平成30年度ヘルスケアサービスビジネス開発モデル...
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平成30年度ヘルスケアサービスビジネス開発モデル実証業務
委託実績報告書
平成31年2月
委託者 青森県
委託先 マルマンコンピュータサービス株式会社
1.試作品(新サービス)の目的
本事業は、青森県内において、産学官が連携しながら在宅医療支援や健康寿命延伸に
貢献できるような新たなヘルスケアサービスビジネスの開発に取り組み、その実証サー
ビスの検証を行うものである。
図表 1.1 事業概要図
2.試作品(新サービス)の概要
団塊の世代が一斉に 75 歳以上の後期高齢者になる 2025 年には、医療・介護の需要が膨
れ上がり、とくに自宅における看取りを含めた在宅医療は、右肩上がりで需要が急増すると
見込まれている。
これを解決するために、地域医療支援病院である八戸市立市民病院と在宅医療機器メー
カー販売代理店及びヘルスケアサービス企業などと連携、マルマンコンピュータサービス株
式会社のクラウドサービス技術を活用し、医療と介護連携に係るサービスモデルとして、在宅
医療機器管理をベースに、在宅医療機器メーカーと情報共有可能とする、医療機関の業務
効率の向上を目指す新たなヘルスケアビジネスサービスの試作開発を行った。
3.実施内容
八戸市立市民病院、在宅医療機器メーカー、GE ヘルスケア・ジャパン株式会社と連携し、
患者と在宅医療機器の管理を見える化、情報共有による試作開発のための調査、サービス
モデルのあり方を検討し、在宅医療機器管理連携システムの試作開発に取り組んだ。
(1)調査、サービスモデルの在り方検討
平成 28 年度に、ニーズの集約を目的に地域医療に携わるステークホルダーにヒアリ
ングする機会をいただき、現場の声を聴くことができた。そこでは、病院、診療所、訪問
看護ステーション及び在宅医療機器メーカーが情報共有でき、在宅診療に活用できる仕
組みが望まれており、今後の地域包括ケアシステムの要素の一つとなる在宅用の医療
機器貸出に係る課題、災害時の状況共有とサービス提供の要望を提示された。
これを基に平成 29年度は、病院の機器貸出し管理と患者の利用状況の見える化を目
指しアプリケーション開発と検証を実施した。
本年度は、平成 29 年度実証により構築された「在宅医療機器貸出管理システム」試
作品を基盤に、貸し出し及び点検/メンテナンス報告情報の共有と標準化を目指しデー
タを蓄積する仕組みとして、ICT の効果的な活用による医療・健康・介護サービスの実現
可能性について調査し、新たなサービスモデルのあり方を検討、全国の病院が共通して
活用できるフォーマットを装備する「在宅医療機器管理連携システム」試作品の開発を目
標とした。
Web アプリケーションとして端末を限定しない、モバイル機器による閲覧/入力を可
能とする等、点検/メンテナンス時の情報共有とサービスの提供を可能とするべく、将来
的なサービスモデルのあり方を検討、情報共有の標準化を目指すべく、試作開発に必要
な調査を実施した。
・ 機器貸出及び点検/メンテナンス報告情報の共有/標準化(在宅医療機器
メーカーとの連携等)
・ 共有情報範囲、情報共有手段、閲覧方法、セキュリティ等
① 調査
・ 第 57 回全国自治体病院学会 in 福島(平成 30 年 9 月 18 日(木・19 日(金)開
催)における情報収集
・ 八戸市立市民病院及び販売代理店等との打合せにおいてヒアリングを実施
臨床工学科、物流施設課、医事課(電算グループ、医療情報管理グループ)、
八戸学院大学、青森県商工労働部新産業創造課、GE ヘルスケア・ジャパン株
式会社、株式会社トム・メディック、ソニー株式会社、販売代理店
図表 3.1 全国自治体病院学会
図表 3.2 在宅医療機器貸出管理システム紹介資料
② サービスモデルの在り方検討
調査内容と GE ヘルスケア・ジャパン株式会社からのアドバイスを基に、サービス
モデルの在り方と方向性を検討した。
・ 八戸市立市民病院より、医療機関からの院内機器貸出指示に関しては標準
フォーマットとして提供可能、システム付属のフォーマットとして標準化に向けて
の活用を推奨される。
・ 販売代理店からのヒアリングにより、レンタル貸出機器のフォーマット統一には
同意しかねるという認識が見られた。理由として同じメーカーの同様の機能を
持つ機器であっても、設定項目や名称が異なり同一フォーマットによる運用は
難しいとの意見である。
また、同じ理由から点検報告書に関しても同一フォーマットによる運用は、当面
難しいとと推察された。
ただし、後述する試作サービスにおける検証により、ペーパーレス化による省
力化が見込める結果が得られた。
在宅人工呼吸療法指示カード
在宅人工呼吸療法指示カード
図表 3.3 レンタル機器貸出指示書類例
在宅医療用ポンプ使用指示カード 在宅酸素療法指示カード
パルスオキシメータ設定指示書 経腸栄養用輸液ポンプ使用指示カード
(2)試作システムの設計及び開発
調査及びサービスモデル在り方検討を踏まえ、八戸学院大学よりユーザーインター
フェイスのアドバイスをいただき、八戸市立市民病院の「在宅医療機器管理」要件に従
い試作システムの設計及び試作開発を行った。
図表 3.4 試作システム構成図
・ ソニー株式会社の協力を得て、デジタルペーパーによるペーパーレス及び業務
の省力化を検討、用紙印刷、承諾サイン受領後のファイリング、スキャニングに
よる電子化等の作業を簡略化し、運用管理に係る効率化を目指す。
・ デジタルペーパーの利点として、PDF 化された書面に書き込むことで PDF とし
て保存される。また、紙と同様に A4 サイズがそのまま表示され、白黒画面のみ
ではあるが軽く薄いため、書き心地や持ち運びに違和感がない。
図表 3.5 システム連携ソフトウェア(SONY提供)
図表 3.6 ログイン画面
図表 3.6 機器貸出画面
図表 3.7 機器貸出状況一覧画面
図表 3.8 機器貸出書類作成画面
ペンで書き込み
横にスワイプしてページ移動
図表 3.9 デジタルペーパー表示画面
図表 3.10 確認画面(システムに PDFとして格納)
図表 3.11 機器貸出状況一覧画面(機器追加後)
図表 3.12 格納された書類を表示
図表 3.13 デジタルペーパー転送
図表 3.14 システムから格納された書類を転送表示
(3)検証評価
八戸市立市民病院にて、臨床工学科 野沢技師長と花田様に、運用を想定して操作
と評価をお願いし検証を実施した。
実際に操作いただいた感想とご指摘事項を踏まえて、製品版のオプションとして付
加価値をつけることが可能であり、改修を経て実装を検討するに値すると認識された。
また、八戸学院大学に本システムのユーザーインターフェイス向上に係るアドバイス
をいただいた。
・ 医師が使用するには、デジタルペーパーの感度及び表示速度について改善の
必要がある。
・ 臨床医師からは、在宅医療機器の貸し出しだけはなく他の用途に使えるとの感
想をいただく。
・ 用紙の印刷、紙のファイリング、スキャニングの手間が省力化されるため、製品
版への実装を希望される。
・ 指示書及び報告書類についても、患者氏名や医師名、機器について入力され
た形式で表示され、書き込み後電子化された書類が即時にシステムに反映さ
れタイムロスがなくなるので、早期の実装を期待する。フォーマットの標準化と
同等程度に、書類管理としての業務省力化を実現できると見込まれる。
図表 3.15 デジタルペーパーから書き込みされた指示書
図表 3.16 点検報告書例
4.今後の課題
本事業の取組みにより、医療機器の貸し出しに係る業務の煩雑さと、貸出指示書、貸
出承諾書、回収指示書、点検報告書等膨大な用紙の管理において、電子化により用紙を
印刷することなく運用が可能となるシステム構築の兆しを見出すことができた。
また、書類の標準化を促すことは難しい現状を把握することができたとともに、運用
管理のノウハウを未だ持たない医療機関へは、在宅医療機器貸出管理システムのフォー
マットとしての提供を可能とすることにより、八戸市立市民病院の知見が活用され、業
務の効率化を図る一助となると考える。これを持って、青森県から全国の医療機関への
サービス提供を広げていくための有力な要素としたい。
今後の課題として、セキュアなネットワーク構築により、診療所や在宅患者、医療機
器メーカーとの情報共有を一貫して管理することができる、2025年を見据えた「地域
包括ケア」サービスの構築が望まれる。
在宅医療に係る診療報酬に重きが置かれつつある現状を踏まえ、地域医療機関及び多
職種、医療機器メーカーを包括するネットワークの構築に向けて、八戸市立市民病院と
の連携を継続しながら、医療現場に求められるサービスを提案、開発していく所存であ
る。
以上