2章 「理解する」 ゴーヤって不思議だね...11 2章 「理解する」...

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11 2 章 「理解する」 ゴーヤって不思議だね この事例は、「ゴーヤに興味をもった⼦どもが、⽇々観察することで、ゴーヤの様々な不思議と出合い、好奇 ⼼を膨らませ、さらに興味を深めていく姿を捉えた」実践です。 ⼦どもたちが、⽇々⽬にすると思われる場に植栽を置くなどの環境の⼯夫をするとともに、⼦どものつぶや きを⾒逃さず、その⼦どもの感じ⽅、考え⽅に寄り添う保育者の適時な関わりが、⼦どもの感性の育ちを⽀え、 新たな気付きや発⾒へと繋がっていることが分かります。 社会福祉法⼈信州福祉会 わかば保育園 4 歳児 [考察] Kさんが、雌と雄の花の⾊や実の付き⽅の違いに気付き、ゴーヤとアサガオの蔓の違いを発⾒し たのは、登園時に⾒られる場所に設置したことで、親近感をもてたことが⼤きいと思われる。また、対象の もつ特徴や不思議さを⾒付ける楽しさを味わい続けたことで、ゴーヤと向き合うようになり、ゴーヤのこと を分かろうとして関わる、という主体性が育まれたように思われる。共に観る保育者の共感的な声がけが、 Kさんのゴーヤへの関⼼を⾼めたと思われる。 ・ ⽇ 除 け を 兼 ね て、 職 員 室 前 に、 ⼤ 型 プ ラ ン タ ー を並べて、ゴーヤとアサガオを植えた。定植後 しばらくすると、本葉の数も増え始め、「こっち は、アサガオでしょ。これは何なの?」と、聞 いてくる⼦どもがいた。ゴーヤと知らせると…。 Aさん:「⾷べたことあるよ。苦いのでしょうどこに実ができるの?」 ・ 家庭での⾷事と繋げて考えて、 これからの⽣⻑に興味と期待 をもち始めた。 ・ Aさんは、葉に触って、 「チクチクするね」、その⼿の 匂いをかいで「ゴーヤの匂い がする。葉っぱなのにゴーヤっ て分かるね」 ・ 登園時に毎⽇⾒続けてきた K さんは、ゴーヤには 雄花と雌花があることに気付いた「いっぱい花が咲いたのにどうして実にならない の?」「あれっ!ゴーヤの⾚ちゃんが付いている のがあるよ」 「これは、⾚ちゃんが付いていないこれも付いていない。⾚ちゃんが付いていないの がいっぱい」 (雌花は咲く前から実となるところ に⼩さな膨らみがあることに気付き、「ゴーヤの ⾚ちゃん」と表現した)。 ・ Kさんは、 「これが、ゴーヤになっていくんだよ」と、 ⺟親にも⾃慢げに話した。 ・ ある⽇、 「先⽣、発⾒。⾚ちゃんができている花 の⾊が違う」と、⽬を輝かせている。 ・ 保育者が、「どういうことなの?」と聞くと、 「ゴー ヤの⾚ちゃんができている花 の中は緑だけど、できない花 は⻩⾊だよ。ほら」と⼀つ⼀ つ取って、⾒付けたことを話 してきた。 ・ 保育者は、その気付きに驚き、 認める。 ・ K さんは、雄花と雌花の違いや実が付いている様 ⼦を友達や職員に知らせていた。ゴーヤの蔓が ネットに巻き付いて伸びていることに気付き、「ク ルクルでビヨンビヨンってなっている」「だから、 落ちないんだ」と、実際に蔓を引っ張り、その巻 の強さを実感する中で、ゴーヤの蔓が⽣⻑に重要 な役割をしていることに気付いていた。 ・ Kさんは、いつものように朝、 「ゴーヤ、⼤きくなっ てきたね」「⾚ちゃんのゴーヤないねえ」「ビヨン ビヨンが、いっぱいだね」などと話しながら、ア サガオの蔓に⽬を留めた。「あれ、アサガオには ビヨンビヨンないねアサガオはクルクル なって上に⾏っている」 と、アサガオとゴーヤの “蔓” や “巻き” の 違いを発⾒した・ 収穫を楽しんだ後、Kさんが、採り忘れていたゴー ヤが⻩⾊になっていることに気付いた。Kさん は、 「どうして⻩⾊になったの?」と、触ってみ て「あっ!柔らかい」と、緑⾊の⾷べ頃のゴーヤ との違いを感じ取っていた。 「⻩⾊になったから、苦くないんじゃないの?緑 のは苦いのを取らないといけないから」と、⽗親 がゴーヤ料理をしてくれたことを思い出して、⾃ 分なりに考えたように思う。 ・ ⻩⾊のゴーヤの中を⾒たK さんは、 「中が⾚くなってい る」と、驚きの声を上げた。 職員が⾚い実を取って⾷べて ⾒せた。K さんも⼝にしたと ころ、 「⽢くておいしい!」 と、緑のゴーヤとの味の違い を実感した葉もゴーヤの匂いがする 5⽉ 実のなる花とならない花があるよ 7⽉下旬 ビヨンビヨンがあるから落ちない 8⽉ ゴーヤが⻩⾊くなった 8 ⽉下旬 資質・能⼒:社会⽣活との関わり / ⾃然との関わり・⽣命尊重 / 豊かな感性と表現

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Page 1: 2章 「理解する」 ゴーヤって不思議だね...11 2章 「理解する」 ゴーヤって不思議だね この事例は、「ゴーヤに興味をもった どもが、

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2 章 「理解する」ゴーヤって不思議だね

この事例は、「ゴーヤに興味をもった⼦どもが、⽇々観察することで、ゴーヤの様々な不思議と出合い、好奇⼼を膨らませ、さらに興味を深めていく姿を捉えた」実践です。

⼦どもたちが、⽇々⽬にすると思われる場に植栽を置くなどの環境の⼯夫をするとともに、⼦どものつぶやきを⾒逃さず、その⼦どもの感じ⽅、考え⽅に寄り添う保育者の適時な関わりが、⼦どもの感性の育ちを⽀え、新たな気付きや発⾒へと繋がっていることが分かります。

社会福祉法⼈信州福祉会 わかば保育園 4 歳児

[考察] Kさんが、雌と雄の花の⾊や実の付き⽅の違いに気付き、ゴーヤとアサガオの蔓の違いを発⾒したのは、登園時に⾒られる場所に設置したことで、親近感をもてたことが⼤きいと思われる。また、対象のもつ特徴や不思議さを⾒付ける楽しさを味わい続けたことで、ゴーヤと向き合うようになり、ゴーヤのことを分かろうとして関わる、という主体性が育まれたように思われる。共に観る保育者の共感的な声がけが、Kさんのゴーヤへの関⼼を⾼めたと思われる。

・ ⽇除けを兼ねて、職員室前に、⼤型プランターを並べて、ゴーヤとアサガオを植えた。定植後しばらくすると、本葉の数も増え始め、「こっちは、アサガオでしょ。これは何なの?」と、聞いてくる⼦どもがいた。ゴーヤと知らせると…。Aさん:「⾷べたことあるよ。苦いのでしょう。どこに実ができるの?」

・ 家庭での⾷事と繋げて考えて、これからの⽣⻑に興味と期待をもち始めた。

・ Aさんは、葉に触って、「チクチクするね」、その⼿の匂いをかいで「ゴーヤの匂いがする。葉っぱなのにゴーヤって分かるね」

・ 登園時に毎⽇⾒続けてきた K さんは、ゴーヤには雄花と雌花があることに気付いた。

・ 「いっぱい花が咲いたのにどうして実にならないの?」「あれっ!ゴーヤの⾚ちゃんが付いているのがあるよ」「これは、⾚ちゃんが付いていない。これも付いていない。⾚ちゃんが付いていないのがいっぱい」(雌花は咲く前から実となるところに⼩さな膨らみがあることに気付き、「ゴーヤの⾚ちゃん」と表現した)。

・ K さんは、「これが、ゴーヤになっていくんだよ」と、⺟親にも⾃慢げに話した。

・ ある⽇、「先⽣、発⾒。⾚ちゃんができている花の⾊が違う」と、⽬を輝かせている。

・ 保育者が、「どういうことなの?」と聞くと、「ゴーヤの⾚ちゃんができている花の中は緑だけど、できない花は⻩⾊だよ。ほら」と⼀つ⼀つ取って、⾒付けたことを話してきた。

・ 保育者は、その気付きに驚き、認める。

・ K さんは、雄花と雌花の違いや実が付いている様⼦を友達や職員に知らせていた。ゴーヤの蔓がネットに巻き付いて伸びていることに気付き、「クルクルでビヨンビヨンってなっている」「だから、落ちないんだ」と、実際に蔓を引っ張り、その巻の強さを実感する中で、ゴーヤの蔓が⽣⻑に重要な役割をしていることに気付いていた。

・ K さんは、いつものように朝、「ゴーヤ、⼤きくなってきたね」「⾚ちゃんのゴーヤないねえ」「ビヨンビヨンが、いっぱいだね」などと話しながら、アサガオの蔓に⽬を留めた。「あれ、アサガオにはビヨンビヨンないね。アサガオはクルクルなって上に⾏っている」と、アサガオとゴーヤの“蔓” や “巻き” の違いを発⾒した。

・ 収穫を楽しんだ後、Kさんが、採り忘れていたゴーヤが⻩⾊になっていることに気付いた。Kさんは、「どうして⻩⾊になったの?」と、触ってみて「あっ!柔らかい」と、緑⾊の⾷べ頃のゴーヤとの違いを感じ取っていた。

・ 「⻩⾊になったから、苦くないんじゃないの?緑のは苦いのを取らないといけないから」と、⽗親がゴーヤ料理をしてくれたことを思い出して、⾃分なりに考えたように思う。

・ ⻩⾊のゴーヤの中を⾒たKさんは、「中が⾚くなっている」と、驚きの声を上げた。職員が⾚い実を取って⾷べて⾒せた。K さんも⼝にしたところ、「⽢くておいしい!」と、緑のゴーヤとの味の違いを実感した。

葉もゴーヤの匂いがする 5 ⽉

実のなる花とならない花があるよ 7⽉下旬

ビヨンビヨンがあるから落ちない 8⽉

ゴーヤが⻩⾊くなった 8 ⽉下旬

資質・能⼒:社会⽣活との関わり / ⾃然との関わり・⽣命尊重 /豊かな感性と表現