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35 第四章 本アンケート調査のクロス集計の結果 本章では,本アンケート調査のクロス集計の結果とその考察について述べる. なお,以下の分析では,主に調整残差の判定結果を用いて,実践されている環境配慮行 動の回答者の属性などによる傾向の違いを明らかにしていく.クロス集計表において,数 値の右上の[**]や[*][//][/]印は調整残差の判定マークを,セルの網掛けは他のセル との間に統計的に有意な違いが見られたことを表す.判定マークの意味は表 4-1 に示すとお りである. 4-1 調整残差 R の判定マーク 1) 調整残差 R 有意 判定マーク 極度に大 極度に小 R≥2.58 有意である(99%以上) **//1.96≤R2.58 有意である(95%以上) */R1.96 有意であるとはいえない 4-1 集計・分析の前処理(クラスター分析) 本研究では,環境配慮行動に影響を与える属性を特定するために,本アンケート調査で 回答のあった同行動を回答者の「性別」と「年齢」「業種」「業務」「環境教育・きっかけ」 といった属性別にクロス集計した.ただし,属性のうち「企業」については業種との相関 が高かったため分析対象外とした.また,以後の集計分析において,行動と属性との関係 性をみるためには,単純集計で集計した環境配慮行動(59 種類)と業種(21 種類),業務 38 種類),環境教育・きっかけ(79 種類)のそれぞれの種類数が多すぎるなどの理由か ら,集計・分析の前処理として,これら 4 つの属性変数をクラスター分析によってそれぞ れグループ化することにした. 本節では,それぞれの変数のクラスター分析の結果について述べる.なお,クラスター 分析の結果からのグループ化の判断は,その結果できたすべてのグループについて,それ ぞれの特徴が他のグループと明確に異なる結合段階で樹形図を切断することで行った.ま た,分析には統計分析フリーソフト「R2) を用いた. 4-1-1 環境配慮行動のグループ化 本項では,環境配慮行動をグループ化した結果について述べる.分析対象としては,59

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35

第四章 本アンケート調査のクロス集計の結果

本章では,本アンケート調査のクロス集計の結果とその考察について述べる.

なお,以下の分析では,主に調整残差の判定結果を用いて,実践されている環境配慮行

動の回答者の属性などによる傾向の違いを明らかにしていく.クロス集計表において,数

値の右上の[**]や[*][//][/]印は調整残差の判定マークを,セルの網掛けは他のセル

との間に統計的に有意な違いが見られたことを表す.判定マークの意味は表 4-1 に示すとお

りである.

表 4-1 調整残差 R の判定マーク 1)

調整残差 R 有意 判定マーク

極度に大 極度に小

R≥2.58 有意である(99%以上) [**] [//]

1.96≤R≺2.58 有意である(95%以上) [*] [/]

R≺1.96 有意であるとはいえない -

4-1 集計・分析の前処理(クラスター分析)

本研究では,環境配慮行動に影響を与える属性を特定するために,本アンケート調査で

回答のあった同行動を回答者の「性別」と「年齢」「業種」「業務」「環境教育・きっかけ」

といった属性別にクロス集計した.ただし,属性のうち「企業」については業種との相関

が高かったため分析対象外とした.また,以後の集計分析において,行動と属性との関係

性をみるためには,単純集計で集計した環境配慮行動(59 種類)と業種(21 種類),業務

(38 種類),環境教育・きっかけ(79 種類)のそれぞれの種類数が多すぎるなどの理由か

ら,集計・分析の前処理として,これら 4 つの属性変数をクラスター分析によってそれぞ

れグループ化することにした.

本節では,それぞれの変数のクラスター分析の結果について述べる.なお,クラスター

分析の結果からのグループ化の判断は,その結果できたすべてのグループについて,それ

ぞれの特徴が他のグループと明確に異なる結合段階で樹形図を切断することで行った.ま

た,分析には統計分析フリーソフト「R」2)を用いた.

4-1-1 環境配慮行動のグループ化

本項では,環境配慮行動をグループ化した結果について述べる.分析対象としては,59

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種類の環境配慮行動それぞれについて,個々の回答者が(仕事やプライベートに関わらず)

実践していると答えている場合は 1,答えていない場合は 0 とした行動データセットを用い

た.分析によって得られた樹形図と各クラスターの詳細をそれぞれ図 4-1 と表 4-2 に示す.

図 4-1 環境配慮行動の樹形図

表 4-2(1) 環境配慮行動のグループ化の結果

選択肢 行動内容 回答数 合計

クラスター1 イ-4 オーガニック商品を選んで購入 32 67

機器・設備

イ-8 カーボンオフセットやエコファンド等の商品を購入 35

エ-3 生ごみを自宅処理している(コンポストの利用を含む) 29 29

カ-2 カーシェアリング・相乗りを利用 30 30

キ-1 太陽光発電 56

384

キ-2 太陽熱利用 6

キ-3 燃料電池 5

キ-4 風力発電 1

キ-5 雨水利用 8

キ-6 断熱性の向上 24

キ-7 二重ガラス化 51

キ-9 省エネ型テレビ 57

キ-10 省エネ型給湯器 39

キ-11 省エネ型冷蔵庫 52

キ-12 エコカー 85

キ-6

キ-5

キ-2

キ-3

キ-4イ

-4イ

-8エ

-3カ

-2 キ-1

キ-7 キ-1

2キ

-10

キ-9

キ-1

1エ

-2エ

-4エ

-10

エ-5エ

-6 エ-7

エ-8エ

-9 ア-3

カ-3

イ-6

イ-1

イ-3

ウ-8 ウ

-1ウ

-5 ア-5カ

-1ア

-1イ

-5イ

-7 ウ-4

ウ-1

2エ

-1オ

-3ウ

-2ウ

-10

ウ-1

1 イ-2

ウ-7

ウ-9 ウ-3

ウ-6 ア

-6ア

-2ア

-4カ

-6カ

-4カ

-5 その他

オ-1

オ-2 オ-4

キ-8

02

04

06

08

0

Cluster Dendrogram for Solution HClust.2

Method=ward; Distance=euclidian

Observation Number in Data Set Dataset

He

igh

t

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表 4-2(2) 環境配慮行動のグループ化の結果

選択肢 行動内容 回答数 合計

クラスター2 ア-3 不用品はバザーや知人への譲渡によって再利用 113 234

調理・買い物

ア-5 自分の箸を持参し,割りばしの使用を減らす 121

イ-1 エコマーク商品・リサイクル商品を選んで購入 60

227 イ-3 地元産の商品を選んで購入・消費する 64

イ-6 使い捨ての割りばしやスプーンを断る 103

ウ-1 家族で同じ部屋に集まって過ごす 141

321 ウ-5 お風呂は続けて利用し,追いだきはしない 107

ウ-8 植林,花壇設備,グリーンカーテンなど緑化につとめる 73

エ-2 電気ポットを長時間使用しないときはコンセントを抜く 110

904

エ-4 コンロの火は鍋からはみ出さないようにする 111

エ-5 生ごみの水分は極力絞ってから捨てる 97

エ-6 料理時は材料を使い切る 86

エ-7 ガス・電力消費削減に取り組んでいる 159

エ-8 冷蔵庫は詰め込み過ぎない 126

エ-9 冷蔵庫の開け閉めを少なくする 139

エ-10 冷蔵庫は温度に合わせて,強弱を調節する 76

カ-1 階段を使うなどエレベーターの使用を避ける 140 239

カ-3 自動車よりも自転車や電車を利用 99

クラスター3 ア-1 ゴミは地域のルールにしたがって分別 656 656

ごみ・節電

イ-5 レジ袋や過剰な包装を断る 385 763

イ-7 詰め替え商品を購入 378

ウ-4 冷やしすぎない冷房,暖め過ぎない暖房温度に設定 342 742

ウ-12 部屋の明かりをこまめに消す 400

エ-1 食べ物は残さないようにする 300 300

オ-3 メモ用紙や印刷用紙として裏紙を利用 447 447

クラスター4 ア-2 牛乳パックや,トレイはリサイクル 240

778

資源の節約

ア-4 自分の水筒やコップを持ち歩き,使い捨て容器の使用を抑制 251

ア-6 壊れても修理して長く大切に利用 287

イ-2 買い物は吟味して,必要なものだけを買うようにする 247 247

ウ-2 使わない機器は待機電力を削減 263

1509

ウ-3 エアコンのフィルター掃除はこまめに行う 167

ウ-6 温水便座は温度を調節し,ふたは閉める 210

ウ-7 カーテンなどで直射の遮断や熱が逃げることを防ぐ 216

ウ-9 洗濯はまとめて行い回数を減らす 194

ウ-10 洗面,シャワーはこまめに水を止める 216

ウ-11 テレビ・TV の電源をこまめに消す 243

クラスター5 カ-4 タイヤの空気圧を適正に保つ 158

591 運転

カ-5 車に無駄な荷物を積んだまま走らない 148

カ-6 アイドリングや空ぶかし,急発進はしない 285

クラスター6 オ-1 印刷頻度を減らす 194

612 オフィス

オ-2 印刷をする際は両面印刷をする 210

オ-4 環境保全活動に参加 208

キ-8 LED 灯 179 179

その他 その他 207 207

図 4-1 に示すように,分析の結果,回答者の環境配慮行動を「機器・設備」と「調理・買

い物」「ごみ・節電」「資源の節約」「運転」「オフィス」の 6 つのグループに分けることが

できた.これらグループごとの行動が一緒に実践されている傾向があることがわかる.な

お,各クラスターの名称は,それぞれの中でもっとも回答者数の多かった行動分類名(第

二章の表 2-6 参考)などに基づいて命名した.

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以下,環境配慮行動に関しては,これらの 6 つのグループに分類してクロス集計を行う.

4-1-2 業種のグループ化

次に,業種をグループ化した結果について述べる.分析対象としては,回答者数が全回

答の 1%(8 人)以下であった 2 種類の業種を除いた,19 種類の業種ごとに先の行動データ

セットを再集計したデータセットを用いた.なお,業種のグループ化の方法としては,行

動に基づくクラスター分析ではなく,総務省の日本標準産業分類の大分類や中分類に基づ

く方法もあったが,本研究の対象企業の場合,大分類の「製造業」に偏ってしまうこと,

また,同じ製造業であっても,何を製造しているかによって,従業員によって実践されて

いる行動に大きな違いが見られたことから,この方法はとらなかった.

分析によって得られた樹形図と各クラスターの詳細をそれぞれ図 4-2 と表 4-3 に示す.

図 4-2 業種の樹形図

図 4-2 に示すように,業種を「生活関連サービス」「印刷・化学」「生産用機械・卸売」「食

品」「販売」「加工紙・木材」「建設・業務用機械・電気機械」「サービス・運輸・不動産」「情

報処理」「飲食サービス・金属・電子」の 10 のグループに分けることができた.

以下,業種に関しては,これらの 10 のグループに分類してクロス集計を行う.

13

2 6 5

14 12

17

7

19 15 8

10 1

8 1 4 11 3 9

16

01

00

20

03

00

40

0

Cluster Dendrogram for Solution HClust.6

Method=ward; Distance=euclidian

Observation Number in Data Set Dataset1

He

igh

t

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表 4-3 業種のグループ化の結果

クラスター名 No 業種名 回答者数 合計

1 生活関連サービス 13 生活関連サービス 54 54

2 印刷・化学 2 印刷 56

112 6 化学 56

3 生産用機械・卸売 14 生産用機械 94

172 5 卸売 78

4 食品 12 食品 73 73

5 販売 17 販売 58 58

6 加工紙・木材 7 加工紙 11

21 19 木材 10

7 建設・業務用機械・電気機械

10 建設 22

56 8 業務用機械 18

15 電気機械 16

8 サービス・運輸・不動産

1 サービス 32

84 4 運輸 28

18 不動産 24

9 情報通信 11 情報通信 39 39

10 飲食サービス・金属・電子

3 飲食サービス 38

104 9 金属製品 36

16 電子部品 30

4-1-3 業務のグループ化

次に,業務をグループ化した結果について述べる.分析対象としては,回答者数が全回

答の 1%(8 人)以下であった 14 種類の業務を除いた,24 種類の業務ごとに先の行動デー

タセットを再集計したデータセットを用いた.なお,業務のグループ化の方法としては,

行動に基づくクラスター分析ではなく,総務省の日本標準職業分類の大分類や中分類に基

づく方法もあったが,本研究の対象企業の従業員の場合,大分類の「事務」に偏ってしま

うこと,また,同じ事務であっても,どのような事務かの内容によって,従業員によって

実践されている行動に大きな違いが見られたことから,この方法はとらなかった.

分析によって得られた樹形図と各クラスターの詳細をそれぞれ図 4-3 と表 4-4 に示す.

図 4-3 に示すように,業務を「営業職」「製造技術者」「一般事務」「製品製造・加工処理」

「営業・販売事務」「法人・団体役員」「製造技術者(開発)」「運搬・郵便事務」「販売類似

職・運搬」「機械整備・運転・管理」「飲食物調理・製品検品」「接客・事務」の 12 のグル

ープに分けることができた.

以下,業務に関しては,これらの 12 のグループに分類してクロス集計を行う.

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40

図 4-3 業務の樹形図

表 4-4 業務のグループ化の結果

クラスター名 選択肢 業務内容 回答者数 合計

1 営業職 D-3 営業職 117 117

2 製造技術者 B-4 製造技術者 87 87

3 一般事務 C-1 一般事務 87 87

4 製品製造・加工処理 G-3 製品製造・加工処理 108 108

5 営業・販売事務 C-4 営業・販売事務 41 41

6 法人・団体役員 A-2 法人・団体役員 28 28

7 製造技術者(開発) B-3 製造技術者(開発) 36 36

8 運搬・郵便事務 C-6 運搬・郵便事務 9 9

9 販売類似職・運搬

D-2 販売類似職 15

72

J-1 運搬 15

G-4 機械組立 12

E-4 生活衛生サービス職 11

B-6 情報処理 10

E-1 家庭生活支援サービス職 9

10 機械整備・運転・管理

G-5 機械整備・修理 21

72 H-2 自動車運転 19

A-3 法人・団体管理職 17

G-8 生産関連・生産類似作業 15

11 飲食物調理・製品検品 E-5 飲食物調理 28

51 G-6 製品検品 23

12 接客・事務

E-6 接客・給仕職 24

85 A-4 その他(管理的職業) 21

C-3 生産関連事務 21

C-2 会計事務 19

D-3

B-4

C-1

G-3

C-4

A-2

B-3

C-6

D-2

J-1

B-6

G-4

E-1

E-4

H-2

G-8

A-3

G-5

E-5

G-6

E-6

C-2

A-4

C-3

02

00

40

06

00

Cluster Dendrogram for Solution HClust.7

Method=ward; Distance=euclidian

Observation Number in Data Set Dataset2

He

igh

t

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41

4-1-4 環境教育・きっかけのグループ化

次に,環境教育・きっかけをグループ化した結果について述べる.

なお,環境教育・きっかけに関しては,アンケート調査の結果,内容として 79 種類の回

答が得られた(第三章の問Ⅲ-2 参考).ただし,ここでの分析対象としては,回答者数が同

質問に回答のあった全回答の 1%(6 人)以下であった 56 種類を除いた,23 種類の環境教

育・きっかけごとに先の行動データセットの内,環境教育をきっかけに実践し始めた環境

配慮行動(表 2-9 の問Ⅲ-1)とそのきっかけとなった環境教育・きっかけ(表 2-9 の問Ⅲ-2)

の両方の質問項目に回答のあった回答者のデータのみを再集計したデータセットを用いた.

分析によって得られた樹形図と各クラスターの詳細をそれぞれ図 4-4 と表 4-5 に示す.

図 4-4 に示すように,環境教育・きっかけを「KES」「その他」「低炭素社会」「環境汚染・

節電」「環境保全」「資源・エネルギー」「会社」「地球温暖化・廃棄物」の 8 つのグループ

に分けることができた.ここで「KES」とは,第三章で述べたのと同じく,会社が KES に

審査登録したことや KES の関連するセミナーの受講をきっかけに環境配慮行動を実践し始

めたことを,また,「会社」とは,会社の方針や目標,ルールに従って実践し始めたこと意

味する.

以下,環境教育・きっかけに関しては,これらの 8 のグループに分類してクロス集計を

行う.

図 4-4 環境教育・きっかけの樹形図

1

10

16 5 9 2 7 11 3 4

20 8

14 1

2

15

22 1

8

19

23

17

21

6

13

02

04

06

08

0

Cluster Dendrogram for Solution HClust.20

Method=ward; Distance=euclidian

Observation Number in Data Set Dataset

He

igh

t

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42

表 4-5 環境教育・きっかけのグループ化の結果

クラスター名 No 内容 回答者数

1 KES 1 KES 119

2 その他

16 取引先の影響 8

10 環境保全・保護 7

11 環境問題 7

2 エコフォーラム 6

3 エコ検定の受験 6

4 マスメディア 6

5 会社での会議 6

7 環境マネジメント 6

9 環境部門の担当・移動 6

3 低炭素社会

22 低炭素社会 21

15 社内研修 17

12 産業廃棄物 14

4 環境汚染・節電

8 環境汚染 13

20 節電 11

14 自治体の条例・広報 10

5 環境保全 19 清掃活動 27

18 森林保全活動 23

6 資源・エネルギー 13 資源・エネルギー 43

7 会社 6 会社のルール・方針・活動 40

8 地球温暖化・廃棄物

21 地球温暖化 31

23 廃棄物 28

17 習慣 25

4-2 グループ化した環境配慮行動のクロス集計

本節では,グループ化した環境配慮行動について,個々の回答者が(仕事やプライベー

トに関わらず)実践していると答えている場合は 1,答えていない場合は 0 として回答者行

動データを再集計し,回答者の性別と年齢,業種,業務別にクロス集計した結果と結果の

考察について述べる.なお,ここでの属性別のクロス集計と第五章で述べる数量化Ⅱ類の

解析では,全回答者(803 人)の内,年齢,性別,業務の回答が無効回答であった回答者,

また,複数の業務の回答のあった回答者,返送元(業種)のわからなかった 2 つの企業に

所属する回答者,回答者数が全回答者の 1%(8 人)に満たなかった業種の企業の回答者と

業務に従事していた回答者を除外した,回答者(674 人)のデータを用いた.

集計結果の説明方法としては,95%水準以上で有意な差が見られたセルのうち,まず個々

の属性項目単独で差が見られたセルについて,次に項目間で共通して差が見られたセルに

ついて説明する.

属性別のクロス集計に入る前に,アンケート調査票の問Ⅱ-1~3 と問Ⅲ-1 の質問項目で尋

ねた行動①:回答者が所属する企業のルールや会社全体の取り組みの一環として実践して

いる環境配慮行動,行動②:回答者が従事している仕事柄実践している環境配慮行動,行

動③:回答者が会社以外のプライベートにおいて個人として実践している環境配慮行動,

行動④:企業内環境教育(環境教育・きっかけ)をきっかけに実践している環境配慮行動,

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43

の 4 つの行動の間の関係性をクロス集計でみておく.環境配慮行動を行動①~④別でクロ

ス集計した結果を表 4-6 に示す.

表 4-6 環境配慮行動×行動①~④別のクロス集計

行動① 行動② 行動③ 行動④ 横計

行動

機器・設備 150 72// 190** 25// 437

調理・買い物 302 130// 406** 72// 910

ごみ・節電 661 419 558// 245** 1883

資源の節約 439** 137// 460** 112 1148

運転 112// 153** 159 31// 455

オフィス 333 329** 184// 124* 970

縦計 1997 1240 1957 609 5803

表 4-6 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違いが

見られた.

具体的に他の行動と比べて回答者数が有意に多かった行動として,行動②(回答者が従

事している仕事柄実践している環境配慮行動)のみでは「運転」の実践があった.行動③

(回答者が会社以外のプライベートにおいて個人として実践している環境配慮行動)のみ

では「機器・設備」「調理・買い物」の実践が,行動④(企業内環境教育をきっかけに実践

している環境配慮行動)のみでは「ごみ・節電」の実践があった.

また,他の行動と比べて回答者数が有意に少なかった行動として,行動②のみでは「資

源の節約」の実践が,行動③のみでは「ごみ・節電」「オフィス」の実践があった.

複数の行動に共通する環境配慮行動として,「資源の節約」の実践は行動①と行動③に共

通して回答者数が有意に多かった.また,「オフィス」の実践は行動②と行動④に共通して,

回答者数が有意に多かった.一方で,「機器・設備」「調理・買い物」の実践は行動②と行

動④に共通して,また,「運転」の実践は行動①と行動④に共通して回答者数が有意に少な

かった.

これらの結果から,「機器・設備」「調理・買い物」は主にプライベートで,「資源の節約」

は主に会社とプライベートで,「ごみ・節電」は主に企業内環境教育をきっかけに,「運転」

は主に仕事柄で,「オフィス」は主に仕事柄と企業内環境教育をきっかけにそれぞれ実践さ

れている傾向があることがわかる.

4-2-1 環境配慮行動の性別・年齢別のクロス集計

本節では,回答者の性別・年齢がグループ化した環境配慮行動に与える影響について明

らかにするために行ったクロス集計の結果と結果の考察について述べる.

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44

表 4-7 環境配慮行動×性別のクロス集計

男性 女性 横計

機器・設備 158 77 235

調理・買い物 305// 174** 479

ごみ・節電 437 204 641

資源の節約 376 194 570

運転 231** 39// 270

オフィス 326 143 469

縦計 1833 831 2664

■性別のクロス集計

まず,性別でグループ化した環境配慮行動をクロス集計した結果を表 4-7 に示す.

表 4-7 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違いが

見られた.

具体的に,男性が女性に比べて回答者数が有意に多かった行動としては「運転」の実践

があった.逆に,女性が男性に比べて回答者数が有意に多かった行動としては「調理・買

い物」の実践があった.

これらの結果から,エコドライブに関連する「運転」を実践するのは男性が多く,食事

や調理に関連する「調理・買い物」を実践するのは女性が多い傾向があることがわかる.

一方,その他の行動の実践に関しては,性別による大きな違いは見られなかった.

■年齢別のクロス集計

次に,年齢別にグループ化した環境配慮行動をクロス集計した結果を表 4-8 に示す.

表 4-8 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違いが

見られた.

表 4-8 環境配慮行動×年齢別のクロス集計

10~20 歳台 30 歳台 40 歳台 50 歳台 60 歳以上 横計

機器・設備 32 51 75 47 30 235

調理・買い物 88 120 140 82 49 479

ごみ・節電 119 159 176 117 70 641

資源の節約 105 145 151 102 67 570

運転 31// 60 93** 56 30 270

オフィス 80 120 129 88 52 469

縦計 455 655 764 492 298 2664

具体的に,他の年齢に比べて回答者数が有意に多かった行動として,40 歳台のみでは「運

転」の実践があった.

また,他の年齢に比べて回答者数が有意に少なかった行動として 10~20 歳台のみでは「運

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転」の実践があった.

複数の年齢に共通する環境配慮行動は見られなかった.

これらの結果から,エコドライブに関連する「運転」を実践するのは 10~20 歳台が少な

く,40 歳台が多い傾向があることがわかる.一方,その他の行動の実践に関しては,年齢

による大きな違いは見られなかった.

4-2-2 環境配慮行動の業種・業務別のクロス集計

本節では,回答者の業種・業務がグループ化した環境配慮行動に与える影響について明

らかにするために行ったクロス集計の結果と結果の考察について述べる.

■業種グループ別のクロス集計

まず,業種別にグループ化した環境配慮行動をクロス集計した結果を表 4-9 に示す.

表 4-9 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違いが

見られた.

具体的に,他の業種と比べて回答者数が有意に多かった行動として「建設・業務用機械・

電気機械」のみでは「運転」の実践があった.

また,他の業種と比べて回答者数が有意に少なかった行動として「生活関連サービス」

のみでは「運転」の実践があった.

複数の業種グループに共通する環境配慮行動は見られなかった.

これらの結果から,「運転」の実践は「生活関連サービス」の業種の従業員が少なく,「建

設・業務用機械・電気機械」の従業員は多いことがわかる.一方,その他の行動の実践に

関しては,業種による大きな違いは見られなかった.

表 4-9 環境配慮行動×業種グループ別のクロス集計

生活関連サービス

印刷・化学

生産用機械・卸売

食品

販売

加工紙・木材

建設・業務用機械

・電気機械

サービス・

運輸・不動産

情報通信

飲食サービス・

金属・電子

横計

機器・設備 18 26 50 17 25 8 19 20 13 39 235

調理・買い物 43 62 105 48 47 13 25 43 24 69 479

ごみ・節電 52 91 150 65 55 17 42 54 31 84 641

資源の節約 49 79 125 63 51 17 34 49 27 76 570

運転 7// 38 65 22 29 6 27** 25 21 30 270

オフィス 38 53 123 41 41 13 31 39 26 64 469

縦計 207 349 618 256 248 74 178 230 142 362 2664

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■業務グループ別のクロス集計

次に,業務別にグループ化した環境配慮行動をクロス集計した結果を表 4-10 に示す.

表 4-10 環境配慮行動×業務グループ別のクロス集計

営業職

製造技術者

一般事務

製品製造・加工処理

営業・販売事務

法人・団体役員

製造技術者(開発)

運搬・郵便事務

販売類似職・運搬

機械整備・運転・管理

飲食物調理・製品検品

接客・事務

総計

機器・設備 42 22 22 34 12 11 11 0 17 20 17 27 235

調理・買い物 69 47 59 69 32 18 23 5 43 39 36 39 479

ごみ・節電 97 73 68 96 38 24 35 6 53 51 41 59 641

資源の節約 84 64 63 89 36 18 29 5 48 46 35 53 570

運転 69** 34 13// 40 6// 13 15 3 16 34** 11 16 270

オフィス 78 49 50 57 32 22 24 3 41 36 33 44 469

縦計 439 289 275 385 156 106 137 22 218 226 173 238 2664

表 4-10 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違い

が見られた.

具体的に,単独の業務で特に実践されている環境配慮行動は見られなかった.

複数の業務グループに共通する環境配慮行動として,「運転」の実践は「営業職」「機械

整備・運転・管理」に共通して回答者数が有意に多く,「一般事務」「営業・販売事務」に

共通して回答者数が有意に少なかった.

これらの結果から,「運転」を実践するのは「営業職」「機械整備・運転・管理」を業務

とする従業員が多く,逆に,「一般事務」「営業・販売事務」を業務とする従業員は少ない

ことがわかる.一方,その他の行動の実践に関しては,業務による大きな違いは見られな

かった.

4-2-3 グループ化した環境配慮行動のクロス集計のまとめ

最後に,ここまでのクロス集計の結果,得られた関係性をまとめたものを表 4-11 に示す.

表は,グループ化した環境配慮行動をクロス集計した項目のうち 95%以上の有意差が見ら

れたものを,その調整残差の判定マークで示している.

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表 4-11 統計的に有意な差が見られたクロス集計のまとめ

行動分類 性別 年齢 業種 業務

行動①

行動②

行動③

行動④

男性

女性

10

~20

歳台

40

歳台

生活関連サービス

建設・業務用機械

・電気機械

営業職

一般事務

営業・販売事務

機械整備・

運転・管理

行動

機器・設備 // ** //

調理・買い物 // ** // // **

ごみ・節電 // **

資源の節約 ** // **

運転 // ** // ** // // ** // ** ** // // **

オフィス ** // *

4-3 環境配慮行動と環境教育・きっかけの関係

本節では,クラスター分析によってグループ化した環境配慮行動の分類に従い再集計し

た行動④(企業内環境教育をきっかけに実践している環境配慮行動)をグループ化した環

境教育・きっかけ別にクロス集計した結果と結果の考察について述べる.グループ化した

環境教育・きっかけ別に行動④をクロス集計した結果を表 4-12 に示す.

表 4-12 に示すように,調整残差を求めた結果,網掛けで示すセルに統計的に有意な違い

が見られた.

表 4-12 環境配慮行動④×環境教育・きっかけグループ別のクロス集計

KE

S

その他

低炭素社会

環境汚染・節電

環境保全

資源・エネルギー

会社

地球温暖化・廃棄物

横計

行動

機器・設備 3 4** 0 0 0 1 0 2 10

調理・買い物 11 5 12** 4 7 6 1 4 50

ごみ・節電 43 22 24 14 15 18 24** 35 195

資源の節約 15/ 11 9 14** 6 10 5 28** 98

運転 14** 3 1 0 0 2 0 5 25

オフィス 33* 13 6 2/ 22** 6 10 10/ 102

縦計 119 58 52 34 50 43 40 84 480

具体的に,他の環境教育・きっかけに比べて回答者数が有意に多かった行動として「KES」

のみでは「運転」の実践が,「その他」のみでは「機器・設備」の実践が,「会社」のみで

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は「ごみ・節電」の実践があった.

また,他の環境教育・きっかけに比べて回答者数が有意に少なかった行動として「KES」

のみでは「資源の節約」の実践があった.

複数の環境教育・きっかけに共通する環境配慮行動として,「資源の節約」の実践は「環

境汚染・節電」「地球温暖化・廃棄物」に共通して回答者数が有意に多かった.また,「オ

フィス」の実践は「KES」「環境保全」に共通して回答者数が有意に多く,一方で,「環境汚

染・節電」「地球温暖化」に共通して回答者数が有意に少なかった.

これらの結果から,「KES」をきっかけとする行動には「運転」「オフィス」の実践が多く,

「その他」をきっかけとする行動には「機器・設備」の実践が,「低炭素社会」をきっかけ

とする行動には「調理・買い物」の実践が,「環境汚染・節電」をきっかけとする行動には

「資源の節約」の実践が,「環境保全」をきっかけとする行動には「オフィス」の実践が,

「会社」をきっかけとする行動には「ごみ・節電」の実践が,「地球温暖化・廃棄物」をき

っかけとする行動には「資源の節約」の実践が多いことがわかった.

4-4 クロス集計のまとめ

本節では,各クロス集計について,これまでのクロス集計の結果から明らかになったこ

とをグループ化された環境配慮行動ごとにまとめる.

機器・設備

・主にプライベートで実践されている.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「その他」が多い.

・性別・年齢・業務・業務による実践傾向の違いは見られない.

調理・買い物

・主にプライベートで実践されている.

・主に女性が実践している.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「低炭素社会」が多い.

・年齢・業種・業務による実践傾向の違いは見られない.

ごみ・節電

・主に環境教育・きっかけをきっかけに実践されている.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「会社」が多い.

・性別・年齢・業種・業務による実践傾向の違いは見られない.

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資源の節約

・主に会社とプライベートで実践されている.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「環境汚染・節電」と「地球温暖

化・廃棄物」が多い.

・性別・年齢・業種・業務による実践傾向の違いは見られない.

運転

・主に仕事柄,実践されている.

・主に男性と 40 歳台が実践している.

・業種としては「建設・業務用機械・電気機械」を業種とする企業の従業員の実践が多い.

・業務としては「営業職」「機械整備・運転・管理」に従事する従業員の実践が多い.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「KES」が多い.

オフィス

・主に仕事柄と環境教育・きっかけをきっかけに実践されている.

・実践のきっかけとなった環境教育・きっかけとしては「KES」と「環境保全」が多い.

・性別・年齢・業種・業務による実践傾向の違いは見られない.

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<参考文献>

1) 菅民郎:すべてがわかったアンケートデータの分析,pp.137-139,現代数学社 (1998)

2) 青木繁伸:R による統計処理<http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/R/>,2017-1-25