2 独立行政法人等の債務 - 財務省2016/02/10  ·...

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第Ⅱ編 制度編

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第3章その他の公的債務

2独立行政法人等の債務

 2 独立行政法人等の債務

(1) 独立行政法人等の債務の種類独立行政法人等の債務には、政府保証債務に加え、国からの資金調達手段として

一般会計、財政融資資金及びその他の特別会計からの借入金のほか、民間からの資金調達手段として財投機関債等があります。

なお、ここで、独立行政法人等とは、独立行政法人(☞①)、特殊法人(☞②)及び認可法人(☞③)をいうこととします。これらは全て、政府の監督の下に公的な施策を実施している法人です。

A 国からの資金調達a 財政融資資金からの借入金

独立行政法人等は、国民のニーズや社会経済情勢の変化などに対応して、財政投融資制度により必要な事業への資金供給を受けており、財政投融資改革を踏まえ、対象事業の重点化・効率化が図られています。なお、財政投融資を活用している機関を財投機関といいます。

b その他の国からの借入金独立行政法人等に対しては、一般会計やその他の特別会計からの無利子貸付等

が行われるものがあります。

B 民間からの資金調達財政投融資改革により、財投機関の新たな自己資金調達手段として、政府保証の

ない公募債券である財投機関債が導入されました。財投機関債の発行により、ディスクロージャーを促進させ、事業運営の効率化を促すという効果があると考えられます。なお、独立行政法人等のうち公庫等の債券発行等については、政府関係機関予算として国会の議決が必要となっています。また、財投機関が債券発行や長期借入を行う場合には主務大臣から認可を受ける必要があり、その際、主務大臣はあらかじめ財務大臣と協議することとされています。

(2) 独立行政法人等の財務報告独立行政法人等の資産面も含めた財務状況については、現在、様々な形で各独立

行政法人等より公表されています。このうち、独立行政法人については、独立行政法人通則法に基づき、原則として

企業会計原則に基づく財務諸表が作成されています。この財務諸表は、監事、会計監査人による監査を受けた上で、主務大臣からの承認を受け、公表されています。国による独立行政法人の監督の在り方は、その業務運営における自律性、自発性を発揮させるため、事前統制から事後チェックを重視した制度設計となっており、独立行政法人の財務諸表は、業務遂行状況の的確な把握だけでなく、業績の適切な評価にも資するものとなっています。

2 独立行政法人等の債務

☞①独立行政法人通則法第2条第1項に規定される「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効果的かつ効率的に行わせるため、中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人」をいいます。この場合、「個別法」とは、独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を法人ごとに定める法律をいいます。

☞②総務省設置法第4条第15号に規定される「法律により直接に設立される法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立すべきものとされる法人(独立行政法人を除く。)」をいいます。この場合、「特別の設立行為」とは、「政府が命ずる設立委員が行う設立に関する行為」をいいます。

☞③認可法人とは、通常、「民間等の関係者が発起人となって自主的に設立する法人であるが、その業務の公共性などの理由によって、設立については特別の法律に基づき主務大臣の認可が要件となっているもの」(出典「法律用語辞典」

(法令用語研究会編))をいいます。

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第3章その他の公的債務

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また、特殊法人・認可法人については、予算統制を確保する観点から、各法人において、それぞれの設立根拠法等に基づき財務諸表が作成され、主務大臣からの承認を受けた上、公表されています。これに加えて、将来の国民負担に関する説明責任を向上させる観点から、平成12年度決算から企業会計原則に準拠した「行政コスト計算書」等が作成・公表されています。

なお、独立行政法人等のうち政府が出資している主要な法人については、財政法第28条に基づき、財務諸表が参考書類として国会に提出する予算に添付されています。

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コラム6 日本国債の歴史

❶ 低成長下における国債の大量発行戦後の日本国債の歴史は昭和 40年度に始まります。昭和 40年度当初までは均衡予算が編成されていまし

たが、昭和 40年度補正予算において歳入補填のための国債が発行され、昭和 41年度には当初予算から本格的に国債が導入され、初めて建設国債が発行されました。昭和 42年度には現在の減債制度(60年償還ルール)が確立し、それ以降、毎年度一般会計から国債整理基金特別会計への繰入が行われています。昭和 48年秋には第一次石油危機の影響により景気は深刻な不況に陥り、昭和 50年度補正予算において特

例国債を発行することとなり、特例国債の継続的な発行が開始することとなります。国債の償還年限については、当初は 7年債の 1種類でした。その後昭和 47年 1月にこの 7年債は 10年

債へと延長され、なおも 1種類のみの発行が続きますが、昭和 50年度以降、大量の国債を円滑に発行・消化するため償還年限の多様化が図られました。次に、国債の発行方式については、当初、シ団引受け(注1)と資金運用部引受け(注2)の 2方式でしたが、

昭和 53年に公募入札が導入され 3方式となりました。その後、シ団引受けはそのシェアを次第に低下させ、平成 18年 3月に廃止されています。(注1) シ団引受とは、国債発行当局が、国債の募集・引受を目的として我が国の金融機関により組織されたシンジケート団(国

債募集引受団)との間に、引受に関する一定の契約を締結し、発行される国債の発行予定額全額の発行を保証する方式です。(注2) 資金運用部引受とは、資金運用部資金による国債の引受けのことです。大蔵省(現財務省)は、平成 13年まで郵便貯金

や年金など国の集めた資金を資金運用部資金として統合管理し、国債などで運用していました。

❷ 国債の大量償還・借換、金融自由化の進展昭和 60年度以降においては、昭和 50年度以降に大量に発行された国債が償還を迎えたことに伴い借換債

の発行が急増することとなり、昭和 60年には国債整理基金特別会計法を改正し、短期国債及び借換債の前倒し発行が可能となりました。平成 2年度には特例国債の発行がゼロになりましたが、バブル経済の崩壊により我が国経済は急速に後退し、平成 7年度第 1次補正において再び特例国債が発行されました。

(図c6-1)国債発行総額の推移(発行根拠法別)第3章その他の公的債務

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なお、平成 6年度から 8年度には減税特例公債が、平成 6年度第 2次補正においては震災特例公債が発行されています。

一方、この時期には公社債流通市場が急速に拡大・発展し、売買高が増加しています。昭和 40年代までは、国債の大宗を引き受けていた金融機関は、国債を安定保有することが期待され、市場への売却の自粛が要請されていたため、公社債流通市場の取引規模は小さい状態でした。しかし、昭和 50年度以降の国債の大量発行に伴い、都市銀行等の預金増加額に占める国債引受割合が急増し、保有国債の売却により資金ポジションを改善したいとの金融機関の要求が強まり、昭和 52年 4月以降国債の売却自粛要請が緩和されたことを契機として国債の流動化が進展しました。公社債流通市場が急速に拡大・発展した背景には、その他、【制度面】 i. 昭和 58年 4月以降、金融機関の募集取扱い等の開始により事業法人、個人等の投資家層が拡大 ii. 昭和 59年 6月より銀行等の金融機関が債券ディーリングを開始 iii. 昭和 60年 10月にリスクヘッジの手段となる債券先物市場の創設 iv. 平成元年 4月に債券オプション取引、同年 5月に貸債券取引が開始【市場環境面】  v. 高度経済成長から安定成長への移行により、民間の旺盛な資金需要が落ち着き、金融機関や事業法人に余裕資金が生まれてきたこと

  vi. 余裕資金を保有する金融機関等の機関投資家や事業法人が収益性を求め、多額の資金をまとめて運用できる公社債市場に積極的に参入してきたこと、投資家の売買ニーズが多様化し、取引手段が高度化してきたことにより取引が活発化したこと

 vii. 金融・資本市場の国際化の進展により、外国人投資家による取引が活発化したこと等があると考えられます。その後、昭和 63年 7月には超長期先物取引、平成 2年 5月より長期国債先物オプション取引、平成 8年

2月には中期国債先物取引、同年 4月には現金担保債券貸借(日本版レポ)取引が開始されたこと等から、よりキメの細かいリスクヘッジ、またはポジション作りが可能となり、国債の商品性が向上し、現物債流通市場の厚みが増すことになりました。

❸ 市場との対話の強化と保有者層の多様化財務省(当時、大蔵省)は、昭和 40年以降、国債の発行予定額や制度に関して関係者の意見を聞くため、「国

債発行等懇談会」を、通常、翌年度当初予算及び補正予算の閣議提出直前に開催していました。平成 12年 9月からは、国債の消化を一層確実かつ円滑なものとするとともに、国債市場の整備を進めて

いくため、年 10回程度、市場関係者を主なメンバーとする「国債市場懇談会」が開催されるようになりました。同懇談会では、国債発行の在り方や年限構成、発行・流通市場の制度面の諸課題などの幅広いテーマが取り上げられ、ここでの意見を踏まえ、リオープン方式(平成 13年 3月)やWI 取引(平成 16年 2月)などが導入されています。また、商品性・保有者層の多様化に関しても様々な意見が出され、ストリップス債(平成 15年 1月)、個人向け国債(平成 15年 3月)、物価連動国債(平成 16年 3月)の導入や非居住者に対する非課税措置の整備などが行われました。その後、平成 16年 10月に国債市場特別参加者制度が導入されたことに伴い、同懇談会は「国債市場特別

参加者会合」に衣替えしました。また、平成 14年 4月には国債の投資家と直接かつ継続的に意見交換を行う場として「国債投資家懇談会」が、平成 16年 11月には中長期的な視点から国の債務管理政策について有識者の方々等から意見を伺う場として「国の債務管理の在り方に関する懇談会」が創設されています。平成 17年以降においても、これら市場との対話を踏まえ、平成 17年 1月から海外 IRを開始し、平成 18

年 4月に流動性供給入札、平成 19年 11月に 40年債を導入するなど、市場の動向やニーズを踏まえた国債管理政策の実施に努めています。

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(図c6- 2)国債の商品ラインナップ

☞「戦後の国債管理政策の推移」(年表)は 146ページ参照

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