「3年生修学旅行」俳句特集号 (1) ·...

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生徒のみなさんは必ず保護者の方に渡してください。 H25. . 24 直方第三中学校 校長 橋本淳生 第7号 本年度の修学旅行では、「感動探しの旅」として、旅の 感動を振り返り、一人三句以上の俳句をつくりました。 一方で、私は、安河内ちえ子先生に師事し、毎月句会に参加し 俳句のすばらしさを学んでいるところです。今回の句会で、 安河内先生に生徒皆さんの俳句の選評をお願いしました。 本号では、選評並びに最優秀句と優秀句を紹介します。 はじめに、各学級の「最優秀句」と「選評」を紹介します。 【1組】 春の夜旅の宿にて母思う 和田りな 旅は楽しいものですが、でも、夜になるとちょっぴり家が恋しくなるもの です。その気持ちを素直に句にしているところがいいです。ましてや修学旅 行ですから、この楽しさを味わえるようにしてくれた両親の苦労や思いやり など、しみじみと感じることができます。修学旅行に行って当たり前でなく、 こうやって行かせてもらえたことに感謝できる心を作者はきっと持っている のです。だから、「母」のことへと思いがつながっていくのです。 【2組】 新緑の森に大仏鎮座する 古賀大貴 「鎮座する」が生きています。いかにも大仏の大きさを感じる言葉です。 原 作 で は 、「 新 緑 の 森 奈 良 の大 仏 鎮 座 す る 」 で し た が 、 少 し推 敲 し て い ま す 「大仏」だけで十分です。こうするとリズムが良くなり声に出して読むとい い感じなったと思いませんか。俳句は、5,7,5のリズムを大切にしたい と 思 い ま す 。「 新 緑 」 の 季 語が 、 大 仏 の イ メ ー ジ を 優 し い もの に し て く れ て います。 大仏の足元に吹く桜風 高木さくら 大きな大仏と優しい感じの桜の花びらを伴った風の取り合わせが面白いで す。なかなか鋭い感覚の持ち主です。一気に大仏さんが身近に感じられます。 大仏の顔まで明るく優しくなったようです。 「3年生修学旅行」俳句特集号 (1) 【3組】 草餅とお茶をたしなむ銀閣寺 蒲池優樹 金閣寺に比べて少し地味目の銀閣寺。地味だけどゆっくり見ていると深い 味わいがある。茶店によって、草餅を所望し併せて「お茶も」、もちろん「抹 茶」を飲んだのでしょう。「たしなむ」というステキな言葉を上手に使いこ なしています。さすが、中学三年生です。もう精神的に大人に近づいている ことがよく分かります。今回の作品の中で、私の一番好きな作品です。 金閣の光でたんぽぽ生き生きと 田中那樹 傍らに咲いているタンポポに目を留め、金閣の光のせいだ、生き生きと輝 いていると発見したのです。他の人の金閣寺の目の付け所と大きく異なって いるところがいいです。オンリーワンの世界です。独自性があると思います。 古都の春写真の顔は皆笑顔 山下将滉 旅行から帰って写真を整理しながら、旅の思い出の句です。多くの読者の 共感を呼ぶ句です。本当にそうだと思います。目の付け所がいいです。 【4組】 春風に揺れる湖面の金閣寺 塚本玲加 作者の目には、地上の金閣寺は見てません。視線はまっすぐ湖面に向かっ ています。視線が揺れないので、湖面だけに焦点を絞って成功しています。 微妙に揺れキラキラ光る金閣寺の姿を堪能している様子がよく分かります。 上手な句です。 古都の春金剛力士のにらみ合い 廣瀬優也 大仏殿の金剛力士像は、迫力があります。穏やかな春の景色の中において も、ど迫力って感じです。その迫力にまいっている作者のうめきが伝わって くるようです。 夏隣言の葉いらぬ龍安寺 上川久玲央 他の作品を見ると作者は先生のようです。言葉の 使い方が、さすがに上手です。「夏隣」で、ちょっと 動くと汗ばむほどの暑さを表現しています。でも、 木陰、日陰に入るとまだまだ春の雰囲気です。少し 歩いてやっとお目当ての「龍安寺」に着き、すばら しさに言葉を失っている姿がイメージできます。 美しいと直接言わなくてもこのように、読者に 想像させる表現方法があるのです。 ※裏に続きます

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Page 1: 「3年生修学旅行」俳句特集号 (1) · 次に、3-1、3-2の「優秀句」を紹介します。 【1組】 (安河内先生選) 春風や水面に浮かぶ金閣寺

生徒のみなさんは必ず保護者の方に渡してください。

H25.5.24直方第三中学校

校長 橋本淳生

第7号

本年度の修学旅行では、「感動探しの旅」として、旅の

感動を振り返り、一人三句以上の俳句をつくりました。

一方で、私は、安河内ちえ子先生に師事し、毎月句会に参加し

俳句のすばらしさを学んでいるところです。今回の句会で、

安河内先生に生徒皆さんの俳句の選評をお願いしました。

本号では、選評並びに最優秀句と優秀句を紹介します。

はじめに、各学級の「最優秀句」と「選評」を紹介します。

【1組】

◎ 春の夜旅の宿にて母思う 和田りな

旅は楽しいものですが、でも、夜になるとちょっぴり家が恋しくなるもの

です。その気持ちを素直に句にしているところがいいです。ましてや修学旅

行ですから、この楽しさを味わえるようにしてくれた両親の苦労や思いやり

など、しみじみと感じることができます。修学旅行に行って当たり前でなく、

こうやって行かせてもらえたことに感謝できる心を作者はきっと持っている

のです。だから、「母」のことへと思いがつながっていくのです。

【2組】

◎ 新緑の森に大仏鎮座する 古賀大貴

「鎮座する」が生きています。いかにも大仏の大きさを感じる言葉です。

原作では、「新緑の森奈良の大仏鎮座する」でしたが、少し推敲しています

「大仏」だけで十分です。こうするとリズムが良くなり声に出して読むとい

い感じなったと思いませんか。俳句は、5,7,5のリズムを大切にしたい

と思います。「新緑」の季語が、大仏のイメージを優しいものにしてくれて

います。

◎ 大仏の足元に吹く桜風 高木さくら

大きな大仏と優しい感じの桜の花びらを伴った風の取り合わせが面白いで

す。なかなか鋭い感覚の持ち主です。一気に大仏さんが身近に感じられます。

大仏の顔まで明るく優しくなったようです。

「3年生修学旅行」俳句特集号 (1)

【3組】

◎ 草餅とお茶をたしなむ銀閣寺 蒲池優樹

金閣寺に比べて少し地味目の銀閣寺。地味だけどゆっくり見ていると深い

味わいがある。茶店によって、草餅を所望し併せて「お茶も」、もちろん「抹

茶」を飲んだのでしょう。「たしなむ」というステキな言葉を上手に使いこ

なしています。さすが、中学三年生です。もう精神的に大人に近づいている

ことがよく分かります。今回の作品の中で、私の一番好きな作品です。

◎ 金閣の光でたんぽぽ生き生きと 田中那樹

傍らに咲いているタンポポに目を留め、金閣の光のせいだ、生き生きと輝

いていると発見したのです。他の人の金閣寺の目の付け所と大きく異なって

いるところがいいです。オンリーワンの世界です。独自性があると思います。

◎ 古都の春写真の顔は皆笑顔 山下将滉

旅行から帰って写真を整理しながら、旅の思い出の句です。多くの読者の

共感を呼ぶ句です。本当にそうだと思います。目の付け所がいいです。

【4組】

◎ 春風に揺れる湖面の金閣寺 塚本玲加

作者の目には、地上の金閣寺は見てません。視線はまっすぐ湖面に向かっ

ています。視線が揺れないので、湖面だけに焦点を絞って成功しています。

微妙に揺れキラキラ光る金閣寺の姿を堪能している様子がよく分かります。

上手な句です。

◎ 古都の春金剛力士のにらみ合い 廣瀬優也

大仏殿の金剛力士像は、迫力があります。穏やかな春の景色の中において

も、ど迫力って感じです。その迫力にまいっている作者のうめきが伝わって

くるようです。

◎ 夏隣言の葉いらぬ龍安寺 上川久玲央

他の作品を見ると作者は先生のようです。言葉の

使い方が、さすがに上手です。「夏隣」で、ちょっと

動くと汗ばむほどの暑さを表現しています。でも、

木陰、日陰に入るとまだまだ春の雰囲気です。少し

歩いてやっとお目当ての「龍安寺」に着き、すばら

しさに言葉を失っている姿がイメージできます。

美しいと直接言わなくてもこのように、読者に

想像させる表現方法があるのです。

※裏に続きます

Page 2: 「3年生修学旅行」俳句特集号 (1) · 次に、3-1、3-2の「優秀句」を紹介します。 【1組】 (安河内先生選) 春風や水面に浮かぶ金閣寺

次に、3-1、3-2の「優秀句」を紹介します。

【1組】 (安河内先生選)

○ 春風や水面に浮かぶ金閣寺 石田侑也

○ 清水の舞台を包む春日かな 石田侑也

○ 椿咲く京都の町の細い道 古閑瑞季

○ 春の陽を浴びて輝く金閣寺 古閑瑞季

○ 新緑の木陰で休む奈良の鹿 古閑瑞季

○ 古都の夜池に映りし朧月 小島雅也

○ 春風に若葉が踊る銀閣寺 敷田亜美

○ 春の日にひときわ輝く金閣寺 中岡綾香

○ 金閣寺池に映して春景色 中村朱音

○ 龍安寺石楠花(しゃくなげ)の花咲きほこる 永山拓海

○ 龍安寺枝垂れ桜のおでむかえ 永山拓海

○ 積雪を掻き分け芽吹く蕗のとう 平川康介

○ 春風や湖面に映る金閣寺 平川康介

○ 風が吹き古都の桜がヒラヒラと 廣瀨大輔

○ 清水の本堂から見る春景色 藤原優花

○ 春の旅恋の話に花咲かす 松田望歩

○ 春風に奈良の大仏ほほえんだ 宮崎 淳

○ 水温む池に飛び込む蛙の子 矢野 誉

○ 銀閣や春の景色に息をのむ 山本晃平

○ 春の空五重の塔がそびえ立つ 山本晃平

○ 咲きほこる花の周りを蝶が舞う 山本 恵

○ 金閣寺黄金色に光る春 和田 翔

○ 窓を開け日射しまぶしい春の朝 和田りな

○ 緑陰の風が頁をめくりおり 上川久玲央

○ 思い出が口に広がるすぐき噛む 上川久玲央

○ 大仏を仰ぎて子等と春の旅 上川久玲央

(校長選) ※安河内選と重なっていない優秀句を紹介します。

○ 龍安寺しだれ桜の古都の旅 石田 群

○ 京の春期間限定の桜味 緒方奈已

○ 古都の旅たんぽぽともに出発だ 加治杏菜

○ 桜散る古都の旅人衣替え 鮫島稜平

○ 古都の旅春の金閣ひとめぼれ 篠崎瑠里奈

○ 金色の春風包む金閣寺 田代 聡

○ 春風にぐぐんとのびる京都タワー 林 亜希帆

○ 春の朝目ざまし時計の鳥の声 古野斗唯

○ 春風や池の水面に金閣寺 安武 茜

【2組】(安河内先生選)

○ 龍安寺十五石の光る春 有田果奈

○ 春風やみくじで占う地主神社 石田尚己

○ うぐいすの声を遠くに友とかけ 石松 葵

○ 気持ちよく大空泳ぐ鯉のぼり 井口裕也

○ 巣立ち前飛ぼうと挑む雀の子 植木流斗

○ 大仏殿を仰ぐ人並み春の空 太田紗矢

○ 春深し風と旅する法隆寺 川原里美

○ 大仏が笑顔で見守る春の旅 栗林淑乃

○ 龍安寺枝垂れ桜を絵日記に 高木さくら

○ 清水の新芽の道と人の波 高木さくら

○ 金閣寺池に映って風光る 田中夕稀

○ 清水の旅人迎える若椛(わかもみじ) 濵田未央

○ 蜂たちも寺の桜を散策す 濵田未央

○ 金閣寺水面に浮かぶ春景色 法崎匡倫

○ 春風に光り輝く金閣寺 森 玲奈

(校長選) ※安河内選と重なっていない優秀句を紹介します。

○ 旅の終(つい)京都の街に春が来る 飯野晃悠

○ 春風や鳥のさえずり古都の旅 飯野晃悠

○ 春深し空を貫く五重塔 石松 葵

○ 旅の中空を見上げて鯉のぼり 岩井雄大

○ 4月鹿せんべい探して人を見る 北里舞菜

○ 地主神社春の恋路は叶うかな 久保田ひかり

○ 風光る銀閣の庭立ち止まり 小南結琳

○ 古都の旅みんなでバタバタ入浴中 田中夕稀

○ 春深し歴史悲しい銀閣寺 森 玲奈

Page 3: 「3年生修学旅行」俳句特集号 (1) · 次に、3-1、3-2の「優秀句」を紹介します。 【1組】 (安河内先生選) 春風や水面に浮かぶ金閣寺

安河内ちえ子先生からの「メッセージ」です。

校長先生と私は、一緒に句会を楽しんでいる仲間です。中間南中学校の修学旅行の俳句

を、見せていただきました。選評して欲しいということでしたので、気がついたことを書

きました。よく分からないことや疑問に思うことは、校長先生に伝えて下さい。機会があ

りましたら、また、返事を差し上げます。今回、私が選ばなかった作品も別の選者は、選

んでくださるでしょう。選ばれなかったことはあまり気にしないで、時々に俳句をお楽し

み下さいね。

「俳句特集号」への感想をお願いします。

今回は、「俳句特集号」として3年生修学旅行の俳句を紹介しました。生徒皆さんの感

性あふれた「俳句」はいかがでしたか。

「俳句」は、作句を通して、感動的なことや自分の生活

を振り返ることができます。さらに、感動したことを表現

するため、季語を駆使し五七五の言葉で表します。この時、

自ら「季語のもつ意味と力」に気づき、「言葉の力」を学ぶ

態度が養われます。

これからも「俳句」を通して、学校生活の様子を皆様に

伝えていきたいと思います。また、「俳句特集号」の保護

者や地域の皆様のご意見・ご感想をお待ちしています。

ご協力よろしくお願いいたします。

【3組】

○ 燕の巣ヒナが巣立つ日もう間近 安東一貴

○ 春風や日射しがはえる金閣寺 岩田のぞみ

○ 古都の旅金閣寺春風光る 大田千春

○ 山笑う人が行きかう嵐山 大田千春

○ 京の春大の字の跡くっきりと 大西彩華

○ 春浅し冷たい池で鯉泳ぐ 小川日伽瑠

○ 京の道葉からこぼれる春の陽よ 奥田早貴

「南陵の風」通信欄 年 組 氏名

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