aar japan 東日本大震災被災地復興支援 7年目の活動報告 · 2018-08-30 · aar...

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AAR Japan[難民を助ける会]は、東日本大震災の発生直後から、 NGO ならではの機動性を活かした支援を行ってまいりました。 2018 年 3 月現在も、岩手・宮城・福島の 3 県で、障がいのある方々の自立と、 被災された方々の健康的な生活のために、活動を続けております。 ご協力いただいた皆さまに心より御礼申し上げますとともに、 発災から7 年目に行った活動についてご報告します。 AAR Japan[難民を助ける会] 東日本大震災被災地復興支援 7 年目の活動報告 2017/04 – 2018/03

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Page 1: AAR Japan 東日本大震災被災地復興支援 7年目の活動報告 · 2018-08-30 · AAR Japan 東日本大震災 7年目の支援活動 3 7年目の支援活動(1) 2017

AAR Japan[難民を助ける会]は、東日本大震災の発生直後から、

NGO ならではの機動性を活かした支援を行ってまいりました。

2018 年 3月現在も、岩手・宮城・福島の 3 県で、障がいのある方々の自立と、

被災された方々の健康的な生活のために、活動を続けております。

ご協力いただいた皆さまに心より御礼申し上げますとともに、

発災から7 年目に行った活動についてご報告します。

AAR Japan[難民を助ける会]

東日本大震災被災地復興支援 7 年目の活動報告

2017/04 – 2018/03

Page 2: AAR Japan 東日本大震災被災地復興支援 7年目の活動報告 · 2018-08-30 · AAR Japan 東日本大震災 7年目の支援活動 3 7年目の支援活動(1) 2017

2 AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動

事業所の状況に合わせたサポートを

被災した福祉事業所への支援は多岐にわたります。例えば、被災による移転などが理由で、従来の活動ができなくなった事業所などを対象に、新商品の開発または既存商品の生産効率向上につながる機器を提供しています。新たに事業所を開所した団体には、立ち上げに必要な資器材を提供し、運営が安定した事業所には商品開発の支援を行うなど、各事業所の状況に合わせて支援しています。今年度は岩手、宮城、福島の 3 県で 26 の施設を支援しました。

岩手県大船渡市にある福祉作業所「かたつむり」は津波で作業所が流出しました。その後、6 年にわたり狭い仮設のプレハブで、利用者の方々が肩を寄せ合うようにして、空き缶のリサイクルや地元のお米を使ったお煎餅作りなどの作業を続けていました。そこで AAR は新作業所の建設を支援することとし、2017 年 6月に完成しました(写真右上)。利用者の皆さんはそこで元気よく作業に取り組んでいます。福祉作業所「工房もくもく」(福島県相馬市)では、障がいのある方々が、さき織り製品などの手芸品を作成・販売しています。AAR が活動に必要な機材を支援したことで作業の効率が格段に向上し、安定して良質な商品を作れるようになりました。(写真右中央)

事業所の商品を知ってもらう震災により販路を失った事業所の商品販売会を、企業・団体のご協力を得て6 回開催しました(写真右下)。東京・神奈川・千葉・埼玉など首都圏周辺で東北施設商品の販売会を行うことで、社員や職員、地域の方々に福祉事業所の商品を知っていただく機会となりました。

岩手県、宮城県、福島県の福祉事業所の支援を継続しています。被災地の障がいのある方々が活き活きと活動できるよう、事業所の新築や修繕、資器材や車両の提供など、それぞれの事業所の状況に沿って支援したり、彼らの仕事づくりにも取り組んでいます。

7 年目の支援活動(1) 2017. 4.1–2018. 3 31

■ 障がいのある方々を支える

障がい者の働く場を応援

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3AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動

7 年目の支援活動(1) 2017. 4.1–2018. 3 31

■ 障がいのある方々を支える売れる商品を作る利用者の工賃を上げ自立につながるための支援として、新メニューなどの商品開発支援を3 つの施設に対して行いました。

障がいのある方々が働く「カフェスイートホット」(福島県郡山市)へは、2014 年に料理研究家の浜内千波先生を招き、お弁当のメニュー開発を行いました。そのお弁当は現在も人気商品の1つです。現在は、地元の食材を使った中南米風料理などの新メニューの開発支援を行っています。

 新しいオーブンで業務効率化+工賃UP

地域サポートセンター エル白河(福島県白河市)

障がい者就労支援施設「地域サポートセンター エル白河」は、障がいのある方の意思を尊重しながら、パンの製造や販売などを中心に、個人の能力に応じた作業を通じた自立支援を行っています。利用者の皆さんは、さまざまな種類のパンの成型や袋詰め、洗い物など、生き生きと作業をされています。

これまでは古いオーブンを、その日の機械の調子を窺いながら使っていましたが、焼き具合にムラがあったり、焼き上がるのに時間がかかるなどして、多くの時間を取られていました。またそれにより職員が利用者一人ひとりへきめ細かく対応しきれないなどの影響が出ていました。

AARが新しいオーブンを提供したことにより(写真右上)、パンの製造に要していた時間が大幅に短縮され、出荷の準備に早く取り掛かれるようになりました。また、ほかの福祉事業所と連携して商品を作る際に生じるさまざまな要望に対応することが可能になり、工賃の向上にもつながっています。

職員の方々のパン製造に関わる業務量も減り、これまでより利用者の皆さんへきめ細かい支援ができるようになりました。職員の邉見さまからは、「設備はやはり大事です。これまでは、製造が間に合わないパンは納期を遅らせてもらったりして何とかやりくりしてきましたが、効率がアップしたことでそうした問題が解消されました」とのお言葉をいただきました。

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4 AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動

7 年目の支援活動(2) 2017. 4.1–2018. 3. 31

■ 誰もが地域の一員として暮らせるように

地域みんなで元気になろうプロジェクト

新旧住民の交流、リハビリ、傾聴仮設住宅にはご高齢の方が多く、自分だけが残ってしまったという焦燥感や孤独感に苛まれる方、家族が要介護状態にあり、移転先を決める余裕がない方などがいます。一方、復興公営住宅に移った方々も、仮設住宅でようやく築いた人間関係を再び断ち切られ、公営住宅の中で孤立してしまうこともあります。また、故郷に帰還しても、放射線への不安や近所の方が戻らないため孤独を感じられる方もいます。AAR はお茶会や理学療法士・作業療法士の資格を持つボランティアによるマッサージの提供(右写真)、日本産業カウンセラー協会による傾聴を、仮設住宅や復興公営住宅で実施しています。「復興公営住宅に移ったが友人ができず寂しい」「自宅周辺にあまりにも人がいない」といった声も聞こえ、仮設の元住民が集まれる同窓会のようなイベントにするなどの工夫をし、今年度は岩手県と福島県で 43 回実施しました。

広域避難者と支援団体のネットワーク作り

原発事故の影響を受けて故郷を離れ、避難生活を続ける方々は 7 万 3,000 人、うち東京に暮らしている方は約5,000 人にのぼります(2月27日現在、復興庁)。AAR は2017 年 2月より、都内で活動する避難者支援団体むさしのスマイルなどを通じて、避難者同士が交流できるイベントの開催(右下写真)などを支援しています。避難者の中には、「避難の必要性が公に認められていない」などと気に病み、被災地出身であることを隠したり、周囲に事情を打ち明けられない人も多くいます。こうした方々にとって避難者同士の交流の場は、心の支えにもなっています。

福島県郡山市内では、避難者の方々が抱える問題を共有し、行政や団体などの支援につなげられるよう、支援する側の連携・協働の仕組みを作りました。

仮設に残らざるを得ない方々も、復興公営住宅に移った方々も、故郷に帰還できた人たちも、それぞれ不安やストレスを抱えていらっしゃいます。そうした方々が心身ともに元気になっていただけるよう、傾聴やリハビリ、イベントを通じた交流活動を続けています。また、広域避難者への支援も開始しました。

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5AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動

7 年目の支援活動(3) 2017. 4.1–2018. 3. 31

■ 子どもたちに元気を

親子いっしょに自然体験

西会津ワクワク子ども塾原発事故の影響により外遊びの機会が減った福島県の子どもたちに、野外でおもいっきり遊んでもらおうと、2012 年に開始した「西会津 ワクワク子ども塾」。2018 年2月までに23 回実施しました。運動不足やストレス解消などを目的とした 1 泊 2日のプログラムで、福島県相馬地域と双葉地域に住む子どもたちとその保護者が参加しています。2017 年 6月には西会津町に「交流農園」を、7月には相馬市に「交流花壇」を作り、西会津町の親子を相馬市へ招いて地域の親睦を図りました。

保育園の要望に応じて水を届ける

保育園に飲料水を提供子どもたちの飲み水や給食に使う水にペットボトル入りの飲料水を使用したいという保育園からの要望に応え、福島県福島市と南相馬市の 6 つの保育園へ、飲料水を支援しました。

原発事故による放射線量の影響が心配される福島県で、親子が安心して、元気に暮らせるよう支援しています。

参加者からの声西会津ワクワク子ども塾は、「何度も参加したい」という声が上がるほど人気のイベントとなっています。参加者からのアンケートでは、「6年経っても食材に気を遣っているが、西会津に来たらそんな心配もせずに過ごせます」

「除染も終わって放射線は安全だと言われるが、実際に暮らしていると心配でならない。でも子どもが自然の中で笑顔で遊ぶ姿を見ると安心する」「子ども塾で食事作りを覚え、家庭でも手伝ってくれるようになり、会話も増え感謝しています」など、嬉しいコメントをいただいています。

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6 AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動

福島県葛尾村 三春出張所主任主査

松本篤雄さん

7 年目の支援活動 2017. 4.1–2018. 3. 31

活動地域からの声

東京都内の避難者

岡田めぐみさん ( 東京都 むさしのスマイル代表 福島県福島市出身)

これからの活動

 引き続き募金にご協力お願いいたします

 インターネット  www.aarjapan.gr.jp ※通信欄に「東日本大震災復興支援」とご記入ください。

 ゆうちょ銀行  口座番号 :00110-6-96509 加入者名 : 難民を助ける会

                   ※通信欄に「東日本大震災復興支援」とご記入ください。

 銀行振込    三井住友銀行     目黒支店 ( 普 ) 1215794 難民を助ける会

         三菱東京UFJ銀行  目黒支店 ( 普 ) 4520323 難民を助ける会

         みずほ銀行     目黒支店 ( 普 ) 1110211 難民を助ける会

※銀行からのお振り込みはお振り込み人名を特定できません。お振り込み後お手数ですが事務局(Tel:03-5423-4511)までご連絡ください。

 

むさしのスマイルは、首都圏への避難者を対象に、交流サロンや相談会、戸別訪問などを通して、子どもの健康・教育、老後の医療、介護、就労問題などの相談事業を実施してきました。2017年3月には、区域外避難者への住宅無償提供の打ち切り、放射能汚染強制避難区域における相次ぐ避難指示解除によって、経済的困窮、生活拠点の移動によるさまざまな負担など、避難者をめぐる状況は複雑多様化し、自死に至る深刻なケースも生まれています。

こうした状況にありながら、震災から7年が経過し支援が激減する中、AARさんからのご支援は貴重でした。おかげで避難者同士の交流会だけでなく、地域住民と避難者との交流も実施し、支援の幅を広げることができました。

避難先に留まるにしても帰還するにしても、将来に展望を見いだせない方々が大勢います。これからは個々の実情に沿った個別の支援が必要になってきます。ご理解をいただき、引き続きのご支援をいただければ幸いです。

かつては満員だった仮設住宅も帰村や自主再建により退去が進み、10団地あった仮設住宅も7団地に、入居者数も100人弱に減りましたが、未だに住み続ける入居者もいます。特に一人暮らしの高齢者については住民とのコミュニケーションと毎日の食生活が心配です。

そんな中、AARさんから昼食交流会の提案があり実施したところ大変好評で、住民から再開を希望する声が多数ありました。AARさんの昼食交流会、マッサージ&お茶会などは参加者からは大好評なので、今後も仮設住宅のほか帰還先での孤立防止のためにも活動の継続をお願いしたいです。

被災者の生活や状況が多様化し、また被災者の住まいが分散される中、必要な支援は複雑化、そして多様化しています。震災直後

に比べると被災者支援に携わる人や団体は減ってきています。AAR はこれからも被災地に寄り添って、被災者の方がお住まいの地域

で活き活きと暮らすことができるよう支援を続けてまいります。7 年間の活動は、皆さまお一人おひとりのご支援のおかげです。改め

まして心より御礼申し上げます。

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AAR Japan 東日本大震災 7 年目の支援活動 7

7 年間の主な活動 2011. 3. 11–2018. 3. 31

炊き出し

のべ73ヵ所、約25,000食

支援物資の配付

のべ1,606ヵ所、約180,000人

災害時には障がい者・高齢者が支援から取り残されやすい、という海外での活動経験から、これらの方々への支援に重点を置いて活動を進めました。

巡回診療

受診者 のべ817人

宮城県の牡鹿半島で、在宅避難者宅や避難所をきめ細かく訪問し、地元の安田敏明医師を中心とした医療チームによる巡回診療と、慢性疾患の診察や感染症の予防・精神的サポートなどの保健活動を行いました。

車両提供

58台

福祉施設を利用する方々の送迎や、復興支援に携わる方々の移動に必要な福祉車両・一般車両を、東北各地の施設や自治体に提供しました。

福島県の被災者への生活必需品支援

22,599世帯

福島県内 13 市町村の仮設住居・借り上げ住宅に入居する全世帯を対象に、台所用品や食器棚などの生活必需品を配付しました。

障がい者・高齢者施設への支援

資機材の提供   130施設

建物の修繕・建築  84施設

被災地の障がいのある方々が昔からの仲間に再会し、活動や仕事を再開できるよう、地元の建設会社と協力して、障がい者・高齢者施設の建物の修繕や機材の提供を行いました。

地域交流イベントの開催

リハビリ指導・傾聴活動 501回

交流イベント 292回

リハビリ・コンサート・傾聴活動・手芸教室などを組み合わせたイベントを多数開催しました。

親子への支援

西会津ワクワク子ども塾の開催    23回

遊具、おもちゃ、絵本などの提供 のべ112ヵ所

避難生活や放射線量の影響で遊び場や外遊びの機会が減ってしまった子どもたちへの支援として、仮設住宅や福祉施設に遊具を設置しました。また、おもちゃや絵本などの提供を行いました。

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支出 (単位:円) 2017. 4. 1- 2018. 3. 31

計 80,524,003福祉事業所の基盤整備・販路拡大 48,531,535

「地域みんなで元気になろう」プロジェクト  (炊き出し、地域交流支援を含む) 13,971,417 車両の提供 5,363,455食料の配付(福島での飲料水配付を含む) 779,257 防犯灯 446,226広域避難者のネットワーク構築 948,132

コミュニティ構築 7,332,102管理費 3,151,881

会計報告 AAR Japan[難民を助ける会]東日本大震災 被災地支援活動

収入 (単位:円) 2017 4. 1- 2018. 3. 31

計 87,399,305 国内外からの寄付、海外からの助成金 79,888,866 国内助成金 7,510,439

〒141-0021 東京都品川区上大崎 2-12-2 ミズホビル7F Tel.03-5423-4511 Fax.03-5423-4450

4%

支出内訳 2017. 4. 1-2018. 3.31

2018/05

「地域みんなで元気になろう」プロジェクト(炊き出し、地域交流支援を含む)

17%

60%福祉作業所の基盤整備・販路拡大

車両の提供 7%

防犯灯1%食料の配付(福島での飲料水配付を含む) 1%

皆さまのご支援に心より御礼申し上げます。

管理費

広域避難者のネットワーク構築 1%

コミュニティ構築 9%