切削加⼯におけるファインバブルクーラントの効果 · 2019-10-21 ·...
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切削加⼯におけるファインバブルクーラントの効果
日本タングステン株式会社〇⾼⽥亮,渡辺剛,三浦尚大,深⾒信吾,⽑利茂樹
東京電機大学
松村隆福岡県工業技術センター
竹下朋春
1.背景
2.ファインバブルの特⻑
3.切削加工への適用(実験方法)
4.切削加工への適用(結果と考察)
5.まとめ
2019/9/5
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背景
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過去の研究実績:研削加工へのファインバブルクーラント適用
⾼硬度材に効果超硬CIS:VM-50相当材の円筒研削で切込み量1.5倍など
本研究グループではクーラントの基礎特性や、効果の把握ができつつある。
効果の例・切込み量増(研削抵抗の低減)・ドレスインターバルの延⻑
※精密工学会2019春季学術講演会 (渡辺剛ら)ウルトラファインバブルクーラントによる⾼硬度材の⾼精度・⾼能率研削より
背景
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本研究:研削加工での成果を切削加工へ展開
切削加工の課題 工具の摩耗
ファインバブルを適用することで工具の⻑寿命化による加工能率の向上
交換工数の増加仕上がり寸法変化による修正工数
効率の低下、工具費用の増加
狙いどころ
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2.ファインバブルの特⻑
ファインバブルの特⻑
ファインバブル(FB)とは: ISO/TC281・直径100µm以下の気泡・1µm未満:ウルトラファインバブル(UFB)・1µm以上:マイクロバブル(MB)
FB=UFB+MB
ファインバブルの模式図 5
MBは収縮⇒消滅する。UFBは浮⼒の影響を受けにくい為液中に留まる。
バブルの特性気泡個数分布液特性の変化
FB発生装置
システムイメージ図
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パス数の計算式
n =Q
W× t
nはパス数Qは循環水流量(L/min)Wは循環水の体積(L)tは運転時間(min)である
加工機
※精密工学会2019春季学術講演会 (渡辺剛ら)ウルトラファインバブルクーラントによる⾼硬度材の⾼精度・⾼能率研削より
クーラント特性の変化
滑落試験による付着エネルギー評価
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ウルトラファインバブルにより液体の付着エネルギーが低下する。
N=10
ソリューションタイプ
クラウンカットE-52CW 20倍希釈の例
※精密工学会2019春季学術講演会 (渡辺剛ら)ウルトラファインバブルクーラントによる⾼硬度材の⾼精度・⾼能率研削より
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3.切削加工への適用
実験方法
実験方法
3-1 超硬エンドミル側面でのS50C板材の加工
3-2 コーティング工具によるS45C調質材のボーリング穴加工
3-3 CVD工具による炭素鋼SK105材の旋削加工
実験に用いたクーラント液の定義
実験No. 実験名称 タイプ識別 UFB MB
3-1 超硬エンドミル側面でのS50C板材の加工 UFB ○ -
3-2 コーティング工具によるS45C調質材のボーリング穴加工FB ○ ○
3-3 CVD工具による炭素鋼SK105材の旋削加工
UFB型(装置運転停止)FB型(装置連続運転)
装置停止5分後
※精密工学会2019春季学術講演会 (渡辺剛ら)ウルトラファインバブルクーラントによる⾼硬度材の⾼精度・⾼能率研削より
3-1 超硬エンドミル側面でのS50C板材の加工
加工条件加工機 V33(牧野フライス製作所)
工具(工具)超硬エンドミル2CE AnchorV(不⼆越)
クーラントエマルジョン型⽔溶性切削油剤EC50T3(ユシロ化学工業)
被削材種 S50C[HRC58〜62]被削材サイズ 100×100×8[mm]
切削速度 V=200 [m/min]スピンドル速度 5305rpm
送り量 0.05 [mm/rev]切込み(径) 0.2[mm]
切込み(深さ) 8[mm]
FB発生装置UFBクーラントシステムMINI
エア流量 1[L/min]
吐出流量 60[L/min]
気泡タイプ UFB型
評価方法エンドミル摩耗幅の画像計測による比較。
※液中切削の理由水の掛かり方の影響を排除
FB発生条件
3-2 コーティング工具によるS45C調質材のボーリング穴加工
加工機 Mycenter-3xd(キタムラ)
工具(工具)コーティング3MPC-4(日研工作所)
クーラントエマルジョン型⽔溶性切削油剤UC180(日本工作油)
被削材種 S45C調質材
加工内容内径ボーリング加工Φ13深さ14mm通し穴
スピンドル速度 5000 [rpm]切込み量 0.05[mm]送り量 300 [mm/rev]
FB発生装置UFBクーラントシステムMINI
エア流量 1[L/min]
吐出流量 60[L/min]
タンク容量 440[L]
装置運転 テスト開始と同時に起動
気泡タイプ FB型
⽴形マシニングセンタ
(mycenter-3xd:キタムラ)
YZ
X
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加工条件
FB発生条件
加工ワークと工具
ボーリング穴加工
評価方法プラグゲージの通りが入らなくなった時点を工具交換寿命とし、TA工具1個当たりの穴加工数比較。
3-3 CVD工具による炭素鋼SK105材の旋削加工
加工機 CNC旋盤SL-250(森精機)
工具(工具)CVDコーティングCNMG431DM T9115(タンガロイ)
クーラントエマルジョン型⽔溶性切削油剤ミクロカット3700(日本クエーカーケミカル)
被削材種 SK105(SK3)被削材サイズ φ150×600 [mm]
切削速度 V=150、225、300 [m/min]送り量 0.2 [mm/rev]
切込み(径) 1.0 [mm]
FB発生装置UFBクーラントシステムMINI
エア流量 1L/min
吐出流量 60L/min
装置運転事前に12時間運転しバブル濃度を確保した状態で運転
気泡タイプ FB型
CNC旋盤(SL-250:森精機製)
YZ
X
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加工条件
FB発生条件
評価方法TA工具逃げ面の摩耗量の画像計測による比較。
被作物
工具
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4.切削加工への適用
結果と考察
4-1 超硬エンドミル側面でのS50C板材の加工
EC(通常クーラント)
NBEC(UFBクーラント)
今回の条件において通常のクーラントと比較して約30%工具摩耗幅が抑制された。UFBがクーラントに導入されたことでクーラントの付着エネルギーが低下し、工具と被削材界面間のクーラントの移動が容易になり、加工点までクーラントが届きやすくなり冷却効果が⾼まったことで工具摩耗が抑制されたと考察する。
Dry
1.5mm
4-2 コーティング工具によるS45C調質材のボーリング穴加工
YZ
X
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⼯具の持ちが1.7倍に延⻑
運転開始から4時間後
バブル濃度不⾜
従来の⼯具寿命
⼯具
⼯具
従来は穴加工数が工具1枚あたり300個程度であったが500個程度へ穴加工数が増えた。すなわち工具の摩耗が抑制されたといえる。運転開始4時間後から穴加工数が増え始め、その後500個程度で安定して推移した。過去の実験でバブル個数は装置運転開始後からリニアに増加する知⾒がある。今回の実験ではある時間から急激に加工数が増える挙動を示しており、効果を得るにはある量のバブル個数が必要であることが推測される。
4-3 CVD工具による炭素鋼SK105材の旋削加工
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FBクーラントを使用することで工具の逃げ面摩耗量が中速加工で30%、⾼速加工で
14%減少した。
⾼速加工ではクーラントが散乱しやすく加工点に届く前に飛散しクーラントの機能が
発揮されない。低速・中速加工ではクーラントの飛散が軽微である為効果が得やすい
と考察する。
⼀方で低速加工では評価に対しての切削距離が不⼗分であった可能性があり、摩耗の
優劣が顕著には出ていないと思われる。
⾼速F300
中速F225
低速F150
摩耗部
穴加工の事例からバブル濃度の影響を排除する為事前運転を実施
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5.まとめ
まとめ
事実:FBクーラントやUFBクーラントを使用することで複数の異なる加工方法の実験において工具摩耗が抑制された。
考察:UFBがクーラントに導入されたことでクーラントの付着エネルギーが低下し、工具と被削材界面間のクーラントの移動が容易になり、加工点までクーラントが届きやすくなり、冷却効果が⾼まったことで工具摩耗が抑制された。
事実:FBの効果が発現するまでにタイムラグがある。 考察:効果を得るにはある量のバブル個数(濃度)が必要である
事実:旋削加工においてFBクーラントを使用することで工具の逃げ面摩耗量が低下したが、加工速度により効果に差がある。
考察:⾼速加工ではクーラントが散乱しやすく加工点に届く前に飛散しクーラントの機能が発揮されない。
本研究では,FBクーラントとUFBクーラントを用いて切削加工を⾏ったことで以下の知⾒が得られた。
ご清聴,ありがとうございました.
引き続き考察の検証を進め、切削加工におけるファインバブルの適用効果を研究していく。