agilent dvb/car-wr/pdms spme...2 実験方法 dvb/car-wr/pdms ファイバでの 再現性 10 μl...
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アプリケーションノート
食品検査
著者
Jessica Westland Agilent Technologies, Inc.
はじめに
米国をはじめ世界各国で大麻の合法化が広まったことにより、テルペン濃縮物の定性と定量が、分析業界において一段と重要度を増してきました。短時間で正確な結果が得られ、かつコストを抑えられるように、高速で効率的なメソッドを開発する必要があります。テルペンは蒸気圧が高く揮発性があるため、静的ヘッドスペース (HS) ガスクロマトグラフィー /質量分析 (GC/MS) が有効な手法と考えられます。この手法は、溶媒抽出や GC/FID と比べて次のような利点があります。
• 有機溶媒の使用が不要
• マトリックス干渉の共溶出なし
• スペクトルデータを用いた、ピーク同定と純度についての追加の測定手段となる。
大麻の花に含まれるテルペンを SPME で分析するこのアプリケーションは、主要な研究を実証し、複雑な各種マトリックスの SPME 抽出能力を示すことが目的です。メソッドのさらなる開発と評価が実施されるまで、大麻およびヘンプマトリックス中のテルペンのルーチン検査でこの分析法を使用することは推奨されません。
Agilent DVB/CAR-WR/PDMS SPME ファイバによる選択されたテルペンの SPME-GC/MS
2
実験方法
DVB/CAR-WR/PDMS ファイバでの 再現性10 μL の濃度 5 ppm のテルペン混合物 (部品番号 TPM-100-1 および TPM-105-1) を、20 mL ヘッドスペースバイアル中の 8 mL の Milli-Q 18.2 Ω 水に加えました。
サンプル大麻の花のサンプルは、米国麻薬取締局 (DEA) の許可を得てミシシッピ大学マリファナプロジェクトから入手しました。
各種大麻サンプルのテルペンの プロファイリング8 mL の Milli-Q 18.2 Ω 水を、20 mL ヘッドスペースバイアル中の約 0.1 g の均質化した大麻植物に加えました。
固相マイクロ抽出 (SPME)SPME では、サンプルマトリックス中、サンプル上部のヘッドスペース、フューズドシリカファイバのポリマコーティングで、成分が平衡状態となります。抽出された成分はファイバからキャピラリー GC カラムへ熱脱着されます。表 1 に SPME ヘッドスペースパラメータを示します。
GC/MS 分析選択されたテルペンの分析には、SPME ヘッドスペースと PAL RTC レールシステムを、Agilent 7890B GC システムおよび Agilent 5977B 超高感度イオン源搭載 GC/MSD と組み合わせて使用しました (図 2)。
表 1. SPME ヘッドスペースパラメータ
パラメータ 設定
品名 ARROW-STD-V2.0
ツール SPME 1
SPME ファイバ相 80/10 µm DVB/CAR-WR/PDMS (部品番号 5191-5874)
インキュベーション時間 5 分
スターラ Heatex Stirrer 1
Heatex Stirrer の速度 (撹拌) 1,000 rpm
Heatex Stirrer の温度 (抽出温度) 40 ° C
撹拌器 なし
サンプル抽出時間 20 分
抽出温度 40 ° C
サンプルバイアル貫入深さ 40 mm
サンプルバイアル貫入速度 20 mm/s
注入口貫入深さ 40 mm
注入口貫入速度 100 mm/s
注入信号モード ファイバ露出の前
サンプル脱着時間 3 分
コンディショニングポート SPMEArrowCond 1
脱着前コンディショニング時間 5 分 (分析実行)/60 分 (プレコンディション)
ファイバコンディショニングステーション温度 270 ° C
脱着後コンディショニング時間 0 分
GC サイクル時間 5 分 (シーケンスオーバラップ用にセット)
図 1. DVB/CAR-WR/PDMS SPME ファイバ (部品番号 5191-5874)
図 2. PAL RTC レールシステムと Agilent 7890B GC および Agilent 5977B GC/MSD との組み合わせ
3
結果と考察
DVB/CAR-WR/PDMS ファイバでの 再現性単 一 バ ッ チ 内 で 3 つ の 異 な る DVB/CAR-WR/PDMS 100 µm ファイバを用いて、5 ppm 標準を 12 回繰り返し注入しました。各ファイバのパーセント RSD を計算し、それらの平均を求めました。各繰り返し分析で、%RSD は 20 % 未満に維持されました。表 3 に平均値の結果を示します。
表 2. Agilent 7890B GC の設定
パラメータ 設定値
注入口ライナ注入口ライナ、ウルトライナート、スプリットレス、ストレート、内径 0.75 mm (部品番号 5190-4048)
注入口モード/温度 スプリットレス/270 ° C
オーブンプログラム60 ° C (2 分間保持) 5 ° C/min で 140 ° C まで上昇 (1 分間保持) 15 ° C/min で 250 ° C まで上昇 (4 分間保持)
平衡化時間 0.5 分
コントロールモード 定流量 (1 mL/min)
カラム Agilent J&W DB-1ms、60 m、0.25 mm、0.25 µm GC カラム (部品番号 122-0162)
セプタムパージ流量モード 標準、3 mL/min
スプリットベントへのパージ流量 0.35 分で 15 mL/min
Agilent 5977B GC/MS の設定
トランスファーライン 280 ° C
取り込みモード スキャン
溶媒ディレイ 8 分
チューニングファイル atune.u
ゲイン 1
MS イオン源温度 280 ° C
MS 四重極温度 150 ° C
表 3. 各 DVB/CAR-WR/PDMS ファイバでの化合物の %RSD の結果
化合物 ファイバ 01 ファイバ 02 ファイバ 03 平均
カンフェン 4.77 3.54 1.79 3.37
サビネン 7.99 5.04 3.41 5.48
b-ピネン 5.94 3.77 2.93 4.21
3-カレン 7.09 2.41 3.17 4.22
(R)-(+)-リモネン 4.64 1.81 3.54 3.33
オシメン 16.60 5.57 4.84 9.00
γ-テルピネン 9.54 8.00 5.49 7.68
フェンコン 20.07 20.11 5.27 15.15
(–)-カンファー 9.73 4.83 5.18 6.58
(–)-イソプレゴール 8.96 7.18 4.68 6.94
イソボルネオール 16.46 10.55 6.93 11.31
テルピネオール 9.34 18.86 12.17 13.46
プレゴン 15.44 8.29 10.18 11.30
b-カリオフィレン 19.65 5.26 5.36 10.09
(–)-グアイオール 24.43 18.32 14.55 19.10
(+)-セドロール 17.85 12.90 10.69 13.81
(–)-アルファ -ビサボロール 22.31 18.24 13.84 18.13
4
各種大麻サンプルのテルペンの プロファイリングテルペンは大麻の花や抽出物の多種多様な匂いや香りの源となり、多様な大麻種で際立つ芳香を生成します。
DVB/CAR-WR/PDMS SPME ファイバ (部品番号 5191-5874) を用いて、さまざまな大麻の花のサンプルをプロファイリングしました。選択され同定されたテルペンを表 4 に挙げ、代表的なクロマトグラムを図 3~ 13 に示します。
リモネン 2
リモネンは、大麻の全品種において 2 番目に多く存在するテルペンですが、すべての大麻の品種に必ず含まれているわけではありません。リモネンを含む品種はレモンに似たシトラス類の匂いがあります。
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.014.814
D-リモネン
14.410 14.50715.062
14.2 14.3 14.4 14.5 14.6 14.7 14.8 14.9 15.0 15.1 15.2 15.3 15.4 15.5
×102
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
図 3. 大麻の花のサンプル 1103 中で同定された (R)-(+)-リモネン
表 4. サンプル中の各テルペンの定量 (濃度 > 5 ppm)
化合物 1367 1330G THC000A 3486 3653 1103 2524 3401 3535 3648 3658 3812
カンフェン X X
サビネン X
b-ピネン X X X X X X X
3-カレン
(R)-(+)-リモネン X X X X X X X X
オシメン X
g-テルピネン X X X
フェンコン X X X X
(–)-カンファー X X X X X X X X
(–)-イソプレゴール X X X X X X X X X X X
イソボルネオール X X
テルピネオール X X X X X X X X X X X X
プレゴン
b-カリオフィレン X X X X X X X X X X X X
(–)-グアイオール X X X
(+)-セドロール X X X X X X X X X X
(–)-アルファ -ビサボロール X X X X X X X X X X X
5
ガンマ-テルピネン (g-テルピネンまたは γ-テルピネン)2
g-テルピネンはハーブのようなシトラス類の甘い芳香がします。商品としては、チャノキ油から抽出されます。
イソプレゴール 3、4
イソプレゴールは、メントールの化学前駆体で、ミントの匂いでよく知られるテルペンです。一般的に、食品の香味料や化粧品の芳香剤として使用されています。
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
-0.4-0.2
00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.03.23.43.63.84.0
15.641ガンマ-テルピネン
15.3 15.35 15.40 15.45 15.50 15.55 15.60 15.65 15.70 15.75 15.80 15.85 15.90 15.95 16.00 16.05
図 4. 大麻の花のサンプル 3653 中で同定された g-テルピネン
図 5. 大麻の花のサンプル 3535 中で同定された (–)-イソプレゴール
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
-0.20
0.20.40.60.8
1.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.03.2
18.061(–)-イソプレゴール
17.6 17.7 17.8 17.9 18.0 18.1 18.2 18.3 18.4 18.5 18.6 18.7
6
テルピネオール 3
テルピオネールは、ライラック、松の木、ライムの花、ユーカリの樹液に天然に存在しています。せっけん、ローション、香水などの製品に含まれる心地よい香りを作成するためによく使用されます。テルピネオールには人をリラックスさせる特性があります。
カリオフィレン 2
カリオフィレンはカンナビノイド受容体に結合する唯一のテルペンです。スパイシーでピリッとする風味が特によく知られています。カリオフィレンは、黒コショウ、シナモン、クローブのほか、オレガノ、バジル、ローズマリーのようなスパイス類に含まれています。
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
-0.20
0.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.03.2
19.434L-アルファ-テルピネオール
19.0 19.05 19.1 19.15 19.2 19.25 19.3 19.35 19.4 19.45 19.5 19.55 19.6 19.65 19.7 19.75 19.8 19.919.85
図 6. 大麻の花のサンプル 3658 中で同定されたテルピネオール
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
-0.4-0.2
00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.03.23.43.63.84.04.24.44.64.8 23.165
カリオフィレン
22.90 22.94 22.98 23.02 23.06 23.10 23.14 23.18 23.22 23.26 23.30 23.34 23.38 23.42 23.46
図 7. 大麻の花のサンプル 2524 中で同定された b-カリオフィレン
7
セドロール 5
セドロールは、針葉樹、特にイトスギやビャクシンの精油 (セダー油) 中のセスキテルペンアルコールです。複数の研究から、セドロールには吸入時に深い鎮静効果があることが分かっています。
アルファ -ビサボロール 2
アルファ -ビサボロールは、化粧品業界で主に利用されてきており、最近は細菌感染症や傷の治療で効果が示されました。この心地よいフローラルの香気は、カモミールの花にも感じることができ、抗炎症および鎮痛性のある抗酸化物質です。
このように、特定のテルペンプロファイルを創り出す独特の香気や香りを含む、さまざまな種類の大麻が開発されてきました。
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
-0.20
0.20.40.60.81.01.21.41.61.82.02.22.42.62.83.03.23.43.63.84.04.24.44.64.8
27.262アルファ-ビサボロール
27.06 27.10 27.14 27.18 27.22 27.26 27.30 27.34 27.38 27.42 27.46 27.50
図 9. 大麻の花のサンプル 3812 中で同定された (–)-アルファ-ビサボロール
図 8. 大麻の花のサンプル 3401 中で同定された (+)-セドロール
×101
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
0
0.4
0.8
1.2
1.6
2.0
2.4
2.8
3.2
3.6
4.0
4.4
4.8
5.2
5.6
6.0
26.661(+)-セドロール
26.5026.46 26.54 26.58 26.62 26.66 26.70 26.74 26.78 26.82 26.86 26.90 26.94
8
×107
取り込み時間 (分)
カウント
00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.51.61.71.8
14.822D-リモネン
23.165カリオフィレン
19.434L-アルファ-テルピネオール
27.262アルファ-ビサボロール
18.055イソプレゴール
15.646g-テルピネン
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
図 10. 大麻の花のサンプル 1367 中で選択されたテルペン: (R)-(+)-リモネン、g-テルピネン、(–)-イソプレゴール、テルピネオール、b-カリオフィレン、(–)-アルファ-ビサボロール
×107
取り込み時間 (分)
カウント
00.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.51.61.71.81.9 14.914
D-リモネン
23.182カリオフィレン
19.440アルファ-テルピネオール
27.262アルファ-ビサボロール
15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
図 11. 大麻の花のサンプル 1330G 中で選択されたテルペン: (R)-(+)-リモネン、テルピネオール、b-カリオフィレン、(–)-アルファ-ビサボロール
9
×107
取り込み時間 (分)
カウント
0.10.20.30.40.50.60.70.80.91.01.11.21.31.41.51.61.71.8 19.463
L-アルファ-テルピネオール
27.262
(–)-アルファ-ビザボロール
18.067(–)-イソプレゴール
15.664ガンマ-テルピネン
16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27
図 12. 大麻の花のサンプル THC001A 中で選択されたテルペン: g-テルピネン、(–)-イソプレゴール、テルピネオール、(–)-アルファ-ビサボロール
×102
取り込み時間 (分)
カウント
(%)
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
0.9
1.023.182
カリオフィレン
19.440L-アルファ-テルピネオール
26.661
(+)-セドロール
18.061イソプレゴール
18.0 18.4 18.8 19.2 19.6 20.0 20.4 20.8 21.2 21.6 22.0 22.4 22.8 23.2 23.6 24.0 24.4 24.8 25.2 25.6 26.0 26.4 26.8
図 13. 大麻の花のサンプル 3648 中で選択されたテルペン: (–)-イソプレゴール、テルピネオール、b-カリオフィレン、(+)-セドロール
アジレントの製品および溶液は、大麻の品質管理および安全性試験の目的のために、州/国の法律で許可されているラボでの使用を想定しています。
結論
テルペンは、蒸気圧が高くきわめて揮発しやすいため、静的ヘッドスペース (HS) ガスクロマトグラフィー /質量分析 (GC/MS) が有効な手法と考えられます。大麻の花に含まれるテルペンを SPME で分析するこのアプリケーションは、主要な研究を実証し、複雑な各種マトリックスの SPME 抽出能力を示すことが目的です。類似の SPME 抽出手法が、果実や野菜などの植物ベースのマトリックスに含まれる揮発性の植物性化学物質の測定にも有用である可能性が示されました。
参考文献
1. SPME Arrow Sampling of Terpenes in Cannabis Plant Material.Agilent Technologies Application Note, publication number 5994-1046EN, July 2019.
2. Greencamp.https://cannacon.org/15-terpenes-cannabis-explained/
3. Potbotics. https://www.potbotics.com/learn/terpenes/isopulegol/
4. The Apothecarium. https://apothecarium.com/blog/nevada/2018/6/7/terpenes-the-essentials-isopulegol/
5. Kagawa, D. et al.The Sedative Effects and Mechanism of Action of Cedrol Inhalation with Behavioral Pharmacological Evaluation.Planta medica, 69,7, 637–641. doi:10.1055/s-2003-41114
ホームページwww.agilent.com/chem/jp
カストマコンタクトセンタ0120-477-111 [email protected]
本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。本文書に記載の情報、説明、製品仕様等は予告なしに変更されることがあります。
アジレント・テクノロジー株式会社 © Agilent Technologies, Inc. 2019Printed in Japan, October 8, 20195994-1411JAJP