物理ベースの絵作りのための基礎
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物理ベースの絵作りのための基礎知識
AQインタラクテブ 技術開発部
鈴木雅幸
セッション内容
リニアワークフロー-計算を正しくするための環境
HDR- 現実のコントラスト比とHDRデータ
ライト- 物理的なライトと単位
マテリアル- エネルギー保存と物理パラメータ
カメラ- 露出補正やホワイトバランス
-計算を正しくするための環境-
リニアワークフロー
リニアワークフローを行っていないと
0.5 + 0.5 = 1.0
0.22 + 0.22 = 1.0
という画像の計算は 実は...
という現象を見ている
カメラとPCの明るさ調整どちらが正しい?
カメラで明るさを調節 (正)
PCに取り込んで明るさを調節 (誤)
ディスプレイガンマを考慮していないのが原因!
1/4の光量で撮影 基準として撮影 4倍の光量で撮影
ベース画像を読み込む明るさを1/4倍 明るさを4倍
ディスプレイガンマ
ディスプレイの出力は非線形
0.142.9 20
0.020.084
0.442250
1.0100100
入出力比出力%入力%
ガンマ2.2の入出力比
γ1.8 MAC (今は違う?)
γ2.2 NTSC ≒ sRGB(Windows)
γ2.8 PAL、SECAM
明るさに関連する画像を見た目で作ったものは
リニアスペースに変換する必要がある。
リニアワークフローのフロー
データ
計算機
画面出力
見た目で作ったデータ正しいデータ
正しいデータに変換
計算機
画面出力
モニタで見るためのデータに変換
今までのフロー リニアワークフロー(LWF) オレンジの処理が追加
デガンマリニア変換逆ガンマ補正等と呼ばれる
ガンマ補正
-現実のコントラスト比とHDRデータ-
HDR
コントラスト比 自然界の輝度
コントラスト比 記録媒体
コントラスト比 表示媒体-反射型
コントラスト比 表示媒体-発光型
HDRとは広い輝度比のこと
マテリアルやカメラにとって相対的な高輝度は無視できない
鏡面反射が数パーセントでもハイライトが
出るのはHDRで処理しているから
ブラー系処理が正しくできる
低輝度も露出次第では相対的に明るくなるため重要となる
ベース画像 LDRでブラー HDRでブラー
露光間ズームを再現
-正しい減衰と物理パラメータ-
ライト
ほとんど使われていなかった。なぜ?
リニアワークフローを知らなかったから
LWFを行うと
点光源は距離の二乗減衰
LWFを行っていないと
MayaやSoftimage等(メンタルレイ)のライトに注意
・0mから2乗減衰させたつもりでもできていないので調べたほうが良い
・mia_photometric_light等を使用すれば問題ない
光束 [lm]
面に光束が入射している量
光の総量
面がどれだけ明るいかの量
光の代表的な単位
照度 [lx]
輝度 [cd/㎡]
光の単位のサンプル
16,000メタルハライド 200W
3,000蛍光灯 40W
1,400ハロゲンランプ 100W
560ハロゲンランプ 40W
200LED 3W
20ロウソク
光束 [lm]光源の種類
100,000晴天の日向
10,000晴天の日陰
3,000曇り
2,000コンビニ
1,000オフィス
500リビング(明るめ)
100ホテルのロビー
80家庭のトイレ
70リビング(暗め)
5日没直後
0.5満月の明かり
照度 [lx]目安
200TVモニタ
2,500月
3,000曇り空
10,000蛍光灯
10,000明るい空
500,000白熱等
600,000地平線の太陽
1.6*10^9日中の太陽
輝度 [cd/㎡]発光体の目安
・晴天の青空 (1万 lx)・日中の太陽 (7万 lx)
現実を参考にすれば直感的にライティングが可能
現実の値を参考にできるのでトライ&エラーは少ない
夜の室内 昼の室内
・20wの白熱灯 (300 lm) 4灯・50型TVモニタ (200 cd/㎡))
-エネルギー保存と物理的なパラメータ-
マテリアル
入射光 >= 拡散反射 + 内部拡散 + ...
エネルギー保存
エネルギー保存が重要!
拡散性 指向性
表面反射
内部反射
透過
エネルギー保存の例(映りこみ)
拡散反射 (65%) 鏡面反射 (70%)
単純に加算 割合で加算 フレネル係数で割合
上の2つの成分を合成する例
1を超える 1を超えない 1を超えない
エネルギー保存されているパラメータ例
エネルギー保存が難しいパラメータ
次に「強さ」の指定
「粗さ」の指定
エネルギー保存の例(スペキュラ)
あるライト強度があったときのスペキュラ調整例
「広がり具合」の指定
エネルギー保存
できてるの?
例えば「粗さ」の指定で上の2つのパラメータを決める
実際はマイクロファセットを考慮した物理ベースの
スペキュラ処理が行われることが多い
エネルギー保存の例(物理ベースマテリアル)
・照明環境が変わっても破綻が起こらない(エネルギー保存)
基本的なパラメータ(メンタルレイのMia_Material )
・ディフューズ反射率
・屈折率 (反射や透過度等は屈折率で定義できる)
・光沢面の粗さや屈折面の粗さ
・ディフューズ面の粗さ(ランバートモデルでは不必要)
・パラメータが少ない
-露出補正やホワイトバランス-
カメラ
露出補正
被写体の明るさを撮像素子に
調度良い明るさで記録する
ために光量を調整
最初はプリセットを使うと良い
EV値が1違うと光量は2倍違う
・[シャッター速度 Tv]
・[絞り Av]
・[感度 Sv]
EV = Tv + Av + Sv
0EV = 2.5ルクスの照明下で適正露出
シャッター速度と絞りの関係
ライト正しく設定したのに暗い
露出をあわせると正しく見えた
露出補正を理解していないと
「ライトを強くしようか?」
「マテリアルを明るくする?」
これは誤り!
ホワイトバランス
白い物を白で写すために照明色を打ち消すカラー補正を行う
フィルムは通常デイライト(太陽光5500K)が基準
素材色
照明色
照明を重視したければホワイトバランスをあまりとらない
素材色を重視したければホワイトバランスをとる
夕日に照らされたシーンは肌が赤く写る
・顔のアップだと違和感あるかもしれない- WBとる
・広い画角で夕日に染まった背景も描写したい-WBとらない
演出として色味を寒色や暖色にするためホワイトバランスを
使うことも多い
白いライトを使用した訳ではない
WBで色補正したもの
WB調整していない状態
この状態が素の状態。
素の状態になれるのが重要
ニュートラル(補正なし)白色点6500ケルビン光源本来の色
光源色を抑える調整により、空のライトによる青が強調される
ホワイトバランスで色が変えられている例
最後に
・これら物理的なパラメータの要求がレンダリングでは
当たり前になりつつある。
・パラメータの意味を理解していたほうが良いかもしれない
・ゲームグラフィックでもフォトリアル系は物理的な
パラメータを扱う傾向が強くなってきている
ご清聴ありがとうございました