5th ahiruguchi 201404214 はじめに...

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1 はじめに 英語がペラペラになれたらうれしいですよねかっこいいといますよねそんなあなたにおえしたいことがありますじつは、短期間でネイティブのような しい英語発音できるようになる方法がありますまったく英語ができなくても、何歳からでもにつきますその方法こそ、本書紹介するアヒルぐち 体操」です

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1

はじめに

英語がペラペラになれたらうれしいですよね?

かっこいいと思いますよね?

そんなあなたにお伝えしたいことがあります。

じつは、短期間でネイティブのような

美しい英語を発音できるようになる方法があります。

今まったく英語ができなくても、何歳からでも身につきます。

その方法こそ、本書で紹介する「アヒル口ぐち

体操」です。

2 はじめに

英語の発音は「アヒル口」が基本です

こんにちは。ディスカバリング・サウンズ代表の富田大輔です。

私が講師を務める英語の発音矯正に特化したスクールでは、独自に開

発した「アヒル口体操」というエクササイズを使って、多くの人に短期

間でネイティブスピーカー並みの発音を身につけていただいています。

「アヒル口体操」とは、口まわりや舌の筋肉を鍛えるための体操で、

いわば口の筋トレです。

なぜ、英語のスクールで筋トレを教えているのかというと、それが英

語の発音には欠かせないからです。

じつは英語と日本語では、話すときに使う筋肉がまったく違います。英語のネイティブスピーカーたちの口元を観察するとわかるのです

が、彼らが英語を話すときは口まわりの筋肉は緊張し、上下の唇は外側にめくれ、口を動かしているときも常に歯が見えています。

このときの口元はまるでアヒルのくちばしのようです。つまり、ネイティブスピーカーはみんなこのように英語をしゃべっているのです。一方で、日本語は口まわりの筋肉をほとんど使わない言語です。その

ため、日本人は英語を話すために必要な口まわりの筋肉が発達しておら

ず、どんなに発音方法を勉強しても、そのままではいつまでたってもネ

イティブのように英語をしゃべることができません。

しかし、「アヒル口体操」であればネイティブが英語を話すときに使

う筋肉を効率よく鍛えられ、ネイティブのように英語がしゃべれるよう

になります。

多くの人は英語の発音で大切なのは「舌の動き」だと考えています。

3

たしかに英語は日本語と違い、舌の動きが重要な言語です。実際、ネイ

ティブスピーカーは舌の3か所(前舌・中舌・後舌)を使い分けていま

すし、日本人がRの発音を苦手としているのも日本語にはない舌の動き

を要求されるからです。

しかし、それらはすべてアヒル口であることが前提です。どんなに舌

の動きを練習しようと、唇を外側にめくり、常に歯を見せた状態ででき

なければ正しい英語の発音にはなりません。つまり、正しい英語の発音

にはアヒル口をつくるための筋肉を鍛えることがまず重要なのです。

このことに気づいてから、私の発音は見違えるように変わりました。

それまでは典型的な日本人の発音(いわゆるカタカナ英語)で、留学

先のアメリカでは何度も「おまえの英語は半分も理解できない」と言わ

れていたのに、今では初対面のアメリカ人からアメリカ生まれと勘違いされるまでに上達しました。そして、同じような体験を私のスクールの受講生たちもしています。

そこでこの本では、このネイティブ並みに美しい英語が話せるように

なる「アヒル口体操」と、それを応用した本当の英語の発音方法をご紹

介します。

「発音なんてどうにかなる」はウソです

世間ではあまり発音が重要視されていません。実際、学校教育では発

音はないがしろにされていますし、「文法や語彙力さえあれば伝わる」

とか、「流りゆう

暢ちよう

でなくても恥ずかしがらずに一生懸命話せば理解してもら

える」というようなことを平気で言う人もいます。

4 はじめに

でも、経験上、それはちょっと違うなと思います。

私は18歳のときにアメリカに留学したのですが、私の話すカタカナ英

語は現地の人にはサッパリ理解してもらえず、「コミュニケーションが取れないヤツ」というレッテルを貼られてしまいました。そのため、グループワークの授業で私だけ発言させてもらえなかった

り、クラスメイトに対等に接してもらえなかったり、留学中は悔しい思いをたくさんしました。「アメリカに留学していたのなら英語が流暢に話せて当然でしょ」と

みなさんは思うかもしれませんが、それは大きな誤解です。留学しても

英語ができない人はいつまでたってもできません。せっかく留学したのに、英語が流暢に話せるようにならないまま帰国する人はけっこういるのです。

「自分の言いたいことが伝わらない」、または「自分の言いたいことが

理解されるのに時間がかかる」というのは、本当に辛つら

いことです。発音

が悪いというだけで誤解されてしまったり、一歩踏み込んだ人間関係を

築けなかったりします。私はそれをアメリカ留学で痛感しました。

しかし同時に、ネイティブのように英語が発音できたときの快感、そして自分の言いたいことが100%相手に伝わったときの感動が忘れられません。だから、英語に興味はあるのに発音の勉強をしない人を見ていて、い

つも「もったいないな……」と思ってしまいます。

5

発音がよくなるとリスニング力も上がります 

日本人がとくに苦労するのがRとLの発音ではないでしょうか。

たとえば、rightとlightは英語のネイティブスピーカーからすると明ら

かに違う発音ですが、私たち日本人からすればどちらも「ライト」で、

聞き分けることが困難です。

「文脈から発音の違いを判断しなさい」と言う人もいますが、それは

ただの受験テクニックで、会話など生の英語では現実的ではありません。

根本的な解決方法はリスニング力を上げることです。

ただし、そのときにリスニングの練習をしてもあまり意味がありませ

ん。逆説的ですが、リスニングを上達させたければ、発音の練習をするべきです。じつは発音がよくなると、英語を聞き取る力も上がることが知られて

います。

人は知らない言葉を聞いたとき、それを知っている音に置き換えて理

解しようとします。そのため、日本語に存在しない英語の音を聞くと、

私たちの脳はむりやり日本語に存在する音(カタカナ)に変換してしま

います。

つまり、自分で発音できない言葉を聞いても、何を言っているのか理解できないのです。しかし反対に、正しい英語の発音を身につけると、英語を英語として

認識できるようになります。つまり、正しい英語の発音を身につけるこ

とで、どんな英語も聞き分けられるようになるのです。

さらに、英語を聞き取れるようになると、新しい単語に出合ったとき

6 はじめに

も覚えやすくなります。これは視覚による記憶よりも聴覚による記憶の

ほうがすぐれているからで、正しい発音で覚えた単語は会話や英作文で

もスムーズに使えるようになります。

つまり、発音の改善は「話す」「聞く」「読む」「書く」といった英語

の総合力アップにつながるのです。

だから、これから英語を勉強しようと思っている人や英語に興味はあ

るけど何から始めればいいのかわからない人は、まずは発音の勉強をし

ましょう。そうすれば、とても効率よく英語力が身につきますよ。

7

アヒル口体操であなたはこんなふうになれる

● 外国人の友だちができる。

● 洋画、海外ドラマを字幕なしで観み

られる。

● 海外旅行がより一層楽しめる。

● ビジネスチャンスが海外まで広がる。

● 英語を話すのが楽しくなって、 ますます英語力がアップする。

● 自信と勇気が持てる。

8 はじめに

アヒル口体操がこれまでの発音練習と違う―

3つの理由

①一度、正しい発音を覚えたら

絶対に忘れません。

②ネイティブスピーカー並みの

美しい発音が身につきます。

③短期間で

正しい発音が身につきます。

9

本書の使い方第1章では、従来の方法ではなぜ発音が身につかなかったの

か、そもそも発音とは何なのか、そして「アヒル口体操」に必

要な知識などを学んでいただきます。いわば準備運動のような

ものです。

第2章では、12 のエクササイズで構成されるアヒル口体操の

うち、基本となる4つのエクササイズを学んでいただきます。

アヒル口に必要な筋肉を鍛えるためです。発音の土台となる重

要な部分なので、本書を見なくとも早く正確に行えるようにな

るまで練習することをお勧めします。

第3章では、アヒル口体操のうち発展的な8つのエクササイ

ズを学んでいただきます。この章でご紹介するエクササイズは、

ネイティブと同じように口を動かしたり、舌を動かしたりする

ためのものです。第2章のエクササイズよりも少し難しいです

が、より実用的なのでしっかり習得しましょう。

第4章、第5章では、本当の発音方法を母音編と子音編に分

けてご紹介します。巷ちまた

の英会話教室、発音解説書では教えてく

れない、ネイティブスピーカーが本当にやっている発音方法で

す。とはいえ第2章、第3章のエクササイズをしっかり行って

いれば、どの音も難なく発音できるでしょう。

10 はじめに

解説動画の見方

スマホ/タブレットで動画を見よう! ← このマークがページ番号の横に入っていたら、ページ全体が写り

込むようにスマホやタブレットをかざすと、解説動画を見ることができます。

やり方

COCOARアプリの入手方法

COCOAR アプリを起動して、カメラマークをタッチ!

カメラが起動したら、スマホやタブレットを マークのついたページを含む本全体がおさまるようにかざす。

→❹ 解説動画が見られます!

カメラがページを認識すると……

❸ →

iPhone ユーザーは iTunes Store、Android ユーザーはGoogle Playで「COCOAR」を検索して、インストールしてください。

インストールすると、アイコンン が。これがCOCOARのボタン。

❷ ❸

COCOAR のボタンを押して、アプリを起動させます。すると、こんな画面に。カメラマークをタッチ!

→ →

本書で使用している発音記号は著者の見解に基づき採用したものです。

アヒル口体操で―ネイティブのように―英語がしゃべれる

目次

目次

はじめに― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――1

英語の発音は「アヒル口」が基本です― ――――――――――――――――――――――――2

「発音なんてどうにかなる」はウソです― ―――――――――――――――――――――――3

発音がよくなるとリスニング力も上がります― ――――――――――――――――――5

アヒル口体操であなたはこんなふうになれる――――――――――――――――――7

アヒル口体操がこれまでの発音練習と違う3つの理由――――――――――8

本書の使い方――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――9

解説動画の見方―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――10

第1章

なんでカタカナ英語になってしまうの?~準備編~

文法と語彙力があれば英語は通じるのか?― ――――――――――――――――――22 日本にいても美しい英語の発音は身につく―――――――――――――――――――24発音はネイティブスピーカーに教わるな!?―――――――――――――――――――26日本語と1%も似ていない、それが英語――――――――――――――――――――――28

大きく口を開けたら英語は話せない―――――――――――――――――――――――――30

ネイティブはそんなふうに話さない―――――――――――――――――――――――――32

発音に必要なのは勉強ではなく筋トレだ―――――――――――――――――――――33

なぜ、アメリカ人は感情表現が豊かなのか?― ―――――――――――――――――34ネイティブのように英語をしゃべるために必要な筋肉――――――――――36

「アヒル口体操」5つのポイント― ――――――――――――――――――――――――――――38

自分の発音グセを自分でチェック!―――――――――――――――――――――――――――40

第2章

「アヒル口」を身につけよう~アヒル口体操・基礎編~

Lesson1 口まわりアヒル体操――――――――――――――――――――――――――――44

Lesson2 口先ピヨピヨ体操― ――――――――――――――――――――――――――――46

Lesson3 唇オアオア体操― ――――――――――――――――――――――――――――――48

Lesson4 母音オアピヨ体操― ――――――――――――――――――――――――――――50

第3章

「アヒル口」をしながら舌を動かそう~アヒル口体操・発展編~

Lesson5 舌のグルグル体操―――――――――――――――――――――――――――――54

Lesson6 舌のパタパタ体操― ――――――――――――――――――――――――――――56

Lesson7 舌の振り下ろし体操――――――――――――――――――――――――――――58

Lesson8 舌の押し込み体操―――――――――――――――――――――――――――――60

Lesson9 舌のキュッキュ体操――――――――――――――――――――――――――――62

Lesson10 中舌ブリッジ体操――――――――――――――――――――――――――――――64

Lesson11 後舌ブリッジ体操――――――――――――――――――――――――――――――66

Lesson12 母音シメブリ体操― ――――――――――――――――――――――――――――68

第4章

ネイティブはこうやって母音を発音しているLesson13 [][]たまごを横に置いた形に口を開いて発する音― ――――――――――――――――――――――――――72

Lesson14 []後舌を持ち上げ、声を潰して発する音― ――――――――――――――――――――――――――74

Lesson15 [][]口をどら焼きのような形に開いて発する音―――――――――――――――――――――――――――76

Lesson16 []唇や舌を動かさずに発する音―――――――――――――――――――――――――――78

Lesson17 []唇・舌・あごを動かさず、のどだけで発する音― ――――――――――――――――――――――――――80

Lesson18 []レモンを横に置いた形に口を開いて発する音― ――――――――――――――――――――――――――82

Lesson19 []たまごを縦に置いた形に口を開いて発する音― ――――――――――――――――――――――――――84

Lesson20 [][][][]唇のみを横と縦に動かし、2つの母音を発する音―――――――――――――――――――――――――86

Lesson21 [][][]後舌とあごを動かし、2つの母音を発する音―――――――――――――――――――――――――89

第5章

ネイティブはこうやって子音を発音しているLesson22 []舌を巻いて出す音、舌を引いて出す音―――――――――――――――――――――――――――――94

Lesson23 [][][][]中舌を上の前歯に触れさせながら上あごに押し付けて発する音― ――――――――――――――――――97

Lesson24 [][]舌を突き出し、空気を吐き出して発する音― ―――――――――――――――――――100

Lesson25 [][]上の前歯を下唇の内側に触れさせて発する音― ―――――――――――――――――――――――――103

Lesson26 [][]後舌を上あごに押し付けて発する音― ―――――――――――――――――――――――――106

Lesson27 []唇の内側を振動させて発する音――――――――――――――――108

Lesson28 []唇のみを横と縦に動かし、唇の内側を振動させて発する音――――――――――――――――110

Lesson29 [][]上の前歯に触れずに中舌を上あごへ押し付けて発する音― ―――――――――――――――――112

Lesson30 []「イ」を振動させ、「イ゛~」と発する音― ―――――――――――――――――――――――――114

Lesson31 []後舌でのどを塞ぎ、鼻から空気を吐き出して発する音― ―――――――――――――116

Lesson32 [m][s][z][p][b][][][]練習しなくてもできる発音― ―――――――――――――――――――――――――――――――――119

あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――123

ブックデザイン― ——————————萩原弦一郎+玉造能之(デジカル)

イラスト―———————————————————————堀内歩美

写真― —————————————————————————————板矢悠二郎

編集協力―—————————————————————松本瑞穂、株式会社ぷれす

編集― —————————————————————————————小野佑仁(サンマーク出版)

第1章

なんで―カタカナ英語になってしまうの?

~準備編~

22 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

文法と語彙力があれば 英語は通じるのか?

私は18歳のときに、アメリカのコロラド州にあるデンバーへ留学し

ました。当時、まったく英会話ができなかったので、まわりからは無謀

だと言われたものです。

しかし、留学したからには英語をマスターしてやろうと現地の語学学

校に通い、必死に勉強しました。そして1年後、その甲か

斐い

あって語学学

校を無事に卒業し、アメリカの大学に進学することができました。

ところが、入学早々、「自分は英語でもやっていける!」という自信

をあっけなく砕かれてしまったのです。

アメリカの大学では、グループで取り組む授業が数多くあります。そ

れらは「グループプロジェクト」と呼ばれ、5名前後で1つの課題に取

り組むことが多いです。

そのグループプロジェクトで私だけ大事なパートを任せてもらえな

かったり、発表のときに発言する機会を与えられなかったりしたことが

何度もありました。

そのことでとても悩み、何度も涙で枕を濡ぬ

らしましたが、今なら理由

がよくわかります。当時の私は発音が悪かったので、自分の意思を伝え

ることも相手が言っていることを理解することもうまくできず、グルー

プのみんなから「意思疎通ができない人」という認識を持たれていたの

23

です。

決して仲間外れにされたわけではありません。しかし、他の誰かが手

を差し伸べてくれるわけでもなく、「英語が話せないし、聞き取れない

から仕方ない」という前提で接してこられたのが本当に悔しかったのを

覚えています。

また、大学生活にもどうにか馴な

染じ

んだころ、親しい友だちから「ずっ

と思ってたんだけど、おまえの話す英語は半分くらいしか理解できない。

それらしく聞こえる単語の音から推測して会話してるんだよね……」と

言われたこともありました。

それまで、語彙力があって文法を間違わなければ、誰とでもコミュニ

ケーションが取れると信じていた私にとって、これはショッキングな出

来事でした。実際には、どんなに語彙力を鍛え、どんなに正しい文法を

使って話しても、私の英語は半分も通じていなかったのです。

そもそも、私の英語は語学学校でしか通じない英語でした。語学学校

には世界中から留学生がやってきます。当然、発音やアクセントはみん

なバラバラです。むしろ、英語を正しく発音できている人のほうが珍し

いくらいです。そんな環境にいたからこそ、私の英語も通じていたのだ

と痛感しました。

「話し続けていれば、通じるようになる!」という意見もありますが、

それには相当の時間と根気が必要になります。

英会話はできていても(できているつもりでも)、発音が悪いという

24 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

だけで誤解が生じたり、一歩踏み込んだ人間関係を構築したりすること

に支障をきたすのはまず間違いないでしょう。

日本にいても 美しい英語の発音は身につく

日本ではいまだに、留学したら誰でもネイティブと同じように英語が

話せるようになると信じている人が多いです。ですが、それは大きな勘

違いです。留学経験があっても、カタカナ英語の人はたくさんいます。

たしかにアメリカなどの英語圏に留学すれば、常に触れる言語は英語

です。テレビやラジオをつければ英語が流れてきますし、スーパーやレ

ストランなどへ足を運べば、英語を使わなくてはなりません。おかげで、

英語を話すことに抵抗感はなくなります。

ですが、それだけです。英語への抵抗感がなくなったとしても、発音

がよくなるかは別問題。もちろん留学したほうが英語は話せるようにな

るでしょうが、あなたが想像するほど上達するわけではありません。カ

タカナ英語から卒業できずに日本へ帰国する場合がほとんどでしょう。

今でこそ英語の発音指導をしていますが、私も専門的なトレーニング

を受けるまではまともに英語を発音できませんでした。もちろん英語が

まったく話せなかった渡米直後は当然ですが、大学に進学してしばらく

たっても発音だけは一向に改善されなかったのです。

25

そもそも私には、アメリカの大学を卒業してハリウッド俳優になると

いう目標がありました。そのため、大学在学中から数々のオーディショ

ンを受けていました。オーディションではもちろん英語で演技をしなく

てはなりません。しかし、典型的なカタカナ英語の発音だった私は、な

かなか合格することができませんでした。

審査員も私の英語を理解するには苦労したと思います。実際、映画の

オーディションの最中に「I don't understand what you're saying.」(あ

なたが何を言っているのかわからないわ)と審査員から言われたことが

ありました。

いつまでたってもオーディションに合格できないことと、前述の友だ

ちから言われたひと言がきっかけで、私は発音を矯きよう

正せい

しようと決意し

ました。

それからは多くの時間を発音矯正に割きました。いろいろな先生から

指導を受け、自分なりに方法論を確立するためにひたすら研究しました。

通じない単語があればそれをチェックし、何が問題だったのかを徹底的

に分析しました。アメリカ人の友だちや発音矯正の先生、映画やテレビ

に映る俳優やニュースキャスターの口の動きをひたすら見つづける毎日

です。

すると、日本人の英語とアメリカ人の話す英語はどこが違うのか、そ

してどうすればアメリカ人のような発音が手に入るのかをついに見つけ

たのです。

26 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

それが口の動きの違いであり、その解決策としての「アヒル口体操」

でした。

おそらく、何の危機感も持たず、ただ漫然と留学をし、発音に特化し

たトレーニングを受けなければ私の発音はいまだにカタカナ英語だった

と思います。こうしてあなたに発音について解説することもなかったで

しょう。

逆に言うと、正しい英語の発音というのはただ英語の勉強をしていれ

ば身につくようなものではありません。発音に特化した、専門的な訓練

をきちんと積む必要があるのです。そしてそれは、決して英語圏の国で

なければ受けられないものではありません。日本にいても、正しい発音

を学ぶことはできます。

事実、私の生徒の中には、初対面のアメリカ人から「あなたはアメリ

カ生まれ?」と聞かれるくらい美しい発音を手に入れた人が続出してい

ます。

発音は ネイティブスピーカーに教わるな !?

英会話学校に行くと、ネイティブスピーカーから英会話を習うことが

よくあります。そこで行われる指導方法は、たいてい手本となる発音を

聞かされ、「Repeat after me!」という声に続いて生徒が講師のマネをす

27

るというものが多いようです。

これは、いわばモノマネによる発音指導です。日本人が話す英語とネ

イティブスピーカーが話す英語の発音の違いはどこにあるのかなどの説

明はなく、とにかく講師のマネをさせようとするだけです。教える側の

ネイティブスピーカーも、自分の発音に近い音であればよしとし、教わ

る側も一時的にマスターできたような錯覚に陥ります。

しかし、この方法では本当の発音は身につきません。あくまでその場

かぎりの一時的な習得であり、カタカナ英語から抜け出すことは非常に

難しいでしょう。

日本語を勉強している外国人に日本語の発音方法について聞かれた

ら、あなたは論理的に解説できますか? おそらく、ほとんどの日本人

はできないと思います。それと同様に、ネイティブスピーカーに英語の

発音方法を聞いても、彼らは論理的に解説することができません。

これは当たり前のことで、あなたも日本語を話すときどうやって発音

しているか意識していないはずです。同じくネイティブスピーカーも英

語の発音を意識することなく感覚的に口を動かしています。

前述のように、私は留学中に発音方法を教えてくれる先生を探し出し

て指導を受けましたが、その説明は感覚的で要領を得ないことが多かっ

たです。そのためレッスンを受けても、自分が上達しているのかよくわ

かりませんでした。

じつは、アメリカには英語の発音指導を専門にしている先生が非常に

28 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

少なく、語学学校や大学でも英語を 流りゆう

暢ちよう

に話せるようになるためのカ

リキュラムはほとんどないのです。

そう考えると、英語の発音をネイティブスピーカーに教わるのは考え

直したほうがいいかもしれません。

「どう発音しているか?」を解説できるネイティブスピーカーは、言語

学などの専門教育を受けているごく一部の人たちだけでしょう。むしろ、

英語の発音方法を解説した書籍などは、日本のほうが多いくらいです。

ただし、現在流通している英語発音の書籍では、ネイティブが実際に

使っている発音方法を論理的に解説していないため、似ている音は出せ

ても本物の音は身につきません。

論理的な発音方法を知らないまま、ただネイティブのマネをしようと

したり、ひたすら英文を読みこんだりするだけでは、発音が向上するこ

とはありません。向上したと思っても、それはただのモノマネであり、

一時的なもので、錯覚です。

日本語と1% も似ていない、 それが英語

そもそも、日本語と英語は発音に関して1%も似ていません。

まず、母音と子音の数が違います。日本語には5つの母音と14の子

音がありますが、英語には22の母音と27の子音があります。この違

29

いは、日本語が子音と母音を同時に発音するのに対し、英語は子音と母

音を分けて発音するからです。ちなみに日本語の中で子音だけで発音す

るのは「ん」のみ。それ以外は、すべて母音だけ、もしくは子音と母音

を同時に発音します。

また、アクセントの置き方もまったく違います。日本語は子音と母音

を同時に発音するので、両方にアクセントが置かれます。一方で、英語

でアクセントを置くのは母音だけです。

さらに、日本語では音節(子音と母音のセット)で音を区切ります。

そのため日本人が英語を話すとき、本来であれば入るはずのない母音を

子音の後にくっつけてしまうことがあります。

たとえば、costという単語。英語では、[s]と1音節で発音します。

ところが、日本人は [-s-]と 3 音節で発音してしまいます。そのた

め本来、母音が1つである単語に母音が 3つも出てきてしまうのです。

さらに、英語の costにはアクセントが1つですが、日本人の発音だと

3つの母音すべてにアクセントが付いてしまいます。

要は、日本語は音を切って発音するのに対して、英語は音を切らずに

発音するのです。この違いが、カタカナ英語になってしまう原因です。

ほかにも、日本語は1音1音の発音が非常に短いため、アクセントを

付けにくく、どうしても抑揚に乏しくなり、平へい

坦たん

な話し方になってしま

うという特徴があります。

一方、英語は母音を伸ばして発音するので、アクセントやイントネー

30 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

ションの変化を付けやすく、日本語よりも圧倒的に音のアップダウンが

大きくなります。英語のほうがより感情表現が豊かに感じる、というの

もそのためです。

このような違いから、日本語と英語が1%も似ていないのは明らか

です。

大きく口を開けたら 英語は話せない

多くの日本人は、英語を話すときにやたらと口を大きく動かしてしま

います。とにかく英語っぽく、相手に伝わるように話そうとするため口

をたくさん動かしてしまうのでしょう。

しかし、じつはネイティブスピーカーは、英語を話すときに口を大き

く動かしたりしません。実際はむしろ逆で、口の動きを必要最小限にと

どめています。

その代わり、口まわりの筋肉を柔軟に使い、上下の唇を常に外側へ反

らした状態で口を開けたり閉じたりします。客観的に見るとアヒルのく

ちばしのような形です。

アヒル口をつくると必然的に上下の歯が見えます。一見すると、その

姿が口を大きく動かしているようなので、みんなネイティブスピーカー

は口を大きく動かしていると思ってしまうのです。

31

英語は口を大きく開かなくても発音できる言語です。そのため、無理

に口を大きく縦に開いたり、横に開いたりすると滑らかに話すことがで

きません。

カタカナ英語になってしまうのは日本語のように英語を発音している

からですが、別の言い方をすれば、歯を見せずに英語を話しているから

です。歯を見せないということは、上下の唇で歯を覆い隠していること

なので、結果的に正しい口の形にならず、正しい発音ができないのです。

実際、英語には上下の唇を完全に閉じて発音する音は、たったの 3つ

( [p] [b] [m] )しかありません。ということは、それ以外の音を発音する

ときは、上下の前歯、もしくは上下のどちらか一方の歯が常に見えてい

ることになります。

日本には歯を見せないことが美徳とされている文化が残っているた

め、歯を見せて話す人は少数派でしょう。そういった背景もカタカナ英

語を生む要因になっていると思います。

ちなみに、アメリカでは、英語を話すときに歯が見えるのを知ってい

るためか、デンタルケアが日本より遥はる

かに進んでいます。常に歯を見ら

れてしまう環境にあるので、多くの人が歯をキレイにしようと考えてい

るのです。

32 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

ネイティブは そんなふうに話さない

英語に関してほかにも知られていないことがあります。その代表例が

[]の発音でしょう。

[]の発音は、「舌を後ろに丸めて発音しなさい」と説明されることが

多いですが、ネイティブは []を発するときに必ずしも舌を丸めている

わけではありません。じつは [r] の発音には、「舌を巻く [r]」と「舌を

引く [r]」の 2 種類があるのです。

[]を含む単語すべてについて、そのつど舌を巻いて発音していたら、

単語や文章中に []が出てくるたびに舌は大忙しです。そのため、単語

の途中や最後に []の発音がある場合にかぎり、ネイティブスピーカー

たちは舌を“引く”ことで []を発音しています。

このように、これまで“正しい発音方法”として教えてこられたこと

も、じつはネイティブスピーカーが本当にやっている発音方法ではない

のです。彼ら自身は決して日本の英語教育で教えられてきたような発音

方法でしゃべっていません。

なぜ本当の発音方法を教えてくれないのかというと、日本人がアヒル

口を維持して口を動かすことができないからです。そのため、日本人に

とってやりやすく大げさに説明した発音方法をネイティブたちは指導し

ています。

33

だからこそ、本当にネイティブのような英語をしゃべれるようになり

たいのであれば、まずはネイティブが使っている口まわりの筋肉を鍛え

る必要があります。

発音に必要なのは 勉強ではなく筋トレだ

もし、あなたの身近にネイティブスピーカーがいたら、試しに彼らの

口元を触らせてもらってみてください。英語を話しているときの彼らの

口まわりの筋肉は常に緊張しています。

一方、私たちが日本語を話すとき、口まわりの筋肉は緊張していない

はずです。

このように、日本語と英語では発音するときの筋肉の使い方がまった

く違います。そのため、発音の仕組みがわかっても、それらの筋肉は思

うように動かせないでしょう。 

なぜなら、英語を母国語としない人たちには、英語を話すために必要

な筋肉と柔軟性が備わっていないからです。試しに42ページの「口ま

わりアヒル体操」をやってみてください。おそらく、アヒル口をつくる

だけでも難しいはずです。

だからこそ、正しい英語の発音を手に入れるには、発音記号や発音方

法を学習するよりも先に、英語の発音に必要な筋肉と柔軟性を鍛えるこ

34 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

とが必要なのです。この順番を間違えると、どれだけ努力してもネイティ

ブスピーカーのような発音は手に入りません。

逆に言うと、発音は筋トレで上達します。そして、「アヒル口体操」とは、

正しい英語の発音を効率的に習得するための筋トレです。その仕組みを

理解して、しっかり実践するだけで、あなたは確実にネイティブスピー

カーのような発音ができるようになります。

なぜ、アメリカ人は 感情表現が豊かなのか?

日本人は表情が乏しいとかねてから言われています。それは、心の内

を見せてはいけない=感情を表に出さない、という日本古来の精神的な

部分が大きく影響しているのかもしれません。

日本の文化そのものは誇るべき大変すばらしいものですが、こと英語

においては、内面を見せないことを美徳とする日本の文化が上達を妨げ

ています。

表情が乏しいということは、顔の筋肉をほとんど使っていないという

ことです。ただでさえ日本語は英語に比べて唇・舌・口まわりの筋肉を

使わないのに、感情を表に出さなければますます顔の筋肉は衰えていき

ます。

アメリカ人は感情豊かな人が多いイメージですが、彼らは元から感情

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の起伏が大きいのではありません。顔の筋肉をダイナミックに使う英語

を話すから、感情が豊かに見えるだけです。つまりアメリカ人だから感

情が豊かなのではなく、英語を話しているから感情が豊かなのです。

もしも日本語が英語のように豊かな表情で話す言語であったのなら

ば、日本人が英語を習得するのもこんなに難しくなかったでしょう。逆

に言えば、常日ごろから表情豊かに生きることこそ、英語をマスターす

るために本当に必要なことなのかもしれません。

36 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

ネイティブのように 英語をしゃべるために必要な筋肉

口輪筋(こうりんきん)唇を開いたり、すぼめたりするときに使われる筋肉。口が大きく動かないようコントロールします。

「口まわりアヒル体操」「口先ピヨピヨ体操」「唇オアオア体操」で鍛えることができます。

頰筋

頰筋

口輪筋

オトガイ筋

上唇挙筋

下唇下制筋

上唇挙筋

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上唇挙筋(じょうしんきょきん)上唇を反り返すときに使われる筋肉です。反り返った上唇が戻ってこないようにコントロールします。

「口まわりアヒル体操」「口先ピヨピヨ体操」で鍛えることができます。

下唇下制筋(かしんかせいきん)下唇を反り返すときに使われる筋肉です。上唇挙筋と同様に、反り返った下唇が戻ってこないようにコントロールします。

「口まわりアヒル体操」「口先ピヨピヨ体操」で鍛えることができます。

オトガイ筋(おとがいきん)下唇を突き出すときに使われる筋肉です。下あごのあたりから下唇を上に引っ張るようなイメージで動かします。

「口まわりアヒル体操」「口先ピヨピヨ体操」で鍛えることができます。

頰筋(きょうきん)口を横に開いたり、頰の内側を上下の歯列に押し付けたりするときに使われる筋肉です。口の開き具合をコントロールします。

「口まわりアヒル体操」で鍛えることができます。

38 第1章 なんでカタカナ英語になってしまうの?〜準備編〜

「アヒル口体操」 5つのポイント

1. 常に鏡で口の動きをチェックする。

初めのうちは筋肉が思い通りに動きません。そのため鏡で正しく動い

ているか確認することが非常に大切です。間違ったままエクササイズを

続けると、上達しないばかりか、変なクセまでついてしまう可能性があ

ります。それは、のちのち発音に悪影響を及ぼすので、正しくエクササ

イズを行って、正しい筋肉の動かし方を身につけましょう。

2. 目的の筋肉以外、動かさない。

普段使っていない筋肉を動かすのはけっこう大変です。目的の筋肉を

動かそうとしても、慣れないうちは動いてくれません。無理に大きく動

かそうとすると、余計な筋肉も動いてしまいます。鏡で口の動きを確認

しながら、動かすべき筋肉のみを意識しましょう。エクササイズを行え

ば行うほど、筋肉のコントロールができるようになります。

3. ゆっくり丁寧に筋肉を動かす。

エクササイズに慣れてくると、ついつい早く終わらせようとしてしま

いがちです。何も考えずに、ただエクササイズを行うだけでは、最大の

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効果を得ることができません。丁寧にエクササイズを行い、ゆっくりと

筋肉を動かしましょう。

4. 1日10 ~ 20分。2日以上はエクササイズの間隔を空けない。

一度エクササイズができたからといって、そこでやめてはいけません。

意識的に動かしたことのない筋肉を使っているので、正しいやり方をす

ぐに忘れてしまいます。反復してエクササイズを行い、その動き自体に

慣れることが必要です。2日以上サボってしまえば、100%できていた

ものも 70%くらいになってしまいます。習慣づけをして、鏡を使わな

くても完璧にエクササイズができるようにしましょう。

5. 最初から頑張りすぎない。

初めのうちは気力が充実して、1日に1時間くらいはエクササイズを

続けられるかもしれません。ですが、それを毎日続けることは非常に難

しいはずです。筋肉にとって最も効果的なのは、継続的な刺激です。3

日休んだ分を1日で取り戻すというようなやり方は、筋肉に過度の負担

をかけるのでお勧めできません。毎日少しずつ、です。無理なくエクサ

サイズを行いましょう。

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