5.2. 東日本第 7 次モニタリング · 5.2. 東日本第7 次モニタリング...

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56 5.2. 東日本第 7 次モニタリング 航空機モニタリングの測定結果を基に、地上 1 m 高さの空間線量率の分布状況を示した「空 間線量率マップ」を Fig. 5-5 に示す。また、放射性セシウムの沈着量の状況を示した「放射性 セシウム沈着量マップ」を Fig. 5-6 に示す。 137 Cs および 134 Cs の沈着量マップをそれぞれ Fig. 5- 7 および Fig. 5-8 に示す。なお、マップの作成にあたっては、東日本第 7 次の航空機モニタリン グを実施した最終日である平成 28 11 18 日現在の値に減衰補正した。 また、80 km 圏内のモニタリングとの整合性を確認するために、東日本第 6 次モニタリング を実施した最終日である平成 28 11 18 日現在の値に減衰補正し、内挿した「空間線量率マ ップ」および「放射性セシウム沈着量マップ」をそれぞれ、Fig. 5-9 および Fig. 5-10 に示す。 137 Cs および 134 Cs の沈着量マップをそれぞれ Fig. 5-11 および Fig. 5-12 に示す。境界部分のマッ プの整合性も違和感がなく、良く一致していることが分かる。 天然核種由来の空間線量率マップを Fig. 5-13 に示す。空間線量率の分布をみると新潟県と福 島県の県境に天然の放射線量が高い場所が存在する。ここは、帝釈山地という花崗岩地帯とし て知られた場所であり、過去に日本全国の空間線量率を計測した結果と比較しても矛盾しない 34) 。天然核種由来の空間線量率は、地すべり等の大きな地形の変化がなければ測定年度ごとに 変化しないと考えられ、過去のデータと比較して同様な結果が得られていることを確認するこ とは解析結果の妥当性を表すものと考えられる。そこで、天然放射性核種起源の空間線量率解 析手法が確立した平成 26 年度以降のデータから、作成した天然核種由来の空間線量率マップ 比較を Fig. 5-14 に示す。

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5.2. 東日本第 7 次モニタリング

航空機モニタリングの測定結果を基に、地上 1 m 高さの空間線量率の分布状況を示した「空

間線量率マップ」を Fig. 5-5 に示す。また、放射性セシウムの沈着量の状況を示した「放射性

セシウム沈着量マップ」を Fig. 5-6 に示す。137Cs および 134Cs の沈着量マップをそれぞれ Fig. 5-

7 および Fig. 5-8 に示す。なお、マップの作成にあたっては、東日本第 7 次の航空機モニタリン

グを実施した最終日である平成 28 年 11 月 18 日現在の値に減衰補正した。

また、80 km 圏内のモニタリングとの整合性を確認するために、東日本第 6 次モニタリング

を実施した最終日である平成 28 年 11 月 18 日現在の値に減衰補正し、内挿した「空間線量率マ

ップ」および「放射性セシウム沈着量マップ」をそれぞれ、Fig. 5-9 および Fig. 5-10 に示す。

137Cs および 134Cs の沈着量マップをそれぞれ Fig. 5-11 および Fig. 5-12 に示す。境界部分のマッ

プの整合性も違和感がなく、良く一致していることが分かる。

天然核種由来の空間線量率マップを Fig. 5-13 に示す。空間線量率の分布をみると新潟県と福

島県の県境に天然の放射線量が高い場所が存在する。ここは、帝釈山地という花崗岩地帯とし

て知られた場所であり、過去に日本全国の空間線量率を計測した結果と比較しても矛盾しない

34)。天然核種由来の空間線量率は、地すべり等の大きな地形の変化がなければ測定年度ごとに

変化しないと考えられ、過去のデータと比較して同様な結果が得られていることを確認するこ

とは解析結果の妥当性を表すものと考えられる。そこで、天然放射性核種起源の空間線量率解

析手法が確立した平成 26 年度以降のデータから、作成した天然核種由来の空間線量率マップ

比較を Fig. 5-14 に示す。

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Fig. 5-5 東日本第 7 次モニタリングにおける空間線量率マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-6 東日本第 7 次モニタリングにおける放射性セシウム沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-7 東日本第 7 次モニタリングにおける 137Cs 沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-8 東日本第 7 次モニタリングにおける 134Cs 沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-9 東日本第 7 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける空間線量率マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-10 東日本第 7 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける放射性セシウム沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-11 東日本第 7 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける 137Cs 沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-12 東日本第 7 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける 134Cs 沈着量マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 5-13 東日本第 7 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける天然核種由来の空間線量率マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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2014 年のデータを解析 2015 年のデータを解析 2016 年のデータを解析

Fig. 5-14 測定年度における天然放射性核種による空間線量率マップの比較

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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6. モニタリング結果の考察

6.1. 過去のモニタリング結果との比較

これまでの旧避難指示区域における航空機モニタリングの結果について Fig. 6-1 に示す。こ

のように、空間線量率の高い暖色系の面積が小さくなっていることが分かる。このような空間

線量率の減少傾向を定量的に把握するための比較方法を検討した。比較方法は、時期の異なる

モニタリングデータについて 250 m メッシュのデータに区切り、各メッシュの中心点の測定結

果の比を算出することで行った。現状と同じ手法で実施したもっとも古いデータである第 4 次

モニタリングと今回の第 11 次モニタリングの全領域における比較結果を散布図として Fig. 6-2

に示す。なお、第 4 次モニタリング以前については、自衛隊のヘリを使用し、簡易的なパラメ

ータを適用していたことから、過去の結果との定量比較の基準としては第 4 次を採用している。

Fig. 6-2 に示したように、回帰直線の傾きを全体の空間線量率の平均的な減少傾向としてみる

ことができる。図中に、重量緩衝深度 (β)を 1 と仮定し、放射性セシウムの半減期から算出し

た理論的な減衰を表す直線を示す。このように、航空機モニタリングの測定結果は、半減期に

よる理論直線よりも大きく減少する傾向を示していることが分かる。一方で、80 km 圏内には、

0.1μSv/h 以下の天然放射性核種による影響の大きな場所が多く、放射性セシウムによる減少傾

向を見るには、天然放射性核種による影響の無視できる比較的空間線量率の高い場所を選定す

るのがよい。また、最小 2 乗法による近似は、数値の大きな結果に影響を受けやすいので、よ

り平均的な減少率を評価できる方法として空間線量率の比をヒストグラムとして表示すること

を検討した。

まず、Fig. 6-1 に示した旧避難指示区域のみを抽出し、それぞれのメッシュにおける変化量の

割合 (相対減少率) を算出し、ヒストグラムとして示した。例として、第 11 次モニタリングと

第 4 次モニタリングの空間線量率の比較をそれぞれ Fig. 6-3 に示す。また、第 11 次モニタリン

グと第 4 次モニタリングの 137Cs の沈着量の比較をそれぞれ Fig. 6-4 に示す。空間線量率のヒス

トグラムと比較して、137Cs のヒストグラムはばらつきが大きい。これは、空間線量率が宇宙線

と自己汚染を差し引いて換算しているのに対し、137Cs の沈着量はこれに加えて天然核種のバッ

クグラウンドを差し引いているので計数誤差を含む数値が相対的に多くなることに起因する。

このような、ヒストグラムの平均値を各モニタリングの平均的な相対減少率とし、標準偏差を

ばらつきとして比較した。第 4 次のモニタリングを基準とし、旧避難指示区域の空間線量率の

測定結果について相対偏差のヒストグラムを求め、その平均値をプロットした図を Fig. 6-5 に

示す。また、Fig. 6-6 には同様に 137Cs の沈着量について比較した図を示す。Fig. 6-5 より、半減

期による放射性セシウムの減衰を起因とした空間線量率の減衰傾向よりも、航空機モニタリン

グで測定された空間線量率の変化傾向は多く減衰していることが分かる。

本原因の考察の一助として、土壌中への浸透度合いの評価について検討した。過去の原子力

施設の事故の経験から、年月ともに土壌深さ方向に放射性セシウムは移動・拡散することは知

られており、前述したように重量緩衝深度 (β) によりパラメータ化され、空間線量率から放

射性セシウムの沈着量に換算する係数が与えられている 24, 25)。重量緩衝深度とは、地中の放射

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性セシウムの分布形を指数関数の数式 [13] で表すとき、

C = 𝐶𝐶0 ∙ exp (−𝑥𝑥𝛽𝛽

) [13]

x=β となる深さである。この時、C: 地中の放射性セシウム濃度、C0: 地表面放射性セシウム濃

度および x: 地中の深さ (g/cm2) である。発電所から 80 km 圏内における重量緩衝深度につい

ては、事故以降、文部科学省および規制庁により攪乱の少ない土壌サンプル (85 か所) におい

て継続的に調査されている 28, 29)。各調査年度における重量緩衝深度の平均値をプロットし、線

形近似を行った図を Fig. 6-7 に示す。この報告結果から重量緩衝深度の変化を考慮し空間線量

率を計算した。重量緩衝深度は、経過時間と一次関数の関係にあると仮定し、平成 27 年度の重

量緩衝深度は外挿により求めた。線量から放射性セシウムの沈着量へ換算する係数は、文科省

「ゲルマニウム半導体検出器を用いた in-situ 測定法 26) 」に重量緩衝深度ごとに与えられてい

る。与えられた数値間の換算係数については、Fig. 4-22 で示したように対数で近似した近似式

から推定した。これらの条件で計算した空間線量率の経時変化の結果を Fig. 6-5 に示す。この

ように、航空機モニタリングの測定結果と計算結果はよく一致することが分かる。この結果は、

土壌中への浸透度合いが空間線量率の変化に大きな影響を与えることを示唆している。しかし

ながら、航空機モニタリングによる測定の場合、平坦で攪乱の少ない土壌の場所だけでなく、

森林、山林や住宅地なども測定範囲に含むため、単純な重量緩衝深度の考え方が適用できない

場所も多いことから、見かけ上、数値が一致しているだけの可能性もある。今後、土地利用状

況との関連や森林や構造物の上空を測定した場合の評価方法の検討が必要と考える。今後も航

空機モニタリングのデータを解析・比較することにより、放射性セシウムの環境中での移行の

重要な知見となると考えられる。

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Fig. 6-1 旧避難指示区域における過去の空間線量率マップの比較

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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Fig. 6-2 発電所から 80km 圏内における第 4 次モニタリングおよび第 11 次モニタリングの空間線量率

測定結果の比較

y = 0.29 xR² = 0.94

0

20

40

60

80

0 20 40 60 80

第11

次モ

ニタ

リン

グに

おけ

る空

間線

量率

(μSv

/h)

第4次モニタリングにおける空間線量率(μSv/h)

放射性セシウム

の半減期から計

算した理論曲線(β=1)

n=142,779

y=0.41x

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Fig. 6-3 旧避難指示区域における第 4 次モニタリングおよび第 11 次モニタリングの空間線量率測定結

果の比較

(左: 散布図, 右: 相対偏差のヒストグラム)

Fig. 6-4 旧避難指示区域における第 4 次モニタリングおよび第 11 次モニタリングの放射性セシウム沈着

量測定結果の比較

(左: 散布図, 右: 相対偏差のヒストグラム)

0.1

1

10

100

0.1 1 10 100

第11

次モ

ニタ

リン

グに

おけ

る空

間線

量率

(μSv

/h)

第4次モニタリングにおける空間線量率 (μSv/h)

n=10,696

y=2.0xy=0.5x

0

5

10

15

20

25

30

35

40

-1 -0.75 -0.5 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1

Perc

enta

ge o

f fre

quen

cy (%

)

Relative diviation(11th-4th) / 4th

平均値 -0.722標準偏差 0.074

10

100

1,000

10,000

10 100 1,000 10,000

第11

次モ

ニタ

リン

グに

おけ

る放

射性

セシ

ウム

沈着

量(k

Bq/㎡

)

第4次モニタリングにおける放射性セシウム

沈着量 (kBq/㎡)

n=10,659

y=2.0xy=0.5x

0

5

10

15

20

25

30

35

40

-1 -0.75 -0.5 -0.25 0 0.25 0.5 0.75 1

Perc

enta

ge o

f fre

quen

cy (%

)

Relative diviation(11th-4th) / 4th

平均値 -0.439標準偏差 0.151

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Fig. 6-5 航空機モニタリングによる旧避難指示区域内の空間線量率の変化傾向

Fig. 6-6 航空機モニタリングによる旧避難指示区域内の 137Cs 沈着量の変化傾向

100

90

79

61

59

5355

45

36

28

0

20

40

60

80

100

120

0 500 1000 1500 2000

4次モ

ニタ

リン

グを

1に規

格化

した

減衰

事故後の経過日数 (日)

航空機モニタリング

β=1で評価した計算値

βの変化を考慮した計算値4th11/5-2011

4.5th2/10-2012

5th6/28-2012

6th11/16-2012

6.5th3/11-2013

7th9/28-2013

8th11/19-2013

9th9/20-2014 10th

9/29-201511th

10/15-2016

100

9691

747775

8071

65

56

0

20

40

60

80

100

120

0 500 1000 1500 2000

4次モ

ニタ

リン

グを

1に規

格化

した

減衰

事故後の経過日数 (日)

航空機モニタリング

β=1で評価した計算値

4th11/5-2011

4.5th2/10-2012 5th

6/28-2012

6th11/16-2012

6.5th3/11-2013

8th11/19-2013

7th9/28-2013 9th

9/20-201410th

9/29-2015

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Fig. 6-7 事故からの経過日数と重量緩衝深度の関係 文部科学省および原子力規制庁の実施した「東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の

長期的影響把握手法の確立」事業の報告書 28, 29) から調査結果の平均値をプロットし、一次関数で近似

1.1

1.3 1.5

1.8 2.1

2.3 2.4

2.9

3.1

y = 0.000995 x + 0.814 R² = 0.958

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

0 500 1,000 1,500 2,000

重量

緩衝

深度

(g cm

-2)

事故からの経過日数

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6.2. 土地利用による空間線量率の変化傾向の違い

発電所周辺における土地利用形態による空間線量率の減少率の違いを考察するため、国土地

理院が提供している「国土数値情報土地利用細分メッシュデータ 35)」を利用した。80 km 圏内

の土地利用図について、Fig. 6-8 に示す。これらの土地利用区分の内、最も違いが現れると考え

られる市街地部および森林部について、過去の 80 km 圏内のモニタリングを比較し、空間線量

率の減少率を比較した。市街地部および森林部の定義は以下の通りである。

・森林部: 多年生植物の密生している地域とする。Fig. 6-8 の凡例中、森林を指す。

・市街地部: 住宅地、市街地等で建物が密集しているところ、鉄道、操車場、道路などで、面的

にとらえられるもの、運動競技場、空港、競馬場、野球場、学校港湾地区、人工造成地の空地

等とする。Fig. 6-8 の凡例中、建物用地、道路、鉄道、その他用地を指す。

空間線量率の比較は、6.1 項に示したように、測定範囲を 250 m×250 m メッシュに区切り、

同一メッシュ上の空間線量率の相対偏差を算出し、平均値と標準偏差を求めた。比較の例とし

て、第 4 次モニタリングと第 11 次モニタリングにおける市街地部および森林部のメッシュご

との相対偏差の頻度をヒストグラムにして Fig. 6-9 に示す。第 4 次モニタリングを基準にして、

過去のモニタリングにおいてのそれぞれ土地利用における空間線量率の比率を Table 6-1 に示

す。なお、誤差として示したのは、相対偏差の標準偏差 (σ=1) である。第 11 次モニタリング

と第 4 次モニタリングの比をみると、平均値で市街地部が 27 %、森林部が 30 %であることが

わかった。すなわち、平均値で 3 %程度、市街地部の方が森林部より減少率が大きい。これは、

市街地において行われている除染やアスファルト上の放射性物質が雨水等で洗い流された効果

によるものと考えられる。また、過去のモニタリングの結果においても、森林部よりも市街地

の方が、2 ~ 7 %減少率が大きいことがわかった。この結果から、傾向として森林部よりも市

街地の方が空間線量率の減少幅が大きい傾向にあることを示していると考えられる。また、全

エリアの減少率と森林部の状況は概ね同様であった。これは、80 km 圏内の土地利用の 65 %が

森林部であることに起因すると考えられる。規制庁による発電所近傍の車両モニタリングや人

手による空間線量率測定結果から解析した報告書 29)をみると、森林部においては森林部以外と

比較して減衰傾向が小さいことが示されており、本データも矛盾しない。ただし、地上の測定

結果と比較して航空機モニタリングの方が減衰率の差が小さいのは、航空機モニタリングによ

る空間線量率の位置分解能と地上測定の位置分解能の差に起因すると考えられる。

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Fig. 6-8 発電所から 80km 圏内における土地利用図

(平成 21 年度 国土地理院土地利用調査データより)

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Fig. 6-9 森林部および市街地における減衰率の比較

(第 4 次モニタリングと第 11 次モニタリングの比較)

Table 6-1 森林部および市街地部における空間線量率の比較

0

5

10

15

20

25

30

35

40

-1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0

Freq

uenc

y(%

)

Relative diviation[(11th-4th)/4th]

Urban area

Forest area

Urban area 732 70 ± 11 55 ± 8.8 50 ± 8.4 44 ± 9.7 41 ± 8.8 34 ± 8.7 27 ± 6.7

Forest area 5,841 77 ± 10 57 ± 8.5 54 ± 9.0 49 ± 9.2 44 ± 9.2 37 ± 8.1 30 ± 6.4

All area 8,923 72 ± 11 56 ± 9.0 53 ± 9.0 48 ± 10 43 ± 10 37 ± 8 29 ± 7

11th/4th

Ave. (% )

10th/4th

Ave. (% )

9th/4th

Ave. (% )Ave. (% ) Ave. (% )

Ratio of dose rate (% )

8th/4th7th/4thGross area

(km 2)

5th/4th 6th/4th

Ave. (% ) Ave. (% )

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7. 位置情報計測の精度向上

7.1. 位置情報計測の背景

航空機モニタリングでは、上空において測定した放射線の計数率を高度補正係数 HF により補

正し、地上 1 m の高さでの計数率に変換している。よって、測定時の飛行高度の精度は地上 1 m

での空間線量率の計算値に影響を及ぼす。既存の RSI システムにはシングル GPS が搭載されてお

り、位置情報を計測・記録している。近年、各国の衛星が多数運用を開始されており、日本にお

いても JAXA (Japan Aerospace Exploration Agency: 宇宙航空研究開発機構) による準天頂衛星「み

ちびき」が運用開始されるなど、衛星を用いた位置情報計測の技術が向上している。以上のよう

な背景から、航空機モニタリングによる測定に最適な受信機を選定するため、最新の衛星からの

受信情報をもとに位置情報を計測できる複数の機器を RSI システムと共にヘリコプターに搭載し、

位置情報を取得することで、各機器の性能の相互評価並びに地上の空間線量率換算に与える影響

について調査することとした。

7.2. 語句説明

以下に、本章に関連する主な用語について記述する。

・GPS (Global Positioning System): 米国により運用される衛星測位システム。周波数帯および用途

の違いにより、L1、L2 等と呼ばれる測位用信号を配信している。

・GLONASS (GLobal'naya NAvigatsionnaya Sputnikovaya Sistema): 旧ソ連が開発し現在ロシアによ

り運用される衛星測位システム。周波数帯および用途の違いにより、G1、G2 等と呼ばれる測位用

信号を配信している。

・QZSS (Quasi-Zenith Satellite System、準天頂衛星システム): 常に日本の上空付近に軌道を描く衛

星(準天頂軌道衛星)を用いた測位システム。2010 年 9 月に JAXA が打ち上げた「みちびき」を初

号機として、2018 年までに 4 機の衛星による運用体制を目指している。L1、L2 等の測位用信号の

ほか、L1-SAIF や LEX (L-band Experimental) 信号と呼ばれる補強信号を配信している。

・GNSS (Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム): GPS、GLONASS、準天頂衛星

等の衛星測位システムの総称。

・SBAS (Satellite-based Augmentation System、静止衛星型衛星航法補強システム): MTSAT と呼ばれ

る国土交通省の静止衛星を用いて、航空機向けに GPS の誤差補正情報や異常の有無等の情報を含

む補強信号を配信するシステム。

7.3. 試験方法

使用機器

選定した 3 種類の受信機および RSI システムに搭載されている既存の受信機の機能の比較を

Table 7-1、受信機の外観を Fig. 7-1 に示す。JAVAD 社製の Alpha2 G3T は多周波の信号の受信が可

能であり、シングル GPS と比較して位置精度の高い測量が可能である。さらに、LEX デコーダを

接続することで準天頂衛星「みちびき」から配信される補強信号である MADOCA-LEX (Multi-

GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis) を受信することが可能となり、さら

に高精度な測量を行うことができる 36)。LEX 信号は配信される日程および時間が限られているた

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め、受信不可能な期間がある 37)。また信号が配信されていても雲の影響で受信できないことがあ

る。ここでは、JAVAD 社製の Alpha2 G3T において、LEX 信号を正常に取得し、その受信情報を

利用した場合の位置情報データを PPP と記載し、LEX 信号を正常に取得したがその受信情報を利

用しなかった場合の位置情報データを Single と記載する。CORE 社製 CD311 は、GPS からの信号

のほか、L1-SAIF と呼ばれる補強信号を受信することで精度の高い測位を行うことができる。L1-

SAIF も LEX 信号と同様に配信される日程および時間が限られているため受信できないことがあ

るが、その場合は補強信号として SBAS を利用して高精度の測位を行う。u-blox 社製 EVK-7P は、

GLONASS および SBAS の補正信号を受信することが可能である。一方、既存の受信機である

Trimble 社製 Copernicus II は、LEX、L1-SAIF といった補強信号を利用していない。なお、今後、

CORE社製CD311、u-blox社製EVK-7P、および既存の受信機で取得したデータをそれぞれCD311、

u-blox、および Trimble と記載するものとする。

本調査では、選定した機器の中で最も信頼性の高いと考えられる LEX 信号受信時の位置情報デ

ータ (PPP) を基準とし、Single、CD311、u-blox および Trimble のデータを比較することにより、

各 GNSS 機器の測位精度を比較することとした。高度情報については、上記の GNSS 機器に加え

気圧高度計で得られた高度情報と比較し,各 GNSS 機器で取得した高度情報の整合性を確認した。

Table 7-1 使用した受信機の比較 名称 メーカー(製造国) 製品名 利用信号 収集周期 PPP (LEX あり) Single (LEX なし)

JAVAD (米国) ALPHA2 G3T GPS L1、L2 GLONASS G1、G2 QZSS LEX

10 Hz

CD311 CORE (日本) CD311 GPS L1、L2 QZSS L1、L1-SAIF SBAS

10 Hz

u-blox u-blox (スイス) EVK-7P GPS L1 GLONASS G1 SBAS

1 Hz

Trimble Trimble (米国) Copernicus II GPS L1 SBAS

1 Hz

Fig. 7-1 使用した受信機の外観

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試験体系

選定した GNSS 機器にはそれぞれアンテナが付属しているが、本調査においてはアンテナの受

信感度による条件を平滑化するために、各アンテナで補足可能な衛星を網羅した JAVAD 社製のア

ンテナのみを使用し、各受信機への分配接続を行った。機器の接続図について Fig. 7-2、機器のヘ

リコプター搭載時の写真を Fig. 7-3 に示す。なお、RSI システムの Trimble と JAVAD 社製のアン

テナの取り付け位置に違いがないようにした。また、アンテナの違いおよび分配器の影響による

測位精度および感度の違いはなかった。

Fig. 7-2 GNSS 機器等の接続図

Fig. 7-3 ヘリコプター搭載時の写真

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試験期間および場所

複数の GNSS 機器を RSI システムとともにヘリコプターに搭載し、データを取得した。試験期

間は 2016 年 11 月 6 日(日)から 11 月 19 日(土)であり、このうち 6 日(日)~12 日(土)は群馬ヘリポ

ートを拠点とし、13 日(日)~19 日(土)は栃木ヘリポートを拠点とした。測位精度の比較対象とし

たフライトは、次の条件を満たすものとした。

条件 1:LEX 信号が配信されている日程であること

条件 2:測線上のフライトであること(ヘリポートから測線までの移動や測線間の旋回は含ま

ない)

条件 3:PPP、Single、CD311、u-blox、Trimble のデータが全て揃っていること

これらの条件を満たすフライトを Table 7-2 に示す。条件 1 および条件 2 を満たしたデータは合

計 33,445 個、条件 1~3 を全て満たし実際に精度比較対象となったデータは合計 11,036 個であっ

た。条件 1~3 を全て満たしたデータが少ないのは、雲の影響等により LEX 信号が受信できず、

PPP のデータが取得できなかった時間があったためである。u-blox および Trimble はデータの収集

周期が 1 Hz (正秒ごと)であるが、PPP、 Single および CD311 は 10 Hz であるため、PPP および

Single は毎正秒のデータ、CD311 は正秒に最も近いデータを比較対象に用いた。飛行場所には山

岳部および平野部が含まれるようにした。精度比較対象としたデータの取得場所を Fig. 7-4 に示

す。

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Table 7-2 比較対象としたフライトおよび補強信号配信状況

日付 フライト数

時刻 フライト 種類

補強信号* データ数 日付

フライト数

時刻 フライト 種類

補強信号* データ数

測定開始 測定終了 LEX L1-SAIF 条件 1、2

条件 1、2、3 測定開始 測定終了 LEX L1-SAIF 条件

1、2 条件

1、2、3 11/7 No.1 9:59:35 10:14:45 測線 ○ ○ 911 531 11/8 No.2 12:44:45 12:49:10 測線 ○ ○ 266 1

10:19:25 10:30:40 測線 ○ ○ 676 53 12:55:20 12:59:45 測線 △ ○ 266 0 10:34:25 10:44:00 測線 ○ ○ 576 157 13:02:15 13:07:55 測線 ○ ○ 341 7 10:50:20 11:06:00 測線 ○ ○ 941 591 13:22:00 13:40:20 測線 ○ ○ 1101 824 11:10:50 11:19:25 測線 ○ ○ 516 286 13:47:30 13:50:30 Rn ○ ○ 181 176 11:22:35 11:31:05 測線 ○ ○ 511 125 13:50:30 13:52:30 BG ○ ○ 120 120

11/7 No.2 12:50:35 12:53:30 Rn ○ ○ 176 48 11/10 No.1 11:27:45 11:49:00 測線 △ ○ 1276 0 12:53:30 12:55:30 BG ○ ○ 120 68 11:51:45 12:12:10 測線 △ ○ 1226 0 13:12:35 13:27:25 測線 ○ ○ 891 801 12:15:20 12:29:00 測線 △ ○ 821 0 13:33:05 13:40:30 測線 ○ ○ 446 7 12:33:15 12:36:30 測線 △ ○ 196 0 13:44:35 13:53:45 測線 ○ ○ 551 138 12:39:05 12:51:25 測線 △ ○ 741 0 14:02:30 14:17:55 測線 ○ ○ 926 23 12:57:37 13:08:55 測線 △ ○ 679 0 14:22:00 14:30:45 測線 ○ ○ 526 426 13:11:00 13:15:15 測線 △ ○ 256 0 14:32:50 14:43:40 測線 ○ ○ 651 174 13:35:10 13:38:00 Rn △ ○ 171 0 14:47:50 15:01:50 測線 ○ ○ 841 413 13:38:00 13:40:00 BG △ ○ 120 0 15:07:15 15:15:50 測線 △ ○ 516 0 11/13 No.1 11:54:25 12:02:05 測線 ○ × 461 250

11/8 No.1 8:50:20 8:58:50 測線 △ ○ 511 0 12:04:05 12:10:00 測線 ○ × 356 309 9:03:15 9:08:30 測線 △ ○ 316 0 12:14:00 12:27:25 測線 ○ × 806 338 9:12:10 9:25:00 測線 △ ○ 771 0 12:29:40 12:37:30 測線 ○ × 471 406 9:28:45 9:37:30 測線 △ ○ 526 0 12:41:00 12:51:40 測線 ○ × 641 606 9:45:00 9:53:10 測線 △ ○ 491 0 12:53:50 13:00:40 測線 ○ × 411 267 9:58:25 10:12:50 測線 △ ○ 866 0 13:01:50 13:06:40 測線 ○ × 291 194 10:17:25 10:27:55 測線 △ ○ 631 0 13:09:10 13:12:15 測線 ○ × 186 4

11/8 No.2 11:52:45 11:59:20 測線 ○ ○ 396 153 13:25:30 13:28:30 Rn △ × 181 0 12:01:55 12:07:45 測線 ○ ○ 351 59 13:28:30 12:30:30 BG △ × 120 0 12:11:50 12:17:15 測線 △ ○ 326 0 11/14 No.1 8:50:30 9:13:00 測線 ○ × 1351 271 12:19:35 12:24:10 測線 ○ ○ 276 27 9:23:40 10:08:55 測線 ○ × 2716 2271 12:29:50 12:40:35 測線 ○ ○ 646 1 10:24:30 10:54:40 測線 ○ × 1811 911

* ○:配信あり、△:配信はあるが雲の影響等により受信不可、×:配信なし

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Fig. 7-4 精度比較対象としたデータの取得場所

灰色の直線は測線を、赤色、黄色、緑色、水色、青色の点は精度比較対象としたデータを取得したフ

ライトと場所を示す(背景地図は 10 m メッシュの DEM データを表示)。

7.4. 測位精度比較結果

PPP との差

Single、CD311、u-blox、および Trimble の PPP との差を Fig. 7-5 に示す。緯度および経度の差は

次の式を用いてメートル単位で表した。

緯度 𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿d [𝑚𝑚] = (𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿PPP [°] − 𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝑥𝑥 [°]) × M [m] 360[°]⁄ [13]

経度 𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿d [𝑚𝑚] = (𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿PPP [°] − 𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝑥𝑥 [°]) × E [m] 360 [°]⁄ × cos (𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿PPP [rad]) [14]

ここで𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿dは緯度の差、𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿PPPは PPP の緯度、𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝑥𝑥は Single、CD311、u-blox、または Trimble の

緯度である。Mは地球の極円周であり、40,003,423 m を用いた。𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿dは経度の差、𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿PPPは PPP

の経度、𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝐿𝑥𝑥は Single、CD311、u-blox、または Trimble の経度である。Eは地球の赤道円周であ

り、40,070,368 m を用いた。

Trimble は他の受信機と比べて緯度、経度、楕円体高ともに PPP との差が大きく、差のばらつき

も大きいことが多いことがわかった。これは Trimble が補正信号を受信できないためであると考

えられる。同じ GNSS 機器でもフライトにより PPP との差が大きく異なり、例えば Single では緯

群馬県

栃木県

茨城県

福島県 新潟県

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度の差が±5 m から±30 m 程度、経度の差が±5 m から±20 m 程度、楕円体高の差が±20 m から

±60 m 程度となった。このフライトごとの差については、飛行の時間帯や飛行場所の傾斜等の傾

向を調査したものの、明確な原因は特定できなかった。

全体として、経度の差より緯度の差の方が大きくなった。これはヘリコプターが南北方向に高

速移動しているためであると考えられる。また、楕円体高の差は経度および緯度の差より大きく

なった。一般的に GNSS 機器の使用用途は水平方向への移動であるため、水平成分の精度を高め

るために垂直成分の精度を犠牲にすることがある。このため垂直成分の精度は水平成分の精度の

半分程度と言われており 38)、本調査結果もこの報告に整合的である。

Fig. 7-5 各受信機で取得した位置情報の PPP との差

(1/2)

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Fig. 7-5 各受信機で取得した位置情報の PPP との差

(2/2)

図は左から緯度の差、経度の差、および楕円体高の差の順に並んでいる。また上から 11 月 7 日の 1

フライト目、11 月 7 日の 2 フライト目、11 月 8 日の 2 フライト目、11 月 13 日の 1 フライト目、11

月 14 日の 1 フライト目および全てのフライトの順である。棒の上端は最大値、箱の上端は 75 パー

センタイル値、箱の中の線は中央値、箱の下端は 25 パーセンタイル値、棒の下端は最小値を示す。

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各受信機における測定条件との関係

比較対象とした全データの緯度、経度、および楕円体高において、PPP との差と DEM との関係

を Fig. 7-6、PPP との差と対地高度(AGL)との関係を Fig. 7-7、PPP との差と斜面の角度との関係を

Fig. 7-8、PPP との差と時刻との関係を Fig. 7-9 に示す。なおここでいう対地高度とは、GNSS 機器

で取得した高度 (=楕円体高) から DEM 高度とジオイド高を差し引いたものであり、斜面の角度

とはヘリコプター直下を含む DEM メッシュとその周囲 8 つのメッシュとの高度差の最大値から

求めた角度である。

Fig. 7-6 より、PPP との差は Trimble が最も大きく、次に Single が大きかった。CD311 と u-blox

は PPP との差がほぼ同程度であった。PPP との差と DEM には相関がなく、GNSS 機器の精度は地

形に依存しないことがわかった。楕円体高について、PPP との差が+25 m から+80 m 程度、DEM

が 1,300–1,700 m 程度の箇所が集団から逸脱しているように見える。これは 11 月 7 日の 2 フライ

ト目の山間部のデータであり、Single、CD311、u-blox、Trimble の全ての受信機で同様の現象がみ

られたため、MADOCA-LEX 信号の異常が考えられる。

Fig. 7-7 より、PPP との差と対地高度には相関がなかった。よって山間部等でのフライトで対地

高度が 300 m から外れた場合も精度に影響がないことがわかった。対地高度が 1,000 m 付近とな

るのは Rn 影響フライト時および BG フライト時である。対地高度 600–1,000 m では緯度、経度、

楕円体高ともに PPP との差が 0 付近となっていることから、Rn 影響フライト時および BG フライ

ト時は精度よく測位できていることがわかった。緯度について、PPP との差が+20 m 以上、対地高

度が 300 m 程度の箇所は、11 月 14 日の 1 フライト目の平野部のデータであり、これも前述と同

様に全ての受信機で同じ現象がみられた。11 月 14 日は比較に用いた 5 フライトの中で最も上空

の雲が多かったことから、LEX 信号を受信できていたとしても天候が測位精度に何らかの影響を

与えている可能性がある。

Fig. 7-8 より、斜面の角度と測位精度には相関がないことがわかった。11 月 14 日の 1 フライト

目 (青色) は比較対象の期間中で最も平坦な場所のフライトであったが、緯度のずれが最も大き

かった。

Fig. 7-9 における 11 月 14 日の 1 フライト目 (青色) 以外の結果から、少なくとも 10 時頃から

15 時頃までは時刻と測位精度に相関がないことがわかった。しかしながら同時刻の比較データが

存在しないため、14 日の 9 時頃から 10 時頃までの緯度方向 (ヘリコプターの進行方向) のずれの

原因は、現時点では不明である。

以上の比較結果から、各 GNSS 機器の測位精度は DEM、対地高度および斜面の角度とは関係が

ないことがわかった。しかしながら PPP との差が大きくなる原因、あるいは PPP の精度が悪くな

る原因については、天候、時刻、またはその他の複数の因子が関係している可能性がある。この

点については今後も注意深く観察する必要がある。

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Fig. 7-6 PPP との差と DEM との関係

比較したデータは上から Single、CD311、u-blox、Trimble。左列は緯度の差と DEM との関係、中

央列は経度の差と DEM との関係、右列は楕円体高の差と DEM との関係を示す。

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Fig. 7-7 PPP との差と対地高度との関係

比較したデータは上から Single、CD311、u-blox、Trimble。左列は緯度の差と対地高度との関係、

中央列は経度の差と対地高度との関係、右列は楕円体高の差と対地高度との関係を示す。

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Fig. 7-8 PPP との差と斜面の角度との関係

上から Single、CD311、u-blox、Trimble。左から緯度の差と斜面の角度との関係、経度の差と斜面

の角度との関係、楕円体高の差と斜面の角度との関係。

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Fig. 7-9 PPP との差と時刻との関係

上から Single、CD311、u-blox、Trimble。左から緯度の差と時刻との関係、経度の差と時刻との関係、楕

円体高の差と時刻との関係。

PPP および気圧高度計との相関

各受信機で取得した緯度、経度、および楕円体高について、基準値との相関を Table 7-3 に示す。

緯度および経度は PPP を基準とし、楕円体高は気圧高度計の値を基準とした。相関が 1 に近いほ

ど緯度、経度、および楕円体高の変動が基準値の変動と一致していることを示すが、対象の値が

必ずしも PPP と近いとは限らないことに注意が必要である。

全体として、楕円体高の相関よりも緯度および経度の相関が強かった。緯度、経度、楕円体高

ともに、基準値と Trimble との相関が最も弱かった。緯度および経度については基準値 (PPP) と

Single、CD311、および u-blox との相関に目立った違いはなかった。楕円体高については基準値

(気圧高度計) と CD311 および u-blox との相関が最も強く、次いで Single、PPP となった。11 月 14

日の気圧高度計データと PPP との相関は特に弱かった。

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Table 7-3 各受信機で取得した緯度、経度、および楕円体高の基準値との相関

フライト

高精度型 I 高精度型 II 高精度型 III 既存 気圧高度計 PPP Single CD311 u-blox Trimble

緯度 11/7 No.1 基準 0.99999998 0.99999995 0.99999999 0.99999905 - 11/7 No.2 基準 0.99999999 0.99999999 1.00000000 0.99999993 - 11/8 No.2 基準 1.00000000 0.99999999 0.99999999 0.99999996 - 11/13 No.1 基準 0.99999996 0.99999998 0.99999998 0.99999992 - 11/14 No.1 基準 0.99999997 0.99999997 0.99999998 0.99999994 - 全データ 基準 0.99999997 0.99999997 0.99999998 0.99999993 -

経度 11/7 No.1 基準 0.9999997 0.9999997 0.9999997 0.9999993 - 11/7 No.2 基準 0.9999996 0.9999996 0.9999996 0.9999994 - 11/8 No.2 基準 1.0000000 1.0000000 1.0000000 1.0000000 - 11/13 No.1 基準 0.9999974 0.9999974 0.9999975 0.9999948 - 11/14 No.1 基準 0.9999979 0.9999983 0.9999985 0.9999981 - 全データ 基準 1.0000000 1.0000000 1.0000000 1.0000000 -

楕円体高 11/7 No.1 0.9998 0.9997 0.9997 0.9998 0.9979 基準 11/7 No.2 0.9991 0.9998 0.9998 0.9998 0.9998 基準 11/8 No.2 0.9998 0.9998 0.9999 0.9999 0.9999 基準 11/13 No.1 0.9998 0.9997 0.9997 0.9997 0.9997 基準 11/14 No.1 0.9956 0.9982 0.9995 0.9996 0.9993 基準 全データ 0.9997 0.9998 0.9998 0.9998 0.9996 基準

放射線計測への影響

各受信機で取得したデータを用いて地上の空間線量率を計算し、相互比較を行った。比較

項目は、測定場所の直下の標高(H)、対地高度(AGL)、時刻、および測定場所から 45°に降

ろした直線と地表面が交差する点がつくる円内の DEM の平均値(Have)と H との差 (H-Have:

勾配インデックス)である。勾配インデックスの概念図について Fig. 7-10 に示す。勾配イン

デックスは谷地形では負の数値に、山地形では正の数値になり、平坦であれば 0 となるた

め、測定場所の地形を表す指標になる。

各受信機の高度データから換算した空間線量率は、PPP を分母にした比を計算した。空間

線量率比は、標高および対地高度は 100 m ごと、時刻は 1 時間ごと、勾配インデックスは

10 m ごとの数値を平均化して散布図として示した。空間線量率比と各測定条件の関係を Fig.

7-11 に示す。Fig. 7-11 (a) に示したように、H が 0-2,000 m の場所において、空間線量率比

は 1 から 1.1 の間に入り、受信機間の空間線量率換算結果の差は小さいことが分かった。一

方、H が 2,000 m を超える場所では、Trimble を用いた換算結果は標高が上がるにつれて PPP

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92

よりも低い数値となり、最大 2 割ほどの過小評価となった。また、その他の受信機について

は、標高が上がるにつれて PPP よりも若干高い数値となる傾向があることが分かった。こ

のずれの要因は、各受信機の標高算出システムにあると考えられるが、具体的な要因は特定

できていない。Fig. 7-12 に航空機モニタリングを実施している範囲において、標高 2,000 m

を超える場所について示す。該当する場所は栃木県北部および群馬県の北部の限られた地

域であり、これまで行われてきた航空機モニタリングの結果への影響は小さいと考えられ

る。Fig. 7-11 (b) に示した対地高度については、全体的に Single の換算結果が過大評価され

る傾向があり、最大で 10 %程度のずれとなった。また、Trimble については、対地高度が 700

m 以下および 1,600 m 以上で過小評価される傾向があった。Fig. 7-11 (c) に示した測定時間

については、全体的に 9:00~10:00 に過小評価され、その他の時間については全体的に最大

10%過大評価される傾向があった。これは、PPP の補正信号の時間により精度のばらつきが

あることが考えられる。Fig. 7-11 (d) に示した勾配インデックスについては、Single が比較

的過大評価される傾向にあったものの、その他の受信機はよく一致している。これは、地形

の勾配が各受信機の高度測定精度に大きな影響を与えないことを示している。

これらの評価結果から、Trimble については標高 2,000 m 以上で顕著に空間線量率の換算

結果を過小評価することが分かったものの、他の受信機については線量換算した結果が±

10%以内に収まることが示唆された。

Fig. 7-10 勾配インデックスの概念

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93

Fig. 7-11 各受信機の高度データから換算した空間線量率と測定条件との関係

0.8

0.9

1

1.1

1.2

9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00

線量

率比

測定時刻

Trimble/PPP Single/PPPCD311/PPP ublox/PPP

(c)

0.8

0.9

1

1.1

1.2

-120 -90 -60 -30 0 30 60 90 120

線量

率比

勾配インデックス (m)

Trimble/PPPSingle/PPPCD311/PPPublox/PPP

山部 谷部

(d)

0.8

0.9

1

1.1

1.2

0 500 1,000 1,500 2,000

線量

率比

対地高度

Trimble/PPP Single/PPPCD311/PPP ublox/PPP

(b)

0.8

0.9

1

1.1

1.2

0 1,000 2,000 3,000

線量

率比

測定場所の直下の標高 (m)

Trimble/PPP Single/PPPCD311/PPP ublox/PPP

(a)

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94

Fig. 7-12 標高 2,000 m 以上の測定場所

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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95

7.5. 航空機モニタリングに最適な受信機

PPP は MADOCA-LEX を受信することで高精度な測位が可能であるが、LEX 信号の配信

日程は限られており、さらに今回の試験結果から天候の影響等を受けやすく安定して受信

できないことがわかった。よって LEX 信号を用いた測位は現時点では実用的ではない。し

かし、今後新たな衛星が打ち上げられ、LEX 信号を用いて安定した高精度測位が可能とな

る予定であるため、将来的には有用な技術になると考えられる。また、Single は測位精度お

よび相関について CD311 および u-blox に僅かに劣る部分があった。CD311 および u-blox は

測位精度および相関が最も良く、この 2 種の受信機にほとんど差はなかった。Trimble は測

位精度および相関ともに他の受信機より劣っていた。また、空間線量率換算においても標高

2,000 m 以上で顕著に過小評価される傾向があることが分かった。

CD311 は国内メーカーの製品であり、準天頂衛星からの補強信号を受信することができ

るという特徴がある。現在、準天頂衛星は「みちびき」1 基のみであるが、2018 年までに 4

機の衛星による運用体制を目指していることから、準天頂衛星からの信号を受信できる機

器を利用するメリットは大きい。また、新たな衛星の運用に伴って今後信号の仕様等が変更

される可能性があるため、国内メーカーであれば変更に柔軟に対応できる。

以上の理由から、航空機モニタリングに最適な受信機は、CORE 社製の CD311 であると

考えられる。

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96

8. ラドン除去手法のシステム化

8.1. ラドン子孫核種

地殻中に存在するウランやトリウムの壊変系列には、気体であるラドン (Rn) が存在し、

ラドンの一部は大気中に散逸する。Fig. 8-1 に主な天然の放射性核種系列であるウラン系列

とトリウム系列について示す。大気中に散逸したラドンは、Po、Pb および Bi などのラドン

子孫核種に壊変し、大気中の微粒子に吸着して大気中を浮遊する。航空機モニタリングの測

定高度、対地 300 m 付近におけるラドン子孫核種濃度は測定されていないものの、地上に

おけるラドン濃度は広く測定されており、日本の屋外における濃度レベルは 6 Bq/m3 程度と

なっている 40)。これらのラドンの濃度レベルは低いものの、航空機モニタリングにおいて

は、ヘリコプターの周辺に存在するため検出器との距離が近く、一定の影響があると考えら

れる。また、日単位や季節単位で濃度が変動することが知られており、航空機モニタリング

への影響も一定ではない 41)。これまでの航空機モニタリングの経験においても、ラドン子

孫核種の影響により、航空機モニタリングの地上換算時に過大評価となる例が報告されて

いる 21, 22, 23)。

ラドン子孫核種の放出するγ線は、地殻にも同じ核種が存在するので、地上からの放射線

とのγ線スペクトル上で弁別が難しい。また、放射性セシウムの放出するエネルギーに似て

いるため、福島原子力発電所事故の近傍ではなおさらである。Table 8-1 にラドン子孫核種の

放出するγ線エネルギーについて示す。これらのラドン子孫核種の影響を除去し、航空機モ

ニタリングによる空間線量率への換算を高精度化する検討を平成 27 年度に実施した。平成

28 年度は、開発した手法を大量のデータに適用できるように既存の航空機モニタリング解

析システムに組み込んだ。 また、製作した解析プログラムを使用して平成 28 年度に実施し

た東日本第 7 次のデータを解析し、大気中のラドン子孫核種の影響について考察した。以

下、大気中のラドン子孫核種の影響の除去手法を「ラドン弁別手法」と表記する。

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97

Fig. 8-1 ウラン系列およびトリウム系列

Table 8-1 ラドン子孫核種の放出するγ 線

ウラン (238U) 系列 トリウム (232Th) 系列

Th-2321.405 x 1010 y

U-2384.468 x 109 y

Ra-2261.6 x 103 y

Ra-2243.66 d

Rn-2223.824 d

Po-2183.10 m

Pb-21426.8 m

Bi-21419.9 m

Rn-22055.6 s

Po-2160.145 s

Pb-21210.64 h

Bi-21260.55 m

Nuclide Series Gammaenergy (keV)

Blanching ratio (%)

Note

Pb-212 Th 239 43.3

Pb-214 U 352 37.6

Tl-208 Th 583 84.5 Cs-134: 569 keV (15.4 %)

Bi-214 U 609 46.1 Cs-134: 605 keV (97.6 %)

Bi-214 U 768 4.94 Cs-134: 796 keV (85.5 %)

Bi-214 U 1,120 15.1

Bi-214 U 1,765 15.4

Tl-208 Th 2,615 99.2

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98

8.2. ラドン弁別手法の理論

前述したように、ラドン子孫核種は大気中だけでなく、地表面および地殻にも存在するこ

とから、γ線のエネルギーによって大気中のラドン子孫核種の影響と地上のラドン子孫核

種の影響を区別することは難しい。また、134Cs と 214Bi は放出するγ線エネルギーが似通っ

ているため、福島原子力発電所事故の影響を受けた地域ではさらに困難である。航空機モニ

タリングにおけるラドン子孫核種の影響を弁別する方法として、航空機モニタリング用の

検出器以外にラドン子孫核種用の検出器を搭載し、その比較からラドン子孫核種の影響を

弁別する方法が知られている 41)。

今回、ラドン子孫核種の影響を弁別する手法を検討するため、RSI (Radiation Solution Inc.)

社製 LaBr3 シンチレータ (3 インチφ×3 インチ H) を用いた航空機モニタリング機器 (以

下、LaBr RSI システム) を採用し、フライトデータの取得および換算パラメータの最適化を

行った。採用した LaBr RSI システムをヘリコプター内に搭載した状況について Fig. 8-2 に

示す。写真のように、地上からの放射線を遮蔽することを目的とし、通常用いている NaI シ

ンチレーション検出器 (NaI RSI システム) の上方に配置した。

手法の理論としては、空気中のラドン子孫核種からの放射線と地表面からの放射線の距

離の差に着目する。Fig. 8-3 にヘリコプター内の検出器と線源の位置関係のイメージについ

て示す。このように、大気中のラドン子孫核種と検出器の位置は近いため、検出器内に搭載

した検出器は、地上の放射性核種からのγ線と比較して検出されやすい。また、γ線は検出

器に等方向より放射されることから、LaBr RSI システムの下方に置いた NaI RSI システム

の遮蔽としての影響は小さい。一方、地上から LaBr RSI システムに到達するγ線は、下方

からの照射となるため NaI RSI システムに遮蔽されやすい。すなわち、大気中のラドン子孫

核種を計測した NaI RSI システムの計数率に対する LaBr RSI システムの計数率の比 (LaBr

RSI システム/NaI RSI システム)、地上の放射性核種起源の計数率の比よりも大きくなると

考えられる。

実際には、地上からのγ線による影響のない海上で取得したデータから、ラドン子孫核種

起源の NaI RSI システムの計数率に対する LaBr RSI システムの計数率の比を求めておき、

この数値をラドンインデックスと定義する。一方、ラドン子孫核種の影響が無視できるほど、

地上からの影響が大きなエリアで取得したデータから地上の放射性核種起源の求めた NaI

RSI システムの計数率に対する LaBr RSI システムの計数率の比を求めておき、この数値を

グラウンドインデックスと定義して、この 2 つの定数の差を利用してラドン子孫核種の影

響を弁別する。これらを数式で表すと式 [15] で表すことができ、ここに式 [16] を代入し

てラドン子孫核種の影響を弁別した NaI RSI システムの全計数率 (Ng) について解くと、式

[17] が導かれる。

𝑁𝑁𝑔𝑔 = 𝑁𝑁𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎 − 𝑁𝑁𝑟𝑟 [15]

𝑁𝑁𝑟𝑟 = 𝑅𝑅𝑅𝑅 ∙ 𝐿𝐿𝑟𝑟 [16]

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99

𝑁𝑁𝐿𝐿 =𝐺𝐺𝑅𝑅 ∙ 𝑁𝑁𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎 − 𝐺𝐺𝑅𝑅 ∙ 𝑅𝑅𝑅𝑅 ∙ 𝐿𝐿𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎

𝐺𝐺𝑅𝑅 − 𝑅𝑅𝑅𝑅

[17]

ここで、

Ng: ラドン子孫核種の影響を除去した NaI RSI システムの全計数率

Lg: ラドン子孫核種の影響を除去した LaBr RSI システムの全計数率

Nr: ラドン子孫核種のみの NaI RSI システムの計数率

Lr: ラドン子孫核種のみの LaBr RSI システムの計数率

GI: グラウンドインデックス: 陸上における対地高度 300 m での NaI RSI システムと LaBr

RSI システムの測定データにおける近似曲線の傾き

RI: ラドンインデックス: 海上における海抜高度 300 m での NaI RSI システムと LaBr RSI シ

ステムの測定データにおける近似曲線の傾き

Lall: LaBr RSI システムの全計数率

Nall: NaI RSI システムの全計数率

である。

Fig. 8-2 ラドン用航空機モニタリング機器とヘリコプターへの搭載状況

LaBr RSIシステム

NaI RSIシステム

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100

Fig. 8-3 空気中のラドン子孫核種と地上からの放射線のイメージ

8.3. パラメータ (GI および RI) の決定

式 [17] に記載したように、ラドン子孫核種と地上からの寄与を弁別する信頼性は、GI と

RI の設定に依存する。GI と RI については、ヘリコプターの遮蔽によって変化するため、東

日本第 7 次で使用したヘリコプターごとで実測データから数値を決定した。測定データは

40 秒ごとに取得した計数率を積算した。積算したデータから宇宙線および自己汚染の寄与

分を差し引き GI の算出に使用した。また、GPS データは中間値を採用した。東日本第 7 次

で取得した地上高さ 300 m 位置 (実際のフライトの対地高度が 290~320 m のデータ) にお

ける NaI RSI システムの計数率と LaBr RSI システムの計数率の関係を Fig. 8-4 に示す。な

お、東日本 7 次では、Bell 412 (JA6767、JA9616) および Bell 430 (JA05TV) を使用しており、

それぞれ E7th_A および E7th_B と記述する。これらのデータにはラドン子孫核種の影響が

含まれているが、完全にラドン子孫核種の影響のない環境でのデータ取得は困難であるこ

と、多くのデータを取得し平均化していることから、地上からの放射線の計数と比較してラ

ドン子孫核種の影響が小さいと仮定する。一方、RI については、海上の 300 m 位置 (実際

のフライトの対地高度が 290~320 m のデータ) で取得したデータを抽出し、GI と同様なバ

ックグラウンドの減算を行った。各ヘリコプターにおける NaI RSI システムの計数率と LaBr

RSI システムの計数率の関係を Fig. 8-5 に示す。本散布図の近似直線の傾きを RI とする。

NaILaBr

Rn子孫核種 (214Bi or 214Pb)

地上からの放射性核種 (134, 137Cs or 天然の放射性核種)

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101

Fig. 8-4 陸上における NaI RSI システムの計数率と LaBr RSI システムの計数率の関係

(1 次近似曲線の傾きを GI と定義)

Fig. 8-5 陸上における NaI RSI システムの計数率と LaBr RSI システムの計数率の関係

(1 次近似曲線の傾きを RI と定義)

8.4. GI の高度補正方法

GI については、平成 27 年度に実施した予備的な調査により、対地高度に依存して数値が

変化することが分かっている。しかしながら、実測のデータではラドン子孫核種の寄与がな

いデータを取得することは不可能であるため、計算シミュレーションにより実際の測定体

系を模擬し、GI の高度補正手法について検討した。

シミュレーションに用いた計算コードは、モンテカルロ計算コードの一種である電磁カ

スケードモンテカルロコード EGS5 とし、ヘリコプター内の検出器の体系を簡易的に Fig.

8-6 のように模擬した。計算体系の妥当性については、正面および横の周辺からの点線源を

模擬した場合の検出器のレスポンスを計算した結果と、実際に有人のヘリコプターに検出

y = 32.4 x

R² = 0.980

0

2,000

4,000

6,000

0 100 200

NaI R

SIシ

ステ

ムの

計数

率(c

ps)

LaBr RSIシステムの計数率 (cps)

y = 30.7 x

R² = 0.993

0

2,000

4,000

6,000

0 100 200

NaI R

SIシ

ステ

ムの

計数

率(c

ps)

LaBr RSIシステムの計数率 (cps)

(a) GI: E7th_A (b) GI: E7th_B

y = 26.1x

R² = 0.907

0

100

200

300

400

0 5 10 15

NaI R

SIシ

ステ

ムの

計数

率(c

ps)

LaBr RSIシステムの計数率 (cps)

(b) RI: E7th_B

y = 26.1 x

R² = 0.854

0

100

200

300

400

0 5 10 15

NaI R

SIシ

ステ

ムの

計数

率(c

ps)

LaBr RSIシステムの計数率 (cps)

(a) RI: E7th_A

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102

器 (NaI RSI システム) を搭載した状態で、点線源 (137Cs) を照射することによって求めた

検出器のレスポンスの結果を比較してベンチマークとした。Fig. 8-7 に計算結果と実測結果

の比と線源の照射方向の関係について示す。このように概ね一致している。一部値が外れて

いる部分は、計算体系に考慮されていない局所的な構造物が影響していると考えられるが、

全体として構築した体系は、検出器のレスポンスを再現するのに十分な精度を有する。本体

系に対し、地上の無限平板線源を模擬し、距離を変化させることにより GI の測定高度との

関係を計算した。なお、実際の計算では NaI RSI システムと LaBr RSI システムを別で実施

した。LaBr RSI システムの計算時には、下部の NaI RSI システムを体系に加えた。線源の模

擬体系は、以下の条件を設定した。土壌中の天然放射性核種濃度は、全国的な地上における

測定結果から平均値を採用した 42)。

・空気(1 km×1 km×1.3 km)と土壌(深さ 1 m, 密度ρ:1.6 g cm−3)

・山等の地面の凹凸を再現せずに地面は平坦

・地面中の自然放射性核種( U 系列、Th 系列、40K )は一様分布

・地面中の人工放射性核種(134Cs と 137Cs)表層から深さ方向に指数関数的な分布 (緩衝

深度β=3 g/cm2)

・土壌中の放射性核種濃度 40K:500 Bq/kg、U 系列:20 Bq/kg、Th 系列:10 Bq/kg、134Cs:

50 kBq/m2、137Cs:200 kBq/m2

検出器と線源の距離 (測定高度) と GI の計算結果を Fig. 8-8 に示す。このように測定高度

と GI は正の相関関係にある。この結果における近似直線の傾きを採用し、測定高度ごとに

GI を補正した。

Fig. 8-6 計算体系のイメージ

検出器 燃料Al(前の機材)

(b) 正面から見た図(a) 横から見た図

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103

Fig. 8-7 計算体系のベンチマーク

(計算結果と実測結果の比)

Fig. 8-8 シミュレーションによる測定高度と GI の関係

(a) 鉛直方向 (b) 水平方向

0.0

0.5

1.0

1.590

135

180

225

270

315

0

45

0.0

0.5

1.0

1.590

135

180

225

270

315

0

45

右左

y = 0.0333x + 36.1

30

40

50

60

0 200 400 600 800

GI

Altitude above the ground (m)

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104

8.5. 80 km 圏外データへの適用

ラドン弁別手法を今年度の測定結果に適用した。本手法は、大気中のラドン子孫核種の計数

率と地上からの計数率が拮抗している場所に効果的であり、地上からの影響が著しく大きな場

所では計数誤差の影響により適用が難しく、そもそも放射性セシウムの影響が大きな地域では

大気中のラドン子孫核種の影響は無視できるため、適用評価には発電所から 80 km 以遠のデー

タ (東日本 7 次) のみに適用した。本手法は GI の数値により大きく変化すると考えられるた

め、Fig. 8-4 に示したヘリコプターごとの GI の数値 (±0) に-1 および 2 とした場合についても

解析した。解析の結果は、地上における測定結果 297 点と比較し、その妥当性について考察し

た。なお、4 章で示した従来の空間線量率換算手法においては、これまでの経験から Table 4-1

で示すように、Rn 影響フライトとして測定日ごとに測定前に拠点近くの測線上を 450-900 m ま

で直線的に上昇して得られたデータをバックグラウンドとして差し引いているため、ある程度

のラドン子孫核種の影響は弁別されていると考えられる。本手法の検証には、Rn 影響フライト

で取得したバックグラウンドを減算せずにラドン弁別手法を適用する。よって、ラドン弁別手

法なしの空間線量率マップは Fig. 5-5 で示したマップとは異なる。Rn 影響フライトから求めた

バックグラウンド減算によるラドン子孫核種の弁別効果については 8.6 節で評価する。

Fig. 8-9 にラドン弁別手法を適用した東日本 7 次の空間線量率マップを示す。比較としてラ

ドン弁別手法を適用しない解析結果についても示している。傾向としては、GI の数値が大きい

ほど空間線量率は低くなる傾向があることが分かる。さらに、ラドン子孫核種の影響の高い地

域について考察するために、ラドン弁別手法で減算した NaI RSI システムの計数率を抽出し、

計数率マップを作成した。また、本マップは測定の時間が場所により異なるので、瞬間的な空

気中のラドン子孫核種の影響が時間的につぎはぎ状でマップとして表現されている。Fig. 8-12

に東日本 7 次の測定結果から計算した空気中のラドン子孫核種由来の計数率のマップを示す。

このように、ラドン子孫核種の検出されたエリアは、越後山脈から関東山地に向けての比較的

標高の高いエリアであることが分かる。一方、標高の低い関東平野ではほとんど検出されてい

ない。ラドン子孫核種の起源としては中国大陸からの輸送と地殻からの放出が考えられ、後者

由来のものは濃度の時間変化は小さいと考えられる。ラドン子孫核種の検出された標高の高い

エリアは、地質的に地殻由来のラドン子孫核種濃度が高いとすると、この結果は矛盾しない。

結果の妥当性を評価するために、地上値との比較を行った。比較結果を Fig.8-13 に示す。結

果を見るとラドン弁別手法を適用しない場合と適用した場合を比較すると、近似直線の傾きと

決定係数は地上測定データに近くなることが分かる。一方、GI が大きくなるほど近似直線の傾

きは 1 に若干近くなるものの、有意な差とは言い難い。この結果から、ラドン弁別手法の適用

により地上の空間線量率を過小評価しない観点から、GI はなるべく小さく評価することが望ま

しいと考えられる。本手法には、高度補正の手法や GI の数値決定方法に若干の不正確さが残

っているため、今後も、このような解析経験を積み上げ、最適化を行っていくことが必要であ

る。

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105

Fig. 8-9 ラドン影響弁別手法適用後の東日本 7 次の空間線量率マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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106

Fig. 8-10 東日本 7 次の測定結果から計算した空気中のラドン子孫核種の NaI RSI システムで検出され

た計数率マップ

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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107

Fig. 8-11 ラドン影響弁別後の地上測定データとの比較

8.6. 従来手法の評価

前章で言及したように、従来の手法においても Rn 影響フライトとして測定日ごとに測定前

に拠点近くの測線上を 450-900 m まで直線的に上昇して得られたデータをバックグラウンドと

して差し引いているため、ある程度のラドン子孫核種の影響は弁別されていると考えられる。

従来手法によるラドン子孫核種弁別の効果と上記の新たなラドン弁別手法の有効性を評価する

ために、Fig. 5-5 で示した従来手法の空間線量率マップとラドン弁別手法を適用した GI±0 を

適用した空間線量率マップを Fig. 8-12 に示す。このように全体的な傾向は概ね一致しており、

従来の手法であってもラドン子孫核種の影響はある程度除去できていることが分かる。一方、

詳細に見ると、会津地方や群馬県の北部など従来の手法の結果において空間線量率の高い場所

が散見され、岩手県南部などではラドン弁別手法を適用した方が空間線量率の高くなっている

場所があることが分かる。

これらの違いを定量的に理解するために、従来法で求めた測定日ごとのバックグラウンド計

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108

数率と同日における新たなラドン弁別手法で求めた計数率の平均値の比較を Fig. 8-13 に示す。

図には比較のため、放射性セシウムの存在しない大飯および高浜原子力発電所と伊方原子力発

電所のバックグラウンドを航空機モニタリングで求めたデータもプロットしている。このよう

に一定の正の相関関係にあるものの、ばらつきが大きいことが分かる。プロット自体は、放射

性セシウムの有無に関わらず固まっており、従来手法でもラドン子孫核種の弁別はある程度で

きることが示唆される。しかしながら、従来手法は必ず目的の測線のデータ取得の前にラドン

影響フライトを行わなければならないという手間があること、大気中のラドン子孫核種濃度が

1 日を通して測定範囲で一定である場合のみ効果があることを考慮すると、新たな弁別手法に

よりコストに関係するフライト時間の短縮やラドン弁別の精度が向上することが期待できる。

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109

Fig. 8-12 従来手法とラドン弁別手法の比較

(背景地図は、ArcGIS データコレクションスタンダードパック (ESRI, Co. Ltd.) を使用)

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110

Fig. 8-13 Rn 影響フライトから求めた NaI RSI システムのバックグラウンド計数と同日にフライトしたデー

タにラドン弁別手法を適用し求めたラドン子孫核種の計数率の平均値の比較

8.7. 解析ソフトウエアへの組み込み

ラドン弁別手法の解析をルーチン的に実施するために、既存の航空機モニタリングの解析シ

ステム内に組み込んだ。組み込んだシステムのフローについて Fig. 8-14 に示す。また、ソフト

ウエアのインターフェースについて Fig. 8-15 に示す。本ソフトウエアは、航空機モニタリング

用に開発したものであり、開発言語は C++を用いている。データベースは SQLite、マップ機能

は QGIS で製作し、線量計算からマップ作成までが一元的に解析可能である。ラドンの影響除

去手法は、本システム内でオプションとし、ユーザーにより適用の可否を選択できる。

y = 1.2025xR² = -0.158

0

200

400

600

800

1000

0 200 400 600 800 1000

ラド

ン弁

別手

法で

求め

たラ

ドン

子孫

核種

由来

の計

数率

フラ

イト日

毎の

ラドン影響フライトから求めたバックグラウンド計数率

E7th_A

E7th_B

大飯高浜

伊方

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111

Fig. 8-14 解析システムの計算フロー

1. フライト記録シートの登録

2. 測定データの登録及びCh対エネルギー値の設定

3. 計数率の積算及び対地高度の設定

4-1. 宇宙線寄与の計算

4-4. テストラインの計数率算出

4-2. 地上データの登録

4-3. ファイルごとのBG算出

4-5. テストポイントの計数率と地上測定値の算出

4-6. 減弱係数の算出

4-7. 線量換算係数(CD)の計算

7. 線量率計算

5. 有効な測線の抽出

8. 線量マップの作成

ラドン弁別法を取り入れた線量率計算機能の追加

出力対象に空中のラドン濃度分布を追加

6. GI及びRIの評価 ラドン弁別法を適用した場合のみ有効、平均処理を行った後、GI、RIを求める。

ラドン弁別法を適用した場合は計数率の平均処理を行う。

ラドン弁別法適用時、LaBr3検出器に対応

欠測に対応

ラドン弁別法適用時、LaBr3検出器に対応

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112

Fig. 8-15 RI および GI の設定インターフェース例

有人ヘリモニタリング解析ツール

結果をexcelに出力 保存

メッセージボックス

6.RI及びGIの算出

y = 29.8 x

0

100

200

300

400

500

0 5 10 15

NaI

全計数

(cps

)

LaBr 全計数(cps)

GI算出

GIの再評価 リセット

y = 34.0 x

0

500

1000

1500

0 20 40

NaI

全計数

(cps

)

LaBr 全計数(cps)

UTC time AGL_GEOID NaI計数率 LaBr3計数率

9

8

7

6

5

4

3

2

1

計数率

GI: 34

機器周辺のバックグラウンド

宇宙線寄与係数

パラメータ NaI(VD*) LaBr3(VD4)

RI算出

RIの再評価 リセット

機器周辺のバックグラウンド

宇宙線寄与係数

パラメータ

UTC time AGL_GEOID NaI計数率 LaBr3計数率

9

8

7

6

5

4

3

2

1

計数率

RI: 29.8

NaI(VD*) LaBr3(VD4)

グラフ表示

数値表の表示

数値表の表示

グラフ表示

ユーザー入力/修正可能

ユーザー入力/修正可能

RIの表示

GIの表示

RIの高度範囲(AGL_GEOID): ~ feet

GIの高度範囲(AGL_GEOID): ~ feet

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113

9. 今後の課題

今年度得られた成果をまとめ、今後の課題について示す。

・RSI システムの保守方法について

規制庁所有の RSI システムも 7 年目となり、軽微な異常が何件か発生している。例えば、GPS

のエラーによるデータの未取得や RSI システムのバグ等である。本 RSI システムの保守・運用

についても、時間が経つにつれて必要性が増すため、メーカーを含めた体制作りが必要と考え

る。

・空間線量率マップについて

昨年度まで、CD や AF 等のパラメータは、モニタリングごとに取得し、データの信頼性を考

慮し、選定してきた。今年度は、6 年間の実施の中で、ヘリコプターと RSI システムの組み合

わせによりデータの蓄積が行われ、信頼性の高い数値の選択が可能になってきたと判断し、あ

らかじめ定めた 1 つの数値を用いた。結果として、地上測定の結果ともよく整合し、今後も同

様な方法で問題ないと考える。しかしながら、パラメータフライトは、確認・参考データの位

置づけにし、今後も実施していくことが望ましい。

・位置情報取得方法の最適化について

複数の GNSS 機器を用いた検証により、従来用いていた GPS では標高 2,000 m 以上の位置情

報で誤差が大きくなる傾向にあることが分かった。ただし、標高 2,000 m 以上の測定場所は限

られており、これまでの航空機モニタリングの測定結果に与える影響は小さいが、精度を向上

するために現在のシングル GPS から GNSS に更新することが望ましい。なお、コスト面を考慮

した最適な GNSS 受信機として CORE 社製 CD311 が推奨される。

・ラドン子孫核種の弁別手法について

今回、初めて 80 km 圏外の航空機モニタリングデータにラドン弁別手法を適用した。その結

果、地上の測定値と比較した結果から有効性が示された。一方で、これまで経験的に採用して

きた測定日ごとにラドン影響フライトを行って減算する手法についても精度的に劣るものでな

いことが分かった。しかしながら、ラドン影響フライトの手間がなくなりフライト時間が短縮

できること、および場所ごとに大気中のラドン子孫核種の影響が除去できることから、新たな

方法のメリットは大きい。今後、本手法について従来手法と比較しつつ、データを蓄積し最適

化していくことが望ましい。

・地形効果補正の最適化について

複雑な地形の場所、すなわち山間部はもれなく森林になっており、樹木の影響についても評

価が必要である。今後、手法の高精度化を目指して技術開発の必要なテーマである。写真測量

による積雪深測量は精度に問題があったものの、DSM の精度は地形補正には十分に使用できる

ことが分かった。今後、写真測量データを基に地形の補正を行うことも検討すべきである。

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114

10. まとめ

平成 28 年度に予定された 80 km 圏内の航空機モニタリング 1 回および 80 km 圏外の航空機

モニタリング 1 回を確実に実施した。今回の結果を過去のモニタリングの結果と比較し、福島

原子力発電所事故の影響があったエリアの空間線量率の全体的な減少傾向を把握することがで

きた。また、複数の異なった位置情報取得手法を比較し、各機器の性能について評価するとと

もに、航空機モニタリングの換算手法に与える影響について評価した。さらに、空気中のラド

ン子孫核種の弁別手法についてシステム化を行い、初めて発電所から 80 km 圏外のデータに適

用した。

事故以来、航空機モニタリングが日本で実施されて、6 年目となった。事故当時、定まって

いなかった手法についてもある程度確立し、パラメータの精度や RSI システムの定期的な保守

および軽微なトラブルへの対応経験により、作成する放射空間線量率マップの精度は高まって

きているといえる。ただし、測定者の技能にかかわらず同じ測定結果が得られるまで測定手法

が確立しているとは言い難く、事故以来、専属的に行ってきた研究者、技術者の知識と経験に

負うところはまだまだ大きい。今後、さらなるルーチン化を目指し、単純なシステム化が必要

である。

謝辞

本調査研究は、「平成 28 年度原子力施設等防災対策等委託費および放射性物質測定調査委託

費(80 km 圏内外における航空機モニタリング)事業」の成果をとりまとめたものである。原

子力機構、応用地質 (株)、(株) NESI、エイ・ティ・エス(株)により 30 余名が、航空機に搭乗し

ての測定、地上での空間線量率測定、さらにデータ解析とそのマップ化に取り組んだ。航空機

の運航は、朝日航洋 (株)、中日本航空 (株) が行った。ここに本モニタリングに参加された皆

様に謹んで謝意を表します。

参考文献

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116

22) 眞田幸尚, 森愛理, 石崎梓, 宗像雅広, 中山真一, 西澤幸康, 卜部嘉, 中西千佳, 山田勉,

石田睦司, 佐藤義治, 平山弘克, 高村善英, 西原克哉, 伊村光生, 土田清文, 石橋聖,

吉田真美, 前島正道, 結城洋一, 鳥居建男, 平成 26 年度福島第一原子力発電所周辺におけ

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山田勉, 石田睦司, 佐藤義治, 佐々木美雪, 平山弘克, 高村善英, 西原克哉, 伊村光生,

宮本賢治, 岩井毅行, 松永祐樹, 豊田政幸, 飛田晋一朗, 工藤保, 中山真一, 平成 27 年度原

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