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心理測定尺度集 V 個人から社会へ〈自己・対人関係・価値観〉 堀 洋道 監修 /吉田富二雄・宮本聡介 サイエンス社

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Page 1: 5巻 本文-19(電子書籍)-cs5 5...ii 監修のことば I第 巻 山本眞理子編 「人間の内面を探る〈自己・個人内過程〉」では自己概念,自己知識,自己評価,自尊感情,自我同一性,自己開示・自己呈示など自己に関するもの,ジェンダー・

心理測定尺度集 V個人から社会へ〈自己・対人関係・価値観〉

堀 洋道 監修/吉田富二雄・宮本聡介 編

サイエンス社

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i

監修のことば

 心理学や隣接科学の分野の研究では心理(測定)尺度と呼ばれるものが非常に多く使われて

いる。その意味で,研究の進歩に占める心理尺度の比重は大きい。心理尺度は個人の心理的傾

向(意識,感情,状態,態度,欲求,行動など)の程度を測定しようとして工夫された道具で

あり,言い換えれば,“ある心理的傾向について,それと関連する複数の項目から作られた一つ

の物差し(尺度)”である。たとえば,ある個人の共感性の程度は,それを測るのにふさわしい

項目群を用意し,その合計点によって示される。ただしその場合,測ろうとする心理傾向の内

容(概念)が明確であること,反応が安定していること(信頼性),測ろうとするものが測られ

ていること(妥当性)が満たされていることが望ましい。このような条件を満たした尺度を作

成するまでにはかなりの時間と労力が費やされることが多い。

 しかし,安易に作成された尺度も散見される。また,安易ではないが,研究者の目的や,着眼

点の違いによって,同様な概念であっても異なった尺度があったり,研究の進展によって,新

しい概念が提案されると新しい尺度が開発されている。このようにして,非常に多くの玉石混

淆の心理尺度が存在することになるのである。そこで,社会心理学を中心に関連分野において

使われている心理尺度を収集し,いくつかの基準で尺度を選定し,尺度集として世に問うこと

は有意義であると考えた。そして 1994 年に『心理尺度ファイル』(垣内出版)を発刊した。

 本書は前書を発展させたものとして企画された。現在,前書の作業時点から 10 年を経過し,

この間に多くの尺度が開発されたことと,各方面の要望を考慮して,社会心理学にとどまらず,

適応・臨床関係の尺度を大幅に増やし,執筆者もその領域の専門家に加わっていただいた。

 尺度の選択の手順であるが,まず各執筆者は担当領域について,第Ⅰ~Ⅲ巻は 1990 年から

1999 年まで(新たに加えた第Ⅳ巻は 2006 年まで),今回の第Ⅴ,Ⅵ巻は 2000 年から 2010 年

までの期間に公刊された学会誌,学会発表論文集,紀要,単行本にあたり,心理尺度を扱って

いる論文を集めた。

 そして次のような選択採用の基準を設け検討した。その基準は(1)日本語の質問形式である

こと(翻訳も含む),(2)信頼性と妥当性の両方またはいずれか一方のチェックをしていること,

(3)尺度構成に使われた回答者が 50 人以上であること(多いほど良い),(4)中学生以上を対

象にしていること(第Ⅳ巻では幼児,児童を主に対象としている),(5)現在および将来にお

いて有用と判断されること,(6)市販されていないこと,であった。

 採用の候補となった尺度は作成者(著作者)の掲載許可を得るとともに,その後の展開や関

連研究について教えていただいた。さらに版権所有者に転載許可の手続きをとった。1990 年以

前の尺度とあわせ検討した結果,最終的には約 300 の心理尺度が採択されることとなった。量

が多いことや,利用者の便宜を考えて次のような 6 巻仕立てとした。

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 第 I 巻 山本眞理子編 「人間の内面を探る〈自己・個人内過程〉」では自己概念,自己知識,

自己評価,自尊感情,自我同一性,自己開示・自己呈示など自己に関するもの,ジェンダー・

性役割,認知判断傾向,感情・気分に関するものが含まれる。最後の章に「心理尺度の使

い方」についての解説がある。

 第 II 巻 吉田富二雄編 「人間と社会のつながりをとらえる〈対人関係・価値観〉」では他

者の認知・他者への好意,動機づけ・欲求,対人態度,対人関係,対人行動,社会的スキル,集

団・リーダーシップ,産業・職業ストレス,進路選択,価値観・社会的態度,ライフスタイル

などが含まれる。最後の章に「信頼性と妥当性」についての解説がある。

 第 III 巻 松井 豊編 「心の健康をはかる〈適応・臨床〉」では,ストレス,適応とライフ

イベント,ソーシャル・サポート,抑うつ・不安,人格障害と問題行動,看護と心理,学校・

教育・学習などが含まれる。最後の章に「心理尺度の作成方法」についての解説がある。

 第 IV 巻 櫻井茂男・松井 豊編 「子どもの発達を支える〈対人関係・適応〉」では,おもに

高校生以下の幼児・児童・生徒の心理を測定するため,自己,パーソナリティと感情,動機づ

けと学習,家族と友人,対人関係,無気力と不安,ストレス,適応,障害のある子どもと特別

支援教育などが含まれる。最後の章に「子どものこころを測定するために」という解説がある。

 なお,今回刊行された第Ⅴ,Ⅵ巻に掲載されているのは 2000 年以降に公刊された尺度である。

第Ⅰ~Ⅳ巻に掲載した尺度は再掲されていない。

 第 V 巻 吉田富二雄・宮本聡介編「個人から社会へ〈自己・対人関係・価値観〉」では,自

己・自我(自己概念,自尊感情・自己評価,自我同一性の形成),認知・感情・欲求(認知判断

傾向,感情,動機づけ・欲求),対人認知・対人態度(対人感情,共感性・他者意識(ゆるし),

愛着・依存),親密な対人関係(夫婦,親子,友人,恋愛),対人行動(援助,攻撃・怒り),

コミュニケーション(自己開示・自己呈示,コミュニケーション,インターネット・携帯電話),

社会的態度・ジェンダー(価値観・性)などが含まれる。

 第 VI 巻 松井 豊・宮本聡介編「現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉」では,集団・

リーダーシップ,学校・学習・進路選択・学校と適応,産業・組織ストレス,ストレス・コー

ピング(外傷経験),ソーシャルサポートと社会的スキル,適応・ライフイベント(幸福,出

産に関わる意識・育児),不安・人格障害・問題行動,医療・看護・カウンセリングなどが含

まれる。

 本書の編集上の特徴を以下に述べよう。

(1) 尺度の紹介に際しては,尺度の内容だけでなく,①測定概念・対象,②作成過程,③信頼

性・妥当性,④尺度の特徴,⑤採点法,⑥出典論文・関連論文には必ずふれた。

(2)原則として各尺度の紹介の後に,作成者(著作者)の連絡先を示した。

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iii監修のことば

(3)読者が検索しやすいように,人名索引,事項索引を用意した。

(4)�「コラム」欄には伝統的な尺度を中心に,その他の尺度について簡単に紹介・解説し,広範

囲の情報を提供できるように心がけた。

 本書は心理学の研究者や学生のみならず教育関係者,医療・看護・介護関係者,カウンセ

ラー,マーケティング調査関係者,企業の人事担当者などの実務家も対象としている。ただし,

利用に際しては,次のようなことに留意願いたいと思う。営利目的で利用される場合は,作成

者(著作者)に是非許可を得てほしいし,非営利目的の場合でも,臨床尺度の利用に際しては,

背景にある概念や理論をよく承知したうえで使ってほしい。背景となる理論や概念は,各紹介

の後に一覧されている出典論文で確認してほしい。

 前著で尺度を紹介させていただいた研究者(作成者)から「論文も読まずに,問合せをして

くる読者がいて,対応に苦慮している」とのご指摘をいただいたことがある。掲載尺度を使用

される場合には,作成者にご迷惑のかからぬように,くれぐれも十分なご配慮をお願いしたい。

 また,尺度を使った結果は作成者に知らせていただくと良いのではないかと思う。このよう

な形で研究交流や情報交換がなされるのも意義のあることと考える。本書が研究の進展や社会

の現場でのリサーチや問題解決に,ささやかながらお役に立てば望外の喜びである。

 本書の完成は多くの方々の大きな尽力のお陰である。各巻の編集者は内容の充実のための他

の巻との調整,尺度の選択,執筆者との連絡などでご苦労をかけた。執筆者は中堅および新進

気鋭の研究者と大学院生で,執筆だけでなく尺度の収集・整理から作成者への連絡まで,手間

のかかる作業をもお願いした。作成者の先生方には掲載のお願いに対し快諾をいただき,その

うえ,こちらからの問合せにも丁寧にご教示いただいた。皆様のご協力に対し心から感謝する

次第である。

 本書が読者にとって有益であるよう最善の努力をしたつもりであるが,行き届かなかった点

も少なからずあるかと思う。これらの点に関しては読者の建設的なご意見と叱正をいただき今

後の改善を期したいと思う次第である。

 企画の段階から細かい編集作業まで筑波大学心理学系松井研究室が中心になって進めたが,

第Ⅳ巻に関しては同学櫻井研究室が加わった。また,第Ⅰ~Ⅲ巻では宇井美代子さん,第Ⅳ巻

では院生の植村みゆきさん,第Ⅴ,Ⅵ巻は落合萌子さん,倉住友恵さんの二人に編集幹事役と

して大変ご苦労をかけた。

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 最後になるが本書の企画に深い理解を示し,出版を快く引き受けていただき,完成まで励ま

していただいたサイエンス社と担当の清水匡太さんに感謝の意を表したい。

監修者 堀   洋 道  

監修のことば

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は じ め に

 本書には,2000 年から 2009 年(~ 3 月)までに刊行された,自己と対人関係・対人行動と

価値観にかかわる 50 の尺度,および 4 つのコラムをおさめた。吟味し検討した論文の数は

359 編にのぼる。

 尺度の紹介に際しては,キーになる心理学的概念をもとに関連する複数の尺度をまとめて章

となし,テーマごとに扉を設け,心理学的概念の説明を行った。したがって本書の目次立ては,

心理尺度という観点からみた,日本の社会心理学における最近の研究動向を反映するものとも

いえる。また,各章・各節(テーマ)の扉では心理学的概念にかかわる研究動向をコンパクト

な形で概観した。読者は,扉文を読むことでも十分有益な情報が得られるであろう。

 本書は,大きく 4 つの領域からなる。

 まず第 1 は,個人内の意識と認知・感情・欲求にかかわる領域で,「自己・自我」(第 1 章)

と「認知・感情・欲求」(第 2 章)を含む。

 「自己・自我」(第 1 章)では,自己概念,自尊感情・自己評価,自我同一性の形成の 3 つの

テーマを扱う。自己概念とは自己に関する比較的永続的で安定した自己像を意味し,自己に

関する知識の総体から構成されるものである。これに関しては自己愛と自己の不全感を基調と

する「満たされない自己尺度」「自己愛的脆弱性尺度(NVS)短縮版」の 2 尺度と,人間関係

に応じて変化する自己の「変化動機尺度」の 3 尺度を取り上げた。自尊感情は自己への肯定的

評価をあらわすが,自尊感情・自己評価では,自尊感情の関連要因を測定する「被受容感・被

拒絶感尺度」「仮想的有能感尺度」2 尺度と,劣等感が生じる自己の諸側面を分類した「劣等

感」を紹介する。また,自我同一性の形成については,中年期の危機(世代継承性)に関連し

た 2 尺度を選んだ。

 「認知・感情・欲求」(第 2 章)では,認知判断傾向 3 尺度,感情 2 尺度,動機づけ・欲求 3

尺度,計 8 尺度を紹介する。認知判断傾向とは,人が外界の情報を処理する仕方の個人差であ

る。批判的思考・ネガティブな反すう・完全主義に関する 3 尺度を扱う。感情については,状

況尺度として一般感情と運動場面の感情を測定する尺度を取り上げる。状況尺度とは個人の中

で状況によって変動する部分を測定する尺度であり,個人の中で安定した心理特性を測る特性

尺度とは区別される。動機づけ・欲求では,承認欲求と課題価値と友人関係への動機づけに関

する尺度を紹介する。

 第 2 は,対人関係・対人行動にかかわる領域で,「対人認知・対人態度」(第 3 章)・「親密な

対人関係」(第 4 章)・「対人行動」(第 5 章)の 3 つの章が含まれる。

 「対人認知・対人態度」としては,対人感情,共感性,愛着・依存を中心に 5 尺度,「親密な

対人関係」では,夫婦関係 2 尺度,親子・家族関係 2 尺度,友人関係や恋愛について 5 尺度を

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vi は じ め に

取り上げた。また,「対人行動」では,援助行動 3 尺度,攻撃・怒りに関する 2 尺度を扱って

いる。

 第 3 は「コミュニケーション」(第 6 章)にかかわる領域である。

 ここでは,コミュニケーションに関する 2 尺度に加えて,自己開示・自己呈示やインター

ネット・携帯電話に関する尺度も取り上げる。自己の内面を示す自己開示と自己の印象を操作

する自己呈示については,「日本語版自己隠蔽尺度」「自己呈示規範内在化尺度」の 2 尺度を扱

う。また,携帯電話やインターネットは近年急激に膨張し,私たちの日常生活の中に深く根付

いてしまった感があるが,本章では「携帯メールの効用認知尺度」「インターネット行動尺度」

など 3 尺度を紹介する。「携帯メールの効用認知尺度」は携帯メールの効用をポジティブ・ネ

ガティブの両面から,「インターネット行動尺度」は,ネット上での行動を匿名性/利便性/

現実逃避の 3 側面から測定する試みであり,近年における新たな展開といえる。さらに,イン

ターネット依存についてもインターネット普及当時から問題にされてきたが,「インターネッ

ト依存に関する尺度」としてコラムで取り上げている。

 最後は,社会的態度・価値観にかかわる領域で,「社会的態度・ジェンダー」(第 7 章)がこ

れにあたる。価値観・社会的態度については,最近の動向として,人間の本質的・根源的な価

値というより,新しいライフスタイルや社会問題など,社会状況に応じて価値観・態度尺度も

変化するとの指摘がなされている。ここでは「社会考慮尺度」「観光動機尺度」「『居場所』の

心理機能測定尺度」など,5 つの尺度が取り上げられている。

 性・ジェンダーでは,性行動におけるリスク意識を扱った「性的リスク対処意識尺度」,自

分は男性(女性)である,という感覚に着目した「ジェンダー・アイデンティティ尺度」など

3 尺度を紹介する。

 本書では,利用者の便を図り,尺度そのものに加えて,十分な背景情報の提供に努めた。す

なわち,各尺度について①測定概念・対象者,②作成過程,③信頼性・妥当性,④尺度の特徴,

⑤採点法,⑥出典論文・関連論文,⑦作成者(著作者)の連絡先,などの情報を記載した。本

書をお読みになれば,尺度に関する十分な情報が得られると思うが,さらに詳しくは,出典論

文・関連論文をお読みいただきたい。ただし,作成者への問い合わせは,論文を読んでも分か

らない点のみに限っていただきたい。くれぐれも作成者にご迷惑のかからぬようにご配慮をお

願いしたい。

 また引用許可について説明したい。学術雑誌などに掲載された尺度は,作成者ご本人がその

著作権を持っている(厳密に言うと著作者人格権。出版権や著作財産権は掲載雑誌が有してい

る場合が多い)。このため,学術雑誌への投稿や学会での発表など,結果を公表することを目

的とした研究でこれらの尺度を使用する場合には,2 つの考え方がある。

 第 1 は,使用前に著作(権)者に引用許可をとるべきであるという考え方である。医学や看

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viiは じ め に

護学の世界では,この立場をとる方が多く,心理学でもこうした立場をとる研究者が増えてい

る。アメリカで発表される尺度ではこうした考え方がとられることが多いため,海外の尺度を

邦訳して使用する際には,元の著作(権)者に邦訳権の設定許可を得る必要がある。

 第 2 は,販売目的で作成された尺度ではなく,学会誌に公刊された尺度を学術目的で使用す

る場合には,著作(権)者に許可をとる必要はないという立場である。この立場は,学会誌に

掲載された研究手続きなどを非営利的目的で使用をする際には,開発者に使用許可をとること

はないという「学術成果の公開性」という考え方に立脚している。この立場にたてば,学術目

的で使用する際に事前許可を必要とする尺度は学術雑誌に全項目を公開すべきでないことにな

る。実際に販売目的で開発された尺度はこうした立場をとって,項目を学会誌に掲載していな

いことが多い。

 これらの中間的な立場として,尺度には著作権があるが,尺度内の個々の項目には著作権が

ないという考え方もある。

 いずれの立場が妥当であるかについては,本シリーズの監修者・編者間でも合意を得ていな

い。

 ただし,いずれの立場をとるにせよ,卒業論文のように結果の公表を予定していない研究で

尺度を引用する場合には,事前の引用許可は不要と考えられる。また,営利目的での使用時に

は,著作(権)者に許可を得る必要があるという点も共通している。出版物は学術図書であっ

ても,営利的引用と見なされるために,引用や転載にあたっては上記の関係者に,出版前に許

可を得る必要がある。今回は,著作者(尺度を作成された各研究者)に加えて,著作権者(雑

誌編集委員会や出版社,ただし紀要は除く)からも許諾を得ている。

 なお,Web 上への尺度の掲載も引用や転載に該当するので,くれぐれも注意をお願いしたい。

 いまひとつ。尺度の回答選択肢について,同じ 5(あるいは 7)段階評定尺度においても,

「全く・やや・どちらかというと」など,段階の表現が尺度によって異なる場合がある。本書

では,尺度作成者の意向(原論文)を尊重して,そのまま採用している。同様に,信頼性や妥

当性の記述についても,統一されていない。これも原論文を尊重する方針によるものであり,

ご理解を賜りたい。

 最後に,本書の編集は,多くの関係者の献身的努力に負うところが大きかった。関係者の皆

様に心から感謝する次第である。

第 V 巻編者 吉田富二雄・宮本聡介  

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ix目 次

目  次

監修のことば  堀 洋道� i

は じ め に  吉田富二雄・宮本聡介� v

1 自己・自我 1    自 己 概 念  八城 薫� 2     満たされない自己尺度(藤・湯川,2005) 5

     変化動機尺度(佐久間・無藤,2003) 10

     自己愛的脆弱性尺度(NVS)短縮版(上地・宮下,2009) 16

    自尊感情・自己評価  市村美帆� 22     被受容感・被拒絶感尺度(杉山・坂本,2006) 26

     劣等感(髙坂,2008) 30

     仮想的有能感尺度(速水,2006;Hayamizu et al.,2004) 37

    自我同一性の形成  日比野 桂� 40     改訂版世代性関心尺度(丸島・有光,2007) 42

     ジェネラティヴィティ尺度(串崎,2005a) 47

2 認知・感情・欲求 53    認知判断傾向  宮本聡介� 54     批判的思考態度尺度(平山・楠見,2004) 58

     ネガティブな反すう尺度(伊藤・上里,2001) 63

     多次元完全主義認知尺度(小堀・丹野,2004) 69

    感  情  佐藤広英� 74     一般感情尺度(小川ら,2000) 76

     一過性運動に用いる感情尺度(荒井・竹中・岡,2003) 81

    動機づけ・欲求  倉住友恵� 84     賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度(小島・太田・菅原,2003) 90

     課題価値測定尺度(伊田,2001) 95

     友人関係への動機づけ尺度(岡田,2005;Okada,2007) 102

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x 目 次

     コラム 目標志向尺度 108

3 対人認知・対人態度 111    対人態度・対人感情  立脇洋介� 112     改訂版重要他者に対する再確認傾向尺度(勝谷,2004) 114

     コラム 否定的対人感情尺度 119

    共感性・他者意識(ゆるし)  大内晶子� 120     多次元共感性尺度(MES)(鈴木・木野,2008) 123

     ゆるし傾向性尺度(石川・濱口,2007) 129

    愛着・依存  大内晶子� 136     一般他者版成人愛着スタイル尺度(ECR-GO)(中尾・加藤,2004b) 139

     対人依存欲求尺度(竹澤・小玉,2004) 146

4 親密な対人関係 151    夫 婦 関 係  太幡直也� 152     夫婦間コミュニケーション態度尺度(平山・柏木,2001) 155

     離婚観尺度(小田切,2003) 162

    親子・家族関係  大内晶子 168     親からの自律性援助測定尺度(櫻井,2003) 171

     両親の結婚生活コミットメント認知尺度(宇都宮,2005) 176

    友 人 関 係  丹野宏昭 182     改訂版友人関係機能尺度(丹野,2008) 185

     友人関係測定尺度(吉岡,2001) 192

     山アラシ・ジレンマのパターン尺度(藤井,2001) 197

    恋  愛  立脇洋介� 204     異性交際中の感情尺度(立脇,2007) 206

     恋愛イメージ尺度(金政,2002) 211

     コラム 恋愛関係の影響尺度 216

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xi目 次

5 対 人 行 動 219    援  助  八城 薫� 220     援助成果測定尺度(妹尾・高木,2003) 223

     ボランティア活動継続動機測定尺度(妹尾・高木,2003) 228

     相談行動の利益・コスト尺度改訂版(永井・新井,2008) 232

    攻撃・怒り  日比野 桂� 238     怒り喚起・持続尺度(渡辺・小玉,2001) 241

     関係性攻撃傾向尺度(櫻井・小浜・新井,2005) 246

6 コミュニケーション 251    自己開示・自己呈示  畑中美穂� 252     日本語版自己隠蔽尺度(河野,2000a) 254

     自己呈示規範内在化尺度(吉田・浦,2003a) 258

    コミュニケーション  畑中美穂� 264     日常的コミュニケーション尺度(多川・吉田,2006) 266

     コミュニケーション・スキル尺度ENDCOREs(藤本・大坊,2007) 272

    インターネット・携帯電話  藤 桂� 278     情報活用の実践力尺度(高比良ら,2001) 282

     携帯メールの効用認知尺度(五十嵐・吉田,2003) 290

     インターネット行動尺度(藤・吉田,2009) 294

     コラム インターネット依存に関する尺度 301

7 社会的態度・ジェンダー 303    価値観・社会的態度  久保田健市� 304     社会考慮尺度(斎藤,1999) 308

     行動基準尺度(菅原ら,2006) 313

     死に対する態度尺度改訂版(DAP-R)(隈部,2003) 318

     観光動機尺度(林・藤原,2008) 323

     「居場所」の心理機能測定尺度(杉本・庄司,2006) 329

    性・ジェンダー  宇井美代子� 334     性的リスク対処意識尺度(草野,2006) 338

     ジェンダー・アイデンティティ尺度(佐々木・尾崎,2007) 343

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xii 目 次

     共同性・作動性尺度(土肥・廣川,2004) 352

    人 名 索 引 358

    事 項 索 引 361

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自己・自我

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この領域について

2 1 自己・自我

 「自分とはどういう人間であるのか?」「自分はどのような性格で,どのよう

な特徴をもっているのであろうか?」。自己概念・自己知識とは,このような

自分に対する比較的永続的に,安定したかたちでもっている自己像,自己イメ

ージのことである。この「自分はどういう人間であるのか?」という自分への

問いかけやその中で生じる葛藤は,とくに青年期で多く経験されるものである

と同時に,その後もその人の意識・態度・行動などあらゆるところに影響を与

えていく。本節では,その自己のありように関する個人差を測定する尺度とし

て近年開発された尺度の中から,とくに現代青年が直面していると思われる自

己の問題,あるいは現代青年に特有の自己のあり方,という視点に立ち,3 つ

の尺度を紹介する。

 藤・湯川(2005)では,近年「キレる」という言葉で代表されるような青

少年の暴力や攻撃行動の問題の背景として自己の側面に注目し,敵意的認知や

怒り感情を促進する自己の状態として,“満たされない自己”という概念を提

唱した。この“満たされない自己”は,「自己の在り方として,現実の自己は

自ら想定した基準やイメージの通りではない,という感覚を抱く傾向」と定義

され,「目標喪失感・停滞感」「自己愛傾向」「自分らしさ希求」「高い理想追求」

の 4 側面からなる。この“満たされない自己”という概念は,ヒギンズ(1987)

の自己不一致理論と,コフート(1977,1984)の誇大的・顕示的な自己イ

メージを有する自己愛の側面が背景にある。ヒギンズ(1987)の自己不一致

理論は,現実自己と理想自己が一致しないこと,そのズレが大きくなることが,

自己に対する不満や不安,動揺につながるというものであり,それが敵意的認

知や怒り感情を導くと藤・湯川(2005)は論じている。他方,コフート

(1977,1984)は,自己愛には誇大的・自己顕示的なタイプと他者の反応に

敏感で注目されるのを避ける過敏型・脆弱型の 2 つのタイプがあるとしている。

このうち,誇大的・顕示的な自己愛傾向をもつ人は自己イメージが過剰に高く,

他者からの評価に対して「自分はもっと評価されるはずだ」と感じやすい傾向

があるため,そのことが社会に対する不満につながり,外への攻撃性として現

れるのではないかと考えられている。

自 己 概 念

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22 1 自己・自我

 本節では,全体的な自己への肯定的評価である自尊感情や,学業や運動など

の能力や外的魅力などの各側面の自己に対する評価である自己評価についてと

りあげる。

 自尊感情の測定については,主として,ローゼンバーグ(1965)が作成し

た「自尊感情尺度」が使用されてきた。尺度の邦訳版として,山本・松井・山

成(1982)の尺度のほか,星野(1970)をもとに桜井(2000)が作成した

尺度も使用されている。なお,ローゼンバーグの「自尊感情尺度」については,

水間(1996)や谷(2001)のように,10 項目のうち 1 項目(「自分をもっ

と尊敬できるようになりたい」)が他項目との内的一貫性が低いために,分析

中に削除している研究も存在する。加えて,阿部・今野(2007)のように,ロ

ーゼンバーグの自尊感情尺度の教示文や項目文に,「いま」という表記を加

え,現時点の自尊感情,すなわち状態自尊感情を測定する試みも行われている。

 また,近年の自尊感情研究では,さまざまな側面から,自尊感情の概念の

見直しが行われている。たとえば,自尊感情は他者からの受容や拒否を常に

監視するシステムであると主張するソシオメーター理論(sociometer theory;

Leary et al.,1995)や,自尊感情が人間の死への不安を緩和すると主張する

存 在 脅 威 管 理 理 論(terror management theory;Solomon,Greenberg,&

Pyszczynski,1991)がある。加えて,従来の自尊感情研究が注目してきた

自尊感情の高さだけではなく,自尊感情の質にも注目する必要があることが指

摘されている(Kernis,2003)。代表的な自尊感情の質として,随伴性自尊感

情(contingent self-esteem),潜在的―顕在的自尊感情(implicit-explicit self-

esteem),自尊感情の変動性(stability of self-esteem)などがあり,それぞれ

検討が行われている(Kernis,2005)。

 上述した自尊感情に関する各理論は,自尊感情研究だけではなく,周辺領域

の研究にも応用されている。たとえば,杉山・坂本(2006)は,ソシオメータ

ー理論を,抑うつのメカニズムを説明する自己認知過程の視点と,対人関係の

視点を結び付ける理論的手かがりとしてとらえている。自尊感情の低下は抑う

つの主要な症状の一つであり,ソシオメーター理論をふまえると,対人関係の

問題が抑うつ的な自己認知過程に関わって自尊感情を低下させる可能性が示唆

自尊感情・自己評価

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40 1 自己・自我

 自我同一性(アイデンティティ)とは,エリクソンの人格発達理論において

中心となる概念であり,青年期において自己の存在について問いかけ,確立さ

れる自我といえる。また,エリクソンの理論は人の一生の間に訪れる危機をそ

れぞれの発達段階と対応させたものであり,8 段階からなる。すなわち,第Ⅰ

段階「信頼 対 不信」,第Ⅱ段階「自律性 対 恥・疑惑」,第Ⅲ段階「自発性 対

罪悪感」,第Ⅳ段階「勤勉性 対 劣等感」,第Ⅴ段階「自我同一性 対 自我同一

性拡散」,第Ⅵ段階「親密性 対 孤立」,第Ⅶ段階「世代性 対 停滞」,第Ⅷ段階

「統合性 対 絶望」である。その中でも青年期の自我同一性はとくに重視され

ており,ライフサイクル全体に関わる危機と考えられる。

 20 世紀半ばまでの心理学においては,主に乳幼児期から青年期に焦点が当

てられており,青年期以降の中年期や老年期はそれほど注目されていなかった。

たとえば,フロイトの示した発達段階でも最終段階は思春期以降であり,中年

期や老年期に当たる段階はみられない。しかしながら,現在では,高齢化社会

に伴って老年期や老年期へとつながる中年期に対する関心が高まっている。中

年期はそれまでの発達段階とは異なり,さまざまなものを喪失する時期といえ

る。身体的なものとしては体力の衰えを感じるであろう。また,友人などの死

をきっかけに,自らの老いや死に対して不安を感じたり,自らの人生に限り

があることを自覚し,将来への展望が狭くなったりすることもある。仕事上

においても,体力の衰えや定年までの時間による限界を意識し始める(岡本,

1997,2002,2007)。また,家族関係においては,子どもの自立,親の死

との遭遇などにより,自らの親としての役割の喪失や夫婦関係・家族構成の再

構築などが求められることもある(岡本,1997,2002,2007)。そのため,

この時期は,青年期から獲得されてきた自我同一性の再評価や変化が起こる重

要な時期であることが指摘されている(クロガー,榎本(編訳),2005)。

 この中年期で重要となる概念が「世代性」である。これは,子孫以外にも技

術や思考など新しい存在や観点を生み出していくことであり,次に続く世代を

確立し,継承していくことも含まれる。仕事の上では,責任ある役割を与えら

れながら後継者の育成を行う時期である。つまり,中年期は新しいものを生み

出し充実感や達成感を感じる一方で,次世代を世話し,継承することが求めら

自我同一性の形成

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認知・感情・欲求

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54 2 認知・感情・欲求

認知判断傾向 人間には,ある一定の傾向に沿った思考,判断をしがちな人とそうでない人

がいる。本章では,こうした認知・判断の傾向や思考パターンを「認知判断傾

向」とよぶことにする。人間の独特な認知傾向を指摘した研究として,古いも

のではウルフ(Wulf,F.,1922)の記憶方略の研究が知られている。この研

究では,簡単な図形を短時間提示した後でその図形を再生させると,図形をよ

り見慣れたものに近づけて思い出す標準化(normalizing)や図形の特定の部分

が強調されて細部が省略される強調化(sharpening)などの傾向がみられるこ

とが報告されている。認知判断傾向の個人差は,人間が外界の情報を単に受動

的に受け入れるのではなく,個人によってその処理の仕方が異なっていること

を意味している。認知的な思考・判断,処理の傾向の個人差については認知ス

タイルという用語でくくられた研究領域があり,ケイガン(Kagan,1976)の

熟慮型・衝動型,ウィトキンら(Witkin et al.,1977)の場依存・場独立,ビ

エリ(Bieri,1955)の認知的複雑性・単純性などが有名である。

 認知スタイル研究にみられる判断傾向のなかには,白か黒かのような類型論

的な志向をもったものがある。その一方で,傾向の程度を特性論的にとらえ,

量的に表す研究も多い。認知的複雑 - 単純性を測定するために開発された Rep

テストなどはその代表例である。また自分の成功や失敗の原因を自分自身に求

め,その成功や失敗を自分でコントロールできると考える傾向の強弱を測定

したロッターの「I-E スケール」(Rotter,1966)などは心理尺度化された認

知判断傾向尺度の代表的なものの一つといえるだろう。既刊の『心理測定尺度

集』では「Locus of Control 尺度」(鎌原・樋口・清水,1982),「発話傾向尺

度」(岩男,1995),「時間的展望体験尺度」(白井,1997),「認知的熟慮性 -

衝動性尺度」(滝聞・坂元,1991),「心理的健康と関連する曖昧さ耐性尺度」

(増田,1994),「認知的欲求尺度」(神山・藤原,1991)などを紹介した。

 本巻では以下の 3 つの尺度をとりあげる。

 何か思い悩むことがあったときに,そのことを考え続けることが私たちに

はよくある。物事について長い間繰返し考えることを「反すう(rumination)」

というが,この反すうが精神的健康にネガティブな影響を及ぼすことが明らか

にされてきている(Lavallee & Campbell,1995;Martin & Tesser,1989;

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74 2 認知・感情・欲求

 私たちは,日常生活を送る中で,さまざまな感情(feeling)を体験する。感

情には,怒り,恐れ,悲しみ,喜びなど,さまざまな種類がある。また,感情

の強度や持続時間によって,弱く持続的なものは気分(mood),強く短時間し

か持続しないものは情動(emotion,affection)と分類される。

 感情には,特性(trait)としての感情と状態(state)としての感情があり,

前者は個人がもつ比較的安定した感情傾向,後者は何らかの刺激・環境が与え

られた際に生じる一時的な状態のことをいう。これまでの感情に関する研究で

は,状態としての感情を測定する尺度と,特性としての感情を測定する尺度が

それぞれ多数開発されている。

 近年,わが国において開発されている感情に関する尺度には,次のようなもの

がある。まず,感情状態を測定する尺度である。たとえば,全般的な感情状態

を一度に測定するための尺度として,小川ら(2000)の「一般感情尺度」があ

げられる。同様に,特定の状況(運動場面など)における全般的な感情状態を

測定する尺度も作成されている(荒井・竹中・岡,2003)。次に,特性として

の感情を測定するための尺度である。たとえば,罪悪感(有光,2002;石川・

内山,2002;大西,2008)や安堵感(門地・鈴木,2000),個人的苦痛・負

債感・恥・罪責感を含む自己意識的感情(菊池・有光,2006)を測定する尺度

などが開発されている。これらの感情特性は,主に精神的健康や適応との関連

が指摘されている。また,感情そのものではなく,感情を抑制する傾向を測定

する尺度も作成されている。一般に,感情の抑制は身体的・精神的に悪影響を

及ぼすといわれており,感情抑制的な性格傾向をもつ者は,ストレスへの脆弱

性が高く,慢性的な疾患に陥りやすいことが指摘されている。このような感情

抑制傾向を測定する尺度として,樫村・岩満(2007)の「感情抑制傾向尺度」,

土田(2007)の「感情表現尺度」および「感情抑制尺度」が作成されている。

 これらの尺度のうち,本節では以下の 2 つの尺度をとりあげる。なお,既

刊の『心理測定尺度集Ⅰ』(山本編,2001)では,2000 年以前に開発された

全般的な感情状態を測定する尺度,孤独感・シャイネスに関する特性を測定す

る尺度が紹介されている。

 まず,小川ら(2000)の「一般感情尺度」は,全体的な感情状態を「肯定

感  情

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84 2 認知・感情・欲求

 人間を含めた動物が行動を生起する際には,その行動の原因や理由が存在す

る。たとえば,あなたが「道端である人に声をかけた」とする。あなたが声を

かけたのは,「その人がハンカチを落としたから」かもしれないし,「その人が

しばらくぶりに会った友人だったから」かもしれない。はたまた,「その人を

デートに誘おうと思ったから」なのかもしれない。いずれにせよ,何らかの理

由があったからあなたは声をかけるという行動に至ったのである。

 このように,何らかの原因によって行動が引き起こされ,持続されるプロセ

スやメカニズムのことを総称して「動機づけ」という。一方,行動の原因の中

でも,何かを求めようとする内的状態のことを「欲求」とよぶ。ここでは,動

機づけおよび欲求に関する研究動向と近年開発された尺度について紹介したい。

 動機づけや欲求に関する研究は,遅くとも 1930 年代ごろから存在し,歴

史が古い。動機づけや欲求概念は長い時間をかけて,研究分野や欲求の種類に

よって細分化され,たとえば欲求と一言でいっても食欲,睡眠欲のような生

理的な欲求から,承認欲求,所属欲求,親和欲求といった社会的な欲求まで

数多くの概念が存在する。動機づけに関しても,複数の研究者が自己決定理

論(Deci & Ryan,1985;Ryan & Deci,2000),達成目標理論(Dweck &

Leggett,1988;Elliot & Harackiewicz,1996;Nicholls,1984),期待価値

理論(Eccles & Wigfield,1985)といった異なる理論を提唱しており,それ

ぞれの理論において異なる複数の概念が提出されている。こうした事実と同期

するように,動機づけ・欲求に関する尺度も多様化しているといえる。

 また近年では,概念が細分化されるだけでなく,さまざまな領域で研究が行

われるようになった。すなわち,従来研究の多くみられた学業領域だけでなく,

スポーツ,友人関係,恋愛,子育て,進路・職業選択などの多様な領域で研究

がなされるようになり,概念や理論はより一般化されるようになったといえる。

対して尺度に関しては,その領域固有の尺度が作成されるようになっている。

 本節ではこうした多様な尺度の中でも,2000 年以降に発表され,有用性が

高いと考えられる尺度をいくつか紹介する。なお紹介するのは,個人の一般的

傾向をとらえる尺度や,学業場面,対人場面における尺度が中心である。それ

ゆえに,本節ではとりあげられなかった領域固有な尺度に関しては,各領域の

動機づけ・欲求

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対人認知・ 対人態度

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112 3 対人認知・対人態度

 私たちは,日々の生活でさまざまな人と関わる機会を持っている。同じよう

な状況でも,相手に応じて関わり方が異なるということは,しばしばみられる。

たとえば,まったく同じ依頼をする場合でも,ある人に対しては笑顔で頼むが,

別の人に対しては無表情で頼むかもしれない。このような人との関わり方の違

いは,「対人態度」という概念によって説明される。

 対人態度とは,他者への行動に対して影響を与える,組織化された内的準備

状態のことである。対人態度の構成要素の一つであり,比較的身近なものは,

好意,尊敬の念,嫌悪感,苦手意識などの対人感情である。先ほどの例では,

好意的な態度や尊敬の念を抱いている相手には,笑顔で依頼し,嫌悪的な態度

や苦手意識を抱いている相手には,無表情で依頼したと説明することができる。

 対人態度や対人感情は,比較的安定したものであると考えられており,人と

の関わりを予測するうえで,非常に有益な概念である。そこで本節では,対人

態度と対人感情に関する尺度を,一つずつ紹介する。

 対人態度に関しては,「改訂版重要他者に対する再確認傾向尺度」(勝谷,

2004)をとりあげる。本尺度は,重要な相手に対し,相手も自分を重要であ

ると思っているかを,しつこく確認してしまう傾向を測定するものである。友

人関係など特定の関係に限定されない内容であるため,さまざまな対人関係に

関する研究で用いることができる。

 対人感情に関しては,コラムで「否定的対人感情尺度」(高木,2003,

2004)を紹介する。本尺度は,否定的対人感情を測定できる数少ない尺度の

一つである。否定的対人感情を「嫌悪」「劣位」「違和感」「脅威」の 4 側面で

とらえることができる。現実の人間関係では嫌いな人なども少なからず存在す

るが,否定的対人感情を扱った研究は少ないため,今後研究が増加することが

望まれる。

対人態度・対人感情

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120 3 対人認知・対人態度

共感性・他者意識(ゆるし) 共感性(empathy)とは,「他者の経験についてある個人が抱く反応を扱う

一組の構成概念」と定義される(Davis,1994)。これまでの共感性の定義には,

他者の視点に立って,その気持ちや感情を理解する認知的側面と,他者の情動

状態を知覚して,自分も何らかの情動を経験する情動的側面のいずれかを強調

するものが存在していた。しかし,近年では,デイヴィス(1994)の定義に

代表されるように,この両側面から共感性をとらえようとする多次元的な視点

が一般的になりつつある(たとえば,葉山ら,2008;鈴木・木野,2008;登

張,2003)。さらに共感性の概念を明確にする上で,考慮すべき点を 2 点あ

げる。

 1 点目は,「自他の分化の程度」(澤田,1992)である。自己と他者が分化

していない状態においては,他者の感情とほぼ同一の感情を経験するであろう

し,自己と他者が明確に分化されている状態では,他者の感情と同一ではない

が類似した,あるいはそれと何らかの関連をもつような感情反応が生じると考

えられる。デイヴィス(1994,菊池訳,1999)は,前者を並行的所産,後

者を応答的所産とよんで区別している。並行的所産は,幼い子どもが,他者が

転んで泣いているのを見ると自分も悲しくなって泣いてしまうといった感情反

応に代表されるように,乳幼児に独特なものと見なされがちである。しかし,

「もらい泣き」という言葉があるように,時には成人においても生じるものと

考えられる。応答的所産は,相手の苦しみに対して,哀れみや同情といった相

手の感情とは異なった感情を抱くことを指し,自己と他者を区別する認知能力

の発達に伴ってこのような反応が生じるようになると考えられる。ただし,応

答的所産のうち,緊急時にはどうしてよいかわからなくなる,といった反応

(デイヴィス(1983)では「個人的苦痛」とよばれる)は,純粋な共感を測

定するものではないと指摘する研究者も存在する(たとえば,Baron-Cohen &

Wheelwright,2004;葉山ら,2008)。

 2 点目は,自他が分化された上で共感的反応が生じたとき,それが自己指向

的であるか,他者指向的であるか,という点である。たとえば,他者が苦しん

でいる様子を見たとき,自分自身が苦しくなり,自己の苦しみを和らげること

に方向づけられている場合を「自己指向的反応」,他者の苦しみに対して同情

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136 3 対人認知・対人態度

 愛着(アタッチメント)の定義は研究によってさまざまであるが,「人が

特定の他者との間に築く緊密な情緒的結びつき(emotional bond)」(遠藤,

2005)という定義が比較的一般的である。元来,愛着は,乳幼児期から児童

期の親子関係において注目された概念であるが,近年では,成人期における友

人関係,恋愛関係,夫婦関係などにおいても成り立つと考えられるようになっ

た。

 ヘイザンとシェイバー(1987)が恋愛を愛着プロセスであると概念化し

て以来,成人愛着研究では,恋愛対象への愛着スタイルを測定することが重

要な課題となった。ヘイザンとシェイバー(1987)は,エインズワースら

(1978)の幼児の 3 つの愛着分類にもとづき,「安定型(Secure)」「アンビバ

レント型(Anxious/ambivalent)」「回避型(Avoidant)」という 3 分類を提案

した。そして,この 3 分類の特徴が記述してある 3 つの文章を調査対象者に

読ませ,その中からもっとも当てはまるものを 1 つ強制選択させることで彼

らの愛着スタイルを決定する尺度を開発した(吉田,2001,pp.115-116

に掲載)。それ以降,数多くの愛着スタイル尺度が開発されてきた中で,多項

目式の尺度としては,「親密な対人関係体験尺度(the Experiences in Close

Relationships inventory;ECR)」(Brennan,Clark,& Shaver,1998;日本

語版 ECR は,中尾・加藤,2004a)が,多くの研究者に使用される規準的な

測度となりつつある(中尾・加藤,2004a;2004b)。この ECR は,「親密性

の回避(Avoidance)」と「見捨てられ不安(Anxiety)」という 2 因子から構

成される。前者は,愛着対象との親密な関係の回避,後者は,愛着対象から見

捨てられるかもしれないという不安を指す。これがそれぞれ高いか低いかに

よって,愛着スタイルを 4 つ(「安定型」「拒絶型」「とらわれ型」「恐れ型」)

に分類している(2 次元・4 分類愛着スタイルモデル)。この ECR を,恋人で

はなく,一般化された他者を対象として作成されたのが,本節で紹介する「一

般他者版成人愛着スタイル尺度(ECR-GO)」(中尾・加藤,2004b)である。

加藤(1998/99)が指摘するように,初対面の段階から対人関係を形成して

いく場面,親密さが明確でない状況で愛着行動を行う場面,あるいは他者とス

トレスのかかるやりとりをしなければならない場面において,他者との相互作

愛着・依存

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親密な対人関係

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152 4 親密な対人関係

 「夫婦とは 2 つの半分になるのではなく,1 つの全体になることだ」。著名な

画家であるゴッホは,夫婦関係をこのように表現したとされる。ゴッホの言葉

は,夫婦は別々の人格をもっているが,2 人で 1 人という感覚になれることが

理想的であることを示唆している。このように,「1 つの全体」と表される夫

婦関係については,大別すると以下の 3 つの観点から尺度が作成されている。

第 1 に,「1 つの全体」内でのコミュニケーション,すなわち,夫婦間のコミュ

ニケーションの様態に焦点をあてた尺度である。第 2 に,「1 つの全体」に対

する評価,すなわち,夫婦間の関係評価に焦点をあてた尺度である。 第 3 に,

「1 つの全体」の解消,すなわち,婚姻関係の解消に焦点をあてた尺度である。

なお,本節では,夫婦関係として,法律で定められた婚姻関係にある者同士の

関係を想定することとする。

 夫婦間のコミュニケーションの様態に焦点をあてた特徴的な尺度として,本

節で紹介する平山・柏木(2001)の「夫婦間コミュニケーション態度尺度」

があげられる。この尺度には,夫婦を構成する個人に焦点をあて,自分と相

手のコミュニケーションスタイルについて,夫と妻それぞれに回答を求めると

いう特徴がある。そして,相手へのコミュニケーション態度の比較,コミュニ

ケーション態度における送り手と受け手の認知の比較など,夫婦間のコミュ

ニケーションが多様な観点から検討されている(たとえば平山・柏木,2001,

2004)。

 次に,夫婦間の関係評価に焦点をあてた尺度については,結婚満足度(Huston

& Vangelisti,1991),現在の夫婦関係(Locke & Wallace,1959;Spanier,

1976),夫婦間の愛情(菅原・詫摩,1997),親になることによる夫婦関係の

変化(小野寺,2005)など,現在の関係に対する認知に着目した尺度が多く

みられる。また,夫婦関係の現実と併せ,夫婦関係の理想の姿に評定を求める

尺度も作成されている(柏木・平山,2003)。これらの尺度では,夫と妻の両

方,あるいは片方に対し,自分たちの夫婦関係について評定を求める。一方で,

子どもに両親の関係について評価を求める方法により,夫婦関係を検討する尺

度も開発されている(Grych, Seid & Fincham,1992;飛田・狩谷,1992;

川島ら,2008;前島・小口,2001)。

夫 婦 関 係

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この領域について

168 4 親密な対人関係

 近年,晩婚化・非婚化,少子化,離婚の増加,親の育児不安・虐待,家族間

での殺人など,家族において生じるさまざまな問題が毎日のように報じられる

ようになった。こうしたことが一般に問題視される背景には,親子関係,家族

関係が私たちに与える影響の大きさを,私たち自身が多少なりとも認識してい

るからであろう。これまでの心理学の研究では,こうした親子・家族関係の何

が問題で,具体的にどのような影響を与える可能性があるのかについて,数多

くの検討がなされてきた。それに伴い,さまざまな角度から親子関係,家族関

係を測定する尺度が開発されている。本書では,そのすべての尺度を紹介する

ことはできない。よって,ここでは 2000 年以降の研究で作成された尺度を可

能な限り紹介する。必要に応じて参照されたい。

 まず,子どもが認知した親子関係を測定する尺度を紹介する。若原(2003)

は,大学生の「親への態度」と「親への同一視」を測定する「親子関係尺度

(parents-adolescent scale;p-a scale)」を父親用と母親用をそれぞれ作成し

ている。また,岡部(2001)は,母親,父親それぞれとの関係について,「親

密さ」と「嫌悪・拒否」を測定する「母親(父親)関係尺度」を作成している。

母親との関係に特化したものでは,北村・無藤(2001)が,成人女性(27 〜

34 歳)の「現在の母親との親密的・依存的関係」を測定する尺度を作成して

いる。また,藤原・伊藤(2007)は,20 〜 40 歳代の女性を対象に,5 つの

領域からなる「母娘関係尺度」を作成し,ライフステージおよび同別居の違い

による関係の変化を明らかにしている。父親との関係に特化したものでは,春

日(2005)が,女子大学生を対象に,「娘の心のなかの父親像尺度」および「娘

の心のなかの父娘関係尺度」を作成している。以上の尺度を概観するにあたり,

女性では,親子関係が青年期以降もアイデンティティ発達などに影響を及ぼす

といわれていることもあり(北村・無藤,2001),女性を対象に,その親との

関係の認知に注目した研究が多く行われていることがうかがわれる。

 次に,母親が認知した家族関係を測定する尺度として,藤松・野島(2002)

は,大学生の子どもをもつ母親を対象に,「父親の家族とのかかわりの程度を

測る尺度」「母親感情を測る尺度」「子どもの自立の受容度を測る尺度」を作成

している。彼らの尺度にもあるように,「子どもの自立に対する母親の意識」

親子・家族関係

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182 4 親密な対人関係

 人間は家族以外の集団にも所属し,家族以外の他者とも親密な対人関係を築

きながら生きている。人間が家族以外の相手と構築する親密関係の一つとして,

友人関係があげられる。私たちは幼少のころより,親や教師,さらにはミュー

ジシャンやマンガのキャラクターに至るまで,多くの他者から「友だちは大切

にすべき」「生涯の友は何物にも代えがたい宝だ」などといったメッセージを

受けているであろう。実際に,私たちは親密な友人関係を通じて,多くのこと

を学んだり,多くのものを得ている。その一方で,友人との関係が上手くいか

ないことで,悩みを抱いたり,苦しんだり,傷ついたりすることも多い。その

ため,古来より友人関係は人生における重要なトピックの一つとしてとらえら

れ,小説やドラマの題材として扱われたり,心理学や社会学,教育学などの分

野で研究対象とされ続けている。

 私たちは多くの場合,乳幼児期にはじめて,友人と「家族外の同世代の相手

との対等な他者関係」を形成する。そして乳幼児期の子どもは,対等な友人と

の関係から,教師や親からは学べない社会とのつきあい方を学習する。永田

(1989)は,子どもの友人関係が重要な意味をもつ理由として,「自己の思い

どおりにならない世界の存在を知り,自他の一致しうる解決を自分から模索す

る結果,これまでにない新しい視点を知り,対立を解決した後のより深い他者

との相互理解を経験することができる」と述べている。

 そして青年期においては,友人関係が他の時期と比べて「もっとも重要と

なる時期である」との指摘が研究者達からされている。たとえばエリクソン

(1950)の漸近発達理論においては,発達段階別の重要な対人関係の種類と

して,学齢期は「近隣集団と学校集団」,青年期は「仲間集団と外集団」,前成

人期は「友情,性,競争相手,協力相手」をあげている。また,ハヴィガース

ト(1953)が提唱した発達課題理論においては,「青年期の重要な課題として,

同性および異性の友人との親密な関係の構築」があげられている。さらに,青

年期の友人関係研究を概観した松井(1990)は,青年の社会化にとっての友

人関係の機能として「精神的安定化の機能」「社会的スキルの学習機能」「モデ

ル機能」の 3 つがあるとまとめている。すなわちこれらの理論から,青年期

の友人関係は,さまざまな発達課題を乗り越え,新たな自己を確立し,社会へ

友 人 関 係

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204 4 親密な対人関係

 青年期は,人間関係がそれ以前と比べて大きく変化する時期である。中で

も恋愛関係は,青年期に本格的に形成されるため,多くの青年の関心や悩み

の対象となっている。心理学における恋愛研究は,1970 年ごろに本格的に開

始された。初期の恋愛研究は,愛情尺度と好意尺度を開発したルビン(Rubin,

1970)に代表されるように,恋愛の中心的なテーマである「愛情」を理解す

ることに関心が集まっていた。しかし,恋愛関係では,愛情のようなポジティ

ブな側面ばかりでなく,嫉妬などのネガティブな側面も数多くみられる。近年

では,恋愛関係のアンビバレントな状態に焦点を当てた研究も発表されている。

そこで本節では,恋愛関係を多面的に把握することができる,2 つの尺度を紹

介する。

 第 1 は,「異性交際中の感情尺度」(立脇,2007)である。本尺度は,特定

の異性との交際で生じる,「情熱感情」「尊敬・信頼感情」「親和不満感情」「攻

撃・拒否感情」の 4 つの感情を測定するものである。肯定的感情と否定的感

情をあわせてとらえることで,関係の状態について深く理解できると期待され

る。

 第 2 は,「恋愛イメージ尺度」(金政,2002)である。恋愛イメージとは,

恋愛自体の見方やとらえ方であり,感情などの特定の相手への意識とは異なる

ものである。そのため,調査時点で恋愛関係にない人でも,回答しやすいとい

う特徴を有している。本尺度では,「刹那的・付加価値」「大切・必要」など 7

つのイメージを測定することができる。

 またコラムでは,「恋愛関係の影響尺度」(髙坂,2009)を紹介する。本尺度

によって,青年が恋愛関係から,幅広い側面において影響を受けていることが

理解できるであろう。

恋  愛

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対 人 行 動

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220 5 対 人 行 動

 対人行動の中で,困っている他者に手を差し伸べ,他者のためになることを

意図して行う行動を「援助行動」とよぶ。「援助行動」は,「向社会的行動」と

よばれる利他的行動の一側面である。「向社会的行動」とは,外的報酬を期待

せず,他者に利益をもたらすために行われる自発的行動のことであり,「援助

行動」のほかに贈答行動や協力といった行動が含まれる。

 『心理測定尺度集Ⅱ』では,箱井・高木(1987)の「援助規範意識尺度」,

菊池(1988)の「向社会的行動尺度(大学生版)」,相川・吉森(1995)の「心

理的負債感尺度」が紹介されている。援助規範意識は,「困っている人がいれ

ば助けるのは当然のことである」というような道徳的意識の程度であり,その

人が援助行動を取るかどうかに関わる要因といえる。また「向社会的行動尺度」

や「心理的負債感尺度」が対象とする援助行動は,その時々の状況や場面での

援助行動であり,単発的,短期的な援助行動を対象としているといえる。

 そこで本節では,これまでの『心理測定尺度集』で紹介されていない長期

的・継続的な援助行動の側面として,ボランティア活動に関する尺度を紹介す

る。ボランティア活動は近年,災害ボランティアや地域ボランティアなど,地

域コミュニティの重要性という観点からも注目されることが多くなっている援

助行動の一つといえる。また,同時にボランティア活動は,活動者側にとって

は自己存在感や生きがい感,自己実現といった側面もあることから,個人の成

長や社会とのつながりを見出す行動としても注目に値する。援助者にとっても

被援助者にとっても,ボランティア活動は,継続的に活動が実施されることが

重要である。妹尾(2003)は,「援助の効果認識」をもつほど「援助成果(援

助者自身の満足感)」が得られやすく,そのことが「ボランティア活動継続の

動機づけ」につながるという,ボランティアの内的心理過程を想定して,中高

年層を対象に,「援助成果測定尺度」と「ボランティア継続動機測定尺度」を

作成した。「援助成果測定尺度」は「愛他的精神の高揚」「人間関係のつながり」

「人生への意欲喚起」の 3 つの次元で構成され,ボランティア継続動機は「自

己志向的動機」「他者志向的動機」「活動志向的動機」に分けられている。援助

成果の「愛他的精神の高揚」は「自己志向的動機」「他者志向的動機」「活動志

向的動機」のいずれの継続動機にも強く影響することが示され,「人間関係の

援  助

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238 5 対 人 行 動

 攻撃や怒りは,社会的な問題との関係から常に注目されており,数多くの研

究が行われている。そして,攻撃と怒りの関係性については,一般的に「怒り

を感じると攻撃する」と考えられることが多い。しかし,怒りを感じても攻撃

行動を行うとは限らず,私たち日本人はむしろ,間接的な表出を多く行うこと

が示されている(木野,2000)。逆に,怒りを感じていなくても攻撃行動を行

うことがある。脅迫などが良い例であろう。このように,怒りは攻撃行動の生

起要因の一つにすぎず,攻撃行動は怒り喚起後の行動の一つにすぎないのであ

る。

 また,身体的な健康との関連において,怒り(Anger)・敵意(Hostility)・

攻撃(Aggression)は AHA としてまとめられ,それぞれが攻撃性の感情的側

面,認知的側面,行動的側面として定義されることもある。AHA は,冠動脈

性心疾患(coronary heart disease)との関連が示唆されている(Dembroski

& Costa,1987)。このような攻撃や怒りに関する研究では,次のような尺度

がよく利用されている。攻撃性については「日本語版 BAQ(Buss-Perry 攻撃

性質問紙)」(安藤ら,1999)や「敵意的攻撃インベントリー」(秦,1990)

が利用されており,怒りについては「STAXI 日本語版(State-Trait Anger

Expression Inventory)」( 鈴 木・ 春 木,1994) や「 日 本 語 版 MAQ(Müller

Anger Coping Questionnaire)」(大竹ら,2000)が利用されている。なお

STAXI については,石原ら(2005)が STAXI の修正版である STAXI-2 の日

本語版の作成を試みている。

 これらの尺度は攻撃や怒りの多面性を考慮して作成されており,全般的な特

性を測定するために適した尺度である。しかしながら,たとえば,実際に生起

される攻撃行動は,その形態や目的などからさまざまな分類がなされており,

上記の尺度を用いて,より詳細な検討を行うことには限界があると考えられる。

そのため,攻撃や怒りのそれぞれの側面や分類に合わせ,さまざまな尺度が開

発されている。

 たとえば,攻撃については,濱口(2005,2007)が能動的攻撃性と反応

的攻撃性を測定する尺度を(どちらも中学生対象),福森(2006)が自己破壊,

すなわち,自己への攻撃傾向を測定する尺度を作成している。このような中,

攻撃・怒り

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 コミュニケーション

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この領域について

252 6 コミュニケーション

自己開示・自己呈示 他者と関わる中で,自分自身に関する情報を伝えるという行為は頻繁に行わ

れる。こうした自分自身に関する情報の伝達行為は,心理学において「自己開

示」や「自己呈示」とよばれている。両者の大きな違いは,行為の意図性や,

伝達される内容の率直さにある。自己開示は,聞き手に対して率直に自分自身

の気持ちや経験などを伝えることである。一方,自己呈示は,他者から自分自

身がどのように思われているかに注意を払い,意図的にコントロールをして自

分にとって都合の良いイメージを他者に伝える行為である。また,自己開示は

言語的な伝達が中心であるが,自己呈示では容姿や服装,振る舞い方など非言

語的な伝達も含め,全体的にどのようなイメージを他者に伝えるかという点が

重視される。

 本節では,自己開示に関する尺度として,河野(2000)による「日本語版

自己隠蔽尺度」を紹介する。この尺度は,否定的もしくは嫌悪的な経験に特化

して,どの程度積極的に隠蔽するか,すなわち他者に伝達しないようにするか

を測定する尺度である。普段の会話の中で自分自身に関する情報をどの程度

伝達するか,という一般的な自己開示を測定する尺度については,『心理測定

尺度集Ⅰ』に掲載されている「JSDQ」(Jourard & Laskow,1958)や,榎本

(1997)による「ESDQ」などを参照されたい。

 自己呈示に関する尺度としては,吉田・浦(2003a)による「自己呈示規

範内在化尺度」を紹介する。自己呈示研究では,文化によって望ましいとされ

る自己呈示戦略が異なることが見出されている。具体的には,欧米文化圏では

自身の能力について主張的に呈示し,積極的に自分自身を印象づける自己呈示

が望ましいとされる一方,東洋文化圏では自身の能力についてはあからさまに

主張せず,控えめにあるいは自己卑下的に振る舞う自己呈示が望ましいとされ

る(吉田・浦,2003b)。このように文化によって異なる自己呈示戦略の規範

を個々人がどの程度自分の中に取り入れて自己呈示を行っているかを測定する

尺度が,「自己呈示規範内在化尺度」である。

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264 6 コミュニケーション

 コミュニケーションという言葉は,普段の生活の中でもよく耳にするが,心

理学では,人々のあいだで情報やメッセージを伝えたり交換したりする過程を

総称する用語として用いられている。情報やメッセージのやりとりは,テレビ

やラジオなどのマス・メディアを媒介して行われることもあれば,世間話や相

談事のような二者間あるいは複数の人々の間で行われることもある。前者のよ

うにマス・メディアを媒介して不特定多数に情報を送るコミュニケーションは

マス・コミュニケーションとよばれ,後者のような個人のレベルで行われるコ

ミュニケーションは対人コミュニケーションとよばれる。

 本節では,対人コミュニケーションに関する尺度として,「日常的コミュ

ニケーション尺度」(多川・吉田,2006)と,「コミュニケーション・スキル

尺度 ENDCOREs」(藤本・大坊,2007)を紹介する。「日常的コミュニケー

ション尺度」は,ある特定の二者間において日常的にどのようなコミュニケー

ションが行われているかを測定する尺度である。恋人間など,とくに親密な関

係におけるコミュニケーションの様相を検討することができる。「コミュニケ

ーション・スキル尺度 ENDCOREs」は,コミュニケーションを円滑に行うた

めに必要なコミュニケーション・スキルを 6 つに分類し,これらの下位スキ

ルを構造化したモデルの名称であり,各下位スキルを測定する尺度を提案して

いる。先行研究において開発されていた複数のコミュニケーション・スキル尺

度を概観し,その内容を包括的に検討した上で ENDCOREs の測定項目が作

成されており,従来の尺度を整理し直した統合的なコミュニケーション・スキ

ル尺度といえる。

 これらのほかに,コミュニケーションに関わる尺度として,どのような

規則にもとづいて会話を行っているかを測定する「会話規則尺度」(桑原ら,

1989)や,複数人での会話にどのように関わるかを測定する「コミュニケー

ション参与スタイル尺度」(藤本,2008),会話中に発言を控える傾向を原因

や動機別に測定する「発言抑制尺度」(畑中,2003)などが発表されている。

コミュニケーション

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278 6 コミュニケーション

 高度に情報化された社会を生きる私たちにとって,日々押し寄せる膨大な情

報を主体的に選択し活用する能力は,今やなくてはならない能力となった。ま

た,情報通信技術(Information and Communication Technology;ICT)を使

いこなし,周囲の人々のみならず,不特定多数の未知の相手とコミュニケーショ

ンを行うことも,もはや珍しいことではなくなりつつある。世界に 17 億 3,400

万人以上ものインターネット利用者が存在する現在において(Internet World

Stats,2009),人々は,さらに進化を続けるさまざまな技術をどのようにと

らえ,どのように利用し,また逆に,どのような影響を受けているのであろうか。

 本節では,2000 年以降に作成された,次の 3 つの尺度をとりあげる。第 1

に,高比良ら(2001)によって開発された,「情報活用の実践力尺度」である。

情報通信技術や情報そのものを適切に使いこなす能力としての「メディア・リ

テラシー」の重要性は,識者や専門家の間のみならず,教育の現場でも指摘さ

れてきている。しかし,その実体や本質はあまり明確にされておらず,実証的

な検討も十分になされてこなかった。これに対し高比良ら(2001)は,「情

報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研

究協力者会議(1998)」の最終報告書などを参考に,「情報活用の実践力」を,

6 種類の能力から構成される総合的な能力として定義した。そして,それらを

網羅的に測定できる尺度として本尺度を作成している。明確な定義にもとづき,

信頼性と妥当性が十分に確認された本尺度は,「リテラシー」に関するさまざ

まな問題に取り組んでいく際に,重要な役割を果たすものと期待される。

 第 2 にとりあげるのは,五十嵐・吉田(2003)の「携帯メールの効用認知

尺度」である。国際電気通信連合(International Telecommunication Union;

ITU)は,世界の携帯電話加入件数が,2010 年末までに 50 億に達するとの

見通しを発表している(CNET reviews,2010)。こうした急速な普及は,携

帯電話や携帯メールが,それまでのメディアにはない独自な特徴をもつメディ

アとして認知されているからにほかならない。この点に着目し,都築・木村

(2000)および岡本・高橋(2006)は,対面・携帯電話・携帯メールなどの

コミュニケーション形態を,利用者がどのように受け止めているかという認知

(メディア・コミュニケーション観)を分析した。そして,いずれの形態にも

インターネット・携帯電話

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社会的態度・ ジェンダー

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304 7 社会的態度・ジェンダー

価値観・社会的態度 人間の意思決定や行動に重要な影響を与える内的要因として,心理学では古

くから価値(value)や態度(attitude)について考察してきた。ロキーチ(1973)

の定義によると,価値は,「ある特定の行為様式や結末を,他に比べて個人的

あるいは社会的に好ましいものとする,個人の一定した信念」とされる。そし

て,複数の価値を総体的な優先関係をもとに体系化したものを価値観あるいは

価値体系とよぶ。一方,態度について,オールポート(1935)は,「経験を通

じて体制化された心理的あるいは神経生理的な準備状態であって,人がかかわ

りをもつ対象に対する,その人自身の行動を方向づけたり変化させたりするも

の」と述べている。どちらも,経験を通じて後天的に獲得されていく点は同じ

である。しかし,価値と態度は,次のような点で区別される(中間,2009)。

態度は,特定の対象に対して形成され,とくに社会的な事象(人物,社会体制,

社会制度など)に対する態度は社会的態度とよばれる。これに対し,価値は事

物や状況を越えて一定して存在する信念である。また,態度が個々の人間それ

ぞれに保持されるものであるのに対し,価値においては,そのような「個人的

価値」だけでなく,当該社会/組織/集団の中で共有され支持されている「社

会的価値」も存在する。さらに,価値は態度より個人の認知体系や人格形成に

おいて中心的な位置を占めるものと考えられている。

 現代では,価値観の変化・多様化が叫ばれて久しい。価値は人格形成の中心

的位置を占めると考えられているように,より普遍的・根源的な意識を指すも

のであるが,社会状況の影響によって徐々に変化していく側面もある。それを

反映してか,最近 10 年間に開発された価値観・社会的態度を測定する尺度を

見ても,人間の本質的・根源的な価値あるいは態度をとらえるような尺度より

も,社会状況に応じて変化しているのではないかと考えられる価値観・態度,

あるいは,新しいライフスタイルや社会問題の出現により注目されるように

なった価値観・態度に,より多くの注意が向けられ,研究が進められてきたよ

うに思われる。

 本節では,最近 10 年間に開発された価値観・社会的態度を測定する尺度の

中から,次の 5 つの尺度をとりあげる。

 1990 年代以降,公共場面での迷惑行為や逸脱行為がこれまで以上に散見さ

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この領域について

334 7 社会的態度・ジェンダー

 本節では,最初に,性行動に関わる尺度を紹介する。1990 年代より,青年

の性交経験率が高まったり,女子高校生の「援助交際」が話題になったりした

こともあり,教育現場では,青年の性行動を抑制すべきか否かを含め,性教育

のあり方について活発な議論が展開されてきた。性教育で伝えるべき内容の一

つとしてあげられているのが,性のリスクを回避する方法である。1990 年代

は,性交経験率が高まっただけではなく,青年の人工妊娠中絶率や性感染症へ

の感染者率も増加していた(宇井,2010 など)。木原(2006)は,性のリス

クを回避するため,効果が検証された性教育を実施していくことが必要である

と論じている。その中で,草野(2006)は,「性的リスク対処意識尺度」を作

成している。性教育実施前後において本尺度を実施するなどによって,性教育

の効果を検証していくことが可能であると考えられる。そこで,本節では,草

野(2006)による「性的リスク対処意識尺度」を紹介することとする。

 次に,ジェンダーについての尺度を紹介する。男性と女性との間には,身体

的,心理的,行動的側面において,さまざまな違いがみられる。これらの性差

のうち,染色体や遺伝子などの生物学的な基盤により生じている性差を,セック

スという。一方,「男らしさ」や「女らしさ」といった,その社会や文化によ

って形成されている性差も存在し,これをジェンダーという(青野,2004)。

ジェンダーは社会や文化によって形成されている性差であるため,社会や文化

のあり方が変われば,性差のあり方も変化すると考えられている(土肥,

2006)。たとえば,結婚や出産・育児にかかわらず就労を継続する男性に対

して,女性は結婚や出産をすれば,仕事を辞めることが一般的である時代が,

あった。しかし,現在では,仕事をする女性も増えており,共働き率も世代を

平均すると約 5 割になる(井上・江原,2005)。

 デューとラフランス(1998)によれば,人々はジェンダーについてさまざ

まな信念をもっており,この信念にしたがって,自分の行動を決定していると

される。たとえば,「男性は一家を養っていくべきであり,女性は子育てに専

念するべきだ」と強く考えている男性は仕事を継続し,妻に仕事を辞めるよう

に求めると考えられる。また,同様の考え方をもっている女性は,夫が仕事に

専念できるように,仕事を辞めて家庭に入ると考えられる。このようにジェン

性・ジェンダー

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358 人 名 索 引

岡部彩子  168岡本 香  278岡本祐子  40小川時洋  74, 75, 76, 80小此木啓吾  197小塩真司  24小田切紀子  153, 162, 166

  カ  行カーニス(Kernis, M.H.)  22鹿毛雅治  95影山任佐  6樫村正美  74春日由美  168勝谷紀子  112, 114, 118加藤和生  136, 144加藤 司  121金政祐司  204, 211上地雄一郎  3, 16, 20上出寛子  87河野和明  252, 254, 257

北村琴美  168木原雅子  334木村 敏  197清永賢二  6

草野いづみ  334, 338, 342串崎幸代  41, 47, 50隈部知更  305, 318, 322グレイ(Gray, J.A.)  87クロガー(Kroger, J.)  40黒田祐二  87グロルニック(Grolnick, W.S.)  169, 171

ケイガン(Kagan, N.)  54

  ア  行阿部美帆  22荒井弘和  75, 81, 82

五十嵐 祐  278, 279, 290, 292池田幸恭  169石川満佐育  121, 129, 134石原俊一  238伊田勝憲  85, 95, 100伊藤 拓  55, 63, 68伊藤裕子  335井上忠司  313岩淵千明  12岩本純子  23

宇井美代子  335ウィトキン(Witkin, H.A.)  54植田 智  92上野行良  197上原 徹  64ウォング(Wong, P.T.P.)  305, 318, 320内田由紀子  23宇都宮 博  169, 176, 180ウルフ(Wulf, F.)  54

エインズワース(Ainsworth, M.D.S.)  136エクルス(Eccles, J.)  85, 95榎本博明  252エリオット(Elliot, A.J.)  87, 108エ リ ク ソ ン(Erikson, E.H.)  40, 41, 47, 182,

343

大久保智生  87大渕憲一  239オールポート(Allport, G.W.)  304岡田 涼  86, 102

人 名 索 引

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人 名 索 引 359

谷 冬彦  22, 343丹野宏昭  183, 185, 190

津川秀夫  98土田恭史  74都築誉史  278

鄭 艶花  301デイヴィス(Davis, K.E.)  185デイヴィス(Davis, M.H.)  120, 123デシ(Deci, E.L.)  102デュー(Deaux, K.)  334

土肥伊都子  336, 352, 356トンプソン(Thompson, L.Y.)  129

  ナ  行永井 智  221, 232, 236中尾達馬  136, 139, 144長崎千夏  169永作 稔  86永田良昭  182中山留美子  18

  ハ  行 バーソロミュー(Bartholomew, K.)  139ハーター(Harter, S.)  10ハヴィガースト(Havighurst, R.J.)  182萩原俊彦  86濱口佳和  238林 幸史  306, 323, 326速水敏彦  23, 37, 38, 86, 95, 104

ビエリ(Bieri, J.)  54ヒギンズ(Higgins, E.T.)  2平井大祐  302平山順子  152, 155, 160平山るみ  55, 58, 62廣川空美  356

ゲッサー(Gesser, G.)  318

髙坂康雅  23, 30, 32, 204, 216小島弥生  85, 87, 90, 94小平英志  23コフート(Kohut, H.)  2, 3, 18小堀 修  55, 69, 72

  サ  行斎藤和志  305, 308佐久間路子  3, 10, 15櫻井茂男  22, 169, 171, 174櫻井良子  246, 248佐々木掌子  336, 343, 347佐々木土師二  323

シュル(Schul, P.)  323ジョイナー(Joiner, T.E.)  114ショーペンハウアー(Schopenhauer, A.)  197

菅原健介  90, 305, 313, 316杉本希映  306, 329, 332杉山 崇  22, 23, 26鈴木慶子  335鈴木有美  121, 123, 128スナイダー(Snyder, M.)  3

関 知恵子  146妹尾香織  220, 223, 226, 228, 230

ソロモン(Solomon, S.)  22

  タ  行高木邦子  112, 119高橋雄介  87高比良美詠子  278, 282, 288多川則子  264, 266, 270竹澤みどり  137, 146, 150立脇洋介  204, 206, 210田中あゆみ  86, 108

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360 人 名 索 引

  ヤ  行山岸俊男  310山口智子  228山本真理子  22, 23ヤング(Young, K.S.)  279, 301

吉岡和子  183, 192, 196吉川延代  153吉田綾乃  252, 258, 262吉田俊和  308, 310

  ラ  行ラーソン(Larson, D.G.)  254ライアン(Ryan, C.)  323ライアン(Ryan, R.M.)  102, 104ラ・ガイパ(La Gaipa, J.J.)  185

リアリー(Leary, M.R.)  22リー(Lee, T.)  323ルビン(Rubin, Z.)  204, 211

ローゼンバーグ(Rosenberg, M.)  22ロキーチ(Rokeach, M.)  304ロッター(Rotter, J.B.)  54

  ワ  行若原まどか  168和田 実  185渡辺俊太郎  240, 241, 244

福森崇貴  238藤 桂  2, 5, 8, 279, 294, 298藤井恭子  183, 197, 202藤松祐子  168藤本 学  264, 272, 276藤原あやの  168フレット(Flett, G.L.)  55ブレナン(Brennan, K.A.)  139フロイト(Freud, S.)  40, 197

ヘイザン(Hazan, C.)  136ベラック(Bellak, L.)  187

ボウルビィ(Bowlby, J.M.)  137星野 命  22堀田仁美  10

  マ  行マーカス(Markus, H.R.)  12マーティン(Martin, H.J.)  92眞榮城和美  23松井 豊  182丸島令子  41, 42, 46

水間玲子  22

村山 航  86

元吉忠寛  308, 310

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事 項 索 引 361

観光動機尺度  306, 323感情  74感情表現尺度  74感情抑制傾向尺度  74感情抑制尺度  74

期待価値理論  84, 85気分  74強化感受性理論  87共感性  120強調化  54共同性・作動性尺度  336, 352拒否回避欲求  85, 87, 90

空虚な自己  6

携帯電話  278携帯メールの効用認知尺度  278, 290結婚レディネス査定尺度  153

攻撃  238向社会的行動  220公的自己意識  90行動基準尺度  305, 313心の居場所  306コミュニケーション  264コミュニケーション・スキル尺度 ENDCOREs 

264

  サ  行ジェネラティヴィティ  47ジェネラティヴィティ尺度  47ジェンダー  334ジェンダー・アイデンティティ  335ジェンダー・アイデンティティ尺度  336, 343ジェンダー・ステレオタイプ  335

  ア  行愛着  136アイデンティティ  40アタッチメント  136アパシー  18

怒り  238怒り喚起・持続尺度  239, 241異性交際中の感情尺度  204, 206依存  136一過性運動に用いる感情尺度  81一般感情尺度  74, 75, 76一般他者版成人愛着スタイル尺度  136, 139

「居場所」の心理機能測定尺度  306インターネット  278インターネット依存  301インターネット依存に関する尺度  280, 301インターネット行動尺度  279, 294

援助行動  220援助成果測定尺度  220, 223

親からの自律性援助測定尺度  169, 171親子関係  168

  カ  行回避  87仮想的有能感  23仮想的有能感尺度  37家族関係  168課題価値  95課題価値測定尺度  85, 95価値  304価値観  304関係性攻撃  239関係性攻撃傾向尺度  246

事 項 索 引

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362 事 項 索 引

自我同一性  40自己愛  2自己愛的脆弱性尺度短縮版  3, 16自己愛的有能感  23自己意識  90自己隠蔽  254自己開示  252自己概念  2自己感覚の喪失  6自己決定理論  84自己顕示性  90自己知識  2自己呈示  252自己呈示規範内在化尺度  252, 258自己評価  22自己不一致理論  2死生観  305自尊感情  22自尊感情尺度  22自尊感情の変動性  22私的自己意識  90死に対する態度尺度改訂版  305, 318社会考慮  305社会考慮尺度  305, 308社会的態度  304

(改訂版)重要他者に対する再確認傾向尺度  112, 114

賞賛獲得欲求  85, 87, 90賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度  90情動  74承認欲求  85情報活用の実践力尺度  278, 282自律的高校進学動機尺度  86心理的欲求尺度  87

随伴性自尊感情  22

性  334性的リスク対処意識尺度  334, 338性役割  335

世代性  40, 42(改訂版)世代性関心尺度  42接近  87セルフ・モニタリング  12潜在的 - 顕在的自尊感情  22

相互独立的―相互協調的自己観尺度  12相談行動の利益・コスト尺度改訂版  221, 232ソシオメーター理論  22, 26存在脅威管理理論  22

  タ  行対人依存欲求尺度  137, 146対人感情  112対人恐怖  18対人態度  112対人反応性指標  123態度  304多次元完全主義認知尺度  69多次元共感性尺度  120, 123他者意識  120達成目標志向性尺度  87達成目標尺度  86達成目標理論  84, 108

動機づけ  84

  ナ  行日常的コミュニケーション尺度  264, 266日本語版自己隠蔽尺度  252, 254認知判断傾向  54

ネガティブな反すう尺度  55, 63

  ハ  行パートナーズ・テスト  153反すう  54, 63

被拒絶感  26被受容感  23, 26

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事 項 索 引 363

(改訂版)友人関係機能尺度  183, 185友人関係測定尺度  183, 192友人関係への動機づけ尺度  86, 102ゆるし  120ゆるし傾向性  121, 129ゆるし傾向性尺度  121, 129

欲求  84

  ラ  行離婚観尺度  153, 162両親の結婚生活コミットメント認知尺度  169,

176

劣等感  23, 30恋愛  204恋愛イメージ尺度  204, 211恋愛関係の影響尺度  204, 216

  英  字CAS  336, 352DAP-R  305, 318ECR-GO  136, 139I-E スケール  54IRI  123MES  121, 123NVS  16

被受容感・被拒絶感尺度  23, 26否定的対人感情尺度  112, 119批判的思考  58批判的思考態度尺度  55, 58標準化  54

夫婦関係  152夫婦間コミュニケーション態度尺度  152, 155不登校  18

変化動機尺度  3, 10

ボランティア活動  220ボランティア継続動機測定尺度  220, 228

  マ  行満たされない自己  2満たされない自己尺度  5

目標志向尺度  86, 108

  ヤ  行山アラシ・ジレンマ  197山アラシ・ジレンマのパターン尺度  183, 197

“やりたいこと探し”の動機尺度  86

友人関係  182

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    宮みや

本もと

聡そう

介すけ

1990年 筑波大学第二学群人間学類卒業1996年 筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了現 在 明治学院大学心理学部教授    博士(心理学)主要編著書・訳書

『質問紙調査と心理測定尺度』(共編)(サイエンス社,2014)

『新編 社会心理学 改訂版』(共編著)(福村出版,2009)

『単純接触効果研究の最前線』(共編著)(北大路書房,2008)

『安全・安心の心理学』(共著)(新曜社,2007)『心理学研究法入門』(共訳)(新曜社,2005)『社会心理学』(分担執筆)(朝倉書店,2005) ほか

    吉よし

田だ

富ふ

二じ

雄お

1975年 東京教育大学理学部卒業1982年 筑波大学大学院博士課程心理学研究科    単位取得退学    筑波大学教授を経て現 在 東京成徳大学応用心理学部教授    博士(心理学)主要編著書・論文

『心理測定尺度集Ⅱ』(編)(サイエンス社,2001)『新編 社会心理学 改訂版』(共編著)(福村出版,

2009)「社会的カテゴリー化による少数派および多数派

集団の集団間差別行動」(心理学研究,1994)「暴力映像と攻撃行動」(心理学評論,2000)その他 論文多数

執筆者(50 音順)

編 者 略 歴

    堀ほり

  洋ひろ

道みち

1960年 東京教育大学教育学部卒業1966年 東京教育大学大学院教育学研究科    単位取得退学1989年 筑波大学心理学系教授2001年 大妻女子大学人間関係学部教授現 在 筑波大学・大妻女子大学名誉教授主要編著書

『創造性研究ハンドブック』(共著)(誠信書房,1968)『個人と社会理解のための心理学』(共編著)(小林出版,1979)

『新編 社会心理学 改訂版』(監修)(福村出版,2009)

監修者略歴

  目白大学人間学部客員研究員市いち

村むら

美み ほ

  玉川大学文学部准教授宇う い

井美み よ こ

代子

  駒沢女子大学人文学部人間関係学科 非常勤講師

倉くら

住ずみ

友とも

恵え

  信州大学人文学部准教授佐さ

藤とう

広ひろ

英つね

  常磐短期大学幼児教育保育学科准教授大おお

内うち

晶あき

子こ

  名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授久く ぼ た

保田健けんいち

 愛知学院大学総合政策学部准教授太た

幡ばた

直なお

也や

  高知大学教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門(人文社会科学部)准教授

日ひ

比び

野の

 桂けい

  筑波大学人間系心理学域准教授藤ふじ

  桂けい

  大妻女子大学人間関係学部准教授八や

城しろ

  薫かおる

  東京福祉大学心理学部講師丹たん

野の

宏ひろ

昭あき

 名城大学人間学部准教授畑はた

中なか

美み

穂ほ

立たて

脇わき

洋よう

介すけ

  九州大学基幹教育院人文社会科学部門 准教授

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サイエンス社のホームページのご案内http://www.saiensu.co.jpご意見・ご要望は[email protected] まで.

*本書の内容の問い合わせに関しては,書名・担当執筆者名(目次を参照下さい),尺度名を明記の上,必ず電子メールか書面にて御連絡を頂けますようお願い致します。なお書籍を御購入されていない場合には対応致しかねますので御了承下さい。

心理測定尺度集 V(電子版)――個人から社会へ〈自己・対人関係・価値観〉――

2018 年 4 月 10 日 Ⓒ 初 版 発 行この電子書籍は 2011 年 3 月 25 日発行の同タイトルを底本としています。

監修者 堀   洋 道 発行者 森 平 敏 孝編 者 吉田富二雄    宮 本 聡 介

発行所    株式会社 サイエンス社〒 151–0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目 3 番 25 号

〔営業〕 ☎(03)5474–8500(代) 振替 00170–7–2387〔編集〕 ☎(03)5474–8700(代)FAX ☎(03)5474–8900

組版 株式会社ディグ≪検印省略≫

本書の内容を無断で複写複製することは,著作者および出版者の権利を侵害することがありますので,その場合にはあらかじめ小社あて許諾をお求め下さい。

ISBN978–4–7819–9942–5