2.現状と課題 - mlit7...

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6 平成 14 年 7 月洪水 常総市本町地先 下流部は住宅密集地であり、堤防が低く、洪水のたびに危険な 状況にさらされている (1)河道の整備 平成 14 年 7 月洪水 無堤部浸水状況 常総市豊岡町地先 (1)河道の整備 ・堤防の整備状況(平成 17 年度末時点)は、上流部は概ね断面を満足しているものの、下流部は満足していない区間が多い。 ・平成 14 年 7 月洪水においては、常総市豊岡地先の無堤部で浸水被害が発生している。 堤防の高さ及び断面が不足 つくばみらい市小絹地先 無堤部、弱小堤の存在 2-1 現状と題(洪水の痕跡水位 2.現状と課題 ①余裕高 洪水時の風浪、うねり、跳水等による一時的な水位上昇、巡視や水防活動の安全確保、流木等 の流下物への対応等種々の要素をカバーする余裕。 ②天端(てんば)幅 浸透に対して安全な断面の確保、常時の河川巡視又は洪水時の水防活動等のために必要な幅。 ③のり勾配 雨水浸透の抑制、除草や維持管理等がしやすいよう3割よりゆるくし、一枚のりとする。 ※解説・河川管理施設等構造令、堤防設計指針より 0 50 100 150 200 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 距離標 標高(YP. m) 平成10年9月台風5号の痕跡水位 平成14年11月台風6号の痕跡水位 計画高水位(HWL) 11 12 13 14 15 16 17 3 4 5 6 7 8 9 10 距離標 標高(YP. m) 15 20 25 30 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 距離標 標高(YP. m) 95 100 105 110 115 75 76 77 78 79 距離標 標高(YP. m) 既往洪水の痕跡水位 HWL(計画高水位) ②天端幅 6.0m以上 堤防高 ①余裕高1.5m以上 表の り1 以上 3 1 ※暫々定堤防とは、堤防の形 状を評価して、その高さが 計画高水位未満の堤防を いう。 暫定堤防 ~凡 例~ 計画断面堤防 暫々定堤防※ 不必要区間

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Page 1: 2.現状と課題 - MLIT7 ・中流部では、平成13年9月洪水において約100mの河岸侵食が発生した。 2-1 現状と課題(治水②) 平成13年9月洪水

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平成 14 年 7月洪水 常総市本町地先 下流部は住宅密集地であり、堤防が低く、洪水のたびに危険な状況にさらされている

(1)河道の整備

平成 14 年 7 月洪水 無堤部浸水状況

常総市豊岡町地先

(1)河道の整備

・堤防の整備状況(平成 17 年度末時点)は、上流部は概ね断面を満足しているものの、下流部は満足していない区間が多い。

・平成 14 年 7 月洪水においては、常総市豊岡地先の無堤部で浸水被害が発生している。

堤防の高さ及び断面が不足

つくばみらい市小絹地先

無堤部、弱小堤の存在

2-1 現状と課題(治水①)

洪水の痕跡水位

2.現状と課題

①余裕高

洪水時の風浪、うねり、跳水等による一時的な水位上昇、巡視や水防活動の安全確保、流木等

の流下物への対応等種々の要素をカバーする余裕。

②天端(てんば)幅

浸透に対して安全な断面の確保、常時の河川巡視又は洪水時の水防活動等のために必要な幅。

③のり勾配

雨水浸透の抑制、除草や維持管理等がしやすいよう3割よりゆるくし、一枚のりとする。

※解説・河川管理施設等構造令、堤防設計指針より

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50

100

150

200

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100

距離標

標高

(YP. m)

平成10年9月台風5号の痕跡水位

平成14年11月台風6号の痕跡水位

計画高水位(HWL)

 

 

 

11

12

13

14

15

16

17

3 4 5 6 7 8 9 10

距離標

標高

(YP. m

)

15

20

25

30

13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35

距離標

標高

(YP. m)

95

100

105

110

115

75 76 77 78 79

距離標

標高(

YP. m)

既往洪水の痕跡水位

HWL(計画高水位)

②天端幅 6.0m以上

堤防高

①余裕高1.5m以上

③表

のり

1:3

以上

③裏

のり

1:3以

計画断面堤防

3

1

※暫々定堤防とは、堤防の形

状を評価して、その高さが

計画高水位未満の堤防を

いう。

暫定堤防

~凡 例~

計画断面堤防

暫々定堤防※

不必要区間

Page 2: 2.現状と課題 - MLIT7 ・中流部では、平成13年9月洪水において約100mの河岸侵食が発生した。 2-1 現状と課題(治水②) 平成13年9月洪水

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・中流部では、平成 13 年 9 月洪水において約 100m の河岸侵食が発生した。

2-1 現状と課題(治水②)

平成 13 年 9月洪水 護岸の洗掘・崩壊

栃木県塩谷町上平地先

平成 13 年 9 月洪水 河岸侵食状況

東北新幹線橋梁付近

河岸侵食

東北新幹線橋梁

出水後の河岸線

出水前の河岸線

約100mの河岸侵食

出水前の河岸

橋脚基礎の深掘れ状況(平成 12 年)

石下大橋付近

平成 13 年 9 月洪水

橋脚基礎の深掘れ状況 東北新幹線橋梁

平成 14 年 7 月洪水 護岸の洗掘・崩壊

栃木県河内町白沢地先

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(2)堤防の安全性:堤防は過去の拡築・補修の繰り返しにより、内部の構造が不明確。堤防の浸透に対する安全性が低い区間が存在し、堤防の強化が必要である。

(2)堤防の安全性

昭和 57 年 9 月洪水 漏水の状況常総市樋ノ口地先

鬼怒川堤防詳細点検結果

凡例(浸透による堤防の安全性

:詳細点検調査実施済みの区間

:詳細点検調査未実施の区間

:今回の詳細点検の結果、

浸透に対する安全性不定区間

~計算条件~ 概ね 100 年に1度発生する降雨と洪水において、現在の河川堤防の

浸透に対する安全性を評価した結果を示している。

2-1 現状と課題(治水③)

堤体材料のイメージ図

(国土交通省河川局 HP より)

堤 体 基礎地盤

<浸透による堤防決壊のメカニズム>

河川水位が高い状態が長時間続くと、堤防内の水位も上昇し、堤防の中及び基礎

地盤に水の通り道が形成される。

この水の通り道が、徐々に拡大すると水とともに堤防の土が流れ出し、堤防が崩

れることになる。

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0

5

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15

20

25

30

~S10 ~S20 ~S30 ~S40 ~S50 ~S60 ~H10

設置年度

樋管

江口排水樋管

躯体の一部がレンガ構造、土砂の吸い出しで

空洞化が生じている

(4)老朽樋管

河床低下

(3)河床低下

(3)河床低下:局所的な深掘れが随所に発生し、「低水護岸の抜け上がり」、「橋脚基礎部抜け上がり」による構造物の安全性が低下している。

(4)老朽樋管:設置から 50 年以上経過した樋管が全体数の約半数を占め、老朽化による機能低下及び周辺堤防を含む安全性低下が大きな課題となっている。

2-1 現状と課題(治水④)

鬼怒川樋管設置年度

戦後復興、高度成長期の砂利採取や上流からの土砂供給の減少、利根川本川の河床低下、

及び横断工作物の影響により、河床の低下や局所的な深掘れが随所に発生している。

河床低下に伴い取水箇所での 揚水ポンプ設置

高崎揚水樋管

JR水戸線鬼怒川橋梁

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(1)鬼怒川の水は、発電用水、農業用水、水道用水、工業用水として、多目的、広域的に利用されている。

(2)中流部の3つの頭首工から取水された左岸のかんがい用水の多くは、水田地帯で利用されたのち、五行川、大谷川流域で反復利用され、小貝川へ流れる。

鬼怒川

利根川

八間堀川

糸繰川

大谷川

五行川

小貝川

逆木用水

吉田用水

江連用水

草川用水

市の堀用水

常総市

取手市

坂東市

牛久市

つくば市

つくばみらい市

守谷町

八千代町

小山市

結城市

下野市

上三川町

河内町

益子町

茂木町

市貝町

築西市

宇都宮市

真岡市

上河内町

二宮町

芳賀町

さくら市

高根沢町

那須烏山市

下妻市

龍ケ崎市

福岡堰

岡堰

豊田堰

岡本頭首工

勝瓜頭首工

佐貫頭首工

農水省直轄の合口

取水施設。8 用水

と鬼怒川左岸の洪

積台地畑地灌漑の

用水補給、宇都宮

市の水道用水と工

業用水も取水して

いる。

(昭和 61 年竣工)

農水省直轄の合口

取水施設。9 用水

を合口し、頭首工

より取水し導水路

を経て発電を行っ

た後、灌漑に供さ

れる。

(昭和 41 年竣工)

農水省直轄の合口

取水施設。取水の

安定化と渇水時の

用水不足を解消す

る目的で 7 用水の

取水施設が合口し

ている。

(昭和 50 年竣工)

佐貫頭首工

最大取水量 42.00m3/s

受益面積 8,941ha

岡本頭首工

最大取水量 12.24m3/s

受益面積 3,324ha

勝瓜頭首工

最大取水量 18.95m3/s

受益面積 9,428ha

2-2 現状と課題(利水①)

(1)水利用状況 (2)農業用水の流れ

鬼怒川水利用状況

種別 最大水取水量

(m3/s) 件数

水道用水 3.2 12

工業用水 1.8 5

農業用水 127.4 344

発電用水 606.9 25

その他 2.4 12

合計(発電除く) 134.8 373

H17.3.31 現在

※農業用水の最大取水量は、許可水利権量と、慣行水利権のうち、取水量

が記載されているもののみ合計。

その他1.8%2.4m3/s

農業用水94.5%

127.4m3/s

工業用水1.3%1.8m3/s

水道用水2.4%3.2m3/s

水道用水

工業用水

農業用水

その他

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湯西川ダム 建設予定地

代かき期の瀬切れ状況 (平成 18 年 5 月 1 日撮影)

勝瓜頭取工下流

渇水の状況(平成8年8月29日撮影)

観音橋下(佐貫頭首工下流)

(3)頭首工下流等において、流量が少ない時期・区間がある。

(4)渇水の頻発で、水利用の制限も生じている。

(5)水利用および河川の維持流量の確保のため、五十里、川俣、川治ダムの運用および鬼怒川上流ダム群連携事業を運用(試行)しており、また、湯西川ダムの建設

を進めている。

2-2 現状と課題(利水②)

(3)河川水量の減少区間 (4)渇水の頻発

(5)湯西川ダムの建設

鬼怒川における近年の渇水

年 期間 渇水対応の状況等

平成 6年夏 7 月~9月 ・ 利根川水系で最大 30%の取水制限を実施(60 日間)

・ 鬼怒川水系で最大 20%の取水制限を実施(30 日間)

平成 8年夏 7 月~9月 ・ 利根川水系で最大 30%の取水制限を実施(41 日間)

・ 鬼怒川水系で 10%の取水制限を実施(46 日間)

平成 9年春 5 月~6月 ・ 鬼怒川で最大 20%の取水制限を実施(27 日間)

平成 13 年夏 4 月~7月

・ 利根川水系で 10%の取水制限を実施(18 日間)

・ 鬼怒川水系で、10%の取水制限を実施(17 日間)、その他、霞ヶ

浦用水の注水、佐貫頭首工の自主節水(農水 10%)などを実施。

黒部川ダム下流の発電バイパス区間における

流量の少ない状況

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2-3 現状と課題(環境①)

(1)水質は流域の負荷削減対策の進展により改善し、近年は環境基準を満足している。

(1)水質

鬼怒川の水質経年変化状況(大臣管理区間)

河川の一般的な水質指標である BOD(75%)でみると、流域の負荷削減対策の進展により改善傾

向も見られ、近年は、鬼怒川の環境基準値(2mg/l)を満足している。

鬼怒川

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

S51

S52

S53

S54

S55

S56

S57

S58

S59

S60

S61

S62

S63 H1

H2

H3

H4

H5

H6

H7

H8

H9

H10

H11

H12

H13

H14

H15

H16

H17 年

BOD75%(mg/L)

環境基準 上平橋(中流) 鬼怒川橋(中流) 川島橋(下流) 豊水橋(下流)

A類型