9. 運動と体温調節

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9. 運動と体温調節. 熱の移動.  熱の移動の仕方には、 伝導 、 対流 、 輻射 、 蒸発 の4つがある。. 伝導 :隣り合う組織を熱が伝わっていく現象。. 対流 : 気体や液体の作用による熱の移動のこと 。風が身体に当たると皮膚 が    冷やされる などがその例。. 輻射 : 熱は赤外線の形で空間を移動 する。 皮膚からは絶えず赤外線が 周り    に 放射 されており、これによって熱が放散されている。太陽光を 浴びる    と 暖かく感じるのも輻射の作用。安静時では 熱放散に対する輻射の 役 - PowerPoint PPT Presentation

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9. 運動と体温調節

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熱の移動

伝導:隣り合う組織を熱が伝わっていく現象。

対流:気体や液体の作用による熱の移動のこと。風が身体に当たると皮膚が   冷やされるなどがその例。輻射:熱は赤外線の形で空間を移動する。皮膚からは絶えず赤外線が周り   に放射されており、これによって熱が放散されている。太陽光を浴びる   と暖かく感じるのも輻射の作用。安静時では熱放散に対する輻射の役   割は大きく、 21〜 25℃では約 60%の熱が輻射によって放散されている。

蒸発:熱の放散のみに作用する。暑熱環境下に置かれたり、運動を行った   りすると汗が出るが、そのこと自体は熱を放散させることには繋がらな   い。汗が蒸発する時に気化熱が奪われ、初めて皮膚は冷却される。体   内から出た汗の中でも、蒸発したものを「有効発汗」、蒸発しなかった   ものを「無効発汗」という。有効発汗が熱放散全体に寄与する割合は、   安静時で 20%程度であるが、運動時では約 80%にまで達する。

 熱の移動の仕方には、伝導、対流、輻射、蒸発の4つがある。

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体温に影響する要因

体温に影響する要因 体温は「放散する熱量」と「蓄積する熱量」のバランスによって決まり、放散する熱量が蓄積する熱量を上回れば「体温は低下」し、逆の場合は「上昇」する。

伝導、対流、輻射が熱の放散と蓄積の両方に関与。

蒸発は熱の放散のみに作用する。

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温度受容器 体内には温度受容器と呼ばれる温度をモニターする器官があり、これには中枢性のものと末梢性のものの2種類がある。中枢性の温度受容器は「脳を循環する血液の温度」を末梢性の温度受容器は「身体を取り巻く環境の温度」をモニターしている。これには熱受容器と冷受容器とがあり、前者は 38〜 43℃の時、後者は 15〜 34℃の時、インパルスを体温中枢に向けて発する。これらの受容器から情報を得た体温中枢は、体温が一定に保たれるよう各器官に指令を出す。従って体温調節中枢はサーモスタット(温度を自動的に調節する装置)の役割を果たしている。

温度受容器の種類

 中枢性の温度受容器は視床下部に存在し、脳を循環する血液の温度をモニターしている。この受容器の感度は極めて高く、 0.01℃の温度変化を感知することができる。

  38〜 43℃の時、インパルスを体温中枢に向けて発する。

  15〜 34℃の時、インパルスを体温中枢に向けて発する。

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体温調節の仕組み 体温の変化に対して対処する器官は、汗腺、血管、骨格筋、内分泌腺の4つである。

 皮膚温あるいは血液の温度が上昇すると、体温調節中枢からの指令によって、全身におよそ 230万個あるといわれる汗腺から汗が分泌される。また皮膚血管が拡張し、四肢の静脈環流は表層の静脈を通じて行われるようになる。通常、心拍出量の約5%が皮膚血管を環流しているが、この拡張によって皮膚血流量は 20%以上にまで増大する。この変化によって深部の熱がより多く表層へと運搬される。

 皮膚温あるいは血液の温度が低下すると、皮膚血管は収縮し、熱の放散を減少させるよう作用する。また温度調節中枢は骨格筋の緊張度を調節する部位に働きかけ、筋に震えを起こさせる。さらに温度調節中枢は、甲状腺ホルモンやカテコールアミンなど、代謝を高進するホルモンの分泌を促す。筋の震えおよび代謝の高進は、熱産生を助長する。

体温調節の仕組み

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セットポイント説

 体温調節の機構に関する1つの考え方で、体温中枢の温度が外気温に関わらず一定のレベルにセット(セットポイント)されていて、それに呼応した反応を生じるという概念。

病原菌、ウイルスなど外因性発熱物質

免疫担当細胞からの内因性発熱物質 視床下部・体温調節中枢

セットポイント上昇 熱産生の高進、熱放散の抑制、ふるえ、皮膚血管の収縮等 発熱

発熱の仕組み

発熱時:体内に生じた発熱物質によってセットポイントが上昇                        → その温度に体温が達するまでふるえや血管収縮(産熱促進)が生じる。解熱時:セットポイントが低下                                           → 体温はその温度に下降するまで発汗などによる放熱促進が続く。

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運動時の体温調節

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酸素消費量と体温の関係

同じマークは同一被検者の値

酸素消費量と体温の関係(小川 , 1985)

 運動を行うと、体内で産生される熱量が増加するため、体温は著しく上昇する。この上昇度は、酸素摂取量( VO2)と直線関係にあるが、両者の関係には個人差が大きく、同一強度の運動を負荷しても、体温が大きく上昇する者とそうでない者とがいる。しかし VO2を絶対値ではなく相対値(%VO2max)で表すと、個人差はほとんど見られない。従って、運動に伴う体温の上昇度は、相対的な運動強度に依存する。この関係には、年齢差、性差はなく、また鍛錬者、非鍛錬者の間にも差がみられない。

・・

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高温・多湿下での運動運動によって体内で産生される熱→ 主に汗の蒸発によって放出

運動開始から発汗までの時間  環境温が高く、運動前からある程度発汗がある場合、 1.5〜2秒以内に汗の分泌が始まる。

高温環境  高強度の運動では、 1,000 〜 2,000 ml / h の汗が流れ、長距離ランナーでは、発汗によって体重が6〜 10%低下することがある。

高温・多湿環境 汗が蒸発しにくくなり、熱放散が抑制される。そのため同一強度の運動を行っても、通常の条件下と比べ体温の上昇度が大きい。多量の発汗によって脱水が進行すると、高体温にも関わらず発汗量が増加せず、ますます体温が上昇して熱中症に陥ることがある。

 運動前、運動中に水分摂取を行うことが、発汗の促進に繋がり、脱水予防、熱中症予防、作業能力の向上に役立つ。

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熱中症とは

 高温な環境が原因となって引き起こされる障害の総称。熱中症はその病態から熱虚脱、熱痙攣、熱疲労、熱射病に分類される。なお一般的によく使われている“日射病”は,直射日光が原因となった熱中症を意味している。

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熱中症の分類

 スポーツ活動中にみられる熱中症で最も頻度が高く、日射病と呼ばれるものの大半がこれに含まれる。発汗による脱水、皮膚などの末梢の血管拡張などのために身体を循環する血液の量が減少し、脳に血液を十分に送ることができなくなった状態(一時的な脳の虚血状態)のため起こる。

頭痛、めまい、一時的な意識障害症状

1. 熱虚脱

 汗が大量に出ている際に電解質を補給しないまま水分だけを補給することで、ナトリウムの欠乏状態が生じ、それによって筋肉の痙攣が起こる。

血圧の低下、脈拍は多くなり弱くなる、皮膚の蒼白、大量の発汗、筋肉の痛みと痙攣

症状

2. 熱痙攣

 大量の発汗によって身体を循環する血液の量が減り、そのために各臓器に血液が十分に送れなくなっている状態。熱射病の前段階ともいえる。

体温調節機構が十分に機能せず、体温の上昇、血圧低下、皮膚の蒼白、倦怠感、めまい、吐き気

症状

3. 熱疲労

 熱が放散されず体内に蓄積され,身体の内部体温(深部体温)が異常に上昇している極めて危険な状態。汗による脱水を伴う。

症状体温が 40℃を越える、頻脈、頭痛、吐き気、痙攣、意識障害

4. 熱射病

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熱中症の型とその障害

皮膚温上昇

皮膚血管の拡張促進

心臓への静脈血環流不全

重要器官への血流減少

血圧低下、脈拍速弱

熱虚脱

発汗

発汗減少

皮膚血流循環不全

放熱不良

体温調節機能失調

発汗停止、体温上昇

熱性発熱

水分喪失

塩分喪失

電解質のアンバランス

筋肉の痙攣

熱痙攣

温熱不適応

胃液、胃酸の低下

胃腸障害

食欲不振

体力低下

熱衰弱症(夏ばて)

[急性] [慢性]

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学校管理下での熱中症死亡事故①

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学校管理下での熱中症死亡事故②

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学校管理下での熱中症死亡事故③

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寒冷下での運動寒冷環境  皮膚血流量の減少、筋の震え、代謝の高進などが起こり、体

温の低下を抑制する。

からだの大きさおよび身体組成は熱放出に影響する

からだの大きさと体表面積

 からだの大きさが熱放出に関与するのは、大きさによって表面積と体積の関係が変化するから。例えば、子どもと成人を比較すると、からだの大きさ、体表面積ともに子どもの方が小さいが、体重に対する体表面積の比は逆に成人の方が小さくなる。つまりからだのサイズが大きいほど「体表面積/体重」の比が小さくなる。これがからだの大きい者の方が小さい者より熱を放出しにくく、寒さに強い理由である。

 脂肪は他の組織と比べ熱の伝導度が低いため、からだの大きさがほぼ同じであれば、体脂肪率の高い方が、寒冷環境において体温が低下しにくい。

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水温と体温の関係 水の熱伝導度は空気より約 25 倍も高く、そのため冷水中ではかなり激しい運動を行っても体温は低下する。

水泳における流速、水温と酸素摂取量の関係 ( Nadelら , 1974)

 速く泳げば(流速が高まれば)酸素摂取量が高まるのは当然だが、同じ速さで泳いでも、水温が低い方が酸素摂取量が高い。

 冷水中では体温の低下を防ぐため、筋の震えが起こり、水温が高い場合と比べて多くの酸素が必要である。

 冷水中では筋温が十分上昇しないため、最大努力で運動を行っても 26℃では最大酸素摂取量の92%、 18℃では 85%までしか達しない。

 寒冷環境下では、筋の震えが起こること、あるいは筋温が十分高まらないことなどの要因で、作業能力が低下する。