サービスデザインのエンジンとしての“わたしの体験“ワークショップ
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2013年1月11日 DevLove ワークショップ@mixi本社 サービスデザイン・UX Designに携わる人が、自分自身の体験をつぶさに見つめ、気付きをえるためのワークショップ。TRANSCRIPT
Copyright © Masaya Ando
千葉工業大学 デザイン科学科 Chiba Institute of Technology Department of Design
サービスデザインのエンジンとしての わたしの体験ワークショップ
安藤 昌也 [email protected]
2013年1月11日
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安藤 昌也 ANDO Masaya, Ph.D.
千葉工業大学 工学部 デザイン科学科 准教授
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。NTTデータ通信(現、NTTデータ)を経て、1998年 アライド・ブレインズ株式会社の取締役シニアコンサルタント。早稲田大学、国立情報学研究所、産業技術大学院大学など経て、2011年より現職。博士(学術)。専門は、人間中心デザイン。UX(ユーザ体験)の研究者。 人間工学ISOの国内委員、人間中心設計推進機構 (HCD-net)理事を務める。 認定人間中心設計専門家 / 認定専門社会調査士
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“サービスデザイン”
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3
サービスデザイン・UXデザインワークショップでは・・・
概念や手法を学ぶことはできる。が、
デザインする人自身が“よい体験”を認識できなくて“よいサービスデザイン”ができるはずはない
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身の回りにある優れたサービス
日本はあまりに豊かで、サービス過剰なため、気づきにくいかもしれないが、優れたサービスにあふれている。
(画像出所: http://seiga.nicovideo.jp/seiga/im1991709)
チェスターリーブスは、日本のサービスの多重性や丁寧さについて絶賛している。
自分が受けているサービスに対する体験を 分析的に理解できているだろうか?
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本ワークショップの目的
本ワークショップは、3つを目的に実施する。
作り手の前に、一人のユーザーとして “あなたはどういう体験をしたのか?” に向き合う
自身の体験を、“期待” “評価” “意欲”といった心理学的観点から整理してみることで、ユーザーの感情の変化への感度を高める
“事前期待をマネジメントする”という、サービスデザインの中心的考え方への足がかりを作る
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“サービス”をどう捉えるか
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サービスの定義とサービスの特性
サービスとは:
– サービスは供給者および顧客との間のインタフェースで実行される、少なくとも一つの活動の結果であり、一般に無形である(ISO 9000: 2005)
無形性(intangibility): 形がない
同時性(simultaneity): 生産と消費が同時に発生
異質性(heterogeneity): 品質の標準化が難しい
消滅性(perishability): 保存ができない
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“サービス”と“プロダクト”の違い (Michaela, 1998)
生産された
物質
手で触れる
在庫できる
通常顧客と一緒でない
生産の後に消費がある
製造での欠陥がある
実行された
物質でない
手で触れない
在庫できない
顧客とインタラクションする
消費=生産
行動での失敗がある
“プロダクト”か“サービス”かの議論には意味がない
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デザインにつながるサービスの定義 (諏訪, 2007)
定義には様々あるが、現実には人との関わりの中で定義されるべきであり、デザインにも関連づけられる。
諏訪(2007)による「サービス」の定義
人や構造物が発揮する機能で
ユーザーの事前期待に適合するもの
※「人」は、サービススタッフやサービス組織を意味する。
※「構造物」とは、製品(自動車など)、設備(コインランドリーなど)、システム、仕組みを意味する。
※ユーザーが期待していない機能の発揮は、迷惑行為や余計なお世話、無意味行為となりサービスではない。
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顧客満足度形成モデル
期待-不一致モデル(Oliver, 1997)では、顧客満足度は事前の「期待」と、知覚された「品質」の差として捉えられる。
期待
知覚品質
不一致 満足
満足度の高いサービスデザインをするには 「期待」を把握しておくことが重要
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インタラクティブ製品におけるサービスの期待
インタラクティブなサービスの場合、期待は利用前だけのものではない。また使用中は、「期待」とは異なる形で知覚されることもある。
期 待
評 価
意 欲
サービスの利用、また利用によって得られる効果・効用、あるいは感じる感情などを予期すること。
サービスの利用、また利用によって得られる効果・効用、あるいは感じる感情に対して、価値判断を与えること。
サービスの利用自体への態度、あるいは利用方法に対する意図などが生じること。
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“わたしの体験”ワークショップ
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ワークショップの進め方
本ワークショップでは、スマフォアプリを対象に、“わたしの体験”を記録し、心の動きとして現像していく。
1. 2名ペアになる
2. 片方がアプリを使用し、もう片方が記録する
3. エクスペリエンス・フィードバック評価法(EFE)で体験を 可視化する
4. EFEの曲線を見ながら、“わたしの体験”をポストイットで 記述していく
5. 記述したポストイットを、「期待」・「評価」・「意欲」に分類 する
6. 分類したポストイットから、5種の事前期待を特定する
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エクスペリエンス・フィードバック評価法 (安藤, 2012)
時間軸の経験を振り返って、ユーザーの感情の評価を基に、分析を行う方法。
ユーザーテストの際の操作のビデオ映像
主観的な感情を、ポジティブ、ネガティブで曲線で表現してもらう。
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“わたしの体験”ワークショップ~例:すごい時間割
1.対象アプリを決める
2.操作する・その手元を撮影
3.映像を見て感情の変化を曲線で表現
4.変曲点を中心に思ったことを記述
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エクスペリエンス・フィードバック評価結果
Appストアの説明を読んでもらう
スタート
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「期待」「評価」「意欲」の連鎖を分析する
期待
評価
意欲
事前 使用後 使用中
感情の分類を考えることも重要な練習
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「5つの事前期待」を特定し因果関係を考察する
事前 使用後
期待
評価
意欲
①共通的な期待
①共通的な期待 ⑤間違った期待
③動的な期待
④潜在的な期待
使用中
特に「⑤間違った期待」「潜在的な期待」がポイント
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5つの事前期待 (諏訪, 2007)
顧客の事前期待を把握・分類整理することが、サービスデザインの最初で行うべきこと。
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感情の予期と想起の心理学
人は、自身の感情の予期や、実際に経験した感情を回顧・想起する際に、特有な傾向(バイアス)を持っている。
予期
インパクト・バイアス (Wilson & Gilbert, 2003)
• 将来の出来事に対する感情の強度や感じている期間を過大に見積もる傾向
• 楽しいことはいつも考えてしまい、他の出来事で感情が阻害されたりすることなどを想定しない傾向(焦点化)があるために起こるバイアス
想起
ピーク・エンドの法則 (Kahneman et al., 1993)
• 自分の過去の経験の感情を想起する際、ピーク時の感情と、終了時の感情の2点の平均として判断する傾向
• ピーク以外の情報が失われることはないが、比較には用いられない
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UXの心理構造~メンタルモデル精緻化仮説(安藤,2011)
UXは実利用環境にある。生活における意味の中で、理解=メンタルモデルを精緻化するプロセスと捉えてみる。
利用
エピソード
生活における
意味
時間の 流れ
理解 意欲 理解 意欲 理解 意欲
利用
エピソード
利用
エピソード
利用
エピソード
強化
意欲 (期待)
調整
UXは“理解”と“意欲”の連鎖であり“意味”の強化
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インタラクティブ製品の利用意欲の2つの要因
製品ジャンルへの
興味・知識 操作することへの
積極性・自信
利用対象製品に対する
製品関与 インタラクティブ操作に対する
自己効力感
※自己効力感 「それぞれの課題が要求する行動の過程を、うまく
成し遂げるための能力についての個々の信念」(Bandura,1977)
(安藤, 2008)
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User Experience Supply Chainの構築
顧客とのコンタクトポイントで、どのように意欲を高めるか。組織的にトータルにコーディネートすることが重要。
使用後 製品の購入前
自己効力感 SE
製品関与 PI
広告 店頭 Web 取説 UIデザイン コンテンツ コールセンタ
使用前関与を高める
自分が使えるイメージを持たせることが、SEをアップさせることにもつながる
使いやすさをよくし
SEを高める
導入時の評価を上げる
より関心をもって
使い続けてもらえる
サービス提供
トラブル時も
SEを下げな
い対応
サービスデザインの観点からは “事前期待をマネジメントする”ことと言い換えられる
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まとめ
「事前期待」という複雑な心理は、自分自身でも捉えるのは難しい。しかし、特徴や傾向をつかめばサービスデザインを進めるエンジン/武器になる。
普段から、あなた自身の体験に目を向けてみよう。身の回りのサービスを、どう捉え・反応しているかをみつめる訓練をつもう
サービスをデザインしたり、検討したりする時、あなた自身の“体験フィルター”を活性化させよう
あなたは、このワークショップを通して “あなたの体験”をしっかりと現像できただろうか?
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