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経済産業省委託事業 平成29年度経済連携促進のための産業高 度化推進事業(日インドネシア経済連携協 定に係る裾野産業振興事業) 報告書 平成30年2月28日 日鉄住金総研株式会社 経済産業調査部

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経済産業省委託事業

平成29年度経済連携促進のための産業高

度化推進事業(日インドネシア経済連携協

定に係る裾野産業振興事業)

報告書

平成30年2月28日

日鉄住金総研株式会社 経済産業調査部

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目次

はじめに ~調査の背景と目的~ ........................................................................................ 1

1.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業との連携の可能性(加工食品用中間

材料) ................................................................................................................................... 3

(1)現状 ........................................................................................................................ 3

① 農水産品の生産 ................................................................................................... 3

② 加工食品の国内市場 ............................................................................................ 6

③ 加工食品の輸出 ................................................................................................... 8

④ 加工食品の生産 ................................................................................................. 13

⑤ 加工食品用中間材料の供給と調達 .................................................................... 16

(2)日本企業との連携の可能性 .................................................................................. 17

① 有望インドネシア企業の発掘 ........................................................................... 17

② マッチングの可能性が見込める日本企業の探索 ............................................... 26

2.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業との連携の可能性(肥料) ........... 28

(1)現状 ...................................................................................................................... 28

① インドネシアにおける肥料生産・消費状況 ...................................................... 28

② 政策 ................................................................................................................... 30

(2)日本企業との連携の可能性 .................................................................................. 31

① 有望インドネシア企業の発掘 ........................................................................... 31

② マッチングの可能性が見込める日本企業の探索 ............................................... 32

3.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業との連携の可能性(建設用鋼材加工)

............................................................................................................................................ 36

(1)現状 ...................................................................................................................... 36

① インドネシアにおける鉄鋼消費の位置づけ ...................................................... 36

② インドネシア鉱業における鉄鉱石生産の実情 .................................................. 37

③ インドネシアにおける鋼材の生産消費構造 ...................................................... 39

④ 間接輸入とサプライチェーン ........................................................................... 41

⑤ 建設用鋼材の生産と消費 .................................................................................. 42

⑥ 鋼材のサプライチェーン .................................................................................. 44

検討の方針 ................................................................................................................... 47

(2)日本企業との連携の可能性 .................................................................................. 48

① 建設工法について ............................................................................................. 48

② 有望インドネシア企業の発掘 ........................................................................... 49

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③ マッチングの可能性が見込める日本企業の探索 ............................................... 51

4.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業との連携の可能性(工業団地) .... 52

(1)現状 ...................................................................................................................... 52

① セイマンケイ経済特区 ...................................................................................... 52

② インドネシアのパームオイル産業の現状 ......................................................... 76

(2)日本企業との連携可能性の検討(有望インドネシア企業の発掘) ...................... 86

5.裾野産業分野における日尼企業のマッチングに向けた取り組み ................................ 95

(1)マッチングイベントの開催 .................................................................................. 95

(2)結果概要 ............................................................................................................... 97

6.日本企業から見たインドネシア進出の課題 ............................................................... 101

(1)日本企業が指摘する課題 .................................................................................... 101

① インドネシア進出における日系企業の課題 .................................................... 101

② 企業ヒアリング ............................................................................................... 103

(2)日尼企業の連携促進に向けたインドネシアの取組み ~Inodnesia Investment &

Business Forumでの報告より~ ................................................................................... 107

① 東京開催について ........................................................................................... 107

② 名古屋開催について ........................................................................................ 113

7.裾野産業における日尼企業の連携推進に向けて ....................................................... 117

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1

はじめに ~調査の背景と目的~

世界第 4 位となる人口 2 億 5 千万人の巨大市場を要するインドネシア市場を目指し、す

でに自動車・電機等の産業分野において多くのアセンブリーメーカが進出しているが、そ

の急速な発展に技術移転が追い付かず、ASEAN 周辺諸国と比較しても質・量ともに裾野産

業が十分に発達できていない。

かかる状況のもと、インドネシア政府は裾野産業振興にプライオリティを置き、その具

体的な取り組みについては我が国へ協力を求めている。体力のあるアセンブリーメーカで

あれば人材育成等にも取り組めるものの、中小企業がメインプレイヤーとなる裾野産業で

は現実的には厳しく、製造メーカーに対する現地調達率が引き上げられたこともあり、進

出日系企業にとっても本件は喫緊の課題となっている。

そこで、日尼経済連携協定に基づく貿易及び投資の促進のため、日・インドネシア双方

において自動車・電機分野のみならずインドネシアに興味を持つ全ての企業を対象とした

セミナーを開催し、インドネシアの投資環境の PR を行うとともに、インドネシアにおける

裾野産業振興政策、地方開発、人材育成に関するセミナー及びマッチングイベントを開催

した。

本調査ではインドネシア工業省との意見交換も踏まえて、日系企業との協業シナジーの

見込まれる加工食品用中間材料、肥料、建材加工、工業団地の 4 分野を対象に調査を実施

した。各分野とその対象地域の選定理由は以下の通りである。

加工食品中間材料

対象地域:西ジャワ州、中部ジャワ州、東ジャワ州

選定理由:インドネシアでは農産物が豊富に取れるが、未加工のまま輸出される場

合が少なくない。そのため、食品加工技術を有する日系企業により一次産品を加工

することで農産物の付加価値を高められないか調査を実施した。対象地域について

は、日系企業が多く進出している西ジャワ州、食料品製造と飲料製造企業が多い中

部ジャワと東ジャワを選定した。

肥料

対象地域:南スマトラ州パレンバン

選定理由:ジョコ政権では、食糧自給の達成に向け国内農業に対し政策的支援を講

じており、その一環として、政府は国内肥料生産も拡大していく方針である。イン

ドネシアで主に流通する窒素系肥料の原材料となる天然ガスに対し、現在は肥料生

産向けに補助金が給付されており、低価格に仕入れることが出来ているが、本補助

金が今後も継続されるかは不透明である。こうした状況の下、肥料生産を確実に拡

大していくために、日本企業の協業の可能性について検討した。対象地域について

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は、国営肥料企業グループ Pupuk Indonesia の中でも大規模工場を有する PUSRI

の拠点があること、天然ガスに代替する原材料として可能性のある低品位石炭が豊

富に採掘されることから、パレンバンを選定した。

建設用建材加工

対象地域:西ジャワ州

選定理由:インドネシアでは建設業界が鋼材需要の 大需要家で 78%を占めている。

さらに鋼材が 2 次加工された製品の輸入も多く鋼材消費の 15%に達している。一方

で同国は工業化・都市化が進行中であるが地震や火山など日本に似た国土環境にも

あり、鋼構造建設を初めとした建設技術・防災技術と、そのために必要な鋼材加工

技術を日本から導入して国内製造することを支援することで同国の発展に寄与でき

るものと考えた。対象地域としては、有力なファブリケーターが多数立地している

西ジャワ地区を選定した。

工業団地

対象地域:北スマトラ州セイマンケイ

選定理由:現在のジョコウィ政権は、国内 大の島で、アセアンの中心に位置し、

マレーシア及びシンガポールに近いスマトラ島を重点的に開発していく方針であ

る。、その中でもセイマンケイ工業団地は、スマトラ島 大の都市(人口 219 万人)

であり北スマトラ州の州都メダンにほど近く北スマトラの豊富なパーム椰子、ゴム

のプランテーションに囲まれている、政府が も開発に力を注いでいる工業団地の

一つである。今後のインドネシアの成長の中心を担っていく可能性もある同地域に

位置する工業団地であり、、日本企業の進出可能性や、現地企業との連携可能性に繋

がるような調査を実施した。

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1.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業

との連携の可能性(加工食品用中間材料)

(1)現状

以下では、まずインドネシアの①農水産品の生産、②加工食品の国内市場、③加工食品

の輸出、④加工食品の生産、について概観する。そして、インドネシアの食品産業にとっ

ての大きな課題である、加工食品メーカーが 終製品を生産するために調達する中間加工

を施した原材料、調味料や食品添加物などの⑤加工食品用中間材料の供給と調達、につい

て、当社が実施した企業ヒアリング調査の結果を中心にその課題を述べていくこととする。

① 農水産品の生産

インドネシアの農業生産は、その国土の広さと多様性から多彩なものとなっている。農

業形態は、ジャワ島中心の小規模な農業(コメ、キャッサバ中心でコメの総生産量の 6 割

はジャワ島)と、スマトラ島等の外島中心の商品作物(オイルパーム、天然ゴム等)の栽

培に区分される1。また世界的にもインドネシアが有数の産地となっている農作物も多い。

2016 年のデータを見ると、食糧作物である米、キャッサバ、フルーツ類(バナナ、柑橘

類、マンゴー、パイナップル、パパイヤ)、主に輸出向けの商品(エステート)作物(オイ

ルパーム、ココナッツ、コーヒー豆、茶、カカオ豆)そして香辛料・ハーブ類(チリ、胡

椒、シナモン、ナツメグ、メイス、カルダモン、クローブ、バニラ)と、多様な農作物に

ついて生産量が世界トップクラスである点が、他の国・地域には見出しにくいインドネシ

アの農業の特徴といえる。とりわけオイルパームは世界全体の 5 割以上、クローブは 8 割

弱とインドネシアの生産量は圧倒的なシェアを占めている(表 1、表 2)。

1 農林水産省「インドネシアの農林水産業概況」平成 29 年 7 月 3 日更新 http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/k_gaikyo/idn.html

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表 1 主要農作物の生産量(2016 年)(1/2)

出所:The Food and Agriculture Organization (FAO), FAOSTAT Database より日鉄住金総研作成

表 2 主要農作物の生産量(2016 年)(2/2)

1,000トン

1 中国 209,503 ナイジェリア 57,134

2 インド 158,757 タイ 31,161

3 インドネシア 77,298 ブラジル 21,083

4 バングラディシュ 52,590 インドネシア 20,745

5 ベトナム 43,437 ガーナ 17,798

6 ミャンマー 25,673 コンゴ民主 14,678

7 タイ 25,268 ベトナム 11,045

8 フィリピン 17,627 カンボジア 10,207

9 ブラジル 10,622 アンゴラ 9,981

10 パキスタン 10,412 モザンビーク 9,100

世界計 740,961 世界計 277,103

米 キャッサバ

1,000トン

1 インドネシア 160,135.8 インドネシア 17,722.4 ブラジル 3,019.1 中国 2,401.8 コートジボワール 1,472.3

2 マレーシア 86,325.3 フィリピン 13,825.1 ベトナム 1,460.8 インド 1,252.2 ガーナ 858.7

3 タイ 12,081.9 インド 11,127.9 コロンビア 745.1 ケニア 473.0 インドネシア 656.8

4 ナイジェリア 7,817.2 ブラジル 2,649.2 インドネシア 639.3 スリランカ 349.3 カメルーン 291.5

5 コロンビア 6,762.4 スリランカ 2,520.1 エチオピア 469.1 トルコ 243.0 ナイジェリア 236.5

6 エクアドル 3,124.1 ベトナム 1,470.0 ホンジュラス 362.4 ベトナム 240.0 ブラジル 213.8

7 カメルーン 2,701.7パプアニューギニア

1,191.4 インド 348.0 インドネシア 144.0 エクアドル 177.6

8 ガーナ 2,443.0 メキシコ 1,157.5 ペルー 277.8 ミャンマー 102.4 ペルー 107.9

9パプアニューギニア

2,379.7 タイ 815.4 グアテマラ 236.1 アルゼンチン 89.6 ドミニカ 81.2

10 グアテマラ 2,103.4 タンザニア 555.8 ウガンダ 203.5 日本 80.2 コロンビア 56.2

世界計 300,252.2 世界計 59,010.6 世界計 9,221.5 世界計 5,954.1 世界計 4,466.6

茶 カカオ豆オイルパーム(果実) ココナッツ コーヒー豆(生)

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出所:The Food and Agriculture Organization (FAO), FAOSTAT Database より日鉄住金総研作成

さらに、インドネシアはその海域の広さ、資源量の豊富さから海面漁業、養殖業も世界

的に盛んな地域である。2014 年のデータを見ると、海面漁業漁獲量、養殖生産量は共に世

界第 2 位であり、特に藻類の養殖については中国に次ぐ第 2 位の生産量であり世界全体の 4

割弱を占めている(表 3、表 4)。なお養殖生産量の多くを占める藻類は、食品添加物や工

業用のゲル化剤などとして用いられるものが中心であり、乾燥させて原料出荷の形で主に

欧米に輸出されている2。

表 3 海面漁業漁獲量(2014 年)

出所:FAO「世界漁業・養殖漁業白書 2016」より日鉄住金総研作成

2 山尾政博(広島大学)「インドネシア水産加工業の動向に関する調査報告」 (http://home.hiroshima-u.ac.jp/~yamao/syokumotu/doko.pdf)

1,000トン

1 中国 17,435.4 インドネシア 91.3 インド 38.0 インドネシア 139.5 マダガスカル 2.9

2 メキシコ 2,737.0 中国 77.1 グアテマラ 35.5 マダガスカル 20.8 インドネシア 2.3

3 トルコ 2,457.8 ベトナム 35.5 インドネシア 31.0 タンザニア 8.9 中国 0.9

4 インドネシア 1,961.6 スリランカ 16.9 ネパール 6.4 スリランカ 5.0 メキシコ 0.5

5 スペイン 1,082.7 マダガスカル 2.5 ラオス 3.1 コモロ 2.7パプアニューギニア

0.5

6 米国 921.2 東チモール 0.1 ブータン 2.6 ケニア 2.1 トルコ 0.3

7 ナイジェリア 746.2 グレナダ 0.1 グレナダ 2.5 中国 1.2 ウガンダ 0.2

8 エジプト 637.8サントペプリンチプ

0.1 タンザニア 0.8 マレーシア 0.2 トンガ 0.2

9 アルジェリア 596.7 ドミニカ 0.1 スリランカ 0.6 グレナダ 0.04 仏領ポリネシア 0.02

10 チュニジア 437.0 コモロ 0.02 ホンジュラス 0.5 レユニオン 0.02

世界計 34,497.5 世界計 223.6 世界計 122.2 世界計 180.5 世界計 7.9

バニラチリ、胡椒(生) シナモン ナツメグ、メイス、カルダモン クローブ

1,000トン

1 中国 14,811

2 インドネシア 6,017

3 米国 4,954

4 ロシア 4,001

5 日本 3,630

6 ペルー 3,549

7 インド 3,419

8 ベトナム 2,711

9 ミャンマー 2,702

10 ノルウェー 2,301

世界計 81,549

海面漁業漁獲量

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表 4 養殖対象グループ別生産量(2014 年)

出所:FAO「世界漁業・養殖漁業白書 2016」より日鉄住金総研作成

しかしこうしたインドネシアの農林水産業の現状に対し、(1)2000 年代の政治的民主

化・地方分権化の進展を背景に、ジャワ島と外島との経済的格差是正のために外島のエス

テート作物開発を重視する政策がとられている、(2)中でも収益性の高いパーム油につい

ては、その生産・輸出拡大のために農園開発の支援や輸出税削減などが行われ、急速な商

業的農業の拡大が地域住民との紛争や環境問題を招いているほか、一次産品輸出への依存

が国際価格の変動による国際収支の悪化のリスクを高めている、といった指摘もみられる3。

加えて、今回の事業で実施した企業ヒアリング調査によると、インドネシアで生産され

ている豊富な農産品に着目して現地からの原材料調達を試みた日本企業から、①「農協に

相当する公的団体がなく、原材料を安定的に仕入れることが難しい」、②「ジャワ島は小規

模農家が小さい農地で作っているため産業的に仕入れることが困難」、③「主に華僑の財閥

系の大企業が農園から製造、流通まで一貫して、自前で行うことが多く、分業制の発想が

無い」、という指摘もあった。

② 加工食品の国内市場

インドネシアにおける加工食品の売上推移を見ると、2010 年から 2015 年まで増加して

おり、今後も続伸すると予測されている(図 1)。特に「米、パスタ、麺」は加工食品全体

の売上高の約 4 割を占めており、2020 年には 1.7 倍まで成長すると予測されている。この

傾向を踏まえると、加工食品に使用される調味料、スパイス、香辛料、機能性食品素材な

どの需要も今後増えていくと考えられる。

3 伊藤紀子(農林水産省農林水産政策研究所)「インドネシアにおける商業的農業の拡大」(Primaff Review No.80, 2017.1 所収)http://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/171128_pr80_03.pdf

1,000トン

内水面養殖 海面/沿岸養殖

1 中国 26,029.70 1,189.70 13,418.70 3,993.50 839.5 45,469.00 13,326.30 58,795.30

2 インドネシア 2,857.60 782.3 44.4 613.9 0.1 4,253.90 10,077.00 14,330.90

3 インド 4,391.10 90 14.2 385.7 … 4,881.00 3 4,884.00

4 ベトナム 2,478.50 208.5 198.9 506.2 4.9 3,397.10 14.3 3,411.40

5 フィリピン 299.30 373 41.1 74.6 … 788 1,549.60 2,337.60

6 バングラデシュ 1,733.10 93.7 … 130.2 … 1,956.90 … 1,956.90

7 韓国 17.20 83.4 359.3 4.5 15.9 480.4 1,087.00 1,567.40

8 ノルウェー 0.10 1,330.40 2 … … 1,332.50 … 1,332.50

9 チリ 68.70 899.4 246.4 … … 1,214.50 12.8 1,227.40

10 エジプト 1,129.90 … … 7.2 … 1,137.10 … 1,137.10

世界計 43,559.30 6,302.60 16,113.20 6,915.10 893.6 73,783.70 27,307.00 101,090.70

魚類 その他の水生動物

軟体動物 甲殻類 水生動物計 藻類計 養殖生産量計

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図 1 インドネシアにおける加工食品売上(2015 年まで実績、2016 年から予測)

出所:Agriculture and Agri-Food Canada 資料より日鉄住金総研作成

インドネシア人の一人あたりの食料品への月間支出額の推移をみても、加工食品の占め

る割合は増加しており、1998 年から 2016 年の間に都市部は約 15%から約 35%へ、農村部

は 10%弱から 20%強に達している。具体的な消費額も 1998 年時点では都市部、農村部と

もに月間一人当たり 1 万ルピアにも満たなかったのが、2016 年には都市部は約 18 万ルピ

ア、農村部は約 8 万ルピアにまで増加している。農村部については依然として伸びしろは

大きく、インドネシアの加工食品産業にとって有望な市場として重要度を増していくもの

と思われる。

図 2 インドネシア人の月間一人当たり支出額(加工食品)

出所:BPS - Statistics Indonesia のデータより日鉄住金総研作成

これらの加工食品の流通経路としては伝統的な小売店が大半であるが、近年の経済成長

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

200,000

199820002001200220032004200520062007200820092010201120122013201420152016

支出額(都市) 支出額(農村)

食料品支出総額に占める比率(都市) 食料品支出総額に占める比率(農村)

ルピア %

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に伴ってインドネシア国内ではスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの近代的

な流通産業のチェーン店舗網が拡大している(図 3)。しかしながら、これらの産業を支え

る冷凍・冷蔵倉庫や低温輸送に対応した物流業者などのコールドチェーンはタイやマレー

シアなどに比べて未整備であり、インドネシアでは高速道路が整備されたジャカルタ‐ス

ラバヤ間など一部地域を除き、総じて農水産品の鮮度を保ちながら消費地に大量輸送する

ことが容易ではないことが指摘されている4。

図 3 インドネシアの流通業態別販売額シェアの推移

出所:Euromonitor データより日鉄住金総研作成

③ 加工食品の輸出

貿易統計の HS コードの第 4 部「調整食料品、飲料、アルコール、食酢、たばこ及び製

造たばこ代用品」に該当する第 16 類~第 24 類を「加工食品」と定義し(表 5)、インドネ

シア等の輸出動向を見た。

まず ASEAN 主要国の加工食品の輸出額の推移をみると、タイが他の国々を大きく上回

りながら推移していることがわかる。タイの輸出額は 2000 年代に入ってから急激な勢いで

伸び、2012 年には輸出額は 200 億ドル近くにまで拡大している。これは同年のインドネシ

ア、マレーシアの 4 倍弱、ベトナム、フィリピンの 5 倍以上の規模に相当する。タイの輸

出額は以後やや減少するが、それでも 170 億ドル近い規模であり他の 4 カ国を大きく引き

離している。インドネシアの輸出額については 90 年代前半には微小であったものの、着実

に額を伸ばし続け、2016 年には約 60 億ドルとマレーシアとほぼ並び、大きく引き離され

てはいるもののタイに次ぐ ASEAN 第 2 位の輸出国となっている(図 4)。

4 JETRO「主要国・地域におけるコールドチェーン調査 結果報告」(2013 年度調査) http://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/pdf/bunya1.pdf

87.1

86.2

84.9

83.7

83.5

82.9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2011

2012

2013

2014

2015

2016

コンビニエンスストア/ミニマーケット

ハイパーマーケット

スーパーマーケット

伝統的小売店

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表 5 「調製食料品、飲料、アルコール、食酢、たばこ及び製造たばこ代用品」

(HS コード第 4 部)の内容

第 16 類 肉、魚又は甲殻類、軟体動物若しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品

第 17 類 糖類及び砂糖菓子

第 18 類 ココア及びその調製品

第 19 類 穀物、穀粉、でん粉又はミルクの調製品及びベーカリー製品

第 20 類 野菜、果実、ナットその他植物の部分の調製品

第 21 類 各種の調製食料品

第 22 類 飲料、アルコール及び食酢

第 23 類 食品工業において生ずる残留物及びくず並びに調製飼料

第 24 類 たばこ及び製造たばこ代用品

出所:財務省「輸出統計品目表」(2018 年1月版)

図 4 ASEAN 主要国の加工食品の輸出額推移(1989 年~2016 年) 出所:UN Comtrade より日鉄住金総研作成

加工食品の品種別に輸出額の構成をみると、ベトナム、タイは「肉、魚又は甲殻類、軟体

動物若しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品」が、フィリピンは「野菜、果実、ナット

その他植物の部分の調製品」が 大の加工食品の輸出品であるのに対し、インドネシアと

マレーシアは「ココア及びその調製品」の比率が大きい。さらにインドネシアはフィリピ

ンと並び「たばこ及び製造たばこ代用品」の比率が高いことも特徴となっている(図 5)。

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

2015

インドネシア

マレーシア

フィリピン

タイ

ベトナム

million USD

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10

図 5 ASEAN 主要国の加工食品の品種別輸出額比率(2016 年、2015 年)

出所:UN Comtrade より日鉄住金総研作成

この加工食品の品種別の輸出額を、インドネシアについて 1989 年から 2016 年の推移で

みると、2000 年代に入るまでの加工食品の輸出は「ココア及びその調製品」と「たばこ及

び製造たばこ代用品」が中心であったのが、その他の品種、特に「肉、魚又は甲殻類、軟

体動物若しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品」、「穀物、穀粉、でん粉又はミルクの調

製品及びベーカリー製品」、「各種の調整食料品」、「食品工業において生ずる残留物及びく

ず並びに調製飼料」が大きく拡大したことによって、加工食品全体の輸出額の伸びに繋が

ったことが分かる(図 6)。

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

インドネシア(2016)

マレーシア(2016)

フィリピン(2016)

タイ(2016)

ベトナム(2015)

肉、魚又は甲殻類、軟体動物若しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品

糖類及び砂糖菓子

ココア及びその調製品

穀物、穀粉、でん粉又はミルクの調製品及びベーカリー製品

野菜、果実、ナットその他植物の部分の調製品

各種の調製食料品

飲料、アルコール及び食酢

食品工業において生ずる残留物及びくず並びに調製飼料

たばこ及び製造たばこ代用品

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11

図 6 インドネシアの加工食品の品種別輸出額の推移(1989 年~2016 年)

出所:UN Comtrade より日鉄住金総研作成

さらに2016年におけるインドネシアの加工食品の品種別の輸出額を、輸出先別にみると、

日本向けが輸出先の 5 位以内に登場するのは「肉、魚又は甲殻類、軟体動物若しくはその

他の水棲無脊椎動物の調製品」(第 2 位、全体の 12.7%)、「野菜、果実、ナットその他植物

の部分の調製品」(第 4 位、同 5.9%)のみであり、日本は輸出先としての地位はさほど高

いものではない。 大の輸出先として登場するのは米国(「肉、魚又は甲殻類、軟体動物若

しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品」、「ココア及びその調製品」、「野菜、果実、ナッ

トその他植物の部分の調製品」)、中国(「穀物、穀粉、でん粉又はミルクの調製品及びベー

カリー製品」)、フィリピン(「糖類及び砂糖菓子」、「各種の調製食料品」、「飲料、アルコー

ル及び食酢」)、オランダ(「食品工業において生ずる残留物及びくず並びに調製飼料」)、カ

ンボジア(「たばこ及び製造たばこ代用品」)である。また全体を見るとフィリピンをはじ

めとする ASEAN 諸国が上位の輸出先として多く登場している(表 6)。

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015

たばこ及び製造たばこ代用品

食品工業において生ずる残留物及びくず並びに調製飼料

飲料、アルコール及び食酢

各種の調製食料品

野菜、果実、ナットその他植物の部分の調製品

穀物、穀粉、でん粉又はミルクの調製品及びベーカリー製品

ココア及びその調製品

糖類及び砂糖菓子

肉、魚又は甲殻類、軟体動物若しくはその他の水棲無脊椎動物の調製品

million USD

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12

表 6 インドネシアの加工食品の品種別・輸出先別輸出額(2016 年)

出所:UN Comtrade より日鉄住金総研作成

上段:1,000USドル、下段:%

1 2 3 4 5

米国 日本 サウジアラ ビア 英国 オランダ 世界計

471,750 122,307 57,199 48,760 27,583 962,486

49.0 12.7 5.9 5.1 2.9 100.0

フィリピン 米国 ベトナム タイ 韓国 世界計

54,290 37,133 24,466 15,915 12,155 224,522

24.2 16.5 10.9 7.1 5.4 100.0

米国 マレーシア ドイツ 中国 インド 世界計

253,423 245,949 114,680 68,240 46,094 1,239,621

20.4 19.8 9.3 5.5 3.7 100.0

中国 マレーシア ベトナム フィリピン タイ 世界計

182,132 119,789 81,293 51,088 47,768 813,613

22.4 14.7 10.0 6.3 5.9 100.0

米国 オランダ スペイン 日本 シンガポール 世界計

64,133 24,372 18,226 14,430 13,972 243,430

26.3 10.0 7.5 5.9 5.7 100.0

フィリピン マレーシア シンガポール サウジアラ ビア ベトナム 世界計

347,891 108,156 92,533 59,977 39,950 949,010

36.7 11.4 9.8 6.3 4.2 100.0

フィリピン 東チモール シンガポールパプアニューギ

ニアタイ 世界計

47,868 27,175 25,777 19,918 6,551 177,638

26.9 15.3 14.5 11.2 3.7 100.0

オランダニュージー

ランド韓国 ベトナム 中国 世界計

138,778 89,879 84,765 77,526 32,599 555,139

25.0 16.2 15.3 14.0 5.9 100.0

カンボジア マレーシア シンガポール ベトナム タイ 世界計

279,935 228,380 100,497 49,219 37,172 1,009,506

27.7 22.6 10.0 4.9 3.7 100.0

食品工業において生ずる

残留物及びくず並びに調

製飼料

たばこ及び製造たばこ代

用品

肉、魚又は甲殻類、軟体

動物若しくはその他の水

棲無脊椎動物の調製品

糖類及び砂糖菓子

ココア及びその調製品

穀物、穀粉、でん粉又はミ

ルクの調製品及びベーカ

リー製品

野菜、果実、ナットその他

植物の部分の調製品

各種の調製食料品

飲料、アルコール及び

食酢

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13

④ 加工食品の生産

国際連合工業開発機関(UNIDO)のデータによると、食料品・飲料製造業(以下「食品

工業」)の生産額は 2015 年で 864.8 億ドルとなっている。これは同年のマレーシアの 1.5

倍、フィリピンの 3.3 倍、2011 年のタイの 1.6 倍、2012 年のベトナムの 2 倍の規模であり、

インドネシアの食品工業の規模は ASEAN の中では 大クラスであるといえる(図 7)。製

造業全体に占める食品工業のシェアを見ると、インドネシアは 28.3%と他の ASEAN の中

でも 大であり、同国の製造業において食品工業は他の ASEAN 主要国よりも重要度が高

い分野であることが伺える(図 8)。

また近年の生産額の動向をみると、2000 年時点で 100 億ドル程度であった生産額はその

後ほぼ右肩上がりに成長を続け、2014 年には約 900 億ドルと約 9 倍の規模に達している。

2015 年は前年に比して約 30 億ドルのマイナス成長となったものの、他の ASEAN 主要国

に比して同期間におけるインドネシアの食品工業の成長のスピードは顕著であるといえる

(図 9)。

さらにインドネシア中央統計庁のデータによると、企業数(従業員数 100 人以上の大型

企業、同 20 人以上 99 人以下の中型企業の合計)は 2013 年で食料品製造業が 5,795 社、飲

料製造業が 367 社、両社を合わせた食品工業は計 6,162 社であり、製造業全体の約 1/4 を

占める(表 7)。州別にみると、食料品製造業も飲料製造業も、他の業種と同様にジャワ島

に多く集中している。ただし、自動車や電子機器に関連する製造業が首都ジャカルタ近隣

の西ジャワ州に多く集中しているのに対し、食料品製造業と飲料製造業は中ジャワ州、東

ジャワ州での立地が相対的に多いものとなっている(図 10)。

図 7 ASEAN 主要国の食品工業の生産額

出所:UNIDO Statistical Database より日鉄住金総研作成

86,486

57,110

25,990

53,850

41,743

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

Indonesia(2015) Malaysia(2015) Philippines(2015) Thailand(2011) Viet Nam(2012)

million USD

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14

図 8 ASEAN 主要国の製造業の分野別生産額比率

出所:UNIDO Statistical Database より日鉄住金総研作成

図 9 ASEAN 主要国の食品工業の生産額推移(2000 年~2015 年)

出所:UNIDO Statistical Database より日鉄住金総研作成

28.3

20.6

25.6

18.5

22.2

6.1

0.2

2.7

0.8

1.0

0.5

15.8

11.9

2.3

4.0

14.5

8.1

7.3

5.9

6.1

2.9

17.8

18.4

12.4

10.5

5.7

4.0

8.1

13.8

2.7

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

Indonesia(2015)

Malaysia(2015)

Philippin(2015)

Thailand(2011)

Viet Nam(2012)

Food and beverages Tobacco products

Textiles Coke,refined petroleum products,nuclear fuel

Chemicals and chemical products Rubber and plastics products

Non‐metallic mineral products Basic metals

Office, accounting and computing machinery Motor vehicles, trailers, semi‐trailers

Others

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

Indonesia

Malaysia

Philippin

Thailand

Viet Nam

million USD

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15

表 7 インドネシアの工業系大中型企業の企業数(2013 年)

(注)大型企業:従業員数 100 人以上、中型企業:従業員数 20 人以上 99 人以下

出所:インドネシア中央統計庁(http://www.bps.go.id/)データより日鉄住金総研作成

図 10 インドネシアの工業系大中型企業の企業数の業種別、地域別構成比(2013 年) 出所:インドネシア中央統計庁(http://www.bps.go.id/)、同西ジャワ州支部(http://jabar.bps.go.id/)、

同中ジャワ州支部(http://jateng.bps.go.id/)、同東ジャワ州支部(http://jatim.bps.go.id/)の各デー タより日鉄住金総研作成

食料品製造業

飲料製造業

たばこ製造業

織物製造業

衣服製造業

皮革及び関連製品製造業

材木、木製品

及びコルク製

品製造業(家

具を除く。)わ

ら及び編み物

素材製品製造

紙及び紙製品

製造業

印刷業及び記録媒体複製業

コークス及び精製石油製品製造業

化学品及び化学製品製造業

基礎医薬品及び医薬調合品製造業

ゴム及びプラスチッ

ク製品製造業

5,795 367 866 2,287 2,075 671 1,067 477 533 72 978 236 1,72924.5 1.5 3.7 9.7 8.8 2.8 4.5 2.0 2.2 0.3 4.1 1.0 7.3

その他の非金属鉱物製品製造業

第一次金属製造業

金属製品製造業(機械器具を除

く。)

コンピュータ、電子製品、光学製品製造業

電気機器製造業

他に分類されない機械器具製造業

自動車、トレーラ及びセミトレーラ製造業

その他の輸送用機械器具製造業

家具製造業

その他製造業

機械器具修理・設置業

合計

1,581 306 958 351 333 364 366 315 1,284 602 85 23,698 上段:企業数

6.7 1.3 4.0 1.5 1.4 1.5 1.5 1.3 5.4 2.5 0.4 100.0 下段:構成比

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

食料品製造業

飲料製造業

たばこ製造業

織物製造業

衣服製造業

皮革及び関連製品製造業

材木、木製品及びコルク製品製造業(家具を除く。)…

紙及び紙製品製造業

印刷業及び記録媒体複製業

コークス及び精製石油製品製造業

化学品及び化学製品製造業

基礎医薬品及び医薬調合品製造業

ゴム及びプラスチック製品製造業

その他の非金属鉱物製品製造業

第一次金属製造業

金属製品製造業(機械器具を除く。)

コンピュータ、電子製品、光学製品製造業

電気機器製造業

他に分類されない機械器具製造業

自動車、トレーラ及びセミトレーラ製造業

その他の輸送用機械器具製造業

家具製造業

その他製造業

機械器具修理・設置業

合計

西ジャワ

中ジャワ

東ジャワ

その他地域

17.4 14.8 29.7

25.9 9.0 21.5

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16

⑤ 加工食品用中間材料の供給と調達

加工食品メーカーが 終製品を生産するために必要な、中間加工を施した原材料、調味

料や食品添加物など(以下「加工食品用中間材料」)の調達には課題が多いと言われる。以

下では現地で実施した日系企業を対象としたヒアリング、及び国内で実施した日本企業を

対象としたヒアリング調査より、インドネシア国内での加工食品用中間材料の調達環境に

ついての意見を整理した。

加工食品用中間材料の調達には問題が無い、という意見も見られたが、「輸入した方が安

い」、「品質が低くて調達できない」といった課題を指摘する意見の数が上回る。その要因

としては、品質管理などの技術力が低い、フリーズドライ品などを生産するために必要な

設備投資ができないといったローカルメーカーの問題だけでなく、「華僑の財閥系の大企業

が農園から製造、流通まで一貫して、自前で行うことが多いため、分業制になってない」

というインドネシア経済の構造的な問題も指摘されている。華僑系の大企業は、日系企業

が取引できる水準の技術力、資金力を有するところも少なくないが、上記の指摘のように

自前主義が強いため、とりわけ中小企業が容易に取引できる相手ではない。さらに、「制度

的に輸入品が使えない」という、インドネシア政府の国内産業保護政策による消極的な理

由で現地調達を行っている例もみられる。

なお、そもそも加工食品用中間材料を生産するための原材料の調達さえも「インドネシ

アには農協に相当する公的団体がなく、安定的に仕入れることが難しい」というインドネ

シア農業の構造的な問題を指摘する意見もあったが、現地で製造販売を行う加工食品用中

間材料メーカーは「原材料は一部の調味料を除きすべて現地で調達した」と述べており、

地域や原材料の種類によって状況は異なるものと考えられる。

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17

(2)日本企業との連携の可能性

① 有望インドネシア企業の発掘

先述したインドネシアにおける加工食品用中間材料の課題を踏まえ、日本企業と協業可

能性がある現地の有望企業を調査した。その結果、香料や食品原料成分を製造している企

業 1 社、えびせんべい・調味料・バンズを製造している企業を 1 社、香料・調味料を製造

している企業 3 社、インドネシアの伝統薬であるジャムウを製造している企業を 1 社、医

薬品を製造している企業を 1 社、計 7 社を発掘した。各社の概要を以下に記す。

1. PT. Indesso Aroma

所在地 【本社】Jl. Tanah Abang 2 No. 78 Jakarta 10150

代表者 Robby Gunawan

創業 1968 年

従業員数 約 600 名以上。約 15%が研究開発部門に所属。日本にも営業担当者 1 名

存在(個人として従事)。

事業内容 香料(アロマエッセンス、精油など)、食品原料成分(スパイス合成油脂、

植物抽出物、フルーツジュースパウダー、甘味料など)、香味料、タバコ

香料、飼料の製造・販売。

調達先 クローブオイルはマダガスカルやインドネシア(約 100,000 の農家)から

調達。マダガスカルからは 1000~1500 千トン、インドネシアからは 3000

~9000 千トン。

その他、茶はインド、着色料はペルー・フランス・イタリア・アフリカな

どから輸入。

出荷先 国内及び海外 40 カ国。

香料製品は 90%輸出。メインは米国市場(全体の 35~40%)。その他 3

分野の製品は 80%が国内向け。

【コメント】

スイスの大手香料メーカーFirmenich(1974 年)、フランスの Nexira(1980 年)、マ

レーシアの PureCircle(2012 年)、着色料の Hansen(デンマーク)、粉末チーズの

Ballantyne(オーストラリア)などと、インドネシアにおける唯一の販売代理店として

提携。なお Firmenich は日本の茨城県に工場があり、そこで当社の製品も使われてい

る。

同社は次の 3 種類に対応できる技術などを保有。(例:コーヒー)①コーヒーの香りは

するが味はしない、②コーヒーの香りはしないが味はする、③コーヒーの香りも味もす

る。

同社のクローブオイルとその派生品の世界シェアは約 60%。

天然原料(natural ingredients)は 10 種類以上取り扱っている。

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18

2. PT. Sekar Laut, Tbk

3. PT. Sumber Inti Pangan

4. PT. Borobudur Jamu

大手グローバル企業との取引が多く、日本企業とも取引実績あり。

【同社が抱えている課題や日本企業との連携の希望】

タバコ用香料も製造していることから、たばこ製造業との商談に興味あり。

タバコ以外にも連携に可能性があるならば商談に興味あり。

所在地 【本社】Jl. Jenggolo II/17 Sidoarjo 61219, Jawa Timur

代表者 Harry Sunogo

創業 1976 年

従業員数 751 名

事業内容 えびせんべい・調味料・香辛料・バンズの製造、えびの養殖

出荷先 国内及び海外 30 カ国

【課題】

ハンバーガー向けバンズの製造において、その主原料 9 品目のうち 6 品目は輸入に頼っ

ている状況。特にパン改良剤は 100%輸入(フランス等)しており、価格や在庫の面が

課題となっている。

所在地 【本社】Jalan Marsekal Surya Dharma Blok D No 10/19, Bandara Mas,

Tangerang, Selapajang Jaya, Neglasari, Kota Tangerang, Banten

15127

代表者 Gunawan Wibisono

創業 2002 年

従業員数 2,037 名

事業内容 香辛料や調味料の製造

出荷先 国内及び海外約 12 カ国

【コメント】

東京や大阪の食品展に参加経験があり、日本企業との取引実績がある。主に技術面で日

本企業との協業を希望している。

所在地 【本社】Jl. Madukoro Blok A/26 Semarang 50141

【工場】スマラン市内に2ヵ所(うち1工場は原材料からエキスを抽出し

粉末を生産する Extraction Center)

【販売代理店】インドネシア各地

代表者 Gunawan Wibisono

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19

5 インドネシアの伝統薬。市場規模は 2016 年で 12 億ドル。2017 年には 14 億ドルとなり、2018 年には

15 億ドルに達する見込み。BPOM(インドネシア国家食品医薬品監督庁)が原料を調べ、安全性を認定し

たものについては「ジャムウ・マーク」の取得が許される。

創業 1979 年

従業員数 約 500 人

事業内容 ジャムウ5、健康・美容サプリの製造

調達先 材料は 8 割から 9 割がインドネシア国内調達、1 割から 2 割が輸入。輸入

先は中国、インド、ブラジル、オランダ。

契約農家はなし。調達している原材料は 100 種類近くに及ぶ。すべて植物

由来のもので、キノコ、動物性の原材料は一切使用しない。

出荷先 国内市場が 80%、輸出が 20%。

大の輸出先はロシアであり、ロシアのメーカーの製品を OEM 生産。

第 2 位は日本であり、輸出量はロシアの半分程度。日本向けの輸出はウコ

ンの粉末であり、九州のメーカーにより加工食品として製品化されてい

る。

生産・製品 現在生産量は製品すべてで 1 カ月で計 50 トン程度。

生産している製品のブランドはカプセルタイプが 71 種類、錠剤タイプ

が 46 種類、その他ジェルやクリームなどが 13 種類、また GOLD タイ

プ(※おそらく薬効成分が多く含まれているプレミアム製品)が 2 種類。

価格はカプセルタイプがいずれも 60 個入りボトルが 55 千ルピア、100

個入りが 85 千ルピア。GOLD タイプの「Mastin Gold」(がん予防、皮

膚のアンチエイジング)が 30 個入りで 60 千ルピア、「Tongli Gold」(男

性機能増強)が同 170 千ルピア。

ハラルの製品のみを生産している。

当社が強みを持つのは、マンゴスチン、ウコン、クルクミンの製品。マ

ンゴスチン(果肉ではなく皮が原材料)は抗酸化作用、クルクミンはコ

レストロールを下げる効能がある。クルクミンはウコンに一見似ている

が別の植物であり、インドネシアでは高地でしか栽培されていない。

エキスの抽出、粉末化の工程には 10 年前からドイツ製の設備を導入。

工場では中国製、台湾製の設備も使ったことがあるが、すぐに使えなく

なるので、現在は生産設備はドイツ、日本、韓国のものを使用。

ISO9001 に加え、GMP(Good Manufacturing Practice、インドネシア

語での略号は CPOTB)の認証を受けているほか、製造管理に SAP のソ

フトウェアを導入。

【コメント】

業界を構成する主な企業としては、①Sido Muncul、②Deltomed、③Borobudur、④

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Airmancur、⑤Jamu Djago、⑥Jamu Iboe があり、当社は業界 3 位。 大の Sido Muncul

は上場企業。

1979 年に現社長の Rachmat 氏が創業。ジャムウを商う商売をしていた同氏が粉末タ

イプのジャムウしか作られていないのを見て、カプセルタイプの製品を作ってみようと

考え創業。

同社ではインドネシアで調達した材料、および海外から輸入した天然由来の原材料か

ら、蒸留工程を通じてエキスを抽出、これを乾燥させ粉末化。さらにカプセル、錠剤化

し製品として販売。

2 年前には上海の健康食品関係の展示会にも出展。

【工場見学】

工場には 125 人が勤務、うち 14~15 人は研究開発に従事。

製品の箱詰めは手作業。全員が女性。

工場内は無駄に空いたスペースが多い。今後生産規模を拡張していく予定なのかは不

明。

清掃は行き届いている。クリーンルームもある。工場内に立ち入るには帽子着用が必須。

従業員は制服着用。日本発祥の 5S を励行しており、一般的なインドネシア企業の中では

品質管理はかなり良く行き届いている印象。

<Extraction Center>

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ハーブ、香辛料の原材料からエキスを抽出し、粉末化する工場を訪問して内部を見学。

現在当工場は操業を停止中(説明によるとメンテナンスのためであり今月末には稼働を

再開させるとのこと)。

清掃が行き届いており工場内は清潔。

エキスを抽出する装置は 10年前に導入したドイツ製(Verfahrenstechnik GmbH社製)。

生産能力 2000 リットル/時が4基。隣に空きスペースがあり、将来的には 3000 リッ

トル/時×2 基と 1000 リットル/時×1 基の設備を増強する予定。

蒸留装置は 2000 リットル/時が 1 基、500 リットル/時が 1 基。500 リットル/時は

特別な装置とのこと。

混合装置の生産能力は、1500 リットル/3 時間。乾燥機は 40~50kg/時で、乾燥温度

は 50℃から 60℃。

これらの装置はすべてコンピュータで制御。また熱源は環境に配慮してヤシ殻を燃料に

したバイオボイラーを使用。

抽出装置 蒸留装置

乾燥装置 工場外観

【同社が抱えている課題や日本企業との連携の希望】

ドイツ製の抽出、蒸留、乾燥設備を保有しており、これらを用いてウコンなどの生薬から

エキスを抽出し粉末化するプロセスのみを受託することも可能。日本企業から既に生薬粉

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5. Kasaba Pratama

末の生産委託を1社受託済みだが、さらなる日本企業との取引を希望している。

所在地 【本社】Pergudangan Tritan Taman Jl. Sawunggaling No.1 Blok C9-10

Sidoarjo

【香辛料選別工場、倉庫】シドアルジョ

【タバコ工場、タバコフレーバー工場】マラン、ブリタル(工場のみ)

【ウコンなどの農場】スンバ島

代表者 Retno Mardiningsih

創業 2008 年

従業員数 3000 人以上

シドアルジョ 80 人、マラン 80 人、ブリタル 3,000 人、スンバ島 30 人

事業内容 スパイス・調味料の加工

出荷先 国内及び海外 17 カ国

香辛料の輸出先はエジプト、ドイツ、クウェート、ドバイ、スペイン、モロ

ッコ、ベトナム、タイ。米国、日本は販売実績がない。

【コメント】

香辛料を扱う商社として創業。従兄弟が経営するタバコ会社を合併し、現在は農園の経

営、タバコの生産も行う。

タバコ市場は今後縮小していくことは確実であるため、従業員の雇用確保のために新事

業への転換を検討中。その候補がこんにゃく製品(後述)。

取り扱う香辛料の取扱量は年間 600 トン(※政府への申告ベース)。

国からの支援により 2 年前から低利の融資を受けている。金額は年間 35 万 USD、利

率は通常年利 13%程度であるところを半分近い 6.25%。

【農場見学】

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視察した農場(マラン県)。種子生産のためのこんにゃくを植えてあるほか、キャッサ

バ、バニラ、建材用の木材(センゴンラウト)が植えられていた。

たばこ工場も案内されたがすでに終業であり生産している様子を見ることはできず。

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6. PT. Dexa Medica

倉庫兼選別工場(シドアルジョ県)での香辛料の天火干し(写真左上)、選別工場(写真

右上)、倉庫(写真右下)。

【同社が抱えている課題や日本企業との連携の希望】

こんにゃく芋の加工技術を持つ日本企業との連携を強く希望。

すでにこんにゃく芋の生産を、1 年ほど前から東ジャワのマラン県、ブリタル県の契約農

家への委託生産、およびスンバ島の自社農場で開始。

東ジャワの契約農家は何十軒もあり、総面積は 1,500 ヘクタール。現政権はこんにゃく

栽培をインドネシア中の農家に奨励。

現在はこんにゃく芋をスライスして天日で乾燥させたチップスを輸出のために生産す

るだけだが、これを粉末化してダイエットのためのこんにゃく麺やビスケットなど加工

食品や、化粧に用いるファンデーションなどの材料として販売できるようになることを

希望。その際にはハラールとするため生産工程においてアルコールを一切使用しない意

向。

現在こんにゃくチップスは 1 シーズンで 50 トン程度しか生産できていないが、将来的

には年間 500 トンを生産するのが目標。

所在地 【本社】Titan Center 3rd Floor, Jalan Boulevard Bintaro Block B7/B1 No.

05, Bintaro Jaya Sector 7, Tangerang 15224

代表者 Ir. Ferry A. Soetikno

創業 1969 年

事業内容 医薬品の製造

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7. PT. Natural Java Spice

出荷先 国内及び海外(ヨーロッパ、アフリカ(ナイジェリア等)、米国、シンガポー

ルなど)

【コメント】

同社はインドネシアで も大きい製薬会社の 1 つ。

インドネシア政府や民間団体から複数の表彰実績あり。

製品は国内向けが約 90%、海外向けが約 10%。

【同社が抱えている課題や日本企業との連携の希望】

日本への輸出実績はないため、今後輸出したいと考えている。

所在地 【本社】Raya Bumi Maspion 1, Kav.5 No.14, Romokalisari, Benowo,

Surabaya

代表者 Mircea Bogdan

創業 2015 年

従業員数 70 人

事業内容 香辛料の加工販売

出荷先 米国、欧州、インド、ロシア、中国、タイ、中東、ベトナム(日本へは輸入

していない)

【コメント】

経営者はもともとルーマニアで香辛料を商っていたが、ルーマニアの会社を閉鎖してア

メリカに移住、ボルチモアに会社を設立。インドネシアの当社は 2015 年に設立された。

当社以外に海外に拠点なし。

香辛料の加工のノウハウを有し、米国などへの輸出実績も豊富。

生産量は年間 4,000 トン、うち 2,500 トンを当社で粉末化して全世界に供給。ベトナム

に対しては原材料のまま輸出し、当地で当社の取引先が粉末化して世界中に輸出。

品質管理などの国際認証は取得済み。

従業員は 70 人、その大半は現場で香辛料の選別などを行う労働者。

加工のノウハウは欧州から導入。 新の加工設備を導入。ミーリングマシンは日本のホ

ソカワミクロンとドイツメーカーの合弁企業のものを使用している。2 月にはオランダ

製の除菌設備を導入する予定。

【同社が抱えている課題や日本企業との連携の希望】

前述したホソカワミクロンの設備の品質については高く評価しており、このため日本企

業との取引には関心がある。

当社と真剣に取引を考えており、相手が香辛料のプロであればという条件付きで日本企

業との協業を希望。同社は取引を開始する上では厳しい条件を設けており、取引開始の

低ロットを 1 コンテナ、12 トンとしている。

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② マッチングの可能性が見込める日本企業の探索

上記 7 社の有望企業との取引の可能性を探るため、香辛料、調味料、パン改良剤、こん

にゃく等を原料として使用している、あるいはそれらを生産している日本加工食品メーカ

ー15 社(インドネシア進出企業 5 社含む)に対し、主に①現在のインドネシア企業との取

引状況、②7 社との連携可能性またはインドネシアに対する関心、③インドネシア企業と取

引や協業する上での課題、の 3 点についてヒアリングを行った。

①現在のインドネシア企業との取引状況

現在インドネシアに進出していない 10 社(撤退企業含む)のうち、同国から原料を調達

している企業は 3 社、製品を供給している企業は 3 社であった。調達も供給もしていない

が関心がある企業は 2 社、インドネシアへ進出を検討している企業は数社、また同国を市

場として捉え今後注力したい企業も数社あり同国に対する関心の高さが伺えた。

②有望企業 7 社との連携可能性またはインドネシアに対する関心イドネシアは豊富な農産

品が取れることから、特に健康食品の原料となるようなものに注目している企業が多く、

PT. Borobudur Jamu に興味を示した企業が数社いた。

③インドネシア企業と取引や協業する上での課題

インドネシア企業からの原料調達に問題ないとの意見も見られたが、課題を指摘した企

業が上回った。その主な課題は以下のとおりである。

原料調達や現地進出の際に課題となってくるものとして、特に回答が多く挙げられたの

はハラルへの対応である。現在、インドネシアで販売されている食品などの製品は、ハラ

ル(halal)、非ハラル(non-halal)、No claim の 3 種類に分類される。国民の大半がイス

ラム教徒であるため、同国で販売するには食品飲料などの口に入るもののみならず肌に触

れるような化粧品、洗剤・シャンプーなどの日用消費財もハラル対応が必須である。ハラ

ルとして認証されるには単に豚肉やアルコールを使用しなければ良いわけではなく、製造

のプロセスなどをコーランに定める作法に則り適切に行っているか、外部調達している場

合調達先がハラル認証を取っているか、ムスリムを一定割合以上雇用しているか、礼拝の

場所を確保しているかといったこともが問題となる。また、日本でもハラル認証を発行す

る機関があるが、インドネシアの認証を取得する場合は同国の認定機関から取得しなけれ

ばならない。

さらに連携における課題として、インドネシア企業側の品質管理体制や技術力の不足が

挙げられた。有望企業として発掘した PT. Borobudur Jamu のように 5S を徹底しているイ

ンドネシア企業や、PT. Indesso Aroma や PT. Sumber Inti Pangan のように日本や海外の

大手企業と取引があり品質管理状態や技術力に問題ないと思われる企業はあるが、日本企

業へのヒアリングによるとそのような現地企業は大手であっても多くはない。インドネシ

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アへ進出を検討している企業の中には、提携相手となりそうな現地企業の工場をいくつか

見学したが、やはり日本企業が求める品質管理の水準を満たす企業が見つからず苦戦して

いるとの意見があった。現地の考え方は日本と比べラフであり、ある現地企業を見学した

日本企業によると、窓が開けっ放しの加工食品工場も見られた。このような管理状態だと

日本の基準では使用できない原料がでてきてしまうため、特に日本向けの製品を製造する

にはハードルが高い。消費者の口に入るものを扱う上で衛生管理や品質管理は重要な課題

であり、インドネシア企業はその向上が求められる。

その他の課題として、「各種の法規制が煩わしく、急な変更が多く困惑することが少なく

ない」、「インフラの未整備が気になる」などの意見があった。

今後の日尼連携に向けての提言

第 1 に、国民の約 9 割がイスラム教徒であるため、インドネシア市場へ参入する場合は

ハラル認証を取得することが重要である。さらにイスラム圏を市場と捉える場合、同国は

その巨大な市場に参入する 1 つの突破口となりうるため、日本企業にとってはインドネシ

アでハラル認証を取得し事業を行うことはメリットとなる。しかし、日本企業にとってハ

ラルはなじみが少ない上に認証までの手続き等が複雑であり、時間やコストもかかる。そ

のため、日本企業がインドネシアでハラル認証を取得する上で現地企業と協業することは 1

つのポイントとなる。また日本ではハラルに関する情報は限られているため、ハラル認証

取得に必要な手続きや情報を日本政府やジェトロ、インドネシア政府が積極的に発信して

いくことが望ましい。

第 2 に、インドネシア企業が日本企業と取引あるいは協業するためには、その品質管理

体制を向上させることが必要である。現状では中小企業はおろか、大企業も日本の水準に

満たないところが少なくない。日本企業側に協業の意思があるにもかかわらず、衛生や品

質管理の問題により、協業が困難になることはインドネシア側とって大変なデメリットで

ある。そのため先ずはインドネシア企業がしっかりとした管理体制を築くことが必須であ

る。現在、インドネシア食品・飲食業界連盟(GAPMMI)は政府と一緒に品質管理につい

て指導を行っているが、一層の強化が求められる。インドネシア政府及び GAPMMI は中小

企業及び大企業に対して、食品工場の衛生管理や品質管理のチェック及び指導をさらに強

化する必要があると思われる。

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2.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業

との連携の可能性(肥料) (1)現状

① インドネシアにおける肥料生産・消費状況

インドネシアにおける肥料の生産、消費、及び輸出入量の動向について以下に示す。消

費量が 2010 年に一度大きく落ち込んだが、生産量、消費量、輸入量は 2002 年以降増加傾

向にあり、インドネシアにおける肥料市場は拡大していることが把握できる。この背景に

は、政府の肥料生産に対する政策的支援がある。インドネシアでは食糧自給達成に向け、

国内農業に対する政策的支援を講じており、その一環として肥料増産にも取り組んでいる。

しかし、国内の肥料需要に生産が追い付かず輸入にも頼っている状況で、輸入量は増加傾

向にある。(表 8)

表 8 インドネシアにおける肥料の生産、消費、輸出入動向

※単位:1,000 トン

出所:FAO STAT より日鉄住金総研作成6

次に、肥料の 3 要素(窒素 N、リン酸 P2O5、カリ K2O)別に 2014 年時点インドネシ

アにおける肥料の生産、及び消費量を見る。各要素の主な効果としては、窒素には、作物

の葉を茂らせ、枝や茎を形成する作用、リン酸には苗や実の生育を促進する作用、カリに

は根や茎を丈夫にして球根を太らせる作用がある。生産については、窒素系肥料が全体の

6 窒素系、リン酸系、カリ系肥料の各成分トンを合算 2010 年のカリ系肥料消費量データがないため、前年度と同量の消費量であると仮定する。

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年生産 2229.3 2646.4 2627.3 3220.7 3116.0 3297.1 3537.9 4142.6 4043.6 4096.3 4403.8 4251.6 4271.6消費 2489.2 2938.1 3236.4 3303.9 3397.3 3992.1 4188.8 4286.7 3283.8 4662.8 5203.8 5159.7 5448.9輸出 520.2 580.0 200.0 311.7 26.0 322.7 98.1 250.2 502.5 401.7 536.1 729.5 618.5輸入 608.0 546.5 845.5 824.8 973.9 1158.7 1692.8 766.1 1553.2 2475.5 2423.0 2056.3 2818.6

0.0

500.0

1000.0

1500.0

2000.0

2500.0

3000.0

0.0

1000.0

2000.0

3000.0

4000.0

5000.0

6000.0

輸出(右軸)

輸入(右軸)

生産

消費

※単位:1,000トン

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約 86%を、消費については全体の約 54%を占めており、インドネシアにおける肥料生産、

及び消費は窒素系肥料が中心であることが分かる(表 9、表 10)。

更に窒素系肥料の生産動向を見ると、2002 年時点 1,975 千トンから、2014 年時点約 1.9

倍である 3,680 千トンと大きく生産量を伸ばしている。しかし、国際市場で見ると未だ規

模は小さく、生産量 1 位の中国と 2 位のインドが両国で全世界の生産量の約 4 割を占めて

おり、インドネシアは全世界の生産量の約 3%(世界第 5 位)である(表 11)。

表 9 インドネシアにおける成分別肥料生産量(2014 年時点)

出所:FAO STAT より日鉄住金総研作成

表 10 インドネシアにおける成分別肥料消費量(2014 年時点)

出所:FAO STAT より日鉄住金総研作成

表 11 窒素系肥料の生産量動向

※単位:1,000 トン

量(1,000トン) 割合(%)窒素系 3680.1 86.2%リン酸系 591.5 13.8%カリ系 0.0 0.0%合計 4271.6 100.0%

量(1,000トン) 割合(%)窒素系 2909.4 53.4%リン酸系 768.0 14.1%カリ系 1771.5 32.5%合計 5448.9 100.0%

消費

2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年

1 中国 23,591 25,694 27,552 26,641 27,290 30,778 30,784 30,545 33,331 33,731 35,056 35,964 39,351

2 インド 10,392 10,469 11,206 11,218 10,935 10,400 10,431 11,377 12,088 12,193 12,159 12,333 12,329

3 アメリカ 9,387 8,584 8,970 8,317 8,169 8,516 8,063 7,633 8,234 8,590 8,392 8,898 9,133

4 ロシア 5,968 5,995 6,591 6,725 6,830 7,203 6,890 5,464 7,584 7,777 7,706 7,980 7,876

5 インドネシア 1,975 2,120 2,309 2,876 2,808 2,947 3,183 3,599 3,537 3,605 3,782 3,634 3,680

6 カナダ 3,088 2,905 3,048 3,109 2,309 3,235 3,193 3,129 3,362 3,443 3,358 3,358 3,505

7 パキスタン 2,192 2,260 2,267 2,425 2,465 2,442 2,545 2,580 2,707 2,613 2,235 2,577 2,616

8 カタール 799 819 1,030 1,370 1,338 1,363 1,379 1,379 1,385 1,480 2,095 2,093 2,499

9 サウジアラビア 1,290 1,300 1,250 1,369 1,472 1,827 1,712 1,591 1,702 1,717 1,908 2,092 2,241

10 エジプト 1,558 1,559 1,584 1,552 1,751 2,286 2,619 2,724 2,800 2,687 2,392 2,303 1,980

世界 85,348 87,459 94,823 96,202 95,476 100,189 99,189 97,196 104,102 105,983 107,965 109,341 113,310

窒素系

3680.1千トン

(86%)

リン酸系

591.5千トン

(14%)

窒素系, 

2909.4千トン

(53%)

リン酸系, 

768.0千トン

(14%)

カリ系, 

1771.5千トン

(33%)

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② 政策

ジョコ政権は食糧自給達成に向け、国内農業保護の方針の下、国内肥料生産についても

増産の方針を打ち出している。

インドネシアは中国、インドに次ぐ世界第 3 位のコメの生産国であるが、国内需要を国

内生産で賄いきれず、輸入に頼る状況が長く続いていた。こうした輸入依存の状況を脱却

するために、政府は高収量品種や機械化の普及に対する支援、生産者価格支持等を行い、

2016 年目標 7,200 万トンに対し 7,917 万トン生産し、完全自給を達成し、今後は輸出を本

格化する方針である。コメ以外の農作物についても自給の達成を目指しており、大豆やニ

ンニク等について技術導入や農地整備に予算を投じている7。

農業政策に付随し、政府は国内肥料生産も拡大していく方針である。既述の通り、イン

ドネシアでは増大する肥料の国内消費に対し、国内生産が追い付いておらず、一部輸入に

頼る状況が続いている。そこで、政府は国営肥料生産企業 Pupuk Indonesia の生産能力を

2021 年までに 2 倍以上に引き上げる計画を打ち出している8。

具体的な政策としては、窒素系肥料の原材料である天然ガスと、小規模農家向け肥料に

対する補助金給付を行っている。

天然ガスに対する補助金としては、肥料用生産用に給付されており、2017 年 1 月時点

1MMBTU 当たり 5.73~6.48US ドル程度で設定されている9。

また、小規模農家向け肥料の補助金としては、耕作面積 2 ヘクタール以下の農家の肥料

購入に対し、補助金を支給している。当該補助金は独立後、コメを中心とした食糧自給の

達成を目指し、灌漑施設等のインフラ拡大、農薬補助金の支給と共に、肥料補助金の支給

を始め、1984 年には一度はコメの自給達成を宣言した。しかし 1980 年代半ばから、石油

価格の下落や、世界的経済の停滞により緊縮財政が取られた。肥料に対する補助金は減額、

1998 年には撤廃され、これに伴いコメを始めとした農作物の生産量は停滞し、輸入に頼ら

ざるを得なくなった。その後 2000 年代に入り、農業再建のため、コメの輸入制限、砂糖の

輸入・加工業者へのライセンス制、コメと砂糖の 低買取り価格を引き上げる等、様々な

農業保護政策が開始され、肥料に対する補助金についても 2003 年に復活させている。しか

し、本来の目的に反し、実際には小規模農家以外へも流通している事例もほうこくされて

いる。2015 年の現地政府の調査によると、肥料は流通業者、農業協同組合を介し、小売業

者が農家へ販売するが、一部で小売業者が大規模農園等に高値で販売する等されている例

も見られる10。

7 NNA ASIA 2017/07/06, 2018/01/05 8 NNA AISA 2017/12/13 9 NNA ASIA 2016/12/7 10NNA ASIA 2016/2/17

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(2)日本企業との連携の可能性

① 有望インドネシア企業の発掘

インドネシアにおける肥料生産の約 95%以上を国営肥料会社 Pupuk Indonesia が占め

る11。Yara International(ノルウェー)や Wilmar Group(シンガポール)等の外資肥料

メーカーも進出するが、そのシェアは僅かである。Pupuk Indonesia は 5 社から構成され

る持ち株会社で、各々の工場所在地、生産能力等は下記の通りである。

表 12 Pupuk Indonesia

出所:Pupuk Indonesia ホームページより日鉄住金総研作成

Pupuk Indonesia では天然ガスからアンモニア及び尿素を製造しているが、昨今天然ガ

スの蔵量減少・産出量減少が懸念されており、低品位石炭をガス化することでアンモニア

及び尿素を製造する技術にも着目している。

低品位石炭は褐炭とも呼ばれ、非常に多くの水分を含む。インドネシアには多くの低品

位石炭が埋蔵されているが、自然発火しやすいため輸送に適さず、発熱量も少ないため、

従来利用が進んでいなかった。しかし、低品位石炭の有効活用に国を挙げて向け取り組も

うとしており、2006 年には大統領令 Prepres no.5 により 2025 年までにエネルギーミック

スのうち石炭を 33%にする目標を掲げ、2009 年には UU No.4 にて政府は政府は低品位石

炭の輸出を禁止している。更に、2017 年 12 月には、PT Pertamina(国営石油・ガス企業)、

PT Pupuk Sriwidjaja Palembang(国営肥料企業)、PT Bukit Asam(国営石炭鉱業企業)、

PT Chandra Asri(大手石油化学企業)との間で南スマトラの低品位石炭活用に関する合意

11 Mordor Intelligence”Indonesia Fertelizer Market”

会社名 設立 所在地 工場

尿素 460.0

アンモニア 445.0

肥料 2250.0

Kwasan PabrikⅡ 肥料 3210.0

Kwasan PabrikⅢ 肥料 2822.6

尿素 570.0

アンモニア 330.0

尿素 570.0

アンモニア 330.0

尿素 700.0

アンモニア 595.0

尿素 570.0

アンモニア 595.0

尿素 570.0

アンモニア 330.0

尿素 570.0

アンモニア 396.0

尿素 570.0

アンモニア 370.0

尿素 700.0

アンモニア 595.0

尿素 570.0

アンモニア 595.0

1972年PT Petrokimia Gresik

PT Pupuk Sriwidjaja Palembang

PT Pupuk Iskandar Muda

PT Pupuk Kalimantan Timur 1977年

PT Pupuk Kujang Cikampek 1975年

Pabrik Pusri 1

Pabrik PusriⅡ

Palembang(スマトラ島南)

Ache(スマトラ島北)1982年

1959年

Timur(東カリマンタン)

Pabrik Kaltim-1

Pabrik Kaltim-2

Pabrik Kaltim-3

Pabrik PIM 2

Pabrik PIM 1

生産能力※単位:千トン/年

Kwasan PabrikⅠ

Kawasan(西ジャワ)

Pabrik Kujang 1A

Pabrik Kujang 1B

Cikampek(西ジャワ)

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32

書が締結された。南スマトラ第 8 火力発電所の敷地内に、石炭ガス化プラントを建設予定

で、本プラントの近くにある PT Bukit Asam が操業する炭鉱で採掘される石炭を利用する

模様。2022 年 11 月に完工見込みで、年間 900 万トンの石炭から合成ガスを生産し、そこ

からジメチルエーテルを 40 万トン、尿素を 50 万トン、ポリプロピレンを 45 万トン生産す

る計画だ。12今後事業化調査を進め、環境アセスメントを実施中である。また、工業省によ

ると同様の計画を今後カリマンタンでも進めることを予定するとのことである。

この流れの中で、PT. Pupuk Sriwidjaja Palembang(PUSRI)は石炭ガス化によりアン

モニア及び尿素を製造する技術に強い関心を示している。同技術については PUSRI 内で

1983 年頃にも検討されていたが、肥料生産のための天然ガスには補助金により低価格に設

定されているため、当時は導入する必要性がなく検討は立ち消えとなった。しかし、補助

金の継続性が不透明な点や、現在の国を挙げた取組みの中で PUSRI は同技術の導入を再検

討しており、日本企業との協業に対しても高い関心を寄せている。

② マッチングの可能性が見込める日本企業の探索

既述の通り、現在窒素系肥料の原材料である天然ガスに補助金が給付されているが、天

然ガスの枯渇が懸念される中で、低価格に天然ガスを確保できることが確実ではなく、低

品位石炭を有効活用していく動向もある。これらの状況を踏まえ、天然ガスにのみ依存す

ることなく、肥料を増産できる方向性を模索し、日尼企業のマッチングを行った。

(a) 石炭ガス化によるアンモニア生産

現在、PUSRI のプラントでは、天然ガスを原材料にアンモニアを生産しているが、その

プロセスは大略下図左側で表される。ガス中の硫黄成分を取り除いた後、スチームと空気

を吹き込み、メタンの改質反応を起こす。次に、シフト反応により、改質ガス中の CO を

CO2 に転化させた後、CO2 を分離し、分離後のガス中に僅かに残された CO 及び CO2 を

メタン化する。その後ガスを圧縮し、アンモニア合成を行う。

低品位石炭をガス化し、アンモニア及び尿素を製造する場合は、大略下図右側のプロセ

スが想定される。このプロセスでは、微粉炭に空気を吹き込むことでガス化(部分酸化)

し、その後は天然ガスのによる尿素製造プロセスとおおよそ同じになる。

12 NNA ASIA 2017/12/11

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図 11 PUSRI アンモニア製造プロセスと石炭ガス化によるプロセス

出所:PUSRI 資料等をもとに日鉄住金総研作成

石炭ガス化技術を開発する日本企業は複数社あるが、中でも特に PUSRI との協業に関心

を示したのが、株式会社 IHI を含む 2 社である。

株式会社 IHI

株式会社 IHI(以下 IHI)は、水分量の多い褐炭をガス化する「二塔式ガス化炉(TIGAR®)」

を開発した。ガス化反応を行うガス化炉と、燃焼反応を行う燃焼炉の二つの炉で構成する

ため、「二塔式ガス化炉」と呼んでおり、同社で実績のある循環流動層ボイラを応用したも

のである。

「二塔式ガス化炉」の構造としては、ガス化炉に投入された褐炭やバイオマス等の原料

は、熱により分解されながら、炉に吹き込まれる水蒸気と反応しガス化する。ガス化しな

かった残りの褐炭は、炉内を循環する砂と共に燃焼炉に運ばれる。そこで燃焼炉に吹き込

まれる空気により燃焼し、砂はサイクロンで分離され、熱源としてガス化炉に戻る。

灰分を溶かさないので 800 ~ 900℃といった比較的低温で、ほぼ大気圧で運転すること

が可能なため、プラントに高価な耐熱・耐圧機器が必要なく、コスト低減と、運転・保守

脱硫

一次改質

CO転化

二次改質

CO2分離

メタネーション

圧縮

合成

天然ガスを脱硫し、メタンガス(CH4)にする

スチームを吹き込むことで、以下改質反応を起こすCH4 + H2O → 3H2 + Co

空気を吹き込むことで、以下改質反応を起こすCH4 + O2 → 3H2 + Co + Co2

CO転化することでシフト反応を起こすCO + H2O  → H2 + Co2

スチーム

空気

スチーム

分離された

Co2

残るCO,CO2をメタン化

天然ガス

アンモニア

尿素

3H2 + N2 →2NH3

微粉炭

ガス化

脱硫

CO2分離

メタネーション

圧縮

合成

粉砕し、微粉炭にする

空気を吹き込むことでガス化させるC + 1/2o2 →Co

空気

分離された

Co2

残るCO,CO2をメタン化

石炭

アンモニア

尿素

3H2 + N2 →2NH3

CO転化

CO転化することでシフト反応を起こすCO + H2O  → H2 + Co2スチーム

天然ガスによる製造 石炭ガス化による製造

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メンテナンスを容易にする点が特長である。

同社は既にインドネシアに進出済みで、現地に IHI Gasification Indonesia を設立し、イ

ンドネシアの褐炭を用いたガス化に取り組んでいる。Pupuk Indonesia グループ企業 Pt

Pupuk Kujang Cikampek の敷地内で、石炭ガス化の実証プラントを建設・運転実証済みで

ある。「二塔式ガス化炉」のベースとなる循環流動層ボイラは、インドネシアでも既に普及

しているため、循環流動層ボイラの運転・保守の経験やノウハウは「二塔式ガス化炉」に

も応用することができ、実際にインドネシアの実証プラント Pt Pupuk Kujang Cikampek

ではローカルオペレーターが中心となり運転している。

図 12 IHI 二棟式循環流動層ガス化炉の構造

※出所:IHI 技報 Vol.52 No.1 ( 2012 )

(b) スラグ肥料

鉄鉱石に石灰石を加えることで、シリカやアルミナ等鉄以外の成分が溶融するが、これ

らを分離・回収した物質をスラグと呼ぶ。スラグには高炉で銑鉄を製錬する際に生成され

る高炉系スラグと、銑鉄やスクラップから銅を生成する際に生成される製鋼スラグがあり、

何れも石灰、シリカ等農作物に有効な成分を含む。(表 13)

日本では、スラグは主にセメント、コンクリート、道路舗装用材料、地盤改良材等に使

用される他、豊富に含まれる石灰、シリカ等の成分を活かし、肥料としても使用されてい

る。高炉スラグ、製鋼スラグ共に含まれるシリカ成分は根や茎を丈夫にすると共に、光合

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成を促進し、特にイネ科の植物に対して非常に有効である。高炉スラグを原料とする肥料

は主に稲作に、製鋼スラグを原料とする肥料は稲作の他、畑用、牧草用等にも使用される。

インドネシアでは政策的支援もありコメの生産量は増加傾向にあり、日本の 6 倍以上生

産されていることや、現在国内の需要を賄いきれず、輸入にも頼っている状況を踏まえる

と、スラグを原材料とした肥料のニーズも高いと見込む。

表 13 高炉スラグ・製鋼スラグの生成過程・生成量・主な成分

出所:鐵鋼スラグ協会ホームページ、その他資料より日鉄住金総研編集

現在インドネシアにおいてスラグは Bahan Berbahaya dan Beracum(B3)として規制

対象物に指定されている。B3 とは「有害物質起案理に関する政府規制 No.74/2001」により

取扱いの際は予め環境林業省への届出や承認、定期的な管理報告等が必要とされる有害化

学物質、廃棄物等で、環境林業省を中心に工業省、商業省、農業省、厚生省等複数の部署

により所管される。現地進出する企業は、この B3 許認可を得るのは厳しく、非常に時間が

かかると指摘する。この規制により、現状としては日本のスラグ肥料生産企業との協力は

厳しいと判断し、本事業に於いてはスラグ肥料に関するビジネスマッチングが成立してい

ない。

また、電炉を所有するインドネシア国営クラカタウ・スチール、及び高炉を所有するイ

ンドネシア・韓国合弁クラカタウ・ポスコ・スチールでは製鉄所の脇にスラグが大きく積

み上げられているとの情報もあり、インドネシアに於いてスラグが積極的に活用されてい

るとの情報は得られなかった。

コメの生産が非常に盛んであることと、肥料の消費量に対し、生産量が追い付かず輸入

に頼っているインドネシアの状況を踏まえると、スラグ市場は十分にあると言える。関係

省庁に対し、スラグの肥料活用について説明の上、B3 規制対象物からスラグもしくはその

加工物を外していくことが出来るか否かが課題である。

種類 生成過程 生成量 主な成分

高炉スラグ

高炉で銑鉄を製錬する際に、鉄鉱石から分離される鉄以外の成分と、副原料である石灰石やコークス中の灰分が溶融・分離した物質。高炉から生成されたスラグは1,500度程度あるが、自然放冷と適度の散水により徐冷処理するものを徐冷スラグ、急激に冷却処理するものを水砕スラグと分類する。

銑鉄1tあたり約290kg

石灰(CaO)シリカ(SiO2)アルミナ(Al2O3)酸化マグネシウム(MgO)硫黄(S) 等

製鋼スラグ

銑鉄やスクラップから鋼を生成する際に生成される。銑鉄を原料とする転炉で排出されるスラグを転炉系スラグ、スクラップを原料とする電気炉で生成されるものを電炉系スラグと分類する。

(転炉系)転炉鋼1tあたり約110kg(電炉系)電気炉鋼1tあたり約40kg

石灰(CaO)シリカ(SiO2)酸化マグネシウム(MgO)FeO(酸化鉄)MnO(二酸化マンガン)P2O5等(りん酸) 等

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3.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業

との連携の可能性(建設用鋼材加工)

(1)現状

① インドネシアにおける鉄鋼消費の位置づけ

インドネシアの GDP と産業構成の推移は図 13 となっている。2000 年代は順調に成長

し 2011 年に 1 兆 US ドルを超えたものの、それ以降は横ばいが続いている。

この間の鉄鋼見掛消費量の推移を見ると図 14 となり資源価格の低迷で GDP も下落し

た 2015 年を除くと若干だが増加傾向にあることが分かる。鉄鋼の生産・消費と相関性が高

い製造業・建設業・鉱業の生産量の推移を、それぞれのリーマンショック後の 2009 年を 1

とした比率で比較すると、図の折れ線グラフのとおりである。製造業と鉱業が横ばいから

若干低下傾向を示す中で、建設業の着実な伸びが鉄鋼消費量を下支えていることが伺える。

図 13 インドネシアの GDP と産業別構成の推移

出所:UN, National Accounts Main Aggregates Database より日鉄住金総研作成

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図 14 鉄鋼見掛消費量ならびに建設・鉱業・製造業の生産量比(2009 年基準)の推移

出所:SEAISI,Yearbook、UN, National Accounts Main Aggregates Database より日鉄住金総研作成

インドネシアにおけるインフラ投資の事情については経済産業省の平成 27 年度インフ

ラシステム海外展開促進調査等事業(新興国におけるインフラ投資促進に向けたニーズ調

査事業)に詳しい。2004 年に発足したユドヨノ政権が PPP に関する大統領令(2005 年)

以降、インフラ投資を促進する狙いで 2009 年から 2010 年にかけてインフラ保証基金

(Indonesia Infrastructure Guarantee Fund:IIGF)国営インフラ投資会社(PT.Indonesia

Development Finance Company:PT.SMI)インフラ金融公社(PT.Indonesia Infrastructure

Finance:IIF)などを設立してプロジェクトを実行する基盤を整備し、2011 年 5 月には 2025

年までの中期的な開発計画「経済開発迅速化・拡大マスタープラン(Masterplan for

Acceleration and expansion of Indonesia’s Economic Development:MP3EI)を発表してい

る。

2014 年に発足した現在のジョコ政権も 2015 年に PPF に関する大統領令を改正し、適

用範囲を経済インフラから教育・医療などの社会施設や公共住宅などの社会インフラに拡

大するなど制度面での改善などで後押ししており、これらの施策と旺盛な民間のビル需要

も背景となって、近年盛んに建設投資が行われる様になっている。

② インドネシア鉱業における鉄鉱石生産の実情

世界有数の資源国であるインドネシアの鉱業においては、以下のような政策の影響が見

受けられる。インドネシア政府は 2009 年に新鉱業法「鉱物・石炭鉱業に関する法律」を公

布し 5 年の施行期限で鉱物の高付加価値化を義務付けた。その期限の 2014 年になって政府

は関連する政令・大臣令を相次いで発効した結果、鉄・銅・鉛・亜鉛などの一部金属は輸

出税(2016 年下期 60%までの段階的時限措置)の課税を前提に中間鉱産物となる精鉱など

の輸出が限定的に認められたものの大部分の金属鉱物には整精錬処理が義務付けられ、こ

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れまで認められていた未処理鉱石の輸出は禁止となった。

鉄鉱石の輸出入の推移を見ると図 15 となる。

図 15 インドネシアの鉄鉱石輸出入量推移

出典:UN Comtrade から日鉄住金総研作成

2013 年に輸出禁止を見込んだ駆け込み輸出があった模様だが、2014 年に鉄鉱石の輸出

に 20%の関税がかけられたことから中国向けが 2013 年の 17.5 百万トンから 2.7 百万トン

に激減し、以降も鉄鉱石の輸出は低迷している。一方で本来は鉄鉱石資源国のはずの同国

が 2014 年から輸入を増やし始め純輸入国になってしまっている。

このような背景のもと、同時期に国営のクラカタウ製鉄会社が、韓国 POSCO 社と組ん

で本格的な高炉法による粗鋼生産に乗り出した事がある。同社は 2014 年頭の立上以降、順

調に粗鋼生産量を伸ばし 1 年後の 2015 年にはフル生産(能力 300 万トン/年)に達してい

る。鉄鉱石輸入が急増して 500 万トンレベルに達しているのは同社の粗鋼生産能力に必要

な鉄鉱石量とほぼ等しく、同社が高炉生産に輸入鉱石を使用していることを示している。

新聞報道(Steel Business Briefing/20.Feb.2015)によると POSCO 側がインドネシア産鉄

鉱石の品位に満足できずオーストラリアや南アフリカから調達している様子が報道されて

いる。これは国内に大量に埋蔵する鉄鉱石がニッケルを多く含むラテライトなどが主体な

ので普通鋼には使いづらいためと思われる。

一方でインドネシアからの鉄鉱石調達に規制がかかった形の中国系企業では青山鋼鉄が

インドネシアでラテライトからのステンレス製造に着手するなど中国の余剰生産能力が国

際的な問題として浮上する中で、インドネシアで上工程への投資を始める様になり注目さ

れる。

青山鋼鉄進出は数少ない事例で、政府の高付加価値化政策があっても同国の金属産業で

は精錬工程への投資がなかなか進まず国内に埋蔵する豊かな鉱物資源を活用できてない。

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この大きな理由のひとつとして需要家産業が十分に育っていないことが挙げられる。金

属製品は 終製品に至るまでの間に多くのステップを経て加工を受けるサプライチェーン

を経由しているがインドネシア国内でこのサプライチェーンが完結していないため、欠け

ている工程に輸入品が間接輸入として入り込む余地を与えており、このことが上工程の需

要に結びついていないと考えられる。結果として鉱物資源を精錬してできる半製品の需要

が盛り上がらず、例えば製鉄業の高炉の様に一件の投資額が莫大で巨大な生産量となる上

工程の投資に見合わず、直接還元や電炉などで小刻みな能力拡大が可能な製造法で鉄源が

まかなわれてきたのが実情であった。現地進出しているワイヤーハーネスのメーカーへの

ヒアリング調査でも銅素線は日本から供給している。

③ インドネシアにおける鋼材の生産消費構造

インドネシアにおける鉄鋼製品の用途別需要は建設用が圧倒的に多く 78%を占めており、

旺盛なインフラ整備や都市圏のビルの建設需要に支えられている。ついで輸送機械製造用

途となっている。インドネシアの自動車生産は日系メーカーの現地生産や輸出拠点化とい

った動きが強化され、2012 年に 100 万台を超えた生産台数は経済的な逆風に直面するも

100 万台を維持し 2020 年にかけて 130 万台も予想されるなど、タイに次ぐ ASEAN の中核

拠点の地位を固めている。

図 16 インドネシアにおける鉄鋼消費の用途別構成

出典:SEAISI Sustainable Forum

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インドネシアにおける鋼材の見掛消費量の推移を鋼種別に見ると下図となる。

図 17 インドネシアにおける鋼種別見掛消費量の推移

出典:SEAISI Year book より日鉄住金総研作成

ここ数年間で各鋼種が順調に消費量を拡大している。とくに 大の需要家である建設業

では鉄筋コンクリート構造が主流であり棒鋼が従来から も多くの消費量であったが、こ

の 10 年程度をみると熱延鋼板・冷延鋼板・溶融亜鉛メッキ鋼板の消費量の成長が建設用途

を主にしている棒鋼・形鋼・厚板などに比べて高くなっている。これはインドネシアでの

自動車などの製造業の国内生産強化と鋼板の国内調達が背景にあるものと考えられる。

インドネシアにおける鋼材の生産量の推移を鋼種別に見ると次図となる。

図 18 インドネシアにおける鋼種別生産量の推移

出典:SEAISI Year book より日鉄住金総研作成

地場の建設現場に鉄筋を供給するために棒鋼の生産が従来から多く着実な生産拡大を見

せてきたが、2014 年から厚板と鋼管の生産の急増が目を引く。この背景には国営製鉄会社

が韓国 POSCO 社と組んでインドネシア初の本格的な高炉転炉法による厚板生産を開始し

たことや、日系の鋼管メーカーが自動車用鋼管の現地生産を強化したことが背景にある。

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④ 間接輸入とサプライチェーン

国内の鉄鋼消費を見る際には、鋼材を使用した製品として輸入される間接輸入分も考慮

しなくてはならない。

図 19 は HS コード 73 番台の鉄鋼製品の輸入重量の推移になっている。

図 19 2 次加工製品(HS73××)の品種別輸入量推移

出典:UN Comtrade から日鉄住金総研作成

これらの鉄鋼製品として間接輸入される鋼材の量は鋼材の 終的な消費量(=鋼材見掛

消費量+鉄鋼製品輸入量)の 15%程度を占めている。結果的には鉄源の需要を間接的な輸

入鋼材に代替することになっている。

HS73**の品種を輸入しなくてはならないのは国内にその製造工程が存在しないか国内

の製造工場が輸入品にコスト面や製品の品質面で負け輸入品に代替されるケースなどが考

えられる。

この中で鋼材の 2 次加工品である矢板・溶接形鋼・鋼管・角型管や鋼製構造体の輸入量

推移は図 20 になる。

HS7301 矢板・溶接形鋼、HS7302 レール・車輪等、HS7303 鋳鉄管・角形管、HS7304 鋼管・角形管、HS7305 溶接鋼管・角形管

(>406.4mm)、HS7306 その他管、HS7307 鋼管継手、HS7308 鋼構造、HS7309 タンク>3001、HS7310 タンク<3001、HS7311 高圧

ガス容器、HS7312 鋼線、HS7313 フェンス用ワイヤー、HS7314 エキスパンドメタル等、HS7315 鎖、HS7316 錨、HS7317 釘、HS7318 ボルト・ナット類、

HS7319 針、HS7320 バネ、HS7321 ストーブ、HS7322 ラジエター、HS7323 鋼製家具、HS7324 鋼製衛生用品、HS7325 その他

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図 20 2 次加工鋼材(矢板・溶接形鋼・鋼管・角型管・鋼製構造体)の輸入量推移

出典:UN comtrade より日鉄住金総研作成

HS7304 の輸入量が 2012 年をピークに大きく減少しており図 18 にあった鋼管の現地生

産化により輸入品から国産品に代替が進んでいることを示している。

⑤ 建設用鋼材の生産と消費

大の鋼材市場である建設用途について、主に使用されている鉄筋用棒鋼・形鋼・厚板

の見掛消費量(国内生産量+輸入量-輸出量)と国産比率の推移を見てみる。

鉄筋用棒鋼

図 21 インドネシアにおける棒鋼の生産・輸入・輸出量と国内生産比率の推移

出典:SEAISI Year book より日鉄住金総研作成

棒鋼の国産比率は 2000 年代には 90%を超えることもあったが 2010 年代に入ってから

も 80%近くと比較的高い比率を安定的に維持し生産量も拡大してきている。これは鉄筋用

棒鋼が主に建設現場で加工され、棒鋼メーカーが建設現場にインドネシア規格品を直納す

る流通をとっているため、国外からの輸入材が入り込みにくい事情が背景にある。

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形鋼

図 22 インドネシアにおける形鋼の生産・輸入・輸出量と国内生産比率の推移

出典:SEAISI Year book より日鉄住金総研作成

形鋼については 2012 年から 2013 年にかけて輸入鋼材が大量に流入し国産比率も 40%

まで低下したことがあった。この時期は中国が余剰生産能力を背景に安価な鋼材を大量に

輸出していた時期になる。その後、政府の対抗処置や中国からの流出が減ってきた結果、

従来の国産比率レベルに戻りつつあり生産も拡大してきている。

厚板

図 23 インドネシアにおける厚板の生産・輸入・輸出量と国内生産比率の推移

出典:SEAISI Year book より日鉄住金総研作成

インドネシアの厚板は 2000年代には国産比率も高く輸出にも積極的だったが 2012年か

ら2013年にかけて急速に競争力を落とし輸出が大幅に減少するとともに国内市場にも大量

の輸入材が入り国産比率が 20%にまで低下した。

2014 年に入って国営クラカタウ製鉄が韓国 POSCO と厚板を高炉法で生産するように

なり、国際市場の回復とも相まって国内生産を急速に伸ばし輸入品から市場を取り戻して

いる。

それでも 2015年 2016年と国内市場規模が過去ピークだった時期に戻っていないため輸

出のドライブをかけており、例えばインドなどに集中して輸出した結果、通商摩擦を呼ぶ

などしている。

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⑥ 鋼材のサプライチェーン

建設用鋼材のサプライチェーンの現状

インドネシアの鋼材の 大需要家である建設業界を例に一貫したサプライチェーンを構

築について検討を行った。

図 24 建設用鋼材需要家産業のサプライチェーン

出典:日鉄住金総研作成

建設業で使用される鋼材は鉄筋コンクリート構造用の鉄筋、鉄骨で骨組みを作る鋼構造

用の鉄骨(形鋼、中空鋼など)と薄板を波板に加工して屋根材・壁材に使用したり軽量形

鋼などに加工してスチールハウスなどを建設する建材用薄板がある。

図 24 で示すようにそれぞれに中間加工業者が存在している。

鉄筋コンクリート構造(RC 造)の場合は建設現場で鉄筋を切断・曲げ加工したうえで駕

篭状に組み上げてコンクリートを流して柱を造っていくのが一般的な工法ではあるが、建

設現場に広大な加工場が必要になるため、日本国内では事前に工場で CBC

(Cut-Bend-Caging)加工して現場作業を取り組む工法が普及している。インドネシアで

は、交通渋滞で輸送効率が悪いことも一因となり、CBC は普及に至っていない様である。

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鉄骨を主体に構造体を構成する鉄骨構造(S 造)や鉄筋コンクリート柱と鉄骨を複合させ

た SRC 造ではファブリケーターがパーツ類を溶接して組みあげて建設現場に供給する工法

が主流である。インドネシアでは鉄筋の国内生産はあるものの大形の形鋼を圧延する生産

(Rolled)は殆どなく厚板を切って H 形鋼や箱型鋼に溶接加工(Build)が一般的になって

いる。2014 年からクラカタウ-POSCO の厚板生産が本格化しているので、大形の形鋼や中

空鋼(Horrow) を溶接して製造することで鋼構造のための柱・梁などの建設用部材を国

産厚板で製作することが可能になっている。ただし、現地に進出している日系のゼネコン

は、品質の安定性が課題となっており、ただちに使用することは難しいとの評価であった。

また RC 造、S 造 SRC 造とも基本設計図面や構造図面からパーツの図面に落とす作業が

必要で、鉄筋の場合は配筋設計(Bar arrangement Drawing)ファブリケーターでは Shop

Drawing の様な専門的な技術が必要となっている。この設計を主とするファブレスファブ

も国内では存在している。

輸送機械製造産業におけるサプライチェーンの現状

輸送機械製造産業では、現地に進出した日本の完成車メーカーが現地調達率を高める為

に国内の裾野産業に働きかけて現地進出を促してきた。今回の現地調査でも、サプライチ

ェーンに欠落している工程があると、その前後に既に進出している企業が、国内では手が

けていないような作業であっても補完し合うなどして協力している様子が確認できており、

日本国内に近い供給体制をとっている。

実際に二輪車と四輪車についてインドネシアの生産台数と部品の輸入額の推移をみてみ

ると、生産台数の伸びに対してこの数年間は部品の輸入額の伸びが下回る傾向を示してお

り、特に二輪車でこの傾向が顕著である。

このことは輸入して調達していた部品が着実に現地生産品に置き換えられていることを

表している。

このことからも輸送機械製造産業では日本からの技術移転が進められて、部品調達のた

めのサプライチェーンが着実に整備されており、インドネシアの裾野産業育成に貢献して

いることが分かる。

Page 50: 平成29年度経済連携促進のための産業高 度化推進事業(日 ...経済産業省委託事業 平成29年度経済連携促進のための産業高 度化推進事業(日インドネシア経済連携協

46

図 25 インドネシアにおける四輪車生産台数と自動車用部品輸入量の推移

出典:UN Comtrade ならびに Fourin より日鉄住金総研作成

図 26 インドネシアにおける二輪車生産台数と二輪車用部品輸入量の推移

出典:UN Comtrade ならびに Fourin より日鉄住金総研作成

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47

検討の方針

以上、インドネシアにおける鋼材市場の 大需要家である建設と 2 番目の輸送機械の市

場をみてきたが、輸送機械製造産業では日系企業が中心になって技術移転を進めてサプラ

イチェーンを充実させてきている。一方で 大需要家の建設市場は政府の外資系企業に対

する規制もあって新しい建設技術の導入が進んでいない面がある。

建設用鋼材加工については Krakatau-POSCO が厚板生産を開始している需給環境の変

化をとらえて、例えば輸入されている HS7301 から HS7308 の 2 次加工鋼材を国内生産に

切り替えることや HS7309 の鋼構造体を国内のファブリケーターで製作していくといった

ような可能性も考えられる。

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48

(2)日本企業との連携の可能性

① 建設工法について

同国の建設は高層ビルに至るまで殆どが現地で入手しやすい鉄筋を使用した鉄筋コンク

リート構造となっている。一方、日本では工期の短縮や耐震設計のしやすさなどで鋼構造

が拡大している。インドネシアも地震が頻発する地域もあり、直近も 2018 年 1 月 15 日の

じゃかるた新聞で証券取引所のある BEI タワー2 の崩落事故が報じられている。

図 27 証券取引所ビルのフロアー崩落事故

出所:じゃかるた新聞提供(2018.1.15)

崩落の原因が設計なのか施工なのかは不明だが、12 月にジャワ島東南部でも地震が発生

しているため同国でも耐震性に関する関心が高まってくることが期待される。

同じく 2月 21 日のじゃかるた新聞が東ジャカルタ

区チャワンで建設中の高速道路の橋桁部分が崩落し、

作業員 7人が重軽傷を負った事故を報じている。

ここ半年間に高架式道路や鉄道の建設現場で少な

くとも 8件の事故が発生しているとして、事態を重

くみた政府は公共事業・国民住宅相がジョコウ大統

領の指示を受けて、全国各地で行われている高速道

路・MRT・LRT などの高架式の道路線路工事の一時

停止を命じている。この様な施工管理にも問題を

抱えていると考えられる。

図 28 建設中高架道路の橋桁崩落事故

出所:じゃかるた新聞提供(2018.2.21)

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49

② 有望インドネシア企業の発掘

インドネシア製鉄業の鉄鋼製品の裾野産業として建設用鋼材加工流通に注目してマッチ

ングセミナーを企画する。先に整理したようにインドネシア 大の鋼材需要化産業である

建設業会における課題を下記に列記する。

サプライチェーンが完結していないため輸入品で代替している 2 次加工品が多い。

品種は HS コードで HS7301~HS7307 の 2 次加工品に該当し 7301 矢板・溶接形鋼、

HS7302 レール・車輪等、HS7303 鋳鉄管・中空角型管、HS7304 鋼管・中空角形管、

HS7305 溶接鋼管・中空角形管(>406.4mm)、HS7306 その他管、HS7307 鋼管継手

の製作に JV の可能性がある。

またゼネコンでのヒアリングではHS7318にある建設用のハイテンションボルトなど、

日本国内で製造されているものが現地で入手できない例として挙げられていた。

同じく鋼製製品で鋼製のタンク(HS7309、HS7310)やボンベ(HS7311)などのプ

ラント製作に必要な機材を現地で調達できないという指摘が KADIN であった。

建設資材の主流である鉄筋予加工の CBC(Cut/Bend/Caging)分野や配筋設計技術の

不足。

鋼構造建設分野でのファブリケーターにおける鋼材加工の精度や品質管理、ショップ

ドローイングの様に構造設計から図面に落とす技術の不足。

薄板建材の加工(たとえばスチールハウス建設に必要なパーツの加工など)

インドネシアの主要なファブリケーター

会社名 本社所在地 概要

能力(MT/Y) 主要製品

Murinda Iron Steel Jakarta 2,4000 高層ビル・工場・発電所

Cigading Habeam Center Cilegon 24,000+6,000 鉄塔・橋梁・高層ビル・発電所

Korindo Heavy Industry Jakarta 風力発電・ビル・重工業

Duta Cipta Pakar Perkasa Surabaya 136,000 タワー・橋梁・高層ビル・空港

Tetsu Sarana Persada Jakarta 14,000 工場

Bangun Sarana Baja Gresik 鉄塔・工場・橋梁・ビル

Bukaka Teknik Utama

Tbk

Bogor 交通・橋・石油ガス施設・特殊

Barata Indonesia Gresik 工場・工業プラント・タンク

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KADIN(インドネシア商工会議所)から入手した鉄鋼製品の加工業者リスト

会社名 事業分野 所在地 URL

PT.United Steel Center

Indonesia (USC)

Coils Center and

Coils Blanking

Karawang http://www.usc-indonesia.c

o.id/

PT.Cosmo Metal Thin steel plate Bekas http://www.cosmometal.co

m/

PT Super Steel

Karawang

coil center Karawang NA

PT. Duta Laserindo

Metal

sheet metal

fabrication

& contract

manufacturing

assembly

Cikarang www.dlm.co.id

PT.Kyowa Synchro

Technology Indonesia

Metal parts

processing industry

Bekasi http://www.kyowagokin.co.

jp/e/

PT.Press Mold

Indonesia

Metal parts

processing industry

Bekasi

PT.Arco Tech Indonesia Metal parts

processing industry

Bekasi http://www.arco-indonesia.

co.id/

PT.Mitra Karsa Sukses

Mandiri

Metal parts

processing industry

Bekasi https://sites.google.com/sit

e/ptmitrakarsa/home-1

PT.Maruhide

Indonesia

Metal parts

processing industry

Cikarang http://www.k-maruhide.co.

jp/en/group/group01.html

PT.Metal One Steel

Service Indonesia

Metal parts

processing industry

Jakarta http://www.mtlo.co.jp/jp/in

dex.html

PT.Titan Persada

Indonesia

Metal parts

processing industry

Bekasi http://titanpersada.co.id/h

tml/home.html

PT.UNICRAFT

NAGURA

INDONESIA

Metal parts

processing industry

Cikarang http://www.unicraft-nagur

a.co.jp/english/index.html

Black & Veatch engineering,

consulting and

construction company

Jakarta www.bv.com

Himalaya Tunas

Texindo

Construction

contractor

Bandung www.himalaya.co.id

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③ マッチングの可能性が見込める日本企業の探索

インドネシア側は下記のような日本の技術に関心を持っていることが分かった。

鋼構造建築など日本の建設技術に関心のあるゼネコン、設計会社やオーナー

ファブリケーター(ビル・インフラ・プラント等の建設用鋼材加工技術や設計技術)

鋼材 2 次加工メーカー(溶接形鋼、角型鋼管、鋼管などの構造用鋼製造技術)

エキスパンドメタルやメタルデッキなどの鋼製建材製造メーカー

スチールハウスや工場建屋などの建設会社や建材用薄板加工成形メーカー

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4.インドネシアにおける裾野産業の現状と日本企業

との連携の可能性(工業団地) (1)現状

① セイマンケイ経済特区

(a) 調査対象に選定した理由

2014 年に発足したジョコ政権は、海洋国家のビジョンを掲げ、ジャワ島以外の地方を含

めた国土の均衡ある発展を目標としている。インドネシアは豊富な天然資源や農産物に恵

まれているが、従来はこれらに付加価値をあまりつけずに輸出することに依存していた。

しかし現状の経済構造は資源価格変動の影響を大きく受けるため、中間~ 終製品を製造

する産業の振興や輸出型産業の育成が課題となっている。

このような流れの中、同国政府は2015 年1 月に発表した国家中期開発計画(2015~2019

年)で工業団地の整備を推進していることから、今回調査の対象分野として工業団地を選

定した。

工業団地のうち同国政府が も力を入れているのは、アセアンの地理的中心にある北ス

マトラであり、将来的には飽和状態にあるシンガポールのハブ機能分担を狙っている。特

にセイマンケイ工業団地(経済特区)では世界一の生産量を誇るパームオイルを中核とし

た産業集積の形成を重点的に支援する政策を打ち出しており、経済特区の指定や進出工場

の操業開始が も早かった。さらにパーム油脂化学品及び下流の油脂化学製品、パーム椰

子殻や絞りかす等を利用する日本企業のニーズを確認できたことから、今回調査の対象地

域として同工業団地を選んだ。

なお本稿で用いる工業団地は、経済特区(Special Economic Zone、SEZ)および工業団

地(Industrial Estate)の双方を指すものとする(経済特区と工業団地の概要については次

項参照)。

(b) インドネシアの工業団地の概要(経済特区および工業団地)

経済特区(SEZ、インドネシア語では KEK:Kawasan Ekonomi Khusus)

同国の経済特区は 2017 年 12 月時点で 12 カ所指定されており、各経済特区は特定のセ

クター向けに開発される。これまでに 4 か所が稼働済で、残り 8 か所のうち 7 か所は 18 年

中に稼動を目指している。国家経済特区委員会によると、北スマトラ州のタンジュン・グ

ヌンとクアラタンジュンなど計 9 地域を新たに経済特区に指定することを検討中である13。

なお地方開発を推進する政策に即し、12 か所の経済特区のうちジャワ島西部のタンジュ

ン・レスンを除く 11 か所はジャワ島外にある。これらは特定の工業団地区画を指すもので

はなく、一定の範囲を特区に指定し、税制・非税制面の両面で恩典を供与するものである。

13 NNA17.12.18

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インドネシア投資調整庁(BKPM)によれば、政府は経済特区内の産業に対し財政的・

非財政的優遇措置を追加提供するとともに、特定の条件を満たせば、 大 25 年間にわたっ

て約 20%~100%の減税対象とするほか、原材料の輸入に対する付加価値税が免除する。さ

らに、経済特区に投資する外国人投資家は資産を所有し、居住許可を得ることができる14ま

たインドネシア全体にかかる投資調整庁(BKPM)ネガティブリストの非適用による外資

規制緩和策も打ち出されている。

表 14 インドネシアの経済特区

出所:各種情報をもとに日鉄住金総研作成

図 28 インドネシアの経済特区指定 12 地域の稼働状況(2017 年 12 月時点)

14 インドネシア投資調整庁(BKPM)日本事務所のホームページ)

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出所:各種情報をもとに日鉄住金総研作成

工業団地 (Kawasan Industri、KI)

インドネシア工業団地協会(HKI:Himpunan Kawasan Industri Indonesia)のホーム

ページによると、同協会には現在、15 州の法人メンバー73 社が加盟しており、総面積は約

54,200 ヘクタールである。また工業団地で事業を行っている製造会社は 9,000 社を超え、

雇用者数は約 400 万人になっている。

HKI の法人メンバー73 社のうちジャワ島には 47 社(全体の 64%)が集中し、特にジャ

カルタ周辺のジャカルタ首都特別州(2 社)、バンテン州(7 社)、西ジャワ州(23 社)の 3

州に 32 社(44%)が立地している。特に日系資本の工業団地はジャカルタ東方の西ジャワ

州に集中しており、自動車をはじめとする多くの日系企業が入居している。一方近年、ジ

ャカルタ周辺への一極集中に伴い土地賃借料や人件費が上昇するとともに、インフラ整備

の遅れも相まって交通渋滞が深刻化するなどの問題も生じている。

なお工業団地といっても、管理会社がインフラを整備し入居企業は生産に専念できるよ

うな日本水準の工業団地から、実態は単なる土地販売で入居企業が独自にインフラを整備

する必要があるところまで、千差万別であるという指摘もある。

政府は、製造業については、所在地は工業団地内と指定し、テナントの基本的ニーズ(水

道や電気など)を満たすことを義務付けている(2009年PP第 24号と 2014年UU第 3号)。

また 2019 年までに新たに 15 か所に工業団地が開発される予定である。うち 13 カ所は

ジャワ島以外の場所での開発が予定されており、天然資源加工産業に割り当てられること

になっている。残り 2 か所はジャワ島内で、労働集約型のハイテク産業と消費財産業用の

工業団地となる予定である(インドネシア投資調整庁(BKPM)日本事務所のホームペー

ジ)。

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表 15 インドネシア工業団地協会(HKI)会員企業

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出所:インドネシア工業団地協会(HKI)ホームページ等をもとに日鉄住金総研作成

図 29 ジャカルタ周辺の工業団地所在地

出所:KIIC プレゼン資料等をもとに日鉄住金総研作成

https://www.jetro.go.jp/theme/fdi/industrial-park/developer-material/pdf/idn_1.pdf

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(c) セイマンケイ工業団地の概要

セイマンケイ工業団地は 2012 年 2 月 27 日に政令第 29 号により同国 初の経済特区

(SEZ)の一つとして指定された(なお第 1 号は同年 2 月 23 日に政令第 26 号で指定されたタ

ンジュン・レスン)。同年、広大な油ヤシを持つ国営農園 PTPNⅢが SEZ(特別経済地域)

の運営管理会社に指定され、インドネシアが世界一の生産量を誇るパーム油(CPO、CPKO)

を活用した企業の誘致が推進されている。 プロジェクトは 3 期に分かれ、 終年の 2031

年には総面積 1933.8ha、就業者 8 万 3000 人余りの工業団地とする計画である。

北スマトラ州の州都メダンから南西 125km に位置し、アセアンの中心という好立地で

あり、課題だったインフラも徐々に整備が進められている。有料道路は 2019 年 11 月に、

鉄道の支線は 2018 年 5 月にそれぞれ供用開始予定である。また日尼国家プロジェクトのア

サハンアルミが建設した深水港のクアラタンジュン港の新埠頭も2018年上期に整備が終わ

る予定である。この港は工業団地から 38km と近く、大型船が入港出来ないため遠方に輸

出する場合には積み替えが必要なブラワン港(工業団地から 146km)を置き換えることに

より、輸送コストの削減が期待されている。

2015 年 1 月 27 日にジョコ大統領が現地を視察、同年 11 月 28 日に 初の企業としてユ

ニリーバ社が工場の操業を開始した。同工場の製品(脂肪酸など)の 80-90%は欧州、アジ

ア、ブラジルなど世界各国に輸出されている。

図 30 セイマンケイ工業団地の正門から続く道路(基幹道路 No.62)

工業団地入口からの道路はまるで滑走路のように広く長く一直線である(筆者撮影)。

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以下、同工業団地の概要について記す。

所在地およびアクセス

北スマトラ州の州都メダン南西 125km に位置する。海上交通の要衝であるマラッカ海

峡の航路に面し、マレーシアやシンガポールにも近く、アセアンの地理的中心にある。空

港や港からの距離は図 31 の通りである。

工業団地側の説明ではメダン市街からの所要時間は車で 3 時間 8 分である。なお 2 月 2

日(木)の訪問調査時の実測値によると、往路はメダン市街から 2 時間 45 分(午前 5 時

45 分出発、途中 5 分程の休憩含む)、帰路はクアラナム国際空港へ 2 時間 20 分(午後 2 時

40 分出発、途中 5 分程の休憩含む)かかった。現在、有料道路は一部のみしかなく、有料

道路出入口からセイマンケイまでの所要時間は、一般道路で 1 時間 40~50 分程度である。

但し後述するように近く有料道路の整備が完了する予定であり、アクセスの向上が見込ま

れる。

図 31 セイマンケイ工業団地の位置

出所:Google Map や各種情報を総合して日鉄住金総研作成

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開発計画

マスタープランは図 32 の通りである。

総面積は 1933.8ha で千代田区(1,166ha)の約 1.7 倍であり、以下のように 3 期に分け

て建設する計画である。

第 1 期(2011-15 年) 総面積 104ha

第 2 期(2016-20 年) 総面積 640Ha(+536Ha)

第 3 期(2021-31 年) 総面積 1933.8Ha(+1293.8Ha)、就業者 8 万 3000 人余り

投資総額は管理会社の PTPNⅢが 5.1 兆ルピア、入居企業が 129 兆ルピアを予定している。

工業団地は大きく分けると以下の三つの区域に分かれる。

工業区域:パーム椰子を利用する産業、ゴムを利用する産業、その他産業

物流区域:Dry Port、貯蔵タンク、倉庫など

観光区域:ホテル、ゴルフ場、商業施設など

工業区域で計画中の産業は、以下の 3 つに分かれる。

第 1 はパーム椰子を利用する産業で、CPO(パーム原油)や PKO(パーム核油)の製造、

CPO や PKO を原料とした中間製品の製造、パーム椰子殻を使ったクッション充填剤、家

具の素材、堆肥などの製造である。

第 2 はゴムを利用する産業で、管理会社の PTPNⅢはゴム農園を持っており、現在、グ

ッドイヤーやブリジストンにゴムを輸出してことから、タイヤ、コンベア用ベルト、自動

車・電気製品用のゴム部品等の工場を構想しており、パートナーを募集中である。

第 3 はその他の産業で、IT、電機電子、化学(石鹸、歯磨き、シャンプー、薬品など)、

食品(食用油、小麦粉、砂糖など)、繊維、合板などである。

なお工業用水は工業団地西側を流れる Bah Tungguran 川から取水する計画である。

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図 32 セイマンケイ工業団地のマスタープラン

出所:PT. PERKEBUNAN NUSANTARA III (PERSERO)資料をもとに日鉄住金総研作成

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図 33 セイマンケイ工業団地の開発計画(第 1 期~第 3 期)

出所:PTPNⅢ資料(2018.1.17-18)をもとに日鉄住金総研作成

http://www.lpp.ac.id/wp-content/uploads/2018/01/Nurhidayat_master_plan_sei_mangke.pdf

周辺のパーム油及び天然ゴム生産量

インドネシアにおけるパーム油と天然ゴム生産の中心はスマトラ島であり、セイマンケ

イ工業団地がある北スマトラ州のインドネシアにおける生産シェアはパーム原油(CPO)が

16%、天然ゴムが 13%となっている。そのため周辺の豊富な原料を利用した中間~ 終製

品の製造業誘致が期待されている。

表 16 インドネシアのパーム油、天然ゴム生産に占めるセイマンケイの位置づけ

出所:図 33 と同じ。

注:セイマンケイ付近の 5 県=Simalungun、Asahan、Serdang Bedagai、Langkat、Labuhan Batu。

(単位:千t、%)

パーム油 天然ゴム

パーム椰子

果実(TBS)パーム原油

(CPO)

パーム核油

(PKO) (ドライ)

割合 割合 割合 割合

インドネシア 43,492 100 35,359 100 7,072 100 3,230 100

スマトラ島 29,423 68 23,921 68 2,490 77

北スマトラ州 7,085 16 5,760 16 420 13

セイマンケイ付近の5県 3,368 8 227 7

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インフラ整備状況

(セイマンケイ工業団地内のインフラ整備状況)

セイマンケイ工業団地内のインフラ整備状況は表 17 の通り。

表 17 セイマンケイ工業団地内のインフラ整備状況

出所:図 33 と同じ。

(セイマンケイ工業団地外のインフラ整備状況)

空港は、もともとインドネシア空軍(スウォンド基地)と共用するポロニア国際空港が

あったが、航空需要の増加に伴い 2013 年 7 月にメダン市内から北東約 30km にクアラナム

国際空港が開業し、民間定期便は全て移転した。インドネシアではジャカルタのスカルノ

ハッタ国際空港に次ぐ規模を持つ空港である。年間 810 万人が利用可能で、シンガポール、

クアラルンプール、ペナン、バンコクなどに路線がある。なお新空港開業に合わせ、イン

ドネシア初の空港鉄道として、メダン市内と空港を結ぶ鉄道も開業した。

有料道路は現在、メダン市街やクアラナム国際空港から Tebing Tinggi までしか開通し

ていないが、政府は 2018 年 11 月までに Tebing Tinggi~Kisaran 間および Tebing Tinggi

~Pematang Siantar 間の供用開始を目指し建設中である。これが完成すればメダンからの

所要時間は 1 時間半へとほぼ半減する見込みで、物流や通勤上の利便性が格段に向上する

と期待される。

鉄道は、既存の Bandar Tinggi 駅とクアラタンジュン港を結ぶ 21.5km の区間を 2018

年 5 月に供用開始予定である。これに伴いセイマンケイ工業団地とクアラタンジュン港が

鉄道で結ばれることとなる。

水処理施設(WTP) 250m3/Hr

排水処理施設(WWTP) 250m3/Hr

ドライポート及び鉄道駅 2300TEU保管可能

油貯蔵施設CPKO(パーム核油) 3000t×2CPO(パーム原油) 5000t×5

電力 150KV/60MVA

天然ガスパイプライン 7500万ft3/日

通信/ITネットワーク 光ファイバー

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図 34 道路・鉄道インフラの整備状況

出所:図 33 と同じ(地図は Google Map を使用)。

港湾は現在、セイマンケイ工業団地から 146km 離れたブラワン港を利用しているが、

同港は大型船が入港出来ないため遠方に輸出する場合には積み替えが必要という弱点があ

った。

一方、日尼国家プロジェクトの国営アサハンアルミが建設した深水港(水深 14-15m)

のクアラタンジュン港では全長 400m の埠頭が現在整備中である。2018 年 2 月時点の工事

進捗率は 90%で、2018 年上期に整備が終わる予定である。取扱能力は年間 40 万 TEU 及び

液体貨物 350 万 t。スマトラ縦貫道路からのアクセス道路もしっかり作られ、セイマンケイ

工業団地とも鉄道で近く結ばれる予定である。工業団地から港まで 38km と近く、大型船

が入港可能であることから、輸送コストの削減が期待されている。

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工場や施設等の建設状況

セイマンケイ工業団地内の整備状況は下表の通り。2017 年末時点で本来の目的であるパ

ーム油や天然ゴムを原料とする製造企業としては 2015 年に操業開始した PT Unilever

Oleochemical Indonesia の 1 社のみである。一方、現在建設中の工場は 3 か所あり、2018

年 3~5 月にかけて稼動予定である。この他 2019 年に IPP(ガスタービン発電所、250M

W)が稼働を予定している。なお、調査当時はまだ着工していないようであった。

また工業団地の東部分には、ドライポートが造られ、通関手続はセイマンケイ工業団地

の中で完結するようになる。すぐ脇に鉄道の駅と有料道路入口が設けられる予定である。

以上が全て完成すると事業供用面積は 263.0Ha となり、同工業団地の計画総面積

1,933.8Ha の 13.6%の開発が完了することとなる。

なお既投資額は、管理会社の PTPNⅢが 8,471 億ルピア、入居企業は 10.1 兆ルピア(う

ち Unilever が 9.4 兆ルピア)で、前述した投資総額(PTPNⅢが 5.1 兆ルピア、入居企業が

129 兆ルピア)のそれぞれ 16.7%、7.8%に留まっている。

表 18 セイマンケイ工業団地の工場や施設等の建設状況

出所:図 33 と同じ。

No 事業主体 内容 面積(Ha)

稼動時期等

1 PT Unilever Oleochemical Indonesia 合計 20万t/年 脂肪酸 13.5万t/年 界面活性剤 1.5万t/年 ソープヌードル 4.0万t/年 グリセリン 1.65万t/年

27.28 2015年稼働

2 PT PLN 変電所(150 KV, 60 MVA) 14.203 PT Pertamina Gas ガス計量施設 1.004 工業省 R&D棟 1.02 2012年稼働5 PTPN Ⅲ ココナッツ油工場(75t/hr)

(Pabrik Kelapa Sawlt)13.40 2010年稼働

6 PTPN Ⅲ パーム核油工場(KPO、400t/日) 3.26 2011年稼働7 PTPN Ⅲ バイオマス発電所(3.5 MW×2) 5.00 2011年稼働8 PTPN Ⅲ 事務所 6.409 PTPN Ⅲ 従業員宿舎 45.01

10 PTPN Ⅲ 道路(No.43) 4.0911 PTPN Ⅲ 道路(No.28) 3.3612 PTPN Ⅲ 排水路 6.4513 工業省 (PMN) 油貯蔵施設 9.0314 工業省 (PMN) ドライ・ポート 15.0015 工業省 (PMN) 鉄道 6.0016 工業省 (PMN) 基幹道路(No.62) 22.0017 PT. Industri Nabati Lestari

(PTPNⅢとPTPNⅣの合弁)パーム原油(CPO、60万t/年) 7.50 2018年5月予定

(建設中) *17年末進捗度75%

18 PTPN Ⅲ、PT Pertamina、Posco Energy(韓国)の合弁

IPP (ガスタービン発電所)250 MW *燃料は天然ガス

20.00 2019年予定

19 PTPN ⅢのPertaminaの合弁 バイオマス発電所(1.6 MW) *燃料は椰子殻

2.00 2018年3月予定(建設中)

20 PT Alternative Protein Indonesia (PTAPI)

タンパク質*原料はパーム核肉を食べる昆虫BSF(Basic Soldier

fly)

51.00 2018年3月予定(建設中)

合計 263.00

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図 35 主な工場や施設の配置図

出所::PT. PERKEBUNAN NUSANTARA III (PERSERO)資料、Google Map 等をもとに日鉄住金総研

作成

土地等の賃借料

インドネシアにおける土地所有権は、インドネシア国民およびインドネシア政府により

指定された法人にのみ認められている。外資系企業については、これに代わるものとして、

建設権(HGB、期間 30 年)、あるいは利用権(HP、期間 25 年)を得た上で、特定の土

地で操業することができる15。

15 「インドネシアの投資環境」(2017 年 8 月、国際協力銀行)p69)

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セイマンケイ工業団地における土地等の賃借料は以下の通り。なお土地の長期契約期間

は 30 年間で、契約更新により 大 80 年間に延長可能である。

表 19 セイマンケイ工業団地の土地等の賃借料

出所:現地訪問調査時(2018 年 2 月 2 日)の聞き取り情報

注:米ドル換算レートは 13,636 ルピア/米ドル(2017 年末日)を使用

投資優遇措置等

投資優遇措置は、財政的優遇措置と非財政的優遇措置に分かれ、その具体的内容は

表 20 の通りである。

財政的優遇措置には税制優遇や外国人の資産保有(住宅またはアパート)などがある。

一方、非財政的優遇措置には雇用、ビザ、土地、許認可に関するものがあり、管理会社に

これらの権限を委譲・集中させることにより企業進出に必要な手続は全て現地で処理でき

るようなワンストップサービス体制としている。そのため進出企業はわざわざジャカルタ

に行って手続きを行う必要はない。

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表 20 セイマンケイ工業団地(経済特区、SEZ)の投資優遇措置

出所:図 32 と同じ

セイマンケイ工業団地のセールスポイント

工業団地管理会社 PTPNⅢ作成資料や現地での面談調査等によると、同工業団地のセー

ルスポイントは以下の通り。

第 1 に、ASEAN 全体のなかで見たときに地理的位置が優れていることである。マラッ

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カ海峡に面し、マレーシア、シンガポール、タイに近い。むしろ、ジャカルタやジャワ島

が遠く感じる場所である。セイマンケイ工業団地は、インドネシア国内ではなく、ASEAN

のなかで位置付けるほうがよいと考える。

第 2 に、今後インフラ整備の進展が見込まれることである。インドネシア政府は 2016

年 2 月に KEIN(国家経済産業委員会)をジョコウィ大統領の肝いりで設立し、製造業の高度

化に向けナショナルプランを作成している。この計画では北スマトラが 重要地域であり、

経済振興に不可欠なインフラ整備が推進されている。

KEIN は北スマトラに近いシンガポールが土地の制約に直面していることから、メダン

を核として各種インフラをシンガポールから北スマトラに移そうと構想している。海運分

野では、ブラワンとクアラタンジュンの二つの港をコンテナや石油の物流基地にしようと

計画している。航空分野では、シンガポールが満杯なのでメダンのクアラナム国際空港を

エアカーゴのハブ空港にしようと計画している。陸運分野では、あと 3 年でスマトラ縦貫

有料道路が完成する予定であり、鉄道整備もゆっくりとだが着実に進んでいる。

第 3 に、クアラタンジュン港と将来直結することである。足元は工業団地から 146km 離

れ、大型船が入港できないブラワン港を使っているが、18 年上期にはクアラタンジュン港

の新埠頭整備が完了予定である。工業団地から 38km と近くなり、大型船も使えるように

なることから物流コストの削減が期待できる。

第 4 に、土地収用問題が起こらないことである。セイマンケイ工業団地は元々、PTPNⅢ

(第 3 国営農園)が所有するアブラヤシ農園の中に造られた。樹齢が長く植え替え時期に

至ったアブラヤシの区域を工業団地に提供したため土地収用問題が回避されている。メダ

ン市はインドネシアでも特に治安の悪い都市と言われるが※、工業団地として中央が直接監

視し続けるので、治安の維持が期待される。

第 5 に、許認可関係のワンストップサービスを受けられることである。セイマンケイ工

業団地の管理運営はPTPNⅢが担い、所在地のシマルングン県政府の出先も置かれており、

ジャカルタに出向く必要はない。

第 6 に、土地賃借料が安いことである。30 年間借りる場合1㎡当たり 65-80 万ルピア

(48-58 ドル)であり、ジャカルタやスラバヤの 200-250 ドルと比べて安い(但しジャワ島

中部スマランの 50-80 ドルとは大きな差はない。いずれも現地調査で得た情報)。

第 7 に、セイマンケイ工業団地のある北スマトラ州は、全体として、電力不足となって

いるが、セイマンケイ工業団地は独自に電力源を確保するため、その影響を受けない。

その他、パーム油脂化学の原料となるパームオイル生産の中心地に位置すること、パー

ムオイルは RSPO 認証*を取得済みであること、豊富な水資源(Bah Tungguran 川から取

水)や安い労働力(図 36 参照)などがセールスポイントである。

*RSPO 認証:環境への影響に配慮した持続可能なパームオイルを求める世界的な声の高まりに応え、

世界自然保護基金(WWF)を含む関係団体が中心となり 2004 年に設立された RSPO(Roundtable on

※ 「インドネシアの投資環境」、2017 年 8 月国際協力銀行

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Sustainable Palm Oil、持続可能なパームオイルのための円卓会議)の関連団体が発行する認証。生

態系や生物多様性に関する責任や保全の義務、労働者・小規模農園との公平な関係等、一定の基準を

満たすことが必要で、欧米への輸出には必須とされる。

図 36 インドネシアの州別最低賃金(2017 年、月額)

(d) インドネシア政府が注力している主な地方工業団地(セイマンケイ除く)

このうち中部スラウェシ州のモロワリ工業団地では、現地の鉄鉱石やニッケル鉱石等を

原料として、中国資本によりステンレス鋼を中心とする大規模鉄鋼業の集積が加速してい

る。この動きはインドネシア政府が 2014 年 1 月に未加工鉱石輸出を原則禁止したことを受

けたもので、ステンレス鋼の原料であるニッケルが精錬品のみ輸出可能となったことが中

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国ステンレス企業のインドネシアへの大量進出の引き金となった。

(1) Kabil Intergrated Industrial Estate (KIIE) カビル工業団地

URL http://www.kcn.co.id/

http://www.kcn.co.id/images/Brochure/japanese.pdf

所在地 バタム島バタム市

アクセス シンガポールからバタム島へフェリーで 40 分、その後車で KIIE へ

バタム島のハン・ナディム国際空港から車で 10 分

面積 550ha

主要産業 石油ガス・エネルギー関連産業

運営者 PT. KABIL INDONUSA ESTATE, PT. KABIL CITRANUSA

魅力 ・FTZ=資本財、輸入する原料、材料に輸入税、付加価値税(VAT)などが不要

・島内での取引において付加価値税(VAT)不要

・外資99%可能

・世界59カ国と二重課税防止条約を締結

・税制優遇措置

・迅速な入国=ビザ取得不要(スマート・カード利用時)

現状

132,26ha (24%・空)

テナント 38社

(2) Kawasan Industri Buli ブリ工業団地

所在地 北マルク州、東ハルマヘラ市、ブリ地区

アクセス ブリ空港から約 15km

面積 300 ha

事業 フェロニッケル、ステンレス鋼およびその下流製品産業専用

運営者 PT Antam Persero

その他 投資額 355 億円位

現状 港、酸素プラント、管理事務所が完成

(3) Kawasan Industri Bitung (KEK) ビトゥン工業団地

URL http://www.academia.edu/12088925/Profil_Kawasan_Bitung_dan_Sekitarny

a

http://kek.go.id/kek-di-indonesia/bitung/

所在地 北スラウェシ州

アクセス マナドから東へ 40km、ビトゥン港へ 6 km, サム・ラトゥラギ空港へ 37 Km

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面積 534ha

主要産業 工業、物流

水産加工(鮮魚加工、缶詰)

農産物加工(植物油、カカオ)

物流(梱包、検査サービス、コンテナ、倉庫など)

運営者 PT. Sulut Membangun

テナント PT.MAPALUS MAKAWANUA CHARCOAL INDUSTRY

PT.BRANDTWOOD INTERNATIONAL

PT.PELINDO IV

魅力 経済特区(SEZ、14年指定)

豪州東部と東アジア間の航路に立地

(東部インドネシアにおける成長拠点や流通拠点)

ビトゥン港:水深は22-30m、国際ハブ港に指定

インフラ 道路:マナドービトゥン間の有料道路開発、国家幹線道路の整備

上下水処理施設、給配水網、多目的貯水池の整備

① 電力:容量増、変電所と送配電網の開発

Tanjung Merah変電所:30MW(2016年以降稼動)

Likupang地区 :ガスタービン発電所、100MW

Lahendong地区:地熱発電所、50MW

Gorontalo地区:ガスタービン発電所、100MW

Amurang地区 :ガスタービン発電所、120MW

ゴロンタロ農園、50MW

ビトゥン港拡張

空港:サム・ラトゥラギ空港の滑走路拡張

(4) Kawasan Industri Konawe コナウェ工業団地 【一部運営中】

所在地 南東スラウェシ州コナウェ県

面積 5500ha

主要産業 フェロニッケル、ステンレス鋼

主要企業 江蘇徳龍鎳業(JIANGSU DELONG NICKEL INDUSTRY、中国)

運営者 PT Virtue Dragon Nickel Industry

Perusahaan Daerah Konawe Jaya

PT. KONAWE PUTRA PROPERTINDO

入居企業 江蘇徳龍鎳業、2017 年 4 月、ニッケル銑鉄工場稼働(年産能力 60 万 t)

(他にニッケル銑鉄やステンレス工場等の建設計画が報道されたが続報なし)

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(5) Kawasan Industri Morowali モロワリ工業団地 【運営中】

所在地 中部スラウェシ州モロワリ県

面積 1200ha

主要産業 ニッケル銑鉄、鉄鋼(ステンレス鋼、普通鋼)、金属加工

主要企業 青山集団(中国)が投資主体(現地 Bintang Delapan Gr 等と合弁)

第 1 期:PT Sulawesi Mining Investment (SMI)

第 2 期:PT Indonesia Guang Ching Nickel & Stainless Steel Ind. (GCNS)

第 3 期:PT Indonesia Tsingshan Stainless Steel(ITSS)

*第 2-3 期は阪和興業が少数出資

第 4 期:PT IRNC Indonesia

第 5 期:PT TSI Indonesia

*徳龍控股(中国) 45%、青山集団 43%、現地 IMIP 12%の合弁

運営者 PT Indonesia Morowali Industrial Park (IMIP)

TSINGHANG INDUSTRIAL MOROWALI INDUSTRIAL PARK

入居企業 ニッケル銑鉄工場やステンレス製鉄所等に78兆ルピアの投資が計画。

第1期:SMI、2015年にニッケル銑鉄(NPI)工場稼働(年産能力30万t)

第2期:GCNS、2016年にNPI工場稼働(60万t)

2017年5月にステンレス製鋼・熱延工場稼働(100万t)

第3期:ITSS、2017年にNPI工場(60万t)、ステンレス製鋼稼働等(100

万t)

第4期:IRNC Indonesia、2018年2月にステンレス冷延工場稼働(35万

t)

第5期:TSI Indonesia、2018年末-19年初に高炉2基(計350万t)稼働予

2020年に棒線工場稼働予定(150万t)

義聯集団(台湾)、2020年にニッケル銑鉄工場(80万t)稼働予定

将来ステンレス製鋼、熱延工場を計画(120万t)

(6) Kawasan Industri Palu ・ Palu Industrial Estate (PIE) パル工業団地

URL http://kek.go.id/kek-di-indonesia/palu/

所在地 中部スラウェシ州

アクセス パル空港より 20 分

面積 1500ha

主要産業 パームオイル、天然ゴムの加工、農産品(カカオ、わかめ)、石油化学

投資企業 PT. Multistrada Arah Sarana、天然ゴム加工

Parigi-Moutong Regency、ゴム農園

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中国 Shenzen Nanli Engineering Decoration:物流(倉庫・保管等)

中国 Sinosteel:ニッケル加工工場を計画。

PT Intraco Penta 社(Volvo の子会社):重機メンテナンス等

その他 経済特区(SEZ、14 年指定)

(7) Kawasan Industri Bantaeng バンタエン工業団地 【一部運営中】

URL http://bantaeng-indpark.com/

所在地 南スラウェシ州

アクセス マカッサルから車で約 3 時間(120km)

面積 3000ha

主要産業 フェロニッケル、ステンレス鋼、downstream related industry

運営者 ISDN HD(シンガポール)

Perusda Bajiminasa (インドネシア国営)

PT.Centuri Indonesia Sekawan

入居企業 PT. Huadi Nickel Alloy

PT. Titan Mineral Utama

PT. Bantaeng Central Asia Steel

PT. Sinar Deli Bantaeng

PT. Intim Perkasa Energi

PT. Multi Kilang Pratama

PT. Sergion Techno

Inensunan Mills Indonesia

(8) Kawasan Industri Ketapang クタパン工業団地

所在地 西カリマンタン州クタパン県

面積 1000ha

主要産業 パームオイル、ボーキサイト、鉄鋼

主要企業 PT. WELL HARVEST WINNING ALUMINA REFINERY

運営者 PT. Ketapang Bangun Sarana

インフラ

事業許可と土地収用済

道路建設は進んでいない

ワンストップサービスセンター:クタパン州

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(9) Kawasan Industri Mandor (KIM)マンドル工業団地

所在地 西カリマンタン州ランダック県

アクセス ポンティアナック(西カリマンタン州州都)から 88km

面積 306ha

主要産業 パームオイル、天然ゴム、フェロニッケル、カカオ

主要企業 PT. CAKRAWALA ENERGI NUSANTARA

運営者 PT. Landak Barajaki

インフラ

火力発電所 PLTU 1 Kalbar-Parit2 Pontinak 50 MW×2

火力発電所 PLTU Parit Berkat Pontianak 25 MW×2

(10) Kawasan Industri Batu Licin (KIB)バトゥリチン工業団地

所在地 南カリマンタン州

アクセス 空港から 3km、

面積 955ha

主要産業 石炭、鉄鋼

運営者 PT. MERATUS JAYA IRON AND STEEL

入居企業 PT. MERATUS JAYA IRON AND STEEL

2012 年に直接還元鉄工場稼働(年産能力 31.5 万 t)

Gunung Garuda/神霧科技集団

2017 年 12 月、製鉄所建設を計画中と報道(炭素鋼 300 万 t)

(11) Kawasan Industri Jorong

URL https://jorongport.com/

所在地 南カリマンタン州

面積 6370ha

主要産業 工業、農産品加工

主要企業 PT. SEMERU SURYA

PT. DELTA PRIMA STEEL

PT. GUNUNG GARUDA

運営者 PT. Jorong Port Development (JPD)

インフラ 2017 年1月インドネシア国営電力と MOU 締結(火力発電 154MVA)

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(12) Tanggamus; Kawasan Indonesia Maritim (KIM) Repindo International Maritime

Industrial Park

所在地 スマトラ島 Lampung 州

面積 3500 ha

運営者 PT Repindo Jagad Raya

その他 建設中(2018年開始)

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② インドネシアのパームオイル産業の現状

(a) パームオイルとは

パームオイルはアブラヤシの果実から得られる植物油である。食用油としての用途が圧

倒的だが、マーガリン、ショートニング、石鹸の原料としても利用されている。また近年

では、バイオディーゼル燃料としての利用も進められている。現在、世界で も生産され

ている植物油である。なお ASEAN 諸国では食用油と言えばパームオイルだが、低温にな

ると固体化するため、日本などでは一般家庭で食用油として用いられることはない。但し

天ぷらなどの揚げ物は時間が経って冷えた後に油が固体化するため、水っぽくならず揚げ

たてのからっとした状態が続くという特長がある。

・世界のパームオイル生産におけるインドネシアの位置づけ

2016 年の世界のパームオイル生産量は 5,880 万 t だった。トップはインドネシア(3,600

万 t、シェア 61.2%)、第 2 位はマレーシア(2,100 万 t、35.7%)であり、両国だけで世界の

96.9%を占めた。

表 21 世界の国別パームオイル生産量(2016 年)

出所:indonesia-investments.com 2017.6.26

https://www.indonesia-investments.com/business/commodities/palm-oil/item166?

パームオイルの需要は、世界的な人口増加に伴いパームオイル由来の原料を含む食品や

化粧品の消費が増加傾向にあることや、各国政府がバイオ燃料の使用を奨励していること

から、世界的に増え続けている。

もともとパームオイル産業の発展の礎を築いたのはマレーシアで、米国産大豆油に対抗

する戦略が根底にあった。アブラヤシの原産地はアフリカだが、これからは油があまり採

れなかった。1960 年代からマレーシアは独自に品種改良を進め、油が多く採れる品種を開

発し、当時の世界の食用油市場を支配していた米国産の大豆油に対抗しようとした。マレ

ーシアが開発したアブラヤシの苗木は国外持ち出し禁止であった。

米国の大豆油業界は、パームオイルには発がん性の疑いがあるとメディアを使ってアピ

ールするなど、大規模な反パームオイルキャンペーンを展開した。もともとパームオイル

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は赤い色を帯びているが、この色を取り除く薬剤に発がん性の疑いがあると米国の大豆油

業界は主張した。

これに対しマレーシアは、自国だけでアブラヤシを独占する戦略を見直し、仲間を増や

して米国の大豆油業界に対抗しようとする戦略に転換した。すなわち苗木の禁輸措置を解

除し、インドネシアやタイなど他国にも積極的に苗木を販売するようになった。現在はア

フリカ、南米諸国にもマレーシアはアブラヤシの普及に向けた活動を展開している。

インドネシアは 1990 年代半ばからパームオイル生産を急増させ、2005 年にマレーシア

を抜いて生産量が世界一になった。なおインドネシアパームオイル協会(Gapki)は、2020

年の CPO(パーム粗油)の生産目標を 4000 万トン以上としている。

図 37 インドネシアとマレーシアのパームオイルの生産推移

出所: Index mundi(原典は米国農務省)

https://www.indexmundi.com/agriculture/?country=my&commodity=palm-oil&graph=production

(b) インドネシアのパームオイル生産、輸出の現況

インドネシアのパームオイルの多くは輸出されており、重要な外貨獲得源となっている。

主な輸出先は中国、インド、パキスタン、マレーシア、オランダである。インドネシアの

GDP に占める割合は 1.5-2.5%に留まるが、産業が未発達の地方において何百万人もの雇用

機会を提供している。

また、人口(特に中流階級)の拡大や政府のバイオディーゼル支援策により、インドネシ

ア国内の需要も拡大している。既存のココアやコーヒーからの転作に加え、熱帯雨林や泥

炭地の開発によって同国のパームオイル生産量は増加したが、環境への懸念もあるため、

近年はパーム農園開発を抑制する政策も打ち出されている模様。

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表 22 インドネシアのパームオイル生産・輸出・プランテーション面積

出所:表 21 と同じ

インドネシアのパームオイルの生産(2016 年)は、スマトラ島が 52%、カリマンタン

島が 45%と、二つの島で 97%を占めている。

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表 23 インドネシアの地域別パームオイル生産量

出所:Statistics - Indonesia, "Indonesian Palm Oil Statistics", 2016

州別に見ると、一番多いのは中部カリマンタン州(20%)で、次いでリアウ州(19%)、

北スマトラ州(14%)となっている。

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インドネシア統計局(BPS)のデータによると、インドネシアのパーム農園の総面積は

約 1190 万 ha で、2000 年(約 400 万 ha)の約 3 倍となった。この数字は 2020 年までに

1,300 万 ha に増加すると見込まれている。

パーム農園を所有形態別にみると、一番大きいのは Wilmar Group や Sinar Mas Group

などの大型民営農園で全体の 52.9%を占めている。次に多いのは零細農民(40.5%)である。

図 38 パーム農園の所有形態

出所:表 21 と同じ

(c) パームオイル産業の高付加価値化への取組み

インドネシアは隣国のマレーシアと比べると、パームオイル(粗パーム油(CPO)やパ

ーム核油(KPO))から脂肪酸やグリセリンなどの中間体を生産する産業形成が遅れた。こ

のためインドネシアでは高付加価値製品が十分製造できず、パームオイルのまま輸出する

割合が高かった。

インドネシア政府はこうした状況を問題視し、高付加価値品の生産拡大を推進し、収入

増加や市況の変動による影響の緩和を目指している。またそのために、パームオイルを中

核とした産業集積の形成をパームオイルの生産が盛んなスマトラ島などに重点支援してお

り、工業団地の造成などインフラ整備にも力を入れている。

このような政策を受け、ユニリーバなどの大手企業が設備投資を行った結果、同国のパ

ームオイル精製能力は、2012 年の 2,130 万 t から 2015 年には 4,500 万 t へと 2 倍以上に

増加した。

国連統計をもとにインドネシアとマレーシアのパームオイルの輸出推移を見てみた。マ

レーシアは従来から粗油(HS151110)が少なく、その他(HS151190)が主体だった。一

方インドネシアの輸出は、従来は粗油主体だったが、2012 年以降はその他(HS151190)

が上回るようになった。また粗油の輸出量は依然としてマレーシアより多いものの、粗油

の輸出割合は 2014 年からマレーシアを下回るようになった(2016 年の粗油の輸出割合は

インドネシアが 23.2%、マレーシアは 27.8%)。

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図 39 パームオイルの輸出量(HS コード 1511)

出所:国連統計(http://www.intracen.org/)

注:HS コード 1511 の通関統計品目標の名称は、パーム油及びその分別物(化学的な変性加工をしてない

ものに限るものとし、精製してあるかないかを問わない)」で、粗油は 151110、その他は 151190 である。

一方、両国の輸出価格を見ると、粗油では大きな差はないが、その他ではインドネシア

産がマレーシア産よりもわずかながら安い状態が続いている。マレーシアは高級品が多く

品質が良いことや、インドネシアはフレートが高い分、FOB が安くなっているなどの可能

性が考えられる。

図 40 パームオイルの輸出単価

出所:図 39 と同じ。

なお、インドネシアの主なパームオイル関連企業と、有望な下流の油脂化学製品等は以

下の通り。

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表 24 インドネシアの主要油脂化学企業

出所:各種情報をもとに日鉄住金総研作成

表 25 インドネシアの主要パーム農園

出所:能力は「Profil Industri Oleokimia Dasar dan Biodiesel」(2014、工業省)他

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図 41 インドネシアの主要油脂化学企業の工場所在地

表 26 インドネシアの主要バイオディーゼル生産企業

出所:表 25 と同じ

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図 42 インドネシアで考えられている今後の油脂化学品の下流製品

出所:「インドネシアにおける石油化学産業及び油脂化学産業に関するミッション派遣事業報告書」

(H24 年 2 月、三菱化学テクノリサーチ)等をもとに日鉄住金総研作成。原典はインドネシア工業省資料

図 43 インドネシアにおいて有望な下流の油脂化学製品

出所:図 42 と同じ

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(参考)世界の天然ゴム産業におけるインドネシアの位置づけ

今回調査ではセイマンケイ工業団地へのパーム油脂化学品及び下流の油脂化学製品、パ

ーム椰子殻や絞りかす等を利用する日本企業の誘致ニーズに基づく調査を進めたが、同工

業団地では、周辺で多く産出される天然ゴムを利用した産業誘致のニーズも見込まれるこ

とから、今後の検討の参考までに以下のデータも添付する。

これによるとインドネシアはタイに次ぐ世界第 2 位の天然ゴム生産国(2016 年)である。

2001 年以降、リーマンショックの影響で減産となった 2008-09 年を除き、中国をはじめと

する世界的な需要増加に牽引されて増産基調を続けたが、2014 年は 5 年ぶりに減少し 2016

年にかけて横ばい基調で推移している。

図 44 世界の天然ゴム生産推移

出所:北辰物産 HP(http://www.hoxsin.co.jp/hadoutenbou/data/x/rub/stn.pdf) をもとに日鉄住金総研作成

注:2016 年のその他はベトナムを含む。

表 27 世界の国別天然ゴム生産量(2015 年)

出所:図 37 に同じ。

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(2)日本企業との連携可能性の検討(有望インドネシア企業の発掘)

パームオイル由来の中間製品の製造分野について、セイマンケイ工業団地に興味を示す

日本企業を見つけることは出来なかった。主な理由は以下の通り。

・マレーシア等で生産拠点があり、インドネシアに工場を建設するニーズがないこと

・交通・物流インフラの整備水準が低いこと

・日本人駐在員向けの日本食レストラン、診療所、銀行などの生活関連施設の未整備

・優秀な人材や設備メンテナンス企業の不足

一方インドネシア側では、工場再開や遅延している工場建設を促進させるため投資パー

トナーを求めている企業が見つかり、パートナーになり得る日本企業を探索中である。

第二のパームオイル由来の中間製品を使用する分野について、インドネシアへの生産拠

点建設や、インドネシア企業との取引の新規開始に強い意欲を示す日本企業は少なかった。

主な理由は以下の通り。

・マレーシアを基軸としたサプライチェーンが既に確立し安定的に機能していること

・インドネシア製品の品質や供給の安定性が要求水準を満たしていないこと

言い換えればマレーシアに比べ、パームオイルの裾野産業整備開始が遅れたため、日本

企業のアセアン進出の波に乗り遅れ、上のような結果になったと考えられる。そのためセ

イマンケイへの日本企業誘致には、優遇措置の更なる拡充やインフラの整備加速が必要と

思われる。

インフラの未整備など種々の課題はあるものの、人口の大きさや足元の経済成長などを

考えると、インドネシアの消費市場としての将来性を認識している日系企業は見受けられ

た。また市場拡大が見込まれるハラル関連市場(食品、医薬品、化粧品など)に参入する

ため、認証取得へ関心を示す日本企業も数社あった。

一方インドネシア側では、訪日観光客向けのハラル医薬品の OEM 販売を希望している企業

が見つかり、パートナーになり得る日本企業を探索中である。

第三のパーム椰子殻や絞りかす等の利用分野については、これらを炭化することにより

土壌改良剤等を製造するバイオマス炭化プラント技術を保有している日本企業と、本プラ

ントに興味を示すインドネシアのパーム椰子殻輸出企業を見つけることができた。

(a) セイマンケイ工業団地と他の工業団地との比較

セイマンケイ工業団地は工業団地外のインフラ(道路、港湾等)の整備がが進めば、進

出を検討する日本企業が出てくる可能性もある。

今回の調査では、ジャカルタ近郊の成功した工業団地 2 カ所を訪問調査した。このうち

の A 工業団地をセイマンケイ工業団地と比較することにより、インドネシア政府が開発に

注力しているジャワ島以外の工業団地(セイマンケイ工業団地など)への日本企業誘致に

向けた課題の抽出や開発成功のための示唆点がないか考察した。

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A 工業団地の概要

ジャカルタ中心部、主要港、空港から好アクセスである。

2018 年 1 月現在、日系の自動車関連企業を中心に入居。

近年、レンタル工場や物流倉庫も完成した。

A 工業団地のセールスポイント

A 工業団地のセールスポイントは、好立地、安心のインフラ設備、充実した付帯設備な

どである。以下それぞれについてコメントする。

・立地の良さ:

ジャカルタ・チカンペック高速道路のインタチェンジと直結しており、高速道路から

直接進入可能である。また近隣の A 市中心部まで 15 分であり、ローカルスタッフの通

勤に便利なロケーションとなっている。

周辺は人口も多く、ワーカークラスの獲得が容易である(但しエンジニア、経理、人

事などのスペシャリストはより広いエリアから確保する必要がある)

・充実したインフラ設備:

電気は、インドネシア初となる国営電力会社 PLN との優先供給契約を締結し、電力

の安定供給を実現している。

工業用水は独自の工業用水と、廃水処理施設により供給している。工業用水、廃水処

理施設ともに、それぞれ 2 基設置しており、供給能力は 3 万 t/日、廃水処理能力は 3 万

1,500t/日である。

なお電気と工業用水は供給が途絶しないよう万全の態勢を整備している。工業用水は

余裕を持って運用しており、バックアップ用として貯水池も整備している。

通信については大容量の光ファイバーケーブルを敷設済である。

・サポート体制:

現地日本人スタッフによる万全のフォロー体制を敷いている。物流業務も工業団地運

営者の関連会社に任せることが可能である。

・豊富な付帯設備:

ゴルフ場、日本食レストラン、コンビニ、銀行、クリニック、日系旅行代理店、総合

スポーツセンターなどがある。また工業団地とゴルフ場に隣接して長期滞在型のバリ風

ホテルがある。ホテルには日本人スタッフが常駐し、日本風呂や日本食レストランもあ

る。

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・日本企業を呼び込むための工夫など:

ハード面としては、入居企業に生産に専念できる環境を提供することに注力しており、

特にインフラ(水、電力)の供給途絶がないようにしている。

一方ソフト面の 1 番の特徴は CSR である。CSR は義務付けられているが、中小企業

では単独での対応が困難なため、一企業あたり金額を決めて毎月徴収し、各種プログラ

ムを実施している(奨学金、農業技術指導など)。また入居企業間の親睦を図るため自

治会を作り、管理会社が事務局となって活動している。

なお労働争議の先鋭化を受け、工業省から National Vital Object に指定されて重点

警備対象となり、万全のセキュリティ体制を敷いている(工業団地内の監視カメラは警

察に接続)。

近年はインドネシア政府投資調整庁(BKPM)から「クリック(KLIK)」制度適用

団地として認定され、入居企業は環境許可、建築許可の交付を待たずに工場建設を開始

可能となった。

A 工業団地周辺のインフラ整備状況

以上のように A 工業団地は大きな成功を収めているが、足元の大きな悩みは交通インフ

ラが需要に追い付いていないことによる深刻な交通渋滞である。原材料や商品の入出荷に

時間がかかり不効率である。またジャカルタ市街から A 工業団地に通勤する場合、片道 2-3

時間半もかかるため、日本人駐在員(特に単身赴任者)はどんどん東へ移住している。

このような問題を解決するため、ジャカルタ周辺では各種交通インフラの整備が進めら

れている。

インドネシア 大の貿易港でジャカルタ唯一の港であるタンジュンプリオク港が貨物輸

送量の増大や、渋滞による同港へのアクセスが悪化したことを受け、日本政府の資金協力

により新たにパティンバン港の建設が計画されている。A 工業団地から西へ直線距離で約

70km に位置しており、2018 年着工、2019 年 3 月一部開港の予定で、2024 年にはコンテ

ナ 80 万 TEU、完成車 36 万台の取り扱いを見込んでいる(但し予定通り完成するかは不透

明との指摘もある)。

現在、チカンペック高速道路はカラワンまでの約 37km を二層化すべく工事中で高架橋

の建設が進められており、2019 年運用開始予定である(図 46)。

また航空需要増加に対応するため、バンドンの東方 68km に 2015 年から西ジャワ国際

空港(クルタジャティ国際空港)の建設が進められており、2018 年 6 月に開業予定である。

中国が受注した高速鉄道(ジャカルタ~バンドン間 142km)も、高速道路に平行して建

設予定であり、工業団地が集積するカラワンなどに駅が設置される予定である。但し完成

予定時期は当初の 2019 年から 2020 年に訂正され、更なる遅延の可能性もある。

以上のように、A 工業団地の周辺ではジャカルタ中心部への一極集中がもたらした慢性

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的な渋滞などの弊害を解消すべく、交通インフラの整備が着々と進められており、その早

期の整備が望まれている。

図 45 ジャカルタ周辺のインフラ整備計画

出所:各種情報をもとに日鉄住金総研作成。地図はウィキペディア(インドネシア高速鉄道計画)を利用

図 46 二層化工事中の高速道路(高架橋を建設中)筆者撮影

セイマンケイ工業団地への日本企業誘致に向けた課題や示唆点など

前述したような A 工業団地の現状を踏まえると、インドネシア政府が開発を推進してい

るセイマンケイ工業団地やジャワ島以外の工業団地への日本企業誘致に向けた課題や開発

成功のための示唆点は以下のように整理できる。

入居企業に生産に専念できる環境を提供するため、ハード面とソフト面で様々な工夫が

必要である。

ハード面では、まず工業団地内のインフラ(電力、水など)や、工業団地外のインフラ

(道路や港湾など)の整備は必須である。

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またソフト面では、まず日本食レストラン、コンビニ、銀行、診療所、長期滞在型ホテ

ルなどの生活関連施設の充実が必要である。さらに入居企業間の親睦を図るため自治会を

作り、管理会社が事務局となって活動したり、入居企業に義務づけられている CSR が実行

したりしやすいよう、管理会社が各種プログラムを作成するなどの仕組みづくりが重要で

あると思われる。

セイマンケイ工業団地の現状を見ると、工業団地外のインフラ(道路、港湾)について

は整備が不十分であり、今のままでは日本企業を誘致することは困難である。逆に言えば、

工業団地外のインフラ整備が進めば、進出を検討する日本企業が出てくる可能性もある。

但しセイマンケイ周辺には 130km 離れたメダンまで一定規模の都市はなく、今後道路が整

備されたとしてもメダンから車で 1 時間かかる。そのため工業団地近くに住むためには、

日本企業駐在員向けの各種生活関連施設の充実が求められる。

A 工業団地の入居企業の中核となる四輪、二輪メーカーは、組立産業という特性上、多

種多様な協力会社が近隣に存在して初めて効率的な生産が可能になる業態である。そのた

め装置産業型のパーム油脂化学やゴム産業を誘致対象とするセイマンケイ工業団地は、大

型企業が入居すれば同時に多数の協力企業も入居するという訳にはいかない。また A 工業

団地はインドネシア経済の中心で大きな人口を抱えるジャカルタの近郊にある。そのため

両工業団地を単純比較することは難しい面もあり、セイマンケイ工業団地にとって入居企

業が少ない段階で、日本食レストラン、コンビニ、銀行など生活関連施設を充実させるこ

とは難しいかもしれない。しかし管理会社が主導して入居企業の CSR 実施をサポートする

などの成功事例を取り入れていくことは参考になると思われる。

(b) パームオイル由来の中間製品を製造する企業の探索

脂肪酸、グリセリン、脂肪酸アルコールなどのメーカーや、これらを原料として大量に

消費する企業を中心に探索した。

その結果、本分野については、セイマンケイ工業団地を含めインドネシアにおいて、パ

ームオイル由来の中間製品工場を新たに設立することに興味を示す日本企業を見つけるこ

とは出来なかった。企業ヒアリングの結果、主な理由は以下の通りであった。

まず第 1 に、既にマレーシア等で生産拠点を確保済であり、インドネシアに工場を別途

建設するニーズがないことである。

そもそもパームオイル由来の中間製品を競争力あるコストで製造するには、自社の消費

および他社への販売で一定以上の数量が必要である。このような数量を確保できる企業は

限られているが、これらの企業の多くは既に生産拠点をインドネシア以外に確保済である

ことが今回の調査で明らかになった。

但し以上はあくまで現状を述べたものであり、後述するように自社製品等への需要拡大

により増産が必要になった場合は、インドネシアでの工場建設も選択肢に入ってくると思

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われる。

第 2 に、交通・物流インフラの整備水準が低いことである。

第 3 に、セイマンケイにおける日本人駐在員向けの日本食レストラン、診療所、銀行な

どの生活関連施設の未整備である。

第 4 に優秀な人材や設備メンテナンス企業の不足である。

その他、マレーシアと比べた場合、インドネシアにおける英語教育のレベルが低いこと

や、現地企業の技術力への懸念などの指摘があった。

このように日本企業は、インドネシアにおけるパームオイル由来の中間製品工場の新規

設立に総じて積極的ではない。しかし近年、アセアン各国の中間層の所得増加を受け、品

質や機能が優れた洗剤やボディソープの需要が伸びていることから、これに対応してイン

ドネシアに工場を作る動きも一部で出ている。

洗剤・トイレタリー・化粧品メーカー大手の花王は 2016 年 12 月、インドネシアのスマ

トラ島で洗剤などに使われる主力材料である脂肪酸を製造する合弁会社の設立で合意し、

2019 年の操業開始を目指すと発表した。なお生産した脂肪酸はタイ、インドネシア、ベト

ナムなどの各地の 終製品の工場に供給する。同社は東南アジアでは、脂肪酸を現地で調

達していたが、同社の高品質な製品の需要が伸び、今後の調達が不安定になる可能性があ

った。そのため現地で高品質な原材料の安定的な調達体制を整備することで、自社製品の

商品力を高め、シェア拡大を狙うこととした。同社のプレスリリース資料ではインドネシ

アに合弁会社を設立したねらいについて、「花王は、油脂原料が豊富なインドネシアに」と

冒頭に記載していることから、この点を高く評価したものと推察される。

(c) パームオイル由来の中間製品を利用する企業の探索

食用油、食品添加剤、乳化剤、界面活性剤、洗剤、シャンプー、石鹸、化粧品などのメ

ーカーを中心に探索した。また 2018 年 1 月末から 2 月初めにかけて行った現地調査で追加

把握したニーズに基づき、OEM 製薬とタイヤメーカーについても探索した。

その結果、本分野については、インドネシアへの生産拠点建設や、インドネシア企業と

の取引拡大や新規開始に強い意欲を示す日本企業は少なかった。主な理由は以下の通り。

まず第 1 に、マレーシアを基軸とした安定的なサプライチェーンが確立しており、新た

にインドネシアから購入するニーズが少ないことである。

但しマレーシアへの原料依存を転換する企業も出ている。

第 2 に、インドネシア製品の品質や供給の安定性が要求水準を満たしていないことであ

る。

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第 3 に、マレーシアと比べるとインフラの整備が遅れていることである。

ジャカルタ周辺では道路容量の不足に伴う渋滞、スマトラ島などの地方では高規格道路

が不足しており、その結果、原料や製品の輸送が非効率になりコストがかかると見方が多

かった。また電力供給力の余裕が少ないため工場操業に支障が出るとの指摘があった。

第 4 に、一部企業に当てはまるが、中間製品を利用する工場建設に必要な、一定量以上

の出荷先が見込めないことである。

その他、優秀な人材の不足、取引商社がインドネシア産を扱っていないこと、顧客企業

の技術・商品開発拠点が少ないこと、などの指摘があった。

以上を総括するとインドネシアは、マレーシアに比べてパームオイルの裾野産業整備開

始が遅れたため、日本企業のアセアン進出の波に乗り遅れ、現在のような結果に至ったと

考えられる。

そのためセイマンケイを初めとするインドネシアの工業団地への日本企業誘致や、イン

ドネシア企業との取引拡大や新規開始を進めるためには、マレーシアなどの他国を上回る

ような優遇措置、技術力向上による品質改善、長期安定的取引を重視する日本的商慣行の

尊重、弱点と指摘されるインフラの整備加速など、多方面の地道な取り組みが望まれる。

なお、セイマンケイ工業団地とマレーシアの投資優遇措置を比較すると、明確な優劣は

つけられない(表 28)。

但し人口の大きさや足元の経済成長などを考えると、インドネシア市場の将来性を認識

し、インドネシア企業との取引拡大や連携を希望する企業も発掘された。特に市場拡大が

見込まれるハラル関連市場(食品、医薬品、化粧品など)に参入するため、認証取得へ関

心を示す企業が散見された。しかし日本では具体的なハラル対応に関する情報が少なく、

インドネシア企業や当局との連携が課題解決策の一つになる可能性がある。

以下、各社の関心分野を紹介する。

AD 社(機能性食品素材、乳化剤等)

インドネシアについて原料調達と製品供給の両方に関心あり。また現在は工場で生産す

るために必要な量を消費していないためまだ早いが、本腰を入れるのであれば東南アジア

に拠点を設立する可能性がある。

AE 社(化粧品原料、界面活性剤等)

近年、品質や供給の安定性以上に RSPO 認証の有無が重要になっている。同社の製品の

半分は輸出されているが、当社の主要顧客である大手有名化粧品メーカーは環境保護問題

に敏感でありパーム油由来の成分について RSPO を要求している。インドネシア産でも

RSPO 認証があり価格がリーズナブルならば選択肢に入るので、良い調達先があれば興味

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がある。

またインドネシアにおけるハラル対応に関心がある。ハラル対応のための分かりやすい

サポートがあれば助かる。

インドネシアは人口が多く大きな市場と認識しているが、販売先の調査ができていない。

インドネシアの食品市場、特に飲料分野に強いコンサルタントがいたら紹介して欲しい。

同社は缶チューハイなど透明な飲料に香料(シトロン、パイナップルなど)を溶かす(可

溶化)技術、甘味料が入っても濁らない技術、冷凍食品を解凍しても水がでないようにす

る技術やノウハウを持っており、インドネシア企業とタイアップしたいと考えている。ま

た医薬品分野でもインドネシア企業とタイアップしたい。

AQ 社(石鹸、トイレタリー、化粧品等)

同社は工場を海外に作る意向はないが、安価で良質な界面活性剤がインドネシアで作ら

れるのであれば、是非購入したい。

AW 社(石鹸、化粧品等)

インドネシアへの輸出を準備しており、輸入のための許認可が下りるのを待っている段

階である。現地で販売するにはハラルに対応する必要があるが、日本にはハラルへの対応

について熟知しているところはなく、結局現地で対応せざるを得ないことが課題と認識し

ている。

なお 2018 年 1 月末から 2 月初めにかけて行った現地調査で、日本企業との連携ニーズ 2

件を追加把握した。

第 1 は、インドネシアの製薬会社からのニーズで、インドネシアからの訪日観光客向け

にハラル薬品や化粧品を販売したり、インドネシア向けに安価なスキンケア製品などを調

達したい(いずれも OEM 可)、というものである。

これに関しては、当分野で OEM を手掛ける複数の日本企業にあたった結果、以下の会

社が高い関心を示した。

AZ 社(製薬)

原料の仕入れから出荷にいたる各生産工程において、均一で高品質な製品づくりを徹底

管理している。ハイレベルな品質保証が信頼につながり、受託製造(OEM)の依頼も増加

している。

なおインドネシア企業のニーズには工場設備等の関係で直接の対応はできないものの、

異なる形で当該インドネシア企業との協業を希望している。

本件については当該インドネシア企業や関係者等の情報を提供し、双方にて協議してい

く予定である。

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第 2 は、スマトラ島にある工業団地の管理会社のパーム・ゴム農園からのニーズで、同

社が管理するスマトラ島の工業団地にタイヤなどのゴム製品工場を誘致したい、というも

のである。

これに関しては、タイヤメーカー等 5 社に関心がないか打診したが、回答は得られなか

った。タイヤ工場は通常、自動車工場の近くに立地する。インドネシアの自動車工場はジ

ャカルタ周辺にあり(図 29 参照)、実際、前述した 5 社のうち 2 社はジャカルタ周辺でタ

イヤ工場を、残る 1 社も自動車部品用のゴム製品工場をジャカルタ周辺でそれぞれ操業し

ている。そのため自動車工場から遠く離れたスマトラ島にタイヤ工場を建設するのは輸送

コストやジャストインタイムへの対応を考えると現実的ではないと判断したと思われる。

(d) パーム椰子殻や絞りかす等を利用する企業の探索

本分野では、パーム椰子殻や絞りかす等を炭化することにより土壌改良剤等を製造するバ

イオマス炭化プラント技術を保有している日本企業と、本プラントに興味を示すインドネ

シアのパーム椰子殻輸出企業を見つけることができた。

表 28 セイマンケイ工業団地とマレーシアの投資優遇措置比較

出所:マレーシア製造業投資(12.4、MIDA)および日本アセアンセンターHP から日鉄住金総研作成

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5.裾野産業分野における日尼企業のマッチングに向

けた取り組み (1)マッチングイベントの開催

平成 30 年 2 月 21 日(水)にインドネシア工業省内の講堂にて、加工食品用中間材料、

肥料、建設用鋼材加工、工業団地関連の企業を対象にビジネスマッチングを行った。以下

にその概要を示す。

1)日時・会場

日時:平成 30 年 2 月 21 日 9 時 00 分~14 時 00 分

会場:インドネシア工業省「Garuda Room」「Rajawali Room」「Borneo Room」「Papua

Room」

2)主催・共催と対象分野

主催者:経済産業省、インドネシア工業省

共催者:日本貿易振興機構

対象分野:加工食品用中間材料、肥料、建設用鋼材加工、工業団地関連の企業

3)アジェンダ

09:00~09:10 Reports from Director for Access of Industrial Resource and Promotion

Directorate General of Industrial Resilience and International Access Development

Mr. Ignatius Warsito, MBA

09:10~09:20 Welcom Remarks

Mr. Daiki Kasugahara, President Director of JETRO Jakarta

09:20~09:35 Opening Remarks

Directorate General of Industrial Resilience and International Access Development

Mr. Ignatius Warsito, MBA

09:35~10:30 Presentation

1. Secretary of Directorate General Industrial Region Develoment

Mr. Ignatius Warsito, MBA Topic: ndustrial Region Develomentl Access Devel

2. Representative from Special Economic Zone (SEZ) Sei Mangkei

Mr. H. Rinaldi, MT Topic: Economic Zone (SEZ) Sei Mangkei Industrial

ZonesM

10:30~12:50 Business Matching

1. Food Industry: Garuda Room

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2. Fertilizer Industry: Papua Room

3. Steel Industry: Rajawali Room

4. SEZ Sei Mangkei: Borneo Room

12:50~13:00 Plenary Session & Closing Remarks

13:00~14:00 Lunch

御来賓及び主催者、共催者の幹部

主催者の挨拶・説明の様子

図 47 マッチングイベント会場の様子

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(2)結果概要

ビジネスマッチングには約 143 の企業及び団体、207 名が参加した。分野毎の会場では、

参加企業が事業紹介のプレゼンテーションを行い自社のアピールをした後、商談会を行っ

た。

加工食品用中間材料分野は 多の 30 社以上が参加し、商談が盛んに行われた。

肥料は 6 社が参加し、2 組の商談が行われ、うち 1 組が今後の取組に向け商談を継続する

予定である。

建設用鋼材加工は 16 社以上が参加し、商談が盛んに行われた。

工業団地は 11 社以上が参加し、3 組のマッチングが成立し、今後各両社間で具体的な話を

進めていくこととなっている。

3)4分野に分かれてのプレゼンテーション及び商談(マッチング)

加工食品用中間材料分野

モデレーター Mr. Adhi Lukman, Chairman of the Indonesian Food & Beverage

Association

この分野では、22 社のインドネシア企業と 9 社の日系企業が参加し活発な話合い、

商談がなされた。

先ず、多くの企業に自社アピールをしたいとの要望があった企業 9 社による企業紹

介を行った。インドネシア側からは Kasab Pratama 社、Borbudur Indonesia 社を始

め 7 社、日本側からは 2 社が事業紹介を行い、同時並行で、会場に配置された個別商

談用のテーブルで各日尼企業同士が個別の説明・商談を活発に行った。

今回のイベントに向けた調査の段階より、日尼双方で提携に向けた希望を持った企

業は散見されていたが、必ずしも各企業の希望に叶った相手企業が来場した訳ではな

いため、各企業の事業紹介による知名度アップや今回のイベントを通じた情報収集に

より、将来に向けた新たな事業展開を模索しようとする企業が見られた。

食品関連については、調査時点も含めて感じていることは、インドネシアの豊富な

資源や原材料、日本企業の技術力や工場管理等、お互いに足りないものを補完できる

可能性が大きく、時間を掛ければ掛けただけの成果が得られると考えている。

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図 48 食品関連商談の様子

出所:じゃかるた新聞(2018 年 2 月 22 日)

肥料分野

モデレーター Mr. Kayam ,Direktur Industri Kimia

この分野は、本文中で縷々説明している通り、インドネシアで不足し始めている窒

素系の肥料の確保に向けて、石炭ガス化に焦点を当てた調査を進めてきた。

石炭ガス化となると、投資額も莫大なものとなることから、インドネシア側は予算を

決定する工業省化学部と国営肥料会社である Pupuk Indonesia と日本サイドは、IHI

等にコンタクトを行ってきており、マッチングが行なわれた。

それに加えて、インドネシアが世界一の生産量を誇るパーム椰子の搾りかす、椰子

殻等より、窒素系肥料を製造するというユニークな技術を持つ企業も加わり、日本側

計 2 社と上記のインドネシアサイドとが集まった分科会となった。

建設用鋼材加工業界

モデレーター Mr.Nosa Dian Nadim:Deputy Director for Downstream Metal Industry

<プレゼンテーション>

日鉄住金建材がアチェ州都のバンダアチェ市に建設した「津波避難タワー」を建設用

鋼材加工の日本-インドネシア協業の事例として紹介。

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99

同建設に携わった Syiah Kuala

University の Muzailin Affan 教

授とファブリケーターの Cigading

Habeam Center も講演に参加し

建設の経緯を説明するのにあわせ

て、日本の地震や津波における鋼

構造建設物の被災状況が鉄筋コン

クリート建造物に対して強固であ

った事例も説明し、津波タワーを

支える鋼構造技術の解説や同社の

得意とする防災技術を紹介した。

KOS(Krakatau-Osaka Steel;Cilegon)は国営 Krakatau 製鉄会社と合弁でインドネシ

アに進出した経緯の説明の後、同社が得意とする日本品質の建設用鋼材の製造技術と

商品を紹介した。特にインドネシアではまだあまり流通していない 50mm径の鉄筋

S50 の提案型営業サービス体制なども紹介された。

<商談会>

日本側からは建設用鋼材製鉄/加工会社や

OCAJI(The Overseas Construction

Association of Japan Inc.)会員企業総合商社等

が参加した。

日本国内の鋼材中間加工業者の情報を提供

し、あわせてインドネシア側の要望を確認して

日本からの技術導入などについて対応した。

また鋼構造の建築仕様やそのための鋼材の

選定、詳細設計面での協力要請など建築技術面

での対応として OCAJI(海外建設協会)の現

地会員企業が相談に応じた。

現地で入手が困難な建設資材を生産するニーズ

に対しては、条鋼系では圧延形鋼の生産や中空角鋼などの建設用資材の生産など、薄板系

ではスチールハウスなどに供給する軽量形鋼やパネルの生産の可能性などについて現地進

出している日系の建設用鋼材製鉄メーカーがスピーチをした。

図 49 講演の様子(建設用鋼材加工)

図 50 商談会の様子(建設用鋼材加

工)

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100

工業団地(セイマンケイ)

モデレーター Ms. Afrida, Direktur Industrial Region Develoment

全体セッションの中でも詳しい説明が行われたセイマンケイ工業団地が調査の対象であ

ったことから、本案件の調査中も含めて、セイマンケイとそれに係るパーム椰子関連、ゴ

ム関連の企業の誘致に軸足を置いた企業調査を行ってきた。今回のマッチングイベントに

おいては、セイマンケイ工業団地に興味を示した企業1社との商談が予定されていたのみ

であった。

しかしながら、当日になってみるとジャワ島やリアウ諸島バタム島の新鋭工業団地の内、

これから入居企業を募集する工業団地や、入居企業が思うように集まらない工業団地が大

挙して集まった。

そこで、モデレーターの判断で、全ての工業団地から概要説明を受けることとなった。

当初予定していた、セイマンケイ工業団地、株主の PT. Perkebunan Nusantara Ⅲと日系

企業との商談は別室で行った。

各工業団地からの説明は細部にわたり、今回のマッチングイベント参加の企業を誘致し

たいとの熱意が感じられた。おもな工業団地としては ARTHA 工業団地(ここは日本での

インドネシアセミナーでも担当者が来場していた)、Jambi Integrated City(スマトラ島)を

始めとして多くのプレゼンテーションが行われ、各工業団地同士での情報交換がなされた。

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101

6.日本企業から見たインドネシア進出の課題

(1)日本企業が指摘する課題

① インドネシア進出における日系企業の課題

1960 年代から日本企業のインドネシアへの進出が本格的にはじまり、1960~1970 年代

は繊維と家電メーカー、プラザ合意後の 1980 年代半ば以降は国内向けの自動車や輸出向け

の家電などの製造業が主に進出した。1994 年には外資規制が緩和されたことにより、日系

資本 100%で進出する企業が増加した16。平成 28 年 10 月時点でインドネシアに進出してい

る日系企業数は 1,810 拠点となっており、そのうち約半数を製造業が占めている17。

国際協力銀行が毎年実施している「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査」に

よると、インドネシアは 2017 年度の中期的な有望国・地域として中国、インド、ベトナム、

タイに次ぐ 5 位にランクした。順位の推移を 1992 年以降からみると、1998 年から順位が

低下した後、リーマンショック後の 2009 年から急上昇したが、2015 年からは 3 年連続で

低下している。さらに長期的な有望国・地域でも、2016 年度調査の 3 位から今回 4 位はと

なり、相対的に存在感が低下している結果となった。同調査によれば同国の課題として、“法

規制の運用が不透明”、“労働コストの上昇”、“他社との激しい競争”、“管理職クラスの人

材確保が困難、治安・社会情勢が不安”、といったものが主に挙げられた。

図 51 中期的(今後 3 年程度)有望事業展開先国・地域 得票率の推移

出所:「2017 年わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」

16 国際協力銀行

https://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/reference_ja/2012/10/2859/jbic_RRJ_2012054.pdf 17 外務省「平成 29 年海外在留邦人調査統計」

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図 52 長期的(今後 10 年程度)有望事業展開先国・地域 得票率の推移

出所:「2017 年わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」

また、日本貿易振興機構が毎年実施している「アジア・オセアニア進出日系実態調査」

では、インドネシアにおける経営上の問題点として、“従業員の賃金上昇”、“原材料・部品

の現地調達率の難しさ”、“通関等諸手続きが煩雑”、“税務(法人税、移転価格課税など)

の負担”、“通関に時間を要する”、といった点が挙げられた。

“従業員の賃金上昇”は約 8 割の企業が挙げており、また上記の国際銀行の調査でも第 2

位の課題として挙げられていることから、同国に進出している日系企業の 大の課題と伺

える。

“通関等諸手続きが煩雑”と“通関に時間を要する”の回答数は前回の調査よりも 10%

以上増加しており、通関関連の課題が増えていることがわかる。

同国における原材料・部品の調達先の内訳について 2012 年調査と 2017 年調査で比較す

ると、現地調達率は 43.0%から 45.2%と 2.2 ポイント上昇し、タイやインドよりも水準が

低いがマレーシア、ベトナム、フィリピンよりも高い水準となった。さらに現地調達先の

内訳を見ると、地場企業からは 44.8%、現地進出日系企業からは 50.8%、その他外資企業

からは 4.4%となっている。

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103

② 企業ヒアリング

インドネシアに進出している以下 11 社へ同国における課題をヒアリングした。業種は本

調査の対象分野だけではなく、既に同国で集積している自動車や電気電子なども対象とし

た。

業種 企業数

自動車関連 2

電子電気 1

鉄鋼 2

非鉄 1

物流 1

商社 1

不動産 1

食品 2

インドネシアへ進出した主な理由としては、日本の市場が低迷する中、人口が多く市場

の成長性も期待でき、かつ人件費が安いためという点を挙げた企業が多い。

ヒアリングの結果、主な課題として以下の 3 点が挙げられた。

1)人件費の上昇:

インドネシアでは労務費が毎年平均で約 10%上昇している。特にジャカルタの 低賃金

は近年急激に上昇しており、2017 年は月額 335 万ルピアとなっている。月額 低賃金が 90

万ルピアだった 2007 年と比較すると約 272%も上昇しており、人件費の安さを魅力として

同国に進出した企業の中には人件費の高騰の影響で撤退した企業も見られた。インドネシ

アは労働組合が強く、毎年政府に賃上げを求めるストライキが実施されていたこともあり

低賃金が急騰していたが、 近国が規制18をするようになった。

上記のようにジャカルタは人件費が高い一方、ジャカルタを除けばジャワ島の 低賃金

はその他の島と比較しても高くはない。そのため近年ジャカルタの東部に移るケースが多

く見られている。

18 2015 年政令第 78 号により、インフレ率と経済成長で自動的に数字を算出する方法が採用された。これ

以前の 低賃金は、地方別に政労使の三社構成員回で検討の末に決定された。(公益財団法人 国際労働財

団)

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図 53 ジャカルタの月額 賃金の推移

出所:インドネシア統計局等より日鉄住金総研作成

図 54 インドネシアの州別月額 低賃金(2017 年)

出所:インドネシア統計局等より日鉄住金総研作成

2)インフラの不足:

交通インフラの悪さを指摘する企業が多かった。インドネシアの高速道路及び一般道路

の整備が脆弱で、雨が降ると通常の所要時間の 2 倍以上かかる場合がある。また二輪車と

自動車の普及や大都市における産業集積により、特にジャカルタでは渋滞が深刻な問題に

なっている。このような問題に対応すべく、現在高速道路や鉄道の建設プロジェクトが進

行中である。この影響で一時的に以前よりも渋滞が悪化しているようだが、完成すれば交

通インフラは改善すると見られる。

一方で、日本企業が多く入居するジャカルタ周辺の工業団地内では電力などのインフラ

は比較的整っており、工場を操業する上で特に問題はないとの意見が多かった。そのため

通以外のインフラは意外と良いとの意見が多かった。

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3)法規制の変更・不透明な運用:会社法や税制、外貨規制等に関するものは結構な頻度

で変更され、その法規制の運用に疑問が残るものもあるとの意見が聞かれた。企業にとっ

て、法規制が頻繁に変更されることは常に 新情報を把握することやそれに対応しなけれ

ばならないため事業を行う上で非常に困難が伴う。

その他の主な課題は以下のとおりである。

マーケット・市場環境:同国の中間所得層はより高い生活水準を求めようせず、マーケッ

トサイズの割には内需があまり見込めない。

投資手続き等:ジャカルタなどではワンストップサービスが機能しているが、スラウェシ

島などの地方においては手書きで申請するなど、時間がかかりうまく機能していないこと

がある。

外資規制:ライセンス取得や出資比率のメジャーを取るのが困難である。また、VISA の取

得等、外国人に対する取締りが厳しくなっている。

JV 相手との関係:ローカルパートナー選びが重要であり、相手によって、事業展開の成否

が決まってしまうケースがあるとの意見があった。パートナーの役割としては、政府との

手続き、社員の採用を含めた労務管理や労働争議対応、インドネシアの法規制等に関する

ものが多く見られた。

インドネシア人の気質・従業員: ローカルスタッフは日本で研修を受けるが、そのことが

ジョブ・ホッピングの原因にもなっていることがある。

インドネシア企業側が抱く課題:JV 相手が配当利益を相応に得ることを求め、日本親会社

へのロイヤルティ支払いについて厳しくなっている。

③進出日系企業の成功事例

今回の調査で日系企業にヒアリングしたところ、以下のような成功事例が見受けられた。

1.自動車関連素材メーカー

当地は ASEAN 大の自動車市場であり、自動車産業が集積している。自動車産業に部

品を収めている素材メーカー某社は、日本では複数の企業で実施している工程を、自社で

一気通貫で手掛けることにより、自動車メーカーとの距離を縮める努力をし、メーカーの

ニーズや将来的な動きにいち早く対応できる体制を構築している。この体制により加工の

範囲を大きく広げている。

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2.飲料メーカー

飲料メーカー某社は、経済発展が進むにつれ、他の先進諸国と同じように成人病が蔓延

し始めているインドネシアにおいて、人々の健康へのニーズと商品の機能性が上手くマッ

チしている。

3.製菓メーカー

製菓メーカー某社は、ココアバターとしての輸出がメインの従来はチョコレート以外の

用途に使われることの多かったインドネシア産のカカオ豆を使って、農家を教育し、スラ

ウェシ島のカカオ農園を束ねて、高級チョコレート商品として日本市場に売り出すに至っ

ている。

上述の事例から、他社に先駆けて自社の商品の特性を広める努力をしたり、ユーザーか

らの要求以上の付加価値を提案することで、確固たる経営基盤を確立していたり、ユニー

クな発想でインドネシアという資源に恵まれた国との関係を確固たるものにしたりと、日

本国内市場以上の努力をしている企業が、勝ち残っているということである。

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(2)日尼企業の連携促進に向けたインドネシアの取組み ~Inodnesia Investment &

Business Forum での報告より~

平成 29 年 10 月 17、19 日にそれぞれ東京及び名古屋にて、インドネシア投資環境に関す

るフォーラムを開催した。アイルランガ・ハルタルト工業大臣とアリフィン・タスリフ大

使をお迎えし、インドネシアの産業や投資環境の現状や課題、今後の可能性についてご講

演いただいた。以下、両セミナーの概要を報告する。

① 東京開催について

1)日時・会場

日時:平成 29 年 10 月 17 日 13 時 30 分~16 時 30 分

会場:ザ・キャピトルホテル東急 大宴会場「鳳凰」

2)テーマと主催者

テーマ:外資規制の緩和や税制上の優遇措置の導入など、外国投資誘致政策に力を入

れるインドネシアの投資環境情報を提供するとともに、日本・インドネシア間のビジ

ネス関係のさらなる強化を図るため、インドネシア政府と日本の産業界が一堂に会し、

今後のインドネシアにおける産業のあり方について議論する。

主催者:経済産業省、日本貿易振興機構(ジェトロ)

3)アジェンダ

13:30~13:35 開会・主催者挨拶

経済産業大臣 世耕 弘成 氏(経済産業省 アジア大洋州課長 岩田 泰氏 代読)

13:35~13:40 開会・主催者挨拶

ジェトロ理事長 石毛 博行 氏

13:40~13:45 来賓挨拶

インドネシア共和国大使 アリフィン・タスリフ閣下

13:45~13:50 来賓挨拶

インドネシア工業大臣 アイルランガ・ハルタルト閣下

13:50~13:55 (フォトセッション)

13:55~14:20 講演①「インドネシアの産業政策―自動車、電気、食品、工業団地―」

インドネシア工業省 工業レジリエンス及び国際アクセス開発総局長ハルジャント氏

14:20~14:30 講演② 「インドネシアの投資優遇政策」

インドネシア投資調整庁(BKPM) 長官 トマス・レンボン閣下(ビデオ出演)

インドネシア投資調整庁(BKPM) 日本事務所 所長 サリブア・シアハアン氏

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108

14:30~14:45 講演③「インドネシア産業発展の可能性」

ジェトロ理事 佐藤 百合 氏

14:45~14:55 (コーヒーブレーク)

14:55~15:10 講演④ 日本企業による投資成功事例

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

15:10~15:40 講演⑤ インドネシアの工業団地の紹介

PT. Suryacipta Swadaya Mr. Hiroyoshi Masuoka

PT. Modern Industrial Estate Mr. Erwin Wijaya

PT. Bumi Anugerah Makmur Mr. Jasin

15:40~16:25 パネルディスカッション 「インドネシア製造業の発展に向けて」

基調講演・モデレーター:

日本工業大学大学院 客員教授/日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎 氏

パネリスト:

インドネシア工業省 工業レジリエンス及び国際アクセス開発総局長ハルジャント氏

インドネシア投資調整庁(BKPM) 日本事務所 所長 サリブア・シアハアン氏

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

ジェトロ理事 佐藤 百合 氏

16:25~16:30 閉会挨拶

ジェトロ ジャカルタ事務所長 春日原 大樹 氏

4)参加者

参加者:366 名

図 55 東京セミナー参加者の業種別構成

5)概要

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開会・主催者挨拶

経済産業大臣 世耕 弘成 氏(経済産業省 アジア大洋州課長 岩田 泰氏 代読)

日本とインドネシアの関係について、ASEAN の盟主である同国に対して良好な経済関係

が築かれており、日本は 大の投資国の 1 つとして貢献している事が紹介された。

経済産業省の取り組みとして、EPA の発効が両国間の貿易投資の拡大の契機になったこ

と、今後もインドネシアの裾野産業育成ため日系企業と地場企業とのビジネスマッチング

などに積極的に取り組んでいくことが説明された。

後に ASEAN 経済共同体(AEC)の発足後の同地域でインドネシアが先導していくこと、

来年は日インドネシア国交樹立 60周年の記念すべき節目の年に向けて両国の経済関係を更

に発展させるきっかけとなってほしいと期待が述べられた。

開会・主催者挨拶

ジェトロ理事長 石毛 博行 氏

も重要なパートナーであるインドネシアについて、依然として「政府の不透明な政策

運営」、「煩雑な税制・税務手続き」などの問題を指摘する日本企業の割合が多いが、これ

らは情報不足ゆえの誤解によるものが少なくないとして、ジョコ政権が外国企業の投資誘

致のためにインフラ整備や手続きの簡素化、外資の出資規制緩和などの政策を着実に実行

していることを評価して日本企業関係者に的確に伝えるために本セミナーが良い機会にな

る。JETRO としても日本の中小企業が拠点を設立しビジネスを展開できるような制度環境

を整えていきたいとした。

来賓挨拶

インドネシア共和国大使 アリフィン・タスリフ閣下

インドネシアと日本の経済関係について、2012〜2016 年の間に貿易額が 14.70%減少し

たことに対して、経済連携協定(IJEPA)により貿易と経済協力が引き続き強化されるこ

とに対する期待を述べ、インドネシア政府が 2017 年に目指す 508 億米ドルの投資誘致のた

めの政策が紹介された。 後にインドネシアが投資にいかに魅力ある国であるかを格付機

関(S&P、Moody's、Fitch)3 社がインドネシアを投資適格と格付けていることなどで紹

介し参加者に投資を呼びかけた。

来賓挨拶

インドネシア工業大臣 アイルランガ・ハルタルト閣下

日本が半世紀以上にわたって製造業における貿易、投資、技術協力によりインドネシア

の経済発展に貢献してきたこと、中国に次ぐ第 2 位の貿易相手国であり、投資部門におい

ても第2位の外国投資国であると謝意を表したあと、インドネシアがGDP成長率5.01%と、

低迷する世界経済の中でも成長を続けていることを強調し、今後も国家戦略開発計画によ

って更に製造業を強化し、ジャワ島以外の経済活動を活性化させようとを目指している。

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そのための政策として①人的資源の強化、②川下からの産業構造の深化、③輸出志向型工

業化及び労働集約型産業の発展、④中小企業におけるデジタル技術の活用、⑤付加価値を

付けることによる天然資源の活用、⑥インドネシア全土における工業団地の開発により地

方経済へ貢献の 6 点が紹介された。また工業部門及び輸出競争力の向上に資する 15 の経済

パッケージによって、世界銀行のビジネス環境ランキングでも 2016 年の 106 位から 2017

年には 91 位に改善と評価されている。プラス成長を続けるインドネシアにはまだまだ投資

やビジネスをする機会が多いとしめくくった。

講演①「インドネシアの産業政策―自動車、電気、食品、工業団地―」

インドネシア工業省 工業レジリエンス及び国際アクセス開発総局長ハルジャント氏

講演② 「インドネシアの投資優遇政策」

インドネシア投資調整庁(BKPM) 長官 トマス・レンボン閣下

支持率 68%を獲得しているジョコウィ政権がここ 10~15 年間の中で も実行力があり

革新的な政府であること、そのことをスタンダード&プアーズ、ムーディーズやフィッチ

などが認めて相次いで投資適格級に格上げしたことを紹介した。中国政府の「一帯一路イ

ニシアティブ」を評価しインドネシア政府としてもこの構想を機会と捉えて一緒に参加す

るヨーロッパ、日本、アメリカのパートナーを求めているとした。インドネシアでは観光

業が年率 35~40%の成長を遂げていることを紹介したうえで、日本の製造業、石油・ガス

鉱区、インフラ等の分野におけるさらなる協力に期待を表明した。

講演③「インドネシア産業発展の可能性」

ジェトロ理事 佐藤 百合 氏

ジェトロ佐藤理事より、インドネシアには世界第 4 位の人口、長い人口ボーナス期、豊

富な天然資源、という強みであると同時に弱みでもある。ジョコウィ政権はインフラ整備

や投資環境改善などに努めているが、日本企業には知られていないため、両国の官民対話

を密にして、インドネシアの現局面に合致した日本からの投資を喚起することが重要であ

ると強調した。

講演④ 日本企業による投資成功事例

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

伊藤製作所は 2013 年にインドネシア進出した。同国への進出の主な成功理由としては、

①合弁相手・アルマダ社の大きな支援、②日本本社の長年の技術と経験の移転、③アルマ

ダ社の実績により、当初から質の高い社員を採用できたこと、④インドネシアではプレス

部品の加工の合理化が遅れていたので、当社の金型技術が現地でいち早く認められたこと、

⑤日本本社から営業の責任者を 1 名駐在させ、金型製作や設計、品質管理等はフィリピン

事所の技術者を任命したこと、の 5 点が挙げられた。

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講演⑤ インドネシアの工業団地の紹介

以下の 3 工業団地が各々の工業団地の整備状況などの現状やインセンティブ等の魅力を

発表した。

PT. Suryacipta Swadaya Mr. Hiroyoshi Masuoka

PT. Modern Industrial Estate Mr. Erwin Wijaya

PT. Bumi Anugerah Makmur Mr. Jasin

パネルディスカッション 「インドネシア製造業の発展に向けて」

初に横田教授より、インドネシア製造業を発展させるには、ものづくり産業の強化・

地位向上(再工業化)、現地調達率の向上、高付加価値の工業製品の輸出競争力の強化等が

“インドネシア国力の向上の鍵”という発表があった。その次に、インドネシアのポテン

シャルを 大化させるために、日本企業がインドネシアに対してどうのような貢献ができ

るのか、またインドネシアは日本に対しどのような貢献を期待するかについて議論がかわ

された。

閉会挨拶

ジェトロ ジャカルタ事務所長 春日原 大樹 氏

インドネシアが 1990 年代後半のアジア通貨危機による落ち込み後、内需主導の経済成長

を日本企業も投資などで支え両国の関係が非常に強固なものとなってきたことを評価する

一方で強い内需が輸入を増加させるため輸出を増やす必要があると、ものづくり産業の輸

出競争力強化を説いた。近年のインドネシアの GDP に占める工業製品の割合が減少傾向に

あることをとらえてアイルランガ工業大臣をはじめとした工業省のリーダーシップに期待

を示した。

本日の会議でインドネシア経済の持つポテンシャルの大きさと日本とインドネシア企業

との協業が重要であることを再認識し、今後も JETRO がインドネシアのものづくり力を高

めるための人材育成やビジネスマッチングで積極的な貢献をしていくことを表明し、イン

ドネシア工業省には環境の整備と協力を依頼した。

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113

② 名古屋開催について

1)日時・会場

日時:平成 29 年 10 月 19 日 13 時 30 分~16 時 30 分

会場:名古屋マリオットアソシアホテル タワーズボールルーム

2)テーマと主催者

テーマ:外資規制の緩和や税制上の優遇措置の導入など、外国投資誘致政策に力を入

れるインドネシアの投資環境情報を提供するとともに、日本・インドネシア間のビジ

ネス関係のさらなる強化を図るため、インドネシア政府と日本の産業界が一堂に会し、

今後のインドネシアにおける産業のあり方について議論する。

主催者:経済産業省、日本貿易振興機構(ジェトロ)名古屋貿易情報センター

3)セミナーへの後援

セミナー開催に当たって、以下の公的機関及び経済団体の後援を得た。

愛知県、愛知県商工会議所連合会、中小機構中部本部、あいち産業振興機構、中部経済連

合会

4)アジェンダ

13:30~13:35 開会・主催者挨拶

経済産業省 中部経済産業局 地域経済部長 岩松 潤氏

13:35~13:40 来賓挨拶

インドネシア共和国大使 アリフィン・タスリフ閣下

13:40~13:45 来賓挨拶

インドネシア工業大臣 アイルランガ・ハルタルト閣下

13:45~13:50 (フォトセッション)

13:50~14:05 講演①「インドネシア産業発展の可能性」

ジェトロ理事 佐藤 百合氏

14:50~14:15 講演② 「インドネシアの投資優遇政策」

インドネシア投資調整庁(BKPM) 長官 トマス・レンボン閣下(ビデオ出演)

インドネシア投資調整庁(BKPM) 日本事務所 所長 サリブア・シアハアン氏

14:15~14:45 トークショー

インドネシア工業大臣 アイルランガ・ハルタルト閣下

ジェトロ理事 佐藤 百合氏

モデレーター:ジェトロ ジャカルタ事務所長 春日原 大樹氏

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114

14:45~14:55 (コーヒーブレーク)

14:55~15:15 講演③ 日本企業による投資成功事例

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

15:15~15:35 講演④ インドネシアの工業団地の紹介

PT. Suryacipta Swadaya Mr. Hiroyoshi Masuoka

PT. Modern Industrial Estate Mr. Erwin Wijaya

PT. Bumi Anugerah Makmur Mr. Jasin

15:35~16:25 パネルディスカッション 「インドネシア製造業の発展に向けて」

基調講演・モデレーター:

日本工業大学大学院 客員教授/日本金型工業会 学術顧問 横田 悦二郎 氏

パネリスト:

インドネシア工業省 工業レジリエンス及び国際アクセス開発総局長ハルジャント氏

インドネシア投資調整庁(BKPM) 日本事務所 所長 サリブア・シアハアン氏

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

ジェトロ理事 佐藤 百合 氏

16:25~16:30 閉会挨拶

ジェトロ ジャカルタ事務所 次長 松本 暢之 氏

5)概要

開会・主催者挨拶

経済産業省 中部経済産業局 地域経済部長 岩松 潤氏

日本とインドネシアの関係について、ASEAN の盟主である同国に対して良好な経済関

係が築かれており、日本は 大の投資国の 1 つとして貢献している事が紹介された。

経済産業省の取り組みとして、EPA の発効が両国間の貿易投資の拡大の契機になった

こと、今後もインドネシアの裾野産業育成ため日系企業と地場企業とのビジネスマッチン

グなどに積極的に取り組んでいくことが説明された。

後に ASEAN 経済共同体(AEC)の発足後の同地域でインドネシアが先導していくこ

と、来年は日インドネシア国交樹立 60 周年の記念すべき節目の年に向けて両国の経済関係

を更に発展させるきっかけとなってほしいと期待が述べられた。

来賓挨拶

インドネシア共和国大使 アリフィン・タスリフ閣下

インドネシアと日本の経済関係について、2012〜2016 年の間に貿易額が 14.70%減少し

たことに対して、経済連携協定(IJEPA)により貿易と経済協力が引き続き強化されるこ

とに対する期待を述べ、インドネシア政府が 2017 年に目指す 508 億米ドルの投資誘致のた

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めの政策が紹介された。 後にインドネシアが投資にいかに魅力ある国であるかを格付機

関(S&P、Moody's、Fitch)3 社がインドネシアを投資適格と格付けていることなどで紹

介し参加者に投資を呼びかけた。

来賓挨拶

インドネシア工業大臣 アイルランガ・ハルタルト閣下

日本が半世紀以上にわたって製造業における貿易、投資、技術協力によりインドネシア

の経済発展に貢献してきたこと、中国に次ぐ第 2 位の貿易相手国であり、投資部門におい

ても第2位の外国投資国であると謝意を表したあと、インドネシアがGDP成長率5.01%と、

低迷する世界経済の中でも成長を続けていることを強調し、今後も国家戦略開発計画によ

って更に製造業を強化し、ジャワ島以外の経済活動を活性化させようとを目指している。

そのための政策として①人的資源の強化、②川下からの産業構造の深化、③輸出志向型工

業化及び労働集約型産業の発展、④中小企業におけるデジタル技術の活用、⑤付加価値を

付けることによる天然資源の活用、⑥インドネシア全土における工業団地の開発により地

方経済へ貢献の 6 点が紹介された。また工業部門及び輸出競争力の向上に資する 15 の経済

パッケージによって、世界銀行のビジネス環境ランキングでも 2016 年の 106 位から 2017

年には 91 位に改善と評価されている。プラス成長を続けるインドネシアにはまだまだ投資

やビジネスをする機会が多いとしめくくった。

講演①「インドネシア産業発展の可能性」

ジェトロ理事 佐藤 百合 氏

ジェトロ佐藤理事より、インドネシアには世界第 4 位の人口、長い人口ボーナス期、豊

富な天然資源、という強みであると同時に弱みでもある。ジョコウィ政権はインフラ整備

や投資環境改善などに努めているが、日本企業には知られていないため、両国の官民対話

を密にして、インドネシアの現局面に合致した日本からの投資を喚起することが重要であ

ると強調した。

講演② 「インドネシアの投資優遇政策」

インドネシア投資調整庁(BKPM) 長官 トマス・レンボン閣下

支持率 68%を獲得しているジョコウィ政権がここ 10~15 年間の中で も実行力があり

革新的な政府であること、そのことをスタンダード&プアーズ、ムーディーズやフィッチ

などが認めて相次いで投資適格級に格上げしたことを紹介した。中国政府の「一帯一路イ

ニシアティブ」を評価しインドネシア政府としてもこの構想を機会と捉えて一緒に参加す

るヨーロッパ、日本、アメリカのパートナーを求めているとした。インドネシアでは観光

業が年率 35~40%の成長を遂げていることを紹介したうえで、日本の製造業、石油・ガス

鉱区、インフラ等の分野におけるさらなる協力に期待を表明した。

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トークショー

同政府が投資促進のためのインセンティブパッケージを打ち出しており、成果が見え始

めているところもある一方、ドゥウェリングタイムの短縮などにまだ課題がある。中小企

業の投資について投資総額の制限があるがこれはインドネシア政府としても注意を払って

いる。現在インドネシア政府はイノベーションを支援しており、IoT や関連サービスセクタ

ーへの中小企業の投資が見込まれる。具体的に、日系中小企業から自動車のティア 2 やテ

ィア 3、エレクトロニクス、食品・飲料やヘルスケアの分野への投資を期待している。イン

ドネシア進出にあたり、ジェトロとしては業種を絞ったマッチングを進めていき、インド

ネシア政府は外貨を生み出し、外貨を節約し、雇用を創出できる者は常に歓迎すると強調

した。

講演③ 日本企業による投資成功事例

株式会社伊藤製作所 代表取締役 伊藤 澄夫 氏

伊藤製作所は 2013 年にインドネシア進出した。同国への進出の主な成功理由としては、

①合弁相手・アルマダ社の大きな支援、②日本本社の長年の技術と経験の移転、③アルマ

ダ社の実績により、当初から質の高い社員を採用できたこと、④インドネシアではプレス

部品の加工の合理化が遅れていたので、当社の金型技術が現地でいち早く認められたこと、

⑤日本本社から営業の責任者を 1 名駐在させ、金型製作や設計、品質管理等はフィリピン

事所の技術者を任命したこと、の 5 点が挙げられた。

パネルディスカッション 「インドネシア製造業の発展に向けて」

初に横田教授より、インドネシア製造業を発展させるには、ものづくり産業の強化・

地位向上(再工業化)、現地調達率の向上、高付加価値の工業製品の輸出競争力の強化等が

“インドネシア国力の向上の鍵”という発表があった。その次に、インドネシアのポテン

シャルを 大化させるために、日本企業がインドネシアに対してどうのような貢献ができ

るのか、またインドネシアは日本に対しどのような貢献を期待するかについて議論が交さ

れた。

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7.裾野産業における日尼企業の連携推進に向けて 本章では、上記の日尼企業によるインドネシアに対する思いや課題認識、及び日系企業

に対する課題について、現地での企業ヒアリングを通じて得た情報をベースとして、今後

のインドネシアにおける裾野産業振興に向けた日尼企業の連携推進に向けての考え方や当

社が感じている可能性について以下に記す。

(1) 日尼双方から見た課題認識

日系企業が持つインドネシアに対する思いや課題認識については、先述した通り、今回

ヒアリングした日系企業からは、上昇する労務費関連、英語があまり通じないこと、有能

社員の離職、インフラの未整備、難解で変化が多い法令、インドネシア進出はパートナー

選びが重要、日本人向け環境の未整備、投資インセンティブの不徹底等が挙げられている。

また、インドネシア企業から見た日系企業の課題については、他の国でも指摘されてい

るようなコメントが多く聞かれている。すなわち、意思決定が遅い、細かいデータを求め

てくる割には、全然話が前に進まない、コミュニケーション能力不足等が挙げられている。

(2) 今後の日尼企業の連携推進に向けて

本件の調査を半年間に亘って、集中的に行ってきており、その間にインドネシアの企業

や人々と話す機会を得ることができた。

今回の調査を通じて得られたことは、これまでインドネシアは多くの特に大手企業が進

出してきたが、2 億 5 千万人という大市場を持つ同国で、しっかりと根を張って、日尼の誰

に聞いても大成功の事例として挙げたのは、ヤクルトと大塚製薬(ポカリスウェット)で

あった。

このような日系企業で、良い商品や技術を有する企業が、本文中にある通り、各社の取

扱品目に合ったパートナーを得て、長期的な戦略の下で若手中心のチャレンジングな経営

をしていくことは、日系企業の成功の要諦であると考える。

その際に、今回の調査で行ったような地道な現地企業のニーズを聴取して日系企業とマ

ッチングを行うことは、必ずや将来のインドネシアの発展に向けて、韓国でもなく中国で

もない日本企業がかかわっていくことは、インドネシアの国民の多くが望んでいることで

あると、今回の現地調査を通じても感じている。

尚、このマッチングを行うに当たってのポイントは、過去に経済産業省アジア大洋州課

が3年間に亘って調査を行った「知日派の育成」調査の時に現地側で協力をしていただい

ている、日本への留学経験者の団体は、現在でも健在であり、今回、当社がその内の 2 名

に会った際に、「やはり、過去に深く係った日本とインドネシアとの関係をより強固にする

架け橋になりたいと常々仲間と話し合っている」と言っていた言葉の通り、この団体を有

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効に活用した調査を、あと 2~3 年行えば、今回の経験も踏まえて大きな成果に繋がると思

われる。

今回の調査を通じて、今後の日尼関係において裾野産業や地方の振興に繋がる可能性が

あると感じたのは、食品関連と医薬品である。

本文中にも記述しているが、食品についてインドネシアは、多くの原材料の宝庫であり、

日系企業がまだまだ知らない食材としてのポテンシャルや日尼企業の協業を通じての、両

国の市場、および輸出市場への新たな可能性が広がっていく可能性は十分あると考えられ

る。

また、薬品については、今回は Kimia Farma 一社を訪問したのみであったが、先方との

会話を通じて、例えば、日本における Kimia Farma のジェネリック薬品の可能性やインド

ネシアの大衆薬の可能性は、3 万人弱の訪日インドネシア人の増加や 43,000 名に近付く在

日インドネシア人の存在を考えると十分検討の余地はあるし、両国間の新薬開発に向けた

認可期間の差異を考えた場合、両国の連携の中で多くの可能性を有することを感じている。

その他の分野についても、今回のように調査の機会が与えられ、個別企業の声を直接聞

く機会を設けられれば、元々社会的に広く日本という国は良い印象を持たれていることも

あり、多くの協業の成功事例を積み上げることができると考える。

今後の両国企業のマッチングに当たっては、既存の JETRO や KADIN(インドネシア商

工会議所)等のマッチング機能を有する機関を各企業が能動的に活用することが理想的であ

る。しかしながら、各企業にインドネシアや日本の企業の十分な情報が与えられている訳

ではないことから、今回の様な政府間の大きな枠組みの取組や調査機能を持った団体企業

による調査やセミナー等の開催は是非必要であると考える。

特に、今回の現地マッチングセミナーで日本側からの強い希望で実現した、参集した企

業へのインドネシア政府としての工業団地開発の考え方、その中でのスマトラ島の位置付

け等については、日本にいて BKPM やインドネシア政府の投資セミナー等に参加しただけ

では得られない内容であった。日本企業が、インドネシア政府としてメダンを含む北スマ

トラをアセアンの中心ととらえて、集中的に開発していこうとする姿勢は知ることが困難

であると考える。

よって、今後は、インドネシア政府も今回のマッチングセミナーの成功を契機に、地道

に日本企業に対するインドネシアの政策の説明を繰り返し行っていくことが、結果的に、

今回、多くの工業省やインドネシア企業が実感し得た、「日本には、まだ見ぬ技術を持った

優秀な企業が沢山存在する」ことを実業に結びつけることができる有効な一手であること

を理解して貰えたと考える。

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近年、CLMV が昨年あたりから注目され、日本には入れ代わり立ち代わり各国が投資環

境説明を PR しているが、企業が投資を決断するに至るまでには、実に多くの要素を考慮し

た上で判断されていくことから、日系企業もインドネシア政府も常に他国との比較、もっ

と範囲を狭まれば、例えば国内の他の工業団地と比較して企業に納得してもらえるような

情報や条件を提供していくことは重要であると考える。