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ヒュミラ皮下注 40 mg シリンジ 0.8mL (アダリムマブ) 第2部 CTD の概要 2.6.4 薬物動態試験の概要文 2.6.5 薬物動態試験概要表 アボット ジャパン株式会社

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ヒュミラ皮下注 40 mg シリンジ 0.8mL (アダリムマブ)

第 2 部 CTD の概要

2.6.4 薬物動態試験の概要文 2.6.5 薬物動態試験概要表

アボット ジャパン株式会社

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

略語及び名称一覧

AUC 血清中濃度-時間曲線下面積 AUC0-7d ゼロ時間から 7 日目までの AUC AUC0-t ゼロ時間から時間 t までの AUC AUC0-∞ ゼロ時間から無限時間までの AUC BA 生物学的利用率 CL 全身クリアランス CL/F 見かけの全身クリアランス Cmax 最高血清中濃度 CP クエン酸リン酸緩衝液 CPSM マンニトール含有クエン酸リン酸緩衝生理食塩液 CV 変動係数 ELISA 酵素免疫測定法 F 雌 Fc 免疫グロブリンの Fc フラグメント FcRn 新生児 Fc 受容体 GLP Good laboratory practice HAHA ヒト抗ヒト抗体 IgG 免疫グロブリン G iv 静脈内 kDa キロダルトン LOQ 定量限界 M 雄 MAHA マウス抗ヒト抗体 MRT 平均滞留時間 PAHA サル抗ヒト抗体 PBS リン酸緩衝生理食塩液

PK 薬物動態

sc 皮下

SD 標準偏差

t1/2 最終相の消失半減期

TK トキシコキネティクス

tmax 最高血清中濃度到達時間

TNFα 腫瘍壊死因子アルファ

Vc 中央コンパートメントの分布容積

Vss 定常状態における分布容積

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

目次

2.6.4 薬物動態試験の概要文 ··························································································1

2.6.4.1 まとめ············································································································ 1

2.6.4.2 分析法············································································································ 4

2.6.4.3 吸収 ··············································································································· 6

2.6.4.4 分布 ············································································································· 13

2.6.4.5 代謝 ············································································································· 15

2.6.4.6 排泄 ············································································································· 16

2.6.4.7 薬物動態学的薬物相互作用 ········································································· 16

2.6.4.8 その他の薬物動態試験 ················································································ 16

2.6.4.9 考察及び結論······························································································· 23

2.6.4.10 図表 ············································································································· 26

2.6.5 薬物動態試験概要表 ····························································································28

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 ················································································ 28

2.6.5.2 分析方法及びバリデーション試験 ······························································ 34

2.6.5.3 薬物動態試験:吸収:単回投与·································································· 35

2.6.5.4 薬物動態試験:吸収:反復投与·································································· 37

2.6.5.5 薬物動態試験:分布···················································································· 41

2.6.5.6 薬物動態試験:たん白結合 ········································································· 44

2.6.5.7 薬物動態試験:妊娠動物における試験······················································· 45

2.6.5.8 薬物動態試験:その他の分布試験 ······························································ 46

2.6.5.9 薬物動態試験:代謝:In vivo····································································· 47

2.6.5.10 薬物動態試験:代謝:In vitro ···································································· 48

2.6.5.11 薬物動態試験:推定代謝経路 ····································································· 49

2.6.5.12 薬物動態試験:薬物代謝経路の誘導/阻害 ·················································· 50

2.6.5.13 薬物動態試験:排泄···················································································· 51

2.6.5.14 薬物動態試験:排泄:胆汁排泄·································································· 52

2.6.5.15 薬物動態試験:薬物相互作用 ····································································· 53

2.6.5.16 薬物動態試験:その他 ················································································ 54

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

1

2.6.4 薬物動態試験の概要文

2.6.4.1 まとめ

アダリムマブ はファージディスプレイ法を応用して創出された完全長 IgG 抗ヒト TNFαモノク

ローナル抗体であり,分子構造を原因とした免疫原性は技術的に最小化されている。したがって,

アミノ酸配列の一部が非ヒト遺伝子に由来するキメラ抗体やヒト化抗体とは異なり,アレルギー

反応の原因となりうる分子構造を含まないことから,アレルギー反応による有害事象の発現頻度

が低いなどの安全性の面でメリットが期待される。

(1) 薬物動態試験の概略 TNFα 中和作用の薬理試験成績から注1),免疫交差性を示すヒト以外の霊長類がアダリムマブの

薬理学的並びに毒性学的影響を調べるのに適した動物種であることが明らかとなり,薬物動態 (以下「PK」) 試験及びトキシコキネティクス (以下「TK」) 試験で用いる動物種として,主にカ

ニクイザルを選択した。なお,一部の試験はマウスを用いて実施した。主な毒性試験は静脈内投

与で実施したが,臨床適応経路が皮下投与であるため,アダリムマブの PK 試験は静脈内投与及

び皮下投与で実施した。 PK 並びに TK 試験では,アダリムマブを皮下及び静脈内投与したときの血清中濃度を測定し,

その薬物動態パラメータを求めた。また,カニクイザルに静脈内投与したときの胎盤通過性につ

いても検討した。更に,アダリムマブ投与後の血清中抗アダリムマブ抗体についても測定した。

なお,血清中のアダリムマブ及び抗アダリムマブ抗体の濃度測定は一部の試験を除き GLP 適用

試験として実施した。 通常の低分子化合物で実施される放射性標識体を用いた分布,代謝及び排泄試験は,アダリム

マブがヒト IgG であることから,生体内では内因性の IgG と同様に代謝分解され,アミノ酸プー

ルに入ると想定されるため実施しなかった。 なお,20 年 月 日独立行政法人医薬品医療機器総合機構における医薬品安全性相談の

結果,本薬において放射性標識体を用いた動物での薬物動態試験を実施する必要性はないこと, ただし,その旨を承認申請資料中で,十分に説明することが必要であるとの助言を得た注2)。 (2) 吸収

マウスに 32 mg/kg の投与量で単回静脈内投与したときの血清中アダリムマブ濃度は 2 相性を

示して減少し,そのときの最終相の消失半減期 (以下「t1/2」) は雄及び雌でそれぞれ 102 時間 (4.2日) 及び 193 時間 (8.0 日) であった。

カニクイザルに 3 mg/kg の投与量で単回静脈内投与したときの血清中アダリムマブ濃度は 2 相

性を示して減少し,そのときの t1/2は 6.9 日であった。また,1,3 及び 10 mg/kg の投与量で単回

皮下投与したときの最高血清中濃度 (以下「Cmax」) 及び血清中濃度-時間曲線下面積 (以下

「AUC」) は,共に投与量に比例して増加し,このときの生物学的利用率 (以下「BA」) は 94~

注 1 ):本概要文 2.6.2.2 (1) 5) b) 項参照

注 2 ):機構相談議事録を参照 (記載箇所 5.4-3 項)

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

2

100%であった。また,カニクイザルに 15.5 mg/kg の投与量で単回静脈内及び皮下投与したとき

の血清中アダリムマブ濃度は,それぞれ 214 時間 (8.9 日,中央値) 及び 299 時間 (12.5 日,中央

値) の t1/2で消失し,BA は約 90%であった。 マウスに 32,70.9 及び 157.2 mg/kg の投与量で週 1 回,4 週間反復静脈内投与したときの t1/2は,

雄で 97~112 時間,雌で 134~259 時間と,雌に比べ雄の方が短かった。このときの AUC 値は投

与量の増加に伴い上昇したが,その上昇は投与量公比に比べ低かった。また,雌の方が雄に比べ

やや大きな値を示した。 カニクイザルに週 1 回,4 週間 (32,70.9 及び 157.2 mg/kg) 及び 39 週間 (32,82.9 及び

214.8 mg/kg) 反復静脈内投与したときの血清中アダリムマブ濃度を測定した。血清中アダリムマ

ブ濃度推移に性差は認められず,4 週間及び 39 週間反復投与したときの t1/2 は,それぞれ 13.5 日及び 16.2 日であった。血清中アダリムマブ濃度推移の AUC 値は投与量にほぼ比例して増

加した。39 週間反復投与試験における投与後 5 分及び 168 時間 (トラフ値) の値は,初回投与後

と比較して最終投与後では 2.2~3.5 倍と,t1/2 と投与間隔から予測される上昇であった。妊娠雌

カニクイザルに妊娠 20~97 日の期間にわたって 100 mg/kg の投与量で週 1 回,12 週間反復静脈

内投与したとき,最終投与後の投与後 3 分及び 168 時間 (トラフ値) の血清中アダリムマブ濃度は,

初回投与後と比較してそれぞれ 2.4 倍と 2.7 倍であった。 (3) 分布

アダリムマブはヒト IgG であることから,生体内では内因性の IgG と同様な組織分布を示すと

考えられる。また,放射性標識体を用いた場合,アダリムマブ 及び代謝されたアダリムマブ断

片に由来する放射能と加水分解後に内因性アミノ酸プールを経て再利用される放射能とを識別す

ることは困難であると判断した。よって,低分子有機化合物で実施される放射性標識体を用いた

通常の組織分布試験は実施しなかった。 カニクイザルにアダリムマブを週 1 回 4 週間反復静脈内投与したときのアダリムマブの血清中

濃度推移を 2-コンパートメントモデルで解析した結果,定常状態での分布容積 (平均 Vss = 82.5 mL/kg) 及び中央コンパートメントの分布容積 (Vc = 39.7 ± 7.9 mL/kg) から,アダリムマブは血清

容積及びそれとほぼ等しい大きさの末梢コンパートメントを持つと考えられた。また,末梢コン

パートメントは約 40 mL/kg と計算され,細胞間液の容積よりも小さいため,アダリムマブの血

管外への分布は限定的なものと考えられた。 カニクイザルにアダリムマブを週 1 回 39 週間反復静脈内投与したときの免疫組織化学的検査

(腎臓,肝臓,皮膚,脾臓,乳腺,肺及び関節滑膜) において,アダリムマブは肺,肝及び皮膚の

血管で分布が観察された。また,気管支軟骨や関節滑膜の血管においてもアダリムマブが検出さ

れた。 妊娠 20~97 日のカニクイザルに週 1 回 12 週間反復静脈内投与した生殖発生毒性試験において,

胎児血清及び羊水中にアダリムマブが検出された。母体血清中濃度に対する胎児血清中濃度比は

約 1/4,また,胎児血清中濃度に対する羊水中濃度比は約 1/11 であった。 なお,アルブミンのような血漿たん白への IgG 分子の特異的結合は考えられないことから,ア

ダリムマブの血漿たん白結合試験は実施しなかった。

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

3

(4) 代謝 アダリムマブはヒト IgG であるため,内因性 IgG と同様に,細網内系の細胞に取り込まれた後

エンドソームにより加水分解されると考えられる 1)。すなわち,アダリムマブ由来のアミノ酸や

ペプチドは生体内で貯蔵・再利用されると考えられることから,アダリムマブを用いた代謝に関

する試験は実施しなかった。

(5) 排泄 アダリムマブは,内因性 IgG と同様に,たん白分解過程を経てアミノ酸プールに入ると考えら

れたので,放射性標識体を用いた排泄に関する試験は実施しなかった。高分子量 (148 kDa) であ

るアダリムマブが腎排泄される可能性は低いと考えられ,カニクイザルに週 1 回,39 週間反復静

脈内投与したときにおいても尿中にアダリムマブは検出されなかった。 また,ヒトにおいて IgG が母乳中に分泌されることはよく知られていることから 2),アダリム

マブの乳汁移行性については検討しなかった。

(6) 薬物動態学的薬物相互作用 炎症若しくは感染によって種々のサイトカイン濃度が上昇することで肝チトクローム P450 酵

素活性が抑制されることが示されている 3)。また,培養細胞系においては,各種チトクローム

P450 酵素活性が種々のサイトカイン (TNFαを含む) によって抑制されることも知られている 4)。

しかしながら,アダリムマブと同じく抗 TNF 製剤であるエタネルセプト及びインフリキシマブ

では,臨床で多くの使用経験があるにもかかわらず薬物代謝酵素への影響が生じたとする報告は

なされていない。以上のことから,抗 TNF 治療が肝チトクローム P450 酵素に対して臨床的に問

題となる影響は与えないと考え,薬物代謝酵素に対する影響に関する検討は行わなかった。 (7) その他の薬物動態試験

1) 異なる処方間及びバッチ間における薬物動態の比較 非臨床試験においては,カニクイザルを用い,処方間の比較に関して 1 試験 (処方間比較),バ

ッチ間の比較に関して 2 試験 (バッチ間比較:TK 試験及び PK 試験) を実施した。 処方間の比較としては,サル薬物動態試験においてクエン酸リン酸塩緩衝液製剤とそれにポリ

ソルベート 80 を添加した製剤を調製し,それぞれをカニクイザルに投与した際の血清中濃度で

検討した。カニクイザルに単回皮下投与したときの血清中アダリムマブ濃度の薬物動態パラメー

タには処方間で差が認められず,製剤へのポリソルベート 80 添加は皮下投与時の薬物動態に顕

著な影響を及ぼさないと考えられた。 バッチ間の比較としては,カニクイザルに週 1 回 39 週間静脈内投与した毒性試験において,

製法 a*もしくは製法 b*で製造した原薬を用いた製剤を静脈内投与したときの血清中トラフ値を

検討した。両者の血清中トラフ値に差は認められず,製造工程の変更による顕著なバッチ間の差

はないと考えられた。 同じく,カニクイザルに製法 a*もしくは製法 c*で製造した原薬を用いた製剤を単回静脈内投

与したときの血清中アダリムマブ濃度を測定し,バッチ間の比較を実施した。両者の薬物動態パ

ラメータに差は認められず,製造工程の変更による薬物動態への大きな影響はないものと考えら

* : 新薬承認情報提供時に置換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

4

れた。 以上のことより,サルにおいてポリソルベート 80 添加がアダリムマブの薬物動態に影響を及

ぼさず,製造工程 (製法 a*と製法 b*,製法 a*と製法 c*) の変更も影響を及ぼさないと判断した。

3) 抗アダリムマブ抗体 抗アダリムマブ抗体を測定した 6 試験のうち,マウスでの週 1 回 4 週間静脈内投与試験 (32,

70.9,157.2 mg/kg) 及びカニクイザルでの 4 試験 (投与量 1~32 mg/kg) で抗アダリムマブ抗体が検

出された。検討したほとんどの試験では初回投与後 3~4 週目から抗体が産生された。なお,カ

ニクイザルでの週 1 回 4 週間静脈内投与試験 (32,70.9,157.2 mg/kg) においては抗アダリムマブ

抗体が検出されなかった。この理由としては,血清中にアダリムマブが高濃度で存在していたた

め抗アダリムマブ抗体が検出されなかったと考えられるが,一般に良く知られている大量投与時

の免疫寛容が誘導され,抗体が産生されなかった可能性も考えられた 5)。

2.6.4.2 分析法

(1) アダリムマブ 濃度の測定 動物試料中のアダリムマブ濃度の測定は 2 種類の ELISA 法を用いて実施した。詳細を以下に

示す。 1) ELISA-1 (記載箇所 4.2.2.1-1 項,4.2.2.1-2 項,4.2.2.2-2 項)

ELISA-1 では,プレートに固定した に対するペルオキシダーゼ標識 との拮抗により

試料中のアダリムマブを定量した。マウス及びカニクイザルの血清中のアダリムマブの測定法に

ついて確立した (4.2.2.1-1 項) 後に,カニクイザルの羊水中アダリムマブの測定法を確立した (4.2.2.1-2 項)。

本法での定量限界 (以下「LOQ」) は血清及び羊水中濃度として ~ μg/mL (分析系での濃度

は ~ ng/mL) であった。日内変動における精度はマウス血清で %CV 以下,サル血清で %CV 以下,サル羊水で %CV 以下であった。日間変動における精度はマウス血清で %CV 以下,サル血清で %CV 以下,サル羊水で %CV 以下であった。日内変動にお

ける真度はマウス血清で± %,サル血清で± %,サル羊水で± %であった。日間変

動における真度はマウス血清で± %,サル血清で± %,サル羊水で± %であった。 マウス血清中のアダリムマブは,5 回の繰り返し凍結融解処理 (4.2.2.1-1 項) 及び -80°C で 6 ヵ

月間保存後,更に -20°C で 2 年間保存 (4.2.2.2-2 項) した後も安定であった。サル血清中のアダリ

ムマブは,-80°C で 6 ヵ月間安定であった (4.2.2.1-1 項)。 本定量法はアダリムマブとその F(ab´)2 断片に高い特異性を示し,内因性免疫グロブリンによ

る非特異的な妨害は認められなかった。本法で検出できるアダリムマブは遊離の結合部位を少な

くとも一ヵ所保持するアダリムマブのみであり,二ヵ所結合部位がいずれも TNFα や中和抗体 (サル抗ヒト抗体 [PAHA] あるいはマウス抗ヒト抗体 [MAHA] ) と結合している場合はアダリムマ

ブとして検出することはできないと考えられる。PAHA 及び MAHA は容易にμg/mL の濃度レベ

ルで産生されることから,PAHA 若しくは MAHA が産生され,特にその抗体が中和抗体である

* : 新薬承認情報提供時に置換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

5

場合, 複合体形成により遊離の血清中アダリムマブ濃度が予想よりも低く見積られることが考

えられた。また,PAHA 又は MAHA の抗体価の上昇に伴い遊離の MAHA 及び PAHA が本定量法

の検出用試薬であるペルオキシダーゼ標識 と結合し,血清中アダリムマブ濃度を過大評価

してしまう可能性があった。一方,血清中アダリムマブ濃度 (μg/mL 濃度レベル) に比較して正常

動物の血清中 TNFα濃度 (数 pg/mL 程度) は低いので,TNFαとの複合体形成による測定値の低下

は無視できるものと考えられた。 2) ELISA-2 (記載箇所 4.2.2.1-3 項)

カニクイザルを用いた 2 つの薬物動態試験 (4.2.2.7-3 項及び 4.2.2.2-6 項) では, 法 ELISA (以下「ELISA-2」) を用いて血清中アダリムマブの定量を行った。この定量法では, を でマイクロタイタープレートに固定化し,血清試料中アダリムマブの捕捉

抗原とした。試料中のアダリムマブを捕捉用 に結合させた後プレートを洗浄し,更にペル

オキシダーゼで標識した (検出用抗原) とインキュベーションした。再び洗浄操作を行った

後,テトラメチルベンチヂンを基質としてぺルオキシダーゼ活性を測定した。 分析バリデーションはカニクイザル血清で実施した (4.2.2.1-3 項)。本法での LOQ は血清中濃

度として μg/mL (測定系では ng/mL) で,日内及び日間変動における精度はそれぞれ %CV 以下及び %CV 以下,日内及び日間変動における真度はそれぞれ± %及び± %であった。カニクイザル血清中のアダリムマブは,3 回の凍結融解処理及び-70°C で少なく

とも 2 ヵ月間安定であった。ELISA-1 と ELISA-2 の相関性をカニクイザル生殖発生毒性試験のト

キシコキネティクスで得られた 24 例の血清試料で検討した結果,測定値比率は ± (平均

値±SD) であり,良好な値を示した。

(2) 抗アダリムマブ 抗体 (記載箇所 4.2.2.1-4 項) 抗アダリムマブ抗体は 法 ELISA (以下「ELISA-3」) により測定した。MAHA 及び

PAHA をマイクロタイタープレートに固定化した (捕捉抗原) と結合させた後,ペル

オキシダーゼ標識 (検出抗原) とインキュベーションすることで検出した。検量線作成及び

精度管理には,標準物質として を用いた。測定値は検量線

作成に用いた としての換算値で示した。 測定系における LOQ は ng/mL であり,日内及び日間変動における精度はそれぞれ %CV

以下及び %CV 以下,日内及び日間変動における真度はそれぞれ± %及び± %であっ

た。可溶性 TNFα 受容体やビオチンなどの内因性物質及び動物血清による妨害は認められず,高

い特異性が確認された。種々の試験で得られた投与前血清中抗アダリムマブ抗体濃度は定量限界

以下であった。遊離 TNFαや補体に基づく発色を低下させる分析前の熱処理 (60°C,30 min) 6, 7)

は,測定対象とした全ての試料種類で抗アダリムマブ抗体濃度の測定に影響を及ぼさなかった。 本定量法で検出できる抗アダリムマブ抗体は遊離の抗アダリムマブ抗体のみであり,試料中に

アダリムマブが共存する場合にはその免疫複合体が形成され,捕捉抗原及び検出抗原と架橋する

ことはできないと考えられる。したがって,遊離のアダリムマブが検出された試料については基

本的に血清中抗アダリムマブ抗体の測定は実施しなかった。 アダリムマブ存在下でのマウス血清中 MAHA 定量の際には,ELISA-3 の別法として,

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

6

ELISA 法も用いた。この定量法では, を捕捉抗原とし,検出抗原としては

アルカリ性フォスファターゼで標識した を用いた。本 MAHA 定量法は,遊離

の結合部位が一ヵ所保持されていれば測定可能で,もう一方の結合部位がアダリムマブと結合し

ている場合でも検出抗原として を用いていることから検出が可能である。一方,

ELISA-3 では,捕捉抗原と検出抗原を架橋するために二ヵ所の結合部位を必要とするため,遊離

の MAHA のみしか検出できない。したがって,本定量法は ELISA-3 では測定対象とならない

MAHA も測定対象になるので,ELISA-3 よりも高い値を示すと考えられた。なお,本定量法は,

検出抗体 である が捕捉抗原であるアダリムマブと交差反応性を有することから,

カニクイザル血清中の PAHA の定量に適用することはできなかった。 各試験でアダリムマブと抗アダリムマブ抗体濃度の測定に用いられた ELISA 系は,概要表の

「2.6.5.2 分析方法及びバリデーション試験」に記載した。

2.6.4.3 吸収

2.6.4.3.1 単回投与試験

(1) マウスにおける薬物動態試験 (記載箇所 4.2.2.2-1 項,4.2.2.2-2 項) 雌雄 NMRI 系マウス (各測定ポイント 1 群雌雄各 5 例) にアダリムマブを 32 mg/kg の投与量で

単回静脈内投与したとき (4.2.2.2-1 項) の血清中アダリムマブ濃度を ELISA-1 にて測定した (4.2.2.2-2 項)。マウスにおけるアダリムマブの薬物動態パラメータは,平均血清中濃度を 2-コン

パートメントモデルにあてはめて算出した。 単回静脈内投与後,血清中アダリムマブ濃度は 2 相性を示して減少し,最終相の t1/2 は雄及び

雌でそれぞれ 102 時間 (4.2 日) 及び 193 時間 (8.0 日) であった。CL は雄及び雌でそれぞれ 0.38 及

び 0.54 mL/h/kg,AUC はそれぞれ 83382 及び 59583 μg·h/mL であった注1)。なお,本試験において

は,投与後の時間の経過とともにアダリムマブ濃度の個体差が増大していたことから,MAHAが産生されている可能性が示唆された。 (2) サルにおける薬物動態試験:予備試験 (記載箇所 4.2.2.2-3 項,4.2.2.2-4 項,4.2.2.2-5 項) 雄性カニクイザル (1 群 4 例) にアダリムマブ を 15.5 mg/kg の投与量で月 1 回 5 ヵ月間反復皮下

及び静脈内投与したときの初回投与後の血清中アダリムマブ濃度を ELISA-1 にて測定した (4.2.2.2-3 項,4.2.2.2-4 項,4.2.2.2-5 項)。得られた血清中濃度を 2-コンパートメントモデルにあて

はめて得られた濃度推移を図 2.6.4-1 に,薬物動態パラメータを表 2.6.4-1 に示す (4.2.2.2-4 項)。 静脈内投与したときの血清中アダリムマブ濃度推移は 2 相性を示して消失し,その t1/2 は 214

時間[8.9 日] (中央値, 範囲 213~251 時間),AUC0-∞及び CL は,それぞれ 43292 μg⋅h/mL (中央

値,範囲 33389~49629 μg⋅h/mL) 及び 0.36 mL/h/kg (中央値,範囲 0.31~0.46 mL/h/kg) であった。

一方,皮下投与したときは,tmaxが 36 時間 (中央値,範囲 24~96 時間) で Cmaxが 97 μg/mL (中央

値,範囲 64~99 μg/mL) であった。このときの t1/2は 299 時間[12.5 日] (中央値, 範囲 216~

注 1 ):薬物動態試験の概要表 2.6.5.3 項参照

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

7

血清中

アダリム

マブ濃度

(μg/

mL)

投与後時間 (h)

383 時間) であった。AUC0-∞は 40353 μg⋅h/mL (中央値,範囲 23025~59553 μg⋅h/mL) であり,BAは 88%であった。 なお,抗アダリムマブ抗体産生に関する項注1)で後述するように,多くの動物において初回投与

後 3~4 週目より PAHA の産生が認められ,2 回目投与以降の血清中アダリムマブ濃度はその影

響を受けていると考えられた (4.2.2.2-5 項)。 図 2.6.4-1 雄性カニクイザルに 15.5 mg/kg の投与量で単回皮下及び静脈内投与したときの血清

中アダリムマブ濃度推移 (記載箇所 4.2.2.2-4 項)

各プロットは投与量 10 mg/kg に換算したときの 4 例の中央値を示す。 図中の曲線は 2-コンパートメントモデルに同時あてはめしたときの理論曲線を示す。

注 1 ):本概要文 2.6.4.8 (3) 2) 項参照

×:静脈内投与

☐:皮下投与

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

8

表 2.6.4-1 雄性カニクイザルに 15.5 mg/kg の投与量で単回皮下及び静脈内投与したときのアダ

リムマブの薬物動態パラメータ (記載箇所 4.2.2.2-4 項) 投与 経路

AUC0-∞ (μg·h/mL)

CL (mL/h/kg)

Cmax (μg/mL)

tmax (h)

t1/2 (h)

Vc (mL/kg)

BA (%)

中央値 40353 0.41 a 97 36 299 (12.5 day) NA 88

最大値 59553 0.67 a 99 96 383 NA NA 皮下 投与

最小値 23025 0.26 a 64 24 216 NA NA

中央値 43292 0.36 280 b NA 214 (8.9 day) 55 NA

最大値 49629 0.46 300 b NA 251 59 NA 静脈内

投与 最小値 33389 0.31 263 b NA 213 52 NA

NA:該当せず a:CL/F,b:投与後最初の採血時点 (5 分後) の濃度

(3) サルにおける薬物動態試験 (記載箇所 4.2.2.2-6 項)

雄性カニクイザルにアダリムマブを 3 mg/kg の投与量で単回静脈内投与 (6 例) あるいは 1,3及び 10 mg/kg の投与量で単回皮下投与 (各群 6 例) したときの血清中アダリムマブ濃度を ELISA-2 で測定した。皮下及び静脈内投与後の血清中濃度推移を図 2.6.4-2 に,薬物動態パラメータを表

2.6.4-2 に示す。 アダリムマブを 3 mg/kg の投与量で静脈内投与したときの血清中濃度は 2 相性を示して減少し,

t1/2は 6.9 ± 2.9 日 (平均値 ± SD) であった。また,AUC0-∞及び CL はそれぞれ 9656 ± 1491 μg⋅h/mL及び 0.32 ± 0.05 mL/h/kg (平均値 ± SD) であった。一方,アダリムマブを 1,3 及び 10 mg/kg の投

与量で単回皮下投与したときの tmaxはそれぞれ投与後 76 ± 10,132 ± 39 及び 104 ± 56 時間 (平均

値 ± SD) で Cmaxはそれぞれ 12 ± 1,32 ± 4 及び 105 ± 13 μg/mL (平均値 ± SD)であった。投与後

7 日目までの AUC0-7d は 1,3 及び 10 mg/kg の投与量でそれぞれ 1439 ± 173,4167 ± 581 及び

13699 ± 2021 μg⋅h/mL (平均値 ± SD) であり,Cmax及び AUC ともに投与量に比例して増加した。

デコンボリューション法を用いて求めた BA は 1,3 及び 10 mg/kg の投与量でそれぞれ 98 ± 12,100 ± 9 及び 94 ± 11% (平均値 ± SD) と,良好な値を示した。

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

9

図 2.6.4-2 雄性カニクイザルに単回皮下及び静脈内投与したときの血清中アダリムマブ濃度推移

(記載箇所 4.2.2.2-6 項)

各プロットは 6例の平均値及び SD を示す。

表 2.6.4-2 雄性カニクイザルに単回皮下及び静脈内投与したときのアダリムマブの薬物動態パ

ラメータ (記載箇所 4.2.2.2-6 項)

投与 経路

投与群 (mg/kg)

AUC0-7d (μg·h/mL)

CL (mL/h/kg)

Cmax (μg/mL)

tmax (h)

t1/2 (day)

Vss (mL/kg)

BA (%)

1 1439 ± 173 NC 12 ± 1 76 ± 10 NC NC 98 ± 12

3 4167 ± 581 NC 32 ± 4 132 ± 39 NC NC 100 ± 9 皮下 投与

10 13699 ± 2021 NC 105 ± 13 104 ± 56 NC MC 94 ± 11 静脈内 投与

3 9656 ± 1491 a 0.32 ± 0.05 94 ± 5 b NA 6.9 ± 2.9 41 ± 6 NA

値は 6 例の平均値± SD を示す。 a: AUC0-∞,b:投与後最初の採血時点 (5 分後) の濃度 NA:該当せず,NC:計算せず

2.6.4.3.2 反復投与試験

(1) マウス 4 週間投与毒性試験:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.2-1 項,4.2.3.2-2 項) マウス 4 週間反復投与毒性試験 (4.2.3.2-1 項) において,雌雄 NMRI 系マウスにアダリムマブを

32,70.9 及び 157.2 mg/kg の投与量で週 1 回,4 週間反復静脈内投与したときの血清中アダリムマ

0

20

40

60

80

100

120

0 200 400 600 800

Time [h]

Plas

ma

leve

ls [µ

g/m

L]s.c: 1 mg/kg BW

s.c: 3 mg/kg BW

s.c: 10 mg/kg BW

iv: 3 mg/kg BW

血清

中アダリム

マブ

濃度

(μg/

mL)

投与後時間 (h)

◆:皮下投与 1 mg/kg

■:皮下投与 3 mg/kg

▲:皮下投与 10 mg/kg

□:静脈内投与 3 mg/kg

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

10

ブ濃度を ELISA-1 にて測定した (4.2.3.2-2 項)。採血は 1,8,15 及び 29 日目の投与前及び投与後

5 分並びに 22 日目投与後 5 分,1,4,24,96 及び 168 時間に行った。22 日目投与後の薬物動態

パラメータを表 2.6.4-3 に示す。t1/2は雄で 97~112 時間 (4.0~4.7 日),雌で 134 ~259 時間 (5.6~10.8 日) であり,雌に比べ雄の方が短かった。AUC0-7dの増加は用量の増加をやや下回るものの

用量に応じて増加した。雌の AUC0-7d は雄よりやや大きな値を示し,性差が認められた。また,

C168h 値 (トラフ値) は初回投与後からほぼ一定であり,投与回数に伴う血清中濃度の上昇は認め

られなかった。 表 2.6.4-3 雌雄マウスに反復静脈内投与 (週 1 回 4 週間) したときのアダリムマブの薬物動態パ

ラメータ (記載箇所 4.2.3.2-2 項)

性 投与量 (mg/kg)

AUC0-7d (μg·h/mL) AUC0-7d/投与量比

Cmax a (μg/mL) Cmax /投与量比 t1/2

b (h)

32 66782 2087 1193 37.3 97 70.9 104612 1475 1528 21.6 99 雄 157.2 190342 1211 4231 26.9 112

32 81598 2550 794 24.8 259 70.9 120693 1702 2069 29.2 169 雌 157.2 240366 1529 5028 32.0 134

値は 5 例の平均値を示す。 a:投与後最初の採血時点 (5 分後) の平均濃度 b:値は 22 日目投与後の平均血清中濃度から算出した。

(2) サル 4 週間投与毒性試験:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.2-7 項,4.2.3.2-8 項) 雌雄カニクイザルに 32,70.9 及び 157.2 mg/kg の投与量でアダリムマブを週 1 回, 4 週間反復

静脈内投与した (4.2.3.2-7 項) ときの,2 回目及び 3 回目投与の投与前及び投与後 5 分並びに初回

及び最終 (4 回目) 投与後に経時的に採血を行い,血清中アダリムマブ濃度を ELISA-1 で測定した (4.2.3.2-8 項)。得られた血清中濃度を 2-コンパートメントモデルにあてはめて解析し,得られた

薬物動態パラメータを表 2.6.4-4 に示す。 静脈内投与後の血清中アダリムマブ濃度は 2 相性を示して減少し,このときの t1/2は 13.5 ± 4.6

日 (雌雄平均 ± SD) であった。32,70.9 及び 157.2 mg/kg 投与群の最終投与後の AUC0-∞ (雌雄平均 ± SD) は,それぞれ 201317 ± 88835, 359667 ± 127283 及び 808900 ± 200581 μg·h/mL であり,投

与量にほぼ比例して増大した。また,CL に投与量及び性差による違いは認められず,全投与群

での雌雄平均値は 0.20 ± 0.07 mL/h/kg であった。定常状態での分布容積 (平均 Vss = 82.5 mL/kg) 及び中央コンパートメントの分布容積 (Vc = 39.7 ± 7.9 mL/kg;ほぼ血清容積) の結果から,アダリ

ムマブは血清容積とほぼ等しい大きさの末梢コンパートメントを持つと考えられた。

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

11

表 2.6.4-4 雌雄カニクイザルに反復静脈内投与 (週 1 回 4 週間) したときのアダリムマブの薬物

動態パラメータ (モデル解析) (記載箇所 4.2.3.2-8 項)

投与量 (mg/kg)

性/ 例数

AUC0-∞ (μg·h/mL)

Vc (mL/kg)

Vss (mL/kg)

CL (mL/h/kg)

t1/2 (h)

MRT (h)

雄/3 207667 ± 49217 NC NC 0.16 ± 0.03 NC NC

雌/3 194967 ± 131095 NC NC 0.22 ± 0.14 NC NC 32

雌雄/6 201317 ± 88835 NC NC NC NC NC

雄/3 319667 ± 110645 NC NC 0.24 ± 0.07 NC NC

雌/3 399667 ± 153168 NC NC 0.19 ± 0.07 NC NC 70.9

雌雄/6 359667 ± 127283 NC NC NC NC NC

雄/5 904600 ± 253871 NC NC 0.19 ± 0.06 NC NC

雌/5 713200 ± 56362 NC NC 0.22 ± 0.02 NC NC 157.2

雌雄/10 808900 ± 200581 NC NC NC NC NC

雄/11 NA 38.1 ± 8.1 83.8 ± 20.9 0.193 ± 0.06 337 ± 103 458 ± 139

雌/11 NA 41.2 ± 7.9 81.1 ± 12.4 0.215 ± 0.07 311 ± 122 424 ± 172全投与群

雌雄/22 NA 39.7 ± 7.9 82.5 ± 16.8 a 0.20 ± 0.07 13.5 ± 4.6 (day) NC

値は平均値 ± SD を示す。 NA:該当せず,NC:計算せず a:雌雄の値から算出

(3) サル 39 週間投与毒性試験:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.2-10 項,4.2.3.2-11 項)

雌雄カニクイザルに 32,82.9 及び 214.8 mg/kg の投与量で週 1 回,39 週間反復静脈内投与した (4.2.3.2-10 項) ときの,各回投与前並びに初回及び最終投与後に経時的に採血を行い,血清中ア

ダリムマブ濃度を ELISA-1 で測定した (4.2.3.2-11 項)。最終投与後の血清中濃度から得られた薬

物動態パラメータ及び初回と最終投与後の血清中濃度比を表 2.6.4-5 に示す。 各回投与 168 時間後のトラフ値は初回投与後約 10 週目で定常状態に到達した。定常状態にお

ける Cmax (投与後 5 分) は,32,82.9 及び 214.8 mg/kg 投与群でそれぞれ 2731 ± 467,6527 ± 2450及び 13563 ± 1740 µg/mL (平均 ± SD),AUC0-tはそれぞれ 304774 ± 74634,617368 ± 233959 及び

1299965 ± 228114 µg·h/mL (平均 ± SD) と投与量にほぼ比例して増加した。また,CL に性差や投

与量による違いはなく,それぞれ 0.11 ± 0.04,0.16 ± 0.07 及び 0.17 ± 0.03 mL/h/kg (平均 ± SD) であった。最高用量の回復群 (雌雄各 2 例) で最終投与後 20 週までの測定値から得られた t1/2は雄で

21.1 及び 14.5 日,雌では 13.6 及び 15.7 日 (全平均 ± SD :16.2 ± 3.4 日) であった。最終回投与後

の Cmax及びトラフ値は初回投与後の 2.2~3.5 倍に上昇しており,消失半減期 (2 週間) と投与間隔 (1 週間) から計算される 3.4 倍とほぼ一致していた。

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

12

表 2.6.4-5 雌雄カニクイザルに反復静脈内投与 (週 1 回 39 週間) したときのアダリムマブの薬物

動態パラメータ (記載箇所 4.2.3.2-11 項)

最終投与後 (40 回) 血清中濃度比 (最終/初回) 投与量

(mg/kg) 性/例数 Cmax a (μg/mL)

AUC0-t (μg·h/mL)

CL (mL/h/kg) Cmax トラフ値

32 雌/3,雄/3 2731 ± 467 304774 ± 74634 0.11 ± 0.04 2.7 ± 0.5 3.5 ± 0.7

82.9 雌/3,雄/3 6527 ± 2450 617368 ± 233959 0.16 ± 0.07 2.2 ± 0.6 3.4 ± 1.8

214.8 雌/5,雄/5 13563 ± 1740 1299965 ± 228114 0.17 ± 0.03 2.2 ± 0.4 2.3 ± 0.5

値は平均値 ± SD を示す。 a:最終投与後最初の採血時点 (5 分後) の濃度

(4) サル生殖発生毒性試験:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.5.2-1 項,4.2.3.5.2-2 項)

妊娠雌カニクイザルに妊娠 20~97 日の期間にわたってアダリムマブを週 1 回,12 週間反復静

脈内投与 (30 及び 100 mg/kg) した生殖発生毒性試験 (4.2.3.5.2-1 項) で血清中アダリムマブ濃度を

ELISA-1 で測定した (4.2.3.5.2-2 項)。TK サテライト群 (100 mg/kg) では,各回投与前及び投与 3分並びに初回及び最終 (12 回) 投与後に経時的に採血を行い,初回及び最終投与後の血清中濃度

から得られた薬物動態学的パラメータを表 2.6.4-6 に示す。 Cmax (投与 3 分後) 及びトラフ値 (投与前濃度) は t1/2 (7.1~7.5 日) を反映して投与回数に応じて

増加し,最終投与後では初回投与後に比べそれぞれ 2.4 及び 2.7 倍に増加した。 妊娠サルでの定常状態における CL (0.15 mL/h/kg,中央値) は,非妊娠サルにおける値 (投与量

32,82.9 及び 214.8 mg/kg で雌雄平均値はそれぞれ 0.11,0.16 及び 0.17 mL/h/kg,性差なし) と近

似していたが,t1/2 (7.2~8.4 日) は非妊娠サル (投与量 214.8 mg/kg で 13.6 及び 15.7 日) 注1)より短

かった。半減期の違いは,妊娠動物で胎児への薬物の移行が低いことから分布容積が低下したた

めと考えられる。

注 1 ):本概要文 2.6.4.3.2 (3) 項参照

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

13

表 2.6.4-6 妊娠カニクイザルにアダリムマブを反復静脈内投与 (週 1 回 12 週間,100 mg/kg) したときの薬物動態パラメータ (記載箇所 4.2.3.5.2-1 項)

測定時期 Cmax a

(μg/mL) トラフ値 (μg/mL)

AUC (μg·h/mL)

t1/2 (day)

CL (mL/h/kg)

中央値 3705 1095 566924 7.1 0.18

最大値 4363 1142 801026 16.5 0.19 初回投与時

最小値 2320 1045 520863 6.0 0.12

中央値 8745 2885 683022 7.5 0.15

最大値 11492 4523 885351 8.4 0.17 最終投与時

最小値 7327 2351 588962 7.2 0.11

中央値 2.4 2.7 NC NC NC

最大値 5.0 4.0 NC NC NC 濃度比

(最終/初回) 最小値 1.7 2.1 NC NC NC

n = 4 a:投与後最初の採血時点 (3 分後) の濃度 NC:計算せず

2.6.4.4 分布

アダリムマブはヒト IgG であることから,生体内では内因性の IgG と同様な組織分布を示すと

考えられる。また,アダリムマブ は内因性の免疫グロブリンと同様に加水分解され,その断片

は内因性アミノ酸プールに入ると考えられるので,標識アダリムマブに由来するペプチド断片や

アミノ酸の放射能を生体内アミノ酸に取り込まれた放射能と識別することは困難と思われる。一

方,アダリムマブの臨床における適応症は関節リウマチであり,その標的である TNFαは疾患部

位の関節で局所的に過剰発現している。しかしながら,健常動物での組織分布試験ではアダリム

マブと組織あるいは器官との結合が示されるのみで,疾患を反映する組織分布に関する情報は得

られないと考えられる。また,アダリムマブの毒性試験で認められた主な所見は,アダリムマブ

がバイオ医薬品であるという特性及び薬理学的作用に基づくものと考えられ,アダリムマブの特

異的な分布を示唆する所見は無いと思われた。 以上の理由から,通常低分子有機化合物で実施される放射性標識体を用いた組織分布試験を実

施しなかった。なお,非標識体を用いた毒性試験で,分布に関連する情報が得られていることか

ら,その結果を以下に示す。 (1) 分布容積 (記載箇所 4.2.3.2-7 項,4.2.3.2-8 項)

カニクイザルに 32,70.9 及び 157.2 mg/kg の投与量でアダリムマブを週 1 回,4 週間反復静脈

内投与した試験 (4.2.3.2-7 項) でアダリムマブの血清中濃度は 2 相性を示して消失した。アダリム

マブの血清中濃度推移を 2-コンパートメントモデルで解析した結果,定常状態での分布容積 (平均 Vss = 82.5 mL/kg) 及び中央コンパートメントの分布容積 (Vc = 39.7 ± 7.9 mL/kg) から,アダリ

ムマブは血清容積及びそれとほぼ等しい大きさの末梢コンパートメントを持つと考えられた

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

14

(4.2.3.2-8 項)。また,末梢コンパートメントは約 40 mL/kg と計算され,細胞間液容積よりも小さ

いため,アダリムマブの血管外への分布は限定的なもとのと考えられた。 (2) 組織への分布 (記載箇所 4.2.3.2-10 項,4.2.3.2-12 項) カニクイザルに 32, 82.9 及び 214.8 mg/kg の投与量でアダリムマブを週 1 回,39 週間反復静

脈内投与した毒性試験 (4.2.3.2-10 項) において,最終投与後1週間目に腎,肝,脾臓,皮膚,乳

腺,肺及び関節滑膜を採取し,その免疫組織化学的検査 (4.2.3.2-12 項) を行った。214.8 mg/kg の

投与群で肺,肝及び皮膚の血管にアダリムマブが検出された。また,32 mg/kg 以上の投与群では

気管支軟骨に,214.8 mg/kg 投与群及び 82.9 mg/kg 投与群の 1 例では滑膜の血管にアダリムマブ

が検出された。 休薬期間後に採取した組織においてはいずれの染色像も消失していたことから,このようなア

ダリムマブの分布は可逆的であり,かつ残留性を示すものではないと考えられた。 関節滑膜の血管あるいは気管支軟骨に染色像が認められ,それらの組織に対して親和性が確認

されたが,その理由として,アダリムマブがこれらの組織に発現している新生児 Fc 受容体 (FcRn) を介して結合をしていると推測された。FcRn は母体から子への IgG の移行や血清中 IgG濃度の調節に重要な役割を果たすことが知られており,血管内皮細胞において FcRn が発現して

いることは,FcRn が IgG の経細胞輸送の役割を果たしていることを示唆している 1)。 上述の免

疫組織化学的検査においては,アダリブマブの分布が関節滑膜や他の組織の血管において認めら

れており,このことは FcRn が血管内皮細胞で発現しているとの報告と一致している 1,8)。 また,

気管支軟骨に対する親和性についても,哺乳動物の肺で FcRn の発現が報告されていることから,

同様な理由が推測された 9)。 (3) 胎盤通過性:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.5.2-1 項,4.2.3.5.2-2 項) 妊娠雌カニクイザルに妊娠 20~97 日の期間にわたって週 1 回,12 週間アダリムマブを反復静

脈内投与した生殖発生毒性試験 (4.2.3.5.2-1 項) の TK サテライト群 (100 mg/kg) で,最終回投与 (12 回目投与) 後 7 日目に帝王切開を行い,母体血清中濃度 (帝王切開前後に測定),胎児血清中濃

度及び羊水中濃度を ELISA-1 で測定した (4.2.3.5.2-2 項)。胎児血清中濃度は 742.1 μg/mL で,母

体血清中濃度 (2888.2 μg/mL) に対して約 1/4 の値であった。また,羊水中濃度は胎児血清中濃度

より低く,胎児血清中濃度の約 1/11 であった (表 2.6.4-7)。

表 2.6.4-7 最終投与 (12 回目投与) 後の母体血清,胎児血清及び羊水中アダリムマブ 濃度 (記載

箇所 4.2.3.5.2-1 項) アダリムマブ 濃度 (μg/mL) アダリムマブ 濃度比 投与量

(mg/kg) 母体血清 a 胎児血清 b 羊水 a 母体/胎児 胎児/羊水

100 (TK 群) 2888.2 742.1 70.75 3.9 11.3

値は中央値を示す。a: n = 4,b: n = 3 帝王切開は 104 日目 (最終回投与後 7 日目) に行われた。 母体血清濃度は帝王切開前後の平均値を採用。

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

15

(4) 血漿たん白結合 低分子有機化合物においてたん白結合率が高い場合,たん白組成の変動や結合性の飽和などに

より血漿中非結合型薬物濃度が上昇し,薬物の分布や代謝が変わる場合も考えられる。また,他

の薬物との併用の際,血漿たん白における競合により,自身あるいは併用薬の血漿中非結合型薬

物濃度が増大し,副作用の増強などの危険性も考えられる。しかしながら,アダリムマブはヒト

IgG であり,アルブミンなどの血漿たん白と IgG 分子の特異的結合は考えられないことから 10,11),

アダリムマブの血漿たん白結合試験は実施しなかった。なお,アダリムマブの分子量 (148 kDa) が大きいため,平衡透析法のような通常のたん白結合試験は技術的にも実施不可能である。また,

アルブミン等の血漿たん白とアダリムマブが非特異的に結合することもほとんどないと考えらる。 なお,日本人 RA 患者にアダリムマブを 40 mg 隔週皮下投与したときの血清中アダリムマブ濃

度は 3.1 ± 4.0 μg/mL (24 週,平均値 ± 標準偏差) であった。この濃度をヒト血清中 IgG 濃度 (13.5 mg/mL) 12) と比較すると,アダリムマブは循環血中に存在する IgG の約 0.02%を占めるのみ

と算出された。すなわち,仮に内因性の IgG が血漿たん白と非特異的に結合するとしても,複合

体形成に関わるアダリムマブの割合はきわめて少ないと計算され,アダリムマブの血漿たん白に

対する非特異的な結合が有効性及び安全性に及ぼす影響はほとんどないと考えられた。

2.6.4.5 代謝

アダリムマブは,他のヒト抗体と同様に,細網内系の細胞に取り込まれた後,リソソームにお

いて加水分解されると考えられる 1)。すなわち,アダリムマブ由来のアミノ酸若しくはペプチド

は生体内で貯蔵・再利用されると考えられることから,アダリムマブを用いた通常の代謝に関す

る試験は実施しなかったものの,その代謝過程は以下のように想定している。 アダリムマブはヒト,マウス及びサルのいずれにおいても以下の 3 つの律速となるクリアラン

ス機構,1) 遊離型の抗体,2) TNFα と結合した抗体,3) 抗アダリムマブ抗体 (ヒト抗ヒト抗体と

しては HAHA,マウス抗ヒト抗体としては MAHA,サル抗ヒト抗体としては PAHA) と結合した

抗体,として消失すると考えられる。このうち,最も遅いクリアランスを示すのは,遊離型のア

ダリムマブと考えられる。細胞における抗体の取り込みは,細胞表面の糖たん白である Fc 受容

体ファミリーを介しており,抗体の消失において最も重要な Fc 受容体は新生児 Fc 受容体 (以下

「FcRn」) である 13)。FcRn はサルベージ受容体として働き,IgG のリソソームにおける分解を防

いでいる。すなわち,IgG は非特異的な食作用により血管内皮細胞に取り込まれた後,酸性条件

下のエンドソームに入り,取り込まれた IgG が FcRn と結合する場合は分解を免れ,そうでない

場合は分解される。ここで FcRn はトランスサイトーシスにおける運搬及び調節の 2 つの機能を

有していると考えられる。 ヒト FcRn 発現細胞を用いた in vitro 試験より注1),アダリムマブが FcRn との結合性を有してい

ることからも,上記の代謝過程が支持されていると考えられた。なお,アダリムマブのヒトにお

ける消失半減期 (11.5~17.4 日) は内因性のヒト IgG (10~23 日 14)) と同程度であった。また,サル

注 1 ):臨床薬理の概要 2.7.2.2.1 項参照

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

16

及びマウスの FcRn はいずれもヒト IgG と結合することから,アダリムマブにおける上記の 3 つ

のクリアランス機構はサル及びマウスにおいてもヒトと同様であると考えられた 15,16)。

2.6.4.6 排泄

アダリムマブはヒト抗体と同様にたん白分解過程を経てアミノ酸プールに入ると考えられたの

で,放射性標識体を用いた排泄試験は実施しなかった。カニクイザルにおける週 1 回,39 週間反

復静脈内投与毒性試験の 214.8 mg/kg の投与群で尿中にアダリムマブは検出されていないため,

高分子量 (148 kDa) であるアダリムマブが腎排泄される可能性は低いと考えられた注1)。 なお,アダリムマブの乳汁移行性については,ヒト IgG が母乳中に分泌されることはよく知ら

れているので 2),検討しなかった。

2.6.4.7 薬物動態学的薬物相互作用

炎症若しくは感染によって種々のサイトカイン濃度が上昇することで肝チトクローム P450 酵

素の発現が抑制される 3)。また,培養細胞系においては,各種チトクローム P450 酵素の発現量

がさまざまなサイトカイン (TNFα を含む) によって抑制されることが示されている 4)。しかしな

がら,抗 TNF 製剤であるエタネルセプト及びインフリキシマブでは,臨床で多くの使用経験が

あるにもかかわらず,薬物代謝酵素への影響が生じたとする報告はなされていない。 以上のことから,抗 TNF 治療がチトクローム P450 酵素に対して臨床的に問題となる影響は与

えないと考え,薬物代謝酵素に対する影響は検討しなかった。

2.6.4.8 その他の薬物動態試験

(1) サル薬物動態試験における異なる処方間の比較 (記載箇所 4.2.2.7-1 項,4.2.2.7-2 項) ポリソルベート 80 を製剤に添加することで,高濃度アダリムマブ処方での長期安定性が改善

し,皮下投与時の投与液量の低減が期待された。そこで,製剤開発と平行して 0.1%ポリソルベ

ート 80 の添加によるアダリムマブの薬物動態への影響を検討した。従来の製剤 (クエン酸・リン

酸塩緩衝液) とポリソルベート 80 を添加した製剤を用い,雌性カニクイザル (1 群 6 例) に1 mg/kg を単回皮下投与し (4.2.2.7-1 項),血清中アダリムマブ濃度を ELISA-1 で測定した (4.2.2.7-2 項)。このときの薬物動態パラメータを表 2.6.4-8 に示す。

Cmax は両処方で共に 7.9 μg/mL であった。tmax は,ポリソルベート 80 添加処方で 88 時間,非

添加処方で 112 時間であったが,統計学的に有意ではなかった。AUC についてはポリソルベー

ト 80 添加処方と非添加処方で差はなかった (それぞれ 2201 μg⋅h/mL 及び 2254 μg⋅h/mL)。以上の

結果から,アダリムマブ製剤へのポリソルベート 80 の添加による皮下投与時の薬物動態への影

響はないと考えられた。

注 1 ):記載箇所 4.2.3.2-11 項,4.2.3.5.2-1 項

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

17

表 2.6.4-8 雌性カニクイザルにポリソルベート 80 添加若しくは非添加のアダリムマブ (1 mg/kg) を皮下投与したときの薬物動態パラメータ (記載箇所 4.2.2.7-2 項)

処方 tmax (h)

Cmax (μg/mL)

AUC (μg·h/mL)

CL/F (mL/h/kg)

アダリムマブ a 112 7.9 2254.01 0.46

アダリムマブ+ポリソルベート 80 b 88 7.9 2200.96 0.48 値は 6 例の平均値を示す。 a:従来の製剤 (クエン酸・リン酸塩緩衝液) b:従来の製剤 にポリソルベート 80 を添加した製剤

(2) バッチ間の比較

1) サル 39 週間投与毒性試験におけるバッチ間の比較:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.2-10 項,

4.2.3.2-11 項) 雌雄カニクイザルにおける 32,82.9 及び 214.8 mg/kg の週 1 回,39 週間反復静脈内投与毒性試

験 (4.2.3.2-10 項) では,製造法が異なる 5 つのバッチのアダリムマブが投与された。すなわち, 製法 a*で製造されたバッチ番号 K* (1~13 週),L* (14~22 週) 及び M* (23~30 週) 並びに製法 b* で製造された N* (31~35 週) 及び O* (36~39 週) のアダリムマブが用いられた。各回投与前に採

血を行い,血清中アダリムマブ濃度 (トラフ値) を ELISA-1 で測定した (4.2.3.2-11 項)。投与量ご

とに 30~39 週に得られたトラフ値の総平均を 100%として,用量補正したトラフ値 (%) の個体

値を算出し,その分布を図 2.6.4-3 に示した。週 1 回の反復静脈内投与試験で得られた定常状態 (投与開始後 8~10 週以降) における血清中アダリムマブのトラフ値に製造工程の違いによる変動

はなく,製造工程の違いによる顕著なバッチ間の差はないと考えられた。

* : 新薬承認情報提供時に置換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

18

図 2.6.4-3 サル 39 週間投与毒性試験 (TK 試験) における用量補正後の血清トラフ値 (バッチ間

比較) (記載箇所 4.2.3.2-11 項) グラフでは投与量毎に 30~39 週の間に得られたトラフ値の総平均を 100%として表している。各投与量における

トラフ値の総平均は 32,82.9 及び 214.8 mg/kg 投与群でそれぞれ 1018,2423 及び 7059 μg/mL である。

2) サル薬物動態試験におけるバッチ間の比較 (記載箇所 4.2.2.7-3 項)

アダリムマブ の開発途中で抗体産生能を向上させるために産生細胞株を含む製造工程の変更

を行った。これらの変更による薬物動態の変化について,製法 c*及び製法 a* で製造されたバッ

チを 32 mg/kg の投与量で雄性カニクイザルに単回静脈内投与し,投与後の血清中濃度をを

ELISA-2 で測定した。この時の薬物動態パラメータを表 2.6.4-9 に示す。AUC0-∞,Vss,t1/2,

AUC0-7d及び Cmax (投与後 5 分) のいずれの薬物動態学パラメータも両バッチ間で近似し,分散分

析による統計学的有意差も認められなかった。このときの AUC0-∞ (製法 c*:161136 μg⋅h/mL, 製法 a*:151926 μg⋅h/mL) の幾何平均値比は 94.3%,その 90%信頼区間は 69.1~128.7%であった。

よって,製造工程の変更による血清中濃度推移への大きな影響はないものと考えられた。

32 mg/kg 投与群,n = 6 82.9 mg/kg 投与群,n = 6

214.8 mg/kg 投与群,n = 10

投与に使用したバッチ番号

K*: 1~13 週 L*:14~22 週 M*:23~30 週 N*:31~35 週 O*:36~39 週

定常

状態のトラフ

濃度に

対するパーセント (%

)

定常状

態の

トラ

フ濃

度に

する

パー

セン

ト (%

)

定常状

態の

トラ

フ濃

度に

する

パー

セン

ト (%

)

試験期間 (week)

試験期間 (week) 試験期間 (week)

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

19

表 2.6.4-9 雄カニクイザルに製法 c*若しくは製法 a* により製造されたアダ

リムマブ 32 mg/kg を単回静脈内投与したときの薬物動態パラメータ (記載箇所 4.2.2.7-3 項)

製造方法 AUC0-∞ (μg·h/mL)

Vss (mL/kg)

CL (mL/h/kg)

t1/2 (day)

MRT (h)

製法 c* 168100 ± 53354 (161136) a 64 ± 12 0.21 ± 0.07 9.3 ± 5.9 352 ± 164

製法 a* 156380 ± 38635 (151926) a 54 ± 11 0.22 ± 0.06 6.5 ± 3.6 275 ± 108

値は 6 例の平均値± SD を示す。 a:幾何平均値

(3) 抗アダリムマブ 抗体

マウス及びサルにおいて抗アダリムマブ抗体を測定した 6 試験のうち,5 試験 (4.2.3.2-1 項,

4.2.2.2-3 項,4.2.2.2-6 項,4.2.2.7-1 項, 4.2.2.7-3 項) で抗体が検出された。なお,マウスへの

32 mg/kg の単回静脈内投与試験 (4.2.2.2-2 項) では,投与後の時間の経過とともにアダリムマブ濃

度の個体差が増大していたことから,抗アダリムマブ抗体 (MAHA) が産生し,アダリムマブと

複合体を形成している可能性が示唆された。

1) マウス 4 週間投与毒性試験:TK 試験 (記載箇所 4.2.3.2-1 項,4.2.3.2-2 項) NMRI 系マウスにおける 32,70.9 及び 157.2 mg/kg の週 1 回 4 週間反復静脈内投与試験

(4.2.3.2-1 項) で,各回投与前に採血を行い,血清中抗アダリムマブ抗体 (MAHA) を ELISA-3 で測

定した (4.2.3.2-2 項)。MAHA は投与後 1~3 週目より全てのアダリムマブ投与群で検出され,投

与回数と共に濃度が増加した (表 2.6.4-10,図 2.6.4-4)。アダリムマブが比較的高濃度に存在する

血清試料でも, 法に代わり 法を利用することで MAHA の測定が可能であっ

た。

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

20

表 2.6.4-10 マウスにアダリムマブを週 1 回 4 週間反復静脈内投与したときの

MAHA 産生 (記載箇所 4.2.3.2-2 項)

血清中 MAHA 抗体価 (中央値,ng/mL) 投与量 (mg/kg)

試験期間 (投与日) 雄 a 雌 a 雌雄平均 b

1 0 0 0 8 0 0 0 0

22 0 0 0 1 0 0 0 8 156 100 128

15 713 55 384 22 1005 579 792

32

29 2116 1542 1829 1 0 0 0 8 0 192 96

15 0 105 53 22 288 351 320

70.9

29 414 1598 1006 1 0 0 0 8 0 0 0

15 0 0 0 22 181 63 122

157.2

29 5751 1647 3699 a:値は雌雄各 5 例の投与前値の中央値を示す。 b:値は雌及び雄の中央値の平均値を示す。

各プロットは雌及び雄の中央値の平均値 (投与前値) を示す。

図 2.6.4-4 マウスにアダリムマブを週 1 回 4 週間反復静脈内投与したときの MAHA 産生推移

(記載箇所 4.2.3.2-2)

血清中

MAHA

抗体価

(ng/

mL)

試験期間 (day)

■ ■ ■ ■

● ▲

▲▲▲

● ●

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

21

2) サルにおける薬物動態試験:予備試験 (記載箇所 4.2.2.2-3 項,4.2.2.2-5 項) 雄性カニクイザル (1 群 4 例) に 15.5 mg/kg の皮下及び静脈内投与を月 1 回 5 ヵ月間反復投与し

た予備試験 (計 6 回投与) (4.2.2.2-3 項) において,血清中抗アダリムマブ抗体 (PAHA) を ELISA-3で測定した (4.2.2.2-5 項)。本試験での血清中アダリムマブの測定は ELISA-1 により行った。また, を用いた抗 TNFα生物活性についても測定した。

PAHA は投与開始後 4 週間前後から皮下投与群で 4 例中 3 例に(図 2.6.4-5),静脈内投与群で 4例中 2 例に検出された (図 2.6.4-6)。ELISA によるアダリムマブ濃度と生物活性は,動物番号 No 1002 の 1 例を除き,良く一致していた。動物番号 No 1002 の例では,ELISA-3 で定量対象となら

ないものの薬理活性を保持しているアダリムマブと PAHA の免疫複合体が生成している可能性が

考えられた。

図 2.6.4-5 サルに月 1 回 5 ヵ月間反復投与したときの血清中アダリムマブ 濃度及び PAHA 抗体

価 (皮下投与) (記載箇所 4.2.2.2-5 項) 矢印の番号は投与回数を示す。

a b

c d

濃度及

び抗

体価

(μg/

mL)

度及

び抗

体価

(μg/

mL)

濃度及

び抗

体価

(μg/

mL)

度及

び抗

体価

(μg/

mL)

投与期間 (day)

投与期間 (day)投与期間 (day)

投与期間 (day)

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

動物番号 2001

動物番号 2002

動物番号 2003 動物番号 2004

投与期間 (day) 投与期間 (day)

投与期間 (day) 投与期間 (day)

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

22

図 2.6.4-6 サルに月 1 回 5 ヵ月間反復投与したときの血清中アダリムマブ 濃度及び PAHA 抗体

価 (静脈内投与) (記載箇所 4.2.2.2-5 項) 矢印の番号は投与回数を示す。

3) サルにおける薬物動態試験 (記載箇所 4.2.2.2-6 項)

雄性カニクイザル (各群 6 例) に 1,3 及び 10 mg/kg の投与量で単回皮下投与,及び 3 mg/kg の

投与量で単回静脈内投与した試験において PAHA を測定した。アダリムマブと免疫複合体を形成

した PAHA は検出できないことから,血清中アダリムマブ濃度が 2 μg/mL 以下の試料について

PAHA の測定を実施した。PAHA は,いずれの投与動物においても投与後 14 日目の血清中には

検出されなかったが,21 日目には,24 例中 9 例に,49 及び 56 日目では全例で検出された。検出

された PAHA 濃度は 5.5~10619 ng/mL であった。 4) サル 4 週間投与毒性試験 (記載箇所 4.2.3.2-7 項,4.2.3.2-8 項)

雌雄カニクイザルに 32,70.9 及び 157.2mg/kg の投与量で週 1 回 4 週間反復静脈内投与した毒

性試験における TK 試験において,最終投与前の血清中に PAHA が検出されなかった。この理由

としては,血清中にアダリムマブが高濃度で存在していたため産生された抗アダリムマブ抗体が

アダリムマブと結合し検出されなかったと考えられるが,一般に良く知られている大量免疫寛容

が誘導され,抗体が産生されなかった可能性も考えられた 5)。

e f

g h

濃度及

び抗

体価

(μg/

mL)

濃度及び

抗体価

g/m

L)

濃度及

び抗

体価

(μg/

mL)

濃度

及び

抗体価

g/m

L)

投与期間 (day)

投与期間 (day)投与期間 (day)

投与期間 (day)

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

■:アダリムマブ濃度 (ELISA) ●:生物活性 ▲:PAHA 抗体価

動物番号 1001 動物番号 1002

動物番号 1003 動物番号 1004

投与期間 (day) 投与期間 (day)

投与期間 (day) 投与期間 (day)

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

23

5) サル薬物動態試験における異なる処方間の比較 (記載箇所 4.2.2.7-1 項,4.2.2.7-2 項)

雌性カニクイザルにポリソルベート 80 添加処方及び非添加処方を 1 mg/kg の投与量で単回皮

下投与した試験 (4.2.2.7-1 項) では,ポリソルベート 80 の添加の有無に関わらず,投与後約 2 週

目から一部の動物で PAHA が検出され,4 週目以降では全例で検出された (4.2.2.7-2 項)。したが

って,製剤へのポリソルベート 80 の添加はアダリムマブの免疫原性に影響しないと考えられた。

6) サル薬物動態試験におけるバッチ間の比較 (記載箇所 4.2.2.7-3 項) 雄性カニクイザルに製法 a* 及び製法 c* により製造されたアダリムマブをそれぞれ 32 mg/kg

の投与量で単回静脈内投与した試験において PAHA の測定を行った。PAHA は 12 例中 2 例 (各群

1 例) で検出され,PAHA の産生に製造工程及び細胞株の違いによる影響は認められなかった。

2.6.4.9 考察及び結論

薬物動態を評価した際の全ての薬物濃度は,遊離の薬物のみが検出される 2 種の ELISA 法によ

り測定した。いずれの測定法もプレートに固定化した に結合することが必要であり,こ

のことは薬理活性を有している分子のみが検出されることを示している。更に,検出用 _ ___と置換する必要があること,若しくは,第 2 の に結合する必要があることから非結

合性の抗体断片は定量法に影響しないと考えられた。また,中和活性を持つアンチイディオタイ

プの抗アダリムマブ抗体と免疫複合体を形成するアダリムマブは TNFα と結合することが出来な

いため,ELISA 法の測定対象とはならないと考えられた。 遊離の抗アダリムマブ抗体は高感度 ELISA 法,すなわち,プレートに固定化した捕捉用

と標識した検出用 を用いて測定した。なお,アダリムマブ測定用の

ELISA 法と同様に,本測定系ではアダリムマブと抗アダリムマブ抗体との複合体は測定対象とは

ならないと考えられた。ただし, を用いた 法による MAHA の測定に

おいては,遊離の MAHA に加えてアダリムマブと免疫複合体を形成した MAHA の一部も測定対

象になっていたと考えられた。PAHA 測定においては,検出用の がアダリムマブ

と交差反応性を示すため,この手法は用いることができなかった。 主な毒性試験は静脈内投与で実施されたが,臨床適応経路に皮下投与が予定されていることか

ら,アダリムマブの薬物動態試験は,静脈内及び皮下投与で実施した。毒性試験におけるトキシ

コキネティクデータは試験に用いた動物でアダリムマブの曝露が十分なされていたことを示して

いた。 アダリムマブ の薬物動態の評価として,主にマウス及びサルでの血清濃度推移から薬物動態

的特徴を把握し,サルにおける胎盤通過性について検討した。一方,ヒト IgG であるアダリムマ

ブは生体内では内因性の IgG と同様に代謝分解され,アミノ酸プールに入ることが想定されるた

め通常低分子有機化合物で実施される放射性標識体を用いた分布試験,代謝試験及び排泄試験は,

実施しなかった。 FcRn は IgG の恒常性維持に寄与し,サル及びマウスの FcRn はいずれもヒト IgG と結合すると

報告されている。すなわち,アダリムマブの消失過程はサル及びマウスにおいてもヒトと同様で

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

24

あると考えられる 15,16)。 マウス及びサルに静脈内投与したときの血清中濃度推移は,いずれの動物種とも 2 相性を示し

て減少した。マウス及びサルに静脈内投与したとき並びにサルに皮下投与したときの AUC 及び

Cmax は,単回及び反復投与共にほぼ投与量に比例して増大した。また,サルでの単回皮下投与に

おける BA は 90%以上であり,アダリムマブの皮下からの吸収は良好と判断された。この高い

BA は本薬が皮下投与に適していることを示していると考えられた。 アンチイディオタイプの PAHA と結合したアダリムマブは ELISA の測定対象にならないこと

から,生体においてアンチイディオタイプの PAHA が生成している時点の前後の血清中濃度から

求めた t1/2 は参考値とみなすのが妥当と考えられた。抗体産生が認められなかった週 1 回反復静

脈内投与試験で得られた t1/2は 13.5 ± 4.6 日注1) 及び 16.2 ± 3.4 日注2)であった。血清中アダリムマブ

濃度は週 1 回反復静脈内投与した場合,投与開始後 10 週前後に定常状態に達していた。これは

半減期と投与間隔から算出される定常状態到達期間と一致していたので反復投与による特異的な

アダリムマブの蓄積性は無いと思われた。また,マウスの薬物動態に性差が認められたが,サル

ではみられなかった。 サルにおけるアダリムマブの定常状態での分布容積 (Vss) は 82.5 mL/kg,中央コンパートメン

トの分布容積 (Vc) は 39.7 ± 7.9 mL/kg であったことから,アダリムマブは血清容積及びそれとほ

ぼ等しい大きさの末梢組織コンパートメントを持つと考えられた。 ヒトの全試験を通じて,Vc は約 3 L と算出され,この値はほぼ血管容積を示していた注3)。一

方, Vssは 4.7~6.0 L であり注4),アダリムマブの分布容積は血管容積と細胞間液よりも小さい末

梢組織コンパートメントを持つと考えられた。なお,リウマチ患者の滑液中アダリムマブ濃度が

測定されており,血清中濃度に対する比は平均 0.65 (0.31~0.96)であった注5)。 99mTc 標識アダリムマブをリウマチ患者に投与したときの分布及び TNFα に対する特異性を検

討した結果が報告されている 17)。シンチグラフィーにより,99mTc 標識アダリムマブの肝臓,脾

臓への移行が確認された。また,関節については炎症部位への移行が認められたが,臨床的に炎

症が認められない関節へは移行していなかったこと,非標識のアダリムマブ投与あるいはコルチ

コステロイドの投与により,炎症部位への 99mTc 標識体の取り込みは減少したことから,アダリ

ムマブは炎症が生じている局所で TNFαと特異的に結合していると思われた。 妊娠サルにおいてはアダリムマブが胎児血清や羊水で検出され,妊婦においてヒト IgG で予測

される分布と同様であった 18)。なお,ヒト IgG が母乳中に分泌されることはよく知られており 2),

アダリムマブも同様に母乳に分泌されると考え,乳汁移行性に関する試験を実施しなかった。ア

ダリムマブはサルにおいて胎児に分布すること (CTD 2.6.4.4 (3) に記載) 及び FcRn を発現させた

形質移入細胞の in vitro 試験成績よりヒト FcRn に結合能を有すること (CTD 2.7.2.2.1 項に記載) から,ヒトにおいてもアダリムマムが胎盤を通過する可能性があると考えられた。なお,サルにお

注 1 ):本概要文 2.6.4.3.2 (2) 項参照

注 2 ):本概要文 2.6.4.3.2 (3) 項参照

注 3 ):臨床薬理の概要 2.7.2.3.2 (1) 項参照

注 4 ):臨床薬理の概要 2.7.2.3.2 (1) 項参照

注 5 ):臨床薬理の概要 2.7.2.3.2 (2) 項参照

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

25

ける生殖発生毒性試験においてアダリムマブが胎児に移行するものの,胎児体重,胎盤重量及び

胎児器官重量に毒性所見は認められなかった。また,アダリムマブ投与に起因すると考えられる

外表,内臓または骨格異常もしくは変異も認められなかった注1)。 皮下及び静脈内投与の多くの試験で,投与後 3~4 週目から抗アダリムマブ抗体の産生が認め

られた。サルにおける週 1 回 4 週間反復静脈内投与試験では抗体の産生が認められなかったが,

本試験では投与量が 32 mg/kg 以上と高用量であったことから,一般に良く知られている大量投

与時の免疫寛容が誘導されたものと考えられた 5)。臨床試験においても抗アダリムマブ抗体の産

生が認められなかった被験者には抗体が産生されたもののアダリムマブとの結合により全て消費

されてしまった場合と免疫寛容により抗体が産生されなかった場合があると考えられる。アダリ

ムマブを高用量で投与した臨床試験としては,開発初期の海外試験において,関節リウマチ (RA) 被験者における 10 mg/kg 単回静脈内投与試験 (DE001 試験:5.3.3.2-1 項) 及びその継続投与

試験 (DE003 試験:5.3.3.2-2 項) を実施した。この投与量は現在までに実施した臨床試験での最高

投与量であり,今回の申請における推奨用量 (40 mg 隔週投与) の約 15 倍 (60 kg で換算) である。

さらに,DE003 試験 (5.3.3.2-2 項) においては 18 例に対して 10 mg/kg の投与量で 2 週間に 1 回,

平均 137 日間静脈内投与した (平均投与回数は 7.5 回) 。しかしながら,これらの被験者において

安全性上,特に問題となるような有害事象は認められなかった。また,国内で実施された M02-575 試験 (5.3.5.1-1 項) においては,アダリムマブ 20 mg, 40 mg 及び 80 mg を 24 週間投与したが,

用量に依存した安全性上の問題は認められなかった。 これらの結果から,高用量のアダリムマ

ブによって仮に免疫寛容が誘導されたとしても,アダリムマブの安全性には影響は認められない

と考えられた。 細胞株を含むアダリムマブの製造工程の変更に伴う薬物動態への影響を検討した結果,異なる

製造工程 (製法 a*及び製法 c* ) で生産されたアダリムマブのサルにおける薬物動態に相違は認め

られなかった。したがって,製法 a* から製法 c* への製造工程の変更によるアダリムマブの薬物

動態に対する影響はないものと考えられた。また,0.1%ポリソルベート 80 の製剤への添加によ

る薬物動態への影響についても認められなかった。 3 mg/kg の投与量で単回静脈内投与したときの CL は,ヒトで 0.23 ± 0.06 mL/h/kg (CL = 14.9 ±

3.6 mL/h,体重 65 kg として計算) 注2),サルで 0.32 ± 0.05 mL/h/kg であり,ヒト及びサルで類似し

ていた。また,t1/2 についても,サルで抗体産生が認められなかった週 1 回反復静脈内投与試験

で得られた値が 13.5 ± 4.6 日~16.2 ± 3.4 日であり,1 mg/kg をヒトに静脈内投与したときに得ら

れた値 (10.0~14.9 日注3)) とほぼ類似していた。ヒトにおける 3 つの第 I 相試験 (DE010PK:

5.3.3.2-9 項,DE015:5.3.1.1-1 項 ,DE024C:5.3.1.1-2 項) で得られた単回皮下投与時の絶対生物

学的利用率は,52~82%注4)で,サルで得られた値 (>90%) に比較して小さかった。また,血清中

アダリムマブの AUC 及び Cmax はヒト及びサル共に投与量に応じて増加したが,1 mg/kg 投与時

注 1 ):毒性試験の概要文 2.6.6.6 項参照

注 2 ):臨床薬理の概要 2.7.2.2.3 (1) 1) 項参照

注 3 ):臨床薬理の概要 2.7.2.2.3 (1) 1) 及び生物薬剤学及び関連する分析法の概要 2.7.1.2.2 項参照

注 4 ):臨床に関する概括評価 2.5.2.3 項参照

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

26

の Cmaxは,サルで 12 ± 1 μg/mL,ヒトで 6.1 ± 2.5 μg/mL 注1)であり,ヒトにおいて低かった。定常

状態における分布容積 (Vss) は,ヒトで 4.7~6.0 L 注2),サルで 82.5 mL/kg (約 5.0 L/60kg) とほぼ類

似し,ヒト及びサル共に Vss は血清容積の約 2 倍で,アダリムマブは血清及び細胞間液まで分布

するものと考えられた。 以上のように,マウス及びサルにおける試験成績から,抗アダリムマブ抗体の産生がない限り,

アダリムマブは線形な薬物動態を示すことが明らかになった。AUC 及び Cmax は投与量に比例し

て増加し,クリアランスは投与量に関係なくほぼ一定であった。薬物動態にマウスでは性差を認

めたが,サルでは性差は見られなかった。また,製造工程の変更並びにポリソルベート 80 の製

剤への添加に伴う薬物動態への影響は認められなかった。 サルにおけるアダリムマブの薬物動態はヒトと類似し,サルはアダリムマブの毒性を評価する

にあたり,最も適した動物と考えられた。

2.6.4.10 図表

図表は,本文中の適切な箇所に記載した。

参考文献一覧 1) Ghetie V, Ward ES. Multiple roles for the major histocompatibility complex Class I related receptor

FcRn. Annu Rev Immunol 2000;18:739-66. (4.3.2-1 項) 2) Van de Perre P. Transfer of antibody via mother’s milk. Vaccine 2003;21:3374-6. (4.3.2-2 項) 3) Renton KW. Alteration of drug biotransformation and elimination during infection and inflammation.

Pharmacology & Therapeutics 2001;92:147-63. (4.3.2-3 項) 4) Morgan ET. Regulation of cytochromes P450 during inflammation and infection. Drug Metab Rev

1997;29:1129-88. (4.3.2-4 項) 5) Abbas AK, Lichtman AH. Cellular and Molecular Immunology. 5th ed. Philadelphia: Saunders; 2003.

p.216-40. (4.3.2-5 項) 6) Thavasu PW, Longhurst S, Joel SP, Slevin ML, Balkwill FR. Measuring cytokine levels in blood.

Journal of Immunological Methods 1992;153:115-24. (4.3.2-6 項) 7) Tijssen P. 14.2 Solid-phase enzyme immunoassays. In: Burdon RH, van Knippenberg PH editors.

Laboratory techniques in biochemistry and molecular biology. Practice and theory of enzyme immunoassays. Amsterdam: Elsevier Science Publishers; 1985. Vol.15, p.330-49. (4.3.2-7項)

8) Borvak J, Richardson J, Medesan C, Antohe F, Radu C, Simionescu M,t al. Functional expression of the MHC class I-related receptor, FcRn, in endothelial cells of mice. Int Immunol 1998;10:1289-98. (4.3.2-8 項)

注 1 ):生物薬剤学及び関連する分析法の概要 2.7.1.2.2 項参照

注 2 ):臨床薬理の概要 2.7.2.3.2 (1) 項参照

アダリムマブ

2.6.4 薬物動態試験の概要文

27

9) Bitonti AJ, Dumont JA, Low SC, Peters RT, Kropp KE, Palombella VJ, et al. Pulmonary delivery of an erythropoietin Fc fusion protein in non-human primates through an immunoglobulin transport pathway. Proc. Natl. Acad. Sci USA 2004;101:9763-8. (4.3.2-9 項)

10) Allen RC. Applications of polyacrylamide gel electrophoresis and polyacrylamide gel isoelectric focusing in clinical chemistry. J Chrom.1978;146:1-32. (4.3.2-10 項)

11) Kohn J. A cellulose acetate supporting medium for zone electrophoresis. Clinical Chimica Acta 1957;2:297-303. (4.3.2-11 項)

12) Abbas AK, Lichtman AH. Cellular and Molecular Immunology. 5th ed. Philadelphia: Saunders; 2003. p.53. (4.3.2-12 項)

13) Junghans RP, Anderson CL. The protection receptor for IgG catabolism is the β2-microglobulin-containing neonatal intestinal transport receptor. Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:5512-6. (4.3.2-13項)

14) Kuby J. Immunoglobulines: Structure and Function. In: Immunology. New York: W.H. Freeman and Company; 1994. p.126. (4.3.2-14 項)

15) Ober RJ, Radu CG, Ghetie V, Ward ES. Differences in promiscuity for antibody FcRn interactions across species: implications for therapeutic antibodies. International Immunology 2001;13:1551-9. (4.3.2-15 項)

16) Hinton PR, Johlfs MG, Xiong JM, Hanestad K, Ong KC, Bullock C, et al. Engineered human IgG antibodies with longer serum half-lives in primates. J Biol Chem 2004;279:6213-6. (4.3.2-16 項)

17) Barrera P, Oyen WJG, Boerman OC, van Riel PL. Scintigraphic detection of tumour necrosis factor in patients with rheumatoid arthritis. Ann Rheum Dis 2003;62:825-8. (4.3.2-17 項)

18) Simister NE. Placental transport of immunoglobulin G. Vaccine 2003;21:3365-9. (4.3.2-18 項)

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

28

2.6.5 薬物動態試験概要表

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

吸収

単回投与 マウス 静脈内 32 ,オランダ(動物試験) 適 MPF/ET 9654E 4- 4.2.2.2-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定) Knoll Farm. , イタリア (PK 解析) 適 MPF/EBB 9711 4- 4.2.2.2-2

単回投与 a サル 皮下,静脈内 15.5 , 米国 (動物試験) 適 BBC/I 9802E 4- 4.2.2.2-3

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PK 解析) 適用外 MPF/EB 9636 4- 4.2.2.2-4

Abbott Bioresearch Center, 米国 (PAHA 測定) 適用外 ABC/H 0101 4- 4.2.2.2-5

単回投与 サル 皮下 静脈内

1, 3, 10

3

, 日本 (動物試験,アダ

リムマブ濃度測定) Knoll AG , ドイツ (PAHA 測定,PK 解析)

適 SBL 36-56 4- 4.2.2.2-6

a:月 1 回 5 ヵ月間反復投与したときの初回投与時の成績

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

29

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 (つづき) 一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

吸収 (つづき)

反復投与 (TK) マウス 静脈内 0, 32, 70.9, 157.2 , オランダ (動物試験) 適 MPF/ET 9635E 4- 4.2.3.2-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

MAHA 測定) Knoll Farm., イタリア (PK 解析)

適 MPF/EBB 9712 4- 4.2.3.2-2

反復投与 (TK) サル 静脈内 0, 32, 70.9, 157.2 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9624E 4- 4.2.3.2-7

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PAHA 測定,PK 解析) 適 MPF/EBB 9612 4- 4.2.3.2-8

反復投与 (TK) サル 静脈内 0, 32, 82.9, 214.8 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9732E 4- 4.2.3.2-10

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PK 解析) 適 MPF/EBB 9741 4- 4.2.3.2-11

反復投与 (TK) 妊娠サル 静脈内 0, 30, 100 , ドイツ (動物試験) Knoll AG, ドイツ (PK 解析) 適 MPF/DT 9853E 4- 4.2.3.5.2-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定) 適 MPF/DDB 9918 4- 4.2.3.5.2-2

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

30

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 (つづき) 一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

分布

分布容積 (TK) サル 静脈内 0, 32, 70.9, 157.2 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9624E 4- 4.2.3.2-7

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PK 解析) 適 MPF/EBB 9612 4- 4.2.3.2-8

組織分布 サル 静脈内 0, 32, 82.9, 214.8 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9732E 4- 4.2.3.2-10

Knoll AG, ドイツ (免疫組織化学検査) 適 MPF/DT 9824 4- 4.2.3.2-12

胎児移行性 (TK) 妊娠サル 静脈内 0, 30, 100 , ドイツ (動物試験) Knoll AG, ドイツ (PK 解析) 適 MPF/DT 9853E 4- 4.2.3.5.2-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定) 適 MPF/DDB 9918 4- 4.2.3.5.2-2

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

31

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 (つづき) 一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

その他の薬物動態試験

処方間比較 サル 皮下 1 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/DDK 9907E 4- 4.2.2.7-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PAHA 測定,PK 解析) 適 MPF/DDB 9903 4- 4.2.2.7-2

サル 静脈内 0, 32, 82.9, 214.8 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9732E 4- 4.2.3.2-10 バッチ間比較 (TK) Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PK 解析) 適 MPF/EBB 9741 4- 4.2.3.2-11

バッチ間比較 サル 静脈内 32 ,日本 (動物試験,アダ

リムマブ濃度測定) Knoll AG, ドイツ (PAHA 測定,PK 解析)

適 SBL 36-55 4- 4.2.2.7-3

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

32

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 (つづき)

一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

抗アダリムマブ 抗体

反復投与 マウス 静脈内 0, 32, 70.9, 157.2 , オランダ (動物試験) 適 MPF/ET 9635E 4- 4.2.3.2-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

MAHA 測定) Knoll Farm., イタリア (PK 解析)

適 MPF/EBB 9712 4- 4.2.3.2-2

単回投与 a サル 皮下, 静脈内 15.5 , 米国 (動物試験) 適 BBC/I 9802E 4- 4.2.2.2-3

Abbott Bioresearch Center, 米国 (PAHA 測定) 適用外 ABC/H 0101 4- 4.2.2.2-5

単回投与 サル 皮下, 静脈内 1, 3, 10 ,日本 (動物試験,アダ

リムマブ濃度測定) Knoll AG, ドイツ(PAHA 測定,PK 解析)

適 SBL 36-56 4- 4.2.2.2-6

反復投与 サル 静脈内 0, 32, 70.9, 157.2 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/ET 9624E 4- 4.2.3.2-7

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PAHA 測定,PK 解析) 適 MPF/EBB 9612 4- 4.2.3.2-8

a:月 1 回 5 ヵ月間反復投与したときの初回投与時の成績

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

33

2.6.5.1 薬物動態試験:一覧表 (つづき) 一覧表 被験物質:アダリムマブ

記載箇所 試験の種類 試験系 投与方法 投与量

(mg/kg) 実施施設 GLP 適用 報告書番号

Vol. Section

抗アダリムマブ 抗体 (つづき)

処方間比較 サル 皮下 1 , ドイツ (動物試験) 適 MPF/DDK 9907E 4- 4.2.2.7-1

Knoll AG, ドイツ (アダリムマブ濃度測定,

PAHA 測定,PK 解析) 適 MPF/DDB 9903 4- 4.2.2.7-2

バッチ間比較 サル 静脈内 32 ,日本 (動物試験,アダ

リムマブ濃度測定) Knoll AG, ドイツ(PAHA 測定,PK 解析)

適 SBL 36-55 4- 4.2.2.7-3

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

34

2.6.5.2 分析方法及びバリデーション試験 分析方法 被験物質:アダリムマブ

生体試料 精度 真度 記載箇所

由来 試料 測定対象 測定法 定量範囲

(ng/mL) 日内変動 (%CV)

日間変動 (%CV)

日内変動 (%)

日間変動 (%)

報告書番号 Vol. Section

マウス 血清 アダリムマブ ELISA-1 ~ . ~ . ~ . ~ . ~ .

サル 血清 アダリムマブ ELISA-1 ~ . ~ . ~ . ~ . ~ . MPF/EB 9644 4- 4.2.2.1-1

サル 羊水 アダリムマブ ELISA-1 ~ . ~ . ~ . ~ . ~ . MPF/DDB 9917 4- 4.2.2.1-2

サル 血清 アダリムマブ ELISA-2 ~ . ~ . ~ . ~ . ~ . SBL 36-50 4- 4.2.2.1-3

マウス サル ヒト

血清 抗アダリムマブ 抗体

ELISA-3 ~ . ~ . ~ . ~ . ~ . MPF/DDB 9851 4- 4.2.2.1-4

a:真度は理論値からの差として示した。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

35

2.6.5.3 薬物動態試験:吸収:単回投与 被験物質:アダリムマブ

報告書番号 MPF/ET 9654E a MPF/EBB 9711

BBC/I 9802E a MPF/EB 9636 ABC/H 0101 b

SBL 36-56 DE029

記載箇所 4.2.2.2-1 4.2.2.2-2

4.2.2.2-3 4.2.2.2-4 4.2.2.2-5

4.2.2.2-6 5.3.1.2-1

動物種 NMRI マウス カニクイザル カニクイザル ヒト 性別 (雄/雌) /例数 雄/5 雌/5 雄/4 雄/6 雄/6 雄/6 男女/59 給餌 摂餌 摂餌 摂餌 摂食

溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS)

リン酸緩衝生理食塩液 (PBS)

マンニトール含有クエン酸リン酸緩衝生理食塩液(CPSM)

Tween-80 を含む 50 mg/mL 製剤

試料 血清 血清 血清 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ アダリムマブ アダリムマブ アダリムマブ 定量法 ELISA-1 ELISA-1 ELISA-2 ELISA 投与量 (mg/kg) 32 15.5 1 3 10 40 mg 投与方法 静脈内 静脈内,皮下 皮下 静脈内,皮下 皮下 皮下 PK パラメータ:皮下投与 Cmax (μg/mL) NA 97 c 12 ± 1 32 ± 4 105 ± 13 4.7 ± 1.6

tmax (h) NA 36 c 76 ± 10 132 ± 39 104 ± 56 130.6 ± 55.6 (5.4 ± 2.3 day)

CL/F (mL/h/kg) NA 0.41 c NC NC NC NC AUC (μg·h/mL) NA 40353 c 1439 ± 173 4167 ± 581 13699 ± 2021 1221.7 ± 338.6 Bioavailability (%) NA 88 98 ± 12 100 ± 9 94 ± 11 52~82 d

値は平均値 ± SD, a:動物試験報告書,b:生物活性に関する報告書,c:中央値,d: DE 010 (5.3.3.2-9 項), DE 015 (5.3.1.1-1 項), DE 024C (5.3.1.1-2 項),NA:該当せず,

NC:計算せず

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

36

2.6.5.3 薬物動態試験:吸収:単回投与 (つづき) 被験物質:アダリムマブ

報告書番号 MPF/ET 9654E a MPF/EBB 9711

BBC/I 9802E a MPF/EB 9636 ABC/H 010 b

SBL 36-56 DE001PK,DE005PK, DE015,DE024C

記載箇所 4.2.2.2-1 4.2.2.2-2

4.2.2.2-3 4.2.2.2-4 4.2.2.2-5

4.2.2.2-6 5.3.3.2-1,5.3.3.4-1 5.3.1.1-1,5.3.1.1-2

動物種 NMRI マウス カニクイザル カニクイザル ヒト

投与量 (mg/kg) 32 15.5 1 3 10 0.1~10 mg/kg 及び 40 mg

PK パラメータ:静脈内投与 雄 雌 CL (mL/h/kg) 0.38 0.54 0.36 c NA 0.32 ± 0.05 NA 9~17.4 mL/h t1/2 (day) 4.2 (102 h) 8.0 (193 h) 8.9 (214 h) c NA 6.9 ± 2.9 NA 10~20.2 MRT (h) NC NC NC NA 135 ± 37 NA NA 分布容積

Vc (mL/kg) NC NC 55 c NA NA NA 3 L Vss (mL/kg) NC NC 118 c NA 41 ± 6 NA 4.7~6.0 L

AUC (μg·h/mL) 83382 59583 43292 c NA 9656 ± 1491 NA NA

値は平均値 ± SD, a:動物試験報告書,b:生物活性に関する報告書,c:中央値, NA:該当せず, NC:計算せず

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

37

2.6.5.4 薬物動態試験:吸収:反復投与

マウス 4 週間投与毒性試験:TK 試験 報告書番号:MPF/ET 9635E a,MPF/EBB 9712 記載箇所:4.2.3.2-1,4.2.3.2-2 被験物質:アダリムマブ

動物種 NMRI マウス

性別 (雄/雌),例数 雌雄各 5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 4 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,70.9,157.2 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

性 投与量 例数 PK パラメータ (22 日目投与後の血清中濃度解析) (mg/kg) AUC0-7d (μg·h/mL) AUC0-7d /投与量比 Cmax b (μg/mL) Cmax /投与量比 t1/2 c (h)

雄 32 5 66782 2087 1193 37.3 97 70.9 5 104612 1475 1528 21.6 99 157.2 5 190342 1211 4231 26.9 112

雌 32 5 81598 2550 794 24.8 259 70.9 5 120693 1702 2069 29.2 169 157.2 5 240366 1529 5028 32.0 134

値は平均値, a:動物試験報告書,b:投与後最初の採血時点 (5 分後) の平均濃度,c:値は平均血清中濃度から算出

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

38

2.6.5.4 薬物動態試験:吸収:反復投与 (つづき)

サル 4 週間投与毒性試験:TK 試験 報告書番号:MPF/ET 9624E a,MPF/EBB 9612 記載箇所:4.2.3.2-7,4.2.3.2-8 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄/雌),例数 雌雄各 3~5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 4 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,70.9,157.2 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

投与量 性/例数 PK パラメータ (モデル解析) (mg/kg) AUC0-∞ (μg·h/mL) Vc (mL/kg) Vss (mL/kg) CL (mL/h/kg) t1/2 (h) MRT (h)

32 雄/3 207667 ± 49217 NC NC 0.16 ± 0.03 NC NC 雌/3 194967 ± 131095 NC NC 0.22 ± 0.14 NC NC 雌雄/6 201317 ± 88835 NC NC NC NC NC

70.9 雄/3 319667 ± 110645 NC NC 0.24 ± 0.07 NC NC 雌/3 399667 ± 153168 NC NC 0.19 ± 0.07 NC NC 雌雄/6 359667 ± 127283 NC NC NC NC NC

157.2 雄/5 904600 ± 253871 NC NC 0.19 ± 0.06 NC NC 雌/5 713200 ± 56362 NC NC 0.22 ± 0.02 NC NC 雌雄/10 808900 ± 200581 NC NC NC NC NC

全投与群平均 雄/11 NA 38.1 ± 8.1 83.8 ± 20.9 0.193 ± 0.06 337 ± 103 458 ± 139 雌/11 NA 41.2 ± 7.9 81.1 ± 12.4 0.215 ± 0.07 311 ± 122 424 ± 172 雌雄/22 NA 39.7 ± 7.9 82.5 ± 16.8 b 0.20 ± 0.07 13.5 ± 4.6 (day) NC

値は平均値 ± SD, a:動物試験報告書,b:報告書には雌雄の平均値が記載されていないため,改めて計算した値を記載した。NA:該当せず,NC:計算せず

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

39

2.6.5.4 薬物動態試験:吸収:反復投与 (つづき)

サル 39 週間投与毒性試験:TK 試験 報告書番号:MPF/ET 9732E a, MPF/EBB 9741 記載箇所:4.2.3.2-10,4.2.3.2-11 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄/雌),例数 雌雄各 3~5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 39 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,82.9,214.8 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

投与量 例数 PK パラメータ

(mg/kg) 最終回投与後 (40 回) 血清中濃度比 (最終回/初回) Cmax (μg/mL) AUC0-t (μg·h/mL) CL (mL/h/kg) Cmax トラフ値 32 雌雄各 3 2731 ± 467 304774 ± 74634 0.11 ± 0.04 2.7 ± 0.5 3.5 ± 0.7 82.9 雌雄各 3 6527 ± 2450 617368 ± 233959 0.16 ± 0.07 2.2 ± 0.6 3.4 ± 1.8 214.8 雌雄各 5 13563 ± 1740 1299965 ± 228114 0.17 ± 0.03 2.2 ± 0.4 2.3 ± 0.5

値は平均値 ± SD, a:動物試験報告書

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

40

2.6.5.4 薬物動態試験:吸収:反復投与 (つづき)

サル生殖発生毒性試験:TK 試験 報告書番号:MPF/DT 9853E a,MPF/DDB 9918 記載箇所:4.2.3.5.2-1,4.2.3.5.2-2 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル (妊娠) 性別 (雄/雌),例数 雌 4 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 妊娠 20~97 日の間,週 1 回静脈内投与 投与量 (mg/kg) 100 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

測定時期 例数 PK パラメータ

Cmaxb (μg/mL) トラフ値 (μg/mL) AUC (μg·h/mL) t1/2 (day) CL (mL/h/kg)

初回投与時 4 中央値 3705 1095 566924 7.1 0.18 最大値 4363 1142 801026 16.5 0.19 最小値 2320 1045 520863 6.0 0.12

最終投与時 4 中央値 8745 2885 683022 7.5 0.15 最大値 11492 4523 885351 8.4 0.17 最小値 7327 2351 588962 7.2 0.11

濃度比 4 中央値 2.4 2.7 NC NC NC (最終/初回) 最大値 5.0 4.0 NC NC NC

最小値 1.7 2.1 NC NC NC

a:動物試験報告書,b:投与後最初の採血時点 (3 分後) の濃度,NC:計算せず

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

41

2.6.5.5 薬物動態試験:分布

分布容積 報告書番号:MPF/ET 9624E a,MPF/EBB 9612 記載箇所:4.2.3.2-7,4.2.3.2-8 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄/雌),例数 雌雄各 3~5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 4 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,70.9,157.2 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1 PK パラメータ:分布容積 b 雄 雌 雌雄総平均

投与量 (mg/kg) 32 70.9 157.2 32 70.9 157.2 例数 3 3 5 3 3 5 22

Vc (mL/kg) 38.1 ± 8.1 41.2 ± 7.9 39.7 ± 7.9 Vss (mL/kg) 83.8 ± 20.9 81.1 ± 12.4 82.5 ± 16.8 c

値は平均値 ± SD, a:動物試験報告書,b:2-コンパートメントモデル解析,c:報告書には雌雄の平均値が記載されていないため,改めて計算した値を記載した。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

42

2.6.5.5 薬物動態試験:分布 (つづき)

組織分布 報告書番号:MPF/ET 9732E a,MPF/DT 9824 記載箇所:4.2.3.2-10,4.2.3.2-12 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄/雌),例数 雌雄各 3~5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 39 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,82.9,214.8 試料 腎臓,肝臓,皮膚,脾臓,乳腺,肺,関節滑膜 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 アダリムマブ のマウス抗体を用いた免疫組織学的検査 アダリムマブの分布: 検査組織 部位 雄 雌

投与量 (mg/kg) 32 82.9 214.8 32 82.9 214.8 例数 3 3 3 2 b 3 3 3 2 b

アダリムマブ 検出例数/検査例数 腎臓 血管 1/3 3/3 3/3 0/2 1/3 3/3 3/3 0/2 糸球体 0/3 2/3 3/3 0/2 0/3 1/3 3/3 0/2 肝臓 血管 0/3 2/3 3/3 0/2 0/3 0/3 3/3 0/2 組織 0/3 0/3 2/3 0/2 0/3 0/3 1/3 0/2

a:動物試験報告書,b:20 週間回復群の動物

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

43

2.6.5.5 薬物動態試験:分布 (つづき)

組織分布 (つづき) 報告書番号:MPF/ET 9732E a,MPF/DT 9824 記載箇所:4.2.3.2-10,4.2.3.2-12 被験物質:アダリムマブ

アダリムマブの分布: 検査組織 部位 雄 雌

投与量 (mg/kg) 32 82.9 214.8 32 82.9 214.8 例数 3 3 3 2 b 3 3 3 2 b

アダリムマブ 検出例数/検査例数 皮膚 血管 0/3 2/3 2/3 0/2 0/3 2/3 0/3 0/2 組織 1/3 0/3 2/3 0/2 0/3 1/3 3/3 0/2 脾臓 血管 0/3 3/3 2/3 0/2 0/3 2/3 3/3 0/2 組織 0/3 1/3 3/3 0/2 0/3 1/3 3/3 0/2 乳腺 血管 0/2 0/2 0/2 0/2 0/3 0/1 0/2 0/2 組織 0/2 0/2 1/2 0/2 0/3 1/1 0/2 0/2 肺 血管 0/3 3/3 3/3 0/2 1/3 1/3 3/3 0/2 気管支軟骨 2/3 1/3 2/3 0/2 1/3 0/3 2/3 0/2 関節滑膜 血管 0/3 1/3 3/3 0/2 0/3 0/3 3/3 0/2

a:動物試験報告書,b:20 週間回復群の動物

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

44

2.6.5.6 薬物動態試験:たん白結合

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

45

2.6.5.7 薬物動態試験:妊娠動物における試験

胎盤通過性 報告書番号:MPF/DT 9853E a,MPF/DDB 9918 記載箇所:4.2.3.5.2-1,4.2.3.5.2-2 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル (妊娠) 性別 (雄/雌),例数 雌 4 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 妊娠 20~97 日の間,週 1 回静脈内投与 投与量 (mg/kg) 100 試料 母体血清,胎児血清,羊水 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

投与量 TK 群における PK パラメータ

(mg/kg) アダリムマブ 濃度 (μg/mL) アダリムマブ 濃度比 母体血清 b, c 胎児血清 d 羊水 b 母体/胎児 胎児/羊水

100 2888.2 742.1 70.75 3.9 11.3

値は中央値, a:動物試験報告書,b:n = 4,c:母体血清濃度は帝王切開前後の平均値を採用,d:n = 3 帝王切開は妊娠 104 日目に実施した。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

46

2.6.5.8 薬物動態試験:その他の分布試験

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

47

2.6.5.9 薬物動態試験:代謝:In vivo

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

48

2.6.5.10 薬物動態試験:代謝:In vitro

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

49

2.6.5.11 薬物動態試験:推定代謝経路

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

50

2.6.5.12 薬物動態試験:薬物代謝経路の誘導/阻害

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

51

2.6.5.13 薬物動態試験:排泄

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

52

2.6.5.14 薬物動態試験:排泄:胆汁排泄

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

53

2.6.5.15 薬物動態試験:薬物相互作用

該当する試験なし。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

54

2.6.5.16 薬物動態試験:その他

サル薬物動態試験における異なる処方間の薬物動態の比較

報告書番号:MPF/DDK 9907E a, MPF/DDB 9903 記載箇所:4.2.2.7-1,4.2.2.7-2 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄雌),例数 雌 6 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 クエン酸リン酸緩衝液 (CP) 被験物質 アダリムマブ ,アダリムマブ +ポリソルベート 80 投与方法 単回皮下投与 投与量 (mg/kg) 1 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1

処方 例数 PK パラメータ b

tmax (h) Cmax (μg/mL) AUC (μg·h/mL) CL/F (mL/h/kg)

アダリムマブ 6 112 7.9 2254.01 0.46

アダリムマブ + ポリソルベート 80

6 88 7.9 2200.96 0.48

値は平均値, a:動物試験報告書,b:AUC 及び Cmaxは ANOVA を用いて比較した。また,tmaxは t 検定及び Wilcoxon 検定を用いて比較した。

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

55

2.6.5.16 薬物動態試験:その他 (つづき)

サル 39 週間投与毒性試験におけるバッチ間の比較

報告書番号:MPF/ET 9732E a,MPF/EBB 9741 記載箇所:4.2.3.2-10,4.2.3.2-11 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄雌),例数 雌雄各 3~5 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) 投与方法 週 1 回 39 週間静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,82.9,214.8 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-1 PK パラメータ:トラフ濃度 投与期間 バッチ番号 雌雄平均 ± SD (中央値)

投与量 32 82.9 214.8 例数 6 6 10

用量で補正したトラフ値 10~19 週 K*,L* 138 ± 29 (144) 92 ± 17 (90) 84 ± 12 (85) (%) b 20~29 週 L*,M* 99 ± 20 (101) 95 ± 16 (95) 79 ± 21 (76)

30~39 週 M*,N*,O* 100 ± 15 (99) 100 ± 20 (96) 100 ± 18 (99)

a:動物試験報告書,b:各投与量毎に 30~39 週目の間に得られたトラフ濃度の総平均を 100%として表している。各投与量におけるトラフ濃度の総平均は 32,82.9 及び 214.8 mg/kg 投与群でそれぞれ 1018,2423 及び 7059 μg/mL である。

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

56

2.6.5.16 薬物動態試験:その他 (つづき)

サル薬物動態試験におけるバッチ間の比較 報告書番号:SBL 36-55 記載箇所:4.2.2.7-3 被験物質:アダリムマブ

動物種 カニクイザル

性別 (雄雌),例数 雄/6 給餌 摂餌 溶媒/投与形態 マンニトール含有クエン酸リン酸緩衝生理食塩液 (CPSM) 被験物質 製法 c*及び製法 a*法により製造されたアダリムマブ 投与方法 単回静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32 試料 血清 定量 (対象) 物質 アダリムマブ 定量法 ELISA-2

PK パラメータ b

製造方法 例数 AUC0-∞ (μg·h/mL) Vss (mL/kg) CL (mL/h/kg) t1/2 (day) MRT (h)

製法 c* 6 168100 ± 53354 (161136) a 64 ± 12 0.21 ± 0.07 9.3 ± 5.9 352 ± 164

製法 a* 6 156380 ± 38635 (151926) a 54 ± 11 0.22 ± 0.06 6.5 ± 3.6 275 ± 108

値は平均値± SD ,a:幾何平均値,b:AUC0-∞,Vss 及び t1/2 は ANOVA を用いて比較した。

* : 新薬承認情報提供時に置き換え

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

57

2.6.5.16 薬物動態試験:その他 (つづき)

マウス及びサルにおける抗体産生 被験物質:アダリムマブ

報告書番号 MPF/ET 9635E a ,MPF/EBB 9712 BBC/I 9802E a ,ABC/H 0101 SBL 36-56 記載箇所 4.2.3.2-1, 4.2.3.2-2 4.2.2.2-3, 4.2.2.2-5 4.2.2.2-6 動物種 NMRI マウス カニクイザル カニクイザル

性別 (雄雌),例数 雌雄各 5 雄 4 雄 6 給餌 摂餌 摂餌 摂餌

溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) マンニトール含有クエン酸リン酸緩衝生理

食塩液 (CPSM) 投与方法 週 1 回 4 週間投与静脈内投与 月 1 回計 6 回静脈内及び皮下投与 単回静脈内及び皮下投与 投与量 (mg/kg) 32,70.9,157.2 15.5 皮下:1,3,10 静脈内:3

試料 血清 血清 血清 (アダリムマブ 濃度が 2 μg/mL 以下の

サンプルを測定) 定量 (対象) 物質 抗アダリムマブ 抗体 抗アダリムマブ 抗体 抗アダリムマブ 抗体 定量法 ELISA-3 ELISA-3 ELISA-3

抗体産生

32 mg/kg 群では 8 日目に,70.9 mg/kg 群で

は 8~22 日目に,157.2 mg/kg 群では 22 日

目に最初に MAHA が検出された。

初回投与後 3 ~4 週目に,皮下投与群では 4例中 3 例で,静脈内投与群では 4 例中 2 例

で PAHA が検出された。

投与後 14 日目には検出されなかったが,21日目には,24 例中 9 例に,49 及び 56 日目

には全例で検出された。PAHA 濃度は 5.5~10619 ng/mL であった。

a:動物試験報告書

アダリムマブ

2.6.5 薬物動態試験概要表

58

2.6.5.16 薬物動態試験:その他 (つづき)

サルにおける抗体産生 被験物質:アダリムマブ

報告書番号 MPF/ET 9624E a ,MPF/EBB 9612 MPF/DDK 9907E a ,MPF/DDB 9903 SBL 36-55 記載箇所 4.2.3.2-7, 4.2.3.2-8 4.2.2.7-1, 4.2.2.7-2 4.2.2.7-3 動物種 カニクイザル カニクイザル カニクイザル

性別 (雄雌),例数 雌雄各 3~5 雌 6 雄 6 給餌 摂餌 摂餌 摂餌

溶媒/投与形態 リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) リン酸緩衝生理食塩液 (PBS) マンニトール含有クエン酸リン酸緩衝生理

食塩液 (CPSM)

被験物質 アダリムマブ アダリムマブ アダリムマブ + ポリソルベート 80

製法 c*及び製法 a*法により製造されたア

ダリムマブ 投与方法 週 1 回 4 週間静脈内投与 単回皮下投与 単回静脈内投与 投与量 (mg/kg) 32,70.9,157.2 1 32

試料 血清 血清 アダリムマブ 濃度が 2 μg/mL の血清 (32 サ

ンプル)。 定量 (対象) 物質 抗アダリムマブ 抗体 抗 アダリムマブ 抗体 抗アダリムマブ 抗体 定量法 ELISA-3 ELISA-3 ELISA-3

抗体産生

最終回投与前の血清中に PAHA は検出され

なかった。

処方の違いに関わらず,PAHA は投与後 2週目頃から検出される例が認められ,4 週

目以降には全例で検出された。

各群 1 例で,PAHA が検出されたが,他の

動物では検出されなかった。

a:動物試験報告書

* : 新薬承認情報提供時に置き換え