく中、直面している課題が多様化してきている ことがうかがえる。 → グローバル人材、知財権等 海外撤退・事業縮小の状況 ・海外展開している企業の撤退・縮小状況については、中国が最も多く、ASEAN地域ではシンガポール、ベトナムの順。 ・撤退・縮小内容としては、直接投資が最も多い。理由では、商習慣・文化の違い、日本本社の戦略の変更等。 ・課題としては、投資資金の回収、撤退手続きに時間がかかる等。

★今回の調査では、撤退・事業縮小した企業は全体の4.7%程度と低い状況だった。

4.海外展開に関する今後の展開 ④

19

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5.留学生の採用について ①

2014年の九州の留学生は17,830人(前年比0.3%増)で、全国比は12.8%。2014年は10年前の2004年と比べると1.6倍に増加しており、九州における留学生の受け入れは増加傾向となっている。国籍別では、中国が52.6%と最も多く、次いでベトナム(13.9%)、韓国(8.6%)等となっている。

【九州の留学生の推移】

7,176

8,886

10,383

11,084

11,546

11,784

12,516

13,693

15,140

17,488

18,082

17,611

17,780

17,830

9.1 9.3 9.5 9.4 9.5 10.0

10.6 11.1 11.4

12.3 13.1 12.8 13.1 12.8

0

2

4

6

8

10

12

14

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14年

留学生数 全国比

(人)(

( (%)

20 出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

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5.留学生の採用について ②

2014年に日本企業等に就職した留学生は、全国で12,958人。うち、就職先企業等が九州に所在しているのは699人で全国比は5.4%。

121 102 106204

287

394 428 451 428 419 429

560 567

699

3.43.2

2.8

3.9

4.9 4.8

4.2 4.1

4.55.4

5.05.1

4.9

5.4

0

1

2

3

4

5

6

7

0

100

200

300

400

500

600

700

800

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14年

人数 全国シェア

(%)

【九州の企業等に就職した留学生数の推移】

21 出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

九州への定着率は低

い。

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【留学生の出身国・地域(上位)】

5.留学生の採用について ③ 海外展開中の企業(357件)の活用(採用)実績は、「ある」(43.4%)、「ない(検討していない)」(40.6%)の割合。 留学生の出身国・地域は、「中国」が75.5%で突出。以下「韓国」(20.5%)、「ベトナム」(15.0%)、「台湾」(8.2%)の

順。アセアン地域では、「ベトナム」が15.0%見られるが、その他「インドネシア」(6.4%)、「タイ」(4.5%)、「マレーシア」(3.6%)、「シンガポール」(2.3%)、「フィリピン」(1.4%)、「カンボジア」(0.5%)などは1割未満。

業種別の活用(採用)状況は、製造業での活用(採用)が最も多く、次いで卸売業、サービス業の順。

【留学生の活用(採用)実績】 1位 中国2位 韓国3位 ベトナム4位 台湾5位 インドネシア6位 アメリカ7位 タイ8位 マレーシア

【留学生の活用(採用)実績:業種別)】

22

<全体>

<海外展開中企業>

ある

43.4%

検討中

6.7%断念した

0.3%

ない

(検討していない)

40.6%

無回答

9.0%

(n=357)

ある

30.4%

検討中

5.9%

断念した

0.3%

ない

(検討していない)

51.5%

無回答

11.9%

(N=724)

製造業

建設業

卸売業

小売業、飲食店

サービス業

その他

82

8

23

5

2024

12

25

0 14

0 0 0 0 0 1

76

8

31

610

25

13

3

10

15 4

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90ある 検討中 断念した ない(検討していない) 無回答

(n)

(n=379)

※海外展開中企業のみ ※複数回答設問を実数ベースで図表化

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5.留学生の採用について ④

海外展開中の企業の業種別留学生の活用比率については、サービス業が最も高いが、そのほかの業種については、海外展開比率は高いものの、留学生の活用比率はそれほど高くない。

活用した留学生の職種では、営業・販売・サービスが最も多い。

60.0

30.0

67.0

30.0

34.3

製造業31.1

建設業18.6

卸売業27.2

小売業、飲食店25.0

サービス業41.9

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

業種別:留学生の活用比率

海外展開比率 留学生活用比率

留学生採用を巡るさまざまな課題: ・留学生等の有効的な活用方法(言葉の壁、信頼性の確保、知り合うきっかけ) 採用したい気持ちはあるが、言葉の問題、知り合うきっかけ等の障壁がある。 ・採用していた外国人材が技術を習得した後に、退職し起業。ライバル会社と なった。 ・地方や田舎は募集しても応募が少ない。 ・中小零細は、社長が自ら対応するケースが多く、経営の傍らで充分な対応がで きない。

108

69

45 4537

3

18

10

20

40

60

80

100

120n=220

【活用した留学生の職種】

23

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【海外における 知財関連出願等の実績】

6.海外展開における知的財産の状況 ① 海外で取得した知的財産関連の出願等の実績は、「ある」(20.2%)、「ない(過去の検討が無く、今後も予定なし)」

(62.2%)の割合。「ない(現在検討中)」が8.8%。 ※県別では、「ある」の割合は鹿児島県(33.3%)が高く、大分県(8.6%)と長崎県(11.5%)は1割程度。 ※業種別では、製造業は「ある」の割合が33.1%と高く、「サービス業」は7.6%と低い。 実績がある企業の、取得済み・出願中の内容は、「特許」(63.0%)と「商標」(56.2%)がそれぞれ5~6割台と高い。

「意匠」(12.3%)と「実用新案」(8.9%)は1割程度で、該当企業は、製造業が多くを占めているため「特許」が多くなっているものと思われる。現在検討中の企業では、「商標」(48.4%)、「特許」(25.0%)が多い。

【「取得済み」や 「出願中」の内容】

24

ある

ない(現在検討中)

断念した

ない(過去の検討が無

く、今後も予定なし)

20.2

8.8

0.6

62.2

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0(%)

(N=724)

※複数回答設問のため、

構成比の合計は100にならない

特許

商標

意匠

実用新案

無回答

63.0

56.2

12.38.9

2.1

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0(%)

(n=146)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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海外展開タイプ別の知的財産権の出願状況では、間接貿易を除くどのタイプも特許が多く、次いで商標の順。相対的に最も知的財産権の出願が多いのは、直接貿易、次いで直接投資の順。

海外進出企業の業種別知財権取得比率を比較すると、製造業の取得比率が33.1%と他の業種に比べて高く、海外展開比率も6割に達している。サービス業は海外展開比率が34.3%に対して知的財産権取得比率が7.6%と低い。

【海外展開タイプ別知的財産権の出願状況】

6.海外展開における知的財産の状況 ②

25

60.0

30.0

67.0 30.0

34.3

43.0

製造業

33.1

建設業

14.3

卸売業15.5

小売業、飲食店

22.5

サービス業

7.6

その他

12.6

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

業種別知財取得比率

海外展開比率 知財権取得比率

直接投資

情報収集拠点

業務・技術提携

直接貿易

間接貿易

36

10

26

46

26

12

24

86

12

1

79

11

36

9

21

3639

1 13 2 1

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50特許 実用新案 意匠 商標 無回答

(n)

(n=357)

※複数回答設問を実数ベースで図表化

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0

20

40

60

80

100

120

140

160

意匠

実用新案

商標

特許

12

22

9 9

20

n=222150

業種別・知的財産権別取得件数では、製造業は特許が最も多く次いで商標等の順。建設業では特許、卸売業では商標、小売業、飲食店では商標、サービス業では特許がそれぞれ最も多い。

6.海外展開における知的財産の状況 ③

業種別・知的財産権別取得件数の比較

特許

商標

実用新

案 意匠

製造業 71 55 9 15 150

建設業 7 3 1 1 12

卸売業 6 12 2 2 22

小売業、飲食店 2 7 0 0 9

サービス業 5 3 1 0 9

その他 7 12 1 0 20

計 222

解説:《卸売業》 ★商標権取得実績のある主な業種:日用品、化粧品、健康食品、 お酒等 ★特許権取得実績のある主な業種:機械、理美容品等 ※製造も手がける卸売業が、主な知的財産権取得企業となって いる。

26

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27

製造業は海外展開比率と知的財産権取得比率の比較的高いところに位置する。海外展開企業数に対して、知財権取得企業数はどの業種も少ない状況。サービス業については、知的財産権取得の必要性は認識されているものの、現状の取得率は低い。

305

70

103

40

105

135

101

10 16

9

8

17

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0

卸売業

建設業

小売業、飲食店

その他

サービス業

製造業

海 外 展 開 比 率

知財権取得比率

業種別(海外進出件数別)海外展開比率の比較

低 高

(%)

(%)

6.海外展開における知的財産の状況 ④

バブル外:海外展開企業数 バブル中:知的財産権取得企業数

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑤

企業の出願先、検討先の国・地域は、「中国」(56.0%)、「アメリカ」(36.4%)、「台湾」(34.9%)、「韓国」(31.1%)、「EU」(26.8%)、「香港」(23.4%)の順。

アセアン地域は、アジア欧米地域に比べて低いものの、「シンガポール」(19.1%)、「タイ」(16.3%)、「ベトナム」(12.9%)、「マレーシア」「インドネシア」(ともに12.4%)がそれぞれ1割台。

海外展開同様、中国をはじめとするアジア地域及びアセアン地域への関心の高さが窺える。

【出願先・検討先の国・地域(上位)】

ASEAN地域

28

インド 10.5

フィリピン 7.2

オセアニア 6.2

カンボジア 2.9

ネパール 0.5

その他 13.4

<その他>

中国

アメリカ

台湾

韓国

EU

香港

シンガポール

タイ

ベトナム

マレーシア

インドネシア

56.0

36.4 34.931.1

26.8 23.4

19.116.3

12.9 12.4 12.4

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0(%)

(n=209)※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑥

出願に際して最も苦労した点は、「申請手続きが煩雑」(17.8%)、「手続きに時間がかかる」「申請費用の調達」(ともに17.1%)が上位で、手続きの煩雑さやそれに伴う時間のロスが苦労を感じさせている。

海外において知的財産関係の被害を受けた経験が「ある」企業は48社。具体的な被害内容は、「模倣品」(66.7%)が多く、「冒認商標(他社が先に商標出願)」(29.2%)、「情報流出(サンプル、営業資料等)」(14.6%)の順。

被害を受けた国・地域は、「中国」(28件)、「韓国」(8件)、「アメリカ」(5件)など。 被害を受けた時の対応は、「法的措置を講じた」(9件)、「直接通告した」(6件)といった対応が多いが、「対応してい

ない」ケース(8件)も見られる。

【出願に際して最も苦労した点】 【具体的な被害の内容】

29

申請手続き

が煩雑

17.8%

手続きに

時間が

かかる

17.1%

申請費用の

調達

17.1%

国毎に手続きが

異なる

11.0%

その他

19.2%

無回答

17.8%

(n=146)

模倣品

冒認商標

情報流出

66.7

29.2

14.6

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0(%)

(n=48)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑦

海外で知的財産の出願実績がある企業において、国内支援機関・弁理士等を「活用した」企業は62.3%。 「弁理士・弁理士事務所・特許事務所」(38件)、「JETRO」(24件)、「県の知財窓口」(14件)などの利用が多い。

国内支援機関・弁理士等を知ったきっかけは、「もともと知っていた」が63.7%を占め、海外知的財産活動以前に知っていたケースが多い。

活用した内容は、「知財出願支援」(52.7%)、「相談(知財関連)」(37.4%)の順。

【海外知財活動における国内支援機関・弁理士等の活用状況】 【国内支援機関・弁理士等を活用した内容(上位)】

30

活用した

62.3%

活用して

いない

35.6%

無回答

2.1%

(n=146)

知財出願支援

相談(知財関連)

費用助成(知財関連)

制度情報の収集(知財

関連)

専門家紹介(知財関

連)

その他

52.7

37.4

23.1

12.19.9

26.4

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0(%)

(n=91)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑧

国内支援機関・弁理士等を活用している企業の評価は、「専門知識を持った担当者がいる」(48.4%)がおよそ半数に評価されており満足度はそれなりに高い。

<サポートの費用>は「安い」が13.2%に対して、「高い」が28.9%となっており、費用の面ではデメリットの方が高い。また、<問題解決>についても「短時間で問題解決」(8.8%)と「問題解決に時間がかかる」(10.2%)でデメリットの方がやや高い。

活用していない理由は、「自社に専門家がいる・自社で処理できる」が26.9%見られる。一方で、「どこに頼んでいいか分からない」も17.3%見られ、認知度の低さが今後の課題のひとつである。

【国内支援機関・弁理士等を活用しての評価】

参考:海外の支援機関の活用状況について ★海外知財活動において海外の支援機関を「活用した」企業は724社中僅かに8社。 ★海外の支援機関を活用していない理由は、国内と同様に「自社に専門家がいる・自社で処理できる」が11.4%見られる。 ★海外では、「どこに頼んでいいか分からない」が17.7%(国内支援機関:17.3%)見られた。 ★海外進出中の企業の中には、タイムロスを解消するために、海外支援機関を活用した企業も見受けられたが、代理人等を通じて手続きを行うケースが多い。

31

専門知識を持った担

当者がいる

対応が親切

書類作成の代行

サポート等の費用が

高い

的確な回答が得られ

る 一貫して同じ担当者

が対応

1つの機関で問題解

決 サポート等の費用が

安い

問題解決に時間がか

かる

短時間で問題解決

1つの機関で問題が

解決しない

書類作成の代行が出

来ない

求めている回答が出

ない

担当者が途中で変わ

48.4

37.4 37.4

28.925.3

18.714.3 13.2

10.2 8.86.3

3.9 3.1 3.1

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0(%)

(n=91)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

メリット デメリット

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑨

海外展開における知的財産活動で、国内の支援機関に期待することは、「知財に関するアドバイス」(27.3%)と「知財に関する助成」(25.3%)が比較的高く、<助成>や<アドバイス>等。次いで、「サポート等の費用を安く」(18.5%)、「的確な回答」(18.0%)、「専門知識を持った担当者」(15.5%)が続いており、これら3項目も<助成>や<アドバイス>に関連する要素となっている。

【国内支援機関等に期待すること】

32

知財に関するアドバ

イス

知財に関する助成

サポート等の費用を

安く

的確な回答

専門知識を持った担

当者

臨機応変な対応

知財に関する各種セ

ミナー

短時間での問題解決

27.325.3

18.5 18.0

15.514.0 13.4 12.6

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0(%)

(N=724)

※複数回答設問のため、構成比の合計は100にならない

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑩ 参考

33

★ 中国では「発明」、「実用新案」、「意匠」の3種が「特許」として総称されている。中国特許局に対する特許出願の全 体件数は、この4年間で実に2.4倍になっている。外国からの出願の中では、日本からの出願が最も多い。 ★ 中国の商標出願件数は世界一。2013年の出願件数は188万件余(国内から173万件余、外国から15 万件弱)。 ★ 知的財産権保護の執行面では問題点が残っており、商標権侵害品、著作侵害品が中国国内で大量に生産・販売 され、世界へも輸出されている現実は今も変わっておらず、各国から批判が寄せられている。 ★ 知的財産権民事裁判の件数は年々増大しており、13年の1審受理件数はほぼ8万8千件余。同年の日本では552 件であり、その160倍以上である。著作権事件が圧倒的に多く、次いで商標権事件、特許権事件が多い。

<中国の知的財産権の状況>

0

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年

(件)

<表1>中国3種特許出願件数

合計

発明

実用新案

意匠

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1,600,000

1,800,000

2,000,000

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年

(件)

<表2>商標出願件数

国内

国外(非マドリッド)

国外(マドリッド)

合計

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

2010年 2011年 2012年 2013年

(件)

<表3>国家工商行政管理総局・模倣品摘発件数

合計

国内

国外

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑪ 参考

我が国の2013年度における技術輸出の受取額は3兆3,952億円で、前年度より24.8%増加、技術輸入の支払額は5,777億円で、前年度より28.8%増加。技術貿易額収支は2兆8,174億円で過去最高。(技術貿易収支額では、米国に次いで世界第2位)

貿易相手国では、技術輸出は米国が最も多く、次いで中国、タイ等、技術輸入は米国が最も多く、次いでデンマーク、ドイツ等。

15,122

17,694

20,283

23,782 24,823

22,255

20,153

24,366 23,852

27,210

33,952

5,638 5,676 7,037 7,054 7,105

6,000 5,349 5,301 4,148 4,486

5,777

9,484

12,018 13,246

16,728 17,718

16,255 14,804

19,065 19,704

22,724

28,174

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

技術輸出

技術輸入

技術貿易収支額

【日本の技術貿易の推移】

技術輸入額 5,7771 米国 4,2062 デンマーク 3033 ドイツ 2204 スイス 1925 英国 1456 スウェーデン 1167 フランス 105

その他 490

技術輸出額 33,9521 米国 12,9632 中国 5,0763 タイ 3,0874 英国 1,8675 インドネシア 1,3126 韓国 1,1417 インド 1,022

その他 7,484

単位:億円 【主要国別技術貿易額:2013年】

34 出所:九州経済産業局「九州経済国際化データ2015」

単位:億円

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6.海外展開における知的財産の状況 ⑫ 参考

全国のPCT(Patent Cooperation Treaty)出願の推移は、2014年はやや減少、九州では増加しているものの、全国比は1.1%と低い状況。

全国の商標マドプロ出願(マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコール))の推移は、2012年をピークに減少傾向、2014年に増加に転じるもピークには届いていない。九州も同様に2013年に大幅に減少するも、2014年には増加に転じているが全国比は3.4%と低い状況。

県別では、福岡県が圧倒的に多い。

※PCT出願 : ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度。 ※商標マドプロ出願 : 2015年12月現在の加盟国(締約国)は97ヶ国に達しており、その中から商標権を取得したい国を指定して1つの国際出願を行う事によって「複数国へ出願 するのと同等の効果」を得ることができるという非常に便利な制度。 ※意匠の国際出願に関してはハーグ協定(ジュネーブ改正協定)に基づく。

35

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7.中小企業の海外展開における知的財産活動の課題

【手続き関係】 ・申請手続きの煩雑さ(ノウハウ、専門家) →申請手続きが難しい。 →細やかな点等コミュニケーションが取れない。 →日本独自の成分・専門用語などは説明が難しい。 ・各国の商習慣、手続き等の差違 →国によって商習慣・手続き・審査基準が違う。 ・タイムロス(手続きに要する時間) →申請してから認可されるまで時間がかかる。 【予算関係】 ・コスト(初期コスト、維持費) →お金がかかる、更新費等維持ができない。 (コンサル費が高い。翻訳費が高い。) →中小零細は出願の煩雑さよりも、弁理士費用で断念するケースが多い。 →補助金は中小零細では採択されにくい現状がある。 →国内事業が安定していないため、経営を圧迫する可能性がある。 ・知的財産権をいつ手放すか(維持費をかけ続けることの限界、価値ある間 に売りたい) →高い維持費を払い続けることができない、高く売れるうちに手放したい。 【知的財産権取得の有無】 ・知的財産権取得によるデメリット(知財取得による弊害) →知的財産権を取得したことにより類似品が横行し、申請している間に先 を越された。 ・知的財産権取得しなかったことによるデメリット(模倣品被害、冒認商標被 害) →知的財産権を取得しなかったことで模倣品被害や冒認商標被害にあっ た。

【人材】 ・留学生等の有効的な活用方法(言葉の壁、信頼性の確保、知り合う きっかけ) →採用したい気持ちはあるが、言葉の問題、知り合うきっかけ等の 障壁がある。 ・採用していた外国人材が技術を習得した後に、退職し起業。ライバ ル会社となった。 ・地方や田舎は募集しても応募が少ない。 ・中小零細は、社長が自ら対応するケースが多く、経営の傍らで充分 な対応ができない。 【その他】 ・知的財産戦略の立て方(なぜ、いつ、どこで、どのようにして) →知的財産戦略の必要性の理解、どの段階で、ノウハウは。 ・販路拡大(市場規模、継続性) →ターゲットの規模、一過性ではなく継続して取引(販売等)するの か。 ・各種支援施策や支援機関がわからない。どのような施策があるのか も知らない ・従業員の知財に関する知識・意識の低さ。

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TOTO 株式会社では

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【手続き関係】 ・特許に関しては、原則としてまず国内で出願し、その後「工業所有権の保護に関するパリ条約」に基づき、海外に出願している。 ・手続きは、主に国内特許事務所を活用している。 ・タイムロスの対策としては、以下の3点により権利化までの期間短期化を図っている。 ①海外出願の必要性を国内出願から早期(6ヵ月以内)に特定する。 ②審査請求制度がある国では、出願時に審査請求手続きを行う。 ③PPH(特許ハイウェイ)制度を活用し、海外審査を促進する。 【予算関係】 ・一部の国では国内特許事務所を介さず、現地特許事務所に直接依頼する等で、コスト低減を図っている。 ・各権利について、3年毎に要否を判断し、技術が陳腐化したものや事業に貢献しなくなったものについては権利維持を中止し、維持費の節減を図っている。 【知的財産権取得の有無】 ・リスクの高い国では毎月第三者の商標出願をウォッチし、必要都度該当国の当局に異議申立てを行い、登録を拒絶してもらう等の対応をしている。 【人材】 ・コミュニケーション能力は、採用選考の中で見極めている。 ・技術流出については、「外国籍人財だけの問題ではない」と考え、権利化(特許出願)の推進と秘匿化(営業秘密管理)の徹底 を図ることで、競争優位性の確保・向上に努めている。 【その他】 ・知的財産戦略については、当社の知的財産センターが定期的に、研究・開発部門と「パテント推進会議」を開催し、方針策定・ 成果 確認および対策立案を行うことで、PDCAで回している。 ・海外出願に関しては、「海外出願のためのアウトライン」を設定し、①事業性、②権利の強さ、③知的財産環境を勘案し、出願 の要否を決定している。 ・最新の知財情報については、主に各国特許庁・国内外特許事務所等から入手している。 ・当社のみで解決が難しい問題については、官庁(経済産業省、特許庁)に相談している。

「成功事例」

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8.成功のポイント ①

中小企業の海外進出において、近年の海外市場の成長性や技術力の向上等を検討し、グローバル戦略を立てるためには、「事業化」、「知財権化」、「標準化」の3つのキーワードが重要。

➀「事業化:Industrialization」海外事業として推進する事業の確立 ②「知財権化:Intellectual property」海外展開する技術の維持、技術の確保 ③「標準化:Standardization」海外展開する技術の解放、商品の普及

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グローバル戦略

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8.成功のポイント ②

はだかの王様にならないためには・・・・。

善く戦うものは、勝ち易きに勝つ者なり:孫子「兵法」より 事前にことの成り行きを想定し、それに対する戦略を準備しておき、自然と成功に至る流れに持っていく。緩やかな川の流れのように、乱れず流れるまま成功に至る。

守り

攻め

知的財産権化戦略:唯一無二の知的財産を守るために

事業化戦略:海外展開を確実に実行するために 標準化戦略:製品の普及を図り幅広く販売するために

グローバル戦略

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リーダーシップ

パートナーシップ

アライアンス

※ニーズの把握、販路開拓等

※事業化ノウハウ

※知的財産権取得

失敗事例:最初の段階で知財化をせず、商品の普及を図り販売に力を入れていた。商品の売れ行きは順調に推移し始めたが、同時にチャイニーズ、コリアン等の安価な類似品が出回り、当該商品の評判が落ちてしまった。慌てて商標登録しようとしたら先に商標を登録されており、自社商標を変更せざるを得なくなってしまい、同時に売れ行きが落ちてしまった。

成功事例:自社製品を海外展開するにあたり、まずは知財化について実施した。商品の付加価値を高めるために商標は大事な財産であると認識。商品の売れ行きが伸びるとともに、商品名が浸透してゆき、新たな取引に繋がった。

失敗事例:外国人留学生をエンジニアとして採用し、重要な技術開発部門に配置。海外展開においては語学力等を活かして販売展開も手がけてもらった。売上げも順調になってきた時に、採用していた外国人が全員辞め、自国で会社を設立。当社の技術と取引先を全て取られてしまったが、採用時に役務の禁止事項を提示しておらず、更に海外での特許も取得しておらず、 自社の売れ筋製品を取られてしまった。

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8.成功のポイント ③:知的財産権化

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事業の形態、事業分野、商品(サービス)分野等でケースバイケースだが、 ① 商標権は必須。 ② 知的財産権として公表した上で、独占権を取得するのか、技術・ノウハウをブラックボックス(秘匿)化するのかは、事業の形態から見極める。

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8.成功のポイント ④:知的財産権化

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知財迷子にならない ・相談したいときに対応できる窓口があること、気軽に相談できる体制があること等を幅広く知る。 ・自社の知的財産とは何なのかを明確にする。 ※「知らなかった」をなくす。

迷子になっている例

知的財産に関する知識がないし、考えるのも面倒なので最初から取得を諦めている。

以前は支援してくれる機関がある事を知らなかった。特許に関するセミナーに行って初めて知った。弁理士という職業も知らなかった。 自分で申請しないといけないと思っていた。

うちは田舎にあり、近くに相談できるところが無い。県に知的財産相談窓口があり、遠方でも出張してくれると最近知った。

支援機関があることは知っていたが、何を支援してくれるのか知らなかった。 一度、商標の件で悩んだ時に電話しようと思ったが相談すると料金がかかると思って止めた。

当社の商品は、市場によくある物なので、知的財産を取得するような物ではない。

●自社は、「知的財産と無関係」と思わず、少なくとも<商標>に関しては取得しておきたい ●権利を取ることだけが知的財産ではない ブラックボックス化するノウハウ(営業機密)も知的財産

今は忙しく、資金も無いので、その内、申請すればいいと思っている。

知 的 財 産 っ て特許のことですよね。

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8.成功のポイント ⑤

A.海外事業における「知財権化」「標準化」の検討 「知的財産権化」して技術を維持・確保するのか、「標準化」して技術の解放・商品の普及をするのか検討する。 知的財産権化する場合は、模倣品被害の対策になる一方、デメリットとして時間とコストがかかる。また商品を標準化した場合は、早期普 及が望めるが、知的財産権化が遅れると模倣品被害、冒認商標被害等の危険がある。

B.コスト管理・人材管理と育成 特許を取得するにあたって大きな課題として挙げられている、「資金面」について充分に検討する必要がある。特に海外は翻訳を含めて 費用が大きくなり、登録までに欧州で200~300万円程度、米国で150~200万円程度、アジア圏で100万円程度を考えておく必要がある。 また、事業の先行きと次年度以降の更新や維持費まで考慮したコスト管理が重要。コスト管理に合わせて、人材の管理と育成も重要と なる。現地スタッフの採用や円滑なコミュニケーションを保てる語学力なども成功のキーワードとなる。

C.信頼できる支援機関・弁理士等・仲介業者の選定 今回の調査では、特許申請手続きの煩雑さが大きな課題として挙げられている。特に初めての場合は、支援機関や弁理士等の利用が 必要不可欠である。信頼できる支援機関や弁理士の選定が重要である。また、海外事業における成功は、信頼できる仲介機関や仲介 業者の存在が成功要因のひとつとなっている。海外展開を推進していく上で、良きビジネスパートナーの選択も重要。

D.情報収集 海外展開を進める上で、事前の情報収集は必須といえる。その国の情勢や商習慣の違い、海外のニーズ情報、特許申請情報などを把 握し、カントリーリスクを減らすことが肝要である。 また、知的財産に関する情報、日系企業の海外進出状況・事例や展開後の模倣品に 関する情報も収集しておきたい。

E.タイミング <コストにおける事業計画>にも関わるが、商品を海外に出すタイミングについても、重要な判断となる。また、申請をするタイミングと、 時には権利を手放すタイミングの判断も重要。

F.大手との共同開発は、共同開発者に任せるケース 独自の技術ではなく、大手企業や大学などと共同開発した中小企業においては、その権利や管理を任せているケースがある。これは、 販路を見越した戦略であるケースと、大きな課題のひとつである「資金・費用」の問題が、特に中小企業を悩ませているため、そのリスク を負わない手段として用いられているケースである。

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成功のポイント

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8.成功のポイント ⑥ ※成功事例ⅰ 〔特許〕、〔業務技術提携、直接貿易、間接貿易〕 : 本多機工株式会社

【会社概要】 代表者名:代表取締役社長 龍造寺 健介 所 在 地:福岡県嘉麻市山野2055 従業員数:153名 資 本 金: 9千万円 事業内容:ポンプの設計、製造、開発、販売 昭和24年:本多機工商会を創立。資本金50万円。 昭和26年:本多機工株式会社に改組。初代社長に本多初義就任。 福岡市中央区薬院にてポンプ製造開始。 昭和37年:大阪出張所を開設。 昭和40年:東京出張所及び東京サービス工場を開設。 昭和57年:アメリカのコーベ社 (現在はWeir Specialty Pumps) とロトジェットポンプ (高圧ポンプ) の技術提携。 昭和63年:インドのポンプメーカーとOEM化を図る。 海水淡水化装置用のエネルギー回収装置の特許取得。 平成12年:ドイツのディフティング社と販売技術提携。 MCスラリーポンプをドイツより輸入、販売を開始。 平成15年:福岡県産炭地域産業創造研究開発事業開始。 マイクロバブルの研究開発。 平成17年:代表取締役社長に龍造寺健介就任。 平成18年:スペインのモンプレッサ社とメンテナンス契約を結ぶ。 平成19年:ものづくりフェアー出展‐マイクロナノバブル装置(BUSP型)。

【事業概要】 オーダーメイドで産業用特殊ポンプの製造をしており、取引先は世界60ヶ国以上。 創業から現在まで自動車、鉄鋼、石油化学、水処理、発電等の分野に事業を拡大、「工場の心臓」と呼ばれるポンプ(主に産業用特殊ポンプ)を作り続けている。 大手企業が嫌煙するような顧客の要望(樹脂やタイヤのゴムの原料である高粘度、高温度液状の酸素に触れると接着剤のようになる流体を輸送する特殊ポンプ)に対しても高い技術力で答える。 ラテックスポンプの分野では、世界シェア50%を誇るグローバル・ニッチトップ企業。

【グローバル人材の活用のきっかけ】 将来的な国内市場の衰退を危惧し、海外への販路拡大を考えていた時、ある大学の教授から博士課程を取得したチュニジア人を紹介。初めて外国人を受け入れたが、大変優秀な人材であり、語学力を活かして海外販路を開拓。予想以上に業績アップに貢献してくれたため、社内においてグローバル人材採用への理解が深まり、以後も積極的に外国人社員を採用している。 グローバル人材の採用により、社員が自主的に英会話教室へ参加したり、留学生社員(博士号取得)を部下に持つ日本人上司が、再度、専門分野の博士号を取得する等、社員のキャリアアップへのモチベーションにも繋がり好影響を与えている。 【同社独自の制度(のれん分け)】 外国人社員の離職によるリスクを新たなビジネスチャンスの拡大に繋げる「のれん分け」制度を推奨している。定年まで自社で勤めるのではなく、知識やノウハウを学んだ後は、独立し、自国での代理店設立を促している。以前社員であったチュニジア人と中国人は、帰国・独立し、現在は自社ポンプを扱う海外代理店として活躍中。外国人が独立・起業を支援してくれる社風が留学生に口コミで広まり、留学生向け就職企業説明会では、多くの優秀な人材が同社ブースを訪れている。 【知財における展開】 平成17年以降、自社の知財関係の実績は無く、意図的に国際特許は取得していない。特許取得による情報の開示のデメリットが特許取得によるメリットより大きいと感じているため。特許を申請するということは、海外の競合メーカーに対して、情報を公開することであり、製品の核となる技術はオープンにしないことから、企業戦略として技術を「ブラックボックス化」したり、製品を分割して特許取得する等工夫している。また、自社の3分の1程の価格で模倣品販売している企業もあるが、製品の不具合があまりにも多く、結果としてお客様は自社回帰している。

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グローバル人材と「のれん分け」制度を 活用して、海外60ヶ国に展開

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8.成功のポイント ⑦ ※成功事例ⅱ 〔特許〕、〔直接投資、直接貿易〕 : 株式会社西部技研

【50周年を節目として、持続的成長を前提とした100年企業を目指す。 100年企業=優良国際企業(EGC)】

会社概要 代表者名:代表取締役社長 隈 扶三郎 所 在 地:福岡県古賀市青柳3018‐3 従業員数:210名(正社員のみ、他にパート・アルバイト40名) 資 本 金:1億円 事業内容:空調機、除湿器の製造販売 沿革 昭和36年 :創業者隈利實が九州大学工学部研究室勤務のかたわら隈研究 所設立 昭和40年 :株式会社西部技術研究所設立 昭和47年 :株式会社西部技研に改める 昭和49年 :コルゲーションの製法及び連続形成機完成により全熱交換器、 除湿機を製品化 昭和59年 :活性シリカハニカムを使ったデシカント除湿機の商品化 昭和60年 :スウェーデンDST社と提携 昭和63年 :アメリカ市場参入、台湾市場参入 平成元年 :ドイツ、クラフタンラーゲン社と技術提携 平成5年 :スウェーデンDST社買収、ヨーロッパ17ヶ国に販売代理店設置 平成9年 :隈利實死去、隈智恵子社長就任 平成13年 :アメリカに子会社設立 平成14年 :隈扶三郎社長就任 平成19年 :中国に子会社設立 平成27年で会社設立50年に至る

海外進出のきっかけ 創業者は大学の研究室から創業した、いわば『大学発ベンチャー』、高い技術力で業務用全熱交換器除湿機分野で工業の発展と共に業務を拡大し、国内シェアトップ。 早くから海外展開も行ってきたが、国内市場は既に飽和状態のため海外市場に軸足を移す。国内の場合は、資本金や財務内容など厳しいチェックをクリアしないと取引してくれないが、海外では、製品が優れていれば買ってくれる、技術で勝負できる。

最近の動向 2000年前後までは、空調メーカーやセットメーカー向けに部品として治める供給

が中心だったが、納入先メーカーの動向に影響を受けることもあったため、自社ブランドの最終製品提供に方針を転換。 その結果、除湿機の中核部品である除湿ローターから、除湿カセット、除湿ユニットへと製品構成を拡大、最近は、ドライルームの設計や、機器のメンテナンスまで裾野が広がっている。

知財における展開 西部技研の強みは技術力、起業間もない頃に、大企業との共同研究という名目でアイデアを出しながら、製品化する前に横取りされた事があり、アイデアをいち早く権利化して防衛することに力を入れることになった。 全ての技術(周辺特許を含む)を社外の弁理士事務所に頼んでいては莫大なコストがかかることから、自社で弁理士を雇い、自社で知財を管理する体制にした。 特許室は2.5人だが、社員210名の内、研究開発部隊は30人、常に総売上の5%を研究開発投資に振り分けている。 中小企業には珍しく、国際学会への論文発表を重視、高い技術力をアピールすることで、市場を開拓している。 知財管理の一方で、製品を加工する技術、製造装置は内製化し、ノウハウの流失を防止している。(特許技術をまねても、製品にする加工技術がないと製品はできない、重要な顧客から要請があっても製造装置は見せない) 人材の育成 ヨーロッパ、アメリカ、韓国、台湾、中国、東南アジア、中近東、アフリカなどの代理店は30社に達する。 国によって市場にフィットする設計デザインがあるはずなので、それぞれの仕様に合わせた設計デザインが出来るように体制を整えている。 それぞれの国の学会で、それぞれの国出身の社員が発表出来れば、市場効果は大きい。 国際市場で戦う上では、日本人社員のグローバル化も必要、社費による英会話講座、半年間の海外出張(年1名)、海外取引先でのインターンシップを実施している。(当社は創業50周年を迎えたが、グローバル企業として100年を迎える事を目指し、社長自ら経営目標を社員に発信している)

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8.成功のポイント ⑧ ※成功事例ⅲ 〔商標〕、〔直接投資、直接貿易〕 : 株式会社林久右衛門商店

【自然の恵みとひとの技が織りなす伝統の味を世界に届ける】

久右衛門ブランドを世界に発信し、 係わる全ての人を倖せにする。

会社概要 代表者名:代表取締役 林 剛一郎 所 在 地:福岡県福岡市麦野5-23-17 従業員数:90名 ※2015年4月現在(パート・グループ会社含む) 資 本 金:1千万円 事業内容:各種削り節、だしパック、即席お吸物等ギフト・グロッサリー商品の 製造・加工・販売 沿革 明治18年 :初代久右衛門が三重県四日市市で鰹節問屋を創業 昭和34年 :福岡工場を本社に株式会社 林久右衛門商店設立 昭和47年 :かつおパックの製造に着手、その後だしパック等商品拡充 平成9年 :林剛一郎 代表取締役社長就任・久右衛門お吸物発売 平成22年 :林剛一郎 全国削り節工業協会副会長就任 平成25年 :海外事業始動開始 平成27年で創業130年に至る

海外進出のきっかけ 創業130年の老舗鰹節製造メーカー。鹿児島県は枕崎の鰹節をはじめ、厳選さ

れた原料を調達し、高付加価値のかつおパックやお吸物等加工品を製造販売する。「久右衛門ブランドを世界に発信し、係わる全ての人を倖せにする」というミッションの具体化に寄与するプロジェクトとして、2013年初頭に海外事業を設立。1年半に及ぶ調査の後、国内外における体制づくり、現地パートナー提携(EU)を行い、和食材の普及活動と自社販路開拓を開始した。 最近の動向 現在、➀自社商品の流通構築、②枕崎フランス鰹節生産施設建設プロジェクト参画、③海外WEBサイト及びEC(Eコマース)の構築の3つの事業戦略の元、海外展開を実施している。特に②の枕崎を中心とした参画企業10社にて(株)枕崎

フランス鰹節を設立し、フランスに鰹節工場を建設するプロジェクトは、今後の業界におけるグローバル化と和食材の可能性を広げる重要な取り組みと位置づけている。伝統食「鰹節」を通して、海外へ和食文化(伝統食)の良さを伝えると同時に、国内消費者へも再びアピールしていきたい。 知財における展開 「久右衛門」のロゴで国際商標を取得している。福岡市内の国際特許事務所の弁理士さんを通じて手続きを行った。知財面では手続きの難しさとコスト面の問題(初期コスト、継続費用等)があるが、世界で展開していく上で、商標の必要性について、理解が出来た。現在はEU全般で取得。今後、進出して行く国毎に商標を取得する予定。

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8.成功のポイント ⑨ ※成功事例ⅳ 〔特許〕、〔直接投資、業務・提携、直接貿易、間接貿易〕 : 日本磁力選鉱株式会社

【次代の技術を開拓する先駆者であり続ける】 会社概要 代表者名:代表取締役 原田 光久 所 在 地:福岡県北九州市小倉北区馬借3-6-42 従業員数:400名 資 本 金:4億4,860万円 事業内容:選鉱事業、鉄鋼原料等加工販売事業、非鉄金属関連 リサイクル事業、環境関連 リサイクル事業、資源リサイクル機器事業、プラント販 売事業、住宅関連事業 沿革 昭和24年:会社設立 鉄片分離機1号機納入 昭和26年:磁力選鉱機器の製造販売開始 昭和30年:平炉スラグ処理開始 昭和38年:新型振動篩発明 平成13年:アルミニウムリサイクル事業開始 平成19年:宝鋼集団有限公司との合弁会社「上海開拓磁選金属有限公司」設立 平成24年:レアメタル及び貴金属濃縮回収設備完成 平成25年:小型家電リサイクル事業者認定取得

海外進出のきっかけ 昭和28年にフィリピンの鉱山開発で使用する磁力選別機を輸出したことがス

タート。以後、アジア、ロシア圏を中心に展開。近年は韓国、中国、更にはインド、東南アジア諸国への展開を進めている。 海外拠点は、韓国の合弁会社「韓国MATICS」において磁力選鉱機器の製造販売を行っているほか、平成19年に設立した中国「上海開拓磁選金属有限公司」にてステンレススラグリサイクル事業を実施している。 最近の動向 平成20年、ソニー(株)、北九州市が協働で開始した小型電子機器類回収実証実験に参画。 平成23年3月にNEDOの「希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業」に採択され、ひびき工場にパイロットプラントを建設し、実証実験を経て平成24年5月から小型家電リサイクルの営業運転を開始している。 国内の市場は飽和状態にあるため、自社の技術・装置の市場開拓や技術協力は海外に向けて展開していかなければと思っている。

知財における展開 基本的には特許で武装している。昭和25年に交流磁選機の特許を取って以来、国内特許37件を保有。現在、国内特許2件出願中。海外特許は4件保有しており、現在、4件出願中。 国内の特許は問題ないが、中国に関しては特許が守られないケースがあるなど、役に立たないことが多い。戦略的には技術指導者がいないと動かないような仕組みにして、ノウハウで逃げるような対応をしている。 特許に関する課題としては、特許の維持に費用がかかることや権利侵害の防止対策などがあげられる。 今後も、これまでどおり基礎試験や実証試験で得られた知見をもとに開発した装置や手法について特許を取得していく方針。

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8.成功のポイント ⑩ ※成功事例ⅴ 〔商標〕、〔直接投資、業務技術提携、直接貿易〕 : 重光産業株式会社

会社概要 代表者名:代表取締役社長 重光 克昭 所 在 地:熊本県熊本市東区戸島町920-9 従業員数:100名 資 本 金:6,400万円 事業内容:麺、スープの製造、味千ラーメンFC主宰 沿革 昭和47年 :当社を設立、大津工場において、生麺、調味料、スープ等の製造 をすると共に「味千ラーメン」と銘打って、チェーン店を募集し組織 化を開始 平成元年 :戸島工場を新設し、大津工場を閉鎖、戸島工場へ移転 平成6年 :台湾台北に海外1号店を出店(合弁) 平成7年 :中国北京に1号店出店(合弁) 平成8年 :香港1号店出店(合弁) 平成9年 :シンガポールFC出店 平成12年:フィリピンFC出店 平成13年:ニューヨークFC出店 平成14年:フィリピンFC出店、インドネシアFC出店 平成16年:アメリカ・ロサンゼルスFC出店、オーストラリア・メルボルンFC出店 平成17年:カナダ・トロントFC出店 平成19年:マレーシア クアラルンプールFC出店 平成21年:韓国ソウルFC出店、国内106店舗、海外447店舗 平成23年:ベトナム出店、国内98店舗、海外652店舗 平成26年:カンボジア出店 平成27年:国内85店舗、海外687店舗(平成27年12月現在)

海外進出のきっかけ 先代の社長が台湾出身であったため、いつかは台湾に出店したいという思いか

ら、最初は平成6年に台湾に出店した。その後、熊本県の招聘事業で香港の実業家が視察に訪れた際に、味千を気に入り、それを契機として香港を中心に海外出店を進め、現在では、海外12カ国687店舗展開し、「熊本ラーメン原点の味、味千ラーメン」を世界中に広げている。 最近の動向 新工場(熊本県菊陽町)を2016年3月に着工して、再来年には本社工場を移転する予定。 国内で出店していない地域(日本海側)にも出店したい。ここ数年、国内店舗は減少気味。 地域の旗艦店となるような直営店を出して、フランチャイズ展開を図っていく。また、法人経営のパートナーがいれば、一緒にやっていきたい。 留学生(中国)は、現在4名正社員として勤務している。全員学生の時にアルバイトを経験し、正社員になっている。今後も機会があれば留学生を採用していきたい。出店地域の言語が使えることが望ましく、特に英語ができる人材がほしい。 今後の海外展開については、2016年2月にモンゴルへ出店予定。また、アメリカでは現在13店舗展開中であるが、100店舗を目指している。

知財における展開 実績としては、世界12カ国で商標を各2~3件取得している。 課題としては、出願してから登録までの期間が長いこと。 オーストラリアでは、商標を取得する前に味千ラーメンのキャラクターを使用されていたため、訴訟になったが、結局そのお店の使用を中止することができなかった。日本や他国での使用実績を出すようにしているが、どうしても後追いで対応するしかない。今後の方針としては、顧問弁理士から、著作権を取得しておくと訴訟の際に有利になるという提案を受けている。 また、最近傘下に入った桂花ラーメンも今後海外進出を進めていこうと考えているため、その出店に伴う商標の取得等のコストがかかる見込みである。 47

【九州の味、熊本生まれ、世界の味千ラーメン】

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8.成功のポイント ⑪

<事例A社> 意図的に国際特許は取得していない。特許取得による情報の開示の方がデメリットを感じているため。海外の競合メーカーに対して、核と なるところはオープンにしない。

<事例B社> 出願の年間での費用を計算して考えないといけない。今は、少しでも多くの出願を出しているが、今後は質まで考えて出さないといけな いと思っている。

<事例C社> 戦略的には技術指導者がいないと動かないような仕組みにしている。

<事例D社> 海外案件については、国内の公的機関や専門機関を経由せず、直接海外の専門機関にコンタクトを取っている。理由としては、国内の機 関を利用すると、伝言ゲームのようになり時間と手間を要するため。(自社の技術を直接自分の言葉で説明することが大事)

<事例E社> ビジネスパートナーとなる商社、現地の日系企業、現地パートナーなどが整っていると話がまとまりやすい。

<事例F社> 知的財産に関する情報をJPネットと契約して収集している。国内情報は検索して、それらを情報共有している。

<事例G社> 基本方針として、新機種は海外に出荷していない。トラブル回避のため、国内で2年程度の運用実績を積んだ機種に限定している。

<事例H社> 大手企業との共同開発(特許をとる場合)は、「不実施」を宣言し、ロイヤリティのみを受け取るスタイルにしている。開発費、特許費用、維 持費は相手企業に払ってもらう。自社でまかなうにはお金がかかりすぎる。主要国に特許を出すと1000万かかる。

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9.知的財産活動支援における今後の取組

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手続きに関する課題

<支援・取組み案/施策方向性> 海外進出支援ネットワークの構築、スキルアップセミナー等の開催、弁理士、弁護士等専門家の紹介、派遣、海外進出マニュアル等の整備

予算・資金に関する課題

<支援・取組み案/施策方向性> 外国出願支援事業や各種補助金・助成金の紹介、必要な翻訳業者・弁理士・弁護士等を探す手段の構築、さまざまなアドバイスを行う支援機関のPR ★駆け込み寺がどこにあるのかわからない状態を無くす工夫 →誰でもアクセスしやすいHPキーワードの設定等(例、商標、困ったで検索→アクセス可)

知的財産権取得の有無に関する課題

<支援・取組み案/施策方向性> 弁理士・弁護士等専門家とのマッチング、模倣品相談窓口、弁理士・弁護士等の紹介、スキルアップセミナーの開催 ★事前の対策が万全であればある程良い知的財産対策→事前に相談する相手の確保

人材に関する課題

その他の課題

<支援・取組み案/施策方向性> 初心者向け知的財産セミナーの開催、展示会・商談会への出展支援、ビジネスマッチングサイトの紹介

知財迷子にならない・つくらない

<支援・取組み案/施策方向性> SNSやWebシステムを使った留学生と中小企業等とのマッチング事業 マッチング・インターンシップ・定着支援事業 留学生就職支援事業 九州の産業構造、ビジネス思想、文化を学ぶ機会の提供 社内の管理体制構築 従業員による情報流出防止策(雇用契約、秘密保持の従業員徹底)契約終了措置、退職後の秘密保持義務等 ★グローバル人材としての外国人留学生の活用への理解を深めることが重要

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10.支援機関 の支援内容 ➀

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<URL>http://www.inpit.go.jp/index.html

<URL>https://www.jetro.go.jp/

工業所有権情報・研修館(INPIT)について 産業財産権制度を利用される事業者や広範な国民の皆さまが必要とする、特許等の産業

財産権情報の提供サービス、相談窓口等による情報提供と支援サービス、知的財産の戦略

的活用に関するサービス、知的財産人材の育成を支援するサービスを提供。

主な支援

●調べる・特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の提供・閲覧用機器による高度な検索・閲覧・内外国で発行された意匠公報や商標公報等の閲覧

●活用する・海外知的財産プロデューサーによる支援・ライセンス可能な開放特許情報の提供・知的財産プロデューサーの派遣・広域大学知的財産アドバイザーの派遣・グローバル知財戦略フォーラムの開催

●相談する・産業財産権に関する相談・営業秘密や知財戦略に関する相談・電子出願に関する相談

●育てる・特許庁の審査官、審判官、事務官の育成支援・特許審査の先行技術の下調査を担うサーチャーの育成・検索エキスパート研修(上級・意匠)・審査基準討論研修(特許・意匠)・IP・eラーニング教材の提供・知的財産権研修(初級)・知的財産に関する創造力・実践力・活用力開発事業・パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト

日本貿易振興機構(JETRO)について 日本の貿易促進と対日直接投資に関する事業の総合的な実施と、開発途上国地域の総合

的な調査研究を通じて、諸外国との貿易拡大および経済協力を促進し、日本の経済・社会

のさらなる発展を目指す。

主な支援 ※2015年 4月現在

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10.支援機関 の支援内容 ②

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<URL>http://chizai-portal.jp/

<URL>http://www.smrj.go.jp/kyushu/index.html

知財総合支援窓口について 中小企業等が経営の中で抱えるアイデア段階から事業展開までの知的財産に関する悩み

や相談を、窓口支援担当者がワンストップで受け付け(全国 57 カ所に設置)。

窓口支援担当者が、ヒアリングを通じて経営課題を把握し、その課題に対応した知的財産

活動を無料で提案。

主な支援

●知財の基礎力アップ支援・知的財産意識の動機付け・知的財産権制度の概要説明・各種支援施策等の紹介・説明

●経営を支える知財戦略支援・事業化プランの策定支援・知的財産戦略策定支援・類似技術等の調査支援・研究開発テーマの選定支援・ライセンス契約、技術移転等支援・模倣品・侵害訴訟対応支援

●権利取得の支援・特許情報プラットフォーム(JPlatPat)の検索指導・特許明細書骨子構築支援・特許出願などの手続き支援・海外展開支援

中小企業基盤整備機構について 中小企業や地域社会の皆様に多彩なサービスを提供することを通じ、豊かでうるおいのあ

る日本を作るために貢献する。

主な支援

●国際化支援アドバイス・窓口及び登録アドバイザーによる相談または情報提供(何度でも無料)・出張アドバイス(同じ国を目指す企業が3社以上集まることが条件。何度でも無料)・海外現地でのアドバイス(国内でアドバイスを受けていることが条件。何度でも無料)・海外現地への同行アドバイス(審査あり。企業の一部費用負担あり)

●海外ビジネス戦略推進支援事業※平成27年度の内容・国内での海外事業計画策定支援(必須)・海外での現地調査支援・海外向けWebサイト構築支援・物流・決済体制構築支援

●海外展開セミナー・セミナー・個別相談会開催・イベント、勉強会への講師派遣

●J-GoodTech(ジェグテック)・ニッチトップやオンリーワンなど日本の優良企業の技術・製品情報を国内大手メーカーや海外企業に向けて発信、展示会でのリアルのマッチングや仲介サポートも加えて紹介し、世界を変えるイノベーションを起こすきっかけとなることを目指すウェブマッチングサイトです。

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11.知的財産セミナーの開催結果 ①

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開催日時 : 平成28年2月19日(金) 13時30分~16時30分 開催場所 : 福岡合同庁舎新館3F共用大会議室(福岡市博多区博多駅東2-11-1) 参加人数 : 120名 開催内容 : 「海外展開における成功の秘訣~知的財産・高度海外人材による課題解決のためのアプローチ~」 1.主催者あいさつ(13:30~13:40) 九州経済産業局 国際部長 大久 幸昭 2.基調講演(13:40~14:30) TOTO 株式会社取締役 常務執行役員 成清 雄一 氏 「~TOTOグループの知財× 人財戦略~」 3.調査結果報告及び問題提起(14:30~14:50) 株式会社プリミティブ・ドライブ リサーチ・プランニング部 部長 木原 将希 氏 4.施策のご紹介(14:50~15:00) 福岡県知財総合支援窓口 知財トータルサポーター 佐々木 賢 氏 <15:00 ~ 15:10 休憩> 5.パネルディスカッション(15:10~16:30) ※質疑応答時間を含む 「海外展開における知的財産及び高度海外人材の獲得と活用」 <モデレータ> 横山 研治 氏 (立命館アジア太平洋大学[APU] 教授) <パネリスト> 成清 雄一 氏 (TOTO 株式会社 取締役 常務執行役員) 隈 扶三郎 氏 (株式会社西部技研 代表取締役) 龍造寺 健介 氏 (本多機工株式会社 代表取締役社長) 秋葉 隆充 氏 (日本貿易振興機構JETRO 知的財産・イノベーション部 総括課長代理) 佐々木 賢 氏 (福岡県知財総合支援窓口 知財トータルサポーター)

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11.知的財産セミナーの開催結果 ②

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<基調講演> 「TOTOグループの知財・人財戦略」 講師:成清 雄一氏 (TOTO 株式会社 取締役 常務執行役員) 1. TOTOグループの概要 2. 知財戦略 3. 人材戦略 4. Region No.1思想

<パネルディスカッション> 「海外展開における知的財産及び高度海外人材の獲得と活用」 モデレータ: 横山 研治 氏(立命館アジア太平洋大学[APU] 教授) パネリスト: 成清 雄一 氏(TOTO 株式会社 取締役 常務執行役員) 隈 扶三郎 氏(株式会社西部技研 代表取締役) 龍造寺 健介 氏(本多機工株式会社 代表取締役社長) 秋葉 隆充 氏(日本貿易振興機構JETRO 知的財産・イノベーション部 総括課長代理) 佐々木 賢 氏(福岡県知財総合支援窓口 知財トータルサポーター) 1. 海外展開における知的財産について 2. 海外人材の獲得と活用 3. 海外展開を検討している企業に向けてのアドバイス

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【お問い合わせ先】 経済産業省 九州経済産業局国際部 国際企画調査課 〒812-8546 福岡市博多区博多駅東2-11-1 電話:092-482-5428 URL http://www.kyushu.meti.go.jp/

株式会社 プリミティブ・ドライブ 〒810-0041 福岡市中央区大名2-8-18 電話:092-735-1077