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平成 30 年度 産業保安等技術基準策定研究開発等事業 (電気設備技術基準国際化調査) 報告書 平成 31 年 3 月 一般社団法人 日本電気協会

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  • 平成 30 年度

    産業保安等技術基準策定研究開発等事業

    (電気設備技術基準国際化調査)

    報告書

    平成 31 年 3月

    一般社団法人 日本電気協会

  • 緒 言

    我が国における規格・基準類の国際整合化に関しては,「規制緩和推進計画について(平

    成 7 年 3 月 31 日閣議決定)」並びに「規制緩和推進計画の改定について(平成 8 年 3 月29 日閣議決定)」により,政府より以下の方針が示されている。o 内需の拡大や輸入の促進,事業機会の拡大等を図り,国際的調和の実現に資

    する観点より,エネルギー関連分野における規制緩和等を計画的に推進する。

    また,資源エネルギー庁の電気事業審議会電力保安問題検討小委員会報告(平成 6 年 12月)では,以下の方向に沿った技術基準の見直しを提言している。

    o 技術進歩,環境変化等により,簡素化しても保安上支障がない条項を整理・

    削減し,基準を簡素化する。

    o 設置者等の利便が向上し,かつ,基準の客観性が確保可能な場合には,機能性

    基準の視点を導入する。

    o 公正・中立と認められる外国の規格,民間規格等を導入する。

    このような事情を背景として,「電気設備に関する技術基準を定める省令(平成 9 年 3 月27 日通商産業省令第 52 号,以下「電技省令」と略す)の審査基準については,国際整合化をはかるべく検討を進めてきている。

    具体的には,当時の資源エネルギー庁(現産業保安グループ電力安全課)からの依頼に

    よって,一般社団法人日本電気協会は,電技省令の審査基準国際整合化にあたって,IEC 規格(国際電気標準会議規格)取入れに関する調査検討を行うため,一般社団法人電気学会,

    一般社団法人電気設備学会の協力を得て,三団体が共同事務局となって「電気設備技術基

    準国際化委員会(以下,「委員会」と略す)を組織し,平成 8 年 6 月より調査検討を行っている。

    「電技省令」ならびに現行の審査基準である「電気設備の技術基準の解釈(以下,「電技

    解釈」と略す)」の規定に対応する IEC 規格としては,高圧・特別高圧分野の IEC 61936-1(交流 1kV 超過・の電力設備)並びに低圧分野の IEC 60364(低電圧電気設備)がある。IEC 60364 については平成 11 年 11 月に電技解釈第 272 条(現電技解釈第 218 条)として取り入れられ,続いて,IEC 61936-1 についても平成 22 年 1 月に電技解釈第 272 条の2(現電技解釈第 219 条)として取り入れが図られた。このような流れの中で,今年度事業としては,IEC 規格や海外の最新技術の動向を調査することにより,電技解釈への最新知見の取込みを目的に,IEC 60364規格の改定への対応並びに IEC 60364 規格の活用に向けた調査・検討を行うとともに,特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離について調査を行う。

    今年度事業における具体的な検討テーマは,以下のとおりである。

    (1)特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離

    o 諸外国における離隔距離の最新の基準値とその根拠等の調査について

    (2)IEC 60364 規格の改定への対応o 改定された IEC 60364 規格の電技解釈への取り入れ検討についてo 取入れ可となった IEC 60364 規格の適用に当たっての課題や制限事項,留意事項等の検討実施による電技解釈への取入れ案の策定について

    o 過去の委託事業で作成された当該規格の逐条解説の見直しについて

    本報告書はこれらの検討結果を取りまとめたものである。

  • 目 次

    平成 30 年度 産業保安等技術基準策定研究開発等事業

    (電気設備技術基準国際化調査)

    報告書

    緒言

    目次

    平成 30 年度 電気設備技術基準国際化調査委員会 事業概要………………… Ⅰ-1

    平成 30 年度 電気設備技術基準国際化調査委員会 委員構成………………… Ⅱ-1

    第1部 特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離………………………… Ⅲ-1

    第2部 IEC 60364規格の改定への対応………………………………………… ―電技解釈第218条への取入れ等の検討―

    Ⅳ-1

    第3部 IEC 60364規格の改定への対応………………………………………… ―用語の検討―

    Ⅴ-1

    第4部 IEC 60364規格の改定への対応………………………………………… ―IEC 60364-7-722の取入れに関する課題整理及び検討―

    Ⅵ-1

    あとがき

  • -Ⅰ-1-

    平成30年度

    電気設備技術基準国際化調査委員会 事業概要

  • -Ⅰ-2-

    平成30年度 電気設備技術基準国際化調査委員会 事業概要

    1.事業の目的

    公共の安全確保の観点から,電気事業法に基づく「電気設備に関する技術基準を定める

    省令」(以下「省令」という。)と,その補完的役割を担うものとして電気設備に関わる

    審査基準を記した「電気設備の技術基準の解釈」(以下「電技解釈」という。)が定めら

    れている。

    一方,電気保安を取り巻く環境は,電力システム改革や固定価格買取制度の導入による

    再生可能エネルギーの拡大等大きく変化しており,技術革新や新技術の導入も進んでいく

    可能性がある。このため現在の省令・電技解釈にも,省令適合性が確認された新技術に関

    しては,速やかに取り入れていく必要がある。

    また,WTO/TBT 協定では,規格による不必要な貿易障害が起こらないよう,各国の規制

    等で用いられている規格を国際規格に整合化していくことが求められており,電技解釈に

    国際規格である「IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議

    )規格」を取り入れているが,IEC 規格は制改定が随時行われている。

    このため本事業では,IEC 規格や海外の最新技術の動向を調査することにより,電技解

    釈への最新知見の取り込みを検討するものである。

    2.事業内容

    (1)特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離

    35,000V を超える特別高圧架空送電線路と工作物との離隔距離は電技解釈第 97条,

    第 98条,第 99条,第 100 条,第 101 条及び 102 条に,植物との離隔距離は電技解釈

    第 103 条に規定されている。諸外国の基準では,上記の離隔距離よりも小さな値が規

    定されており,我が国でも離隔距離を緩和できる可能性があるが,諸外国の基準値は

    規定された時期は古く根拠が明確ではないため調査が必要である。そこで,諸外国に

    おけるこれらの離隔距離の最新の基準値とその根拠等について調査を行う。調査とし

    ては,以下の点については必ず実施することとする。

    ① 離隔距離と根拠。

    ② これまでの変遷と,今後見直しが行われる予定があるか。

    ③ 他の工作物や植物への接触事故の実績や頻度はどうなっているか。

    調査対象国は,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランスとし,文献やWEB等の公開

    資料(国内外の政府機関や団体,企業等の報告書,国内外の専門誌等)等により調査

    を行う。必要により,有識者や各国関連政府機関,団体,企業等を訪問し,ヒアリン

    グ等の調査を行う。外国語の調査結果,報告資料については日本語に翻訳する。

    (2)IEC 60364規格の改定への対応

    電気使用場所の低圧電気設備の施設について規定したIEC 60364規格につ

    いては,既に電技解釈第218条に取入れられているが,それ以降,IEC 603

  • -Ⅰ-3-

    64規格の改定及び新たな規格の制定が逐次行われている。これに対応するため,本

    事業では以下の検討を行う。

    a.電技解釈第218条への取入れ等の検討

    電技解釈第218条へのIEC60364規格群の取入れに関し次の検討を行う。

    ①以下に示す改正されたIEC規格について電技解釈への取入れの可否を検討する。

    ・ IEC 60364-4-41 Ed.5.1(2017)

    :安全保護―感電保護

    ・ IEC 60364-4-44 Ed.2.2(2018)

    :安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護

    ・ IEC 60364-7-704 Ed.3.0(2017)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―建設現場及び解体現場における設備

    ・ IEC 60364-7-708 Ed.3.0(2017)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―キャラバンパーク,キャンピング

    パーク及び類似の場所

    ・ IEC 60364-7-711 Ed.2.0(2018)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―展示会,ショー及びスタンド

    ・ IEC 60364-7-712 Ed.2.0(2017)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―太陽光発電システム

    ・ IEC 60364-7-721 Ed.2.0(2017)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―キャラバン及びモータキャラ

    バンの電気設備

    ・ IEC 60364-7-722 Ed.2.0(2018)

    :特殊設備又は特殊場所に関する要求事項―電気自動車用電源

    ②前項「①」を踏まえ,取入れ可と判断したIEC規格については,適用にあたって

    の課題や制限事項,留意事項等の検討を行った上で電技解釈への取入れ案の策定を

    行う。

    ③取入れ可と判断したIEC規格は,過去の委託事業で作成された当該規格の逐条解

    説の見直しを行う。

    b.用語の検討

    上記a.の当該規格中で使用されている主要な用語を抽出し,当該用語の解説を作

    成する。

    ①IEC60364規格群の用語検討(抽出・整理・解説作成)

    ②IEV第826部及び第195部との整合性確認

    ③高圧・特別高圧分野との整合性検討

    C.IEC 60364-7-722の取入れに関する課題整理及び検討

    現在,電気自動車(EV)に関しては,省エネルギー,地球環境等の観点から普及

    に向けた検討が進められている。一方,電技解釈では,第199条の2(電気自動車

  • -Ⅰ-4-

    等から電気を供給するための設備等の施設)において一般用電気工作物を対象として

    規定している。

    これを踏まえて,IEC60364-7-722については,今後の電技解釈第2

    18条への取入れを見据えた課題について整理及び検討を行うことのみならず,電技

    への取入れ等についても検討を行う。

    ①EV市場環境と将来動向整理

    ②EV主要仕様・電気設備関連規格調査

    ③EVの普及等に伴う電気設備の課題と方向性検討

    3.検討体制

    (1)電気設備技術基準国際化調査委員会(本委員会)

    ・学識経験者及び産業界等で構成する本委員会を設置する。

    ・作業会での調査・検討内容を審議し,最終承認を行う。

    (2)作業会

    ・検討対象となる分野に関する専門家で構成する。

    ・事業内容の項目について,具体的に調査・検討を行い,その結果を本委員会に報告・

    提案する。

    (3)主査会

    ・各作業会関係者等で構成する。

    ・検討の方向性や各作業会間の横断的な課題調整等を実施する。

    (4)事務局

    ・図1.検討体制図のとおり。

    図1.検討体制図

  • -Ⅰ-5-

    4.スケジュール [事業期間:委託契約締結日~平成 31年 3月 15 日] ※【凡例】●:本委員会,WG・調査団等会議

    H30/10 11 12 H31/1 2 3

    ★本委員会

    (第1回)調査目的・方法の紹介,方針確認 [平成 30 年 11月 2 日] 委員会 ●

    (第2回)中間報告 [平成 31 年 1月 22 日] 委員会 ●

    (第3回)報告書案の最終審議 [平成 31 年 3月 1日] 委員会 ●

    ★報告書提出 [期限:平成 31 年 3月 15 日] ▼

    ①特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離 調査団

    ○文献調査他各種調査検討・整理

    ○海外調査(ドイツ[12/4]/フランス[12/6]/カナダ[1/29]/アメリカ[1/31]) ●● ●●

    ②IEC60364規格の改定への対応

    a.電技解釈第218条への取入れ等の検討

    ○電技解釈第218条への取入れ可否の検討

    ○電技解釈第218条改正案の提案

    ○逐条解説の作成

    WG1

    ● ●●● ● ● ●

    b.用語の検討

    ○IEC60364規格群の用語検討(抽出・整理・解説作成)

    ○IEV第826部及び第195部との整合性確認

    ○高圧・特別高圧分野との整合性検討

    WG2

    ● ● ● ●

    c.IEC60364-7-722の取入れに関する課題整理及び検討

    ○EV市場環境と将来動向整理

    ○EV主要仕様,電気設備関連規格調査

    ○EVの普及等に伴う電気設備の課題と方向性検討

    WG3

    ● ● ●

  • -Ⅱ-1-

    平成30年度

    電気設備技術基準国際化調査委員会 委員構成

  • -Ⅱ-2-

    平成30年度 電気設備技術基準国際化調査委員会 委員構成

    ○:途中交代(新任),△:途中交代(前任)

    ※注:電気設備技術基準国際化調査委員会関係以外の目的での本名簿の使用は禁止させ

    ていただきます。

    電気設備技術基準国際化調査委員会 委員構成

    委員長 日髙 邦彦 東京大学

    委員長代理 高橋 健彦 関東学院大学

    委 員 内田 英知 電気保安協会全国連絡会

    委 員 大貫 悟 大貫技術士事務所

    委 員 国則 信二 (一社)日本電気協会

    委 員 五来 高志 (一社)日本電線工業会

    委 員 澁江 伸之 (一社)日本配線システム工業会

    委 員 清水 恵一 (一社)日本照明工業会

    委 員 下川 英男 (一社)電気設備学会

    委 員 新藤 孝敏 (一財)電力中央研究所

    委 員 竹野 正二 (公社)日本電気技術者協会

    委 員 出口 洋平 (一社)日本電機工業会

    委 員 野田 隆司 全日本電気工事業工業組合連合会

    委 員 樋口 博輝 九州電力(株)

    委 員 深谷 昌伸 東京電力パワーグリッド(株)

    委 員 藤倉 秀美 (一財)電気安全環境研究所

    委 員 古田 雅久 (株)関電工

    委 員 松村 徹 (一社)日本電力ケーブル接続技術協会

    委 員 三島 康弘 (一社)電気学会

    委 員 道下 幸志 静岡大学

    オブザーバ 川崎 健彦 経済産業省産業保安グループ電力安全課

    オブザーバ 石原 利彦 経済産業省産業保安グループ電力安全課

    オブザーバ 半仁田 敦史 経済産業省関東東北産業保安監督部電力安全課

    オブザーバ 長谷 亮輔 経済産業省産業技術環境局国際電気標準課

    オブザーバ 本間 大策 △ 国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課

    オブザーバ 色川 寿喜 ○ 国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課

    オブザーバ 島村 泰彰 総務省消防庁予防課

    事務局 村松 文明 (一社)日本電気協会

    事務局 永野 幸一 (一社)日本電気協会

    事務局 下村 義隆 (一社)日本電気協会

    事務局 秋山 佳紀 (一社)日本電気協会

    事務局 澤田 明里 (一社)電気設備学会

    事務局 谷田 暁子 (一社)電気設備学会

    事務局 齋藤 範幸 (一社)電気設備学会

    事務局 竹内 美津恵 (一社)電気設備学会

    事務局 桃原 千尋 (一社)電気学会

  • -Ⅱ-3-

    WG1 取入れ検討WG

    主 査 古田 雅久 (株)関電工

    委 員 一番ヶ瀬 幸雄 (株)九電工

    委 員 井出 一磨 三機工業(株)

    委 員 下川 英男 (一社)電気設備学会

    委 員 竹野 正二 (公社)日本電気技術者協会

    委 員 留目 真行 (株)関電工

    委 員 中山 武右ェ門

    委 員 成澤 賢 (株)ユアテック

    委 員 村松 文明 (一社)日本電気協会

    委 員 山本 達也 (株)トーエネック

    委 員 山口 健二 パナソニック(株)

    事務局 澤田 明里 (一社)電気設備学会

    事務局 谷田 暁子 (一社)電気設備学会

    事務局 齋藤 範幸 (一社)電気設備学会

    事務局 竹内 美津恵 (一社)電気設備学会

    WG2 用語検討WG

    主 査 新藤 孝敏 (一財)電力中央研究所

    委 員 才田 敏之 東芝エネルギーシステムズ(株)

    委 員 佐々木 正行 (一社)日本電線工業会

    委 員 杉山 太 清水建設(株)

    委 員 中山 武右ェ門

    委 員 古田 雅久 (株)関電工

    委 員 前田 英昭 (一社)日本電機工業会

    委 員 村松 文明 (一社)日本電気協会

    委 員 山口 健二 パナソニック(株)

    事務局 桃原 千尋 (一社)電気学会

  • -Ⅱ-4-

    WG3 EV課題検討WG

    主 査 道下 幸志 静岡大学

    委 員 赤沼 克己 (株)関電工

    委 員 齋藤 幹久 (一財)電力中央研究所

    委 員 島崎 勉 (一社)電動車両用電力供給システム協議会

    委 員 下川 英男 (一社)電気設備学会

    委 員 本夛 良亮 電気事業連合会

    委 員 村松 文明 (一社)日本電気協会

    委 員 山口 健二 パナソニック(株)

    委 員 吉田 誠 (一社)CHAdeMO 協議会

    オブザーバ 稲葉 和樹 (一社)電動車両用電力供給システム協議会

    オブザーバ 木戸 彰彦 (一財)日本自動車研究所

    事務局 澤田 明里 (一社)電気設備学会

    事務局 谷田 暁子 (一社)電気設備学会

    事務局 齋藤 範幸 (一社)電気設備学会

    事務局 竹内 美津恵 (一社)電気設備学会

    架空送電設備調査団

    団 長 樋口 博輝 九州電力(株)

    団 員 小山 雄佑 中部電力(株)

    団 員 田頭 英朗 関西電力(株)

    団 員 高橋 慎哉 東京電力パワーグリッド(株)

    団 員 長友 寛史 九州電力(株)

    団 員 藤田 洸己 東北電力(株)

    団 員 村上 三朗 電源開発(株)

    団 員 山名 敬済 九州電力(株)

    団 員 山中 鉄也 電源開発(株)

    事務局 下村 義隆 (一社)日本電気協会

  • -Ⅲ-1-

    第1部

    特別高圧架空送電線路と植物等との離隔距離

    【架空送電設備調査団】

  • -Ⅲ-2-

    1 背景と目的35,000V を超える特別高圧架空送電線路と工作物との離隔距離は電技解釈第 97 条、第 98 条、

    第 99 条、第 100 条、第 101 条及び 102 条に、植物との離隔距離は電技解釈第 103 条に規定され

    ている。諸外国の基準では、上記の離隔距離よりも小さな値が規定されており、我が国でも離隔

    距離を緩和できる可能性があるが、諸外国の基準値は規定された時期は古く根拠が明確でないた

    め調査が必要である。

    2 調査の概要と方法諸外国におけるこれらの離隔距離の最新の基準値とその根拠等について調査を行う。調査とし

    ては、以下の点については必ず実施することとする。

    ① 離隔距離と根拠。

    ② これまでの離隔距離の変遷と今後の見直し計画

    ③ 他の工作物や植物への接触事故の実績や頻度

    調査対象国は、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランスとし、文献やWEB等の公開資料(国内外

    の政府機関や団体、企業等の報告書、国内外の専門誌等)等により調査を行う。

    今回、文献や Web 等の公開資料だけでは、接触事故情報の収集や離隔距離に関する実態把握が

    難しいことから、現地ヒアリング調査も実施した。

    調査対象

    本調査における調査対象を表 2-1 に示す。表 2-1 調査対象一覧

    電技解釈条番号 記 載 内 容

    第 97 条 35,000V を超える特別高圧架空電線と建造物との接近

    第 98 条 35,000V を超える特別高圧架空電線と道路等との接近又は交差

    第 99 条 35,000V を超える特別高圧架空電線と索道との接近又は交差

    第 100 条35,000V を超える特別高庄架空電線と低高圧架空電線等若しくは電車線等又はこれらの支持物との接近又は交差

    第 101 条 特別高圧架空電線相互の接近又は交差

    第 102 条 35,000V を超える特別高圧架空電線と他の工作物との接近又は交差

    第 103 条 35,000V を超える特別高圧架空電線と植物との接近

  • -Ⅲ-3-

    文献調査の対象

    本調査における文献調査の対象を表 2-2 に示す。表 2-2 文献調査の対象

    調査対象国 文 献 名 称

    ドイツ・EN 50341-1 ・EN 50341-2-4

    フランス

    ・UTE C11-001 ・ARRÊTÉ TECHNIQUE ・NF C18-510

    カナダ ・CSA standard C22.3 No.1-15 Overhead Systems

    アメリカ・2017 National Electrical Safety Code (NESC) ・2017 NESC® Handbook Premier Edition

    現地ヒアリング先

    本調査における現地ヒアリング先を表 2-3 に示す。表 2-3 現地ヒアリング先一覧

    現地ヒアリング先国 名

    (都市名) 実施日 ヒアリング先で採用している規格

    Amprion ドイツ

    (ドルトムント) 12 月 4 日 EN50341-1

    RTE フランス

    (パリ) 12 月 6 日 UTE C11-001

    Manitoba Hydro カナダ

    (ウィニペグ) 1 月 29 日

    CSA standard C22.3 No.1-15 Overhead Systems

    Bonneville Power Administration

    アメリカ

    (ポートランド) 1 月 31 日

    2017 National Electrical Safety Code (NESC)

  • -Ⅲ-4-

    3 調査結果文献調査

    離隔距離に関する基本的な考え方

    今回調査した 4 か国の離隔距離は、「対象物によって決まる基準離隔」に「電圧上昇に伴い変化する離隔値」を加えた値となっており、離隔距離とその根拠を表 3-1-1 に示す。また、カナダ及びアメリカでは、一定の条件の下、開閉サージ電圧を用いた計算により離隔距離の代替

    が可能である。開閉サージ電圧を用いた場合の離隔距離とその根拠を表 3-1-2 に示す。

    表 3-1-1 離隔距離とその根拠国 名

    (ヒアリング先) 離隔距離 D(m) 根 拠

    ドイツ

    (Amprion)

    D = Ds + Del ・Ds:対象物によって決まる基準離隔(m) ・Del:電圧上昇に伴い変化する離隔値(m)

    ・ヨーロッパ標準規格(EN50341-1)にて採用・Ds:ヨーロッパ標準モデルケースから算出・Del:ヨーロッパの経験データによる最小空

    間距離

    フランス

    (RTE)

    D = b + t ・b:対象物によって決まる基準離隔(m) ・t :充電部への接近確率と電圧上昇に応

    じて変化する離隔値(m)

    ・フランス国内規制(法律)にて採用・b:フランス国内モデルケースから算出・t:フランスの経験データによる最小空間距

    離から算出

    ・過去の事故を教訓とした RTE 基準値も採用

    カナダ

    (Manitoba Hydro)

    D = Ds_35 + C ・Ds_35:35kV 時の対象物によって決まる

    基準離隔(m) ・C :電圧上昇に伴い変化する離隔値(m) ・開閉サージ電圧が既知である場合、代替

    計算が可能

    ・カナダ国内規格にて採用

    ・Ds:カナダ国内モデルケースから算出・C = 0.0064(m/kV)×(VLL-35) ・6.4(cm/10kV)は慣例的に使われている値・VLL:線間電圧(kV)*1

    アメリカ

    (BPA)

    D = Ds_35 + C ・Ds_35:35kV 時の対象物によって決まる

    基準離隔(m) ・C :電圧上昇に伴い変化する離隔値(m) ・開閉サージ電圧が既知である場合、代替

    計算が可能

    ・アメリカ国内の大半の州で採用(46/51 州) ・Ds:アメリカ国内モデルケースから算出・C = 0.0064(m/kV)×(VLL-35) ・6.4(cm/10kV)は開閉サージフラッシオーバ電圧に基づく(NESC Handbook 第 5 版)

    ・VLL:線間電圧(kV)*1

    日本

    (参考)

    D = Ds + C ・Ds :対象物によって決まる基準離隔(m) ・C :電圧上昇に伴い変化する離隔値(m)

    ・C は対象物に応じて、離隔値が変化・建造物・道路は 15(cm/10kV)で増加・他の工作物・植物などは 12(cm/10kV)で増加

    *1 カナダ・アメリカでは対地電圧を採用しているため、線間電圧換算値にて比較する。

  • -Ⅲ-5-

    表 3-1-2 開閉サージ電圧を用いた場合の離隔距離とその根拠

    国 名条 件

    (VLL:線間電圧) 離隔距離 D (m) 根 拠

    カナダ

    (Manitoba Hydro)

    ・200kV≦VLL

    ①D = Ds_0 + 0.00254 × VSS②D = Ds_0 + 0.00254 × 500

    + 0.00381 × (VSS-500kV)

    ・Ds_0:0kV 時点での対象物によって決まる基準離隔(m)

    ・VSS≦500kV では①を採用・500kV<VSS では②を採用

    ・ 0.254(cm/kV) 及 び0.381(cm/kV)など計算式に関する回答得

    られず

    アメリカ

    (BPA)

    ・154kV≦VLL・D≧Ds_35 + 0.0064 × (VLL*1 35) *1:VLL=154kV

    ・Ds_0:0kV 時点での対象物によって決まる基準離隔(m)

    ・V:対地最大使用電圧の波高値・PU:開閉サージ倍数・a:標準偏差(3σ)に対する裕度 1.15 ・K:電線-平板ギャップに対する形状係数

    1.15 ・b:標準以外の大気条件に対する裕度

    1.03 ・c:安全率 1.2

    ・Paris-Cortina*2の式・導体-平板の構造で、開閉サージフラッシ

    オーバ電圧を印可

    し、3σにおいてもフッラシオーバーに耐

    えられる離隔値とな

    っている。

    *2:L-paris and R.Cortina in IEEE Transactions on Power Apparatus Systems、vol PAS-87pp947-957

    現地ヒアリング調査結果

    今回調査した 4 か国の規定は定期的に見直されており、今後、離隔距離を見直す予定はないとの回答を得た。これまでの離隔距離の変遷と今後の見直し計画に関する現地ヒアリング調査結果

    を表 3-2-1 に示す。また、他の工作物の接触事故実績と頻度に関して、ドイツとカナダは過去 20 年程度で接触事

    故 1 件、アメリカは過去 10 年で接触事故 1 件。植物に関して、ドイツの事故実績は年間 1 件程度、カナダ、アメリカでは接触事故なしとの回答を得た。しかしながら、フランスからは具体的

    な回答を得ることができなかった。他の工作物や植物への接触事故の実績と頻度に関する現地ヒ

    アリング調査結果を表 3-2-2 に示す。

    � _0 � 1.00 � �500.

  • -Ⅲ-6-

    表 3-2-1 これまでの離隔距離の変遷と今後の見直し計画に関する現地ヒアリング調査結果国 名

    (ヒアリング先) 調 査 結 果

    ドイツ

    (Amprion)

    ・ヨーロッパ標準規格(EN50341-1)に基づき、送電線離隔距離を確保。・過去に規格の見直しにより、送電線離隔距離が変わった対象物もあるが、電圧上昇に伴

    い変化する離隔値(ヨーロッパの経験に基づく最小空間距離)に変更なし。・今後見直しの予定なし。

    フランス

    (RTE)

    ・ヨーロッパ標準規格ではなく、従来の国内規制(法律)に則り、送電線離隔距離を管理。・1999 年の台風に伴う大停電をきっかけに、RTE は国内規制よりも厳しい RTE 基準を制定(2001 年)し、基幹送電線などの重要な送電線路の管理を実施。

    ・今後見直しの予定なし。

    カナダ

    (Manitoba Hydro)

    ・規格は 5 年ごとに見直しているが、離隔距離に関する内容に変更なし。・今後見直しの予定なし。

    アメリカ

    (BPA)

    ・規格は 5 年ごとに見直し。・電気工作物規程(1959)において、50kV を超える増分離隔値は 12.7(cm/10kV) ・NESC(1984)において、50kV を超える増分離隔値は 6.4(cm/10kV) ・NESC(2017)において、35kV を超える増分離隔値は 6.4(cm/10kV) ・上記の変更に関する具体的な理由など、今回の調査では回答を得られず。

    ・今後見直しの予定なし。

    表 3-2-2 他の工作物や植物への接触事故の実績と頻度に関する現地ヒアリング調査結果国 名

    (ヒアリング先)

    ドイツ

    (Amprion)

    ① 過去に船舶クレーンが座礁船の救助作業中、誤って送電線にブームを接触させた電線切

    断事故(人身被害なし)があり、同種の事故は Amprion 設立(2003 年)以降、1 件のみ。② 樹木の倒木(植物)の事故実績は、年間 1 件程度。

    フランス

    (RTE) 事故実績は RTE 社の重要な機密情報であるため、開示不可。

    カナダ

    (Manitoba Hydro)

    ① 過去 20 年で、ドローンによる電線切断事故 1 件。② 過去に接触事故なし。(送電線下の土地はほとんど自社所有であり、容易に伐採が可能な

    ため)

    アメリカ

    (BPA)

    ① 過去 10 年で作業者の過失によるクレーン接触事故 1 件。(施工会社が BPA の指示を守らず、注意喚起の目印や監視を付けていなかったため)

    ② 過去に接触事故なし。(送電線下には低木又は草本植物の植生のみ許可しているため)

    ① 他の工作物に関するヒアリング

    ② 植物に関するヒアリング調 査 結 果

  • -Ⅲ-7-

    現地ヒアリング調査内容(ドイツ)

    現地ヒアリングの実施

    Amprion との現地ヒアリングを下記のとおり実施し、その様子を写真 3-3-1 に示す。

    日 時 12 月 4 日(火) ヒアリング先 Amprion Gmbh 場 所 Amprion 会議室メンバー(敬称略)

    (ドイツ) Lars Haarhoff, Jeremy Unterfinger, Mathias Heiderich (日 本) 山中(電源開発)、村上(電源開発)、藤田(東北電力)、下村(日本電気協会)

    写真 3-3-1 Amprionとの現地ヒアリングの様子

  • -Ⅲ-8-

    ドイツ国内における電力事情

    ドイツでは一般送配電事業者が 4 社おり、その中の1社が Amprion(社員約 1,400 人)である。ドイツ国内における一般送配電事業者の管理区域を図 3-3-2 に示す。Amprion は 220kVと 380kV の送電線(亘長 11,000km)を担当しており、29 百万人の方に電気を供給している。また、ドイツでは国の政策により、原子力や化石燃料発電から風力エネルギーなどの再生可能エ

    ネルギーへと電源構成をシフトさせており、再生可能エネルギーは北部に集中している。その

    ため、電力需要の大きい南部へと送電網を強化することがドイツ国内の喫緊の課題である。

    図 3-3-2 ドイツ国内における一般送配電事業者の管理区域図

  • -Ⅲ-9-

    送電網強化への取り組み

    送電網強化の取り組みとして、Amprion は 1980 年代の電線許容温度 40℃を 80℃へ見直した。そのため、送電線のクリアランス問題が顕在化しており、以下の対策を実施している。

    ・鉄塔新設・・・周辺住民や地主への同意・行政許可を得るために 20 年近くかかり、有効でない。・鉄塔高嵩上げ・・・工事用地の確保に時間と費用がかかる上、住民の同意、行政の許可を得るこ

    とは送電線新設と変わらないため、即効性のある対策ではない。

    ・高温低弛度電線への張替え・・・他の方法と比べて施工時間、価格面で有利である。

    ・その他・・・既存の交流鉄塔に直流電線を張り替えるなどの対策も用いている。

    ・送電線の停止調整が非常に困難。基幹送電線の場合、1 日 数百万ユーロのコストが掛かる。

    送電線離隔距離の考え方

    ドイツ国内における送電線離隔距離の考え方を図 3-3-4 に示す。

    離隔距離(C)=基準離隔(Ds)+電圧上昇に伴い変化する離隔値(Del)

    Ds:対象物によって決まる基準離隔

    図 3-3-4 送電線離隔距離の考え方

  • -Ⅲ-10-

    基準離隔(Ds)に関する日本との比較

    ドイツで採用されている基準離隔を表 3-3-5-1 に、電圧上昇に伴い変化する離隔値を表 3-3-5-2 に示す。また、ドイツと日本の電圧上昇に伴う増分離隔値の比較を図 3-3-5-1 に示す。

    表 3-3-5-1 ドイツの基準離隔対象物 上方接近 側方接近 具体例 基準離隔の考え方 文献

    建造物

    Ds=4.0m Ds=2.0m 勾配が 15°以下の屋根

    保守のために人が屋根上に立

    ち、梯子を使って作業するこ

    とを想定。

    Ds=2.0m Ds=2.0m 勾配が 15°を超える屋根

    保守のために人が屋根上に立

    ち、工具を使用することを想

    定。

    他の

    工作物Ds=2.0m Ds=2.0m

    街路灯、

    アンテナなど

    導体温度が最高温度に近い

    時、構造物が電線に倒れてき

    た場合も Del を維持することを想定。

    植物 Ds=1.5m Ds=1.5 木登り可能な樹木線下の樹木や梯子に上って作

    業できることを想定。②

    <文献:①EN 50341-1 表 5-11 ② EN 50341-1 表 5-10)>

    0.00

    1.00

    2.00

    3.00

    4.00

    5.00

    6.00

    7.00

    8.00

    170 kV 187 kV 220 kV 275 kV 380 kV 500 kV

    図3-3-5-1 ドイツと日本の電圧上昇に伴う増分離隔値の比較

    ドイツ

    電技(建造物)

    電技(他の工作物・植物)

    表 3-3-5-2 電圧上昇に伴い変化する離隔値

    (m)

    (kV)

    Del :対地間クリアランスDpp :相間クリアランス

    (他の電力線または架空通信線と交叉または平行する場合に使用)

  • -Ⅲ-11-

    線下の建造物に関する対応状況

    ドイツでは送電線下に建造物があるが、国から対策を求められておらず、全ての送電線に対

    して、5 年毎に測量を実施している。樹木や建造物との離隔距離を管理している。

    クレーン等の重機による停電事故

    Amprion は 2003 年 6 月に設立して以降、発生した事故件数は 1 件である。その事故は船舶クレーンが座礁船の救助作業中、誤って送電線にブームを接触させたことによる電線切断であ

    る。ドイツでは一般送配電事業者の許可なく、施工会社が送電線下での作業を行うことができ

    ないと国の法律で定められており、違反すると多額の罰則金が発生する。法律で厳しく定めら

    れている(国の積極的な関与)ことが、事故件数の少ない要因の1つとして考えられるとの回答を得た。送電線付近のクレーン作業の様子を写真 3-3-7 に示す。

    伐採に関する状況

    ドイツの Amprion は年に 1 回、伐採計画を国に提出しているが、伐採を実施するのは国の管理下にある事業者である。Amprion では、伐採に関する専用の部署を設けており、その部署には「グリーンマン」と呼ばれる接近木管理を専門に行うエンジニアがいる。伐採計画はグリ

    ーンマンが現地を回り、地主と交渉して策定している。グリーンマンは、樹木に関する専門知

    識を有しており、送電線クリアランスが適切に確保できるよう、現地を回り伐採樹木を選定し、

    伐採推奨時期を決定している。接近木接触による送電線事故は、年間 1 件程度であり、昨年は2 件であった。伐期は樹木(地域)によって異なるが、アカマツやモミの木が多い。モミの木は 2~3m/年伸びる。今後は、ヘリを使用したレーザー測量を使って、樹種や樹木の径に応じた年間の伸びを計測しようとする動きもある。

    写真 3-3-7 送電線付近のクレーン作業の様子

  • -Ⅲ-12-

    現地ヒアリング調査内容(フランス)

    現地ヒアリングの実施

    RTE 社との現地ヒアリングを下記のとおり実施し、その様子を写真 3-4-1 に示す。

    日 時 12 月 6 日(木) ヒアリング先 RTE 社場 所 RTE 会議室メンバー(敬称略)

    (フランス) Pereira Emmanuel, Salvi Bruno, Rose Cecile (日 本) 山中(電源開発)、村上(電源開発)、藤田(東北電力)、下村(日本電気協会)

    写真 3-4-1 RTE 社との現地ヒアリング

  • -Ⅲ-13-

    フランスの電力事情

    RTE 社は社員約 8,000 人、鉄塔約 350,000 基(亘長:約 105,000km)であり、RTE は電圧階級 63kV、90kV、225kV、400kV の送電線を管理している。1999 年の台風により、フランスで大停電が発生した。そのため、RTE 社は国内規制(法律)よりも厳しい RTE 基準(CCG-LA)を制定し、送電線を管理している。フランス規制に関する関係を図 3-4-2 に示す。

    送電線離隔距離の考え方

    国内規制によって定められている離隔距離は以下の式によって算出される。但し、基準離

    隔 b は対象物によって異なり、t1~t3 は充電部への接近確率によって分類される。充電部への接近確率と電圧上昇に応じて変化する離隔値の算出方法を表 3-4-3 に示す。また、RTE が独自に採用している離隔距離は国内規制によって定められている離隔距離にある程度の余裕を

    見た値としている

    離隔距離(D)=基準離隔(b)+充電部への接近確率と電圧上昇に応じて変化する離隔値(t1~t3)

    t(m)算出式 充電部への接近確率

    t1 t1=0.0025U 低確率t2 t2=0.0050U 中確率t3 t3=0.0075U 高確率(活線近接作業など)

    (U は電圧(kV)を示す)

    Regulation

    Laws, Régulations(法律、規制) Arrêté Technique 2001(テクニカルオーダー2001)

    (AT 2001 Ministerial Decision) 担当大臣決議 2001 年

    Rte : Additional margins & rules (security, quality,

    frost…)Rteの追加マージン&ルール

    (セキュリティ、品質、着氷雪…)

    Standards (規格) ISO, CEI, CEN,

    CENELEC AFNOR Security UTE (C18-510)

    UTE C11-001NF EN 50341

    General requirements

    (CCG-LA)一般的な要件

    Particular requirements特別な要件

    (規制)

    (Rte 社の定める規則)Rte Requirements

    表 3-4-3 充電部への接近確率と電圧上昇に応じて変化する離隔値の算出方法

    図 3-4-2 フランス規制に関する関係図

  • -Ⅲ-14-

    伐採に関する状況

    樹木の管理は、ヘリコプターと徒歩にて実施している。ヘリコプターは 1回/年実施しており、徒歩は必要な箇所のみ 1回/年の頻度で実施している。ヘリコプターによるレーザー計測結果から、アプリケーションを使用して樹種・樹木の伸び

    を判定し、伐採する樹木を選定している。送電線周辺の樹木管理は、フランス国内を 7区域に分け、更に1つの区域を 3~4の地区に分けて管理しており、1つの地区に対して、2~4名の接近木管理担当者がいる。

    その他

    RTEの定める重要送電線は、基幹変電所へ接続される送電線、および顧客へ接続される送電線を対象としてり、重要送電線の約半分は RTE が独自に採用している離隔距離によって管理している。

  • -Ⅲ-15-

    現地ヒアリング調査内容(カナダ)

    現地ヒアリングの実施

    Manitoba Hydroとの現地ヒアリングを下記のとおり実施し、その様子を写真 3-5-1に示す。

    日 時 1月 29日(火) ヒアリング先 Manitoba Hydro 場 所 Manitoba Hydro会議室メンバー(敬称略)

    (カナダ) Kieloch Zibby, Wang Chen (日 本) 山中(電源開発)、小山(中部電力)、下村(日本電気協会)

    写真 3-5-1 Manitoba Hydroとの現地ヒアリングの様子

  • -Ⅲ-16-

    Manitoba Hydroの概要

    カナダのマニトバ州に位置し、エネルギーの大部分は水力発電であるため、電気料金が安

    い。発電設備は水力発電と風力発電で全体の約 96%を占めており、水力発電設備 15箇所、火力発電所 2箇所、内燃力発電所 4箇所、風力発電 2箇所を保有している。 また、送電設備は電圧 115kV・138kV・230kV・500kVの設備を保有しており、亘長約68,000kmである。電圧 66kV以下は配電部門にて管理している。

    直流送電システム

    ネルソン川の水力発電をマニトバ南部へ効率的に送電するため、Manitoba Hydroでは高電圧直流(HVDC)の長距離送電を採用している。ネルソン川からマニトバ南部へ電気を供給するHVDC送電線を Bipole(バイポール)と呼んでいる。バイポールとは双極のことで、大地とプラス(+)極及びマイナス(-)極を意味する。1972 年、当時の世界最長かつ最高電圧の直流送電線であるバイポールⅠ・Ⅱを運用開始した。しかしながら、1997年の竜巻により、近接するバイポールⅠ・Ⅱは 10 基程度倒壊したため、停電の危機に直面した。この時、アメリカ・ミネソタ州からの電力融通により、停電を回避することができた。

    この災害をきっかけにバイポールⅢの建設が計画された。2018 年7月にバイポールⅢは運用開始した。バイポールⅢを運用することで、更に 2,000 MWの供給が可能となり、高圧直流送電線の信頼性が向上した。バイポール送電線経過図を図 3-5-3に示す。

    図 3-5-3 バイポール送電線経過図

  • -Ⅲ-17-

    送電線離隔距離の考え方

    開閉サージ電圧が不明の場合、以下の式で算出される。最大対地電圧 1kV あたりの増分離隔値である 0.01m(0.4 インチ)は 1960 年頃から使われており、根拠については回答を得られず。

    離隔距離(D)=基準離隔(Ds)+0.01×(VGL-22) (22kV≦VGL〔VGLは最大対地電圧〕)

    また開閉サージ電圧 VSS(kV)が既知であり、対地電圧 VGL(kV)が 115kV以上の場合、下記の式によって計算が可能である。この時の 1kV あたりの電圧増分値である 2.54mm(0.1 インチ)、3.81mm(0.15インチ)の根拠については回答を得られず。

    (VSS≦500の場合) 離隔距離(D)=基準離隔(Ds)+0.00254×VSS(500<VSSの場合) 離隔距離(D)=基準離隔(Ds)+0.00254×500+0.00381×(VSS-500)

    カナダの基準離隔(Ds)

    カナダで採用されている基準離隔を表 3-5-5-1に示す表 3-5-5-1 カナダの基準離隔

    電 技 対象物 上方接近 側方接近 具体例 備 考

    第 97条 建造物 3.6m 2.0m 住居など

    人が屋根の上で作業することを想定して算出されている。上方接近距離 3.6m は建造物の高さ 2.5m に 0.8m の余裕を考慮し、電圧増分 0.24mを考慮して算出される。0.24m=22kV×0.01 m/kV×1.1

    (1.1は最大電圧係数)

    第 98条 道路 4.42m - 一般道路

    一般的な道路の車が通行することを考慮して算出されている。4.42mは車両の高さ 4.15m に 0.27m の余裕を考慮して算出されている。また、主要道路の車両通行高さは 6m、高速道路の車両通行高さは 9mとなっている。

    第 99条 索道 - - - Manitoba Hydro では山が無く、索道を使用していないため、回答を得られず。

    第 100条 低高圧架空電線など

    - - -基準離隔なし

    第 101条 特別高圧架空電線相互

    - - -基準離隔なし

    第 102条 他の工作物 3.6m -街路灯、

    アンテナなど

    人が街路灯、アンテナの上部で作業することを想定して算出されている。

    第 103条 植物 - - 樹木各電圧の最小絶縁間隔に独自のクリアランス値(各地の植物特性)を加味した値で管理

    <文献:CSA Standard C22.3 №1-15 Overhead Systems>

  • -Ⅲ-18-

    建造物の離隔距離計算例

    建造物との接近に対する離隔距離を例として、開閉サージが不明な場合と既知の場合とで離

    隔距離を比較する。この時、開閉サージを VSS(kV)、相間電圧を VLL(kV)、最大対地電圧をVGL(kV)とする。(1) 開閉サージ電圧が不明な場合のクリアランス計算公称電圧 VLLが 500kVの場合、VGLは 318kVになる。VGL =500÷√3×1.1

    D=3.6+0.01×(318-22)=6.56(m)

    (2) 開閉サージ電圧が既知である場合のクリアランス計算(開閉サージ倍数を 2とする) 公称電圧 VLLが 500kVの場合、VSSは 898kVになる。この式で使用している 3.3mは建造物の高さ 2.5mに 0.8mの余裕を考慮した値である。VSS =500×1.1÷√3×√2×2 D=3.3+0.00254×500+0.00381×(898-500)

    =6.09(m) (1)と(2)から、開閉サージ電圧によって計算した離隔距離は約 0.5mの低減が可能となる。

    電線相互の離隔距離計算例

    電線相互の接近又は交差に対する離隔距離を例として計算する。この時、開閉サージを

    VSS(kV)、相間電圧を VLL(kV)、最大対地電圧を VGL(kV)とする。離隔距離の計算方法は電圧の大きい送電線に対して、開閉サージ電圧を考慮する。もう一方

    の電圧を加えた電圧合計値 VSUMに対して、500kV以下の場合、電圧増分値 0.1インチ、500kVを超過する場合、電圧増分値 0.15インチを用いて計算する。

    VLL1=220(kV)と VLL2=500(kV)の送電線を例として、下記のとおり計算する。VLL1≦VLL2のため、VLL2に対して開閉サージ電圧を適用する。VLL2の開閉サージ電圧 VSS2は 898kVとなる。

    VSS2=500×1.1(最大電圧係数)÷√3×√2×2(開閉サージ倍数)=898(kV) VGL1=220÷√3×1.1=140(kV)

    VSUM=140×√2+898=198+898=1096(kV) D=0.00254×500+0.00381×(1096-500) ≒3.54(m)

  • -Ⅲ-19-

    他の工作物に関するヒアリング内容

    マニトバ州は土地が広く安いため、Manitoba Hydroがまとまった土地を買い、自社で所有している。送電線の付近でクレーンなどの作業を行う場合は、作業者に対して事前申請をお願

    いしている。また送電線付近はManitoba Hydroの所有地であるため、勝手に作業されることはない。もしも事前申請なく作業者が事故を起こした場合、作業者へ修理・損害費用を請求す

    ることになる。他の工作物に関する事故は、20 年間でドローンによる電線切断事故 1 件である。

    植物に関する事項

    植物との離隔距離は、各電圧の最小絶縁間隔が CSA 規格に記載されている。各地の樹木の生長特性に応じて、樹木の離隔管理を行っており、CSA規格よりも、かなり大きい値で管理している。植物の伐採計画は専門部署のメンバーにより策定されており、伐採の実施は外部へ委

    託している。木を切るのは主にManitoba Hydroの土地であるため、用地交渉などはほとんど必要ないが、環境保護団体から希少動植物に関する保護のための対応に苦労している。

  • -Ⅲ-20-

    現地ヒアリング調査内容(アメリカ)

    現地ヒアリングの実施

    Bonneville Power Administrationとの現地ヒアリングを下記のとおり実施し、その様子を写真 3-6-1に示す。

    日 時 1月 31日(木) 8:00~12:00 ヒアリング先 BPA(Bonneville Power Administration) 場 所 BPA会議室メンバー(敬称略)

    (アメリカ) Danna Liebhaber ,Chuck Sheppard ,Chris Morse ,Jennifer L Havel (日 本) 山中(電源開発)、小山(中部電力)、下村(日本電気協会)

    写真 3-6-1 BPAとの現地ヒアリングの様子

  • -Ⅲ-21-

    アメリカ国内における電力事情

    電気事業が州規制の対象となり、各州の公益事業法が電気関連の保安を定めており、51州のうち 46州で NESC(National Electrical Safety Code)の規格を採用している。BPAは 1937年に設立し、従業員は 2,891人である。BPAは太平洋岸北西部に位置するアメリカ連邦政府機関であり、利益団体ではない。BPAは原子力発電所 1基と連邦局が保有する 31基の水力発電所の電力を他の事業者へ卸売している。また、BPAが保有する送電設備は、交流送電線(AC)115kV・230kV・500kVと直流送電線(DC)69kV、287kVであり、送電線の亘長は24,000kmである。

    送電線離隔距離の考え方

    送電線の離隔距離の考え方は、以下の式で算出される。最大対地電圧 1kV あたりの増分離隔値である 0.01m は開閉サージに基づいて算出されている。送電線の離隔距離の考え方を表3-6-3-1に示す。また、基準離隔は機械・電気的要素と対象物の制限要素から構成されており、それを表 3-6-3-2に示す。

    離隔距離(D)=基準離隔(Ds)+0.01×(VGL-22) (22kV≦VGL〔VGLは最大対地電圧〕)

    表 3-6-3-1 送電線の離隔距離の考え方最高対地電圧

    (VGL) 離隔距離の考え方

    22kV以下 離隔距離=基準離隔

    22kV超過

    離隔距離=(基準離隔_22*1)+((VGL-22)×0.001m/kV) (1) VGL:対象系統の最高対地電圧【VGL≧98kV かつ 開閉サージ既知の場合】(1)の代替が可能

    離隔距離=基準離隔_0*2+ 1.00 � � . *3 (2)

    *1 VGL=22kVの時の基準離隔 *2 VGL= 0kVの時の基準離隔*3 Paris-Cortinaの計算式

    表 3-6-3-2 機械・電気的要素と対象物の制限要素項 目 要素値 考え方

    機械・電気的要素 1.37m(4.5ft) 熱による弛度の変化を考慮しても、電線と対象物の間でフラ

    ッシオーバしない最低限の離隔。

    対象物の制限要素 対象物による例)建造物(上方):2.74m(9ft) 屋根等に人が立ち手を伸ばした時の高さと想定

  • -Ⅲ-22-

    基準離隔の一覧表

    アメリカで採用されている基準離隔を表 3-6-4に示す

    表 3-6-4 アメリカの基準離隔

    対象物機械・電気的要素

    (ⅰ)対象物の制限要素(ⅱ) 基準離隔

    (ⅰ)+(ⅱ) 制限値 考え方

    建造物上方

    1.37m

    2.74m 人が屋根等に立ち、手を上げた

    時と想定※14.11m

    側方 0.92m 今回の調査では、回答得られず 2.29m 他の

    工作物

    上方 1.08m 〃 2.45m 側方 0.92m 〃 2.29m

    道路 4.3m 車高の制限値※2 5.67m 索道 今回の調査では、回答得られず 1.8m

    ※1 人が容易に立入ることができる場所(屋上・キャットウォーク)での離隔値※2 高速道路の通行時の車高制限値であり、一般車道の車高はこの値以下。ただし、特殊車両が往

    来する道路では別途検討を行う。

    Paris-Cortinaの計算式

    最高対地電圧 VGL=98kV (線間電圧 VLL=154kV)以上の送電線において、開閉サージ倍数が既知である場合、Paris-Cortina*1を用いて、離隔距離を算出することが可能であり、道路を例とした場合の代替離隔距離比較を図 3-6-5に示す。

    *1 L-paris and R.Cortina in IEEE Transactions on Power Apparatus Systems、vol PAS-87pp947-957

    Paris-Cortinaの計算式は、導体-平板の構造で開閉サージフラッシオーバ電圧を印可し、3σにおいてもフッラシオーバーに耐えられる

    離隔値となっている。

    V:対地波高値PU:開閉サージ倍率K:1.15

    a=1.15b=1.03c=1.2(垂直方向)

    1.0(水平方向)

    D � 1.00 � � . � �

    図 3-6-5 道路を例とした場合の代替離隔距離比較

  • -Ⅲ-23-

    線下の建造物に関する対応状況

    NESC 規格に定める離隔値を満たせば、建造物の建設は可能であるが、BPA は建設時に全面制限地役権を設定し、原則、建造物の建設を認めていない。しかし、ポンプ小屋・納屋など

    の小規模な工作物までは建設可能としている。BPAでは、定期的に線下パトロールを行い、建設する気配がある場合は、地主と立ち退き交渉を行う。パトロール頻度は、地域によって異な

    る。

    クレーン等の重機による停電事故

    送電線下にほとんど建造物がなく、線下での作業が少ないため、重機使用による送電線事

    故発生件数は 10年間で 1件程度である。ただし、事故件数についてシステム管理等を行っていないため、担当者の記憶による回答である。送電線下での作業時は、送電線下の作業に関

    する知識を有したセーフティーウォッチャー(元 BPA職員が多い)の配置を義務付けた申請書の取り交わしを施工会社と行っている。しかし、重機による送電故障発生時の罰則規定はな

    く、線下作業の申請に対する法的拘束力もない。

    伐採に関する状況

    BPAでは、樹木との離隔値が 6.0m以上を確保するよう伐採を実施し、もしも 4.5mを下回った場合は、即座に伐採を実施するような社内規則を制定している。

    NERC(北米信頼度協議会)が発行している「FAC-003-4」に樹木と送電線の必要最低限の離隔距離および管理方法が記載されており、送電線下の管理区域にWire zoneと Border zoneがある。Wire zone は風速 22(m/s)時の電線横ブレを考慮した範囲であり、高い樹木はなく、主に草本植物で構成されている。一方、Border zoneはWire zoneの外側で鉄塔中心から約 19mが該当し、主に低木で構成されている。Wire zoneと Border zoneの概要図を図 3-6-8に示す。また、「FAC-003-4」の最低限の離隔値に地域毎の樹木の生長率を考慮した離隔値により接近樹木の管理を行っている。

    Wire zoneBorder zone Border zone

    図 3-6-8 Wire zoneと Border zoneの概要図

  • -Ⅲ-24-

    4 考察各国の電圧上昇に伴い変化する離隔値(増分離隔値)の比較

    今回、調査した 4 か国及び日本の増分離隔値とその考え方を図 4-1 と表 4-1-1 に示す。ドイツでは、ヨーロッパ標準規格(EN 50341-1)に定められている値(表 4-1-2)を採用してお

    り、電圧階級毎に増分離隔値が異なる。フランスでは、国内で独自に算出した値を採用してお

    り、充電部への接近リスク 3 段階評価に応じて異なる(7.5cm/10kV は充電部に最も接近するケース)。カナダでは、過去から慣用的に使われている値を採用しており、今回の調査では回答を得られなかった。アメリカでは、開閉サージ電圧に基づいて算出された値を採用している。

    表 4-1-1 各国の増分離隔値とその考え方

    国 名電圧上昇に伴う増分離隔値

    増分離隔値の考え方

    ドイツ - ・ヨーロッパの経験に基づき算出

    フランス 7.5(cm/10kV) ・フランスの経験に基づき算出(左記は充電部への接近リスク 3 段階評価のうち最も厳しいケース)

    カナダ 6.4(cm/10kV) ・過去から使われている値であり、今回の調査では回答を得られず

    アメリカ 6.4(cm/10kV) ・開閉サージフラッシオーバ電圧に基づいて算出。(NESC Handbook 第 5 版)

    日 本

    植物ほか12(cm/10kV)

    建造物ほか15(cm/10kV)

    昭和 34 年電気工作物規程 解説より抜粋・12cm の根拠は、最小絶縁間隔 6cm、標準絶縁間隔 10cm などの値よりも多少安全度を持たせ、かつ、諸外国の例を調べてこれらの中間の値を採用したものでこれを図示すれば第 99.1 図のとおりである。

    ・建造物については、建造物に対する危険性を考え、他の工作物に対するもの(12cm)よりも安全性を見込んだものである。架空送電線路の絶縁設計要綱(電気学会技術報告(Ⅱ部)第 220 号:S61.5)より抜粋

    標準絶縁間隔:雷によるフラッシオーバをアークホーン間で起こさせ、電力線-鉄塔間で起こらないように

    するために定める気中ギャップ

    最小絶縁間隔:開閉サージおよび短時間過電圧に対してフラッシオーバを起こさない気中ギャップ

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-1 電圧上昇に伴い変化する離隔値

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本(建造物ほか) 日本(植物ほか)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-25-

    (参考)標準絶縁間隔と最小絶縁間隔

    (1)標準絶縁間隔について標準絶縁間隔は、雷によるフラッシオーバをアークホーン間で起こさせ,電力線―鉄塔間で起

    こらないようにするために定める気中ギャップであり、下式で定義される。

    参照文献:架空送電線路の絶縁設計要綱」(電気学会技術報告(Ⅱ部)第 220 号:S61.5)

    L=1.115×Z+0.021 (L:標準絶縁間隔(m)、Z:アークホーン間隔(m))

    (2)最小絶縁間隔について最小絶縁間隔は、開閉サージ(内部異常過電圧)及び短時間過電圧に対してフラッシオーバを

    起こさない気中ギャップである。この両者よりの要求を比較すると、開閉サージからの要求の

    方が過酷であり、表 4-1-3 のように示される。参照文献:架空送電線路の絶縁設計要綱」(電気学会技術報告(Ⅱ部)第 220 号:S61.5)

    表 4-1-3 最小絶縁間隔

    公称電圧(kV) 66 77 110 154 187 220 275 500

    開閉サージ倍数 3.3 3.3 3.3 3.3 2.8 2.8 2.8 2.0

    開閉サージ波高値(kV) 194 226 324 452 468 549 686 898

    所要耐電圧(kV) 213 249 357 497 515 604 755 988

    所要クリアランス(m) 0.43 0.51 0.75 1.09 1.13 1.37 1.77 2.70

    最小絶縁間隔(m) 0.45 0.50 0.75 1.10 1.15 1.40 1.80 2.70

    表 4-1-2 ヨーロッパの経験に基づく最小空間距離

    Del :対地間クリアランス Dpp :相間クリアランス (他の電力線または架空通信線と交叉または平行する場合に使用)

    (1)・・増分離隔値(旧 日本)10kV につき 20cm

    (2)・・増分離隔値(アメリカ)10kV につき 12.7cm

    (3)・・増分離隔値(現行 日本)10kV につき 12cm

    (4)・・標準絶縁間隔 10kV につき 10cm

    (5)・・最小絶縁間隔 10kV につき 6cm

    (1)

    (2)

    (3)

    (4)

    (5)

    凡例

  • -Ⅲ-26-

    第 97 条「建造物〔上方〕との接近」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ

    4.0m ・保守のために人が屋根上に立ち、梯子を使って作業することを想定

    (勾配 15°以下の屋根)

    2.0m ・保守のために人が屋根上に立ち、工具を使用することと想定

    (勾配 15°超過の屋根)

    フランス 3.0m ・建物の改造や修理を行うことを想定

    カナダ 3.6m ・35kV 送電線下で、人が屋根の上で作業することを想定

    アメリカ 4.1m ・35kV 送電線下で、人が屋根の上で作業することを想定

    日 本 3.0m -

    (考察) ・各国の基準離隔は近い値を示している。

    ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域で離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 2.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    10.0

    11.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-2 建造物(上方)との接近

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-27-

    第 97 条「建造物〔側方〕との接近」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ 2.0m ・今回の調査では回答を得られず

    フランス 3.0m ・建造物(上方)と同じ

    カナダ 2.0m ・今回の調査では回答を得られず

    アメリカ 2.3m ・今回の調査では回答を得られず

    日 本 3.0m -

    (考察) ・各国の基準離隔は近い値を示している。

    ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 4.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    10.0

    11.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-3 建造物(側方)との接近

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-28-

    第 98 条「道路等との接近又は交差」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ 6.0m ・車高 5.0m の車両が通行することを想定

    フランス 6.0m ・積荷の最大許容高さ+1m を想定(最低離隔 8m)

    カナダ 4.42m ・車高 4.15m に 0.27m の余裕を考慮

    アメリカ 5.6m ・車高 4.2m に 1.37m の余裕を考慮

    日 本 3.0m -

    (考察) ・通行する車両の高さや考慮する裕度により、基準離隔が大きく異なる。

    ・ヨーロッパでは離隔距離が大きい傾向。

    ・日本は他国に比べて基準離隔は小さいものの、増分離隔値が大きいため 500kV では最も大きな離隔距離が必要。

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    9.0

    10.0

    11.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-4 道路等との接近又は交差

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-29-

    第 99 条「索道との接近又は交差」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ 2.0m ・ロープウェイによる曳索を想定

    フランス 3.0m ・ロープウェイによる曳索を想定

    カナダ - ・Manitoba Hydro では山地が無く、索道の使用実績なし

    アメリカ 1.8m ・トロリーや鉄道のコンダクターワイヤーの使用を想定

    日 本 2.0m -

    (考察) ・各国の基準離隔は近い値を示している。

    ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 1.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-5 索道との接近又は交差

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-30-

    第 100 条「低高圧架空電線等若しくは電車線等又はこれらの支持物との接近又は交差」の考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ - ・ヨーロッパの経験に基づき算出(3.1 表 1)

    フランス 3.0m ・基準離隔は電車線を想定。

    カナダ 0.6m ・離隔距離はお互いの電圧の大きさによって変わる。(グラフなし)

    アメリカ 2.0m ・基準離隔の考え方については、今回の調査では回答を得られず

    ・離隔距離はお互いの電圧の大きさによって変わる。(グラフなし)

    日 本 2.0m -

    (考察) ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 1.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-6 低高圧架空電線若しくは電車線等との接近

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-31-

    第 101 条「特別高圧架空電線相互の接近又は交差」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ - ・ヨーロッパの経験に基づき算出(3.1 表 1)

    フランス 1.0m ・弛度などによって算出(最低 1m 以上)

    カナダ - ・離隔距離はお互いの電圧の大きさによって変わる。(グラフなし)

    アメリカ 0.6m ・基準離隔の考え方については、今回の調査では回答を得られず

    ・離隔距離はお互いの電圧の大きさによって変わる。(グラフなし)

    日 本 2.0m -

    (考察) ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 2.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-7 特別高圧架空電線相互の接近又は交差

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-32-

    第 102 条「他の工作物との接近又は交差」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ 2.0m ・電線が最高温度に近い時、街路灯などが倒れてきても、ヨーロッパの経験に

    基づく最小空間距離(3.1 表 1)の値を確保する

    フランス 1.0m ・今回の調査では回答を得られず

    カナダ 3.6m ・対象物の上で作業することを想定(建造物と同様)

    アメリカ 2.45m ・看板、アンテナなどを想定

    日 本 2.0m -

    (考察) ・カナダの基準離隔は建造物と同様の考え方であるため、他国と比べて著しく大きい。

    ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では他国(カナダ除く)と比べ 1.5m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-8 他の工作物との接近又は交差

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-33-

    第 103 条「植物との接近」に関する考察

    国 名 基準離隔 考え方

    ドイツ 1.5m ・梯子又は樹木の上方で安全に作業が行えることを想定。

    フランス 1.0m ・RTE 基準(社内基準)は台風による倒木の影響で停電したことを考慮して、

    大きな値を採用。

    カナダ -・CSA 規格に植物に関する最小絶縁間隔のみ記載あり。(基準離隔なし) ・管理は各地の樹木の生長特性に応じて算出された離隔距離にて実施。

    アメリカ -

    ・NESC に離隔距離に関する記載なし。・NERC*4 に最小絶縁間隔の記載あり。・管理は各地の樹木の生長特性に応じた離隔にて実施。

    日 本 2.0m -

    *4 North American Electric Reliability Corporation:北米電力信頼度協議会

    (考察) ・日本とヨーロッパの基準離隔に大きな差はみられない。

    ・日本は他国に比べて、増分離隔値が大きく、超高圧の領域では離隔距離に大きな差がみられる。

    ・特に 500kV では、他国と比べ 2m 以上も離隔距離が大きく、緩和できる可能性あり。

    0.0

    1.0

    2.0

    3.0

    4.0

    5.0

    6.0

    7.0

    8.0

    35 kV 170 kV 220 kV 275 kV 500 kV

    図4-9 植物との接近

    ドイツ フランス カナダ アメリカ 日本 (RTE基準:参考)(m)

    (kV)

  • -Ⅲ-34-

    5 まとめ 今回、諸外国における 35,000V を超える特別高圧架空送電線路と工作物及び植物との離隔距離について、最新の基準値及びその根拠等の調査を行った。調査結果から、日本における離隔距

    離は諸外国よりも大きく、特に 500kV 領域ではその差が顕著に表れており、見直しの議論を行う余地があると考えられる。

    離隔距離と根拠

    諸外国における離隔距離は、日本と同様に、「対象物によって決まる基準離隔」に「電圧上昇に

    伴い変化する離隔値(以下、増分離隔値)」を加えた値となっている。また、カナダ及びアメリカでは、一定の条件の下、開閉サージ電圧を用いた代替計算により離隔距離が低減されている。

    「対象物によって決まる基準離隔」は、各国のモデルケースから算出されており、対象物が道

    路である場合を除き、日本と諸外国で大きな差は見られなかった。一方、「増分離隔値」は経験デ

    ータによる最小空間距離等から算出されており、諸外国に比べ、日本では大きな値となっており、

    特に 500kV領域においては、その差が顕著に表れている。日本の増分離隔値である 12cm/10kVは最小絶縁間隔 6cm/10kV、標準絶縁間隔 10cm/10kVなどの値よりも多少安全度を持たせ、かつ、諸外国の増分離隔値を考慮した値である(昭和 34 年 電気工作物規程 解説)が、その増分離隔値を採用する際に参照したアメリカの増分離隔値12.7cm/10kVは、現在 6.4cm/10kVまで緩和されている。そのため、日本の増分離隔値 12cm/10kVに関して緩和できる可能性は十分にあると考える。

    これまでの離隔距離の変遷と今後の見直し計画

    今回調査した 4か国の規定は定期的に見直されているものの、離隔距離に関して今後見直される予定はない。

    他の工作物や植物への接触事故の実績と頻度

    フランスからは具体的な回答は得られなかったものの、他の工作物に関して、ドイツとカナダ

    は過去 20 年程度で接触事故 1件、アメリカは過去 10 年で接触事故 1 件。また植物に関して、ドイツの事故実績は年間 1件程度、カナダ、アメリカでは接触事故なしとの回答を得た。

    最後に

    今回調査した 4 か国の増分離隔値は、日本の最小絶縁間隔(6cm/10kV)と同程度であることが分かった。今後は、最小絶縁間隔(又は標準絶縁間隔)と増分離隔値について、更なる検討を進めていくことが有効であると考える。

    以 上

  • -Ⅳ-1-

    第2部

    IEC 60364規格の改定への対応

    ―電技解釈第218条への取入れ等の検討―

    【WG1:取入れ検討WG】

  • -Ⅳ-2-

    1. IEC 60364 規格群の改定への対応

    1.1 検討方法

    (1)検討対象規格

    今年度,検討対象としたのは次の8規格である。

    これらの規格は対応 JIS(又は JIS原案)が作成されていないため,検討に当っては,仮訳及び原文を用

    いる。

    a. IEC 60364-4-41 Ed.5.1 (2017)(改正)低圧電気設備-第4-41部:安全保護―感電保護

    b. IEC 60364-4-44 Ed.2.2 (2018)(改正)低圧電気設備-第4-44部:安全保護―妨害電圧及び電磁妨害に対する保護

    c. IEC 60364-7-704 Ed.3.0 (2017)(改正)低圧電気設備-第7-704部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-建設現場及び解体現場における設備

    d. IEC 60364-7-708 Ed.3.0 (2017)(改正) 低圧電気設備-第7-708部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-キャラバンパーク,キャンピングパーク及び類似の場所

    e. IEC 60364-7-711 Ed.2.0 (2018)(改正) 低圧電気設備-第7-711部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-展示会,ショー及びスタンド

    f. IEC 60364-7-712 Ed.2.0 (2017)(改正) 低圧電気設備-第7-712部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-太陽光発電システムg. IEC 60364-7-721 Ed.2.0 (2017)(改正) 低圧電気設備-第7-721部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-キャラバン及びモータ

    キャラバンの電気設備

    h. IEC 60364-7-722 Ed.2.0 (2018)(改正)低圧電気設備-第7-722部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-電気自動車用電源

    (2)検討の手順と内容a. 検討手順次の手順により検討する。

    1) 電技解釈第218条への取入れ可否の検討 2) 検討対象規格で取入れ可とした部分の逐条解説の作成 3) 上記を踏まえて電技解釈第218条の改正原案の検討

    b. 電技解釈第218条への取入れ可否の検討1) 改正規格の場合(対象:4-41,4-44,7-704,7-708,7-711,7-712, 7-721,7-722)電技解釈第218条への取入れ可否の検討に当たっては,検討対象となる IEC規格の仮訳に対し,

    現在の電技解釈第 218条の該当条項を対応させて,今後の電技解釈第 218条の改正に当たって,

  • -Ⅳ-3-

    取入れが可能であるか否かの検討を実施し,第2.1.1表に示す様式に整理する。第2.1.1表 電技解釈第218条改正案への取入れ検討の様式(改正の場合)

    新しく改正された IEC 60364規格の仮訳

    現在の電技解釈第218条に取り入れられた IEC 60364 規格(JIS C 60364)及び仮訳

    電技解釈第218条改正案への反映

    (和文) IEC 60364新規格

    (和文) IEC 60364旧規格

    【改正点の検討】

    【整合性評価】

    【電技解釈第 218 条改正案への反映】 可 否

    2) 制定規格の場合(対象規格:なし。ただし,新規箇条あり。)① 電技解釈第218条への取入れ可否の検討に当たっては,検討対象とした IEC規格の仮訳に対し,電技解釈の対応する各条項等と比較して整合か不整合かを検討し,併せて取入れの可

    否を検討し,第2.1.2表に示す様式に整理する。

    対象とする基準等:電技解釈第3条から第217条まで及び電技省令

    第2.1.2表 電技解釈第218条改正案への取入れ検討の様式(制定の場合)制定された IEC 60364規格(仮訳)

    対応する電技解釈又は電技省令電技解釈第218条改正案への反映

    (和文) IEC 60364 対応する電技解釈条文等

    【電技解釈第 218 条改正案への反映】

    【整合性評価】

    取入れ: 可 否

    ② 判断基準

    整合又は不整合及び取入れ可否の判断は,原則として第2.1.3表のとおりとする。第2.1.3表 電技解釈第218条改正案への取入れ可否の基準

    内 容 等 整合

    不整合

    可 否

    ① 取入れ対象規格の保安レベルが,現在の電技解釈より高いか同等の場合 整合 可

    ② 取入れ対象規格の保安レベルが,現在の電技解釈より低い場合 不整合 否

    ③ 上記②の場合,又は対応する電技解釈がない場合において,対応する電技省

    令から見て十分な保安レベルを有していると判断できる場合整合 可

    ④ 取入れ対象規格が電技省令の範囲外の場合不整合 否

    ⑤ 取入れ対象規格が他の法令で規定されている場合

    ただし,上記①~⑤のいずれにも該当しない場合は,その都度判断する。

  • -Ⅳ-4-

    c. 検討対象規格の逐条解説の作成第2.1.4表の様式により,取入れ可とした規格について,各箇条を次の手順により検討する。1) 改正規格の場合規格が改正の場合は,既存の逐条解説を改正後の規格に照らして,修正又は加筆する。

    2) 制定規格の場合できるだけ分かり易い表現で,新たに逐条解説を作成する。

    3) 逐条解説の公表作成した逐条解説は,可能な範囲で公表できるようにすることを提案する。

    第2.1.4表 逐条解説の様式IEC 60364の仮訳 逐 条 解 説 備 考

    (和文) IEC 60364 逐条解説内容

    d. 電技解釈第218条改正原案の作成上記の検討を踏まえ,現行の電技解釈第218条(第2.1.5表参照)を改正する場合の原案について提案する。

    第2.1.5 表 電技解釈第218条の218-1表(平成30年10月)規格番号(制定年) 規 格 名 備考

    JIS C 60364-1(2010) 低圧電気設備-第 1部:基本的原則,一般特性の評価及び用語の定義

    132.4,313.2,33.2,35を除く.

    JIS C 60364-4-41 (2010) 低圧電気設備-第4-41部:安全保護-感電保護

    IEC 60364-4-42 (2014) 低圧電気設備-第4-42部:安全保護-熱の影響に対する保護

    422を除く.

    JIS C 60364-4-43 (2011) 低圧電気設備-第4-43部:安全保護-過電流保護

    JIS C 60364-4-44 (2015) 低圧電気設備-第4-44部:安全保護-妨害電圧及び電磁妨害に対する保護

    443,444,445を除く.

    JIS C 60364-5-51 (2010) 低圧電気設備-第5-51部:電気機器の選定及び施工-一般事項

    IEC 60364-5-52 (2009) 低圧電気設備-第5-52部:電気機器の選定及び施工-配線設備

    526.3を除く.

    JIS C 60364-5-53 (2015) 建築電気設備-第5-53部:電気機器の選定及び施工-断路,開閉及び制御

    534を除く.

    IEC 60364-5-54 (2011) 低圧電気設備-第5-54部:電気機器の選定及び施工-接地設備,保護導体及び保護ボンディング導体

    IEC 60364-5-55 (2016) 建築電気設備-第5-55部:電気機器の選定及び施工-その他の機器

    JIS C 60364-6 (2016) 低圧電気設備-第6部:検証

    JIS C 0364-7-701(2010) 低圧電気設備-第 7-701 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-バス又はシャワーのある場所

    IEC 60364-7-702(2010) 低圧電気設備-第 7-702 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-水泳プール及び噴水

    JIS C 0364-7-703(2008) 建築電気設備-第 7-703 部:特殊設備又は特殊場所に関する

  • -Ⅳ-5-

    要求事項-サウナヒータのある部屋及び小屋

    JIS C 0364-7-704(2009) 低圧電気設備-第 7-704 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-建設現場及び解体現場における設備

    JIS C 0364-7-705(2010) 低圧電気設備-第 7-705 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-農業用及び園芸用施設

    JIS C 0364-7-706(2009) 低圧電気設備-第 7-706 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-動きを制約された導電性場所

    IEC 60364-7-708(2007) 低圧電気設備-第 7-708 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-キャラバンパーク,キャンピングパーク及び類似

    の場所

    IEC 60364-7-709(2012) 低圧電気設備-第 7-709 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-マリーナ及び類似の場所

    JIS C 0364-7-711(2000) 建築電気設備 第 7部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項 第711節:展示会,ショー及びスタンド

    JIS C 0364-7-712(2008) 建築電気設備-第 7-712 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-太陽光発電システム

    IEC 60364-7-714(2011) 低圧電気設備-第 7-714 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-屋外照明設備

    IEC 60364-7-715(2011) 低圧電気設備-第 7-715 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-特別低電圧照明設備

    IEC 60364-7-718(2011) 低圧電気設備-第 7-718 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-公共施設及び作業場

    IEC 60364-7-722(2015) 低圧電気設備-第 7-718 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-電気自動車用電源

    JIS C 0364-7-740(2005) 建築電気設備-第 7-740 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-催し物会場,遊園地及び広場の建築物,娯楽装置

    及びブースの仮設電気設備

    JIS C 0364-7-753(2014) 低圧電気設備-第 7-753 部:特殊設備又は特殊場所に関する要求事項-発熱線及び埋込形暖房設備

    備考 1. 表中において適用が除外されている規格については,表中の他の規格で引用されている場合においても適用が除外される。

  • -Ⅳ-6-

    1.2 取入れ検討結果 電技解釈第218条への取入れ検討を行った結果の概要を以下に示す。

    (1) IEC 60364-4-41 安全保護―感電保護(改正) 第2.2.1表に IEC 60364-4-41に関する検討概要を示す。

    第2.2.1表 IEC 60364-4-41に関する検討概要箇条番号 箇条項目 取入れの対応等

    411.3.1.2 保護等電位ボンデイング

    ① 規定内容は変わらないが文章の表現を「電気設備の

    構成部品ではない引込み用金属製部品は,保護ボン

    ディング導体によって主接地端子に接続しなければ

    ならない」に変更した。

    ② 「建物の入口に設置した絶縁継ぎ手のある建物に引

    き込む金属製の管は,保護等電位ボンディングに接

    続する必要はない。」を追加した。

    ③ 注記を追加して,主接地端子に接続するものの詳細

    を示した。

    このことは,保安レベルを低下させるものではない�