3 大学技術職員連携によるウッドデッキ銘板加工¹³成22年度3...1.2...

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3 大学技術職員連携によるウッドデッキ銘板加工 長崎大学工学部教育研究支援部 久田英樹 3 大学技術職員連携の 1 セクション,創造工房の連携として新潟大学工学部創造工房の 技術供与により工作機械による文字彫り技術(CAD/CAM) の研修を受講した.以下にその 時の成果を報告する. 1. 目的 1.1 新潟大学工学部創造工房の CAD/CAM 加工技術を習得して長崎大学創造工学センタ ー創造工房の機械加工技術のスキルアップを図る. 1.2 工作機械による文字彫り技術を研修して第 7 回学生ものづくり・アイディア展出展 の優秀賞を取ったウッドデッキチームの銘板加工を行う. 1.3 生産技術室研修会に新たに CAD/CAM のテーマを取り入れ研修会を行う. 2. 研修 平成 21 12 4 日~6 日,第 7 回学生ものづくり・アイディア展に参加した時, 新潟大学工学部技術職員の白井様,松平様から指導を受け NC 工作機械による Jw_cad (※注 1)NCVC(※注 2)のソフトを利用した CAD/CAM 文字彫り加工技術を研修した. 生産技術室には,CAD/CAM のソフトウェアがなく,NC プログラムを手作業で作 成していたので,簡単な加工等は,このソフトで十分加工出来る.また手作業による プログラム作成より数段,時間短縮につながり加工コストが下がる. 3. 製作手順 3.1 パソコン Windows 2000Windows XPWindows Vista OS にフリーソフトの Jw_cad NCVC をインストールしたものを使用.ホームページで簡単にダウンロード出来る. 3.2 作図(CAD) Jw_cad を用いて,図形や文字の輪郭を連線で描いていく. レイヤーは(0)ORIJIN(1)CAM_LINE(2)ADD_LINE 3 つとする. (0)ORIJIN は作図の大きさを指定する枠を描いておく. (1)CAM_LINE が,工作機械で削る時のデータとなる. (2)ADD_LINE は, (1)CAM_LINE に図形や文字を描くための作業レイヤーになる. 文字の輪郭加工の際は,TTfont(※注 3)Jw_cad にセットアップしておけば輪郭 文字が描ける.作図が出来るとファイルを DXF 形式のファイルで保存する. 3.3 プログラム作成(CAM)

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Page 1: 3 大学技術職員連携によるウッドデッキ銘板加工¹³成22年度3...1.2 工作機械による文字彫り技術を研修して第7 回学生ものづくり・アイディア展出展

3 大学技術職員連携によるウッドデッキ銘板加工 長崎大学工学部教育研究支援部 久田英樹

3 大学技術職員連携の 1 セクション,創造工房の連携として新潟大学工学部創造工房の

技術供与により工作機械による文字彫り技術(CAD/CAM)の研修を受講した.以下にその

時の成果を報告する.

1. 目的

1.1 新潟大学工学部創造工房のCAD/CAM加工技術を習得して長崎大学創造工学センタ

ー創造工房の機械加工技術のスキルアップを図る.

1.2 工作機械による文字彫り技術を研修して第 7 回学生ものづくり・アイディア展出展

の優秀賞を取ったウッドデッキチームの銘板加工を行う.

1.3 生産技術室研修会に新たに CAD/CAM のテーマを取り入れ研修会を行う.

2. 研修

平成 21 年 12 月 4 日~6 日,第 7 回学生ものづくり・アイディア展に参加した時,

新潟大学工学部技術職員の白井様,松平様から指導を受け NC 工作機械による Jw_cad

(※注 1),NCVC(※注 2)のソフトを利用した CAD/CAM 文字彫り加工技術を研修した.

生産技術室には,CAD/CAM のソフトウェアがなく,NC プログラムを手作業で作

成していたので,簡単な加工等は,このソフトで十分加工出来る.また手作業による

プログラム作成より数段,時間短縮につながり加工コストが下がる.

3. 製作手順

3.1 パソコン

Windows 2000,Windows XP,Windows Vista の OS にフリーソフトの Jw_cad と

NCVC をインストールしたものを使用.ホームページで簡単にダウンロード出来る.

3.2 作図(CAD)

Jw_cad を用いて,図形や文字の輪郭を連線で描いていく.

レイヤーは(0)ORIJIN,(1)CAM_LINE,(2)ADD_LINE の 3 つとする.

(0)ORIJIN は作図の大きさを指定する枠を描いておく.

(1)CAM_LINE が,工作機械で削る時のデータとなる.

(2)ADD_LINEは,(1)CAM_LINEに図形や文字を描くための作業レイヤーになる.

文字の輪郭加工の際は,TTfont(※注 3)を Jw_cad にセットアップしておけば輪郭

文字が描ける.作図が出来るとファイルを DXF 形式のファイルで保存する.

3.3 プログラム作成(CAM)

Page 2: 3 大学技術職員連携によるウッドデッキ銘板加工¹³成22年度3...1.2 工作機械による文字彫り技術を研修して第7 回学生ものづくり・アイディア展出展

NCVC を開き,オプションのところで CAD データの読み込み設定をする.

レイヤー名を CAM とし原点設定を ORIJIN とする.その際,原点を認識出来なか

った場合は,中央として CAM データを作る.切削パラメータの設定で工具回転数,

送り速度,切り込み量等を入力しておく.出来あがった DXF ファイルを読み込み,

ファイルメニューの NC データの生成で CAM プログラムを作成し保存する.ファイ

ルをトレースして動作,およびプログラムをチェックする.

何も問題なく動いても工作機械によっては,プログラムの修正が必要となるので注

意する.高速スピンドルアタッチメントを利用しての加工の場合は,主軸回転指令を

プログラムから必ず削除する.拡張子は,「ファイル名.NCD」で出来上がるので,

工作機械のメーカーによっては,拡張子を変更する必要がある.

3.4 加工

素材の準備し,工作機械のバイス等に取り付ける.後は,工作機械に CAM プログ

ラムを読み込んで,工作機械に付属しているシミュレーションソフトで動かして問題

がなければ,原点,工具長設定等の工作機械のセッティングを行い,切削する.

3.5 使用ソフトの著作者

(※注 1) Jw_cad 清水 治郎([email protected]_NO_SPAM) & 田中 善文

(※注 2) NCVC 舞鶴工業高等専門学校教育研究支援センター 眞柄賢一

(※注 3) JW_TTfnt wat (Surveytec.com)

Jw_cad version 7.04a, NCVC version 1.71, JW_TTfnt Ver 1.0

4. 製作物

1) 1/20 模型銘板作製 A4 サイズ 2 枚(アクリル)

2) ウッドデッキ記念品 φ80 71 個(木材)

3) ウッドデッキ銘板 A3 サイズ 3 枚(銅板,アルミニウム)

4) アルミ試験用吊具 60mmx10mm(アルミニウム)

5) 技術職員研修会 ネームプレートの製作 100mmx48mm(アルミニウム)

5. 工作機械及び設備

大阪機工らくらくミル 3V にナカニシ高速スピンドル装置を取り付けスピンドル回

転数 10,000rpmで回し,工具は超硬ボールエンドミル φ1mmを使用し加工を行った.

5.1 切削条件および加工時間(t:切り込み,F:テーブル送り)

1) 1/20 模型作製 t0.3mm,F300mm/min,加工時間 1 枚 約 40min.

2) ウッドデッキ記念品 t0.3mm,F150mm/min,加工時間 1 枚 約 20min.

3) ウッドデッキ銘板 t0.5mm,F200mm/min,加工時間 1 枚 約 180min.

4) アルミ試験用吊具 t1.5mm,F100mm/min,加工時間 1 枚 約 10min.

5) ネームプレートの製作 t0.3mm,F300mm/min,加工時間 1 枚 約 10min.

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6. 加工の様子と加工品等

写真 1 工作機械(らくらくミル) 写真 2 1/20 模型銘板作製 写真 3 1/20 模型銘板

写真 4 1/20 模型 写真 5 ウッドデッキ記念品製作 写真 6 記念品 φ80

写真 7 記念品 10 個 写真 8 記念品 61 個 写真 9 ウッドデッキ本体用銘板製作

写真 10 完成品 A3 サイズ 写真 11 ウッドデッキ完成セレモニー 写真 12 ウッドデッキ利用の様子

写真 14 銘板取り付け 写真 15 実験用アルミ部品 写真 16 研修会デモ加工品

銘板

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7. ソフトの使用例

Jw_cad ,NCVC,JW_TTfont を利用して作製したプログラムを図 1,図 2,に示す.

図 1. Jw_cad 作業画面 図 2.NCVC 作業画面

8. まとめ

第 7 回学生ものづくり・アイディア展 in 新潟において,新潟,富山,長崎の 3 大

学技術職員連携会議を行い,3 大学の創造工房の連携から始める事を決めた.長崎大

学と新潟大学の創造工房の連携としてまず,工作機械による文字彫り技術 CAD/CAM

の研修を行って頂いた.この研修で私は,1)CAD/CAM の加工技術のスキルアップと

2)アイディア展出展のウッドデッキに関する銘板等の製作と 3) CAD/CAM のテーマ

を技術職員研修会に取り入れる事の 3 項目を課題に設定して技術供与を受けた.まず,

1/20 ウッドデッキ模型の銘板製作を新潟大学での研修通りに行い,うまく加工する事

が出来た.(写真 1~4)次にウッドデッキ銘板は,ウッドデッキ製作に参加した学生の

名前を入れ,後世に残るように A3 サイズ t5mm の銅板で製作し,本体に取り付けた.

(写真 9~14)木製記念品は,参加した学生および教職員に配り,好評を得た.(写真 5

~8)しかし,プログラム作成が不慣れのため,予想以上に時間がかかり,苦労した.

ウッドデッキ関連の銘板加工等については,123 時間を費やしたが,とても勉強にな

り,文字彫り技術(CAD/CAM)習得の達成感を味わった.また,アルミ実験用吊具は,

輪郭文字彫り加工の応用として厚さ 1mm のアルミ板をくり抜いて作った.NCVC で

作製したプログラムを改良し,中抜きをしてから外加工という流れで,うまく削る事

が出来た.(写真 15)第 5 回生産技術室研修会に CAD/CAM のテーマを取り入れて研修

を行った.Jw_cad のバージョンを上げて Windows VISTA に対応出来る様にした.

アウトライン書き込みフォント JW_TTfnt Version1.0 をセットアップして,作業効率

を上げて行った.(写真 16)以上のように 3 大学技術職員連携 CAD/CAM 研修によって

新潟大学工学部で学んだ技術を自分の糧とし,長崎大学の技術職員に研修という形で

指導出来る様になり,スキルアップが出来た.特に新潟大学工学部技術部の白井様,

松平様から丁重なるご指導頂いて,長崎大学工学部の創造工房の技術力が,ステップ

アップ致しました事を感謝致します.今後も 3 大学技術職員連携の絆を深めて,技術

力向上に努め,またそこで得た技術を教育改善や社会貢献に活用していきたいと思う.